特許第6190097号(P6190097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190097
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】換気ユニット
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/16 20060101AFI20170821BHJP
   E04D 13/035 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   E04D13/16 B
   E04D13/035 M
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-60370(P2012-60370)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-194380(P2013-194380A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】村松 浩
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−138693(JP,A)
【文献】 特開2010−285758(JP,A)
【文献】 特開平10−169114(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3042318(JP,U)
【文献】 実開昭50−109421(JP,U)
【文献】 実開昭63−037722(JP,U)
【文献】 米国特許第02665626(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/035、13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根面に形成された開口の縁部に固定された開口枠と、前記開口及び前記開口枠を覆う蓋部材と、前記蓋部材を前記開口枠に当接させた閉状態と前記開口枠から離隔させた開状態との間で移動させる移動機構と、を備える換気ユニットであって、
前記蓋部材は、前記開口及び前記開口枠を覆う本体部と、前記本体部の縁部から外方に延在した状態で設けられるとともに前記蓋部材が前記開状態にあるときに前記蓋部材と前記開口枠との間に形成される空隙からの雨水の侵入を抑制する庇部と、を有しており、
前記庇部の下面は、前記蓋部材の下面が下方に凸の曲面形状を有することで、先端側になるにつれて前記屋根面からの離隔が大きくなるように上り傾斜状に、形成されている、換気ユニット。
【請求項2】
前記蓋部材の前記庇部と前記屋根面との間には、前記庇部の下面に対向するように配置され前記屋根面から前記開口枠の上端部に向けて上り傾斜状の換気路を形成する対向部材が設けられている、請求項1に記載の換気ユニット。
【請求項3】
前記屋根面は傾斜状に形成されており、前記開口枠よりも水上側となる位置には、前記開口枠に向けて流下する雨水を前記開口枠の側方に向けて案内する樋部が設けられている、請求項1に記載の換気ユニット。
【請求項4】
前記蓋部材の前記本体部の表面には、前記開口枠に向けての日射を遮蔽可能な素材で構成された覆部が設けられている、請求項1から3の何れか一項に記載の換気ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等では、屋根裏空間や小屋裏収納等の小屋裏空間に熱や湿気がこもると建物に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、屋根面を介して建物内の換気を行うことにより、建物内の熱や湿気を排除する技術が実用化されている。屋根面を介して換気を行う場合、屋根面に所定の寸法を持った開口を形成し、この開口に換気機能を持った換気口を取り付けるのが一般的である。
【0003】
現在においては、屋根面に取り付ける換気口として種々の構成を有するものが提案されており、代表的な構成は、屋根面に形成した開口の縁部に開口枠を取り付けるとともに開口枠の上部に蓋部材を取り付け、両者の間に換気用の通路を形成するものである。また、換気口に単なる屋根裏の防湿のみならず、屋根裏下方の居室を換気する換気口としての機能を付与した換気口も提案されている。
【0004】
