特許第6190085号(P6190085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190085センサ用検出回路およびセンサ読み値取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6190085
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】センサ用検出回路およびセンサ読み値取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   G01N27/416 300Z
【請求項の数】26
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-503851(P2017-503851)
(86)(22)【出願日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】US2015041680
(87)【国際公開番号】WO2016014756
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2017年4月17日
(31)【優先権主張番号】62/028,469
(32)【優先日】2014年7月24日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516280635
【氏名又は名称】アトラス サイエンティフィック リミティッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エフレム プレス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン リンドグレーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン プレス
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−256268(JP,A)
【文献】 特開2008−185424(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201119871(CN,Y)
【文献】 Wei-Song Wang et al.,Real-Time Telemetry System for Amperometric and Potentiometric Electrochemical Sensors,Sensors,2011年,Vol.11,p.8593-8610
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電流を有する、バイアスされた第1の電圧信号を生成するように構成されたディジタルアナログコンバータ(DAC)と、
前記バイアスされた第1の電圧信号を受け取り前記第1の電流より大きい第2の電流を有する、バイアスされた第2の電圧信号を生成するように構成された演算増幅器(オペアンプ)と、
センサが接続された1対の端子から信号を受け取り、前記バイアスされた第2の電圧信号を基準とした1対の端子間電圧を表す出力信号を生成するように構成された計装増幅器(インツルメンテーションアンプ)と、
前記出力信号を用いて、前記センサからの読み値であるセンサ電圧を導き出すように構成されたアナログディジタルコンバータ(ADC)と
を含むセンサ用検出回路。
【請求項2】
前記センサ電圧は、前記出力信号から前記バイアスされた第2の電圧信号を差し引くことにより求められる
請求項1に記載のセンサ用検出回路。
【請求項3】
さらに、前記センサ用検出回路の動作状態を表示するように構成された1以上のインジケータを備える
請求項1に記載のセンサ用検出回路。
【請求項4】
さらに、前記計装増幅器のためのイネーブル入力信号を生成するように構成された入出力ユニットを備える
請求項1に記載のセンサ用検出回路。
【請求項5】
さらに、前記計装増幅器、前記入出力ユニットおよび前記アナログデジタルコンバータのうちの少なくとも1つを制御するように構成されたプロセッサを備える
請求項4に記載のセンサ用検出回路。
【請求項6】
さらに、前記センサ電圧を、前記センサ用検出回路から離れた回路に送るように構成されたトランシーバを備える
請求項1に記載のセンサ用検出回路。
【請求項7】
さらに、前記センサ用検出回路を駆動する電圧を規定する分圧回路を備える
請求項1に記載のセンサ用検出回路。
【請求項8】
前記バイアスされた第1の電圧信号は可変であり、
前記センサ用検出回路における1つに限定されない用途に応じた値を有する、前記バイアスされた第1の電圧信号を生成するように前記DACをプログラムするプロセッサをさらに備える
