特許第6190111号(P6190111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190111鋼管コンクリート杭の施工方法及び鋼管杭
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190111
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】鋼管コンクリート杭の施工方法及び鋼管杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/30 20060101AFI20170821BHJP
   E02D 5/34 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   E02D5/30 A
   E02D5/34 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-265515(P2012-265515)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-109175(P2014-109175A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年9月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】松塚 弘文
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 重人
(72)【発明者】
【氏名】穐山 和生
(72)【発明者】
【氏名】中島 正毅
(72)【発明者】
【氏名】林 誠
(72)【発明者】
【氏名】永野 浩一
【審査官】 小池 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭49−041848(JP,B1)
【文献】 特公平03−048292(JP,B2)
【文献】 実公昭58−033146(JP,Y2)
【文献】 実開平05−081327(JP,U)
【文献】 米国特許第03685302(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/20,5/28,5/30,5/34
E02D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に掘削形成された杭孔内に、管周壁の管軸方向の複数箇所にコンクリートが流出可能な流出孔を所定間隔で形成してある鋼管杭を建て込み、この鋼管杭内に挿入されたコンクリート打設用の充填管からコンクリートを充填し、このコンクリートの充填に伴って前記鋼管杭の下端開口から流出するコンクリート及び前記鋼管杭内に充填されたコンクリートの上面高さに対応する前記流出孔から流出するコンクリートにより、前記鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間を底部側から充填し、
前記鋼管杭内へのコンクリートの充填速度を、前記環状空間でのコンクリート上面位置と、前記鋼管杭内のコンクリート上面位置との間に、前記流出孔が上下に隣り合って二箇所以上に位置しないように設定して、前記鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さの上昇に伴って前記流出孔を順次高位側に変更し、各流出孔から順次管外に流出するコンクリートが、前記環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と置換されながら充填される鋼管コンクリート杭の施工方法。
【請求項2】
前記鋼管杭の流出孔が、打設されるコンクリート中の骨材の最大寸法の2倍以上の大きさに設定されている請求項1に記載の鋼管コンクリート杭の施工方法。
【請求項3】
前記流出孔が、前記鋼管杭の管周壁に千鳥配列で形成されている請求項1又は2に記載の鋼管コンクリート杭の施工方法。
【請求項4】
地盤に掘削形成された杭孔内に建て込まれる鋼管杭であって、
鋼管杭の管周壁の内周面に、スパイラル状のリブが形成してあり、前記管周壁の管軸方向の複数個所に、コンクリートが流出可能な流出孔が間隔を開けて前記管軸方向を中心とした螺旋状に形成されている鋼管杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、施工現場の地盤に地盤安定液(ベントナイト、泥水等)を満たしながら所定の深度まで掘削された杭孔内の所定位置に鋼管杭を建て込み、この鋼管杭内及び鋼管杭の外周部にコンクリートを打設して構築される鋼管コンクリート杭の施工方法及びそれに用いられる鋼管杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鋼管コンクリート杭の施工方法では、地盤安定液が満たされた状態で掘削形成されている杭孔内に、この杭孔の内径よりも小なる外径の鋼管杭を建て込み、この鋼管杭内にコンクリート打設用の充填管の一例であるトレミー管を挿入し、鋼管杭内にコンクリート(生コンクリート)を打設する。