例えば、近年においては、天井面に開口する天井排気口と連通する中空部分を有し屋根部の上方に突出する本体筒状部と、本体筒状部の上端部に連設配置され本体筒状部の断面形状に沿った環状に配される枠部材を間隔をおいて積層して形成される横縞状筒状部と、を備える建築物用通風塔が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載された建築物用通風塔においては、横縞状筒状部の内側に、本体筒状部の上端開口を閉塞した状態から横縞状筒状部の上端部との間で昇降して通風塔を開閉するトップライト部材を設けており、トップライト部材を上昇させて通風塔を開放した際に、トップライト部材の下方の本体筒状部との間で横縞状筒状部の間隔部分を介して横方向に風が抜けるようにしている。かかる構成によれば、横縞状筒状部としてのルーバ機構等によって機械設備によらない降雨対策が採られており、雨水の浸入を回避しつつ通風を確保することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−265824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたような横縞状筒状部(ルーバ機構)は、雨を遮るために羽板の組み合わせになっていて、通風に寄与する開口面積は少なくなるとともに羽根板が通風に抵抗するものとなり、却って風が通り難い構造となっており、相当量の通風量を可能にするとはいえないものである。よって、より効率良く通風を実現させる技術が待望されている。
【0008】
ところで、都市のような密集地では、建物同士の間隔が近接していることから、建物の壁に取り付けられている通常の窓からの通風は得にくい状態にある。しかし、その建物周囲には、同じ高さ程度の家屋が建っているため、屋根上部には風が流れている。また、風は、卓越風として、季節や時間帯によってほぼ決まった方向から、その地域に流れると思われがちであるが、その地域の地形などに影響され、実際はいろいろな方向から流れている。これらの風を上手く利用するためには、屋根に取り付けられている天窓(それもいろいろな方向から流れてくる風に対応した通風利用の窓)が必要である。この種の窓は、省エネが叫ばれる昨今重要度を増している。このような観点からも、通風を効率良く実現させる技術が待望されていた。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で屋内への雨水侵入を抑制しつつ、屋外を流れる風を通過させることができる換気ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る換気ユニットは、屋根面に形成された開口の縁部に固定された開口枠と、開口及び開口枠を覆う蓋部材と、蓋部材を開口枠に当接させた閉状態と開口枠から離隔させた開状態との間で移動させる移動機構と、を備えるものであって、蓋部材は、開口及び開口枠を覆う本体部と、本体部の縁部から外方に延在した状態で設けられるとともに蓋部材が開状態にあるときに蓋部材と開口枠との間に形成される空隙からの雨水の侵入を抑制する庇部と、を有するものである。
【0011】
かかる構成を採用すると、蓋部材が開状態のときは、風が如何なる方向から流れていても屋内の通風を実現させることができ、かつ、雨が降っても庇部によって雨水の屋内への侵入を抑制することができる。また、外部が降水状態であることを認識した居住者は、蓋部材を移動させて開状態から閉状態へと移行させることにより、雨水等の室内への侵入を確実に防止することができる。庇部は、このように開状態から閉状態へと移行する間の雨水の室内側への吹き込みを可及的抑制し、閉状態となるまでの時間を稼ぐことができるものとなっている。また、庇部によって、蓋部材が開状態のときに直射日光が蓋部材と開口との間から室内に入射することを抑制することができ、開口からの日射の侵入に伴う室内側の温度上昇を抑制することができる。
【0012】
本発明に係る換気ユニットにおいて、蓋部材の庇部の下面を、蓋部材の本体部から離隔するにつれて屋根面に近接する下り傾斜状に形成することが好ましい。
【0013】
かかる構成を採用すると、蓋部材の先端部と屋根面との間隔が狭まり、雨水の吹き込み口が狭くなるため、室内側への雨水等の吹き込みをさらに抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る換気ユニットにおいて、蓋部材の庇部と屋根面との間に、庇部の下面に対向するように配置され屋根面から開口枠の上端部に向けて上り傾斜状の換気路を形成する対向部材を設けることができる。
