【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決する本発明の一つの態様に係るワークの周縁部を研磨テープを使用して研磨するための研磨装置は、ワークの周縁部の直線的な被研磨部分を研磨する、水平な第1の研磨軸線を有する第1の研磨部と、ワークの周縁部の非直線的な被研磨部分を研磨する、水平な第2の研磨軸線を有する第2の研磨部と、を含み、第1の研磨部が、ワークを保持するための第1のワークユニットと、第1の研磨軸線を挟んで、第1のワークユニットに対向して第1の研磨テープの少なくとも一部の表面を配置するための第1の研磨テープユニットと、を含み、第2の研磨部が、ワークを保持するための第2のワークユニットと、第2の研磨軸線を挟んで、第2のワークユニットに対向して第2の研磨テープの少なくとも一部の表面を配置するための第2の研磨テープユニットと、を含み、第1の研磨部において、配置された第1の研磨テープの表面が第1の研磨面を画成し、直線的な被研磨部分と第1の研磨面とが接して第1の研磨軸線において相対移動することにより研磨が行われ、第2の研磨部において、配置された第2の研磨テープの表面が第2の研磨面を画成し、非直線的な被研磨部分と第2の研磨面とが接して第2の研磨軸線において相対移動することにより研磨が行われる、ことを特徴とする。
【0022】
このように構成することで、研磨テープを使用して、ワークの周縁部の直線的な被研磨部分、例えば、矩形の板ガラスの辺部(稜部)と、ワークの周縁部の非直線的な被研磨部分、例えば、矩形の板ガラスの角部とを研磨装置で研磨することができる。また、上記のように構成することで、例えば、第1の研磨テープと第2の研磨テープ(同じものであってもよい)を研磨装置に配置することで、さまざまな形状(例えば、直線的な形状や所定の曲率を有する形状)の被研磨部分を研磨することができる。本発明に係る研磨装置は、厚さが1mm以下の薄板ワークの周縁部を高精度に研磨することができる。ワークは板ガラスであってよく、シリコン等の結晶材料から成る板であってよい。本発明は特に、劈開性を有する結晶材料から成る板の強度を向上するように、周縁部を研磨するために有効である。ワークは、劈開性を有しない結晶材料から成る板であってもよく、ステンレスやアルミ等の金属材料から成る板であってもよい。
【0023】
本発明に係る研磨装置は、好適に、第1研磨部から第2研磨部にかけて自動的な連続研磨を行うために、ワーク搬送ユニットを含んでよい。ワーク搬送ユニットは、好適に、ワークの上面を吸着し搬送するためのアーム手段を有する。ワーク搬送ユニットのアーム手段はまた、ワークユニット上でワークを回転して配置する。例えば、
図15に図示されているように、矩形のワークWについて、ワークの対角線の交点である中心C1、またはワークの短辺を含む正方形の対角線の交点である中心C2を中心として、ワークを回転(90度ずつ、又は180度ずつ)する。ワーク搬送ユニットを有することにより、例えば、矩形のワークの四つの端面(または、上面、下面に係る八辺)や四つの角部を含むワークの周縁部全体を、連続して自動で研磨することができる。
【0024】
本発明に係る研磨装置は、好適に、板ガラスからなるワークの周縁部を研磨する。板ガラスからなるワークの周縁部を研磨するとき、研磨装置の第1の研磨部において、直線的な被研磨部分と第1の研磨面とが、板ガラスの周縁部の直線的な被研磨部分を、平均表面粗さRaが20nm以下、且つ最大谷深さRvが200nm以下に形成するように相対移動し、研磨装置の第2の研磨部において、非直線的な被研磨部分と第2の研磨面とが、板ガラスの周縁部の非直線的な被研磨部分を、平均表面粗さRaが20nm以下、且つ最大谷深さRvが200nm以下に形成するように相対移動する。
【0025】
本発明に係る研磨装置は、板ガラスの周縁部を研磨して、板ガラスの機械的強度を向上するように構成されたものである。