【0003】
鋼管杭内に打設されたコンクリートの一部は、当該鋼管杭の下端開口から流出して鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に底部側から回り込む。
【0004】
次に、トレミー管を徐々に引上げながら鋼管杭内にコンクリートを打設し、鋼管杭内に充填されたコンクリートの上面高さが鋼管杭の上端側の設定充填位置に到達した時点でコンクリート打設を中止してトレミー管を引き上げたのち、鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内にそれの上側開口からコンクリートを打設して鋼管コンクリート杭を構築する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、鋼管杭の下端開口より周囲にコンクリートが回り込みできない場合を想定して、鋼管杭の下端近傍の管周壁に充填孔を形成したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−220140号公報
【特許文献2】特開2003−082689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の鋼管コンクリート杭の施工方法では、鋼管杭の下端開口又はこれと鋼管杭の下端近傍に形成されている充填孔から流出したコンクリートの一部が鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に底部側から回り込むものの、この環状空間でのコンクリートの充填作業の大部分は、環状空間の上側開口からのコンクリートの打設によって行うため、上方から打設されるコンクリートと環状空間内に存在する地盤安定液との置換が不確実になり、地盤安定液の一部が打設コンクリートに巻き込まれたり、封入される等の可能性があった。
【0008】
このような地盤安定液の巻き込みや封入等が発生すると、鋼管コンクリート杭としての所定の周面摩擦を確保することができなくなる不都合がある。
【0009】
また、このような不都合を解消する手段として、一般に、鋼管コンクリート杭の施工後に、鋼管杭の外周部にグラウトを注入する方法が採られているが、この場合、施工コストの高騰化と工期の長期化を招来する。しかも、グラウト注入を確実に施工できたかの確認が取れないため、鋼管コンクリート杭の品質信頼性の面で問題があった。
【0010】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内へのコンクリート充填時における地盤安定液との置換の確実化、円滑化を促進して、鋼管コンクリート杭の品質信頼性の向上とグラウト注入の削減を図ることのできる鋼管コンクリート杭の施工方法及びその工法に有効な鋼管杭を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による第1の特徴構成は、鋼管コンクリート杭の施工方法であって、地盤に掘削形成された杭孔内に、管周壁の管軸方向の複数箇所にコンクリートが流出可能な流出孔を所定間隔で形成してある鋼管杭を建て込み、この鋼管杭内に挿入されたコンクリート打設用の充填管からコンクリートを充填し、このコンクリートの充填に伴って前記鋼管杭の下端開口から流出するコンクリート及び前記鋼管杭内に充填されたコンクリートの上面高さに対応する前記流出孔から流出するコンクリートにより、前記鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間を底部側から充填し、前記鋼管杭内へのコンクリートの充填速度、前記環状空間でのコンクリート上面位置と、前記鋼管杭内のコンクリート上面位置との間に、前記流出孔が上下に隣り合って二箇所以上に位置しないように設定して、前記鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さの上昇に伴って前記流出孔を順次高位側に変更し、各流出孔から順次管外に流出するコンクリートが、前記環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と置換されながら充填される点にある。
【0012】
上記構成によれば、地盤に掘削形成された杭孔内に鋼管コンクリート杭を造成するにあたって、杭孔の崩壊防止のための地盤安定液が満たされている杭孔内に、管周壁の管軸方向の複数箇所にコンクリートが流出可能な流出孔が所定間隔で形成されている鋼管杭を建て込み、この鋼管杭内に挿入された充填管からコンクリートを打設すると、その打設されたコンクリートの一部が鋼管杭の下端開口から流出して鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に底部側から回り込み、この環状空間の底部側に地盤安定液と円滑に置換しながらコンクリートが充填される。
【0013】
鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さが鋼管杭の管周壁に形成されている最低位となる第1番目の流出孔に到達すると、この第1番目の流出孔から鋼管杭内に打設されたコンクリートの一部が管外に流出し、環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と置換しながらコンクリートが充填される。
【0014】
鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さの上昇に伴って流出孔を順次高位側に変更し、各流出孔から順次管外に流出するコンクリートが環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と置換しながら充填される。
【0015】
鋼管杭内に充填されたコンクリートの上面高さ及び鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に充填されたコンクリートの上面高さが設定充填高さに到達したとき、コンクリートの打設を終了する。
【0016】
したがって、鋼管杭の管周壁の管軸方向の複数箇所に形成した流出孔から順次流出するコンクリートにより、鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間に対して地盤安定液と円滑に置換しながら底部側から確実に充填することができるから、地盤安定液の一部が打設コンクリートに巻き込まれたり、封入されること等を抑制して、所定の周面摩擦を備えた鋼管コンクリート杭を確実に構築することができる。
それ故に、鋼管コンクリート杭の品質信頼性の向上とグラウト注入の削減を図ることができる。
【0017】
【0018】
上記構成によれば、鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さの上昇に伴って流出孔を順次高位側に変更しながら、鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内にコンクリートを充填するとき、上述の鋼管杭内へのコンクリートの充填速度設定によって、鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さと環状空間内に充填されるコンクリートの上面高さとの高低差が流出孔の所定間隔以下となり、環状空間内に充填されるコンクリートと地盤安定液との置換がより円滑になり、鋼管コンクリート杭の品質信頼性をより高めることができる。
【0019】
本発明による第2の特徴構成は、前記鋼管杭の流出孔が、打設されるコンクリート中の骨材の最大寸法の2倍以上の大きさに設定されている点にある。
【0020】
上記構成によれば、コンクリートの組成中で最も大きい骨材(粗骨材)がそれの最大寸法の2倍以上の大きさに設定されている流出孔を通して環状空間内にスムーズに流入し、環状空間内でのコンクリートの充填効率を高めることができる。
【0021】
本発明による第3の特徴構成は、前記流出孔が、前記鋼管杭の管周壁に千鳥配列で形成されている点にある。
【0022】
上記構成によれば、鋼管杭内に打設されたコンクリートを管外の環状空間に流出させるための複数の流出孔を管軸方向に所定間隔で貫通形成しながらも、鋼管杭自体の強度を確保することができる。
【0023】
本発明による第4の特徴構成は、地盤に掘削形成された杭孔内に建て込まれる鋼管杭であって、鋼管杭の管周壁の内周面に、スパイラル状のリブが形成してあり、前記管周壁の管軸方向の複数個所に、コンクリートが流出可能な流出孔が間隔を開けて前記管軸方向を中心とした螺旋状に形成されている点にある。
【0024】
上記構成によれば、地盤に掘削形成された杭孔内に鋼管コンクリート杭を造成するにあたって、杭孔の崩壊防止のための地盤安定液が満たされている杭孔内に、管周壁の管軸方向の複数箇所にコンクリートが流出可能な流出孔が所定間隔で形成されている本発明の鋼管杭を建て込み、この鋼管杭内に挿入された充填管からコンクリートを打設すると、その打設されたコンクリートの一部が鋼管杭の下端開口から流出して鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に底部側から回り込み、この環状空間の底部側に地盤安定液と円滑に置換しながらコンクリートが充填される。
【0025】
鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さが鋼管杭の管周壁に形成されている最低位となる第1番目の流出孔に到達すると、この第1番目の流出孔から鋼管杭内に打設されたコンクリートの一部が管外に流出し、鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と円滑に置換しながらコンクリートが充填される。
【0026】
鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さの上昇に伴って流出孔を順次高位側に変更し、各流出孔から順次管外に流出するコンクリートが環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と円滑に置換しながら充填される。