【0015】
かかる構成を採用すると、屋根面上には、蓋部材と対向する位置に対向部材が配置され、対向部材と蓋部材の下面との間に開口枠上端部に向けての上り傾斜状の換気路が形成されることとなるので、これらの間に入り込んだ風をよりスムーズに開口枠上部に通過させることができ、換気能を向上させることができる(なお、このような対向部材がないと、開口枠基端部周囲で乱流等が発生し、これによって通風が妨げられてしまう虞がある)。
【0016】
また、屋根面が傾斜状に形成されている場合においては、本発明に係る換気ユニットの開口枠よりも水上側となる位置に、開口枠に向けて流下する雨水を開口枠の側方に向けて案内する樋部を設けることができる。
【0017】
かかる構成を採用すると、傾斜状の屋根面に開口及び開口枠が設けられることにより開口枠に向けて雨水等が流下するため、開口枠を経由して雨水等が室内側に向けて侵入する虞が生じるが、開口枠よりも水上側となる位置に樋部が設けられ、この樋部により雨水等は開口枠側方へと案内されることとなるため、開口及び開口枠からの雨水等の侵入を著しく抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る換気ユニットにおいて、蓋部材の本体部の表面に、開口枠に向けての日射を遮蔽可能な素材で構成された覆部を設けることができる。
【0019】
かかる構成を採用すると、開口からの日射の侵入を抑制することができ、開口からの日射の侵入に伴う室内側の温度上昇や高輝度部発生等の環境の変化を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構成で屋内への雨水侵入を抑制しつつ、屋外を流れる風を通過させることができる換気ユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係る換気ユニット(蓋部材閉状態)の構成を説明するための断面図である。
図2図1に示す換気ユニットの蓋部材が開状態にあり蓋部材と開口枠との間の離隔寸法が短い場合の断面図である。
図3図1に示す換気ユニットの蓋部材が開状態にあり蓋部材と開口枠との間の離隔寸法が長い場合の断面図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る換気ユニット(蓋部材閉状態)の構成を説明するための断面図である。
図5】本発明の第三実施形態に係る換気ユニット(蓋部材閉状態)の構成を説明するための断面図である。
図6図5に示す換気ユニットの開口枠と樋部との位置関係を説明するための説明図である。
図7】本発明の第四実施形態に係る換気ユニット(蓋部材開状態)の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態はあくまでも好適な適用例であって、本発明の適用範囲がこれに限定されるものではない。
【0023】
<第一実施形態>
まず、図1図3を用いて、本発明の第一実施形態に係る換気ユニット1について説明する。
【0024】
本実施形態に係る換気ユニット1は、図1に示すように、建物の屋根面100に形成された開口110の縁部111に固定された開口枠10と、開口110及び開口枠10を覆う蓋部材20と、蓋部材20を開口枠10に当接させた閉状態と開口枠10から離隔させた開状態との間で移動させる移動機構30と、を備えている。なお、本実施形態においては、換気ユニット1が設けられる屋根面100が略水平に形成されている。屋根面100の開口110は、屋根面100を構成する下地材100aに所定形状(例えば矩形状)及び所定寸法を有するように形成されている。
【0025】
開口枠10の本体部10aは、開口110の周囲の縁部に配置されて下地材100aに固着されている。下地材100aが合板等の木質材からなる野地板である場合、開口枠10の本体部10aは所定寸法を有する木質材や金属の型材によって構成され、釘や木ネジやビス等の最適な手段で下地材100aに固着されている。また、下地材100aの上表面であって開口枠10によって区画された部分を除く面には、瓦やスレート等の屋根材120が配置され、各々所定の手段で下地材100aに固着されている。なお、本実施形態においては、開口枠10の周囲領域(下地材100aと屋根材120との間)に防水シート130を配置している。
【0026】
