特許第6190198号(P6190198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190198
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】継ぎ目部材
(51)【国際特許分類】
   E01B 11/02 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   E01B11/02
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-157653(P2013-157653)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-28249(P2015-28249A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】篠田 勝己
(72)【発明者】
【氏名】桐生 雄太
(72)【発明者】
【氏名】吉川 央容
(72)【発明者】
【氏名】飯高 真徳
(72)【発明者】
【氏名】細川 順二
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−256303(JP,A)
【文献】 特開平09−151403(JP,A)
【文献】 特開平09−151402(JP,A)
【文献】 特開平07−011601(JP,A)
【文献】 特開平11−117203(JP,A)
【文献】 特開平09−095901(JP,A)
【文献】 特開平07−018606(JP,A)
【文献】 特開2013−068056(JP,A)
【文献】 米国特許第04386736(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0223151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 11/02
E01B 11/04
E01B 11/16
E01B 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道方向に隣接するレールの継ぎ目に取り付けられる継ぎ目部材において、
レールを連結する連結部材と、前記連結部材を補強する補強部材とを有し、
前記連結部材と前記補強部材は、別体であり、
補強部材は、レールに取り付けられた状態において、連結部材の少なくとも底部の一部又は全部を覆うものであり、
前記補強部材のヤング率及び引張強度は、それぞれ連結部材のヤング率及び引張強度よりも高く、
前記補強部材は、連結部材又はレールに位置決め可能であって、前記連結部材と前記レールの間に介在しており、
前記補強部材、前記連結部材、及び前記レールは、締結要素を挿通可能な固定穴をそれぞれ有し、
前記締結要素が前記補強部材、前記連結部材、及び前記レールのそれぞれの固定穴に挿入されて締結されることによって、レールと補強部材と連結部材とが一体化されることを特徴とする継ぎ目部材。
【請求項2】
前記補強部材の引張強度は900MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の継ぎ目部材。
【請求項3】
前記補強部材は、前記連結部材の少なくとも一方の側面の一部又は全部を覆っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の継ぎ目部材。
【請求項4】
前記補強部材における、連結部材の側面を覆う部位の厚みが0.5mm以上4mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の継ぎ目部材。
【請求項5】
前記補強部材は、繊維強化プラスチック製であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の継ぎ目部材。
【請求項6】
前記補強部材及び前記連結部材は、絶縁体で形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の継ぎ目部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道に配されるレールを連結する継ぎ目部材に関するものである。また本発明に関連する発明は、継ぎ目部材に好適に使用される補強部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄道軌道は、複数のレールをつなぎ合わせて、ひと続きの鉄道レールとして使用されている。各レール間の接続箇所(継ぎ目)には、2本のレールの側面に跨がって配される、いわゆる継ぎ目板と呼ばれる板状部材が取り付けられている。