【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明の圧電材料を用いた制震装置は、構造物が水平力を受けたときに引張力と圧縮力が交互に繰り返して作用し、一方に引張力が作用するときに他方に圧縮力が作用する関係にある、対になる荷重受け部において、一方の荷重受け部と他方の荷重受け部のそれぞれに組み込まれ、前記水平力の作用時に前記引張力と圧縮力を厚さ方向の圧力として負担する圧電材料を備え、
前記一方の荷重受け部に前記引張力、または圧縮力が作用したときに、その一方の荷重受け部の圧電材料が発生する、伸び変形量、または縮み変形量に応じた電圧が前記他方の、圧縮力、または引張力が作用している荷重受け部の圧電材料に印加され、この他方の荷重受け部の圧電材料が、前記一方の荷重受け部の圧電材料が発生し、印加された前記電圧に応じた伸び変形、または縮み変形を前記圧縮力、または引張力の作用方向に生じ、この伸び変形量、または縮み変形量に応じた反力を前記他方の荷重受け部に作用させ
、
前記一方の圧電材料が変形時に発生する前記電圧は前記他方の圧電材料を変形させ、この他方の圧電材料の変形はその側の荷重受け部に作用している前記圧縮力、または引張力に対する反力になることを構成要件とする。
【0011】
「一方に引張力が作用するときに他方に圧縮力が作用する関係にある、対になる荷重受け部」とは、構造物に入力する水平力の作用に伴い、構造物内外におけるいずれかの構造部材の一部(継手部等)において、または構造部材同士の接合部等において引張力と圧縮力を交互に負担する部分(部位)を指す。引張力を負担する部分と圧縮力を交互に負担する部分に作用する外力の向きは水平力の向きの変化に応じて交互に入れ替わるため、水平力の向きの変化に伴い、引張力を負担する部分は圧縮力を負担する部分になり、圧縮力を負担する部分は引張力を負担する部分になる。圧電材料(圧電素子)は荷重受け部における配置状態に応じ、厚さ方向の圧力としての引張力と圧縮力を圧電材料の厚さ方向、または軸方向に交互に受ける。
【0012】
「水平力の作用時に引張力と圧縮力を厚さ方向の圧力として負担する圧電材料」とは、一方と他方の各荷重受け部に組み込まれた各圧電材料が各荷重受け部に作用する引張力と圧縮力を厚さ方向の引張力、もしくは圧縮力として負担することを言う。原則的には各圧電材料4、5が各荷重受け部2、3に作用する引張力と圧縮力を交互に負担することになるが、荷重受け部2、3の部位によっては圧電材料4、5は
図3に示すように荷重受け部2、3に作用する引張力を圧縮力として負担する状態に荷重受け部2、3に組み込まれることもある。一方と他方の荷重受け部2、3が引張力を受けるときには、荷重受け部2、3を構成する一方の構造部材(
図3の鉄骨梁71)と他方の構造部材(
図3の鉄骨柱61)が互いに遠ざかる向きに相対変位しようとするため、一方の構造部材と他方の構造部材間に介在する圧電材料4、5は原則的には引張力を負担することになる。
【0013】
但し、引張力が作用する荷重受け部2、3に組み込まれる圧電材料4、5に引張力を負担させるには、一方の構造部材を他方の構造部材に接合している、例えばボルトがいずれかの構造部材に対して軸方向に相対移動可能であることと、圧電材料4、5の厚さ方向の両面全面が両構造部材に接着された状態を維持する必要があるため、荷重受け部2、3に引張力が作用するときに、圧電材料4、5に圧縮力を負担させる方が両構造部材間に圧電材料4、5を介在させ易い場合がある。このような場合には
図3に示すように荷重受け部2、3に引張力が作用するときに圧電材料4、5が圧縮力を負担する状態に荷重受け部2、3に組み込まれることがある。詳しくは後述する。
【0014】
対になる荷重受け部2、3は、例えば一方と他方の構造部材が
図2−(a)に示すように梁7と柱6であれば、梁7の上部と下部における柱6との接合部であり、特に
図2−(b)に示すように梁7が鉄骨梁71であれば、上部のフランジ71aと柱6との接合部、及び下部のフランジ71aと柱6との接合部である。一方と他方の構造部材が