開口枠10の本体部10aの外周には、段状の外枠部材11が釘やビス等の手段によって固着されており、外枠部材11の上面には、蓋部材20が閉状態(図1)にあるときに蓋部材20の本体部21(後述)の下面に接触するパッキン12が設けられている。また、開口枠10の本体部10aの内周には、内枠部材13が接着剤等の所定の手段によって固着されており、内枠部材13には網戸14が嵌め込まれている。外枠部材11及び内枠部材13は、金属や合成樹脂等で構成することができる。
【0027】
蓋部材20は、開口110及び開口枠10を覆う本体部21と、本体部21の縁部から外方に延在した状態で設けられるとともに蓋部材20が開状態にあるときに蓋部材20と開口枠10との間に形成される空隙からの雨水の侵入を抑制する庇部22と、を有している。
【0028】
蓋部材20の本体部21は、開口枠10の平面形状(例えば矩形状)と同様の平面形状と、開口枠10の外径とほぼ同じ外径と、を有しており、それ自体で開口110及び開口枠10を覆うことができるように構成されている。本体部21は、枠状のフレーム部と、このフレーム部に収容される収容体と、で構成することができる。収容体としては、ALC、断熱材、防水シート又はこれらを組み合わせたものを採用することができる。また、収容体として、フレーム部に周囲を保持されたガラスを採用してもよい。
【0029】
蓋部材20の庇部22は、蓋部材20の本体部21の外周縁部に釘やビス等の手段によって固着されている。本実施形態における庇部22の上面22aは、外方になるに従って漸次鉛直方向下方に傾斜するように形成されている。庇部22は、このような傾斜した上面22aによって雨水が切れやすくなっており、先端が狭いことで風の抵抗も少なくなっている。一方、庇部22の下面22bは、略水平方向に延在するように形成されており、庇部22の先端には、水切り23がビス等の手段によって取り付けられている。
【0030】
移動機構30は、蓋部材20を上下動(昇降)させることにより、蓋部材20が開口枠10に当接した閉状態(図1)と、蓋部材20が開口枠10から離隔した開状態(図2及び図3)と、の双方を実現させるものである。本実施形態における移動機構30は、X字状のリンク機構(パンタグラフ)であり、これにより、蓋部材20の本体部21の下面21aが、開口枠10の本体部10aの上面に対して同じ間隔を維持した状態で、開口枠10の本体部10aに対して近接・離隔する。これにより、全方位(四周、360°何れの方向からも)から風を受け入れることができるものとなっている。また、移動機構30は、換気に影響を与えないような構成とされる。
【0031】
本実施形態における移動機構30は、図示されていない手動の操作部(回転式のハンドル等)を操作することによって機械的な伝達手段を介して駆動されるように構成されており、建物の居住者がこの操作部を操作することにより、蓋部材20を開口枠10に対して昇降させることができるものとなっている。なお、スイッチ等を押圧操作することによって作動する電動の駆動手段を用いて移動機構30を駆動してもよい。
【0032】
本実施形態における換気ユニット1においては、蓋部材20の垂直昇降による開口枠10の本体部10aと蓋部材20の本体部21との離隔寸法を、目的に応じて適宜調整することができる。
【0033】
例えば、屋内の排熱等の換気を目的とする場合には、図2に示すように、開口枠10の本体部10aと蓋部材20の本体部21との離隔寸法を比較的短く設定するようにする。なお、庇部22の効果により換気時は雨水の浸入が抑制されるので、降雨時であっても換気は可能である。
【0034】
一方、屋内に相当量の通風を得ることを目的とする場合には、図3に示すように、開口枠10の本体部10aと蓋部材20の本体部21との離隔寸法を比較的長く設定する。このようにすることにより、蓋部材20と開口枠10との間に風が抜けるようになり、開口枠10上に風を通過させ、室内側の滞留空気を引き上げ、開口枠10から流出させることができる。この結果、室内窓部、室内、開口枠10をこの順に経由した空気の流路が形成されることとなり、屋内に相当量の通風を得ることができる。このような通風時にも、ある程度の雨であれば、庇部22で雨水の浸入を抑制することができる。
【0035】
