特許第6190135号(P6190135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190135
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】クレーン等作業機のフックブロック
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/04 20060101AFI20170821BHJP
   B66C 1/34 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B66D3/04 J
   B66D3/04 G
   B66C1/34 C
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-69433(P2013-69433)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-189402(P2014-189402A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】高島 浩
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−064994(JP,U)
【文献】 実開昭59−133580(JP,U)
【文献】 実開平4−58584(JP,U)
【文献】 特開平8−259169(JP,A)
【文献】 特開2000−219478(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0011045(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/34 − 1/40
B66D 3/04 − 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームの先端に継ぎ足しジブを備えたクレーン等作業機に使用され、さらに滑車枠側板の間に滑車およびフックを軸支するとともに、該滑車枠側板の間に軸支された滑車のワイヤーロープ巻き掛け部周囲の滑車枠側板間に位置して複数本のワイヤーロープ外れ止め部材を設ける一方、上記滑車枠側板間の正面側先端部分に上記滑車枠側板間の開放空間を閉じる継ぎ足しジブ基端側ガイド用のカバー部材を設けてなるクレーン等作業機のフックブロックであって、
上記ワイヤーロープ外れ止め部材は、パイプ構造のスペーサ部材と該スペーサ部材を挿通支持するボルト部材よりなり、
上記ワイヤーロープ外れ止め部材の1つは、滑車枠側板間の正面側である上記滑車の前部側に位置されているとともに、
上記カバー部材は、上記滑車の前部に位置している上記ワイヤーロープ外れ止め部材を利用して上記滑車枠側板に取り付けられている、
ことを特徴とするクレーン等作業機のフックブロック。
【請求項2】
上記滑車枠側板に上記カバー部材を取り付けている上記ワイヤーロープ外れ止め部材の上記スペーサ部材は、上記カバー部材に固定されている、
ことを特徴とする請求項1記載のクレーン等作業機のフックブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、ブームの先端に継ぎ足しジブを備えたクレーン等作業機に使用されるフックブロックの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーン等の作業機では、一般に吊り荷作業のためのフックブロックが設けられている。このようなフックブロックは、滑車枠と、該滑車枠の上部部分に支持された滑車と、上記滑車枠の下部部分に支持されたフックとからなっている。滑車枠は、左右一対の側板よりなり、それら側板間の上部側に滑車の回転軸を連結し、該回転軸を介して側板間に複数のシーブを回転可能に並設支持する一方、それら側板間の下端側にフック取り付け軸を介してフックが取り付けられている。
【0003】
滑車部の複数のシーブの所定のものには、ワイヤーロープが巻き掛けられているとともに、それら各シーブの半径方向外周側所定の近接位置には、張力が低下したときにも、それら各シーブのロープ係合溝部分からワイヤーロープが外れないようにするためのワイヤーロープ外れ止め部材が設けられている。
【0004】