すなわち、隣接するレールは、継ぎ目板を介して一体化されて連結されている。継ぎ目板としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載のレール用継ぎ目板(継ぎ目部材)は、繊維強化熱硬化性樹脂(繊維強化プラスチックともいう)で形成されており、鋼製の継ぎ目板に比べて重量が小さく、レールに取り付ける際の作業性が良好であるという特長を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−143902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、繊維強化プラスチック製の継ぎ目板は、鉄道車輌の通過による振動や荷重等の外的要因によって徐々に疲労が進み、最後は破断してしまう。そのため、継ぎ目板の破断前に交換作業を行わなければならず、頻繁にメンテナンス作業を行わなければならない。
また、継ぎ目板の外的要因に対する耐性が弱いと、継ぎ目板の交換頻度が多くなる。継ぎ目板の交換頻度が多くなると、手間がかかり、コストもかかるという問題がある。そのため、市場からは、交換頻度の低減が求められており、繊維強化プラスチック製の継ぎ目板の寿命の向上が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決するものであり、従来の継ぎ目部材に比べて交換寿命が長い継ぎ目部材を開発することを課題とする。また、本発明に関連する発明は、従来の継ぎ目部材の交換寿命を延ばすことができる補強部材を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記した特許文献1に記載の継ぎ目板の構造にさらに補強部材を取り付けることによって補強する構造を1つの仮説のもと模索した。すなわち、継ぎ目板は、主に、レールに取り付けた状態において、鋼製、繊維強化プラスチック製を問わず、底部の中央(隣接するレール間の境界に対応する位置の下部)付近で引張応力により亀裂が発生し破壊される。つまり、継ぎ目板の底部(亀裂発生箇所)を補強部材で覆う場合、継ぎ目板の底面(最下面部表面)と、当該底面と接触する補強部材の天面(最上面部表面)の延び量は一致すると考えられる。その場合、ヤング率の高い部材側に引張応力が多く発生すると考えられる。よって、補強部材として、継ぎ目板よりヤング率の高い材料を用いることによって、継ぎ目板の底部の引張応力を緩和できると考えられる。すなわち、ヤング率の高い補強部材を使用することによって、継ぎ目板のクラックの発生及び進展を大幅に遅らすことができ、寿命が向上すると考えられる。
【0008】
ところが、補強部材として、継ぎ目板よりもヤング率の高い材料を数々試作したが、全ての補強部材で寿命が向上するとは限らなかった。具体的には、引張強度が低い材料の場合、ヤング率の高い材料であっても、寿命が向上しなかった。すなわち、上述のようにヤング率が高いと引張応力の負担が大きくなるが、引張強度が低いと継ぎ目板よりも先に破壊されてしまい、補強の効果は0になることが判明した。
【0009】
上記した考察を踏まえて導き出された請求項1に記載の発明は、軌道方向に隣接するレールの継ぎ目に取り付けられる継ぎ目部材において、レールを連結する連結部材と、前記連結部材を補強する補強部材とを有し、前記連結部材と前記補強部材は、別体であり、補強部材は、レールに取り付けられた状態において、連結部材の少なくとも底部の一部又は全部を覆うものであり、前記補強部材のヤング率及び引張強度は、それぞれ連結部材のヤング率及び引張強度よりも高く、前記補強部材は、連結部材又はレールに位置決め可能であって、前記連結部材と前記レールの間に介在しており、前記補強部材、前記連結部材、及び前記レールは、締結要素を挿通可能な固定穴をそれぞれ有し、前記締結要素が前記補強部材、前記連結部材、及び前記レールのそれぞれの固定穴に挿入されて締結されることによって、レールと補強部材と連結部材とが一体化されることを特徴とする継ぎ目部材である。
すなわち、本発明は、軌道方向に隣接するレールの継ぎ目に取り付けられる継ぎ目部材において、レールを連結する連結部材と、前記連結部材を補強する補強部材とを有し、前記連結部材と前記補強部材は、別途又は一体的に形成されており、補強部材は、レールに取り付けられた状態において、連結部材の少なくとも底部の一部又は全部を覆うものであり、前記補強部材のヤング率及び引張強度は、それぞれ連結部材のヤング率及び引張強度よりも、ともに高い継ぎ目部材に関連する。
【0010】