請求項1に記載のセンサ用検出回路。
【請求項9】
前記計装増幅器は、別個の入力として、前記バイアスされた第2の電圧信号を受け取るように構成されている
請求項1に記載のセンサ用検出回路。
【請求項10】
第1の電流を有するバイアスされた第1の電圧信号を生成するように構成されたディジタルアナログコンバータ(DAC)と、
前記バイアスされた第1の電圧信号を受け取り前記第1の電流より大きい第2の電流を有する、バイアスされた第2の電圧信号を生成するように構成された演算増幅器(オペアンプ)と、
センサが接続された1対の端子から信号を受け取り、バイアスされたグラウンド電圧信号を基準とした1対の端子間電圧を表す出力信号を生成するように構成された計装増幅器(インツルメンテーションアンプ)と、
前記出力信号から前記バイアスされた第2の電圧信号を差し引くことにより、前記センサからの読み値であるセンサ電圧を導き出すように構成されたアナログディジタルコンバータ(ADC)と
を含むセンサ用検出回路。
【請求項11】
さらに、前記センサ用検出回路の動作状態を表示するように構成された1以上のインジケータを備える
請求項10に記載のセンサ用検出回路。
【請求項12】
さらに、前記センサ電圧を、前記センサ用検出回路から離れた回路に送るように構成されたトランシーバを備える
請求項10に記載のセンサ用検出回路。
【請求項13】
さらに、前記センサ用検出回路を駆動する電圧を規定する分圧回路を備える
請求項10に記載のセンサ用検出回路。
【請求項14】
前記演算増幅器、前記計装増幅器、前記分圧回路、および前記プロセッサのうちの少なくとも2つが同じハウジングに収容されている
請求項13に記載のセンサ用検出回路。
【請求項15】
さらに、前記出力信号に関わるノイズをフィルタリングするように構成されたローパスフィルタを備える
請求項10に記載のセンサ用検出回路。
【請求項16】
さらに、前記計装増幅器のためのイネーブル入力信号を生成するように構成された入出力ユニットを備える
請求項10に記載のセンサ用検出回路。
【請求項17】
さらに、前記計装増幅器、前記入出力ユニットおよび前記アナログデジタルコンバータのうちの少なくとも1つを制御するように構成されたプロセッサを備える
請求項16に記載のセンサ用検出回路。
【請求項18】
前記バイアスされた第1の電圧信号は可変であり、
前記センサ用検出回路における1つに限定されない用途に応じた値を有する、前記バイアスされた第1の電圧信号を生成するように前記DACをプログラムするプロセッサをさらに備える
請求項10に記載のセンサ用検出回路。
【請求項19】
前記計装増幅器は、別個の入力として、前記バイアスされた第2の電圧信号を受け取るように構成されている
請求項10に記載のセンサ用検出回路。
【請求項20】
検出回路を用いてセンサからの読み値を得る方法であって、
ディジタルアナログコンバータ(DAC)によって、第1の電流を有する、バイアスされた第1の電圧信号を生成し、
演算増幅器(オペアンプ)によって、前記バイアスされた第1の電圧信号を受け取り、
前記演算増幅器によって、前記第1の電流より大きい第2の電流を有するバイアスされた第2の電圧信号を生成し、
計装増幅器(インツルメンテーションアンプ)によって、センサが接続された1対の端子から信号を受け取り、
前記計装増幅器によって、前記バイアスされた第2の電圧信号を基準とした前記1対の端子間電圧を表す出力信号を生成し、
アナログディジタルコンバータ(ADC)によって、前記センサからの読み値であるセンサ電圧を導き出す
ことを含むセンサ読み値取得方法。
【請求項21】
前記出力信号から前記バイアスされた第2の電圧信号を差し引くことにより前記センサ電圧を求める
請求項20に記載のセンサ読み値取得方法。
【請求項22】
さらに、前記センサ用検出回路の動作状態を表示する
請求項20に記載のセンサ読み値取得方法。
【請求項23】
さらに、前記センサ電圧を、前記センサ用検出回路から離れた回路に送る
請求項20に記載のセンサ読み値取得方法。
【請求項24】
さらに、前記出力信号に関わるノイズをフィルタリングする
請求項20に記載のセンサ読み値取得方法。
【請求項25】
前記バイアスされた第1の電圧信号は可変であり、
前記センサ用検出回路における1つに限定されない用途に応じた値を有する、前記バイアスされた第1の電圧信号を生成するように、プロセッサによって前記DACをプログラムすることをさらに含む
請求項20に記載のセンサ読み値取得方法。
【請求項26】
前記計装増幅器への別個の入力として、前記計装増幅器によって、前記バイアスされた第2の電圧信号を受け取る
請求項20に記載のセンサ読み値取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願へのクロスリファレンス)
