特許第6190057号(P6190057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディスクマ アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190057
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】封止ピンを経由する2段階の流れ
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/46 20060101AFI20170821BHJP
   B29C 49/08 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B29C49/46
   B29C49/08
【請求項の数】37
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-523716(P2016-523716)
(86)(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公表番号】特表2016-531769(P2016-531769A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】US2013048540
(87)【国際公開番号】WO2014209356
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】514318149
【氏名又は名称】ディスクマ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】DISCMA AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リスチ,ジー.,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ボイァーレ,フレデリック,シー.
(72)【発明者】
【氏名】リー,ダレル
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/050047(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0164404(US,A1)
【文献】 特表2011−506130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00−51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備成形物からプラスチック容器を液圧ブロー成形するためのノズルであって、
流入口から流出口へ中を通って延びるとともに一部が弁座を規定する主ボアを有するノズル本体と、
上記主ボアに受けられ、封止位置と開口位置との間で移動可能な封止ピンであって、封止表面を規定する部分を含み、入口孔から出口孔へ中を通って延びる中心ボアをさらに有し、上記入口孔が上記主ボアに通じる封止ピンと、
開放位置と封鎖位置との間を移動可能であり、上記封鎖位置において上記中心ボアを通り上記予備成形物の中への液状の成形媒体の流れを防ぐ、上記中心ボアと連結したバルブとを備えることを特徴とするノズル。
【請求項2】
上記中心ボアは、上記主ボアと同軸上にある中央部分と、複数の側部経路とを備え、
上記側部経路は、上記中央部分から横方向に延び、それぞれが上記入口孔の一部を規定しており、かつ、上記封止ピンの外側表面に配置されることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
上記側部経路は、上記中心ボアの上記中央部分に向かって上記外側表面から斜めに延びることを特徴とする請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
上記側部経路は、上記出口孔に向かう方向に収束することを特徴とする請求項3に記載のノズル。
【請求項5】
上記側部経路は、上記封止ピンの上記外側表面から上記中心ボアの上記中央部分へ向かって直角に延びることを特徴とする請求項2に記載のノズル。
【請求項6】
上記バルブは、プラグロッドであり、
上記プラグロッドは、上記中心ボアの中央部分の中を軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項2に記載のノズル。
【請求項7】
上記プラグロッドは、上記中心ボアの上記中央部分の中を軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項6に記載のノズル。
【請求項8】
上記プラグロッドは、ある位置では上記中心ボアの上記中央部分と上記側部経路の境界部を超えて延び、これにより上記中央部分から上記側部経路を封鎖し、また、別の位置では上記境界部を超えて延びずに上記側部経路が上記中央部分と連通することを可能にしていることを特徴とする請求項7に記載のノズル。
【請求項9】
上記中心ボアの上記中央部に配置された整流器をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のノズル。
【請求項10】
上記整流器は、上記中央部と上記側部経路の境界部に隣接して配置されることを特徴とする請求項9に記載のノズル。
【請求項11】
上記バルブはプラグロッドであり、
上記プラグロッドは、上記中心ボアの一部で軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項12】
上記出口孔は、上記流出口の直径よりも小さな直径を規定することを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項13】
上記出口孔は、上記流出口と同軸上にあることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項14】
上記出口孔は、5°未満の噴射角度を規定することを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項15】
上記出口孔は、0°の噴射角度を規定することを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項16】
上記中心ボアの中に配置された整流器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項17】
上記整流器は、上記出口孔から離されていることを特徴とする請求項16に記載のノズル。
【請求項18】
上記整流器は、上記中心ボアの中に複数の副通路を規定することを特徴とする請求項17に記載のノズル。
【請求項19】
副通路は、上記中心ボアの中で放射状に向いた複数の羽根のうち少なくとも一つの羽根と、中を通る複数の通路のアレイを有するバッフル板と、上記中心ボアの中で縦方向に延びる複数の管とにより規定されることを特徴とする請求項17に記載のノズル。