図8に示すようにブレース12と、フレームを構成する梁7、または柱6等であれば、圧縮側のブレース12とフレーム(梁7、または柱6)との接合部、及び引張側のブレース12とフレームと(梁7、または柱6)の接合部が対になる荷重受け部2、3になる。荷重受け部2、3は構造部材自体の一部であることもあり、
図8に示すブレース12における軸方向の一部の、軸方向等に分離した部分間に跨って圧電材料4、5が組み込まれることもある。
【0015】
また
図9に示すように構造物20が積層ゴム支承等の免震装置15、16を挟んで上部構造17と下部構造18に区分される場合には、構造物20に入力する外力(水平力)の作用に伴い、引張力を負担する側になる免震装置15と上部構造17、もしくは下部構造18との接合部、及び圧縮力を負担する側になる免震装置16と上部構造17、もしくは下部構造18との接合部が対になる荷重受け部2、3になる。荷重受け部2、3を構成する上部構造17と免震装置15(16)、及び下部構造18と免震装置16(15)は一方と他方の構造部材になる。
【0016】
図9の場合、構造物20が水平力を受けたときに軸方向(鉛直方向)の引張力を受けるいずれかの免震装置15と、それと対になり、軸方向の圧縮力を受けるいずれかの免震装置16が荷重受け部2、3を構成する。免震装置15、16が介在する上部構造17と下部構造18の接合部は上部構造17の柱と下部構造18の柱との間に形成される他、上部構造17の基礎と下部構造18の基礎との間等に形成される場合があり、下部構造18は杭である場合もある。
【0017】
対になる荷重受け部2、3は2箇所で一組になり、一方の荷重受け部2(3)が引張力を受ける(負担する)ときに他方の荷重受け部3(2)が圧縮力を受ける(負担する)関係にある。但し、引張力と圧縮力は交互に作用し、一方の荷重受け部2(3)は引張力を受けた直後には圧縮力を受け、他方の荷重受け部3(2)は圧縮力を受けた直後には引張力を受けるため、対になる荷重受け部2、3はいずれも引張力と圧縮力を交互に負担する関係にあり、符号2、3は便宜的に付されているに過ぎない。
【0018】
請求項1における「一方の荷重受け部に引張力、または圧縮力が作用したときの圧電材料の伸び変形量、または縮み変形量」とは、一方の荷重受け部2(3)の圧電材料4(5)が一方の荷重受け部2(3)に作用する引張力を負担して伸び変形する場合と、荷重受け部2(3)に作用する引張力を圧縮力として負担して縮み変形する場合の他、荷重受け部2(3)に作用する圧縮力を負担して縮み変形する場合と、荷重受け部2(3)に作用する圧縮力を引張力として負担して伸び変形をする場合の変形量を言う。圧電材料4(5)は伸び変形量、または縮み変形量に応じた大きさの電圧を発生する。
【0019】
一方の荷重受け部2(3)の圧電材料4(5)が引張力を負担して伸び変形を生ずるときには、圧電材料4(5)の、引張力の作用方向両面の内、一方の面(例えば上面(一方の側面))に正の電荷が、他方の面(例えば下面(他方の側面))に負の電荷が生じ、両面間に電位差(電圧)が生ずる。同時に、他方の荷重受け部3(2)の圧電材料5(4)は圧縮力を負担して縮み変形するときに、圧電材料5(4)の、圧縮力の作用方向両面の内、一方の面(上面(一方の側面))に負の電荷が、他方の面(下面(他方の側面))に正の電荷が生じ、両面間に電位差(電圧)が生ずる。以下、圧電材料4(5)の厚さ方向の一方の面と他方の面をそれぞれ上面と下面に代表させる。
【0020】
一方、圧電材料4(5)は引張力と圧縮力の作用方向両面間に電圧を掛けられたときには、外力(引張力、または圧縮力)を負担したときに発生する電圧と逆向きの電圧を掛けられたときの変形を生ずる。すなわち、圧電材料4(5)は引張力を負担して伸び変形するときに発生する電圧とは逆向きの電圧を両面間に掛けられたときに伸び変形を生じ、圧縮力を負担して縮み変形するときに発生する電圧とは逆向きの電圧を両面間に掛けられたときに縮み変形を生ずる。