このワイヤーロープ外れ止め部材は、例えば、一方の側板側から他方の側板側に挿通されて、その軸体部分を側板間に係止される取付用のボルト部材と、該ボルト部材の軸体部外周に遊嵌状態で嵌合されて上記ボルト部材の挿通状態では上記側板間に回転可能に支持されるパイプ構造のスペーサ部材とからなり、上記ボルト部材の軸体部を支軸として回転可能な上記スペーサ部材部分で上記ワイヤーロープをガイドするようになっている。
【0005】
このため、上記ワイヤーロープ外れ止め部材は、例えば上記滑車のワイヤーロープ巻き掛け部に対応して、前部と後部および下部の3ヶ所に位置して設けられている(例えば特許文献1の第1図の構成を参照)。
【0006】
一方、クレーン等の作業機の中には、上記のようなフックブロックを備えたブームの先端に継ぎ足しジブを備えたものがある。このようなクレーン等においては、当該ブーム先端の左右に継ぎ足しジブ連結用の支軸を有し、同支軸に対して、継ぎ足しジブ基端側のU状の脚部を枢着することによって継ぎ足しジブを連結し、当該ブームの先端から長手方向にジブが延びる使用位置と同ジブが当該ブームに沿った状態となる折り畳み位置(格納位置)との間で上記支軸を中心として回動できるように構成されており、上記継ぎ足しジブ基端側のU状の脚部間には、上記継ぎ足しジブの使用位置と折り畳み位置との間での回動に際し、その左右両脚部の間を上述のフックブロックが通過(脚部間から出て、脚部間に戻ることが)できるだけのフックブロック通過空間を確保している(例えば、特許文献2の構成を参照)。
【0007】
そして、フックブロックは、上記継ぎ足しジブの使用時(ジブ振り出し〜ジブ起し時)または折り畳み時(ジブ格納〜U状の両脚部間へのフックブロックの収納時)のいずれの場合にも、同フックブロック通過空間を通ることになる。
【0008】
しかし、複数のシーブを並設した滑車部にワイヤーロープが巻き掛けられた場合、フックブロックは水平方向左右(通常右側)に少し傾くことになり、上記継ぎ足しジブ基端側のU状の両脚部に対して完全に平行な形で対応させることはできず、上記フックブロック通過空間をスムーズに出入させることが難しくなる。例えば、継ぎ足しジブ基端側の両脚部間にフックブロックが収納されている折り畳み状態(格納状態)から継ぎ足しジブが振り出される使用時には問題ないとしても、同使用状態から、上記継ぎ足しジブが折り畳まれて両脚部間に収納される格納時に特に問題となる。
【0009】
すなわち、上述のようなフックブロックでは、隣り合う2枚の滑車枠側板間に滑車部およびフック部が左右に延びる支軸により軸支されていて、その正面側が完全に開放されていることから、継ぎ足しジブが折り畳まれる格納時において、継ぎ足しジブ基端側のU状の両脚部が当該フックブロックの正面側に対向することになり、しかも、同状態においてフックブロックが水平方向右側に少し傾いていて、接近してくる継ぎ足しジブ基端側の両脚部と平行に対応していないとなると、一方側滑車枠側板(右側滑車枠側板)の先端部分が当該継ぎ足しジブの対応する脚部部分に引っ掛かる可能性がある。
【0010】
また、継ぎ足しジブの脚部外側には所定の隙間を置いてテンションロッドが設けられているので、該テンションロッドと継ぎ足しジブ脚部との間の隙間に同滑車枠側板が挟まる可能性もある。
【0011】
そこで、同問題を解決するために、例えば図9図11に示すように、滑車枠2の側板2a,2b間に複数本のワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cを設け、同ワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cを滑車部3のワイヤーロープ5巻き掛け部の周囲に位置して配置することにより、ワイヤーロープ5の外れ止め機能を持たせたクレーン等作業機のフックブロック1において、同滑車枠側板2a,2b間の正面側先端部に当該滑車枠側板2a,2b間の開放面を閉じるカバー部材7を専用の取り付けボルト8a〜8dを用いて取り付けることにより、上記のような継ぎ足しジブ格納時において、同継ぎ足しジブ基端側のU状の脚部が、フックブロック1の両側を通過する時に当該フックブロック1の滑車枠側板2a,2bの先端と干渉しても、該カバー部材7によりガイドされて、上述のような問題を生じさせるようなことなく、継ぎ足しジブ基端側のU状の脚部がフックブロック1の外側をスムーズに通過できるようにしたものがある。
【0012】
