(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の本発明の電池パックにおいて、前記パワー基板と、前記電圧監視部及び前記制御部が設けられた前記基板とが積層されていることが好ましい。かかる好ましい構成は、基板全体の更なる小型化に有利である。
【0012】
前記電圧監視部と前記制御部とが互いに別の基板に設けられていてもよい。これにより、電圧監視部及び制御部のそれぞれに適した基板(例えば多層基板)を選択することができる。また、配線回路や部品配置に関する設計の自由度が向上する。従って、かかる好ましい構成は、基板全体の更なる小型化に有利である。
【0013】
前記電池積層体の入出力タブと電気的に接続されたリードが前記パワー基板に対向していてもよい。この場合、ネジが、前記パワー基板及び前記リードをこの順に貫通し、前記リードに対して前記パワー基板とは反対側に配置されたナットと螺合しており、これにより、前記リードが前記パワー基板に形成された前記パワー配線に電気的に接続されていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、ネジとナットとを螺合するまでは、リードとパワー配線とは電気的に接続されない。従って、電池パックの組み立て作業において、ネジとナットとを螺合する工程を後回しにすることにより、電池パックの組み立て時に感電や短絡などの事故が生じる可能性を低減することができる。
【0014】
上記において、前記リードに対して前記パワー基板とは反対側に配置された保持機構に設けられたキャビティ内に、前記ナットが収納されていることが好ましい。これにより、ネジとナットとを螺合させる作業を容易且つ効率よく行うことができる。
【0015】
前記ネジが前記ナットと螺合していない状態において、前記リードは前記パワー配線から離間することが好ましい。これにより、電池パックの組み立て時に感電や短絡などの事故が生じる可能性を更に低減することができる。
【0016】
前記ネジが前記ナットと螺合していない状態において、前記ナットは、前記パワー基板に接離する方向に移動可能であることが好ましい。これにより、ネジとナットとが螺合することによってリードとパワー配線とが電気的に接続される構成を容易に実現することができる。
【0017】
前記電池パックが、前記パワー基板を覆う上蓋を更に備えていてもよい。この場合、前記上蓋に、前記ネジを挿入するための貫通孔が形成されていることが好ましい。これにより、ネジとナットとを螺合する工程を、電池パックの組み立て作業において、パワー基板を上蓋で覆った後の最終工程として行うことができる。その結果、電池パックの組み立て時に感電や短絡などの事故が生じる可能性を更に低減することができる。
【0018】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。以下の各図では、実際の部材の寸法および各部材の寸法比率等が忠実に表されていない。各部材に付した符号の添え字「p」及び「n」は、特に断りがない限り、それぞれ「正極」及び「負極」を意味する。
【0019】
<電池セル>
本発明の一実施形態にかかる電池パックを構成する電池セルについて説明する。
【0020】
図1Aは、電池セル10の正面側から見た斜視図、
図1Bは、その背面側から見た斜視図である。電池セル10は、平面視形状が略矩形であり、当該略矩形の縦横寸法に比べて厚みが薄い薄板形状を有する。この電池セル10では、ラミネートシート13からなる外装内に、略矩形の平面視形状を有する薄板状の発電要素(図示せず)が電解液とともに封入されている。発電要素は、正極集電体の所定領域の両面に正極活物質を含む正極合剤層が塗布形成された正極と、負極集電体の所定領域の両面に負極活物質を含む負極合剤層が塗布形成された負極とが、セパレータを介して交互に積層されてなる電極積層体である。電池の種類は特に制限はないが、二次電池、中でもリチウムイオン二次電池が好ましい。
【0021】
ラミネートシート13は、発電要素に比べて薄く、且つ、可撓性を有している。ラミネートシート13は、例えば、アルミニウム等からなる基層の、発電要素に対向する側の面に熱融着性樹脂層(例えば変性ポリオレフィン層)が積層された可撓性を有する多層シートであってもよい。1枚の矩形のラミネートシート13が、発電要素を挟むように下辺(一方の短辺)14bで二つ折りにされ、下辺14b以外の三辺に沿って重ね合わされてヒートシール法などによりシールされている。
【0022】