以上説明した実施形態に係る換気ユニット1においては、蓋部材20が開状態のときは、風が如何なる方向から流れていても屋内の通風が実現されることとなり、かつ、雨が降っても庇部22によって雨水の屋内への侵入が抑制されることとなる。また、外部が降水状態であることを認識した居住者は、蓋部材20を移動させて開状態から閉状態へと移行させることにより、雨水等の室内への侵入を確実に防止することができる。庇部22は、このように開状態から閉状態へと移行する間の雨水の室内側への吹き込みを可及的抑制し、閉状態となるまでの時間を稼ぐことができるものとなっている。また、庇部22によって、蓋部材20が開状態のときに直射日光が蓋部材20と開口110との間から室内に入射することを抑制することができ、開口110からの日射の侵入に伴う室内側の温度上昇を抑制することができる。
【0036】
<第二実施形態>
次に、図4を用いて、本発明の第二実施形態に係る換気ユニット2について説明する。本実施形態に係る換気ユニット2は、第一実施形態に係る換気ユニット1の蓋部材20の構成を変更するとともに新たな構成を追加したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。従って、第一実施形態と共通する構成については、同一の符合を付して詳細な説明を省略することとする。
【0037】
本実施形態に係る換気ユニット2は、図4に示すように、建物の屋根面100に形成された開口110の縁部111に固定された開口枠10と、開口110及び開口枠10を覆う蓋部材20Aと、蓋部材20Aを開口枠10に当接させた閉状態と開口枠10から離隔させた開状態との間で移動させる移動機構30と、を備えている。開口枠10及び移動機構30は、第一実施形態で説明したものと実質的に同一であるので、詳細な説明を省略する。なお、本実施形態においても、第一実施形態と同様に屋根面100が略水平に形成されている。
【0038】
本実施形態における蓋部材20Aは、開口110及び開口枠10を覆う本体部21Aと、本体部21Aの縁部から外方に延在した状態で設けられるとともに蓋部材20Aが開状態にあるときに蓋部材20Aと開口枠10との間に形成される空隙からの雨水の侵入を抑制する庇部22Aと、を有している。本体部21Aは、第一実施形態で説明した本体部21と実質的に同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0039】
本実施形態に係る換気ユニット2は、通風や換気に特化したものであるため、蓋部材20Aの本体部21Aの表面が、開口枠10に向けての日射を遮蔽可能な素材で構成した覆部24で覆われている。覆部24は、日射によって屋内の熱環境が影響されてしまうのを防ぐものである。夏季など、建物を冷やしたり、体感温度を下げたりするのに通風は必要である。この際、日射の流入があれば、通風の効果は減少してしまう。そのために、日射を貫入させない素材で覆部24を構成することで、日射を防ぐことが出来る。覆部24を、断熱性に優れたALC(軽量気泡コンクリート)で構成すると、日射による熱に流入を更に防ぐことができるので好ましい。ALCは、塗装で表面を仕上げてもよいし、その上にさらに断熱材や放水シートを積層してもよい。
【0040】
蓋部材20Aの庇部22Aは、蓋部材20Aの本体部21Aの外周縁部に釘やビス等の手段によって固着されている。庇部22Aの上面22Aaは、外方になるに従って漸次鉛直方向下方に傾斜するように形成されている。また、本実施形態においては、庇部22Aの下面22Abもまた、外方になるに従って(本体部21Aから離隔するにつれて)屋根面100に近接するような下り傾斜状に形成されている。そして、庇部22Aの先端には、水切り23がビス等の手段によって取り付けられている。本実施形態においては、このように庇部22Aが全体として下り傾斜状に形成されているため、先端に取り付けられた水切り23の下端部の高さ(図4の破線)は、開口枠10の上端部の高さよりも低くなっており、このため、第一実施形態よりも雨水が浸入し難くなるとともに、日射が入り込むことを防ぐことができる。
【0041】
本実施形態に係る換気ユニット2は、図4に示すように、蓋部材20Aの庇部22Aと屋根面100との間に、庇部22Aの下面22Abに対向するように配置され屋根面100から開口枠10の上端部に向けて上り傾斜状の換気路50を形成する対向部材40を備えている。開口枠10の側部が単なる垂直方向の立ち上がりであれば、その立ち上がりに風が衝突して気流が乱れ、その結果風が通過し難くなるが、本実施形態においては、対向部材40により開口枠10の上端部(開放部)に向かった傾斜を付けることで、庇部22Aの下を通過する風が滑らかに流れるようになる。対向部材40と蓋部材20Aの庇部22Aの間に形成される換気路50は、庇部22Aの先端から開口枠10の上端部に向かうに連れて徐々に狭く形成される。これにより、開口枠10の上方での通風の風力を増大させ、室内側の滞留空気の引き込み力を増大させることが可能となる。