図16に示されているように、被研磨物である板ガラスWは、主表面(上面、下面)や端面の周縁部(稜部、角部)に、素板を割断した際に形成された(A)凹部や凸部、及び(B)クラック等を有する。稜部に形成された鋭い凸部はチッピングの起点となり、クラックは板ガラスの破壊の起点となる。本発明に係る研磨装置は、板ガラスの製造時に発生したクラック等が伝搬することなく消滅するように周縁部を高精度に研磨して、板ガラスの強度を向上させるものである。板ガラスの強度を向上させることができる高精度な表面性状を形成するために、研磨面が研磨テープにより構成され、被研磨部分に傷やチッピングを形成しないように研磨面と被研磨部分とが相対移動する。
【0026】
具体的に、第1のワークユニットが、ワークを保持するための第1のワーク保持台と、第1のワーク保持台を前記第1の研磨軸線に沿って揺動させるための揺動手段と、を含む。
【0027】
本発明に係る研磨装置においては、静止した研磨面に対して、直線的な被研磨部分が水平に、所定のストロークで往復移動(揺動)することにより研磨が行われる。ワークユニットは小型化、軽量化され、またバランサー等を配置することにより、揺動の際の振動を低減することができる。これによって、振動に起因する被研磨面の傷の発生が低減し、高精度に平滑な被研磨面に仕上げることができる。研磨面の位置は静止し、研磨面を形成する研磨テープは走行していてもよい。
【0028】
本発明に係る研磨装置において、ワーク保持ユニットにより保持された板ガラスと、研磨テープユニットの研磨面とが(相対的に)揺動する範囲(ストローク)は、好適に、プラスマイナス1〜200mmの範囲にある。このようにすることで、研磨量のバラつき(ダレ)が発生しにくくなる。
【0029】
また、第2のワークユニットが、水平なベース上に、水平方向且つ第2の研磨軸線に垂直な方向(X方向)に移動可能に設けられたX方向可動ステージと、第2の研磨軸線に平行な方向(Y方向)に移動可能に設けられたY方向可動ステージであって、X方向に伸長する溝部を一体的に有するY方向可動ステージと、X方向可動ステージに一体的に設けられた第1の鉛直軸により回転可能に水平支持された第2のワーク保持台と、を含み、第2のワーク保持台が、該第2のワーク保持台の表面から垂直に伸長する第2の鉛直軸であって、前記Y方向可動ステージの前記溝部内に摺動可能に位置する第2の鉛直軸を有し、ワークが前記第2のワーク保持台に保持され、非直線的な被研磨部が、第1の鉛直軸及び前記第2の鉛直軸の移動によって、首振り運動しながら前記第2の研磨軸線に沿って揺動する、ことを特徴とする。
【0030】
第2の研磨部においても、静止した研磨面に対して、非直線的な被研磨部分が、水平面内で首振り運動しながら所定のストロークで往復移動することにより研磨が行われる。このとき、首振り運動は、被研磨部分の曲率等に従って(あるいは、形成したい曲率に従って)決定することができ、水平な往復運動の軌跡は、研磨軸線に一致するので、非直線的な被研磨部分が平坦な研磨面に順次的に当接しながら研磨が行われる。
【0031】
二つの鉛直軸の位置は、サーボモータ等により同期制御されることが好ましい。第1の鉛直軸のX方向の位置x、及び第2の鉛直軸のX方向の位置x’、Y方向の位置yが同期して制御されることにより、板ガラスの角部等の非直線的な被研磨部分を、所望のR形状(例えば、R1、R10等)に形成することができる。
【0032】
好適に、一種類の研磨テープであっても、さまざまな曲率を有する被研磨部分を研磨することができる。R形状に合わせて研磨材料(砥石等)を作製する必要がなく、コストを削減しながらワークの角部に高精度な仕上がり面を形成することができる。
【0033】
また、第1の研磨テープユニットが、第1の研磨面を水平方向且つ第1の研磨軸線に垂直な方向に移動させるための第1の研磨テープ移動手段を有し、それによって、直線的な被研磨部分と第1の研磨面とが前記第1の研磨軸線において当接することができ、第2の研磨テープユニットが、第2の研磨面を水平方向且つ第2の研磨軸線に垂直な方向に移動するための第2の研磨テープ移動手段を有し、それによって、非直線的な被研磨部分の少なくとも一部と第2の研磨面とが第2の研磨軸線において当接することができる、ことを特徴とする。
【0034】