下辺14bに対向する上辺(他方の短辺)14aから、正極タブ11p及び負極タブ11nが導出されている。正極タブ11p及び負極タブ11nは、短冊形状を有し、上辺14aに対して直交する方向(即ち、上辺14aに隣接する一対の側辺(長辺)14sと平行な方向)に沿って延びている。正極タブ11pは、例えばアルミニウムの薄板からなり、発電要素を構成する複数の正極集電体(図示せず)と電気的に接続されている。また、負極タブ11nは、例えば銅の薄板、ニッケルメッキされた銅の薄板、または銅/ニッケルのクラッド材等からなり、発電要素を構成する複数の負極集電体(図示せず)と電気的に接続されている。
【0023】
図1Aに示されているように、発電要素に対応する長方形の領域16が電池セル10の三辺14a,14s,14sに沿ったラミネートシート13のシール領域に対して突出している。領域16が突出した面を、電池セル10の「正面」と呼ぶ。一方、
図1Bに示されているように、略一平面をなす、正面とは反対側の面を、電池セル10の「裏面」と呼ぶ。
【0024】
本発明において、電池セルの構成は上記に限定されない。例えば、発電要素を2枚の矩形状のラミネートシートで挟み、4辺に沿って2枚のラミネートシートをシールした四方シールタイプの電池セルであってもよい。
【0025】
<電池積層体>
図2は、本発明の一実施形態にかかる電池パックを構成する電池積層体20の分解斜視図である。電池積層体20は、複数の電池セル10が積層されて構成される。電池セル10が積層される方向(
図2において横方向)を「積層方向」と呼ぶ。
【0026】
図2に示されているように、複数の電池セル10は、隣り合う2つの電池セル10間において異極のタブ(即ち正極タブ11pと負極タブ11n)同士が積層方向に互いに対向するように、1つおきの電池セル10は裏返されている。二点鎖線23で示すように、積層方向に対向する正極タブ11pと負極タブ11nとが電気的に接続される。その結果、複数の電池セル10が直列に接続される。互いに接続された正極タブ11pと負極タブ11nに電圧監視用の配線22が接続される。異極タブと接続されない両端の正極タブ11p’及び負極タブ11n’は、電池積層体20に対して電力の入出力を行う入出力タブとなる。
【0027】
積層方向に隣り合う電池セル10は、例えば両面粘着テープを用いて一体化される。隣り合う電池セル10間に、薄い板材(図示せず)を介在させてもよい。電池積層体20を構成する電池セル10の数は任意である。
【0028】
<電池パック>
図3は、本発明の一実施形態にかかる電池パック1の概略構成を示したブロック図である。
【0029】
電池積層体20に接続された電圧監視用の複数の配線22(
図2参照)は、電圧監視部3に接続されている。
【0030】
電池積層体20の入出力タブ11p’,11n’は、パワー配線41p,41nを介して、電池パック1に対して電力の入出力を行う外部接続端子42p,42nに接続されている。正極パワー配線41p上には、正極パワー配線41pを断続するスイッチ43が設けられている。一方、負極パワー配線41n上には、負極パワー配線41nを流れる電流を監視する電流監視部44が設けられている。スイッチ43は、正極パワー配線41pの電気的接続を切り替える開閉器と、当該開閉器を駆動するドライバ回路を含む。本実施形態とは異なり、正極パワー配線41p上に電流監視部44が設けられ、負極パワー配線41n上にスイッチ43が設けられていてもよい。正極パワー配線41p及び負極パワー配線41nのいずれか一方に、スイッチ43及び電流監視部44が設けられていてもよい。パワー配線41p,41n、外部接続端子42p,42n、スイッチ43、電流監視部44は、パワー部4を構成する。
【0031】
電圧監視部3は、制御部5に接続されている。制御部5は、電圧監視部3からの信号により電池セル10の電圧が異常であることを検知すると、パワー配線41pを遮断する信号をスイッチ43に出力し、電池積層体20と電池パック1に接続された機器との電気的接続を遮断する。
【0032】
電流監視部44も制御部5に接続されている。制御部5は、電流監視部44からの信号によりパワー配線を流れる電流が異常であることを検知すると、パワー配線41pを遮断する信号をスイッチ43に出力し、電池積層体20と電池パック1の外部との電気的接続を遮断する。
【0033】
図示を省略しているが、電圧監視部3、スイッチ43、電流監視部44、制御部5は、それぞれの機能を発揮するために、電池積層体20から電力供給を受ける。
【0034】
図3に示した構成が、実際の電池パック1でどのように具現化されているかを以下に説明する。
【0035】