本出願は、2014年7月24日に出願された「電気化学センシングモジュール」なるタイトルの米国仮出願番号62/028,469の利益を享有するものであり、そのすべての内容が全体として参照され本出願に組み込まれるものである。
【0002】
本発明の実施の形態は電気化学センサに関わり、特に、電気化学センサのためのセンサ用検出回路およびセンサ読み値取得方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液体の水素濃度やpH値を、その液体に浸漬した状態で計測するハイエンドのセンサが、しばらく前から存在している。しかしながら、そのようなデバイスを用いて有効なデジタル計測を行うことは、困難だがやりがいのある挑戦的なことである。例えば、pH回路に用いられる典型的なプローブは、数ミリボルトから数百ミリボルト程度の電圧を発生させる。そのようなプローブは負電圧を発生させることもあり、それが問題となる。というのは、ほとんどのディジタル計測に用いられるほとんどのアナログディジタルコンバータ(ADC)は、負電圧を計測するようには作られていないからである。しかるが故に、有効なディジタル計測のためには、システムのアナログフロントエンド(AFE)は、ADCへ負電圧を供給しないように設計されなければならない。システムはまた、信号処理の際にADCのダイナミックレンジの、すべてとは言わないまでも、ほとんどを使うことが望ましく、そしてまた、ADCに印加されるノイズに対してフィルタリングおよび抑制の少なくともいずれか一方を行うことが望ましい。
【0004】
ADCのダイナミックレンジを確保することは事実上最もよく行われることであり、一般的な回路においては、回路のAFE部にゲインというものを導入している。このことは、概して以下のような問題をもたらす。
a)ゲインがノイズをもたらすこと
b)ゲインがその他の問題(例えば、入力オフセット電流ゲインやその他のゲイン非線形性)をもたらすこと
c)様々な信号を効果的に調整するために、ゲインを可変にしなければならないこと
【0005】
それゆえ、ADCのダイナミックレンジのほとんどを利用でき、感度と精度とを高めることができ、かつ、次段のシステムに転送されて利用できるディジタル形式のデータを提供することができる電気化学センサ用検出回路を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施の形態は、電気化学センサ用の検出回路を含むものである。この検出回路は、ディジタルアナログコンバータ(DAC)と、演算増幅器(オペアンプ)と、計装増幅器(インツルメンテーションアンプ)と、アナログディジタルコンバータ(ADC)とを含む。DACは、演算増幅器が受け取るバイアスされたグラウンド電圧信号を生成する。演算増幅器は、電気化学センサに接続された1対の端子のうちのいずれか一方に、高い電流のバイアスされた電圧を生成する。計装増幅器は、上記の1対の端子から信号を受け取り、上記した高い電流のバイアスされたグラウンド電圧信号を基準とした1対の端子間電圧を表す出力信号を生成する。ADCは、出力信号を受け取り、電気化学センサによる実際の電圧読み値を導き出す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の好ましい実施の形態についての以下の詳細な説明は、添付図面を参照することによって、より良く理解されるであろう。ここでは、例示を目的として、現時点で好ましい実施の形態を図示する。但し、本発明がここに図示された正確な配置や手段手法に限定されるものではないことは、理解されるべきである。
【0008】
図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る検出回路の模式図である。
【0009】
図2は、図1の回路のヘッダピン配置を表す模式図である。
【0010】
図3は、本発明の一実施の形態に係る、センサから読み値を導き出す方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
以下の説明ではいくつかの特定の用語を用いる場合があるが、それは単に便宜上のことであり、それに限定されるものではない。「右」、「左」、「下」、「上」という語は、参照している図面上での方向を示すものである。「内側へ」、「外側へ」という語は、それぞれ、デバイスやその指示部分の中心に向かう方向、デバイスやその指示部分の中心から離れる方向を示している。上記の特定の用語には、上掲の語や、その派生語、さらに同様の意味の語が含まれる。さらに、請求項およびそれに対応する明細書部分において用いられている「ひとつの(「a」、「an」)」という語は、「少なくともひとつ」という意味である。
【0012】
