(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プラスの蓄熱層及びマイナス蓄熱層に供給する熱媒体は水であり、プラス蓄熱層に供給する熱媒体は温水であって、マイナスの蓄熱層に供給する熱媒体は冷水であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のプラス熱量・マイナス熱量を蓄熱する地下蓄熱層を有する冷暖房システム。
前記プラス蓄熱層及びマイナス蓄熱層の少なくとも一方の蓄熱層には、鉛直方向に対して複数層の水の拡散層が形成され、これら拡散層により蓄熱材は鉛直方向に複数段に仕切られることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のプラス熱量・マイナス熱量を蓄熱する地下蓄熱層を有する冷暖房システム。
プラス蓄熱層及びマイナス蓄熱層には各蓄熱層の熱量を取り出すための空気配管が、当該プラス蓄熱層及びマイナス蓄熱層を通過するよう設けられ、当該空気配管は構造物の内部空間に開口し、前記プラスの蓄熱層及びマイナスの蓄熱層において熱交換した温風又は冷風により前記内部空間を暖房または冷房すること特徴とする請求項1記載のプラス熱量・マイナス熱量を蓄熱する地下蓄熱層を有する冷暖房システム。
プラス蓄熱層に供給する水は太陽熱により加熱された温水であり、マイナス蓄熱層に供給するは放射冷却により冷却された冷水であることを特徴とする請求項1載のプラス熱量・マイナス熱量を蓄熱する地下蓄熱層を有する冷暖房システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1において、符号Hは家屋等の構造物(以下「家屋」で説明する)である。家屋Hの
床面1の下部には水平断熱層2aを介して蓄熱層が形成されている。
この蓄熱層は、鉛直方向に配設されかつ仕切壁としても機能する垂直断熱層2bにより
左右に二つの蓄熱層が区画形成される。図示の構成では図の左側がプラスの熱量を蓄熱す
るプラス蓄熱層3A、右側がマイナス熱量を蓄熱するマイナス蓄熱層3Bとして構成され
ている。
【0019】
各蓄熱層3A、3Bに充填されている蓄熱媒体は、家屋Hが立設する土壌の土、砂、礫
の他、砕石、煉瓦等これら従来の土壌を排除して別途充填したものであってもよく、更に
はより蓄熱効率の高い水ボール(熱容量が最大である水が入った球状体或いは袋状体)等
、その種類を問わない。「蓄熱媒体」の語はこれらの各種の媒体を含むものとして以下説
明する。
【0020】
蓄熱層の構成はプラス蓄熱層3Aとマイナス蓄熱層3B共に基本的には同じである。従
ってこれら蓄熱層の構成をプラス蓄熱層3Aを中心として説明する。前記の蓄熱媒体を充
填したプラス蓄熱層3Aには当該プラス蓄熱層3Aの高さ方向において上部から順に拡散
層4a、4b、4cが配設され、これら各拡散層4a〜4cにより前記蓄熱媒体の層は上
部から順に第1の蓄熱層3Aa、第2の蓄熱層3Ab、第3の蓄熱層3Ac、第4の蓄熱
層3Adに区画される。
【0021】
図示の構成では第4の蓄熱層3Adは家屋Hの基礎構造の下部に位置し、従って家屋下
部の地盤に対して当該第4の蓄熱層3Adは開放されている。なお前記拡散層は後述する
パイプにより供給される水を一旦水平方向に拡散し、かつ下段の蓄熱媒体層に浸潤供給す
るためのものであるから、この機能を有するものであればその構成の如何を問わない。例
えば、多数の小孔を形成した合成樹脂製シートや所定のメッシュ値を有する網状物等が適
当である。
【0022】
次に、符号P1、P2、P3は伝熱媒体たる水を供給するパイプである。符号P1は蓄
熱層3Aaに開口するパイプ(以下「上段パイプ」とする)、符号P2は蓄熱層3Abに
開口するパイプ(以下「中段パイプ」とする)、符号P3は蓄熱層3Acに開口するパイ
プ(以下「下段パイプ」とする)である。符号V1、V2、V3はこれら各パイプP1、
P2、P3に設けられバルブである。
【0023】
符号5は熱媒体たる水を加熱或いは冷却する手段であって、図示の構成は太陽熱温水機
である。なお、この太陽熱温水機5は夏期の昼間では当然のことながら水を加熱するが、
