【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の鋼管コンクリート杭の施工方法では、鋼管杭の下端開口又はこれと鋼管杭の下端近傍に形成されている充填孔から流出したコンクリートの一部が鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に底部側から回り込むものの、この環状空間でのコンクリートの充填作業の大部分は、環状空間の上側開口からのコンクリートの打設によって行うため、上方から打設されるコンクリートと環状空間内に存在する地盤安定液との置換が不確実になり、地盤安定液の一部が打設コンクリートに巻き込まれたり、封入される等の可能性があった。
【0008】
このような地盤安定液の巻き込みや封入等が発生すると、鋼管コンクリート杭としての所定の周面摩擦を確保することができなくなる不都合がある。
【0009】
また、このような不都合を解消する手段として、一般に、鋼管コンクリート杭の施工後に、鋼管杭の外周部にグラウトを注入する方法が採られているが、この場合、施工コストの高騰化と工期の長期化を招来する。しかも、グラウト注入を確実に施工できたかの確認が取れないため、鋼管コンクリート杭の品質信頼性の面で問題があった。
【0010】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内へのコンクリート充填時における地盤安定液との置換の確実化、円滑化を促進して、鋼管コンクリート杭の品質信頼性の向上とグラウト注入の削減を図ることのできる鋼管コンクリート杭の施工方法及びその工法に有効な鋼管杭を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による第1の特徴構成は、鋼管コンクリート杭の施工方法であって、地盤に掘削形成された杭孔内に、管周壁の管軸方向の複数箇所にコンクリートが流出可能な流出孔を所定間隔で形成してある鋼管杭を建て込み、この鋼管杭内に挿入されたコンクリート打設用の充填管からコンクリートを充填し、このコンクリートの充填に伴って前記鋼管杭の下端開口から流出するコンクリート及び前記鋼管杭内に充填されたコンクリートの上面高さに対応する前記流出孔から流出するコンクリートにより、前記鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間を底部側から充填し、前記鋼管杭内へのコンクリートの充填速度
を、前記環状空間でのコンクリート上面位置と、前記鋼管杭内のコンクリート上面位置との間に、前記流出孔が上下に隣り合って二箇所以上に位置しないように設定して
、前記鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さの上昇に伴って前記流出孔を順次高位側に変更し、各流出孔から順次管外に流出するコンクリートが、前記環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と置換されながら充填される点にある。
【0012】
上記構成によれば、地盤に掘削形成された杭孔内に鋼管コンクリート杭を造成するにあたって、杭孔の崩壊防止のための地盤安定液が満たされている杭孔内に、管周壁の管軸方向の複数箇所にコンクリートが流出可能な流出孔が所定間隔で形成されている鋼管杭を建て込み、この鋼管杭内に挿入された充填管からコンクリートを打設すると、その打設されたコンクリートの一部が鋼管杭の下端開口から流出して鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に底部側から回り込み、この環状空間の底部側に地盤安定液と円滑に置換しながらコンクリートが充填される。
【0013】
鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さが鋼管杭の管周壁に形成されている最低位となる第1番目の流出孔に到達すると、この第1番目の流出孔から鋼管杭内に打設されたコンクリートの一部が管外に流出し、環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と置換しながらコンクリートが充填される。
【0014】
鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さの上昇に伴って流出孔を順次高位側に変更し、各流出孔から順次管外に流出するコンクリートが環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と置換しながら充填される。
【0015】
鋼管杭内に充填されたコンクリートの上面高さ及び鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に充填されたコンクリートの上面高さが設定充填高さに到達したとき、コンクリートの打設を終了する。
【0016】
したがって、鋼管杭の管周壁の管軸方向の複数箇所に形成した流出孔から順次流出するコンクリートにより、鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間に対して地盤安定液と円滑に置換しながら底部側から確実に充填することができるから、地盤安定液の一部が打設コンクリートに巻き込まれたり、封入されること等を抑制して、所定の周面摩擦を備えた鋼管コンクリート杭を確実に構築することができる。
それ故に、鋼管コンクリート杭の品質信頼性の向上とグラウト注入の削減を図ることができる。
【0017】
【0018】
上記構成によれば、鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さの上昇に伴って流出孔を順次高位側に変更しながら、鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内にコンクリートを充填するとき、上述の鋼管杭内へのコンクリートの充填速度設定によって、鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さと環状空間内に充填されるコンクリートの上面高さとの高低差が流出孔の所定間隔以下となり、環状空間内に充填されるコンクリートと地盤安定液との置換がより円滑になり、鋼管コンクリート杭の品質信頼性をより高めることができる。
【0019】
本発明による第2の特徴構成は、前記鋼管杭の流出孔が、打設されるコンクリート中の骨材の最大寸法の2倍以上の大きさに設定されている点にある。
【0020】
上記構成によれば、コンクリートの組成中で最も大きい骨材(粗骨材)がそれの最大寸法の2倍以上の大きさに設定されている流出孔を通して環状空間内にスムーズに流入し、環状空間内でのコンクリートの充填効率を高めることができる。
【0021】
本発明による第3の特徴構成は、前記流出孔が、前記鋼管杭の管周壁に千鳥配列で形成されている点にある。
【0022】
上記構成によれば、鋼管杭内に打設されたコンクリートを管外の環状空間に流出させるための複数の流出孔を管軸方向に所定間隔で貫通形成しながらも、鋼管杭自体の強度を確保することができる。
【0023】
本発明による第4の特徴構成は、地盤に掘削形成された杭孔内に建て込まれる鋼管杭であって、鋼管杭の管周壁の内周面に、スパイラル状のリブが形成してあり、前記管周壁の管軸方向の複数個所に、コンクリートが流出可能な流出孔が間隔を開けて前記管軸方向を中心とした螺旋状に形成されている点にある。
【0024】
上記構成によれば、地盤に掘削形成された杭孔内に鋼管コンクリート杭を造成するにあたって、杭孔の崩壊防止のための地盤安定液が満たされている杭孔内に、管周壁の管軸方向の複数箇所にコンクリートが流出可能な流出孔が所定間隔で形成されている本発明の鋼管杭を建て込み、この鋼管杭内に挿入された充填管からコンクリートを打設すると、その打設されたコンクリートの一部が鋼管杭の下端開口から流出して鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に底部側から回り込み、この環状空間の底部側に地盤安定液と円滑に置換しながらコンクリートが充填される。
【0025】
鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さが鋼管杭の管周壁に形成されている最低位となる第1番目の流出孔に到達すると、この第1番目の流出孔から鋼管杭内に打設されたコンクリートの一部が管外に流出し、鋼管杭の外周面と杭孔の孔壁面との間の環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と円滑に置換しながらコンクリートが充填される。
【0026】
鋼管杭内に充填されるコンクリートの上面高さの上昇に伴って流出孔を順次高位側に変更し、各流出孔から順次管外に流出するコンクリートが環状空間内に充填されているコンクリートの上面に地盤安定液と円滑に置換しながら充填される。
【0027】
したがって、鋼管杭の管周壁の管軸方向の複数箇所にコンクリートが流出可能な流出孔を形成するといった合理的な改良により、地盤安定液の一部が打設コンクリートに巻き込まれたり、封入されること等を抑制して、所定の周面摩擦を備えた鋼管コンクリート杭を確実に構築することができ、鋼管コンクリート杭の品質信頼性の向上とグラウト注入の削減を図ることができる。