(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190064
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】複合成形体の製造方法、複合成形体、サンドイッチコンポーネント、ロータブレードエレメントおよび風力発電装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/10 20060101AFI20170821BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20170821BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20170821BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20170821BHJP
B29L 31/08 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
B29C70/10
F03D1/06 B
B29C70/06
B29K105:08
B29L31:08
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-532284(P2016-532284)
(86)(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公表番号】特表2016-527112(P2016-527112A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014064955
(87)【国際公開番号】WO2015018598
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】102013215384.8
(32)【優先日】2013年8月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、アレクサンダー
【審査官】
内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−507329(JP,A)
【文献】
特開平02−165930(JP,A)
【文献】
特開2012−071805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C70/00−70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プラスチックと繊維複合半製品とを有する複合成形体の製造方法であって、当該方法は、
・熱可塑性プラスチックと、フレキシブルな編物形状の繊維システムを備える繊維複合半製品とを提供する工程と、
・熱可塑性プラスチックを形状付与コア材料として、前記繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内で分散し、当該編物形状の繊維システムと結合する工程と、を有しており、ここで
・前記フレキシブルな編物形状の繊維システムは、前記形状付与コア材料との複合物中に、互いに配向されて交差する繊維を有しており、
・当該繊維は、交差点において10゜から90゜の間の繊維角を有し、
・前記複合物中の前記編物形状の繊維システムは、複合成形体の外側機能層を形成し、
・前記熱可塑性プラスチックをストランドとして提供し、
・前記フレキシブルな編物形状の繊維システムを、チューブ状の編物形状の繊維システムとして提供し、
・前記熱可塑性プラスチックを柔らかいストランドとして編物形状の繊維システムのチューブに導入することにより、前記熱可塑性プラスチックを形状付与コア材料として、繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散させ、そして
・前記柔らかいストランドの硬化の下で、編物形状の繊維システムとの複合物を複合成形体の外側機能層として形成する、製造方法。
【請求項2】
前記ストランドは、押出機から押し出される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性プラスチックは、繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散され、該フレキシブルな編物形状の繊維システムの材料に結合される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性プラスチックは、繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散され、該フレキシブルな編物形状の繊維システムの形状に結合される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
付加的な繊維を、編物形状の繊維システムおよび/または熱可塑性プラスチックに導入し、複合成形体の強度を、付加的な繊維を備えない複合成形体よりも高める、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記付加的な繊維は、前記繊維角とは無関係に導入される、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法により製造される、熱可塑性プラスチックと繊維複合半製品とを有する複合成形体であって、
・前記繊維複合半製品は、フレキシブルな編物形状の繊維システムを有しており、
・前記熱可塑性プラスチックは形状付与コア材料として、前記繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散されており、該編物形状の繊維システムと結合されており、ここで
・前記編物形状の繊維システムは、形状付与コア材料との複合物中に、交差して互いに配向された繊維を有しており、
・当該繊維は、交差点において10゜から90゜の間の繊維角を有し、
・前記複合物中の前記編物形状の繊維システムは、複合成形体の外側機能層を形成している、ことを特徴とする複合成形体。
【請求項8】
前記繊維は、±5゜の変動範囲を有する45゜の繊維角で互いに配向されている、ことを特徴とする請求項7に記載の複合成形体。
【請求項9】
前記編物形状の繊維システムは、編物工作物、ニット、ワープニット、織物から成る群から選択された繊維システムである、ことを特徴とする請求項7または8に記載の複合成形体。
【請求項10】
前記熱可塑性プラスチックはストランドとして存在し、前記フレキシブルな編物形状の繊維システムはチューブ状の編物形状の繊維システムとして存在する、ことを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の複合成形体。
【請求項11】
前記編物形状の繊維システムは、2次元に配向された編物構造を備えるチューブの形状を有する、ことを特徴とする請求項10に記載の複合成形体。
【請求項12】