【請求項20】
液圧ブロー成形システムに組み込まれており、
上記封止位置では上記封止表面が上記弁座と係合して上記流出口から上記主ボアを封止し、上記開口位置では上記封止表面が上記弁座から離れる上記封止ピンに接続され、上記封止ピンを上記封止位置と上記開口位置との間で移動させるように構成されたアクチュエータと、
上記ノズルに接続され、加圧状態で上記ノズルに供給される上記成形媒体の供給源と、
上記容器の形状の型穴を規定する内部表面を有する、上記予備成形物の一部が上記型穴の中に配置された状態で上記予備成形物を受けるように構成された型とをさらに備え、
これにより、第1の成形段階の間において、上記封止ピンが上記封止位置に存在し、上記中心ボアが上記主ボアから上記成形媒体を受ける状態で上記成形媒体が上記中心ボアと上記出口孔とを通って液体ベクトルとして上記予備成形物の中へ注入され、その後に上記封止ピンが上記開口位置へ移動され、そして第2の成形段階の間に、上記成形媒体は上記主ボアと上記流出口とを通って上記予備成形物の中へ注入されることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項21】
液圧ブロー成形システムに組み込まれており、
伸長位置と引込み位置との間を移動可能であり、上記伸長位置では上記型穴の中に延び、上記引込み位置では上記型穴から引っ込められるセンタリングロッドをさらに備えることを特徴とする請求項20に記載のノズル。
【請求項22】
液圧ブロー成形システムに組み込まれており、
センタリングロッドの端部が上記予備成形物の閉端と係合するように構成されていることを特徴とする請求項20に記載のノズル。
【請求項23】
液圧ブロー成形システムに組み込まれており、
センタリングロッドの端部がくぼんだ形状であることを特徴とする請求項20に記載のノズル。
【請求項24】
液圧ブロー成形システムに組み込まれており、
上記中心ボアの中に配置された整流器をさらに有し、
上記整流器は、上記出口孔から離されて配置され、上記中心ボアの中に複数の副通路を規定することを特徴とする請求項20に記載のノズル。
【請求項25】
予備成形物から容器を液圧ブロー成形する方法であって、
上記容器の形の型穴を規定する内部表面を有する型に予備成形物を配置するステップと、
液体の成形媒体をノズルの主ボアに供給するステップと、
第1の成形段階の間、上記主ボアと連通して開いた流入口を有し、上記主ボアから上記流入口を経由して上記成形媒体を受けとる第1のボアである、上記ノズルの中心ボアを通って、上記予備成形物の中へ上記成形媒体を第1流量で注入するステップと、
上記第1の成形段階の間に注入された上記成形媒体によって上記予備成形物に作用する力に応じて上記予備成形物を軸方向に延伸するステップと、
第2の成形段階の間に、少なくとも上記成形媒体の一部が上記中心ボアを通らずに上記主ボアから直接に上記予備成形物の中へ注入されるように、上記予備成形物の中に上記成形媒体をある流量で注入するステップと、
上記第2の成形段階の間に、上記容器の形に上記予備成形物を放射状に膨張させるステップとを含む方法。
【請求項26】
第2流量が上記第1流量よりも大きいことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
上記予備成形物を軸方向に延伸するステップが、上記第1の成形段階の間に上記成形媒体により上記予備成形物に作用する上記力によってのみ開始されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
上記第2の成形段階の間に上記予備成形物に注入される上記成形媒体の全ては上記主ボアから上記予備成形物の中へ直接注入されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
上記第1の成形段階の間において、上記予備成形物への注入前に、上記成形媒体に整流器の中を通過させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項30】
上記中心ボアを通って上記成形媒体を注入するステップが、上記主ボアから上記中心ボアの中への成形媒体の流れを防止するバルブを開放するステップを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項31】
上記バルブを開放するステップが、少なくとも一部が上記中心ボアに配置されたプラグロッドを、上記中心ボアと封止係合して上記中心ボアへの成形媒体の流れを防止する位置から引っ込めるステップを含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
上記第1の成形段階の間において、上記予備成形物への注入前に、上記成形媒体に整流器の中を通過させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
上記型穴へセンタリングロッドを延ばし、上記予備成形物の閉端を上記センタリングロッドと係合させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
上記型穴へセンタリングロッドを延ばし、上記予備成形物の閉端を上記センタリングロッドと係合させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項35】
上記軸方向へ延伸させるステップの前に、上記センタリングロッドを上記予備成形物と係合させることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
上記予備成形物を軸方向に延伸させるステップの間に、上記センタリングロッドが上記予備成形物の閉端に係合した状態を維持したまま上記センタリングロッドを引っ込めるステップをさらに含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
上記第1の成形段階の間において、上記予備成形物への注入前に、上記成形媒体に整流器の中を通過させることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、液体製品および粘性製品用の容器の成形に関する。特に、本発明は、予備成形物から容器を液圧ブロー成形するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、液体製品および粘性製品を含む様々な製品の梱包材として一般的に用いられる。最も一般的な形のプラスチック容器の1つは、ブロー成形されたプラスチック容器であって、ポリエステル材料、より具体的にはポリエチレン・テレフタレート(PET)で形成されることが多い。ブロー成形されたプラスチック容器は、通常、ブロー金型に加熱した予備成形物を配置し、それから所望の容器の最終形状を規定する型穴の内部表面に上記予備成形物が接触するまで、空気で上記予備成形物を膨らますことにより形成される。膨らんだ上記予備成形物は、上記プラスチックを「凝固する」のに十分な長さの時間の間、ブロー空気の圧力で上記型穴の内部表面に対して保持された時点で、上記成形容器は、上記型から取りだされる。