【0021】
例えば圧電材料4(5)が引張力を負担して伸び変形するときには、上記の通り、一方の面(上面)に正の電荷が、他方の面(下面)に負の電荷が生ずるが、両面間に電圧を掛けられるときには、一方の面(上面)に負の電位を与え、他方の面(下面)に正の電位を与えたときに伸び変形する。同様に圧電材料5(4)が圧縮力を負担して縮み変形するときには、一方の面(上面)に負の電荷が、他方の面(下面)に正の電荷が生ずるが、両面間に電圧を掛けられるときには、一方の面(上面)に正の電位を与え、他方の面(下面)に負の電位を与えたときに縮み変形する。
【0022】
このような特性から、一方に引張力が作用するときに他方に圧縮力が作用する関係にある荷重受け部2、3に圧電材料4、5を対にして組み込むことで、一方の圧電材料4(5)が変形時に発生する電圧を他方の圧電材料5(4)を変形させるために使用し、他方の圧電材料5(4)の変形(伸び変形、または縮み変形)をその側の荷重受け部3(2)に作用している外力(圧縮力、または引張力)に対する抵抗力(反力)として活用することが可能になる。一方の圧電材料4(5)が発生する電圧を他方の圧電材料5(4)の変形に利用することは、他方の圧電材料5(4)が発生する電圧を一方の圧電材料4(5)の変形とそれによる反力の発生に利用することにも当てはまる(請求項2)。
【0023】
例えば
図2−(a)に示すように圧縮力が作用している他方の荷重受け部3(2)において圧電材料5(4)が厚さ方向の圧力として圧縮力、もしくは引張力を負担して縮み変形、もしくは伸び変形しているときに、引張力が作用している一方の荷重受け部2(3)において厚さ方向の圧力として引張力、もしくは圧縮力を負担して伸び変形、もしくは縮み変形している圧電材料4(5)が発生する電圧を他方の圧電材料5(4)に印加することで、他方の圧電材料5(4)に伸び変形、もしくは縮み変形を生じさせ、他方の荷重受け部3に圧縮力に対する抵抗力(押し返す力)を発生させることができる(請求項1)。一方の圧電材料4(5)が発生した電圧を他方の圧電材料5(4)に印加するには、一方の圧電材料4(5)の厚さ方向の両面に接続された電極を他方の圧電材料5(4)の厚さ方向の両面に直接、接続するか、一方の圧電材料4(5)が発生した電圧を、正負を維持したまま他方の圧電材料5(4)に印加するための電気回路、もしくは後述の反転回路10等の電気回路を介して間接的に接続すればよい。
【0024】
同様に引張力が作用している一方の荷重受け部2(3)において圧電材料4(5)が厚さ方向の圧力として引張力、もしくは圧縮力を受けて伸び変形、もしくは縮み変形しているときに、圧縮力が作用している他方の荷重受け部3(2)において圧縮力、もしくは引張力を受けて縮み変形、もしくは伸び変形している圧電材料5(4)が発生する電圧を一方の圧電材料4(5)に印加することで、一方の圧電材料4(5)に縮み変形、もしくは伸び変形を生じさせ、一方の荷重受け部2に引張力に対する抵抗力(引き寄せる力)を発生させることが可能である(請求項2)。
【0025】
但し、前記のように伸び変形している圧電材料4(5)が発生する電圧と、縮み変形している圧電材料5(4)を伸び変形させるために与えるべき電圧の向きは逆であり、縮み変形している圧電材料5(4)が発生する電圧と、伸び変形している圧電材料4(5)を縮み変形させるために与えるべき電圧の向きは逆になる。このため、一方の圧電材料4(5)の変形と他方の圧電材料5(4)の変形が逆である場合、すなわち一方の圧電材料4(5)が伸び変形し、他方の圧電材料5(4)が縮み変形している場合には、一方の圧電材料4(5)が発生する電圧を他方の圧電材料5(4)に印加する際に、一方の圧電材料4(5)が発生する電圧の向きを逆にして他方の圧電材料5(4)に印加することが必要になる。他方の圧電材料5(4)が発生する電圧を一方の圧電材料4(5)に印加する場合も、両圧電材料5、4の変形が逆である場合には、電圧の向きを逆にする必要がある。
【0026】