前記編物形状の繊維システムは、3次元の編物構造を備えるチューブの形状を有し、付加的な繊維が複合物の内部で、10゜から90゜の間の繊維角で機能的に互いに配向されている、ことを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の複合成形体。
【請求項13】
前記熱可塑性プラスチックは、内部で機能的に配向された付加的な繊維によって補強されている、ことを特徴とする請求項7から12のいずれか一項に記載の複合成形体。
【請求項14】
前記フレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散された熱可塑性プラスチックは、アクリロニトリル−ブタジエン−スチロール、ポリアミド、ポリアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリスチロール、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリ塩化ビニルの群の少なくとも1つの構成成分を有する、ことを特徴とする請求項7から13のいずれか一項に記載の複合成形体。
【請求項15】
前記フレキシブルな編物形状の繊維システムは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維、金属糸、モノフィラメントおよび熱可塑性糸を含む編物コンポーネントの群から選択された編物コンポーネントを有する、ことを特徴とする請求項7から14のいずれか一項に記載の複合成形体。
【請求項16】
コアコンポーネントを形成するために請求項7から15のいずれか一項に記載の複合成形体を複数使用したサンドイッチコンポーネントであって、
前記コアコンポーネントは、少なくとも1つの被覆層により少なくとも片側が覆われている、ことを特徴とするサンドイッチコンポーネント。
【請求項17】
コアコンポーネントを形成するために請求項7から15のいずれか一項に記載の複合成形体を複数使用したロータブレードのためのロータブレードエレメントであって、
前記コアコンポーネントは、少なくとも1つのロータブレード被覆層によって取り囲まれており、ロータブレードエレメントは、請求項16に記載のサンドイッチコンポーネントを有する、ことを特徴とするロータブレードエレメント。
【請求項18】
タワー、ナセル、およびロータハブと複数のロータブレードを備えるロータを有する風力発電装置であって、
前記ロータブレードは請求項17に記載のロータブレードエレメントを少なくとも1つ有し、および/またはタワー、ナセルおよび/またはロータハブは、請求項7から15のいずれか一項に記載の複合成形体をコアコンポーネントの形成のために複数有するか、または請求項16に記載のサンドイッチコンポーネントを有する、風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
とりわけ風力発電装置用の請求項1の上位概念による複合
成形体の製造方法は、熱可塑性プラスチックと繊維複合半製品とを有する。本発明はさらに、複合
成形体、サンドイッチコンポーネント、ロータブレードエレメントおよび風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合
成形体は、互いに接続された2つ以上の材料から作製される
成形体であり、これは固定的な幾何学的外寸を有する本体として作製されている。複合物に現れる材料は通常、特にその使用分野に関して有利に結び付いた機能的特性を有している。得られた材料の特性に関しては、材料特性および場合により個々のコンポーネントの幾何学的特性も重要である。これは種々のコンポーネントの特性を互いに結び付けることを可能にし、これにより複合材料は広い適用可能性を獲得する。最終製品に対して必要な特性は、コンポーネントに対する種々の出発材料を必要に応じて選択することにより調整することができる。
【0003】
複合コンポーネントは通常、負荷作用の下で複合
成形体の最適の挙動を示す特性を有する。この特性は、例えばある程度の強度、剛性または延伸性に関して割り当てることができる。複合
成形体は、負荷作用の下で、複合物の個別のコンポーネントよりも最適化された複合物の挙動を示すことが望まれる。複合
成形体の開発は、基本的に長期間の負荷に耐えられるよう、所要の特性を耐用年数のために組み合わせて最適化するように行われる。とりわけ風力発電装置のロータブレードおよび他の部分(複数)には、強くて大きく変化する負荷作用が及ぼされ、この負荷作用はさらに風力発電装置の部材が大きくなると共に同様に増大する。とりわけロータブレードは、静的負荷にも動的に発生する負荷にも耐えることが望まれる。
【0004】
したがって風力発電装置のロータブレードは、現在もっぱら繊維複合材料から作製されており、この繊維複合材料では強化繊維が、通常はマットとしてマトリクスに、通常はガラス繊維強化プラスチックに埋め込まれている。ロータブレードは、通常、ハーフシェルサンドイッチ構造で製作される。質量の増大と共に、例えば炭素繊維強化プラスチックも使用される。ここで要求される特性は、1つには比較的大きな構造的強度での小さな重量、並びに種々の硬度および負荷作用に指向された引張強度である。ガラス繊維強化ないし炭素繊維強化材料は、いずれの場合でも基本的に上記の観点でバルサ木材のこれまでの使用に対し、それらの最適の強度の点で取って替わることができる。
【0005】
繊維強化コンポーネントまたは複合コンポーネントは、ラミネート材料に分散された繊維を有しており、ここで繊維は、繊維複合材料の高品質特性を達成するために少なくとも1つの所定の方向に配向されている。基本的にいずれの場合でも、材料において3つの作用フェーズを区別することができる。すなわち、非常に引張強度の強い繊維、いずれの場合でも最初は比較的柔らかい埋め込まれたマトリクス、そして2つのコンポーネントを結合する境界層である。繊維は、典型的にはガラス、炭素、セラミック、アラミド、ナイロン繊維、コンクリート繊維、天然繊維またはスチール繊維とすることができる。埋め込まれたマトリクス自体は、通常はポリマーであり、材料固有の曲げ剛性を有する。この埋め込まれたマトリクスは繊維をその位置に保持し、それらの間で応力を伝達し、繊維を外部の機械的および化学的影響から保護する。境界層は、2つのコンポーネントの間の応力伝達に用いられる。繊維強化複合コンポーネントで問題なのは、コンポーネントの負荷領域におけるそれぞれの繊維の場合による裂け目形成である。この裂け目は、動的な機械的負荷が高まることにより、とりわけ曲げモーメントのため発生し得る。
【0006】
しかしそれぞれ所定の数の繊維をラミネート材料またはマトリクス材料に有する繊維強化コンポーネントまたは複合コンポーネントは、それぞれのコンポーネントの機械的能力を格段に改善する。剪断剛性、曲げ剛性、および所定の方向での繊維の分布密度のような材料固有の特性については、それぞれのコンポーネントの機械的保護特性を、詳細に目的どおりに、とりわけそれぞれ複合物の引張強度に関連して調整することができる。繊維複合材料を寸法設定するためのファクタは、繊維とマトリクスとの質量比である。繊維の割合が高ければ高いほど、複合材料はより硬くなるが、しかしより脆性になる。引張強度の他に、複合材料が圧縮負荷される場合には、剪断剛性および曲げ剛性も重要である。さらにとりわけ、コアと1つまたは2つの被覆層とを備えるいわゆるサンドイッチ状の複合構造により、ここではT型支持体(T-Traeger)の原理にしたがい、複合物の高い機械的剛性を達成できることが基本的に公知である。ここでは、適度に剪断剛性のあるコアと比較的曲げ剛性のある少なくとも1つの被覆層が用いられ、それにもかかわらず複合材料を軽量構造で実現することができる。