本発明の実施の形態は、ゲインの代わりに、ADCの可変基準電圧(レファレンス)を用いることによって、上記で論じた挑戦を目指すものである。非限定的な事例として、例えば、あるプローブは−200mVから+200mV(トータルダイナミックレンジが400mV)という実質的レンジを有する。検出回路は、増幅器によってこのゲインを得る代わりに、増幅器用に0.512Vという基準電圧を用いる。この値は、信号に必要なダイナミックレンジの400mVを包摂している。オーバーサンプリングの手法を用いることにより、この信号を16ビットの分解能でサンプリングし、実質的に8μVの分解能を作り出すことが可能である。この分解能は、プローブの400mVというレンジに対して51200個の別々のADC状態を許容することを可能にする。基準電圧を変化させるという能力は、ゲインの舞台に実質的に取って代わり、最新の集積化されたCPUの最大能力を利用可能にするより簡単な回路を可能にする。
【0013】
以下、図面を参照するが、これらを通して、同じ番号は同じ要素を示す。図1は、本発明の好適な実施の形態に係る検出回路10を表すものであり、これは電気化学センサ(図示せず)とともに用いられる。電気化学センサは、極めて弱いバッテリーと考えられる。例えば、pHプローブなどの電気化学センサは、非常に高い抵抗値をもつ簡単な単一セルバッテリーとして振る舞う。そこで生成される電圧は、プローブ周囲の水素イオン濃度に比例する。このため、水素イオン濃度の対数(Log)に比例する。生成される電圧は、測定される溶液の例えばpHに依存して正または負となり、マイクロボルトという低い電圧から数ボルトという高い電圧になり得る。一般的なpHプローブの信号源インピーダンスは非常に高い。薄いガラスのバルブは、概して10MΩ(メガオーム)から10GΩ(ギガオーム)というレンジの抵抗値を有するからである。信号経路上の他の構成要素(アナログディジタルコンバータ(ADC)やCPUなど)によって適正に利用できるようにセンサ信号を調整する回路を設計するには、重要なセンサ特性について説明する必要がある。
【0014】
多くの電気化学センサが正負両極の信号を生成するとともに、ほとんどのアプリケーションが単一(単極)電源で動くことから、本発明の実施の形態では信号をシフトする。回路10は、バイアスされた所望電圧の出力信号12aを発生するようにCPU14によってプログラムされたDACユニット12を含む。バイアスされた出力信号12aの電流値は、人工的なグラウンド(接地)に対してとても小さい。このため、バイアスされた出力信号12aは、演算増幅器16の非反転入力端子16aに接続される。演算増幅器16は、ボルテージフォロワとして構成されているため、非反転入力端子16aの電圧に従った(整合した)出力信号16bを発生させる。さらに、ボルテージフォロワに特徴的であるように、入力インピーダンスが高く出力インピーダンスが低いことから、演算増幅器16は、演算増幅器16の非反転入力端子16aにおける電流よりも大きい電流を出力する。上記したようにDACユニット12から出力される信号はとても小さい電流であるが、演算増幅器16を通ったあとの出力信号16bは、検出回路10における他の要素によって扱える程度にまで十分に大きい電流となる。
【0015】
演算増幅器16の出力信号16bは、ADCユニット18の入力端子18bと、計装増幅器22の基準電圧端子22bに接続されるほか、電気化学センサのグラウンドピン38(図2)にも接続される。この出力信号16bが、バイアスされたグラウンド電圧となる。こうして、事実上、このバイアスされたグラウンド電圧が、電気化学センサからの正負両極の信号を、例えば単極性のシステム(すなわち、正電圧のみを読み取り可能なシステム)によって利用可能な単極信号にシフトするように機能する。上記のバイアスされたグラウンド電圧からノイズを除去するために、デカップリングキャパシタ19が演算増幅器16の出力信号16bに接続される。キャパシタ19は1ナノファラドの容量値を有するのが好ましい。但し、本発明にあわせて、それ以外の容量値を用いてもよい。電気化学センサは電流に極めて敏感なので、演算増幅器16の出力信号16bは電流制限抵抗20を介してグラウンドに接続される。電流制限抵抗20は100Ωの抵抗値を有するのが好ましい。但し、本発明にあわせて、それ以外の抵抗値を用いてもよい。
【0016】