図4は電池パック1の斜視図である。電池パック1は、ケース本体61と、中間枠62と、上蓋63とをこの順に備えたケース60を有している。上蓋63の上面には、電池パック1に対して電力の入出力を行う正極外部接続端子42p及び負極外部接続端子42nが設けられている。
【0036】
図5は、上蓋63及び中間枠62の内部の構造を透視した電池パック1の主要部の透視斜視図である。ケース本体61は、略直方体形状を有し、上方が開口した有底箱体である。ケース本体61内に電池積層体20(
図2参照)が収納されている。ケース本体61の開口を塞ぐように、電圧監視基板73がケース本体61に固定されている。電圧監視基板73の上方に、パワー基板74及び制御基板75が配置されている。
図3で説明した電圧監視部3、パワー部4、制御部5は、順に、電圧監視基板73、パワー基板74、制御基板75に設けられている。
【0037】
電圧監視基板73は、略矩形の平面視形状を有する。電圧監視基板73の周囲の4辺のうち、対向する一方の2辺には第1切り欠き31p,31nが形成され、対向する他方の2辺のそれぞれには、複数の第2切り欠き32が形成されている。
【0038】
一対の第1切り欠き31p,31nを通って、電池積層体20の入出力タブ11p’,11n’(
図2参照)に接続された短冊状の電極リード21p,21nが、電圧監視基板73の下側(電池積層体20側)から上側に案内されている。電極リード21p,21nは、電圧監視基板73上に搭載された端子台33p,33nに固定されている。短冊状の接続リード45p,45n(
図5では正極接続リード45pは見えない)の一端が端子台33p,33nに接続されている。これにより、接続リード45p,45nは、端子台33p,33nを介して電極リード21p,21nと電気的に接続されている。接続リード45p,45nの他端は、パワー基板74に電気的に接続されている(後述する
図8を参照)。
【0039】
第2切り欠き32は、電極監視基板73の辺に沿って略一定ピッチで形成されている。端子35が、電極監視基板73上の第2切り欠き32の近傍の位置に搭載されている。端子35は、第2切り欠き32に一対一に対応して複数個設けられている。各第2切り欠き32を通って、電池積層体20に接続された1本の電圧監視用の配線22(
図2参照)が、電圧監視基板73の下側(電池積層体20側)から上側に案内されている。配線22は、当該配線22を案内する第2切り欠き32に対応する端子35に接続されている。
【0040】
電圧監視基板73には、電池積層体20を構成する各電池セル10の電圧を監視するための電圧監視回路(例えばIC)36が実装されている。電圧監視回路36は、電圧監視用基板73に形成された配線(図示せず)を介して複数の端子35に接続されている。電圧監視回路36は、各電池セル10の電圧を監視する電圧監視部3(
図3参照)を構成する。
【0041】
パワー基板74は、電圧監視用基板73の上方に、これから離間して配置されている。パワー基板74には、電池パック1に対して電力の入出力を行う外部接続端子42p,42n(
図3参照)が搭載されている。接続リード45p,45nと外部接続端子42p,42nとをつなぐパワー配線41p,41n(
図3参照、
図5では図示を省略)がパワー基板74の表面又はその内部に形成されている。更に、パワー基板74には、スイッチ43(
図3参照)を構成するスイッチ回路(例えばIC)43a、及び、電流監視部44(
図3参照)を構成する電流監視回路(例えばIC)44aが搭載されている。
【0042】
制御基板75は、パワー基板74の上方に、これから離間して配置されている。制御基板75には、制御部5(
図3参照)を構成する制御回路(例えばIC)51が搭載されている。
【0043】
電圧監視基板73、パワー基板74、制御基板75は、柔軟性を有するケーブル(図示せず)で相互に電気的に接続されている。
【0044】
<作用>
本実施形態の電池パック1の作用を、従来の電池パックと比較しながら説明する。
【0045】
上述したように、近年では、電池パックに対する小型化且つ大容量化の要望が増大している。電池パックの大容量化を実現するためには、電池積層体と外部接続端子とをつなぐパワー配線の電流を増大させる必要がある。これは、パワー配線から発生するノイズを増大させる。従来の電池パックでは、パワー配線と、電圧監視部及び制御部を含む保護回路とが同一の基板上に設けられていたので、パワー配線からのノイズによって電圧監視部及び制御部を構成するデジタル回路に悪影響を及ぼす可能性があった。ノイズの悪影響を回避するためには、パワー配線と電圧監視部及び制御部とを離間する必要があり、これは基板面積の増大を招き、電池パックの小型化を困難にしていた。