【0007】
風力発電装置のロータブレードは通常、主にガラスおよび/または炭素繊維が樹脂状のラミネートマトリクスに配置された繊維強化コンポーネントから製作されている。このような繊維または他の繊維をロータブレードの長手軸にまたは長手軸に沿って配向することができるが、繊維の正確な配向は通常、コントロールするのが困難である。しかし基本的にロータブレードは、稼働中に発生する遠心力ないし重力に関して最適化することができる。繊維の配向は、実際には製造工程に依存して影響を受け得る。ここではどの形式の繊維半製品を使用するかが重要であり得る。この繊維半製品は、織物(Gewebe)、層状ウェブ(Gelege)、マット、ロービング(Rovings)を含むことができるが、さらに充填材料、粒子(Stuecke)、針状部または顔料も含むことができる。繊維複合コンポーネントの製造方法は多種多様である。現在、ハンドレイ法(Handlegeverfahren)、プレプレグ技術、真空注入法、ファイバラッピング法(Faserwickelverfahren)、射出成形部材、繊維射出法(Faserspritzen)、射出プレス成形部材(Spritzpressteile)、引抜成形部材(Strangziehteile)およびシート成形コンパウンド(CMC)も含む方法が公知である。例えば射出成形部材は安価な射出成形法で作製され、この方法では典型的にガラス繊維が使用される。
【0008】
特許文献1には、繊維複合構造のロータブレードの製造方法が記載されており、ここではロータブレードの外側輪郭を形成するシェルが作製され、所定の長さの繊維ストランド(Faserstraengen)から支持構造体が作製され、この支持構造体が硬化性の複合材料により相応に浸漬され、この支持構造体がシェルに搬送される。
【0009】
特許文献2は、一体型繊維強化ロータブレードを、結合された内部および外部繊維強化シェルから作製する方法を紹介する。内側ケーシング(内部シェル)は、別個に形成された管状の半部分を接続することにより作製される。外部シェルは、内部シェルの外側に好ましくは繊維強化エポキシ樹脂材料の巻線を多数巻回することにより形成される。
【0010】
連続繊維ストランド(ロービング)を少なくとも近似的に円筒形の形状物に施与する技術としてのファイバラッピング法(Faserwickelverfahren)は、繊維の高精度な位置決めおよび配向を保証し、この形状物はさらなる方法工程を介して浸漬され、硬化される。繊維を巻回するためにコンポーネントの本体は、繊維複合材料の後の形状を有する。繊維巻回においては付加的にさらに、使い捨てコアと再使用可能コアとが区別され、使い捨てコアは構造の機能的コンポーネントとすることができる。
【0011】
特許文献3には、作製すべき繊維強化構造物のネガティブ像と同じように、形状物表面に繊維材料を施与する方法が紹介されている。ここでは繊維材料の束が、低い圧力の印加により繊維強化構造物の準備が行われるように表面に施与され配向される。
【0012】
高性能複合構造物では、繊維予備成形物が樹脂と共に射出され、負荷に適した安価な繊維予備成形物(いわゆるプリフォーム)が連続繊維強化複合コンポーネントのために作製される。これらのプリフォームは、負荷に適した繊維配向、負荷に適した局所的繊維集積物(Faseranhauufungen)、および外側輪郭を勘案して「仕立て」られる。そのようにして作製された予備成形物は、従来の製造工程により、いわゆるオートクレーブ・プレプレグ工法(Autoklav-Prepreg-Bauweise)でコンポーネントに加工処理することができる。
【0013】
ドイツ商標特許庁は、優先権出願において以下の従来技術を調査した:DE 43 00 208 A1 , DE 103 36 461 A1 , DE 10 2012 201 262 A1 , EP 0 402 309 A1 , EP 0 697 275 A2, EP 0 697 280 A1 , EP 1 992 472 A1 および WO 94/19176 A1。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】DE 103 36 461
【特許文献2】US 4,242, 160
【特許文献3】US 2012/0261864
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここにおいて本発明の課題は、複合
成形体を製造するための改善された方法、複合
成形体およびサンドイッチコンポーネント、ロータブレードエレメント、並びに従来技術に対して改善されており、前記課題の少なくとも1つに対処する風力発電装置を提供することである。少なくとも従来技術で既知の解決策に対して代わりとなる解決策を提案することが望まれる。とりわけ製造方法に関しては、複合
成形体を製造するために簡単でコントロール可能な可能性を提供することが望まれる。とりわけ静的および動的負荷に関して、複合
成形体の少なくとも1つの最適な特性を提示することが望まれる。とりわけ配向され、相応に指向された繊維による製造方法および複合
成形体は、損傷性の力に対して改善されたやり方で対抗作用することが望まれる。さらに製造方法および複合
成形体ないしサンドイッチコンポーネント、ロータブレードエレメントおよび風力発電装置は、プロセス技術的および/または材料特性的に改善された機能を可能にする最適の層システムを使用することが望まれる。とりわけ複合
成形体および方法は、好ましくは曲げ耐性も剪断剛性も向上させて、負荷作用に対抗するよう指向された長期間の剛性および/または強度を可能にすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
製造方法に関するこの課題は、本発明により請求項1の方法によって解決される。
【0017】
本発明は、熱可塑性プラスチックおよび繊維複合半製品を有する、とりわけ風力発電装置用の複合
成形体の製造方法から出発し、当該方法は本発明によれば:
・熱可塑性プラスチックと、フレキシブルな編物形状の繊維システム(flechtgebildeartigen Fasersystem)を有する繊維複合半製品とを提供する工程と、
・熱可塑性プラスチックを形状付与コア材料(formgebendes Kernmaterial)として、前記繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散し、当該編物形状の繊維システムと接合する工程と、を有しており、ここで
・前記フレキシブルな編物形状の繊維システムは、前記形状付与コア材料との複合物中に、互いに配向されて交差する繊維を有しており、
・当該繊維は、交差点において10゜から90゜の間、とりわけ30゜から60゜の間の繊維角を有し、好ましくは該繊維は、±5゜の変動範囲を有する45゜の繊維角で互いに配向されており、