今例えば、図9図11において、フックブロック1は、滑車枠2と、該滑車枠2の上部部分に支持された滑車3と、上記滑車枠2の下部部分に支持されたフック4とからなっている。滑車枠2は、上下方向に長く形成された略六角形状の左右一対の側板2a,2bよりなり、それら側板2a,2b間の上部側部分に滑車3の回転軸31を連結し、該回転軸31を介して側板2a,2b間に複数のシーブ32a〜32dを回転可能に並設支持している一方、それら側板2a,2b間の下端側にフック取り付け軸41aを有するベアリング41を介してフック4が前後および水平方向に回転可能な状態で取り付けられている。
【0013】
滑車枠2の側板2a,2bは、上述のように、縦長の六角形状をなしているが、その上部側2辺と下部側2辺との間の角部は上下方向に所定長さカットされて扁平面21a,21bに形成されている。
【0014】
一方、上記滑車3の複数のシーブ32a〜32dの所定のものには、ワイヤーロープ5が所望の掛け数分巻き掛けられているとともに、それら各シーブ32a〜32dの外周側所定位置には、張力が低下したときに、それら各シーブ32a〜32dのロープ係合溝部分からワイヤーロープ5が外れないようにガイドする3本のワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cが設けられている。
【0015】
これら3本のワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cは、それぞれ一方の側板2a側に設けられた螺合孔から他方の側板2b側に設けられた孔部に挿通されて、その軸体部分を側板2a,2b間に係止されるボルト部材61と、該ボルト部材61の軸体部外周に遊嵌状態で嵌合されて上記ボルト部材61の挿通状態では上記側板2a,2b間に回転可能に支持されるパイプ構造のスペーサ部材62とからなり、上記ボルト部材61の軸体部を支軸として回転可能な上記スペーサ部材62部分で上記ワイヤーロープ5が上記ワイヤーロープ巻き掛け部から外れないようにガイドしている。
【0016】
一方、符号7が、上述した継ぎ足しジブの基端側脚部等との干渉を回避するためのカバー部材であり、例えば図11のように、上記側板2a,2b正面側の扁平面21a,21b下部の長辺部上部の端面と同一面を構成する幅広の本体部と、同本体部の左右両側に位置して直角に折り曲げられ、所定の奥行き幅を有して上下方向に長く延び、かつ上下両端部分に側板2a,2bへの取付用のボルト挿通孔74a,74b、74c,74dを設けた取付用フランジ73a、73bとを備えて構成されている。
【0017】
そして、該カバー部材7は、図9および図10に示されるように、上記幅広の本体部が左右一対の側板2a,2bの上記長辺部上部の正面側端面と連続する同一の平面を形成するように、ボルト8a,8b、8c,8dにより側板2a,2bの内側に螺合して取り付けられている。
【0018】
同取り付け状態では、最も先端側である滑車枠側板2a,2bの扁平面21a,21b下端側の上記長辺部との角部間開放面が上記カバー部材7の幅広の本体部平面で同一平面にカバーされることになり、フックブロック1は上述した継ぎ足しジブ基端側の脚部やテンションロッド部分と干渉しても、その側板2a,2b部分が継ぎ足しジブの脚部に引っ掛かったり、テンションロッドとジブ脚部との間の隙間に挟まるようなことなく、スライド状態でスムーズに通過するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】実開昭60−64994
【特許文献2】実開平4−133684
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、上記図9図11に示した従来例の場合、滑車枠側板2a,2b間に支持されるワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6c取付用の複数本のボルト部材61、61、61(3本)に加え、滑車枠側板2a,2b間正面側の開放面を閉じるカバー部材7が専用の取り付けボルト8a,8b、8c,8d(両端側各2本/合計4本)で取り付けられており、合計7本のボルト部材が使用されており、非常に部品点数が多い。しかも、上述のように、カバー部材7は、継ぎ足しジブ基端側の脚部等との干渉をガイドし、スムーズな相対移動(潜り抜け)を可能とするものであるために、その外周面には突部がない方が好ましい。そのために、折り曲げ加工等によって、カバー部材7の本体部左右両端側に滑車枠側板2a,2bの内周面に沿う大きな取付用のフランジ73a、73bを形成し、同フランジ73a、73b部分を内側から各々2本の取り付け専用ボルト8a,8b、8c,8dで滑車枠2の側板2a,2bの螺合孔部分に螺合して取り付ける構成が採用されている。