【0003】
その後、上記成形容器は、目的の製品が上記容器に充填される場所へ輸送される。この工程には、上記容器の梱包および上記容器の遠隔地への移動が含まれていてもよい。あるいは、この工程が、完成製品が小売業者または最終消費者へ出荷される前のこれら最終工程が行われる現地施設への上記容器の移動に関わるものであってもよい。
【0004】
上記方法では、ブロー成形と充填とは製品が充填された容器を製造する過程において異なる別の工程である。より新しい製造過程は、上記容器の成形において上記製品の使用を伴うものである。ブロー媒体として空気を利用する代わりに、この新製造過程は、液体を、より具体的には、上記容器に梱包され最終消費者に販売される実際の製品を上記容器の成形媒体として利用する。本明細書において、この種の成形は、液圧ブロー成形と称する。
【0005】
従来のブロー成形では、上記加熱した予備成形物が型穴へ導入された後に、上記予備成形物の大幅な放射状膨張がブロー空気の導入により行われる前に、上記予備成形物の縦方向の延伸を開始するために、伸縮ロッドが、上記予備成形物内に進められることが多い。上記伸縮ロッドは、通常、放射状膨張の間、上記予備成形物の中にとどまり、そして成形機から結果として得られる容器が取り出される前に引っ込められる。
【発明の概要】
【0006】
上記必要性を満たすとともに、関連技術の列挙された欠点およびその他制約を克服するために、一態様において、本発明は、予備成形物から容器を形成するためのノズルを実現する。
【0007】
別の態様において、本発明は、予備成形物からプラスチック容器を液圧ブロー成形するためのノズルであって、流入口から流出口へ中を通って延びる、一部が弁座を規定する主ボアを有するノズル本体と、上記主ボアに受けられ、封止位置と開口位置との間で移動可能な封止ピンであって、封止表面を規定する部分を含み、入口孔から出口孔へ中を通って延びる中心ボアをさらに有し、上記入口孔が上記主ボアに通じる封止ピンと、開放位置を封鎖位置との間を移動可能であり、上記封鎖位置において上記中心ボアを通り上記予備成形物の中への液状の成形媒体の流れを防ぐ、上記中心ボアと連結したバルブとを備えることを特徴とするノズルを実現する。
【0008】
本発明の別の態様において、上記中心ボアが上記主ボアと同軸上にある中央部分と複数の側部経路とを備え、上記側部経路は上記中央部分から横方向に延び、それぞれが入口孔の一部を規定しており、かつ、上記封止ピンの外側表面に配置される。
【0009】
本発明の別の態様において、上記側部経路が上記中心ボアの上記中央部分に向かって外側表面から斜めに延びる。
【0010】
本発明の別の態様において、上記側部経路が上記出口孔に向かう方向に収束する。
【0011】
本発明の別の態様において、上記側部経路が上記封止ピンの外側表面から上記中心ボアの上記中央部分へ向かって直角に延びる。
【0012】
本発明の別の態様において、上記バルブがプラグロッドであり、上記プラグロッドが上記中心ボアの中央部分の中を軸方向に移動可能である。
【0013】
本発明の別の態様において、上記プラグロッドが上記中心ボアの上記中央部分の中を軸方向に移動可能である。
【0014】
本発明の別の態様において、上記プラグロッドが、ある位置では上記中心ボアの上記中央部分と上記側部経路の境界部を超えて延び、これにより上記中央部分から上記側部経路を封鎖し、また、別の位置では上記境界部を超えて延びずに上記側部経路が上記中央部分と連通することを可能にしている。
【0015】
別の態様において、本発明は上記中心ボアの上記中央部に配置された整流器を備える。
【0016】
本発明の別の態様において、上記整流器が上記中央部と上記側部経路の境界部に隣接して配置される。
【0017】
本発明の別の態様において、上記バルブがプラグロッドであり、上記プラグロッドが上記中心ボアの一部で軸方向に移動可能である。
【0018】
本発明の別の態様において、上記出口孔が上記流出口の直径よりも小さな直径を規定する。
【0019】
本発明の別の態様において、上記出口孔が上記流出口と同軸上にある。
【0020】
本発明の別の態様において、上記出口孔が5°未満の噴射角度を規定する。
【0021】
本発明の別の態様において、がおよそ0°の噴射角度を規定する。
【0022】
別の態様において、本発明は、上記中心ボアの中に配置された整流器を備える。
【0023】
本発明の別の態様において、上記整流器は上記出口孔から離されている。
【0024】
本発明の別の態様において、上記整流器が上記中心ボアの中に複数の副通路を規定する。
【0025】
本発明の別の態様において、上記副通路は、上記中心ボアの中で放射状に向いた少なくとも複数の羽根と、中を通る複数の通路のアレイを有するバッフル板と上記中心ボアの中で縦方向に延びる複数の管とにより規定される。
【0026】
本発明の別の態様において、上記ノズルは、液圧ブロー成形システムに組み込まれ、上記封止位置では上記封止表面が上記弁座と係合して上記流出口から上記主ボアを封止し、上記開口位置では上記封止表面が上記弁座から離れる上記封止ピンに接続され、上記封止ピンを上記封止位置と上記開口位置との間で移動させるように構成されたアクチュエータと、上記ノズルに接続され、加圧状態で上記ノズルに供給される上記成形媒体の供給源と、上記容器の形状の型穴を規定する内部表面を有する、上記予備成形物の一部が上記型穴の中に配置された状態で上記予備成形物を受けるように構成された型とをさらに備え、これにより、第1の成形段階の間において、上記封止ピンが上記封止位置に存在し、上記中心ボアが上記主ボアから上記成形媒体を受ける状態で上記成形媒体が上記中心ボアと上記出口孔とを通って液体ベクトルとして上記予備成形物の中へ注入され、その後に上記封止ピンが上記開口位置へ移動され、そして第2の成形段階の間に、上記成形媒体は上記主ボアと上記流出口とを通って上記予備成形物の中へ注入される。
【0027】
別の態様において、本発明は、伸長位置と引込み位置との間を移動可能であり、上記伸長位置では上記型穴の中に延び、上記引込み位置では上記型穴から引っ込められるセンタリングロッドを備える。
【0028】
本発明の別の態様において、上記センタリングロッドの端部が上記予備成形物の閉端と係合するように構成されている。
【0029】
本発明の別の態様において、上記センタリングロッドの端部がくぼんだ形状である。
【0030】
別の態様において、本発明は、上記中心ボアの中に複数の副通路を規定する、上記出口孔から離されて上記中心ボアの中に配置された整流器を有する。
【0031】