・前記複合物中の前記編物形状の繊維システムは、複合
成形体の外側機能層を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましくは繊維は、変動範囲±5゜を有する45゜の繊維角により互いに配向されている。
【0019】
複合
成形体に関してこの課題は本発明により、請求項
7の複合
成形体によって解決される。本発明は、熱可塑性プラスチックと繊維複合半製品を有し、とりわけ前記方法にしたがい製造された、とりわけ風力発電装置用の複合
成形体から出発する。本発明によれば、
・前記繊維複合半製品は、フレキシブルな編物形状の繊維システムを有しており、
・前記熱可塑性プラスチックは形状付与コア材料として、前記繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散されており、該編物形状の繊維システムと結合されており、ここで
・前記編物形状の繊維システムは、形状付与コア材料との複合物中に、交差して互いに配向された繊維を有しており、
・当該繊維は、交差点において10゜から90゜の間、とりわけ30゜から60゜の間の繊維角を有し、好ましくは該繊維は、±5゜の変動範囲を有する45゜の繊維角により互いに配向されており、
・前記複合物中の前記編物形状の繊維システムは、複合
成形体の外側機能層を形成している。
【0020】
編物形状の繊維システムは、交差して互いに配向された繊維に関してある程度の変動性を有する任意の形式のストランドシステム(Strangsystem)として基本的に広く理解すべきである。これは好ましくは、編物工作物(Flechtwerk)または編物形状物(Flechtgebilde)であり、ここでは複数のストランドが、そのようなフレキシブルな材料を含む場合には可撓性の繊維材料から互いに織り交ぜられている。あるいはニット(Gestricke)であり、ここではそのようなフレキシブルな材料を含む場合には可撓性の繊維材料自体が互いに編み込まれている。あるいはワープニット(Gewirke)のようなメッシュを形成するスレッドシステムでも良い。さらに織物状の構造体も可能であり、ここでは複数のストランドが、さほど好ましくはないが可能性として、完全にまたは部分的に直角に、または90゜に近似して互いに案内されており、好ましくは交差点において10゜から90゜の間、好ましくは30゜から60゜の間の繊維角を有し、好ましくは繊維が±10゜の変動範囲を有する45゜の繊維角で互いに配向されている。あるいは別の所定の繊維角の場合には±5゜の変動範囲で互いに配向されている。
【0021】
したがって繊維角が、取り込むべき形状付与コア材料の大きさと形状に応じてとりわけ可変に調整され、特に自動的に可変に調整される形式のストランドシステムが好ましい。したがって可変の繊維角を有し、フレキシブルで可変に成形可能な編物形状の繊維システムが特に好ましい。ある種の繊維システムは、この特性をとりわけ良好に支援する。これは、例えばとりわけ編物工作物、ニット、ワープニットの群から選択された編物形状の繊維システムである。
【0022】
さらなる部材ないし装置に関する課題を解決するために、本発明は請求項
16のサンドイッチコンポーネント、請求項
17のロータブレードエレメントおよび請求項
18の風力発電装置を導く。
【0023】
サンドイッチコンポーネントは、コアコンポーネントを形成するために少なくとも1つ、とりわけ複数の複合
成形体を含む。コアコンポーネントは、少なくとも片側が、好ましくは両側が少なくとも1つの被覆層により覆われている。一発展形態では、サンドイッチコンポーネントのコアコンポーネントは力吸収性の被覆層により覆われており、この被覆層はコアコンポーネントのコア材料によって間隔が維持される。この発展形態により、最終的最大値を有する前記特性の組み合わせを、小さな重量を維持してサンドイッチコンポーネントに組み込むことができ、このサンドイッチコンポーネントは全体として、比較的に負荷作用が大きくても、公称値の通常は線形の増加に対して持続的に対抗作用する。とりわけサンドイッチコンポーネントは、編物形状の繊維システムにより、改善された剪断剛性および曲げ剛性を有する。この編物形状の繊維システムは、成形付与コア材料との複合物中に交差する繊維を有し、この繊維は互いに配向されており、交差点において30゜から60゜の繊維角を有し、とりわけ繊維は±5゜の変動範囲を備える45゜の繊維角で互いに配向されている。
【0024】
好ましい一発展形態でロータブレードエレメントは、少なくとも1つ、とりわけ複数の複合
成形体をコア材料として有する。この発展形態は、最適化された複合
成形体をロータブレードに、とりわけ製造工程においてロータブレードのハーフシェルに組み込む。これにより改善された耐久性(Dauerfestigkeit)、とりわけ改善された圧縮強度ないし改善された剪断剛性および曲げ剛性を達成することができる。このようにしてロータブレードは、稼働中に発生する遠心力ないし重力に関して最適化される。ここでこの複合コンポーネントを使用することにより、熱可塑性プラスチックとしての形状付与コアに基づいて、亀裂が最小になり、ないし最小の亀裂伝播が達成される。
【0025】
風力発電装置は、タワー、ナセル、およびロータハブと複数のロータブレードを備えるロータを有し、ロータブレードは本発明のコンセプトによる少なくとも1つのロータブレードエレメントを有し、および/またはタワー、ナセルおよび/またはロータハブは、本発明のコンセプトによるサンドイッチコンポーネントを有する。
【0026】
ロータブレードの寸法がますます大きくなることにより、ロータブレードの構造力学的挙動に対してもますます大きな負荷を予期すべきであるので、これに対しては本発明のコンセプトによる複合
成形体の材料固有の特徴量によって対抗作用することができる。
【0027】
基本的に本発明のコンセプトは、一般的に複合
成形体において効力を発揮するものであり、製造方法にも依存しない。しかし本発明のコンセプトによる製造方法にしたがって製造された複合
成形体は特に有利であることが証明されている。しかし基本的に、請求された製造方法とは別の製造方法も使用することができる。
【0028】
本発明は、従来技術に記載されたような繊維複合材料は負荷作用に対抗作用することができるという考察から出発する。複合コンポーネントへの高い要求ないしロータブレードのような特定の複合コンポーネントの大きな幾何的寸法は複合コンポーネントへの新規の取り組みを必要とし、ここでは資源および効率も製造方法において考慮すべきである。とりわけ形状付与コア材料との複合物における本発明の編物形状の繊維システムにより、比較的に高い曲げ剛性および剪断剛性が複合
成形体において達成される。なぜならこの複合
成形体は交差する繊維を有しており、この繊維は互いに配向され、交差点において30゜から60゜の間の繊維角を有し、好ましくは±5゜の変動範囲を有する45゜の繊維角で互いに配向されているからである。
【0029】
本発明は、本発明の複合