計装増幅器22は、センサ(図示せず)が接続される一対の端子24a,24b間に接続された入力端子を有する。端子24a、24bは、ポスト、ソケット、同軸リセプタクルまたは同様の電気的コネクタで構成される。端子24aはバイアスされた電圧を表しており、端子24bは電気化学センサの読み取り電圧を表す。プローブからの入力信号から低周波ノイズをできるだけ除去するために、ローパスフィルタ27,29が端子24a、24bにそれぞれ接続される。ローパスフィルタ27,29は、それぞれ、キャパシタ31と抵抗33とを含む。キャパシタ31は1ナノファラドの容量値を有するのが好ましく、抵抗33は1kΩの抵抗値を有するのが好ましい。グラウンド電圧はバイアスされているため、プローブからの出力はこのバイアスされた電圧を基準としたものとなる。例えば、もし、このバイアスされたグラウンド電圧が100mVに設定され、プローブの読み値が5mVであるとすると、プローブから計装増幅器22の端子24a、24b間への出力は105mVとなる。他の例として、もし、このバイアスされたグラウンド電圧が100mVに設定され、プローブの読み値が−5mVであるとすると、プローブから計装増幅器22の端子24a、24b間への出力は95mVとなる。
【0017】
電気化学センサによって発生する電圧差は極めて小さく(ミリボルトレンジ、理想的には室温でpH単位あたり59.16mV)、ほとんど利用できない電流をもつ。このため、使用するいかなる計測デバイスも非常に感度が良いことが求められる。したがって、本発明の実施の形態では、そのような小さい値を読み取るのに計装増幅器22を採用しているが、それだけではない。例えば、計装増幅器22は、プローブからの出力を端子24a、24bを介して入力として受け取り、出力電圧とバイアスされたグラウンド電圧との差分を求める。計装増幅器22はまた、入出力(I/O)ユニット25から出力される信号をイネーブル入力信号22cとして受け取る。計装増幅器22は、次に、上記のバイアスされたグラウンド電圧の値に上記の差分を足し戻し、これにより、それ自身の入力に現れるのと同様の値をもつ出力信号22aを生成する。こうして、計装増幅器22は、プローブから入力される電圧が、バイアスされたグラウンド電圧に対して正確かつ適切に参照されることを担保する。
【0018】
計装増幅器22の出力信号22aは、入力信号18aとしてADC18へフィードバックされる。ADC18には、さらに、演算増幅器16からのバイアスされた電圧出力信号18bと、2つの抵抗26,28により構成される分圧回路44から出力された供給電圧信号18cとが入力される。分圧回路44の抵抗26,28の抵抗値は、それぞれ、好ましくは10kΩ、100kΩである。ただし、これらの抵抗の構成は重要ではないことに留意すべきである。例えば、抵抗26は10kΩという抵抗値を有し、抵抗28は100kΩという抵抗値を有するようにすることが可能である。分圧回路44は、診断のために、検出回路が駆動される電圧を規定する。バイアスされた電圧を計装増幅器22の出力信号22aから差し引くことにより、検出回路10は正確なプローブ電圧の読み値を決定する。この値は、その後、水溶液の所望の計測値(すなわち、pHやアンモニアのppm等)を得るのに用いられる。
【0019】
パルス幅変調(PWM)ユニット30、入出力ユニット25、およびADC18は、CPU14の一部であるようにするのが好ましく、または少なくともCPU14によって制御される。CPU14は、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)等である。例えば、PWMユニット30、入出力ユニット25、およびADC18のうちの少なくとも1つは、上記した入力端子と出力端子がCPU14のピン(図示せず)となるようにCPU14の内部に設けられる。さらにまた、PWMユニット30、入出力ユニット25、およびADC18のうちの少なくとも1つを、CPU14の外部に配置し、トレース、ワイヤ、その他の同様の電気的コネクタ(図示せず)によりCPU14に接続するようにしてもよい。CPU14は、例えば、供給される電力、設定、およびパラメータを制御し、PWMユニット30、入出力ユニット25、およびADC18のやり取りを容易にする。
【0020】
少なくとも演算増幅器16、計装増幅器22、電流制限抵抗20、分圧回路44、および端子24a,24bは、共通のハウジングに収容されるのが好ましい。このハウジング(図示せず)には、必要により、PWMユニット30、入出力ユニット25、およびADC18もまた収容される。
【0021】
センサから得られたデータは、通常の方法によって検出回路10から外部回路(図示せず)へと送られる。上記の方法としては、ユニバーサル非同期レシーバ/トランシーバ(UART)プロトコル(すなわち、RS−232、TTLシリアル、RS−422、RS−485、等)、インター・インテグレイティド・サーキット(集積回路間通信:I2C)プロトコル、等がある。図2において、好ましくは、上記したように外部回路との通信を可能にさせるために一対の受信・送信ピン32,34が設けられる。電源・グランドピン36,38もまた設けられる。加えて、センサを端子24a,24bに接続するためにプローブピン40,42が設けられる。
【0022】