夏期の夜間や冬季の夜間及び曇天時には低温の外気によって冷却された冷水を供給する手
段となる。
【0024】
一方、垂直断熱層2bを介して隣接するマイナス蓄熱層3Bは当該マイナス蓄熱層3B
の高さ方向において上部から順に前記拡散層4a、4b、4cと同様に拡散層4d、4e
、4fが配設され、これにより前記蓄熱媒体の層は上部から順に第1の蓄熱層3Ba、第
2の蓄熱層3Bb、第3の蓄熱層3Bc、第4の蓄熱層3Bdに区画される。
【0025】
符号P4、P5、P6はマイナス蓄熱層3Bに水を供給するパイプである。符号P4は
蓄熱層3Baに開口する上段パイプ、符号P5は蓄熱層3Bbに開口する中段パイプ、符
号P6は蓄熱層3Bcに開口する下段パイプである。符号V4、V5、V6はこれら各パ
イプP4、P5、P6に設けられバルブである。
【0026】
また、符号D1はプラス蓄熱層3Aに熱交換部を配設した温風ダクト、符号D2はマイ
ナス蓄熱層3Bに熱交換部を配設した冷風ダクトである。
【0027】
次にこの構成のシステムの実施方法の一例を説明する。
夏期及び晴天の冬季における蓄熱方法は、太陽熱温水機5において加熱された温水をプ
ラス蓄熱層3Aに対して供給する。具体的には先ずバルブV1を開として、この温水を上
段パイプP1を介して上段の蓄熱層3Aaに供給する。供給された温水は拡散層4aに沿
って拡散しながら徐々に当該上段の蓄熱層3Aaに充満する。またその間、温水の一部は
前記拡散層4aを透過し、下段の蓄熱層3Abに徐々に浸潤する。この状態でバルブV1
を閉、バルブV2を開としてパイプP2により蓄熱層3Abに温水を供給する。この方法
を順次繰り返すことにより蓄熱層3Abから3Adに温水を供給し、これらの各蓄熱層の
蓄熱媒体と熱交換して、プラス蓄熱層3全体にプラスの熱量を蓄熱する、なお、冬季の晴
天時でも水の温度が所定の値となったならば、蓄熱用にプラス蓄熱層3Aに温水を供給す
る。
【0028】
主として夏期に蓄えられたプラスの熱量は、必要に応じて取り出される。図示の構成で
説明すると、空気ダクトD1を用いて空気を吸引し、吸引された空気はプラス蓄熱層3A
において熱交換し、当該ダクトD1の排出口から温風として排気される。この場合、加熱
された空気は軽くなるのでダクトD1の排出口に向かって自然に上昇流出し、同時に流出
分の空気がダクトD1の流入口から流入する。このため温風用ダクトD1には空気流動用
のファンの設置は基本的に不要である。なお、プラスの熱量の蓄積は夏期以外でも前述の
如く晴天時等の昼間等で追加補充が可能であるから、本格的にプラスの熱量が必要な冬季
においても十分な熱量を確保できる。
【0029】
次に、マイナスの熱量の蓄積方法の一例を示す。季節を問わず夜間或いは曇天において
外気により水が所定温度以下に冷却された場合、この冷水を例えばパイプP4、P5、P
6を順次用いてマイナス蓄熱層3Bの各段の蓄熱層3Ba、3Bb、3Bc、3Bdに蓄
熱する。このマイナス熱量の取り出しもダクトD2を用いるが、冷却された空気(冷風)
は室内の空気よりも重いため、冷風の自然流出は望めない。このため、図示しないが、冷
風排出用の小型ファンを当該ダクトD2の空気流動経路のいずれかに配置しておくことが
望ましい。
【実施例2】
【0030】
図2は本発明の第2の実施例を示す。
この実施例では、前記実施例1で示したプラス・マイナスの二つの蓄熱層を水平方向に
隣接配置した構成に対して鉛直方向に配置した構成、即ち縦方向に重ねるように配設した
構成を有する。
上段の蓄熱層3Cはマイナス蓄熱層であるが、冬季はプラスの蓄熱層として用いる蓄熱
層である。従ってこの蓄熱層3Cを以下変化型マイナス蓄熱層とする。
【0031】
この変化型マイナス蓄熱層3Cの下部には水平断熱層2cを介して他の蓄熱層3Dが配
置されている。この蓄熱層3Dは後述のように季節を問わず周年プラスの熱量を蓄熱する
ためのものであるから恒常プラス蓄熱層と称する。
【0032】
変化型マイナス蓄熱層3Cにおいて、符号4g、4h、4iは当該変化型マイナス蓄熱
層3Cにおいて上部から順に配置された拡散層であり、これら各拡散層4g、4h、4i
により当該変化型マイナス蓄熱層3Cは上段から順に上段の蓄熱層3Ca、中段の蓄熱層