【0021】
したがって、このような構成の場合、まず製造工程におけるフックブロック組付け時には、滑車枠側板2a,2b間に滑車3およびフック4を軸支した後、同側板2a,2b間にワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6c取り付け用の3本のボルト部材61,61,61を挿通し、その後、それとは全く別に4本のカバー部材7取り付け用ボルト8a,8b、8c,8dを用いてカバー部材7を取り付ける必要があり、合計7本のボルト締結作業が必要となる。
【0022】
また、同フックブロック1の組付け完了状態において、その後、新たに索端の付いたワイヤーロープ5を巻き掛けようとするときや、同一旦巻き掛けられたワイヤーロープ5の索端を外すことなくワイヤーロープ5の掛け替え(掛け数の変更)を行なおうとするときは、上記ワイヤーロープ外れ止め部材取り付け手段としてのボルト部材3本に加えて、カバー部材取付用ボルト4本の合計7本のボルト部材の結合状態を外し、その後、それらを元の状態に締結しなければならず、極めて作業工数が多く、煩雑である問題がある。
【0023】
しかも、上記カバー部材7の取り付けは、上述のようにカバー部材7のフランジ部73a、73b内側からの回動作業となるので、その作業は余計に煩雑である。
【0024】
この出願の発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ブームの先端に継ぎ足しジブを備えたクレーン等作業機のフックブロックにおいて、上記滑車枠側板間における滑車部のワイヤーロープ巻き掛け部周囲に位置して設けられるワイヤーロープ外れ止め部材を取り付けるワイヤーロープ外れ止め部材取り付け手段の一部を利用して、継ぎ足しジブ基端側ガイド用のカバー部材を取り付けることにより、カバー部材取付用の専用ボルトの必要本数を減らすか、または不要とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この出願の発明は、上述の課題を解決するために、それぞれ次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0026】
(1)請求項1の発明の課題解決手段
請求項1の発明の課題解決手段は、ブームの先端に継ぎ足しジブを備えたクレーン等作業機に使用され、さらに滑車枠側板の間に滑車およびフックを軸支するとともに、該滑車枠側板の間に軸支された滑車のワイヤーロープ巻き掛け部周囲の滑車枠側板間に位置して複数本のワイヤーロープ外れ止め部材を設ける一方、上記滑車枠側板間の正面側先端部分に上記滑車枠側板間の開放空間を閉じる継ぎ足しジブ基端側ガイド用のカバー部材を設けてなるクレーン等作業機のフックブロックにおいて、上記ワイヤーロープ外れ止め部材は、パイプ構造のスペーサ部材と該スペーサ部材を挿通支持するボルト部材よりなり、上記ワイヤーロープ外れ止め部材の1つは、滑車枠側板間の正面側である上記滑車の前部側に位置されているとともに、上記カバー部材は、上記滑車の前部に位置している上記ワイヤーロープ外れ止め部材を利用して上記滑車枠側板に取り付けられていることを特徴としている。
【0027】
上記カバー部材は、上記「背景技術」の項でも説明したように、継ぎ足しジブを有するクレーン等作業機において、当該継ぎ足しジブ格納時におけるフックブロックの滑車枠側板とジブ脚部との干渉による引っ掛かりや挟まりを回避するためのものである。そして、このカバー部材は、滑車枠側板間の正面側先端部分に設けていることにより、該カバー部材取り付け部分では滑車枠側板正面側の端面(前面)とカバー部材の外面(前面)とが平面的に揃うようになる。
【0028】
また、この請求項1の課題解決手段によると、上述した滑車枠側板間に位置してワイヤーロープ外れ止め部材を取り付けるワイヤーロープ外れ止め部材取付手段を、従来のようなワイヤーロープ外れ止め部材取り付け専用のものではなく、継ぎ足しジブを有するクレーン等の作業機において、当該継ぎ足しジブ格納時におけるフックブロックの滑車枠側板とジブ脚部との干渉による引っ掛かりや挟まりを回避するカバー部材取付手段としても兼用することができるようになる。
【0029】
その結果、前述した従来のカバー部材取り付け専用ボルトの必要本数を減らすか、または同取り付け専用ボルトそのものを不要とすることができるようになり、部品点数が減少する。また、それと同時に、滑車枠側板へのボルト螺合孔の形成などの加工箇所、加工工数も少なくて済むようになり、製品コストの低減につながる。