別の態様において、本発明は、予備成形物から容器を液圧ブロー成形する方法であって、上記容器の形の型穴を規定する内部表面を有する型に予備成形物を配置するステップと、液体の成形媒体をノズルの主ボアに供給するステップと、第1の成形段階の間、上記主ボアと連通して開いた流入口を有し、上記主ボアから上記流入口を経由して上記成形媒体を受けとる第1のボアである、上記ノズルの中心ボアを通って、上記予備成形物の中へ上記成形媒体を第1流量で注入するステップと、上記第1の成形段階の間に上記注入された成形媒体によって上記予備成形物に作用する力に応じて上記予備成形物を軸方向に延伸するステップと、第2の成形段階の間に、上記予備成形物の中に上記成形媒体をある流量で注入するステップであって、少なくとも上記成形媒体の一部が上記中心ボアを通らずに上記主ボアから直接に上記予備成形物の中へ注入されるステップと、上記第2の成形段階の間に、上記容器の形に上記予備成形物を放射状に膨張させるステップとを含む方法を実現する。
【0032】
本発明の別の態様において、上記第2流量が上記第1流量よりも大きい。
【0033】
本発明の別の態様において、上記予備成形物を軸方向に延伸するステップが、上記第1の成形段階の間に上記成形媒体により上記予備成形物に作用する上記力によってのみ開始される。
【0034】
本発明の別の態様において、上記第2の成形段階の間に上記予備成形物に注入される上記成形媒体の全ては上記主ボアから上記予備成形物の中へ直接注入される。
【0035】
別の態様において、本発明は、上記第1の成形段階の間において、上記予備成形物への注入前に、上記成形媒体に整流器の中を通過させるステップを含む。
【0036】
本発明の別の態様において、上記中心ボアを通って上記成形媒体を注入するステップが、上記主ボアから上記中心ボアの中への成形媒体の流れを防止するバルブを開放するステップを含む。
【0037】
本発明の別の態様において、上記中心ボアへの成形媒体の流れを防止する、少なくとも一部が上記中心ボアに配置されたプラグロッドを、上記中心ボアと封止係合した位置から引っ込めるステップを含む。
【0038】
別の態様において、本発明は、上記第1の成形段階の間において、上記予備成形物への注入前に、上記成形媒体に整流器の中を通過させるステップを含む。
【0039】
別の態様において、本発明は、上記型穴へセンタリングロッドを延ばし、上記予備成形物の閉端を上記センタリングロッドと係合させるステップを含む。
【0040】
別の態様において、本発明は、上記型穴へセンタリングロッドを延ばし、上記予備成形物の閉端を上記センタリングロッドと係合させるステップを含む。
【0041】
本発明の別の態様において、上記軸方向へ延伸させるステップの前に、上記センタリングロッドを上記予備成形物と係合させる。
【0042】
本発明の別の態様において、上記予備成形物を軸方向に延伸させるステップの間に、上記センタリングロッドが上記予備成形物の閉端に係合した状態を維持したまま上記センタリングロッドを引っ込めるステップを上記方法が含む。
【0043】
本発明の別の態様において、上記第1の成形段階の間において、上記予備成形物への注入前に、上記成形媒体に整流器の中を通過させる。
【0044】
本明細書に添付され、本明細書の一部を構成する図面および請求項を参照にして以下の記載を検討すれば、本発明の更なる目的、構成および利点は、当業者に容易に明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A-C】本発明の原理を織り込んだ2段階ノズル構成を組み込んだ液圧ブロー成形システムの概略図である。
図2A-C】本発明の第2の実施形態に係る2段階ノズル構成を組み込んだ液圧ブロー成形システムの概略図である。
図3A-C】本発明の第3の実施形態に係る2段階ノズル構成を組み込んだ液圧ブロー成形システムの概略図である。
図4A-C】センタリングロッドの使用をさらに組み込んだ図1(a)〜(c)に示される実施形態の概略図である。
図5A】封止ピンの中心ボアの出口孔に形成された噴射角度を示し、また、中心ボアの上流部に配置された流れ調整器も示す概略図である。
図5B図3Aおよび図3Bに概要が示されたタイプのノズルに組み込まれる流れ調整器を示す概略図である。
図6A-E】上記様々な実施形態の封止ピンの中心ボアの中に設けられ得る流れ調整器の変形例を示す。
【発明の詳細な説明】
【0046】
上述の通り、液圧ブロー成形においては、成型媒体は空気の代わりに液体である。本明細書中で用いられる液体という用語は、水に近い粘度を有する液体(例えば、以下のものに限定されないが、水、スポーツ飲料、お茶などを含む飲料として消費される液体)のみでなく、水と比べて明らかに大きな粘度を有し、粘稠液として知られる粘性の液体(例えば、以下のものに限定されないが、ケチャップなどの調味料または食器用洗剤のような家庭用品として用いられる粘稠液)をも含むことを意図している。
【0047】
最終製品が成形媒体として用いられる場合、従来の伸縮ロッドは液圧ブロー成形に望ましくない場合がある。このような場合、上記伸縮ロッドは、潜在的な製品の汚染の原因となりえ、結果として、製品の汚染が確実に発生しないようにするために、複雑な定置洗浄システム/プロセス(clean−in−place system/process)が必要となる場合がある。本発明の一態様によれば、本明細書において液体ベクトル(liquid vector)と称されるものを選択して、上記従来の伸縮ロッドが不要とされる。
【0048】
上記液体ベクトルを用いることによって、最終製品、つまり、新たに形成される容器で保持することが意図されている上記製品を用いて、上記予備成形物の軸方向の延伸の開始または軸方向の完全な延伸を行うことができる。後続の上記容器の放射状成形および完全な充填をするとともに上記予備成形物のこの初期延伸を生じさせるために、本発明の追加的態様において、2段階ノズルおよび充填される容器の形成方法を記載する。
2段階ノズル
次に図面を参照すると、液圧ブロー成形システムが図1Aから図1Cに概略的に示されており、液圧ブロー成形システムは、全体として10で示される。上記成形システム10は、主要な構成要素として、ノズル12と少なくとも1つの型14(1つの型のみを図面には示す)を含む。上記成形システム10は、各実施形態および構成に関連して後述される様々な動作および成形段階の全てを制御するように構成され、上記ノズルに接続されたコントローラ11をさらに含む。
【0049】
上記型14は、1対の半型16により通常形成される。上記半型16のそれぞれは、所望の容器の形に型穴20を規定するように協働する内部表面18を有する。上記半型16は、開閉するように、互いに蝶番で連結されるか、その他の方法で結合される。これにより、半型16が予備成形物24と係合し、上記予備成形物24の本体26を上記型穴の中に配置することを可能にする。
【0050】
上記型14の上部は、上記予備成形物24を受けて保持するように構成されている。上記予備成形物24を保持し得る1つの手段は、上記型14の上に延びて配置されるねじ栓部22を有する上記予備成形物24の支持リングまたは取扱リングを、上記型14の上部に設けられた、対応する形に成形された凹部で受けることによるものである。上記型14で上記予備成形物24を保持し、上記予備成形物24を上記型14と係合させるために、上記型14の対応部分の中に上記支持リングを囲む、または、捉えるといった様々な他の代替的方法を用いてもよい。