再び図1を参照する。検出回路10の状態をユーザに表示するためにLED50,52,54が設けられる。例えば、赤色LED50は、エラー表示のために設けられる。緑色LED52は、通信がUARTプロトコルにしたがって行われていることを表示するために設けられる。同様に、青色LED54は、通信がI2Cプロトコルにしたがって行われ
ていることを表示するために設けられる。ここに図示した実施の形態では、LEDを用いるようにしたが、アルファベットと数字を組み合わせた表示や音声表示等を用いてもよい。さらに、検出回路10およびセンサの一方または両方についての、その他の状態をユーザに知らせるようにしてもよい。
【0023】
本発明の実施の形態では、通常のLPF(ローパスフィルタ)回路とノッチフィルタによって簡単なノイズ排除を行っている。これにより、60Hzのハムノイズや特定のコモンモードノイズ等のような、ノイズや混信のコモンソースを排除できる。ADCに入力される信号は、大きさが小さいノイズとはいえ、未だ、その信号に関連したランダムノイズを含んでいる。このノイズが、かつてはADCサンプリング技術の利点であった。ADCの読み値をオーバーサンプリングするためには、測定対象の信号が「ホワイトノイズ」として分類されるノイズを含んでいることが望ましい。ホワイトノイズを含むということは、信号スペクトラムの電力密度がADCの測定可能レンジ内において一定であることを意味する。そのようなノイズ(EMIノイズ、熱ノイズ、化学的ノイズ、その他のノイズ源に起因するノイズ)を保つことは、マイクロプロセッサの、信号をオーバーサンプリングする能力を助ける。今日の埋込型マイクロプロセッサに搭載される10または12ビットのADCは、4ないし6ビットだけ容易に拡張可能であり、これにより、より高い分解能でサンプルを得ることができる。さらなるディジタル処理技術(例えば、LPFやそれ以外の平均化方式)により、複雑ではないAFE回路を用いて精密かつ高分解能の計測が可能になる。これにより、マイクロプロセッサの能力を最大限に利用することができる。
【0024】
本発明の実施の形態では、上で論じた電気部品を機械的に支持するとともに、好ましくは金めっきのリード線を用いて接続するために、多層プリント回路基板を採用する。上記で明示したように、検出回路の区域では人工的にバイアスされたグラウンドを用い、それ以外の区域では実グラウンドを用いる。したがって、人工的グラウンドを用いる回路部分は、多層プリント回路基板のうちの1つの層、すなわち人工的にバイアスされたグラウンドに接続されたグラウンド面である層、を有する。同様に、実グラウンドを用いる回路部分は、多層プリント回路基板のうちの1つの層、すなわち実グラウンドに接続されたグラウンド面である層、を有する。
【0025】
図3は、一実施の形態に係る、センサから読み値を得る方法300のフロー図である。この方法300は、任意の適切な順番で実行されるいくつかのステップで構成される。ステップ302では、第1の電流を有するバイアスされた第1の電圧信号を生成する。ステップ304で、そのバイアスされた第1の電圧信号を受け取る。ステップ306では、第1の電流より大きい第2の電流を有するバイアスされた第2の電圧信号を生成する。このバイアスされた第2の電圧信号は、検出回路における他の部品によって用いられる。ステップ308では、センサが接続された1対の端子から信号を受け取る。ステップ310で、上記のバイアスされた第2の電圧信号を基準とした1対の端子間電圧を表す出力信号を生成する。
【0026】
上記からわかるように、本発明の実施の形態は、電気化学センサのための検出回路を構成する。当業者にとっては、本発明概念から離れることなく上記実施の形態に変更を加え得ることが理解されるであろう。それゆえ、本発明は、開示した特定の実施の形態に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および意図の範囲内での改変をもカバーしようとしたものであることが理解される。
【要約】
【解決手段】
電気化学センサ用の検出回路は、ディジタルアナログコンバータ(DAC)と、演算増幅器(オペアンプ)と、計装増幅器(インツルメンテーションアンプ)と、アナログディジタルコンバータ(ADC)とを含む。DACは、演算増幅器によって受け取られる、バイアスされたグラウンド電圧信号を生成する。演算増幅器は、電気化学センサに接続された一対の端子の一方に、高電流のバイアスされた電圧を発生させる。計装増幅器は、一対の端子から信号を受け取り、上記の高電流のバイアスされたグラウンド電圧信号を基準とした一対の端子間電圧を表す出力信号を生成する。ADCは、前記出力信号を受け取り、電気化学センサから得られる実際の電圧読み値を導き出す。
【選択図】図1
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図2
図3