成形体では繊維マトリクス複合コンポーネントの形式に応じて繊維方向での強度および剛性が、繊維方向に対して横方向の場合よりも格段に大きいことが認識された。しかし引張または圧縮のような負荷の作用は面法線に対して常に垂直ではないから、繊維複合コンポーネントにおいて一方向にだけ配向された繊維の作用はより制限されることとなる。本発明は交差する繊維の機能的配向を意図し、この機能的配向はコンポーネントへの平面での力ないし負荷作用を最小化する。さらに本発明によれば、交差する繊維が互いに配向されており、交差点において30゜から60゜の間の繊維角を有し、好ましくは±5゜の変動範囲を有する45゜の繊維角で繊維が互いに配向されている。
【0030】
繊維が可変に互いに配向されていることに基づき、この配向された複合
成形体を製造する方法は技術的に簡単かつコスト的に有利に実施することができる。
【0031】
機能的配向により、負荷に指向された複合
成形体を製造することができる。この複合
成形体は、形状付与コア材料の分散方法を維持し、外側層を機能層として構成することを可能にする。この層は機能層であることを特徴とする。なぜならこの層は、繊維の機能的配向によって負荷作用に対抗するからである。交差する繊維の配向された繊維層配置により機械的特性が構造的に向上し、複合
成形体に対する要求に対応することができる。
【0032】
全体として本発明は、適切でフレキシブルな編物形状の繊維システムの選択、および熱可塑性プラスチックとのその複合物により剛性が調整可能であるという考察から出発する。ここで形状付与コア材料としてのマトリクス、すなわち熱可塑性プラスチックの延性特性は、外部機能層、すなわち複合され機能的に互いに配向された編物(Flecht)形状の繊維システムの特性と組み合わされる。この編物形状の繊維システムは特に強度、とりわけ破断強度を高める。
【0033】
本発明の有利な発展形態は従属請求項から得ることができ、詳細には、課題提示の枠内並びにさらなる利点に関して上に説明したコンセプトを実現する有利な可能性を提供する。
【0034】
特に有利な発展形態は、繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システムを使用することにより、方向の配向された編物、メッシュ、ワープニット等の繊維構造を提供することができるという考察から出発する。この繊維構造は、とりわけ製造方法において殊にマトリクスまたは類似の形状付与コア材料を取り込む際に、コア材料の形状に相応するやり方で配向することができ、これにより機能層はコア材料上で十分に調整される。これは編物、メッシュ、ワープニット等の繊維構造を備えるとりわけ形状変化可能な編物形状の繊維システムを使用する場合である。ここで編物、メッシュ、ワープニット等の繊維構造は、その形状を変化することにより糸の交差点においてそれぞれ10゜から90゜の間、とりわけ30゜から60゜の間とすることのできる可変の繊維角が調整され、とりわけ繊維は±5゜の変動範囲を有する45゜の繊維角により互いに配向される。とりわけこれにより、チューブ状の2次元または3次元の編物形状の繊維システムにおいて拡張可能な可変の断面が得られる。これにより構造全体は、形状付与コア材料を取り込む際に、例えば柔軟なまたはフレキシブルな繊維材料に依存せずに拡張可能、延伸可能かつ収縮可能である。少なくとも2:1から6:1、とりわけ4:1の範囲で延伸可能な開口断面が、とりわけ編物チューブまたは織物チューブにおいて有利である。
【0035】
配向された繊維層配置および繊維自体を自己調整可能なままで選択することにより、外側層の強度ないし圧縮耐性に影響を与えることができる。この発展形態は、とりわけコスト的に有利な方法でもコントロール可能とし、さらに機能的複合
成形体のより良い実現を可能にする。互いの相互作用により、とりわけ2つの構成成分、すなわちコア材料と編物形状の繊維システムを自動的に相互に調整する形状、およびそれらの相互の比率により、複合コンポーネントは特に最適化された特性の組合せを獲得し、これにより静的および動的負荷作用の下での長い耐用年数が達成される。
【0036】
さらなる利点は、セラミック材料と編物形状の繊維システムにおいて2つの材料を組合せることにより、固有の材料特性を調整できることである。2つの材料は互いに依存せずに最適化することができる。したがってマトリクスは内部コアだけとなり、係留、浸食および腐食防止のような付加的な機能を引き受ける必要がない。
【0037】
これまで繊維複合材料の通常の適用と異なる点は、ここでは繊維が、形状付与コアを覆う外側機能層であることである。ここでこの機能層はコアを保護し、したがって熱可塑性プラスチックの可能な製品ラインアップを耐久性の小さな品種にまで拡張する。マトリクスコンポーネントは形状付与コアとしてだけ支持面を提供するから、それぞれ調整されたコアの直径により、固有の材料特性の割合を変化することができる。
【0038】
編物形状の繊維システムは、繊維、局所的な密度、および種々の繊維の組合せを選択することにより、通常は構造に起因して局所的に異なるそれぞれの負荷作用に対して特に局所的に対抗することができる。相応の密度および複合物内で形成された分離層により保護層を形成することができ、同時にコアの内部への力伝達も行われる。
【0039】
45゜の角度で機能的に互いに配向することによる方法がとりわけ有利である。なぜならこの配向は力の平行四辺形において、作用する負荷に対抗するよう指向されているからである。このメカニズムは、水平および垂直に作用する力成分の法線成分は平行四辺形で分散されるという考察に基づいている。したがって繊維の配向は、作用する力ないし負荷に対抗するよう指向される。交差点において好ましくは45゜の繊維角による配向、または本発明のコンセプトによる別の適切な繊維角による配向は、より大きく作用する負荷を表面で吸収することができ、あるいはこの負荷に対して相応に対抗作用することができる。同時に好ましい45゜の角度、あるいは45゜の角度での編物形状の繊維システムの配向は、特に高い捻れ強度ないし剪断強度を達成するのに理想的と見做される。
【0040】
好ましい一発展形態では複合
成形体が上記の方法にしたがって製造される。ここでは熱可塑性プラスチックが形状付与コア材料として、繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散されて結合されており、前記編物形状の繊維システムは、形状付与コアとの複合物において、30゜から60゜の間の繊維角で機能的に互いに配向された繊維を有し、配向された編物形状の繊維システムは複合物において、複合
成形体の外側機能層を形成する。とりわけ好ましい発展形態の複合
成形体は、45゜の角度での機能的配向を有する。したがってこの発展形態は、繊維複合コンポーネントと同等の複合
成形体を提供する。しかしこの場合、外側層に対する機能的配向を備え、これにより配向された強度を生じさせる。30゜から60゜の間の角度、好ましくは45゜の角度で配向された繊維は、作用する負荷、この場合は張力または圧力が、力平行四辺形の対抗するように指向された力によってマイクロメカニカルに吸収されることを引き起こす。さらに最初はフレキシブルな編物形状の繊維システムは、形状付与コア材料の大きなバリエーションを可能にする。この場合、製造工程はもはや繊維複合コンポーネントの技術的実現には結び付いておらず、適用に対応してコアの形状を適合することができる。この発展形態により、形状において自由に選択可能な機能的