【0051】
上記型穴20の中に上記予備成形物24を配置する前に、上記予備成形物24の本体26は、上記容器25を形成して充填するのに適した温度に加熱される。輻射ヒーターバンクまたは赤外線ヒーターバンクを超えてオーブン(図示せず)の中を上記予備成形物24に通過させることを含む、様々な手段で上記予備成形物24を加熱してもよい。上記予備成形物および容器の設計の仕様によって、上記オーブンは、上記栓部22から上記予備成形物24の閉端28まで本体26の縦の長さに沿って変化する温度プロフィールを引き起こすように構成されていてもよい。
【0052】
上記予備成形物24は、様々な材料で形成される。1つの好ましい材料は、ポリエチレン・テレフタレート(PET)である。上記容器が形成されうる他の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、熱可塑性混合物およびこれら材料の多層構造物が挙げられるが、これらに限定されることはない。しかし、本発明は、いかなる特定の材料に限定されることも意図していない。
【0053】
上記型14の中に配置された上記加熱した予備成形物24を用いて、図1Aに示すように上記予備成形物24の本体26が型穴20の空き空間に伸長する。その後、モーター駆動、空気圧駆動、または油圧駆動のアクチュエータであり得るアクチュエータ30により、上記ノズル12が、上記予備成形物の栓部22の上面、すなわち、封止面に係合する位置に移動される。
【0054】
上記ノズル12は2つの主要構成部品、すなわち、ノズル本体32と、上記ノズル本体32のボア38の中に配置された状態の封止ピン34とを有する。以下では、このボア38は、主ボア38と称する。上記封止ピン34は、以下にさらに説明する伸長位置と引込み位置との間で主ボア38の中を第2のアクチュエータ36によって軸方向に移動することができる。上記第1のアクチュエータ30のように、上記第2のアクチュエータ36もモーター駆動、空気圧駆動、または油圧駆動のアクチュエータであってもよい。または、単一アクチュエータが上記ノズル本体32と上記封止ピン34との両方の動きを生じさせて制御するように用いられてもよい。
【0055】
上記ノズル本体32の主ボア38は、上記主ボア38に成形媒体を導入するための流入口40と上記主ボア38から上記成形媒体を噴出するための流出口42とを有する。流入口40を経由して上記主ボア38に接続されているのは、成形媒体供給源44である。上記成形媒体を上記主ボア38で受けた場合、上記成形媒体は加圧状態にあり、加圧状態が上記供給源44自体で発生している、または存在する。あるいは、加圧状態は高圧ポンプ、ピストンまたは他の手段により上記ノズル12への移動途中で生じられてもよい。上記主ボア38への上記成形媒体の供給を制御するために、ハウジングバルブ46(図1Aに示すが図1Bおよび図1Bでは省略)を随意的に設けてもよい。
【0056】
図1Aおよび図1Bに概略的に示される、上記封止ピン34の最下位置または伸長位置において、上記封止ピン34は、上記封止ピン34と上記ノズル本体32との間に流体密シールを形成するように協働して、上記封止ピン34の遠位端62にあるニップル52が上記流出口42の中に延びるように配置される。上記流出口42のすぐ近隣に、弁座48を規定する内側円錐台形表面を上記主ボア38が備える。この表面は、円錐台形状に設けられることが好ましい一方で、上記封止ピン34の対応する封止表面50と係合して弁座として動作可能な限り、他の形を有していてもよい。図示された実施形態の上記ノズル12において、上記ニップル52に隣接する上記封止ピン34の上記封止表面50は、対応する形をした外側円錐台形表面により規定される。上記封止ピン34の上記封止表面50は、上記封止ピン34が伸長されると、上記主ボア38の上記弁座48に封止係合する。上記ニップル52と上記流出口42を規定する表面との表面同士の係合を伴うこの封止係合は、上記主ボア38と上記予備成形物24の内部との間の流体連通を封止する。
【0057】
また、ボアが上記封止ピン34を通って規定され、以下で中心ボア56と呼ぶ。上記中心ボア56は、上記出口孔60が上記封止ピン34の遠位端54の上記ニップル52内に設けられた状態で、入口孔58から出口孔60へ延びる。そのため、上記中心ボア56の上記出口孔60は、上記主ボア38の上記流出口42と同軸上にあるか、上記主ボア38の上記流出口42内の中心に配置される。そして、上記中心ボア56の上記出口孔60の直径は、上記主ボア38の上記流出口42の直径よりも小さい。
【0058】
上記主ボア38と同様に、上記中心ボア56も上記容器25を形成して充填するために用いられる上記成形媒体の供給源44に接続される。加圧された成形媒体の上記封止ピン34への供給はバルブ64または他の機構により制御される。
【0059】
上記ノズル12の動作の第1段階において、上記封止ピン34は、上記封止表面50が上記弁座48と係合するように上記アクチュエータ36により延伸された。これにより上記予備成形物24の内部から上記主ボア38が封止される。上記バルブ構成要素50と上記弁座48との間の係合の機能は、上記主ボア38から成形媒体が流れないようにすることである。しかし、この第1段階において、上記中心ボア56に関係する上記バルブ64が開かれ、上記成形媒体の加圧された流れ66が上記出口孔60から外に噴出されるように上記中心ボア56の中に供給される。上記出口孔60からの上記成形媒体の噴出は、上記予備成形物24の中で、液体の流れ、すなわち、液体ベクトル68を規定するように行われる。図1Bから分かるように、具体的には、指定の強度および大きさを有する上記液体ベクトル68が、高速、かつ、上記予備成形物24の延伸を開始するのに十分な力で上記予備成形物24の閉端28に作用するように向けられる。上記延伸の開始に必要な具体的な速度および力は、上記予備成形物24の設計および他の要素を含む様々な設計基準に依存する。上記液体ベクトル68の直径は約1mmから20mmであることが好ましく、1mmから6mmであることがさらに好ましい。さらに、上記液体ベクトル68の温度は、上記予備成形物24を凝固させない、または、過度に冷やしすぎないものでなければならない。むしろ、上記液体ベクトル68の温度は、適切な初期の軸方向の延伸、後続の放射状膨張そしてさらに必要とされる軸方向の延伸を可能にする必要がある。そのため、上記液体ベクトル68の温度は、約10℃から90℃の範囲にあることが好ましい。また、上記液体ベクトル68の温度は、上記予備成形物24をこの予備成形物のガラス転移点より下に冷やして、これにより、上記ノズル12およびシステム10の動作の第2段階の間における上記容器を効果的かつ十分に形成する能力を妥協することがないように、上記予備成形物24を放射状に膨張させるのに用いられる後続の流れ(第2段階の流れ)の温度よりも高いことが好ましい。この点について、上記成形媒体の流れ66は、上記封止ピン34の上記中心ボア56に入る前または上記中心ボア56自体の中にある間に、上記供給源44の温度よりも高い温度に加熱されてもよい。このような加熱は、上記封止ピン34の中や上記中心ボア56の少なくとも一部の付近に加熱素子(図示せず)を設けることにより達成され得る。