上記した考察のように、連結部材の底部には、引張応力がかかる。そこで、本発明の継ぎ目部材は、連結部材のヤング率よりも高い補強部材を使用することで、引張応力を優先的に補強部材に受け、連結部材への引張応力を緩和させている。また、本発明の継ぎ目部材は、連結部材の引張強度よりも高い補強部材を使用することで、連結部材よりも引張応力への耐性が高い補強部材で引張応力が緩和されるため、連結部材の交換寿命を延ばすことができる。言い換えると、連結部材の交換周期(頻度)を大幅に延ばすことができる。また、連結部材の寿命の向上により、連結部材が破断する危険性が低下することは、連結部材の破断による事故の確率が減ることとなり、安全性の向上にもつながる。
なお、補強部材のヤング率が連結部材のヤング率よりも低いが、補強部材の引張強度が連結部材の引張強度より高い場合には、引張応力が補強部材側にほとんどかからず、補強部材としての効果はほとんどない。この観点からも、補強部材のヤング率及び引張強度がともに高い物性であることで、上記した作用効果を呈する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記補強部材の引張強度は900MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の継ぎ目部材である。
【0012】
本発明の構成によれば、補強部材の引張強度が900MPa以上となっている。補強部材の引張強度が900MPaより小さくなると、補強部材としての引張強度が不足し、連結部材を補強する補強部材として十分でない。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記補強部材は、前記連結部材の少なくとも一方の側面の一部又は全部を覆っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の継ぎ目部材である。
【0014】
本発明の構成によれば、前記連結部材の少なくとも一方の側面の一部又は全部を覆っている。そのため、連結部材の横揺れ(レールの延伸方向に直交する方向であって、レールの内外方向)に対しても補強できる。それ故に、連結部材の寿命をさらに延ばすことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記補強部材における、連結部材の側面を覆う部位の厚みが0.5mm以上4mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の継ぎ目部材である。
【0016】
本発明の構成によれば、前記補強部材は、連結部材の側面を覆う部位の厚みが0.5mm以上4mm以下となっている。
補強部材の連結部材の側面を覆う部位の厚みが0.5mm未満になると、薄すぎて、取り付け作業が行いにくく、作業性が低下する。
また、補強部材の連結部材の側面を覆う部位の厚みが4mmよりも大きくなると、例えば、レールと連結部材との間に補強部材を介在させた場合に、連結部材の一部が補強部材厚さによって、レールの頭部の外側に張り出してしまう。そのため、連結部材とレールとの接触面積(補強部材を介して接触している部分も含む)が減ってしまう。すなわち、隣接するレール間を十分に連結するためには、補強部材を設けない場合に比べて、接触面積を75パーセント以上確保する必要があるため、補強部材の連結部材の側面を覆う部位の厚みは4mm以下であることが望ましい。
【0017】
請求項に記載の発明は、前記補強部材は、連結部材又はレールに位置決め可能であり、締結要素によって、レールと補強部材と連結部材とが一体化されている。
【0018】
ここでいう「締結要素」とは、ねじ(ボルト)、釘、鋲などの上位概念である。
【0019】
本発明の構成によれば、補強部材は、連結部材又はレールに位置決め可能である。すなわち、補強部材は、継ぎ目部材をレールに取り付ける際に、レール又は連結部材の所定の位置に仮止めすることができる。そして、位置決めされた状態で、締結要素によってレールと補強部材と連結部材とを一体化できるため、補強部材がずれることなく、容易に継ぎ目部材をレールに取り付けることが可能である。それ故に作業性が高い。
【0020】
請求項に記載の発明は、前記補強部材は、繊維強化プラスチック製であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の継ぎ目部材である。
【0021】
本発明の構成によれば、前記補強部材は、繊維強化プラスチック製であるため、形状の設計や強度の設計が鋼材に比べて容易である。具体的には、繊維の延伸方向を設計することで部分的に強度を変更したり、補強部材の厚みを部分的に厚くしたりすることが可能である。
【0022】