【0030】
また、ワイヤーロープ外れ止め部材を滑車枠側板間に取り付けると同時にカバー部材をも取り付けることができ、逆にワイヤーロープ外れ止め部材を滑車枠側板間から取り外すと同時にカバー部材をも取り外すことができるようになり、製造時におけるカバー部材自体の取り付けはもちろん、その後の新たなワイヤーロープの巻き掛け時やワイヤーロープの掛け替え時などにおけるカバー部材の取り外し、取り付けに際して着脱するボルト等の本数が少なくなるから、それら各作業における作業工数が減少し、作業効率が向上する。
【0031】
また、上記カバー部材の取り付けが、滑車枠側板間に亘る比較的長いボルト部材(ワイヤーロープ外れ止め部材の一部を構成する)によりなされるようになることから、従来のカバー部材取り付け専用ボルトのような、小さくて短いボルト部材による取り付けの場合に比べて、より安定した取り付けが可能となり、カバー部材の支持剛性が向上すると共に、取り外し作業時におけるボルトの紛失なども生じにくくなる。
【0032】
(2)請求項2の発明の課題解決手段
請求項2の発明の課題解決手段は、上記請求項1のフックブロックにおいて、滑車枠側板にカバー部材を取り付けているワイヤーロープ外れ止め部材のスペーサ部材を上記カバー部材に固定していることを特徴としている。
【0033】
この請求項2の課題解決手段によると、上述した請求項1の発明の課題解決手段の作用効果に加えて、さらに次のような作用効果を得ることができる。
【0034】
すなわち、カバー部材がスペーサー部材を介して確実に滑車枠側板間に取り付けられるようになるとともに、本来独立した2つの部品であったカバー部材とワイヤーロープ外れ止め部材用のスペーサ部材が相互に一体化されたユニット構造のものとなるので、その取り外し、取り付け作業がより容易になる。
【発明の効果】
【0035】
以上の結果、この出願の発明によると、継ぎ足しジブを備えたクレーンのフックブロック等、滑車枠側板間の正面側に継ぎ足しジブ基端側脚部等との干渉を回避するカバー部材を備えた作業機のフックブロックにおけるカバー部材取り付け専用部品が減少または不要となり、カバー部材の取り外し、取り付け作業を容易にすることができ、それらの作業を前提とするワイヤーロープの巻き掛け、掛け替え作業が容易になり、その作業効率も向上するという効果がある
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本願発明の実施の形態1に係るクレーン等作業機のフックブロックの全体的な構成を示す正面側右斜め方向から見た斜視図である。
図2図2は、同実施の形態1に係るクレーン等作業機のフックブロックの全体的な構成を滑車枠側板の一部を切り欠いて示す側面図である。
図3図3は、同実施の形態1に係るクレーン等作業機のフックブロックの全体的な構成を前後方向中央で上方から下方に切断して示す断面図である。
図4図4は、同実施の形態1に係るクレーン等作業機のフックブロックにおけるカバー部材の構成を示す側面図である。
図5図5は、同実施の形態1に係るクレーン等作業機のフックブロックにおけるカバー部材の構成を示す背面図である。
図6図6は、本願発明の実施の形態2に係るクレーン等作業機のフックブロックの全体的な構成を示す正面側右斜め方向から見た斜視図である。
図7図7は、同実施の形態2に係るクレーン等作業機のフックブロックの全体的な構成を滑車枠側板の一部を切り欠いて示す側面図である。
図8図8は、同実施の形態2に係るクレーン等作業機のフックブロックにおけるカバー部材の構成を示す側面図である。
図9図9は、カバー部材を備えた従来のクレーン等作業機のフックブロックの全体的な構成を示す正面側右斜め方向から見た斜視図である。
図10図10は、同従来のクレーン等作業機のフックブロックの全体的な構成を滑車枠側板の一部を切り欠いて示す側面図である。
図11図11は、同従来のクレーン等作業機のフックブロックにおけるカバー部材の構成を示す背面側右斜め方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本願発明の幾つかの実施の形態の構成および作用について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。
【0038】
<実施の形態1>
まず図1図5は、本願発明の実施の形態1に係るクレーン等作業機のフックブロックの構成を示している。
【0039】