【0060】
上に示唆するように、上記ノズル12の動作の第1段階の間に上記予備成形物24が一部延伸される(図1B参照、図1Bにおいては上記予備成形物24の閉端28が上記型穴20の底面18からは離れている)。または、上記予備成形物24は、完全に延伸されてもよい(上記予備成形物24の閉端28が上記型穴20の底面18に接触する(図示せず))。また、この動作の第1段階の間に行われる延伸の程度は、上記予備成形物24、上記容器25および他の工程要因の具体的な設計に依存する。
【0061】
上記予備成形物24の初期の延伸が所望の程度まで行われた時点で、上記封止ピン34は、上記ノズル本体32の中に引っ込められる。これにより、上記弁座48から上記封止表面50を離れさせ、上記ノズル流出口42から上記ニップル52を引き戻す。こうすることにより、上記主ボア38が、上記流出口42を介して上記予備成形物24の内部と流体連通する。これが、上記ノズル12の動作の第2段階であり、概略的に図1Cに示される。
【0062】
上記封止ピン34が引っ込められるにつれて、または、引っ込められる前に、上記主ボア38に接続された上記バルブ46(そのように設けられている場合)が開き、加圧された成形媒体’が上記主ボア38を通って流される。様々な封止面が離された状態で、上記成形媒体は上記ノズル流出口42から出て上記予備成形物24の中へ入るように向けられる。上記ノズル流出口42を開くことで、上記液体ベクトル68のみによる注入時と比べて、上記成形媒体がより大きな流量(時間単位当たりの成形媒体の量)に定められて、上記予備成形物24の中へ注入される。従って、(第2段階の間の)第2流量は(第1段階の間の)第1流量よりも多いが、第2流量の速度(第2速度)は第1流量の速度(第1速度)よりも遅い。上記主ボア38からの流れ66’は、上記中心ボア56からの流れ66に対して補助的または追加的なものであることが好ましい。しかし、上記2つの流れ66、66’は、上記第2段階の間の上記主ボア38からの流れ66’の開始時に停止される上記中心ボア56からの流れ66に続いて起こるものであってもよい。
【0063】
図1Cにおける66”で示される成形媒体の合成した流れは、上記型穴20を規定する上記表面18に完全に一致するように、上記予備成形物24を軸方向に放射状に膨張させるように作用する。これにより、上記容器25が、上記容器25の中に入れて流通される商品または最終製品である上記成形媒体で形成され、充填される。
ベクトルロッド
図2Aから図2Cを参照にすると、図1Aから図1Cに示された上記システム10を変形したものが図2Aから図2Cに示されている。上記システム10’は、ロッドを含むこと、より具体的には、本明細書においてベクトルロッド70とも称される中空ロッドおよび関連部品を備えることを除いて、先の図面に示された上記システム10と同じである。従って、これらの共通構成は図2Aから図2Cにおいて繰り返し説明は行わない。これらの構成の完全な記載については、先行する本文が参照される。また、図2Aから図2Cには、先の図面において示された様々なアクチュエータおよびバルブは示されないが、上述のアクチュエータおよびバルブは個別または集合的に図2に適用されているものと理解される。
【0064】
簡潔に上述したように、上記システム10’は、上記封止ピン34の一部として軸方向に移動可能なベクトルロッド70を備える。さらに具体的には、上記ベクトルロッド70は、上記封止ピン34の上記中心ボア56の中に配置される。上記ベクトルロッド70が上記中心ボア56に配置された状態で、上記成形媒体は上記中心ボア56を直接通って流れることができない。この原因としては、上記ベクトルロッド70が上記成形媒体供給源44に接続され、上記成形媒体は、上記中心ボア56を直接経由せずに、上記ベクトルロッド70の内部ボア72を経由して供給されるためである。
【0065】
図2Bで示される上記ノズル12の上記動作の第1段階の間、上記液体ベクトル68が上記ベクトルロッド70の遠位端における排出孔74から噴出される際に、上記ベクトルロッド70はアクチュエータ74により延ばされて、上記液体ベクトル68は上記予備成形物24の閉端28に衝突するように向けられる。これにより、上記液体ベクトル68の力を介して延伸が開始される。従来の伸縮ロッドとは相反して、上記予備成形物24の閉端28または他の部分にベクトルロッド70が実際に接触することはない。正確にいえば、上記ベクトルロッド70の遠位端は常に上記予備成形物24の閉端28からは離れている。
【0066】
上記予備成形物24の延伸が完了した時点で、上記ベクトルロッド70は上記封止ピン34の上記中心ボア56の中へ引き戻される。上記中心ボア56の中への上記ベクトルロッド70の引き戻しは、上記ノズル12の上記第2段階の開始の前に行われることが好ましい。すなわち、ベクトルロッド70は、上記封止ピン34の引込みおよび上記バルブ構成要素50と弁座48との分離の前に上記封止ピン34の上記中心ボア56の中に引き戻される。このように引戻されて、上記ベクトルロッド70は、上記ノズル本体32の上記流出口42から上記成形媒体を流す前に上記封止ピン34の中に含まれる。上記主ボア38からの上記第2段階の流れの導入前に上記ベクトルロッド70を完全に引っ込めることにより、上記ベクトルロッド70の外側と上記成形媒体との接触が最小限に抑えられる。
【0067】
上記ノズル12の上記第2段階の開始の前に引っ込められる上記ベクトルロッド70に関して説明するが、上記ベクトルロッド70のこの引込みは随意的に行われ、上記ベクトルロッド70が延ばされたまま上記第2段階を開始してもよい。
【0068】
上記動作の第2段階の間に上記ベクトルロッド70が延びたままである場合であっても、上記ベクトルロッド70は、上記ベクトルロッド70が完全に伸びた位置に残らない。正確に言えば、上記ベクトルロッド70は、上記容器25の中で上記成形媒体の最終的な充填高さを設定する際に補助する位置へ部分的に引っ込められる。上記動作の第2段階の間ずっと上記ベクトルロッド70が完全に伸びたまま残っているものとしたら、上記ベクトルロッド70の引き戻しの際に、上記成形媒体の高さが上記ベクトルロッド70により置き換えられる上記成形媒体の量に対応する量の分だけ下がってしまう。上記ベクトルロッド70が完全に延びた状態では、結果として生じる上記充填高さの低下により、上記成形媒体の最終充填高さが容器全体に対する望ましい高さより低くなる。上記ベクトルロッド70による過度な置換を防ぐために、上記動作の第2段階の間、上記ベクトルロッド70は、完全に延びた位置から部分的に引っ込められる。上記ベクトルロッド70がこのように引っ込められた状態で上記成形媒体の充填高さが所定の高さに達する場合、上記封止ピン34は上記主ボア38を封止するように前進し、上記ベクトルロッド70を経由する成形媒体の流れを全て停止する。その結果、さらなる成形媒体が上記容器25に投入されることが防止される。上記所定の高さは、上記ベクトルロッド70により引き起こされる成形媒体の置換部分を含む充填高さである。その後、上記ベクトルロッド70が上記成形媒体から引き戻され、上記封止ピン34に戻される。上記ベクトルロッド70の引き戻しにより、上記成形媒体の充填高さが置換された所定の高さから上記容器25の所望の最終的な充填高さまで下がる。