ところで、信号機や踏切警報機の設置場所近傍などの特定の区間のレールでは、その内部に電気回路が取り付けられており、鉄道車輌の通過などのレール上の鉄道車輌の状態を検知する機能を持たせている。具体的には、特定の区間のレールには、鉄道車輌の状態を認識するための電気信号が流れており、例えば、鉄道車輌のレールの通過を検知する際には、通過する鉄道車輌の車輪を介して隣接するレール間に電気信号を流して、閉回路を形成し、形成鉄道車輌が通過したことを認識する。このような構造を有した区間では、鉄道車輌が通過しない状態においては、隣接するレール間で開回路を形成していなければならない。言い換えると、鉄道車輌の状態を正確に検知するためには、隣接するレール間が電気的に絶縁された状態でなければならない。
【0023】
そこで、請求項に記載の発明は、前記補強部材及び前記連結部材は、絶縁体で形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の継ぎ目部材である。
【0024】
本発明の構成によれば、補強部材及び前記連結部材が絶縁体で形成されているため、上記したような信号機や踏切警報機の設置場所近傍のレール間を連結させる場合であっても、隣接するレール間を開回路状態にすることが可能である。すなわち、鉄道車輌の通過を確実に検知することができる。
【0025】
上記した発明は、軌道方向に隣接するレールの継ぎ目に取り付けられる連結部材を補強する補強部材において、レールに取り付けられた状態において、前記連結部材の少なくとも底部の一部又は全部を覆うものであり、前記補強部材のヤング率及び引張強度は、それぞれ連結部材のヤング率及び引張強度よりも、ともに高い補強部材に関連する。
【0026】
の構成によれば、連結部材のヤング率よりも高い補強部材を使用することで、引張応力を優先的に補強部材に受け、連結部材への引張応力を緩和させている。また、連結部材の引張強度よりも高い補強部材を使用することで、連結部材よりも引張応力への耐性が高い補強部材で引張応力が緩和されるため、連結部材の交換寿命を延ばすことができる。
さらに、公知の連結部材に補強部材を設けることで連結部材の寿命を向上させることが可能であるため、別途の連結部材自身の作成等は不要となり、汎用性に優れている。
【発明の効果】
【0027】
本発明の継ぎ目部材によれば、従来の継ぎ目部材に比べて交換寿命が長い。
本発明に関連する補強部材によれば、従来の継ぎ目部材を使用した場合でも、交換寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態の軌道構造を表す概念図である。
図2図1のレール及び継ぎ目部材の分解斜視図である。
図3図1のレール及び継ぎ目部材の断面図である。
図4図3のレール及び継ぎ目部材の分解断面図である。
図5】促進繰り返し試験の測定装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、上下の位置関係は、通常の設置位置(図1)を基準に説明する。なお、以下の説明における物性は、常温における物性を表している。
【0030】
第1実施形態に係る継ぎ目部材1は、図1のように鉄道軌道のレール100を連結するものであり、軌道方向に隣接した2つレール100の側面に跨がって固定されるものである。
継ぎ目部材1は、図1図2のように連結部材2と、補強部材3から形成されている。
連結部材2は、軌道方向(レール100の延伸方向)に隣接したレール100a,100b間を連結する部材であり、2本のレール100a,100bに跨がって配されるものである。
連結部材2は、長尺状の板状の部材であり、その長手方向がレール100の延伸方向に向けて設置されるものである。
連結部材2は、図4のように天地方向下方から順に底部5と、中間部6と、頭部7から形成されている。
【0031】
底部5は、レール100に取り付けた状態において、レール100の底部103上に位置する部位であり、レール100の底部103の上側側面に沿った形状をした底面部8を有している。
中間部6は、レール100に取り付けた状態において、レール100の腹部102上に位置する部位であり、レール100の腹部102の側面に沿った形状をした側面部10を有している。また中間部6は、締結要素30を挿通可能な固定穴15を有している。固定穴15は、連結部材2の高さ方向(上下方向)において略中央に位置している。
頭部7は、レール100に取り付けた状態において、レール100の頭部101上に位置する部位であり、レール100の頭部101の下側側面(頭部101の下面)に沿った形状をした天面部11を有している。
連結部材2は、図3のようにレール100に取り付けた状態において、外側から内側に向けて先細りするテーパー状となっている。具体的には、底面部8と天面部11は傾斜面となっている。また、底面部8と側面部10の境界部位は、図3図4のように底部5から中間部6に向けて、曲面を描いて連続している。また、側面部10と天面部11の境界部位は、中間部6から頭部7に向けて、曲面を描いて連続している。