3Cb、下段の蓄熱層3Cc、最下段の蓄熱層3Cdに区画される。
【0033】
次に、恒常プラス蓄熱層3Dは前記変化型マイナス蓄熱層3Cと同様の構成となってい
る。即ち符号4j、4k、4lは当該恒常プラス蓄熱層3Dにおいて上部から順に配置さ
れた拡散層であり、これら各拡散層4j、4k、4lにより当該恒常型プラス蓄熱層3D
は上段から順に上段の蓄熱層3Da、中段の蓄熱層3Db、下段の蓄熱層3Dcに区画さ
れる。
【0034】
この実施例の構成におけるシステムの実施方法の一例を説明する。
先ず、下部の恒温プラス蓄熱層3Dに対しては、夏期において、太陽熱温水機5におい
て加熱された温水はパイプP10、P11、P12の順にこれらパイプを介して上段の蓄
熱層3Da、中段の蓄熱層3Db、下段の蓄熱層3Dcの順に供給され、蓄熱される。ま
た夏期以外の季節でも水の温度が所定の値以上に上昇した場合では、同様に、温水が供給
され蓄熱される。つまり、所定の温度以上の温水を供給して夏期、冬季に関わらず周年プ
ラスの熱量をこの恒常プラス蓄熱層3Dに蓄熱する。なお蓄熱された熱量の取り出しは、
後述する変化型マイナス蓄熱層3Cの使用状態と共に説明する。
【0035】
次に変化型マイナス蓄熱層3Cの使用方法の一例を説明する。
先ず冬季を中心として、太陽熱温水機5内の水が外気により所定温度以下の値になった
ならば、この冷水をパイプP7、P8、P9の順に各パイプを介して供給し、当該変化型
マイナス蓄熱層3Cをマイナス蓄熱層として用いる。冷房が必要な夏期(例えば日本国内
の関東地方であれば、概ね5月から9月まで)にはマイナス蓄熱層として用いる。この変
化型マイナス蓄熱層3Cにおけるマイナスの熱量は空気ダクトD2を通過する空気と熱交
換し、冷風として室内に排気され屋内を冷房する。
【0036】
次に冷房が必要な夏期以外(例えば日本国内の関東地方であれば、概ね10月から4月
まで)において、例えば秋期や冬季の晴天時等において太陽熱温水機5内の水が所定温度
以上の値になったならば、この温水をパイプP7、P8、P9の順に各パイプを介して供
給し、当該変化型マイナス蓄熱層3Cをプラス蓄熱層として用いる。おな、前述の如く恒
常プラス蓄熱層3Dに対しても同様に温水を供給する。
【0037】
冬季を中心として暖房が必要な季節には、前記恒常プラス蓄熱層3Dを通過するダクト
D1において熱交換した温風及び、変化型マイナス蓄熱層3Cを通過するダクトD2にお
いて、プラス蓄熱層として機能している変化型マイナス蓄熱層3C内のプラスの熱量と熱
交換した温風が当該ダクトD2から排出され、前記ダクトD1からの温風と相まって、室
内を強力に暖房する。
【0038】
なお、実施例1及び実施例2の加熱・冷却手段5は太陽熱温水機であるが、冷却手段は
井戸水とし、加熱手段は太陽光パネルから発電時に発生する熱量(廃熱)を利用したもの
等、冷却手段、加熱手段共にその種類を問わない。
【実施例3】
【0039】
図3は第3の実施例を示す。
この実施例ではプラス蓄熱層3Aおよびマイナス蓄熱層3Bに蓄熱されているプラスの
熱量及びマイナスの熱量を前記空気ダクトD1、D2よりも効率的に取り出すこと、およ
びエアーコンディショナーによる冷暖房の廃熱、例えば夏期の冷房時のプラスの廃熱、冬
季の暖房時のマイナスの廃熱を蓄熱してこの熱を利用するよう構成したシステムである。
【0040】
図中符号AC1はエアーコンディショナー(以下「エアコンAC」とする)の屋外機で
あり、AC2は当該エアコンACの室内機である。また符号HP1は屋外機AC1のヒー
トポンプの熱交換部であって、プラス蓄熱層3Aに配置されたもの、同様にHP2はマイ
ナス蓄熱層3Bに配置された熱交換部である。
【0041】
先ず、このシステムにおける第1の利用モードは、温水のプラス熱量を蓄熱したプラス
蓄熱層3A内のプラスの熱量を熱交換部HP1を介して熱交換し、プラスの熱量を室内機
AC2に送り、室内を暖房する。また逆に、冷水のマイナスの熱量を蓄熱したマイナス蓄
熱層3B内のマイナスの熱量を熱交換部HP2を介して熱交換し、マイナスの熱量を室内
機AC2に送り、室内を冷房する。このモードはプラス蓄熱層3Aまたはマイナス蓄熱層