【0069】
その後、上記形成されて充填された容器25は、型アセンブリ14から取り出されて蓋をされる。
封止ピンを通る流れとプラグロッド
上記封止ピンの代替的構造が図3Aから図3Cに示される。この実施形態の上記封止ピンは34’と示され、上記封止ピン34’の弁調整(valving)と上記成形媒体がどのように上記中心ボア56に供給され、上記中心ボア56を通過するかに関して異なる。図3Aから図3Cの実施形態の構造および動作の他の全ての態様は、図1Aから図1Cおよび図2Aから図2Cに関連して示され記載されたものと同じである。したがって、先の実施形態と共通するいくつかの構成要素が図3Aから図3Cに示され、同一の符号で示される。明確性および利便性の目的で他の構成要素は省略されるが、他の構成要素は、完全に示されてそれについて記載されているかのように、図3Aから図3Cにも適用されるものとして理解される。
【0070】
図3Aから図3Cから分かるように、上記封止ピン34’は中心ボア56を含む。この中心ボア56の中を通って上記成形媒体が流れ、上記中心ボア56の出口孔60から噴出される。しかし、先の実施形態とは異なり、バルブ、すなわちプラグロッド76が上記中心ボア56の中に配置され、伸長位置と引込み位置との間で軸方向に移動可能である。上記伸長位置において、上記プラグロッド76は、上記中心ボア56を塞いで成形媒体が上記封止ピン34’を通って流れるのを防ぐように動作する。上記引込み位置において、上記プラグロッド76は、上記成形媒体が上記封止ピン34’を通って流れて上記ノズル12の上記動作の第1段階の間に上記予備成形物24に注入されることを可能にするように配置される。
【0071】
上記プラグロッド76が上記中心ボア56の中央部分に配置されているので、上記成形媒体は、上記中心ボア56の全長の中心を通って流れることができない。この問題は、上記封止ピン34’の中に上記封止ピン34’の側部から上記中心ボア56へ延びる一連の側部通路を形成することにより克服される。上記側部通路78は、上記封止ピン34’の外側表面から上記中心ボア56へ向かって、概ね上記封止ピン34’の遠位端54にある上記ニップル52の方向に収束する角度で(斜めに)延びることが好ましい。あるいは、上記側部通路78は、上記中心ボア56に対して垂直に向いていてもよい。
【0072】
上記プラグロッド76の伸長位置において、上記プラグロッド76は、上記プラグロッド76の一部が上記中心ボア56を有する上記側部通路78の開口部または境界部81を超えて延びるように配置される。これにより、上記中心ボア56と上記側部通路78との間の流体連通を封鎖する。流体密シールを助けるために、Оリングのような付随封84を有する環状溝82を、上記中心ボア56の軸方向上において上記境界部81を介して互いに反対側にある位置に設けてもよい。上記プラグロッド76の終端86が上記ニップル52に最も近い上記封84と係合することができる距離だけ延びればよい一方で、上記プラグロッド76は、その終端86が上記ニップル52と連続するか、または上記ニップル52から少し突き出るような距離延びてもよい。このような上記終端86の配置は、上記出口孔60に隣接する上記中心ボア56において残留する成形材料66の量を制限する。図3Aに上記プラグロッド76の伸長位置を示す。
【0073】
また、上記側部通路78が上記封止ピン34’の遠位端54におおむね向けて配置されることが好ましい。上記封止ピン34’の遠位端54に向けて上記側部通路78を配置することにより、上記プラグロッド76の伸長位置(上記中心ボア56を封鎖)と引込み位置(上記中心ボア56を開放)との間で上記プラグロッド76の必要な動作を最低限に抑えることができる。
【0074】
上記プラグロッド76の引込み位置において、上記プラグロッド76は、アクチュエータ88によって、上記プラグロッド76が上記側部通路78の上記境界部81を超えて引き戻される位置に上記中心ボア56の中を移動し、上記境界部81に対する覆いを外して、上記通路78と上記中心ボア56との間の流体連通を可能にする。図3Bに示されるように、上記プラグロッド76は上記プラグロッド76の終端86が上記境界部81を完全にまたは部分的に塞がないように引き戻される。これにより、上記側部通路78と上記中心ボア56との間の遮るものがない連通を可能にする。
【0075】
上記システム10の動作の間、加熱した予備成形物24が上記型アセンブリ14の中に配置された後に、上記ノズル12が上記ノズル12のアクチュエータ30により上記予備成形物24の栓部22の封止面または上面に対して封をするように移動される。この初期位置において、上記封止ピン34’の上記封止表面50は上記ノズル本体32の上記弁座48と係合し、上記ニップル52は流出口42内に配置される。これにより、上記主ボア38が封止され、上記中心ボア56を通る成形媒体の流れを防止する。
【0076】
上記ノズル12の第1の動作段階を開始するために、上記プラグロッド76は、上記引込み位置へ上記プラグロッド76に対応するアクチュエータ88により移動される。上記プラグロッド76が上記中心ボア56と側部通路78の上記境界部81を超えて引っ込められると、上記中心ボア56は上記主ボア38と流体連通する。そして、成形媒体が上記出口孔60を経由して上記予備成形物24に注入された場合に、成形媒体が上記主ボア38から上記側部ボア78を経由して上記中心ボア56の中へ流れる。先の実施形態と同様に、上記成形媒体は、上記ノズル12の動作の第1段階の間に上記予備成形物24の延伸を開始するのに十分な力で、液体ベクトル68の形で上記予備成形物24の閉端28に向かって上記出口孔60から噴出される。
【0077】
上記予備成形物24が軸方向に十分延伸された時点で、上記ノズル12の第2の動作段階が開始される。この動作の第2段階は、上記封止ピン34’を引っ込めて上記弁座48から上記封止表面50を分離することから始まる。それから、成形媒体が上記封止ピン34’の周りを流れ、上記流出口42を通過して上記延伸された予備成形物24の中へ流れ込む。上記プラグロッド76をその引き戻し位置に維持し、これにより、上記動作の第2段階の間に、上記成形媒体が上記側部通路78と上記中心ボア56とをも通って流れることができるようにしてもよい。あるいは、上記プラグロッド76は、成形媒体の全ての流れを上記封止ピン34’の周りに行かせるように伸長してもよい。
【0078】