成形体が開発された。繊維複合半製品の保護繊維は、機能的特質を備える形状付与性の熱可塑性プラスチックとの密な複合物を有しており、この機能的特質は、熱可塑性プラスチックとフレキシブルな編物形状の繊維システムの材料特性量から統合される。さらにこの複合
成形体は、編物形状の繊維システムにより付加的な機能、すなわち固有の負荷に対して指向された対抗作用を有する。
【0041】
好ましい一発展形態では、熱可塑性プラスチックが繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散され、材料結合(stoffschlussig、材料と材料の結合状態)により結合されている。このことは、複数のコンポーネント、すなわち熱可塑性プラスチックと繊維複合半製品とを化学的に粘着ないし凝集して結合できる可能性を提供する。これにより達成される効果は、作用する力を容易に分散できる最適の層システムである。なぜなら材料的に結合した複合物を介して、表面の力を容易に伝達するために比較的に小さな境界面が形成されるからである。これらのコンポーネントは、原子または分子の力により互いに保持される。したがってこれらのコンポーネントは解離不能な結合であり、結合手段の破壊によってのみ分離される。材料結合による結合は、負荷作用の際にさらなる力を受けない複合物を生じさせる。外側機能層、すなわち配向された編物形状の繊維システムは、この複合物によりその機能を効率的に発揮することができる。この発展形態は、編物形状の繊維システムにおける付加的コンポーネントを意味することができる。この付加的コンポーネントは、材料結合だけを引き起こし、または個々の繊維は内部に材料結合した結合を含むことができる。したがって編物形状の繊維システムの浸漬された繊維もこの材料結合を促進することができる。あるいは真空注入製造法も考えられる。この材料的に結合した結合は、攻撃的な腐食および研磨性の媒体に関して有利であることが証明されている。
【0042】
好ましい一発展形態では、熱可塑性プラスチックが繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散され、材料結合的に結合されている。この発展形態は、熱可塑性プラスチックと繊維半製品との間の形状的結合(Formschluss、ありつぎ式結合)を可能にする。ここで形状付与コアは、すでに表面空洞部を有することができる。ここで空洞部は、作用する力が外側層の対抗力を上回らず、複合物がその形状的結合を再び解離しないように構成しなければならない。同時にこの発展形態では、熱可塑性プラスチックがフレキシブルな編物形状の繊維システムに沈み込みこむことができ、貫通するように分散されることも考えられる。これにより、この場合は形状的結合となる機械的な係留が可能になる。材料的に結合した複合物と形状的に結合した複合物の組合せは、両方のポジティブな側面を一つにする。このことはこの発展形態により考えられる。
【0043】
特に好ましい一発展形態では、熱可塑性プラスチックが繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システムに押し出される。好ましくはこの方法は、熱可塑性プラスチックがとりわけ押出機からストランドとして提供される工程と、フレキシブルな編物形状の繊維システムがチューブ状の編物形状の繊維システムとして提供される工程を有する。さらに好ましくは、熱可塑性プラスチックは形状付与コア材料として繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システム内に分散される。このことは、この熱可塑性プラスチックが柔らかいストランドとして、とりわけ押出機から編物形状の繊維システムのチューブに取り込まれ、とりわけ押し出されることによって行われ、柔らかいストランドの硬化の下で、編物形状の繊維システムとの複合物が、複合
成形体の外側機能層として形成される。
【0044】
この発展形態は、熱可塑性プラスチックが形状付与コア材料として、フレキシブルな編物形状の繊維システムに押し込まれ、この中で分散するという可能性を提供する。固体から高粘性までの熱可塑性プラスチックのストランドが圧力下で連続的に、形状付与開口部から繊維複合半製品のフレキシブルな編物形状の繊維システムに押し出されることも考えられる。ここでは形状付与開口部において対応の本体が理論的に任意の長さで形成され、これによりフレキシブルな編物形状の繊維システムを相応に配向することができる。ここで開口部の断面は、編物形状の繊維システムの直径に相応して適合可能であり、フレキシブルな編物形状の繊維システムを延伸または圧縮することにより、複合物中の繊維の機能的配向に対する配向を可能にする。
【0045】
押出し技術はそれ自体公知の方法であるが、しかし柔らかいストランドをとりわけ押出機から編物形状の繊維システムのチューブに取り込むために、すなわち押出機から直接押し込むために、さらに相乗的に使用することができる。
【0046】
これによりさらに、層システム内で機能的な複合
成形体を製造するためのコントロール可能でコスト的に有利な変形法が容易に実現可能となる。さらに対応の複合
成形体に対して押出成形法を使用することにより複雑な形状の実現が可能であり、この複雑な形状は、フレキシブルな編物形状の繊維システムに押し込むことにより同時に実現することができる。繊維の配向は、形状付与自体によって行うことができる。最終的にこの発展形態は、材料的および/または形状的に結合した複合物に対して有利な高温での方法も可能にする。
【0047】
好ましい一発展形態では、平面的形成物における付加的な繊維により、角度に依存しないで、複合
成形体の強度、とりわけ曲げ剛性および剪断剛性が高められる。この発展形態は、機能的配向は作用する負荷の力平行四辺形に対抗作用するが、しかしさらなる力ないし異なって作用する力がある場合、別の方向に延在するさらなる糸(ないし繊維)が付加的な力を吸収することができ、複合
成形体の剛性ないし強度を高めることを考慮する。したがって複合
成形体の外側層の機能が、印加される力に関して最適化され、作用する力に関して比較的に大きなトレランスを有する。同時にこの発展形態は、複合
成形体のエッジないし角における比較的大きな剛性も付加的な糸を束ねることにより可能にする。さらに繊維の配向は付加的な繊維によって調整することができ、編物形状の繊維システムによって形成された機能層を密にする。
【0048】
チューブの形の編物形状の繊維システムは、好ましくは2次元編物構造を有する。この発展形態は、形状的に結合した複合物を、外側機能層のエッジないし空隙作用なしで可能にする。外側機能層にある脆弱箇所は、チューブの形状により最小にすることができ、同時に製造方法においては、均等な分散の簡単なプロセス工程、および外側機能層を備える複合コンポーネントの均等な配向を可能にする。
【0049】