図1図3は同フックブロックの全体的な構成を、また図4および図5は同フックブロックの要部であるカバー部材の構成を、それぞれ示している。
【0040】
図1図3中、符号1がフックブロックであり、該フックブロック1は、滑車枠2と、該滑車枠2の上部部分に支持された滑車3と、当該滑車枠2の下部部分に支持されたフック4とからなっている。滑車枠2は、側面から見た場合に、上部側3辺が略同等の長さである一方、下部側3辺の内、左右の2辺が上記上部側3辺よりも長く、下辺が特に短かく形成された六角形状の左右一対の側板2a,2bよりなり、それら側板2a,2b間の上部側最大幅部分に滑車3の回転軸31を連結し、該回転軸31を介して側板2a,2b間に複数のシーブ32a〜32dを回転可能に並設支持している一方、それら側板2a,2b間の下端側にフック取り付け軸41aを有するベアリング41を介してフック4が前後および水平方向に回転可能な状態で取り付けられている。
【0041】
側板2a,2bは、上述のように、側面から見た場合に、上部側の左右2辺が短かく、下部側の左右2辺が長い縦長の六角形状をなしているが、それら上部側2辺と下部側2辺との間の角部は上下方向に所定長さカットされて扁平面21a,21bに形成されている。
【0042】
一方、上記滑車3の複数のシーブ32a〜32dの所定のもの(図1の例では、シーブ32aと32d)には、図示のようにワイヤーロープ5が巻き掛けられているとともに、それら各シーブ32a〜32dの外周側所定位置には、張力が低下したときにも、それら各シーブ32a〜32dのロープ溝部分からワイヤーロープ5が外れないようにガイドするための例えば3本のワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cが設けられている。
【0043】
これら3本のワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cは、例えば図3に示されるように、それぞれ一方の側板2a側に設けられた螺合孔21c部分から他方の側板2b側に設けられた孔21d部分に挿通されて、その軸体部61a部分を側板2a,2b間に係止されるボルト部材61と、該ボルト部材61の軸体部61a外周に遊嵌状態で嵌合されて上記ボルト部材61の挿通状態では上記側板2a,2b間に回転可能に支持されるパイプ構造のスペーサ部材62とからなり、上記ボルト部材61の軸体部61aを支軸として回転可能な上記スペーサ部材62部分で上記ワイヤーロープ5の巻き掛け部を外れないようにガイドしている。
【0044】
このため、上記3本のワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cは、少なくとも上記滑車3の各シーブ32a〜32dのワイヤーロープ巻き掛け部に対応して、その前部(特許請求の範囲中の滑車の前部側)と後部および下部の3ヶ所に位置し、それぞれそのスペーサ部材62、62、62部分が、上記ワイヤーロープ5の外れを防止するのに必要な間隔(距離)を維持して各シーブ32a〜32dの外周面に近接する形で設けられている(図2参照)。
【0045】
上記ボルト部材61は、上記軸体部61aのボルト頭部61b側に螺合溝61cを有し、該螺合溝61c部分を上記一方側の側板2aの螺合孔21c部分に螺合することによって締結力を得るようになっているとともに、上記軸体部61aの先端部分61dを他方側の側板2bの孔21d部分に挿入することによって軸直交方向の係止力を得るようになっている。
【0046】
そして、上記3本のワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cは、上記ボルト部材61の側板2a,2b間における係合状態(側板2aの螺合孔21cへの螺合および側板2bの孔21dへの挿入)を解除し、側板2a,2b間から抜き取ると、上記スペーサ部材62も取り外すことができ、同状態では各シーブ32a〜32dの半径方向外周に広いスペースを形成することができるので、後述するように、索端を付けたままでのワイヤーロープ5の巻き掛けや、すでに巻いているワイヤーロープ5の掛け替え(ワイヤーロープ掛け数の変更)などが可能となる。
【0047】
ところで、本実施の形態におけるクレーンの中には、すでに特許文献2について述べたように、上記のような構成のフックブロックを備えたブームの先端に、さらに継ぎ足しジブを設ける場合がある。
【0048】