【0046】
これに対して、本実施形態の電池パック1では、パワー配線41p,41nを含むパワー部4が、電圧監視部3が設けられた電圧監視基板73及び制御部5が設けられた制御基板75とは別のパワー基板74に設けられている。従って、パワー部4と電圧監視部3及び制御部5との距離を容易に拡大することができる。また、必要に応じて、パワー部4と電圧監視部3及び制御部5との間にシールドを施すことができる。その結果、パワー部4からのノイズによって電圧監視部3及び制御部5を構成するデジタル回路に悪影響を及ぼす可能性を低減することができる。
【0047】
基板を分割することにより、各基板に形成する配線や基板に搭載する部品の配置に関する設計の自由度が向上する。これは、単一の基板を用いる従来の構成に比べて、基板全体の小型化に有利である。
【0048】
電池パックの基板としては、その表面及び内部に複数層の配線(配線パターン)が所定パターンで形成された、いわゆる多層基板が一般的に用いられる。多層基板では、通常、各層の配線の厚さ(基板の表面に垂直な方向に沿った寸法)は同一である。従来の電池パックでは、パワー配線と、電圧監視部及び制御部を含む保護回路とが同一の基板上に設けられていた。パワー配線の大電流化のために配線が厚い多層基板を用いた場合には、そのような厚い配線は電圧監視部及び制御部には無駄になり、また、多層基板が厚肉化する。一方、パワー配線の大電流化のために配線が広幅の多層基板を用いた場合には、基板面積の増大を招く。
【0049】
これに対して、本実施形態の電池パック1では、パワー配線41p,41nを含むパワー部4が、電圧監視部3が設けられた電圧監視基板73及び制御部5が設けられた制御基板75とは別のパワー基板74に設けられている。従って、各基板73,74,75として、最適な多層基板を用いることができる。例えば、パワー配線41p,41nの大電流化のために、パワー基板74として、配線の厚さが厚い多層基板を用いることができる。これにより、配線の幅(基板の表面に平行な方向に沿った寸法)の増大を抑えることができるので、基板面積の増大を回避できる。一方、大電流が必要とされない電圧監視基板73及び制御基板75としては、配線の厚さ及び幅が相対的に小さな多層基板を用いることができる。これにより、基板73,75を薄く且つ小面積化することができる。一実施例では、パワー基板74として、厚さが300μmの配線が形成された、全体厚さが2.3mmの多層基板を用いることができ、電圧監視用基板73として、厚さが35μmの配線が形成された、全体厚さが1.5mmの2層基板を用いることができ、制御基板75として、厚さが35μmの配線が形成された、全体厚さが1.5mmの6層基板を用いることができる。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、パワー部4が電圧監視部3及び制御部5が設けられた基板73,75とは別のパワー基板74に設けられており、且つ、パワー基板74に形成された配線は、電圧監視部3及び制御部5が設けられた基板73,75に形成された配線より厚い。これにより、電池パック1の小型化且つ大容量化を実現することができる。
【0051】
更に、3つの基板73,74,75を積層することにより、上述したノイズの問題を回避しながら、基板73,74,75を全体として小型化することができる。なお、基板73,74,75の積層順序は上記の実施形態に限定されず、任意に変更することができる。
【0052】
また、保護回路を機能に着目して複数部分に分割してそれぞれを別個の基板に搭載したことにより、保護回路の各部分をモジュール化することができる。これにより、保護回路を構成する複数の基板のうちの一部のみを設計変更したり入れ替えたりすることが容易になるので、電池パックの多品種化に容易に対応できる。また、保護回路の修理も、一部の基板のみを交換することで行うことができる。
【0053】
<電池積層体とパワー配線との接続>
電池パック1を組み立てる際には、いずれかの段階で、電池積層体20の入出力タブ11p’,11n’(
図2参照)とパワー配線41p,41n(
図3参照)とを電気的に接続する工程(以下「電池−パワー基板接続工程」という)を行う必要がある。電池−パワー基板接続工程を早い段階で行うと、その後の組み立て工程で感電や短絡などの事故が生じる可能性が高くなる。電池積層体20の容量(電圧)が高い場合には、そのような事故による損害は甚大となり得る。更に、本実施形態のように、複数の基板を用いる場合には、電池パック1の組み立て工程が複雑になるので、そのような事故が発生する可能性は高い。