3Bに対してプラスの熱量或いはマイナスの熱量を供給する媒体が前記実施例1及び2と
同様温水・冷水であり、エアコンACは伝熱媒体である水により蓄熱されたプラスの熱量
またはマイナスの熱量を単に汲み出す手段として利用されている。
【0042】
次に、従来のエアコンの冷暖房方式の場合を説明する。
元来エアコンの作動の内容は、暖房時にヒートポンプにより外気中のプラスの熱量を汲
み出し、廃熱としてマイナスの熱である冷気を大気中に放出し、反対に冷房時は室内のプ
ラスの熱量を汲み出し、廃熱としてプラスの熱である暖気を大気中に放出することである
。つまり熱(廃熱)の流れに注目すると、エアコンは室内の冷房時は暑い外気を暖房し、
室内の暖房時は寒い外気を冷房する動作をすることになる。この動作は外気が低温のとき
はこの外気をより低温とし、かつ高温の時はこの外気をより高温とすることを意味し、エ
アコンの作動は環境に対して少なからず負荷をかけることになり、必ずしも好ましいこと
ではない。
【0043】
上記前提に基づいて以下説明すると、冷房状態のエアコンACの屋外機が作動すると、
冷房時の、室内から汲み上げたプラスの熱量(廃熱)は熱交換部HP1を介してプラス蓄
熱層3A内に廃棄される。つまり上記説明に対応して説明すると室内の冷房に対応してプ
ラス蓄熱層3Aを暖房し、従って当該プラス蓄熱層3A内にはプラスの熱量が蓄熱される
。反対に暖房時の廃熱であるマイナスの熱量は熱交換部HP2を介してマイナス蓄熱層3
B内に廃棄され、当該マイナス蓄熱層3B内にはマイナスの熱量が蓄熱される。
【0044】
これら蓄熱されたプラス或いはマイナスの熱量は、前記熱量の汲みだしモードで必要な
季節にエアコンACにより室内に供給される他、前記実施例1、2と同様に空気ダクトD
1、D2(
図3には図示せず)により温風、冷風として直接室内に供給することもできる
。またパイプP1〜P3により供給される温水はプラス蓄熱層3Aの熱量不足の場合に、
不足熱量を補充するために利用される。同様にパイプP4〜P6により供給される冷水は
マイナス蓄熱層3Bのマイナス熱量不足の場合に利用される。
因にヒートポンプの作動には人工的エネルギーである電力を使用するが、熱効率(投入
されたネルギーに対する取り出せるエネルギーの比率)は極めて高いことが知られている
。
【0045】
上記エアコン以外でもヒートポンプを用いた装置として給湯装置、冷蔵庫(電気冷蔵庫
)等があるが、これらの装置のプラス又はマイナスの廃熱も前記と同様な構成のプラス蓄
熱層3Aまたはマイナス蓄熱層3Bに対して蓄熱し、適宜利用することができる。
【実施例4】
【0046】
本実施例では蓄熱層の蓄熱効率をより一層高めるよう構成されている。
上記実施例1及び2においては各蓄熱層の下方は基本的に地中空間に対して開放されて
おり、これら蓄熱層に対する熱媒体たる温水或いは冷水はこれら各蓄熱層と熱交換した後
に地中空間に流出浸透することになる。
本実施例ではこれら各蓄熱層の各々の下面に、或いは最下段の蓄熱層の下面に水の浸透
を阻止する素材からなるシート或いは板材を各蓄熱層とほぼ平行に配置して浸透阻止層と
し、この浸透阻止層において前記温水或いは冷水を一時滞留させて蓄熱層とこれら温水或
いは冷水との熱交換の効率を高めるようにする。
【0047】
またこの浸透阻止層の周縁を上方に立ち上がらせて堰として構成して浸透阻止層を滞留
容器として構成し、滞留した温水或いは冷水を順次この堰を溢流させるようにして浸透阻
止層における水の滞留量を増加させ、熱交換効率をより一層高めるように構成する。
【0048】
更に、土や礫等自然由来の蓄熱材料に替えて或いは一部を代替して、蓄熱層を液体(好
適には比熱が最大の水)を充填した複数の密閉水容器(水ボールとして実施例1において
も説明)を配置する。密閉水容器は前述した水ボール以外にも各種の構成が考えられるが
、例えば水を注入した筒状の容器を密閉し、これら筒状の容器を礫或いは土中に複数本配
置したもの、或いは水を密閉した袋状の多数の容器を礫或いは土中に重層的に配置したも
の等が考えられる。これら密閉水容器内の水は物質中比熱が最大なので、結果的に蓄熱層
全体の熱容量を高めることができる。