このようなクレーンにおいては、すでに述ベたように、滑車3にワイヤーロープ5が巻き掛けられた場合、フックブロック1は水平方向右側に少し傾くことになり、継ぎ足しジブ格納時において、継ぎ足しジブ基端側のU状の脚部がフックブロック1の外側をスムーズに通過することが難しくなり、前述のような滑車枠側板2a,2bの継ぎ足しジブ脚部との係合や継ぎ足しジブ脚部とテンションロッドとの間の隙間への挟まりを生じる問題がある。
【0049】
そこで、本実施の形態では、例えば図1図3に示すように、同滑車枠2の側板2a,2bの先端部分を扁平面21a,21bに形成するとともに、それら側板2a,2b間の正面側先端部に当該滑車枠2の側板2a,2b間の開放面を閉じるカバー部材7を設けて、上述した継ぎ足しジブ基端側の脚部や同脚部とテンションロッドとの隙間に干渉しないようにガイドする構成が採用されている。
【0050】
すなわち、このカバー部材7は、継ぎ足しジブを有するクレーン等の作業機において、当該継ぎ足しジブ格納時におけるフックブロック1の滑車枠側板2a,2bとジブ脚部との干渉による引っ掛かりや挟まりを回避するためのものである。そして、このカバー部材7は、滑車枠側板2a,2b間の正面側先端部分(扁平面21a,2b部分)に設けていることにより、該カバー部材取り付け部分では、図1及び図2に示すように滑車枠側板正面側の端面(扁平面21a,2b)とカバー部材7の外面(前面)とが平面的に揃うようになる。
【0051】
しかも、本実施の形態では、同カバー部材7を取り付けるに際して、その上端側7aを、上記滑車枠2の側板2a,2b間に支持され、上記滑車3のワイヤーロープ5巻き掛け部の周囲の、前部、後部、下部の3ヶ所に位置して設けられている3本のワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cのうちの上記前部の1本(符号6a)を利用(兼用)して取り付けるようにしており、それによってカバー部材7の取り付けに必要な専用ボルトの本数を下端7b側左右の2本のみで足りるように構成している。
【0052】
すなわち、本実施の形態では、例えば図1および図2に示すように、カバー部材7の上端7a側が、前述の従来例のものよりも長く上方に延設されるとともに、同延設端の裏面側(内側)に、上記滑車前部側のワイヤーロープ外れ止め部材6a用のスペーサ部材62を溶接一体化しており、該スペーサ部材62を介してボルト部材61により滑車枠2の側板2a,2b間に支持するようになっている。
【0053】
そして、そのカバー部材7の下端7bには、その左右両端側に位置して、例えば図4および図5に示すような、前述した従来例のものに比べて十分に小さいカバー部材取付用のフランジ71a,71bを有し、同取付用フランジ71a,71b部分に設けたボルト挿通孔72,72を介して専用の取り付けボルト80a,80bにより側板2a,2bの螺合孔22,22に対して螺合することにより取り付けられるようになっている。
【0054】
したがって、本実施の形態の構成では、少なくともカバー部材7の上端7a側における取付用の専用ボルト2本は不要となり、その分専用ボルトの本数を減らすことができる。
【0055】
また、その分、滑車枠2の側板2a,2b部分のボルト螺合孔の形成などの加工箇所、加工工数も少なくて済み、製品コストの低減につながる。
【0056】
また、カバー部材7の取り付けが、太くて、しかも滑車枠側板2a,2b間に亘る比較的長いボルト部材によりなされるようになることから、従来のような小さくて短いボルト部材による場合に比べて、より安定した取り付けが可能となり、支持剛性が向上すると共に、作業時におけるボルトの紛失なども生じにくくなる。
【0057】
また、ワイヤーロープ外れ止め用のボルト部材61を滑車枠側板2a,2b間に挿通支持すると同時にカバー部材7をも取り付けることができ、逆にワイヤーロープ外れ止め用のボルト部材61を滑車枠側板2a,2b間から取り外すと同時にカバー部材7をも取り外すことができるようになり、製造時におけるカバー部材7自体の取り付けや、その後の新たなワイヤーロープの巻き掛け、ワイヤーロープの掛け替え時(ワイヤーロープ掛け数の変更時)におけるカバー部材7の取り外し、取り付けに際して着脱するボルトの本数が少なくなるから、それら各作業における作業工数が減少し、作業効率が向上する。
【0058】
また、この実施の形態の場合、ワイヤーロープ外れ止め部材6a〜6cは、それぞれ滑車枠2の側板2a,2b間にパイプ構造のスペーサ部材62を外装して支持されているが、カバー部材7の取り付けに兼用される滑車前部側に位置するワイヤーロープ外れ止め部材6aのスペーサ部材62は,特にカバー部材7の上端7a部分に溶接一体化して設けられている。