好ましい一発展形態では、編物形状の繊維システムは3次元編物構造を備えるチューブの形状を有しており、付加的な繊維が複合物の内部に配設され、これらの繊維は30゜から60゜の間、好ましくは45゜の繊維角で機能的に互いに配向されている。この発展形態は、すでに繊維複合材料に実現されている付加的側面、すなわち内部にある構造が付加的な剛性を引き起こすという付加的側面を取り入れている。3次元編物構造を取り入れることにより、機能的な力が形状付与コア材料のマトリクスの内部からも発生することができる。繊維の配向は基本的に種々の形態でも可能である。しかし45゜±5゜の範囲の繊維角での負荷吸収が好ましく、とりわけ大きな捻れ力ないし剪断力に対してはこの角度が適する。この発展形態は付加的に、付加的な重量の原因となること無しに、作用する力に関して熱可塑性プラスチックの材料固有特性を最適化することを可能にする。ここではとりわけ材料的に結合した複合物の可能性が考えられる。
【0050】
特に好ましい一発展形態では、熱可塑性プラスチックは、アクリロニトリル−ブタジエン−スチロール、ポリアミド、ポリアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリスチロール、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリ塩化ビニルの群の少なくとも1つの構成成分を有する。分散の製造プロセスを選択することにより、それぞれの熱可塑性プラスチックないしコンポーネントまたはそれらの混合物を、例えばバッチ処理で、それらの材料固有の特性と共に利用することができ、それぞれの複合
成形体に対して所要の特性を調整することができる。さらに種々の熱可塑性プラスチックの混合物が、種々の熱可塑性プラスチックに均質におよび/または局所的に異なって分散されていると有利であり得る。例えば第1の数の複合
成形体と第2の数の複合
成形体を、ただ1つのサンドイッチコンポーネントないしロータブレードエレメントを提供するために使用することができる。あるいは第1の数の複合
成形体と第2の数の複合
成形体を、第1と第2のサンドイッチコンポーネントないしロータブレードエレメントを提供するために使用することができ、これらはロータブレード、タワー、ナセルおよび/またはロータハブにおいてコアコンポーネントとして組み込まれる。第1と第2の数の複合
成形体は、異なるコア材料および/または編物形状の繊維システムを有することができる。
【0051】
一発展形態では、フレキシブルな編物形状の繊維システムは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維、金属糸(ないし繊維)、モノフィラメントないしマルチフィラメント、とりわけ熱可塑性糸(ないし繊維)の群、またはナイロン、PET、ポリプロピレン等のプラスチックから成る一般的なプラスチック糸の群から少なくとも1つの構成成分を有することができる。1つあるいは剛性の異なる複数の繊維からただ1つの繊維または複数の繊維の組合せを選択することは、複合
成形体の特性に特別に影響を与え、および/またはコア材料へと材料的結合を促進するために利用することができる。比較的に融点の高い材料、とりわけ200℃以上で紫外線耐性のあるプラスチックが有利である。
【0052】
機能的に配向された付加的な内部の繊維により熱可塑性プラスチックを補強(強化)することが有利であると判明した。このことおよび類似の措置は、複合
成形体の付加的な補強のために使用することができる。相応の作用機序あるいは例えばガラス繊維および/または炭素繊維である繊維の予期される力モーメントを使用することができるが、熱可塑性プラスチックが相応に分散された3次元の編物形状の繊維システムも使用することができる。これらは特定の配向を有することができ、製造工程に相応して組み込むことができる。
【0053】
3次元の編物形状の繊維システムとは、その2次元の表面が付加的な繊維の編み込み(flechtende)、ニット編み(wirkende)、縮み込み(strickende)またはその他のメッシュ形成等の編物形状の結合によって、とりわけ編物形状に結合された繊維の規則的な分散によって、3次元にメッシュ化されていること、とりわけ編物チューブまたは織物チューブの開放断面の上にメッシュ化されていることであると理解すべきである。その点で3次元の編物形状の繊維システムは2次元の編物形状の繊維システムから区別するべきである。3次元の編物形状の繊維システムは、チューブ状、とりわけ編物チューブまたは織物チューブの形、円形あるいは矩形または矩形に丸められたチューブ断面形状、または弓状、完全または部分的に開放した弓状とすることができ、付加的に緩く散在された繊維との組合せで使用することができる。
【0054】
本発明の実施例を以下、図面に基づき、例えば同様に示された従来技術と比較して説明する。図面はこれらの実施例を必ずしも縮尺通りには示しておらず、むしろ説明のために用いる図面として、概略的および/または僅かに誇張した形で示されている。図面から直接的に理解可能な法則を補足する観点で、関連の従来技術も参照される。ここでは実施形態の形状および詳細に関して多種多様の変形または変更を、本発明の一般的思想を逸脱することなく行うことができることを考慮すべきである。明細書、図面および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個別にも本発明の発展形態に対する任意の組み合わせでも重要であり得る。さらに明細書、図面および/または特許請求の範囲に開示された少なくとも2つの特徴のすべての組合せは本発明の枠内にある。本発明の一般的思想は、以下に示され説明される実施形態の正確な形状または詳細に限定されるものではなく、あるいは特許請求の範囲で請求される対象との比較において制限される対象に限定されるものではない。測定範囲が記述されている場合、ここに述べられた限界内の値も限界値として開示されており、任意に使用可能であり請求可能である。本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施例の以下の説明および図面に基づき得られる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1A】一複合
成形体の一実施形態の概略図であり、ここでは熱可塑性プラスチックが好ましくはフレキシブルな編物形状物を備える直方体として図示されている。
【
図1B】一複合
成形体のさらなる一実施形態の概略図であり、ここでは熱可塑性プラスチックがストッキング状の編物形状物により包囲された円筒形形状物として図示されている。
【
図2】一複合
成形体の編物形状物の形の上側機能層に作用する負荷を概略的に示す図である。
【
図3A】さらに好ましい一実施形態の一複合
成形体の概略的断面図であり、ここでは形状付与コアが熱可塑性プラスチックとして、その上の外側機能層がフレキシブルな編物形状物として図示されている。
【
図3B】さらに好ましい一実施形態の一複合
成形体の概略的断面図であり、ここでは形状付与コアが熱可塑性プラスチックとして図示されており、その上の外側機能層が3次元の編物構造を備えるチューブの形のフレキシブルな編物形状物として図示されている。
【
図3C】機能的に配向された繊維が組み込まれたさらに好ましい一実施形態の一複合
成形体の概略的断面図である。
【
図4】好ましい一実施形態による一複合
成形体を備える一風力発電装置の一ロータブレードの簡素化した断面図である。
【
図6】製造方法の好ましい一実施形態のフローチャートである。