【0042】
以上説明した実施形態に係る換気ユニット2においては、第一実施形態に係る換気ユニット1と同様の作用効果を奏することができる。また、本施形態に係る換気ユニット2においては、蓋部材20Aの庇部22Aの下面22Abを、蓋部材20Aの本体部21Aから離隔するにつれて屋根面100に近接する下り傾斜状に形成している。このため、蓋部材20Aの先端部と屋根面100との間隔が狭まり、雨水の吹き込み口が狭くなるため、室内側への雨水等の吹き込みがさらに抑制されることとなる。
【0043】
また、以上説明した実施形態に係る換気ユニット2においては、屋根面100上に、蓋部材20Aと対向する位置に対向部材40が配置され、対向部材40と蓋部材20Aの庇部22Aの下面22Abとの間に開口枠10上端部に向けての上り傾斜状の換気路50が形成されることとなる。よって、これらの間に入り込んだ風をよりスムーズに開口枠10上部に通過させることができるため、換気能が向上することとなる。
【0044】
また、以上説明した実施形態に係る換気ユニット2においては、蓋部材20Aの本体部21Aの表面に、開口枠10に向けての日射を遮蔽可能な素材で構成された覆部24を設けているため、開口100からの日射の侵入が抑制され、開口100からの日射の侵入に伴う室内側の温度上昇や高輝度部発生等の環境の変化が防止される。
【0045】
<第三実施形態>
次に、図5及び図6を用いて、本発明の第三実施形態に係る換気ユニット3について説明する。本実施形態に係る換気ユニット3は、第一実施形態に係る換気ユニット1に新たな構成を追加したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。従って、第一実施形態と共通する構成については、同一の符合を付して詳細な説明を省略することとする。
【0046】
本実施形態に係る換気ユニット3は、図5に示すように、建物の屋根面100に形成された開口110の縁部111に固定された開口枠10と、開口110及び開口枠10を覆う蓋部材20と、蓋部材20を開口枠10に当接させた閉状態と開口枠10から離隔させた開状態との間で移動させる移動機構30と、を備えている。開口枠10、蓋部材20及び移動機構30は、第一実施形態で説明したものと実質的に同一であるので、詳細な説明を省略する。本実施形態に係る換気ユニット3は、屋根面100が傾斜状に形成された勾配屋根に設置されている。
【0047】
本実施形態に係る換気ユニット3は、図5及び図6に示すように、開口枠10よりも水上側となる位置に、開口枠10に向けて流下する雨水を開口枠10の側方に向けて案内する樋部60を備えている。樋部60には、開口枠10の側方に配置された側方排水樋70に連通する連通孔61が設けられており、樋部60全体が側方排水樋70に向けて傾斜している。勾配屋根上方から屋根面100を伝わる雨水が大量であると、開口枠10の本体部10aの立ち上がりを越えて雨水が建物内に浸入することがある。雨水が立ち上がり部を越えないように、樋部60に雨水返しを付け建物内侵入を防ぐとともに、側方の屋根勾配部に速やかに雨水を排出する。なお、図6においては、開口枠10と樋部60との位置関係を把握し易くするため、蓋部20や移動機構30の図示を省略するとともに、開口枠10の構成を簡略化することとしている。また、図6においては、側方排水樋70を開口枠10の一辺側にのみ設けた例を示したが、開口枠10の対向する二辺に側方排水樋70を設けることもできる。
【0048】
以上説明した実施形態に係る換気ユニット3においては、第一実施形態に係る換気ユニット1と同様の作用効果を奏することができる。また、本実施形態に係る換気ユニット3においては、傾斜状に形成された屋根面100に設けられた開口枠10よりも水上側となる位置に、開口枠10に向けて流下する雨水を開口枠10の側方に向けて案内する樋部60を設けている。このため、樋部60により雨水等は開口枠10側方へと案内されることとなり、開口110及び開口枠10からの雨水等の侵入が著しく抑制されることとなる。
【0049】
<第四実施形態>