上記のような位置決め機構を有することにより、例えば、矩形のワークの辺部全体が研磨軸線において平坦な研磨面に当接することができ、片あたりのない、均一な研磨を行うことができる。また、ワークの一点への機械的衝撃が抑制されるため、チッピングの発生とワークに存在していたクラックの伝搬も抑えられ、ワークの破壊強度を向上させる高精度な研磨を行うことができる。また、ワーク毎の強度のバラツキがなく、品質を安定させることができる。
【0035】
さらに、第1の研磨テープユニットが、第1の研磨面の長手軸線を、第1の研磨軸線に対して傾斜させるための第1の傾斜手段を含み、第2の研磨テープユニットが、第2の研磨面の長手軸線を、第2の研磨軸線に対して傾斜させるための第2の傾斜手段を含む、ことを特徴とする。
【0036】
本発明に係る研磨テープユニットは、好適に、ワークユニットに対向して位置する、研磨軸線に平行な研磨パッドを有し、該研磨パッドに(走行可能に)配置された研磨テープの表面が、ワークの被研磨部分を研磨するための研磨面を画成する。研磨パッドに配置された研磨テープは所定の幅と長さを有し、長手方向の軸線(長手軸線)を有する。該長手軸線は、研磨テープが走行される場合、走行方向に等しい。該長手軸線は研磨軸線と一致してもよく、研磨軸線に対して傾斜していてもよい。
【0037】
研磨面の長手軸線を、例えば、θ度だけ傾けることができる。研磨面が鉛直な面である場合、θ度は水平面に対する傾斜角度となる。
【0038】
研磨面を画成する研磨テープは、所定の幅を有する。また、所定の速度で連続走行されることがある。研磨テープの長手軸線を水平にすると、例えば、水平なワークの直線状の辺部に当接する研磨面(研磨テープ)はわずかとなり、研磨を行うことなく使用済みとなって巻き取られる研磨テープの量が多くなる。本発明に係る研磨装置は、研磨面の長手軸線を傾斜させる手段を有するので、コスト面でも利益が大きい。すなわち、研磨面の長手軸線(走行される場合は、走行方向)を研磨軸線に対して傾けることにより、研磨テープの広い範囲(好適に、全面)を有効に使用することができ、ランニングコスト(研磨テープのコスト)を低減することができる。板ガラス等のワークの辺部の長さに応じて、傾斜する角度θを、例えば、0度<θ≦90度の範囲において決定することができる。一定の幅の研磨テープでサイズが異なる板ガラス等ワークに対応することができ、研磨テープユニットの構造を簡素化することができる。複数のテープユニットを使用する際も、仕様が均一となり、研磨テープユニットの製造コストを低減することができる。また、一種類の研磨テープで多種のワーク(板ガラス等)に対応することができるので、ワーク毎にテープを交換する必要がなく、サイクルタイムを低減することができる。研磨テープの種類が少なくて済むので、在庫管理も容易になる(不良在庫の低減、同じ種類のテープをまとめて購入することによるボリュームディスカウント等)。狭い幅の研磨テープを使用して、研磨テープを軽量化することができ、テープの交換作業が簡便になる。また、一定の幅の研磨テープを使用して、複数の板ガラスを同時に研磨することができ、サイクルタイムの一層の低減を図ることができる。
【0039】
さらに、第1の研磨テープユニットが、第1の研磨面を、第1の研磨軸線を中心に回動させるための第1の回動手段を含み、第2の研磨テープユニットが、第2の研磨面を、第2の研磨軸線を中心に回動させるための第2の回動手段を含む、ことを特徴とする。
【0040】
本発明に係る研磨装置は、研磨面を鉛直に配置することができ、また、研磨面を、研磨軸線(または、研磨軸線に平行な回動軸線)を中心に回動させ、鉛直面に対して傾斜させることができる。このようにすることで、ワークの直線的な辺部をC面研磨することができる。研磨テープユニットが回動するので、ワークユニットに水平に固定されたワークの上面及び下面係る辺部に、所望のC面研磨を行うことができる。ワークユニットは、ワークを傾斜等する必要がなく、構成を簡素化することができる。研磨テープユニットの研磨面が、研磨軸線を中心に回動する角度αの範囲は、好適に、鉛直面に平行な研磨面を0度として上下方向に最大で90度(このとき、研磨面は水平)である。
【0041】