【0032】
連結部材2の材質については、特に限定されないが、本実施形態では、繊維強化プラスチック(FRP)で形成されている。強化する繊維としては、ガラス繊維やカーボン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維ともいう)などが採用できるが、カーボン繊維及びPBO繊維は、ガラス繊維に比べて非常に高価(カーボン繊維の場合は10倍以上の価格)であり、ガラス繊維に比べて非常に細い線状のものであるため、必要使用本数が数倍(カーボン繊維2倍、PBO繊維12倍)となり、大きな設備面積が必要となる。これらの観点から、ガラス繊維で補強されていることが好ましい。
なお、本実施形態の連結部材2では、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)で形成されており、具体的には、ガラス繊維とビニルエステルを用いて引抜成形で生産されている。
【0033】
続いて、補強部材3について説明する。
補強部材3は、連結部材2の強度を補強する部材であり、連結部材2に対して着脱可能となっている。
補強部材3は、図2のように連結部材2の長手方向全体に取り付けられる板状の部材であり、取り付け時に連結部材2の底面部8を覆う緩衝部21と、連結部材2の側面部10を覆う立壁部22を有している。
緩衝部21は、連結部材2の底面部8に加わる引張応力を緩和させる部位である。
立壁部22は、レール100の横揺れ(レール100の内外方向の揺れ)を緩和させる部位である。
緩衝部21及び立壁部22は、図3図4のように連結部材2の底面部8と側面部10に沿った形状となっている。すなわち、立壁部22は、レール100に取り付けた状態において、鉛直方向に延びており、緩衝部21は、鉛直方向に対して傾斜している。換言すると、緩衝部21は、鉛直成分と水平成分を有している。また、立壁部22と緩衝部21の境界部位は、連結部材2の底面部8と側面部10の境界部位と同様、曲面を描いて連続している。
立壁部22は、締結要素30を挿通可能な固定穴25を有している。
固定穴25は、組み立てた際に連結部材2の固定穴15に対応する位置に設けられている。
【0034】
補強部材3の立壁部22(連結部材2の側面部10を覆う部位の厚み)は、0.5mm以上4mm以下であり、1mm以上3mm以下であることが好ましい。
補強部材3のヤング率及び引張強度は、連結部材2のヤング率及び引張強度よりも大きい。
具体的には、補強部材3のヤング率は、連結部材2のヤング率の3.5倍以上20倍以下であることが好ましく、5倍以上20倍以下であることが特に好ましい。
具体的な数値を挙げると、補強部材3のヤング率は、100GPa以上500GPa以下であることが好ましく、120GPa以上500GPa以下であることが特に好ましい。
また補強部材3の引張強度は、連結部材2の引張強度の1.8倍以上10倍以下であることが好ましく、2倍以上10倍以下であることが特に好ましい。
具体的な数値を挙げると、補強部材3の引張強度は、900MPa以上5000MPa以下となっていることが好ましく、1500MPa以上5000MPa以下であることがより好ましく、2300MPa以上5000MPa以下であることが特に好ましい。
【0035】
補強部材3の材質は、連結部材2のヤング率及び引張強度よりも大きな材質で形成されていれば、特に限定されるものではなく、例えば、繊維強化プラスチック製又はステンレス鋼製であることが好ましい。特に本実施形態のような連結部材2にガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を使用している場合には、PBO繊維で強化されたプラスチックや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、SUS304 3/4Hのステンレス鋼で形成されていることが好ましい。
【0036】
レール100は、公知のレールであり、図2図4のように鉄道車輌が載置される頭部101と、まくら木等に固定される底部103と、頭部101と底部103を接続する腹部102からなっている。腹部102は、締結要素30を挿通可能な固定穴105を有している。
【0037】
締結要素30は公知の締結要素である。本実施形態では、ボルトとナットが採用されている。
【0038】
続いて、継ぎ目部材1のレール100への取り付け手順に沿って各部材の位置関係について説明する。
【0039】
まず、連結部材2に補強部材3を取り付けて位置決めする。