【0059】
このような構成によると、カバー部材7がスペーサー部材を介して確実に滑車枠側板2a,2b間に取り付けられるようになるとともに、本来独立した2つの部品であったカバー部材7とワイヤーロープ外れ止め部材6a用のスペーサ部材62が相互に一体化されたユニット構造のものとなるので、その取り外し、取り付け作業がより容易になる。
【0060】
<実施の形態2>
図6図8には、本願発明の実施の形態2に係るクレーン等のフックブロックの構成を示している。
【0061】
図6および図7は同フックブロックの全体的な構成を、また図8は同フックブロックの要部であるカバー部材部分の構成を示している。
【0062】
本実施の形態では、上述の実施の形態1の構成に加えて、さらにカバー部材7の下端7b側をも、ワイヤーロープ外れ止め部材6bを利用して取り付けるようにし、結局上下両端共にワイヤーロープ外れ止め部材を利用して取り付けることにより、従来のようなカバー部材取り付け専用のボルトを不要にしたことを特徴とするものである。
【0063】
すなわち、本実施の形態の構成では、例えば図6図8に示すように、上記実施の形態1の構成におけるカバー部材7の下端7b側をフランジ部等を形成することなく、さらに後方側各シーブ32a〜32d下方のワイヤーロープ外れ止め部材6b部分に向けて「くの字」状に折り曲げた上で延設し、同延設された延設下端7bの上面側(内側)に、上述した上端7a側と同様にワイヤーロープ外れ止め部材6b用のスペーサ部材62を溶接一体化して構成されている。
【0064】
この結果、同構成によれば、当該カバー部材7は、その上下両端7a,7bともにワイヤーロープ外れ止め部材6a、6b(それらのボルト部材61、61)を利用して取り付けることができるようになり、前述した従来例におけるカバー部材取り付け専用ボルトそのものを不要とすることができ、部品点数が大きく減少する。
【0065】
また、それと同時に、カバー部材7左右両端側の取付用フランジの形成や、滑車枠側板2a,2b部分へのボルト螺合孔の形成などの加工箇所、加工工数も、より少なくなり、一層の製品コストの低減につながる。
【0066】
また、カバー部材7の取り付けが、太くて、しかも滑車枠側板2a,2b間に亘る比較的長いボルト部材61、61・・によりなされるようになるから、従来のような小さくて短い専用の取り付けボルトを使用する場合に比べて、より安定した取り付けが可能となり、支持剛性が向上するとともに、取り外し、取り付け作業時におけるボルトの紛失なども生じにくくなる。
【0067】
また、ワイヤーロープ外れ止め用のボルト部材61、61を滑車枠側板2a,2b間に挿通支持すると同時にカバー部材7をも取り付けることができ、逆にワイヤーロープ外れ止め用のボルト部材61、61を滑車枠側板2a,2b間から取り外すと同時にカバー部材7をも取り外すことができるようになり、フックブロック製造時におけるカバー部材7自体の取り付けはもちろん、その後の索端を付けた状態でのワイヤーロープ5の巻き掛け時や同状態でのワイヤーロープ5の掛け替え時(ワイヤーロープ掛け数変更時)におけるカバー部材7の取り外し、取り付けに際して、着脱するボルトの本数が大きく減少するから(7本から3本に)、それら各作業における作業工数も大きく減少し、作業効率が大きく向上する。
【0068】
さらに、同構成の場合、カバー部材7の下端7b側が、滑車枠側板2a,2b間の正面側開放面から滑車2の各シーブ32a〜32d下方側までに亘って設けられているので、シーブ32a〜32dに対するワイヤーロープ巻き掛け部の正面側前部が大きくカバーされることになり、作業時の安全性も向上する。また、シーブ32a〜32dへの異物の侵入も避けられる。
【符号の説明】
【0069】
1はフックブロック、2は滑車枠、2a,2bは側板、3は滑車、4はフック、5a,5bはワイヤーロープ、6a,6b,6cはワイヤーロープ外れ止め部材、7はカバー部材、7aはカバー部材7の上端、7bはカバー部材7の下端、32a,32b,32c,32dはシーブ、41はベアリング、41aはフック取り付け軸、61はボルト部材、61aはボルト部材61の軸体、61bはボルト部材61の頭部、61cはボルト部材61の螺合溝、61dはボルト部材61の軸体先端、62はスペーサ部材、71a,71bはカバー部材7の取付用フランジ、80a,80bはカバー部材7下端側の取り付けボルトである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11