あるいは、研磨テープユニットは回動機構を有しなくてもよい。この場合、水平に置かれた板ガラス等ワークの上面(又は下面)に係る一つの辺部(稜部)をC面研磨するために、研磨テープユニットの研磨面を、鉛直面(又は水平面)に対して、例えば45度傾斜した状態で固定して、研磨テープユニットを構成してもよい。
【0042】
さらに、第1のワークユニットが、ワークを水平方向且つ第1の研磨軸線に垂直な方向に移動させるためのワーク移動手段を含む、ことを特徴とする。このようにすることで、直線的な被研磨部分と研磨面とが、研磨軸線において確実に当接することができる。
【0043】
さらに、本発明に係る研磨装置は、第1のワークユニットが、ワークを押圧して固定する、及び/又は吸着して固定するための第1のワーク固定手段を含み、第2のワークユニットが、ワークを、押圧して固定する、及び/又は吸着して固定するための第2のワーク固定手段を含む、ことを特徴とする。
【0044】
ワークユニット(第1、第2)に置かれた板ガラス等のワークは、実際の研磨処理の前にワークユニットのワーク保持台に固定される。固定手段として、好適に、吸引力と押し付け力が用いられる。板ガラス等のワークは、固定板等により上方から押圧されて固定されてよく、真空吸着法等により保持台に固定されてもよい。保持台の表面及び固定板の裏面には、板ガラス等ワークの上面及び下面に傷が発生しないよう、布類やゴム等の弾性シートが貼り付けられてよい。
【0045】
上面を押圧し、併せて下面を吸着することにより、ワーク保持台にワークが高い保持力で保持される。研磨処理中、研磨テープユニットの研磨面により押圧された際にも板ガラスの移動がなく、効率良く研磨を行うことができる。
【0046】
また、第1の研磨テープユニットが、第1の研磨テープを走行させるための第1の研磨テープ走行手段を含み、第2の研磨テープユニットが、第2の研磨テープを走行させるための第2の研磨テープ走行手段を含む、ことを特徴とする。
【0047】
本発明の他の態様に係る研磨装置は、ワークの周縁部の直線的な被研磨部分を研磨テープを使用して研磨するための、水平な研磨軸線を有する研磨装置であって、ワークを保持するためのワークユニットと、研磨軸線を挟んで、ワークユニットに対向して研磨テープの少なくとも一部の表面を配置するための研磨テープユニットと、を含み、配置された研磨テープの表面が研磨面を画成し、直線的な被研磨部分と研磨面とが接して研磨軸線において相対移動することにより研磨が行われる、ことを特徴とする。
【0048】
また、ワークが板ガラスから成り、ワークユニットが、ワークを保持するためのワーク保持台と、ワーク保持台を研磨軸線に沿って揺動させるための揺動手段と、を含み、直線的な被研磨部分と研磨面とが、板ガラスの周縁部の直線的な被研磨部分を、平均表面粗さRaが20nm以下、且つ最大谷深さRvが200nm以下に形成するように相対移動する、ことを特徴とする。
【0049】
さらに、研磨テープユニットが、研磨面を水平方向且つ研磨軸線に垂直な方向に移動させるための研磨テープ移動手段であって、それによって、直線的な被研磨部分と前記研磨面とが研磨軸線において当接することができる、研磨テープ移動手段と、研磨面の長手軸線を、研磨軸線に対して傾斜させるための傾斜手段と、研磨面を、研磨軸線を中心に回動させるための回動手段と、を含む、ことを特徴とする。
【0050】
さらに、ワークユニットが、ワークを水平方向且つ研磨軸線に垂直な方向へ移動させるためのワーク移動手段を含む。
【0051】
このように構成することで、研磨テープを使用して、矩形の板ガラスの辺部等、ワークの直線的な被研磨部分を、研磨テープを使用して、所望のC面研磨を行うことができる研磨装置とすることができる。また、板ガラスの辺部又は端面を、板ガラスの強度を向上させるように、高精度に研磨することができる研磨装置とすることができる。
【0052】
本発明に係るもう一つの他の態様の研磨装置は、ワークの周縁部の非直線的な被研磨部分を研磨テープを使用して研磨するための、水平な研磨軸線を有する研磨装置であって、ワークを保持するためのワークユニットと、研磨軸線を挟んで、ワークユニットに対向して研磨テープの少なくとも一部の表面を配置するための研磨テープユニットと、を含み、配置された研磨テープの表面が研磨面を画成し、非直線的な被研磨部分と研磨面とが接して研磨軸線において相対移動することにより研磨が行われる、ことを特徴とする。