このとき、連結部材2の底面部8は、図3図4のように補強部材3の緩衝部21によって覆われており、連結部材2の側面部10は、補強部材3の立壁部22によって覆われている。連結部材2の底面部8と側面部10は、それぞれ補強部材3の緩衝部21と立壁部22と面接触しており、仮止めされている。言い換えると、補強部材3に連結部材2の一部が嵌め込まれている。
補強部材3の最頂部(立壁部22の頂点)は、少なくとも連結部材2の固定穴15の頂点の高さよりも高い位置に位置しており、具体的には、連結部材2全体の天地方向の長さ(高さ)の2/3以上4/5以下の位置まで延びている。
【0040】
その後、図4のようにレール100に連結部材2及び補強部材3を取り付けて、図3のように締結要素30によって一体化する。
このとき、連結部材2は、図3のようにレール100の頭部101と腹部102と底部103の側面に沿って取り付けられている。補強部材3は、レール100と連結部材2との間に介在している。レール100の頭部101の下側側面と連結部材2の天面部11は、互いに面接触しており、レール100の底部103の上側側面と補強部材3の緩衝部21は、互いに面接触している。一方、連結部材2の側面部10とレール100の腹部102は面接触しておらず、連結部材2の側面部10とレール100の腹部102との間には隙間が形成されている。すなわち、レール100の頭部101と連結部材2の天面部11、及びレール100の底部103の側面と補強部材3の緩衝部21はそれぞれ係合しており、くさび効果が働くため、上下方向におけるレール100に対する連結部材2の相対的な位置決めが可能となっている。また、レール100は、両側側面から連結部材2及び補強部材3によって挟まれている。すなわち、レール100の内外方向に積層構造となっており、軌道の外側から順に連結部材2,補強部材3,レール100,補強部材3,連結部材2が積層している。
【0041】
各レール100と継ぎ目部材1との位置関係に注目すると、連結部材2は、隣接するレール100(100a,100b)の腹部102,102間に跨がって取り付けられており、同様に、補強部材3も隣接するレール100a,100bの腹部102,102間に跨がって取り付けられている。すなわち、図2のように連結部材2及び補強部材3はともに長手方向が軌道方向に向いている。またレール100aとレール100bの間には、隙間が形成されている。
各レール100と継ぎ目部材1は、図3のように、レール100の固定穴105と連結部材2の固定穴15と補強部材3の固定穴25とが一体となって一つの貫通孔を形成しており、当該貫通孔に締結要素30が挿入されて締結されている。
【0042】
このように、継ぎ目部材1によれば、補強部材3が連結部材2の側面部10に沿って、位置決め可能であるため、現場で締結要素30の締め付けと同時に容易に補強部材3の取り付けを行うことができる。
また、継ぎ目部材1によれば、レール100と、連結部材2又は補強部材3との間でのくさび効果によって、レール100に対する連結部材2の位置が位置決めされているため、締結要素30を取り外すことで容易に交換することができる。
【0043】
続いて、補強部材3の有無による継ぎ目部材1の物性の違いについて説明する。
補強部材3を備えない場合の継ぎ目部材のヤング率に対する補強部材3を備えた継ぎ目部材1のヤング率(以下、規格化ヤング率ともいう)は、3.5以上20以下であり、5以上20以下であることが好ましい。
補強部材3を備えない場合の継ぎ目部材の引張強度に対する補強部材3を備えた継ぎ目部材1の引張強度(以下、規格化引張強度ともいう)は、1.8以上10以下であり、2以上10以下であることが好ましい。
また、規格化ヤング率と規格化引張強度の値の差は±10パーセント程度以内であるか、規格化引張強度が規格化ヤング率よりも大きな値をとることが好ましい。
【0044】
上記した実施形態では、通常のレール間の連結する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、信号機や踏切警報機の設置場所近傍などの特定の区間のレールの連結に使用してもよい。この場合、上記したように隣接するレール間が電気的に絶縁された状態でなければならないため、連結部材2及び補強部材3は絶縁体で形成されていることが好ましい。
【0045】
上記した実施形態では、補強部材3の形状を連結部材2に沿った形状としたが、本発明はこれに限定するものではなく、連結部材の底部を補強できれば形状は問わない。例えば、平板状であってもよい。
【0046】
上記した実施形態では、補強部材3は連結部材2に対して位置決めできるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、レールに対して位置決めできるものであってもよい。