【0027】
したがって、鋼管杭の管周壁の管軸方向の複数箇所にコンクリートが流出可能な流出孔を形成するといった合理的な改良により、地盤安定液の一部が打設コンクリートに巻き込まれたり、封入されること等を抑制して、所定の周面摩擦を備えた鋼管コンクリート杭を確実に構築することができ、鋼管コンクリート杭の品質信頼性の向上とグラウト注入の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態を示す鋼管コンクリート杭の施工方法の工程説明図(a)〜(d)
図2】鋼管杭の正面図(a)と各部位の断面図(b)〜(e)
図3】鋼管杭の流出孔形成箇所の流出説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
図1図3は、建築物の地下構造体の構築において、施工現場の地盤に地盤安定液(ベントナイト、泥水等)を満たしながら所定の深度まで掘削された杭孔1内の所定位置に、杭孔1の内径D1よりも小なる外径D2に構成されている鋼管杭2を建て込み、この鋼管杭2の内部及び当該鋼管杭2の外周面2aと杭孔1の孔壁面1aとの間の環状空間Sにコンクリート3を打設して鋼管コンクリート杭4を造成する施工方法及びそれに用いられる鋼管杭2を示す。
【0030】
この実施形態の図1おいては、杭孔1内の所定建て込み位置に鋼管杭2のみを配置した状態を表しているが、鋼管杭2の下端部内には、図示はしないものの、鋼管杭2よりも下層側の杭孔1内に配置される鉄筋篭の上端部が挿入状態で一体的に連結され、さらに、鋼管杭2の上側部内には、梁と鋼管コンクリート杭4との一体化のための定着筋が挿入状態で一体的に連結され、この状態でのコンクリート3の打設によって鋼管コンクリート杭4が造成される。
【0031】
鋼管杭2の管周壁2Aの管軸方向の複数箇所には、図2に示すように、鋼管杭2内に挿入されたコンクリート打設用の充填管の一例であるトレミー管5から打設されたコンクリート3が管外に流出可能な円形状の流出孔6が管軸方向に所定間隔をおいて千鳥配列で形成されている。
【0032】
この流出孔6は、鋼管杭2の下端(先端)から管軸方向に所定寸法L0だけ上方に変位した部位を第1番目の孔形成位置とし、管軸方向に所定間隔をおいて合計で8箇所の孔形成位置に形成されているとともに、各孔形成位置において、管軸を通る直径方向で相対向する管周壁2Aの二箇所に流出孔6が形成されている。
【0033】
第1番目の一対の流出孔6は、図2の(e)に示すように、図面上の上下方向となるY軸及び左右方向となるX軸に対して管周方向に45度変位した位置に配置され、第2番目の一対の流出孔6は、図2の(d)、(e)に示すように、第1番目の一対の流出孔6に対して管周方向に90度変位した位置に配置されている。
【0034】
また、第3番目の一対の流出孔6は、図2の(c)、(d)に示すように、第2番目の一対の流出孔6に対して管周方向に45度変位したX軸上に配置され、第4番目の一対の流出孔6は、図2の(b)、(c)に示すように、第3番目の一対の流出孔6に対して管周方向に90度変位したY軸上に配置されている。
【0035】
第5番目〜第8番目の各一対の流出孔6は、上述の第1番目〜第4番目の各一対の流出孔6の千鳥配列と同一に構成されている。
【0036】
第1番目の流出孔6から第2番目の流出孔6までの管軸方向での第1間隔L1と、第2番目の流出孔6から第3番目の流出孔6までの管軸方向での第2間隔L2は同一寸法で、前記所定寸法L0よりも大に構成され、更に、第3番目の流出孔6から第4番目の流出孔6までの管軸方向での第3間隔L3は、前記所定寸法L0よりも少し小に構成されている。
【0037】
第1番目の流出孔6〜第4番目の流出孔6までの下方側グループと第5番目の流出孔6〜第8番目の流出孔6までの上方側グループとの間の第4間隔L4は、前記所定寸法L0と略同一に構成されている。
【0038】
第5番目の流出孔6から第6番目の流出孔6までの管軸方向での第5間隔L5と、第6番目の流出孔6から第7番目の流出孔6までの管軸方向での第6間隔L6は同一寸法で、前記第1間隔L1よりも少し小に構成され、更に、第7番目の流出孔6から第8番目の流出孔6までの管軸方向での第7間隔L7は、前記第3間隔L3と同一に構成されている。
【0039】
前記流出孔6は、図3に示すように、鋼管杭2として要求される所定強度を確保しながら打設されるコンクリート3中の骨材(粗骨材)3Aがスムーズに管外に流出することができるように、場所打ちコンクリート3中の骨材3Aの最大寸法Lの略2〜8倍、好ましくは、略4〜6倍の大きさの孔径D3に設定されている。
【0040】
例えば、場所打ちコンクリート3中の骨材3Aの最大寸法Lが40mm(ダム等では80mm)、鋼管杭2の外径が2000〜2500mmとしたとき、流出孔6の孔径D3を略150〜250mmの範囲で適宜設定する。当該実施形態では、流出孔6の孔径D3を250mmに設定してある。
【0041】
尚、鋼管杭2の定着筋挿入領域に略相当する上側管部には前記流出孔6は形成されていない。
また、鋼管杭2の内周面には、図示はしないがスパイラル状のリブが一体形成されている。
【0042】