【0054】
本実施形態の電池パック1では、このような事故が生じる可能性を低減する構造が採用されている。これを以下に説明する。
【0055】
本実施形態の電池パック1は、概略、以下の工程を順に経て組み立てられる。即ち、(1)ケース本体61に電池積層体20を収納する。(2)ケース本体61に電圧監視基板73を固定し、電池積層体20と電圧監視基板73とを結線する。(3)ケース本体61に中間枠62を固定する。(4)中間枠62にパワー基板74を固定する。(5)制御基板75を装着した上蓋63を中間枠62に固定する。
【0056】
図6は、上記の組み立てにおいて、中間枠62にパワー基板74を固定した状態(上記工程(4))を示した斜視図である。この後、パワー基板74を覆うように、上蓋63を中間枠62に固定する(上記工程(5))。
図7は、上蓋63を固定した状態を示した、
図6の7−7線を含む上下方向面に相当する断面に沿った矢視断面図である。
図7では、図面を簡単化するために、断面より後ろに見える部材を省略している。
【0057】
図7に示されているように、電圧監視基板73に導電性を有する端子台33nが搭載されている。電池積層体20の入出力タブ11n’(
図2参照)に接続された電極リード21nが、端子台33nにネジ47aで密着固定されている。略Z字上に折り曲げられた接続リード45nの下端が、端子台33nにネジ47bで密着固定されている。従って、端子台33nを介して、電極リード21nと接続リード45nとが電気的に接続されている。なお、端子台33nが絶縁性を有していてもよく、その場合には、端子台33nの上面に導電層を形成して、当該導電層を介して電極リード21nと接続リード45nとを電気的に接続することができる。
【0058】
中間枠62は、端子台33nの近傍に、保持部65を有している。保持部65は、上方が開口した有底箱形状を有し、その内部のキャビティ66内にナット48を保持している。キャビティ66内において、ナット48は上下方向(パワー基板74に接離する方向)に移動可能である。接続リード45nの上端は、保持部65の開口を塞ぐように、水平方向に延びている。接続リード45nの上端には、ナット48と略同軸となる位置に、接続リード45nを貫通する貫通孔46が形成されている。更に、パワー基板74にも、ナット48と略同軸となる位置に、パワー基板74を貫通する貫通孔77が形成されている。パワー基板74の下面であって、接続リード45nの上端に対向する領域には、導電性金属からなる配線端子41tが形成されている。配線端子41tは、貫通孔77の開口を取り囲んでいる。配線端子41tは、パワー配線41n(
図3参照)の一部をなす。接続リード45nと配線端子41tとは離間している。上蓋63がパワー基板74を覆っている。上蓋63の、ナット48と略同軸となる位置に、上蓋63を貫通する貫通孔68が形成されている。
【0059】
電池積層体20の入出力タブ11n’とパワー配線41nとを接続する電池−パワー基板接続工程を行う際には、上蓋63に形成された貫通孔68に、上方からネジ49を挿入する(
図8参照)。ネジ49を、上蓋63の貫通孔68、パワー基板74の貫通孔77、接続リード45nの貫通孔46を順に貫通させて、保持部65に保持されたナット48と螺合させる。ナット48の外周の正六角柱面が、保持部65のキャビティ66の内周面に当接するので、ナット48の回転が阻止される。ネジ49とナット48との螺合が進むにしたがってナット48が上方に持ち上げられ、これにともない接続リード45nも持ち上げられる。そして、遂に、
図8に示すように、ネジ49とナット48とがしっかりと締結される。これにより、接続リード45nとパワー配線41nの配線端子41tとが密着して電気的に接続され、電池−パワー基板接続工程が完了する。
【0060】
上記の説明は、電池積層体20の入出力タブとパワー配線との負極側の電気的接続に関するものであるが、正極側の電気的接続も上記と同様である。
【0061】
このように、本実施形態では、上蓋63を中間枠62に取り付けただけでは、電池積層体20の入出力タブ11p’,11n’と導通した接続リード45p,45nとパワー配線41p,41nとは、電気的に接続されない。上蓋63の上方から、貫通孔68にネジ49を挿入して、パワー基板74の下側に保持されたナット48に螺合することによって、電池−パワー基板接続工程が完了する。本実施形態によれば、基板73,74,75を、電池積層体20の入出力タブ11p’,11n’に電気的に接続されていない状態で組み付けることができる。電池−パワー基板接続工程は、上蓋63を固定した後、即ち、電池パック1の組み立て作業の最終工程として行う。その結果、基板73,74,75の組み付け作業において感電や短絡などの事故が生じる可能性を低減することができる。上蓋63の貫通孔68は、電池−パワー基板接続工程を行った後、必要に応じて、上蓋63にラベルを貼付したり、貫通孔68に栓を挿入したりして塞いでもよい。