【0053】
また、ワークが板ガラスから成り、ワークユニットが、水平なベース上に、水平方向且つ研磨軸線に垂直な方向(X方向)に移動可能に設けられたX方向可動ステージと、研磨軸線に平行な方向(Y方向)に移動可能に設けられたY方向可動ステージであって、X方向に伸長する溝部を一体的に有するY方向可動ステージと、X方向可動ステージに一体的に設けられた第1の鉛直軸により回転可能に水平支持されたワーク保持台と、を含み、ワーク保持台が、該ワーク保持台の表面から垂直に伸長する第2の鉛直軸であって、Y方向可動ステージの溝部内に摺動可能に位置する第2の鉛直軸を有し、ワークがワーク保持台に保持され、非直線的な被研磨部が、第1の鉛直軸及び第2の鉛直軸の移動によって、首振り運動しながら前記研磨軸線に沿って揺動し、非直線的な被研磨部分と研磨面とが、板ガラスの周縁部の非直線的な被研磨部分を、平均表面粗さRaが20nm以下、且つ最大谷深さRvが200nm以下に形成するように相対移動する、ことを特徴とする
【0054】
このように構成することで、研磨テープを使用して、板ガラス等ワークの非直線的な被研磨部分の研磨(例えば、角部のR面研磨)を行う研磨装置とすることができる。曲率が異なるR形状を有する被研磨部分を研磨するとき(例えば、R1、R10等)、ワークユニットが該形状に応じて首振り運動しながら研磨軸線上を揺動するので、R形状に対応して研磨材料(砥石等)を変更することを要することなく、高精度な研磨を行うことができる。
【0055】
上記の本発明に係る研磨装置に使用される研磨テープは、プラスチック製の基材フィルムの表面に樹脂バインダーに砥粒を分散させた溶液を塗布し、乾燥、硬化させたシートを必要幅にスリットし、リールに巻かれたものである。
【0056】
基材フィルムとして、柔軟性を有する合成樹脂製のプラスチックフィルムが使用される。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール又はメタクリルアルコールを主成分とするアクリル系樹脂等から成るフィルムが基材フィルムとして使用される。
【0057】
砥粒(研磨粒子)としては、アルミナ(Al
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2 )、シリカ(SiO
2 )、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、酸化クロム(Cr
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2 )、立方晶窒化ホウ素(cBN)等及びその混合物が使用できる。
【0058】
砥粒の平均粒径は、好適に、0.2μm以上(#20000)、3μm以下(#4000)の範囲にある。平均粒径が3μmを超えると、研磨前の端面の比較的大きな傷や欠けは除去できるが、仕上がり面に新たに微細な傷や欠けが発生し、板ガラスに十分な強度を与えることができず好ましくない。平均粒径が0.2μm未満であると、研磨効率が極端に下がり生産性が悪くなるため、工業上、実用的ではない。
【0059】
さらに、本発明は、上で述べた研磨装置を使用して、板ガラスから成るワークの強度を向上させるように該ワークの周縁部を研磨する方法を与える。該方法は、ワークの周縁部の直線的な被研磨部分、又は非直線的な被研磨部分を研磨テープを使用して研磨し、被研磨部分を、平均表面粗さRaが20nm以下、且つ最大谷深さRvが200nm以下に形成する研磨工程、から成り、研磨テープが、基材フィルムに樹脂バインダにより所定の粒径を有する砥粒が固着されて成る。
【0060】
板ガラスに十分な機械的強度を付与するために、板ガラスの周縁部に、上記の表面粗さRa及び最大谷深さRvの仕上がり面を形成することが有効である。周縁部が上記の表面性状を有するように、研磨された板ガラスは、周縁部の微細な傷や欠けを起点にした割れの発生を防ぎ、機械的応力や熱ショックによる破損を防止することができる。また、後工程の加工歩留まりを改善し、板ガラスが組み込まれた製品の信頼性を向上させることができる。