次に、図7を用いて、本発明の第四実施形態に係る換気ユニット4について説明する。本実施形態に係る換気ユニット4は、第四実施形態に係る換気ユニット1の蓋部材20及び移動機構30の構成を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。従って、第一実施形態と共通する構成については、同一の符合を付して詳細な説明を省略することとする。
【0050】
本実施形態に係る換気ユニット4は、図7に示すように、建物の屋根面100に形成された開口110の縁部111に固定された開口枠10と、開口110及び開口枠10を覆う蓋部材20Bと、蓋部材20Bを開口枠10に当接させた閉状態と開口枠10から離隔させた開状態との間で移動させる移動機構80と、を備えている。開口枠10は、第一実施形態で説明したものと実質的に同一であるので、詳細な説明を省略する。なお、本実施形態においては、第一実施形態と同様に屋根面100が略水平に形成されている。
【0051】
本実施形態における蓋部材20Bは、開口110及び開口枠10を覆う本体部21Bと、本体部の縁部から外方に延在した状態で設けられるとともに蓋部材20Bが開状態にあるときに蓋部材20Bと開口枠10との間に形成される空隙からの雨水の侵入を抑制する庇部22Bと、が一体的に連接されて、図7に示すように、紙面前後方向中央部における縦断面形状が翼断面形状に近似した形状とされている。
【0052】
具体的には、蓋部材20Bの上面20Baは上方に凸の比較的緩やかな曲面形状を有しており、蓋部材20Bの下面20Bbは下方に凸の比較的膨らんだ曲面形状を有している。このため、蓋部材20Bの径方向一端部20Bcから径方向他端部20Bdまでにいたる曲面の長さは、上面20Baよりも下面20Bbの方が長くなっている。よって、蓋部材20Bの側方から蓋部材20Bに向けて流れてきた風が蓋部材20Bの径方向端部で上面20Ba側と下面20Bb側とに分けられた場合、下面20Bb側を流れる風の速度が上面20Ba側を流れる風の速度を上回ることとなる。このようにして蓋部材20Bの下面20Bb側を流れる風の速度が上昇すると、ベルヌイの定理により、蓋部材20Bの下面20Bb付近における圧力(静圧)が低下することとなる。すると、室内側の滞留空気が蓋部材20B側へと強く引き上げられ(吸引され)るため、滞留空気の排出が促進されることとなる。
【0053】
本実施形態に係る換気ユニット4の開口枠10の上方には、蓋部材20Bの下面20Bbの曲面形状と同様の曲面形状を有する受け部15が設けられている。そして、受け部15と開口枠10の上端部との間にはパッキン16が配置されて防水性を確保している。受け部15には水切り部15aが設けられており、受け部15に溜まった雨水を水切り部15aでせき止め、水切り部15aよりも径方向外側に設けられた図示されていない水切り孔から雨水を排出することができるようになっている。
【0054】
移動機構80は、蓋部材20Bを上下動(昇降)させることにより、蓋部材20Bが開口枠10に当接した閉状態と、蓋部材20Bが開口枠10から離隔した開状態(図7)と、の双方を実現させるものである。本実施形態における移動機構80は、開口枠10の本体部10aの内周に周方向に沿って間隔をおいて複数取り付けられた複数の支持部81と、支持部81に対して上下動可能に取り付けられたロッド部82と、を有している。そして、図示されていないスイッチを押圧操作することによって作動する電動の駆動手段を用いて、ロッド部82を上下動させることができるように構成されている。このような移動機構80により、蓋部材20Bの下面20Bbが、開口枠10の本体部10aの上面に対して同じ間隔を維持した状態で、開口枠10の本体部10aに対して近接・離隔する。これにより、全方位(四周、360°何れの方向からも)から風を受け入れることができるものとなっている。
【0055】
以上説明した実施形態に係る換気ユニット4においては、第一実施形態に係る換気ユニット1と同様の作用効果を奏することができる。
【0056】
本発明は、以上の各実施形態に限定されるものではなく、これら実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
1・2・3・4…換気ユニット
10…開口枠
20・20A・20B…蓋部材
21・21A・22B…本体部
22・22A・22B…庇部
22Ab…(庇部の)下面
24…覆部
30…移動機構
40…対向部材
50…換気路
60…樋部
80…移動機構
100…屋根面
110…開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7