【0062】
本実施形態では、ナット48は、ネジ49と螺合する前に、保持部65のキャビティ66内に上下方向に移動可能に保持されている。この構成では、中間枠62にパワー基板74を取り付ける前に、ナット48を保持部65のキャビティ66内に収納しておけばよい。ナット48が保持部65に保持されているので、ネジ49をパワー基板74の貫通孔77に挿入して回転させれば、ネジ49とナット48とを簡単に螺合させることができる。これにより、電池−パワー基板接続工程を効率よく行うことができる。
【0063】
上記の実施形態は、例示にすぎない。本発明は、上記の実施形態に限定されず種々に変更することができる。
【0064】
例えば、上記の実施形態では、電圧監視部3と制御部5とが上下方向に積層されていたが、これらが同一水平面に沿って配置されていてもよい。電圧監視部3及び制御部5を、別個の基板に設けるのではなく、共通する基板に設けてもよい。また、電圧監視部3、パワー部4、制御部5のうちの少なくとも一つが、2以上に分割されてそれぞれ別個の基板に設けられていてもよい。
【0065】
上記の実施形態では、電池積層体20の入出力タブ11p’,11n’は、電極リード21p,21n及び接続リード45p,45nを介してパワー配線41p,41nに接続されていたが、電極リード21p,21n及び接続リード45p,45nのうちの一方又は両方を省略してもよい。あるいは、入出力タブ11p’,11n’とパワー配線41p,41nとの間に、これら以外の部材を更に介在させてもよい。
【0066】
上記の実施形態では、入出力タブ11p’,11n’とパワー配線41p,41nとの間に、電圧監視基板73に設けた端子台33p,33nが介在していたが、端子台33p,33nを省略し、電極リード21p,21n(または入出力タブ11p’,11n’と導通した任意のリード)をパワー基板74のパワー配線41p,41nに接続してもよい。
【0067】
ナット48を保持する保持部65は、中間枠62に設けられている必要はない。例えば、電圧監視基板73又はパワー基板74に、保持部65を設けてもよい。保持部65を省略し、作業者がナット48を保持しながらナット48とネジ49とを螺合させてもよい。
【0068】
電池パックの保護回路が、電池セルの温度を監視する温度監視部を更に備えていてもよい。この場合、制御部5は、温度監視部からの信号により電池セルの温度が異常であることを検知すると、パワー配線を遮断する信号をスイッチ43に出力し、電池積層体20と電池パック1の外部との電気的接続を遮断するように構成することができる。このような温度監視部は、パワー基板74以外の基板に設けることが好ましい。
【0069】
ケースの構成は、上記の実施形態に限定されず、任意である。例えば中間枠62を省略してもよい。
【0070】
上蓋63が、ネジ49を挿入するための貫通孔68を有していなくてもよい。この場合、電池−パワー基板接続工程は、上蓋63を中間枠62に固定する工程(上記の工程(5))の直前に行うことができる。この場合も、接続リード45p,45nとパワー配線41p,41nとの接続を除いて、電池パック1の組み立てにおいて必要な全ての電気的接続を終了した後に、電池−パワー基板接続工程を行うことができる。これにより、電池−パワー基板接続工程の直前まで、基板73,74,75を、電池積層体20の入出力タブ11p’,11n’に電気的に接続されていない状態で組み付けることができる。その結果、基板73,74,75の組み付け作業において感電や短絡などの事故が生じる可能性を低減することができる。
【0071】
上記の実施形態では、制御基板75は、上蓋63に装着される。但し、本発明はこれに限定されず、制御基板75がパワー基板74に固定されるように構成されていてもよい。この場合、制御基板75をパワー基板74に固定した後、上蓋63を、制御基板75及びパワー基板74を覆うように固定枠62に固定する。
【0072】
上記の説明では、上蓋63側を電池パック1の上側、ケース本体61側を電池パック1の下側として、電池パック1の上下方向及び水平方向を記載したが、これは説明の便宜にすぎない。電池パックの実際の使用時の向きはこれに限定されない。