次に、上述の如く構成された鋼管杭2を用いた鋼管コンクリート杭4の施工方法について説明する。
[1]図1の(a),(b)に示すように、施工現場の地盤に地盤安定液(ベントナイト、泥水等)を満たしながら所定の深度まで掘削された杭孔1内に、クレーンで吊り下げられた鋼管杭2を鉛直姿勢で吊り込み、この鋼管杭2を杭孔1内の所定位置に立て込む。
【0043】
[2]図1の(c)に示すように、杭孔1内の底部側に挿入されたトレミー管5からコンクリート3を打設し、このトレミー管5を適宜引上げ操作しながら杭孔1内の地盤安定液と円滑に置換しつつ底部側からコンクリート3を充填する。
杭孔1内に充填されたコンクリート3の上面が鋼管杭2の下端に到達し、トレミー管5の下端が鋼管杭2内に引き上げられている状態では、トレミー管5から打設されたコンクリート3の一部が鋼管杭2の下端開口2bから流出して鋼管杭2の外周面2aと杭孔1の孔壁面1aとの間の環状空間S内に底部側から回り込み、この環状空間Sの底部側に地盤安定液と円滑に置換しながらコンクリート3が充填される。
【0044】
[3]図1の(d)に示すように、鋼管杭2内に充填されるコンクリート3の上面3aの高さが鋼管杭2の管周壁2Aに形成されている最低位となる第1番目の流出孔6に到達すると、この第1番目の流出孔6から鋼管杭2内に打設されたコンクリート3の一部が管外に流出し、鋼管杭2の外周面2aと杭孔1の孔壁面1aとの間の環状空間S内に充填されているコンクリート3の上面3bに地盤安定液と円滑に置換しながらコンクリート3が充填される。
【0045】
鋼管杭2内に充填されるコンクリート3の上面高さの上昇に伴って流出孔6を順次高位側に変更し、各流出孔6から順次管外に流出するコンクリート3が環状空間S内に充填されているコンクリート3の上面3bに地盤安定液と円滑に置換しながら充填される。
【0046】
鋼管杭2内へのコンクリート3の充填速度(単位時間当たりのコンクリート打設量)が、鋼管杭2内に充填されるコンクリート3の上面3aの高さと環状空間S内に充填されるコンクリート3の上面3bの高さとの高低差hが流出孔6の所定間隔以下になる状態に設定されている。
【0047】
流出孔6の所定間隔は、上述のように第1・第2間隔L1,L2が最大になり、第3間隔L3が最小となるため、鋼管杭2内へのコンクリート3の充填速度は、鋼管杭2内に充填されるコンクリート3の上面高さと環状空間S内に充填されるコンクリート3の上面高さとの高低差hが第1間隔L1又は第3間隔L3以下となる充填速度に設定することになる。
【0048】
そのため、鋼管杭2内に充填されるコンクリート3の上面高さの上昇に伴って流出孔6を順次高位側に変更しながら、鋼管杭2の外周面2aと杭孔1の孔壁面1aとの間の環状空間S内にコンクリート3を充填するとき、上述の鋼管杭2内へのコンクリート3の充填速度設定によって、鋼管杭2内に充填されるコンクリート3の上面3aの高さと環状空間S内に充填されるコンクリート3の上面3bの高さとの高低差hが流出孔6の所定間隔以下となり、環状空間S内に充填されるコンクリート3と地盤安定液との置換が一層円滑、確実になり、鋼管コンクリート杭4の品質信頼性をより高めることができる。
【0049】
また、鋼管杭2の定着筋挿入領域に略相当する上側管部の外周面と杭孔1の孔壁面1aとの間の環状空間Sに対しては、最上位の第8番目の流出孔6から管外に流出するコンクリート3と前記環状空間Sの上部から打設されるコンクリート3とにより充填される。
【0050】
そして、鋼管杭2内に充填されたコンクリート3の上面高さ及び鋼管杭2の外周面2aと杭孔1の孔壁面1aとの間の環状空間S内に充填されたコンクリート3の上面高さが設定充填高さに到達したとき、コンクリート3の打設を終了する。
【0051】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、鋼管杭2の管軸方向の複数の孔形成位置に一対ずつ流出孔6を形成したが、各孔形成位置に一つ又は三つ以上の流出孔6を形成してもよい。
また、各孔形成位置に形成される周方向での流出孔6の数を、管軸方向で異なる数に設定してもよい。
【0052】
(2)上述の第1実施形態では、鋼管杭2の管軸方向の複数位置に形成される流出孔6を千鳥状に配置したが、この複数の流出孔6を管軸方向に沿って一直線状に配置してもよく、さらに、複数の流出孔6を螺旋状に配置してもよい。
【0053】
(3)上述の第1実施形態では、複数の流出孔6の管軸方向での所定間隔を複数種類の間隔に設定したが、管軸方向で一定間隔に設定してもよい。
【0054】
(4)上述の第1実施形態では、流出孔6を円形に構成したが、長円形や四角形等の他の形状に構成してもよい。
【0055】
(5)上述の第1実施形態では、鋼管杭2の下側管部と中央管部とに複数の流出孔6を形成したが、鋼管杭2の全長に亘って複数の流出孔6を所定間隔で形成しもよい。
【符号の説明】
【0056】
S 環状空間
h 高低差
D3 孔径
L 最大寸法
1 杭孔
1a 孔壁面
2 鋼管杭
2A 管周壁
2a 外周面
2b 下端開口
3 コンクリート
3A 骨材
3a 上面
3b 上面
6 流出孔
図1
図2
図3