先の実施形態と同様に、上記動作の第2段階の間の流れは、上記第1段階の間の上記液体ベクトル68のみの流量よりも多い。上記第2段階の流れにおいて増加した流量は、放射状膨張を引き起こし、さらには、上記型穴20を規定する上記表面18に一致するように上記予備成形物24を軸方向に延伸させる(必要な場合)。これにより、図3Cに示される上記容器25が形成される。
【0079】
上記容器25が完全に形成されて充填された時点で、上記プラグロッド76が上記側部通路78と上記中心ボア56との間の上記境界部81を再度封鎖するまで、上記プラグロッド76は上記中心ボア56の中を前進する(前進が完了していない場合)。通常同時に、上記封止表面50が上記ノズル本体32の上記弁座48と係合して、上記主ボア38を封止するように、上記封止ピン34が伸長される。
【0080】
必要に応じて、上記主ボア38を封止する前に、上記プラグロッド76が上記中心ボア56の上記側部通路78を封鎖するだけでなく、上記ノズル12の先端を超えて上記成形媒体の上記容器25の中へ伸長もしてもよい。上記プラグロッド76は、上記成形媒体の中へ伸長して、対応する量の上記成形媒体を置き換えるのに用いてもよい。これにより、上述のように、上記容器25における上記成形媒体の最終高さを規定するのを助けてもよい。
【0081】
その後、上記形成されて充填された容器25は、上記型アセンブリ14から取り出されて蓋をされる。
センタリングロッド
上記予備成形物24の延伸および上記容器25の形成を容易にするために、本明細書に記載される上記実施形態のそれぞれはセンタリングロッドを用いてもよい。センタリングロッド92は、図4Aから図4Cに関連して説明される。
【0082】
図4Aから図4Cに示されるように、上記センタリングロッド92は、通常半型16同士の間で型14を通って上方へ伸長し、端または接触端94が上記予備成形物24の閉端28に係合するように配置される。上記接触端94は、上記予備成形物24の上記閉端20の形状と一致する端面の形状を有していてもよい。本例においては、上記接触端94の上記端面が、凹面またはくぼんだ形状を有している。さらに、上記接触端94の上記凹面形状は、その中に中央凹部を備え、上記予備成形物24を初めに成形する際に用いられるゲートの跡を受けるように設計されていてもよい。
【0083】
図4Aに示されるように、上記伸長したセンタリングロッド92は、上記液体ベクトル68による上記予備成形物24の初期延伸の前に上記予備成形物24の閉端28と係合する。上記液体ベクトル68が開始された後、上記センタリングロッド92は、通常、上記予備成形物24が延伸される速さで引っ込められる。上記センタリングロッド92の引込みは上記予備成形物24の延伸に直接応じてもよい。すなわち、上記センタリングロッド92は、延伸する予備成形物24による作用を受けて引っ込められてもよい。あるいは、上記センタリングロッド92の上記引込みが、上記センタリングロッド92を上記予備成形物24と係合するように初めに伸長させるのに用いられる上記アクチュエータ96によって制御されていてもよい。後者の例の場合、上記センタリングロッド92の引込みの制御には、上記接触端94またはセンタリングロッド92に上記液体ベクトル68により与えられる圧力を測定するセンサ98を用いるフィードバックループを利用してもよい。上記フィードバックループの使用により、上記予備成形物24を延伸する速さが、所望の一定速度に保たれ得る、または制御され得る。
整流および流れ調整
上述の液体ベクトル68がしっかりと整形された指向性のある流れで形成されることを確実にするため、上記出口孔60は、噴射角度99を規定する終端部を有する。これは、図5に概略的に示される。図5では、上記噴射角度99の大きさは明確性の目的で誇張されている。全図面に示されるように、上記中心ボア56は、この中心ボア56の全長にわたって一定の内径を有する。一方で、上記噴射角度99に規定される直径は、上記中心ボア56の直径と同じまたはそれよりも大きい。上記噴射角度は、5°未満であることが好ましく、上記中心ボア56と同じであり、その結果0°に等しい、または、およそ0°であることがより好ましい。
【0084】
さらに、上記中心ボア56を通る上記成形材料66の流れの性質は、層流であり、乱流ではないことが好ましいことが分かっている。経路において層流を実現することは、経路の直径の少なくとも8倍から12倍の距離のまっすぐな流れの経路を設けることで達成され得る。しかし、これは、上記封止ピン34に関連付けられるサイズおよび/または空間の制約により本明細書に記載されるノズルでは通常実現できない。
【0085】
上記出口孔60から成形媒体を放出する前に成形媒体の流れにおける層流を実現し、乱流を低減するために、流れ調整器すなわち整流器100が上記中心ボア56の内部に設けられる。これは、図5Aおよび図5Bに概略的に示される。上記流れ調整器100が用いられる場合、上記流れ調整器100は、上記中心ボア56における最後の曲げ部分すなわち屈曲部の先に、そして、通常上記出口孔60の前に配置される。上記流れ調整器100は、上記出口孔60よりも最後の曲げ部分すなわち屈曲部により接近して配置されることが好ましい。
【0086】
様々な流れ調整器100が、図6Aから図6Eに示される。図6Aから図6Eに示されるように、上記流れ調整器100は、上記中心ボア56の中にネジ止め可能に設けられる挿入部102として設けられ得る。また、この挿入部102は、中心ハブ106から広がり、間に流路107が設けられた、1連の互いに接続された放射状に延びる羽根104を備える。あるいは、上記挿入部は、軸方向に中を通って延びる通路110のアレイを有するバッフル板107の形で設けられてもよい。上記通路110は、上記中心ボア56の断面領域に対応する上記バッフル板107の全領域にわたって設けられ、上記バッフル108の厚さに対応する長さを有することが好ましい。あるいは、上記通路110が上記通路110の各々と対応するまっすぐな導管または管類の形の延長部112を設けて上記バッフル108の厚さを超えて伸長していてもよい。
【0087】
本発明の記載で、上記最終製品、つまり、上記成形媒体が、酸素にあまりさらされず、酸素との負の反応を起こしにくいことが分かる。さらに、より小さな直径を有する第1の流れを供給することにより、上記第1の流れが、より軸方向のものとなり、より強い指向性を有する。これにより、より幅広く、指向性の弱い流れの場合と比較して、軸方向の延伸の開始をより良好に促す。実施形態のうちのいくつかにおいて、一旦上記成形媒体が上記ノズルから分配されると、上記成形媒体とノズルとの更なる接触は発生しない。これにより、成形システムにおける汚染の可能性が低減される。
【0088】
当業者には容易に理解される通り、上記記載は本発明の原理の実施の説明を意味する。以下の請求項に規定されるような本発明の精神から離れない限り、本発明の変形、変化、および変更が許容される点において、本記載が本発明の範囲および適用を制限することは意図していない。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E