【0047】
上記した実施形態では、連結部材2と補強部材3を別体としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、連結部材と補強部材が一体となっていてもよい。
例えば、連結部材2の一部を異なる素材で形成することによって、連結部材として機能する部位と補強部材として機能する部位を一体的に形成してもよい。この場合、引張応力がかかりやすい連結部材2の底部(最下部)付近の一部の材質をガラス繊維の代わりに、カーボン繊維やPBO繊維を配置して成形を行ってもよい。こうすることによって、連結部材2の引張応力に対する耐性が向上し、さらに寿命を向上させることができる。また、一体的に形成することによって、部品点数の減少が可能であり作業効率が向上する。
【0048】
上記した実施形態では、補強部材3が連結部材2のレール100側の面の一部を覆った場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、補強部材3が連結部材2のレール100側の面の全部を覆っていてもよい。すなわち、補強部材3が底面部8と側面部10と天面部11のすべてを覆っていてもよい。
【0049】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
本発明の具体的な実施例及び実施例に対する比較例の継ぎ目部材の作製手順と、これらの評価結果を説明する。
【0051】
〔実施例1〕
実施例1の継ぎ目部材は、連結部材2として信号器材株式会社製のカルイZ(50N−Z−B)を使用し、補強部材3として、幅25mm×長さ560mm×厚み1.2mmの平板状の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用した。
【0052】
〔実施例2〕
実施例2の継ぎ目部材は、連結部材2として信号器材株式会社製のカルイZ(50N−Z−B)を使用し、補強部材3として、幅25mm×長さ560mm×厚み1.0mmの平板状の東洋紡績株式会社製のザイロン繊維(登録商標)で強化されたプラスチック(ZFRP)を使用した。
【0053】
〔実施例3〕
実施例3の継ぎ目部材は、連結部材2として信号器材株式会社製のカルイZ(50N−Z−B)を使用し、補強部材3として、幅25mm×長さ560mm×厚み1.5mmの平板状のステンレス鋼(SUS304 3/4H)を使用した。
【0054】
〔比較例1〕
比較例1の継ぎ目部材は、連結部材2として信号器材株式会社製のカルイZ(50N−Z−B)を使用し、補強部材3として、幅25mm×長さ560mm×厚み1.2mmの平板状の鋼材(SS41)を使用した。
【0055】
〔比較例2〕
比較例2の継ぎ目部材は、連結部材2として信号器材株式会社製のカルイZ(50N−Z−B)を使用し、補強部材3を使用しなかった。
【0056】
〔促進繰り返し試験〕
図5に示す試験機にて、実施例1〜3及び比較例1,2の継ぎ目部材をレール間に設置して、レールの継ぎ目に対して鉛直方向の繰り返し荷重Fをかけ、促進繰り返し試験を行い、荷重をかけた。
試験条件としては、荷重:5〜45kN(輪重2.6〜23.8ton相当)間の繰り返し荷重Fを繰り返し周波数5Hzでかけた。
【0057】
補強部材3を下部に設置した場合(実施例1〜3,比較例1)と、補強部材3を設けない場合(比較例2)で、クラック(亀裂)が固定穴25高さ(固定穴25の底辺)間で達するまでに要する繰り返し回数の比較を行った。補強部材3は、FRP継目板とレールが接触する部分に全長に渡って設置した。
なお、補強部材3の概要は表1に示し、試験結果を表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
クラック(亀裂)が固定穴25の高さまで達するまでの繰り返し回数は、比較例2(補強部材なし)と比べ、実施例1:6.1倍、実施例2:5.9倍、実施例3:4.7倍、比較例1:1.0倍であった。
実施例1,2ともに引張強度の相対比率(規格化引張強度)は、ヤング率の相対比率(規格化ヤング率)とほぼ同等となっており、寿命向上が6倍であった。
実施例3は実施例1,2に比べ、規格化ヤング率が高いが規格化引張強度が低いため、実施例1,2よりも効果は低かったが、比較例2(補強部材なし)よりは寿命の向上が見られた。
比較例1は、ヤング率が比較例2よりも高いが引張強度は低いため、比較例2よりも先に破壊された。すなわち、引張強度が低いと連結部材2よりも先に破壊されてしまい、補強部材3の補強の効果は0であった。
【符号の説明】
【0061】
1 継ぎ目部材
2 連結部材
3 補強部材
8 底部
21 緩衝部
22 立壁部
100 レール
図1
図2
図3
図4
図5