【実施例】
【0056】
図1から
図4において同じあるいは類似の部分、または同じ機能あるいは機能の類似する部分に対しては簡単にするため同じ参照番号が使用されている。
【0057】
図1は、形状付与コア材料2Aとして直方体の形に形成された一複合
成形体1を示す。ここでは編物形状物20、この場合は直方体外側被覆物を形成するように閉じられたガラス繊維製の網状マットが、この直方体を取り囲み、互いに45゜の機能的繊維角αで配向された繊維を示す。ここで個別の繊維21と繊維22はα=45゜の繊維角を示し、平面上に機能的な力平行四辺形を形成する。この力平行四辺形については
図2を参照して詳細に説明する。ここでこの図には、均等に分散された繊維が示されている。しかし例えば負荷分布に応じて繊維21,22を異なって拡張することも考えられる。例えば、局所的に密な編物構造の機能的配向を、比較的に大きな負荷が作用する領域に形成することができる。熱可塑性プラスチックの形状は、すでにこれを促進するように形状付与コアとして用いることができる。編物構造とその密度の選択により、作用する力の比較的大きな中央領域または一般的領域が補強される。
【0058】
図1Bは、別の一実施形態の類似の一複合
成形体1’を示す。この場合、形状付与する熱可塑性プラスチック2Bは円筒の形に図示されており、この円筒はフレキシブルな編物形状物20’、この場合はPET製の編物チューブにより取り囲まれる。配向された繊維は、ここでは請求項1に記載された45゜の角度に相当し、これにより外側機能層を形成するために互いに機能的に配向されている。
【0059】
図2には、外から作用する力F
GESAMT、この場合は引張力が概略的に示されており、ここから生じる法線力F
AとF
sが力平行四辺形Kに分散される。配向された繊維21と22は、外側機能層としてここでは法線力に対抗作用し、力に対抗作用する機能層をこの平面に形成する。編物形状物の繊維は、作用する力F
GESAMTに対して複合システムの高められた剛性により対抗作用することができ、その際に繊維21は横方向負荷に屈することはない。なぜならこの横方向負荷は繊維22によって吸収されるからである。ここではさらなる剪断力または伝達力も外部機能層によって受け止めることができ、相応の材料固有の特性を備える複合
成形体内で最小にすることができる。
【0060】
図3Aには、一複合
成形体の断面が概略的に示されている。この断面では外側層20A内に編物形状の繊維システムの2次元構造が示されており、ここでは熱可塑性プラスチック30から成る材料コアの周囲に糸21と22が配向された編物形状物20を有する。
【0061】
図3Bには、編物形状の繊維システムの3次元配向が図示されている。この繊維システムは、外側機能層20Aの他に内部でも形状付与コア材料30の1つの糸23により配向されており、これにより3次元作用構造20Bを外部の負荷作用に対して形成する。
【0062】
図3Cには、コア内部にある長手繊維24と熱可塑性プラスチック30が図示されている。これらは、45゜の角度にある繊維21,22による外部機能層20Aに加えて、外部の負荷作用に対する保護のための繊維組合せ20Cを形成し、付加的に剪断応力および捻れ応力を吸収することができる。
【0063】
図4には、一風力発電装置100用の一ロータブレード108の断面が簡素化して図示されている。このロータブレード108は、上側ハーフシェル108.oと下側ハーフシェル108.uを有しており、これらのシェルには支持構造体10.oと10.uが設けられている。支持構造体は、ロータブレードを損傷させる負荷を吸収し、取り去ることができる。これらの支持構造体は、例えばサンドイッチ構造のロータブレードエレメントによって、あるいは前記複合
成形体によって形成することができ、同様にこれらの対応の負荷を吸収する。
図4の詳細
図Xは、コア材料2から作製されフレキシブルな編物形状の繊維システム20により取り囲まれた複数の複合
成形体1を備えるそのような支持構造体10を示す。複合
成形体は、ここでは例として支持構造体10を形成するために密な充填状態(Packung)に組み合わされている。
【0064】
図5は、タワー102とナセル104を備える風力発電装置100を示す。ナセル104には、3つのロータブレード108(
図4のロータブレード108とほぼ同じ形式)とスピナ110を備えるロータ106が配置されている。ロータ106は稼働時に風によって回転運動され、これによりナセル104内の発電機を駆動する。
【0065】
図6はフローチャートに、複合
成形体1の製造方法の好ましい一実施形態、ないし風力発電装置100のロータブレード108に取り付けるための支持構造体10への複数の複合
成形体の組み立てを示す。第1の工程S1で熱可塑性プラスチックが、第2の工程S2で編物形状物の形の繊維複合半製品が、前に説明したやり方で提供される。
【0066】
第3の工程S3では、熱可塑性プラスチックが形状付与コア材料としてフレキシブルな編物形成物に導入され、その中で分散され、これにより熱可塑性プラスチックは編物形成物と結合される。この例では工程S3.1で、顆粒状混合物から成る熱可塑性プラスチックが押出機に供給され、工程S3.2で押出機の出口で柔らかいストランドとして編物チューブに直接導入される。編物チューブは、交差点において45゜の繊維角を備える交差する繊維を有し、この繊維は、これが冷却すると、まだ柔らかい形状付与コア材料の周囲で収縮する。これにより柔らかい形状付与材料は編物チューブの周囲ないし編物チューブで、あるいはその繊維で硬化する。したがって編物チューブと熱可塑性材料との間に複合物が形成され、この複合物は編物チューブによって場合により完全に、あるいはいずれにしろ部分的に、しかし必須ではないがその外側に形成される。柔らかい形状付与材料は、編物チューブの輪郭の内部に残ることができ、または部分的に外に向かって浸透することができる。すなわち後者の場合、染み出て場合により外で再び編物チューブの周囲に広がりこれを取り囲む。
【0067】
全体として連続ストランドとして製造可能な複合ストランドは、工程S4で複数の複合
成形体に必要に応じて分配することができ、例えば
図4の詳細
図Xに示すように工程S5で1つの支持構造体に組み立てることができる。支持構造体は、工程S6でロータブレード108のハーフシェルに、または風力発電装置100の別の部分に取り付けることができる。本例では、ハーフシェルがロータブレード未加工部材に組み立てられ、工程S7でロータブレードが
図5の風力発電装置100に図示のように取り付けることができるようになるまで、さらなる製造工程が実施される。
【符号の説明】
【0068】
1,1’ 複合
成形体
2,2A コア材料
2B 熱可塑性プラスチック
10、10.o、10.u 支持構造体
20、20’ 編物形状物、編物形状の繊維システム
21、22 繊維、糸
K 力平行四辺形
20A 外側機能層
20B 3次元作用構造
20C 繊維組合せ
30 熱可塑性プラスチック、形状付与コア材料
23 糸
24 長手繊維
100 風力発電装置
102 タワー
104 ナセル
106 ロータ
108 ロータブレード
108.o 上側ハーフシェル
108.u 下側ハーフシェル
110 スピナ