一方の圧電材料4(5)の変形と他方の圧電材料5(4)の変形が同一である場合、すなわち一方の圧電材料4(5)が伸び変形し、他方の圧電材料5(4)も伸び変形している場合、または一方の圧電材料4(5)が縮み変形し、他方の圧電材料5(4)も縮み変形している場合には、一方の圧電材料4(5)が発生する電圧の向きを逆にして他方の圧電材料5(4)に印加する必要はない。他方の圧電材料5(4)が発生する電圧を一方の圧電材料4(5)に印加するときも(請求項2)、一方と他方の圧電材料4、5の変形が同一であれば、電圧の向きを逆にする必要はない。
【0027】
例えば縮み変形している他方の圧電材料5(4)の上面と下面にそれぞれ負の電荷と正の電荷が生じているとすれば、この状態にある圧電材料5(4)を伸び変形させるには、圧電材料5(4)の上面と下面に存在する負の電荷と正の電荷をそれぞれ反対側へ移動させる必要があり、それには圧電材料5(4)の上面と下面に外部からそれぞれ負の電荷と正の電荷を掛ける必要がある。同様に伸び変形している一方の圧電材料4(5)の上面と下面にはそれぞれ正の電荷と負の電荷が生じているため、この圧電材料4(5)を縮み変形させるには、圧電材料4(5)の上面と下面に外部からそれぞれ正の電荷と負の電荷を掛ける必要がある。
【0028】
ここで、前記のように伸び変形している一方の圧電材料4(5)の上面と下面にはそれぞれ正の電荷と負の電荷が生じているため、この圧電材料4(5)から取り出した電圧を縮み変形している他方の圧電材料5(4)の上面と下面間に印加するときに、正負を入れ替えることが必要になる。同様に縮み変形している他方の圧電材料5(4)の上面と下面にはそれぞれ負の電荷と正の電荷が生じているため、この圧電材料5(4)から取り出した電圧を伸び変形している一方の圧電材料4(5)の上面と下面間に印加するときに、正負を入れ替えることが必要になる。
【0029】
従って一方の圧電材料4(5)の変形と他方の圧電材料5(4)の変形が逆である場合、縮み変形している他方の圧電材料5(4)を伸び変形させるには、伸び変形している一方の圧電材料4(5)が発生した電圧を、正負を入れ替えて印加しなければならず、伸び変形している一方の圧電材料4(5)を縮み変形させるには、縮み変形している他方の圧電材料5(4)が発生した電圧を、正負を入れ替えて印加しなければならない。一方の圧電材料4(5)の変形と他方の圧電材料5(4)の変形が同一である場合、すなわち一方の圧電材料4(5)が縮み変形し、他方の圧電材料5(4)も縮み変形している場合、または一方の圧電材料4(5)が伸び変形し、他方の圧電材料5(4)も伸び変形している場合には、電圧の正負を入れ替える必要はないため、電圧を発生した一方の圧電材料4(5)から取り出した電圧をそのまま他方の圧電材料5(4)に印加すればよい。
【0030】
電圧の正負を入れ替える場合、伸び変形している一方の圧電材料4(5)が発生した電圧を、正負を入れ替えて他方の圧電材料5(4)に印加するための、電圧の正負を入れ替える手段として、一方の圧電材料4(5)と他方の圧電材料5(4)との間に反転増幅器(反転増幅回路)等、負の電圧を正の電圧に変換するための反転回路10が接続される。縮み変形している他方の圧電材料5(4)が発生した電圧を、正負を入れ替えて一方の圧電材料4(5)に印加する場合(請求項2)は、
図2−(b)に示すように他方の圧電材料5(4)と一方の圧電材料4(5)との間に反転回路11が接続される。
【0031】
反転増幅器を使用する場合、一方の荷重受け部2(3)の、伸び変形、または縮み変形した圧電材料4(5)が発生した電圧が反転増幅器の負の入力端子に接続されることで、出力端子から正負が入れ替わった電圧が出力されるため、他方の荷重受け部3(2)の、縮み変形、または伸び変形している圧電材料5(4)の両面に、伸び変形、または縮み変形を生じさせる向きの電圧を印加することが可能になる。
【0032】
電圧の正負を入れ替える場合と入れ替えない場合のいずれも、一方の圧電材料4(5)が発生した電圧が他方の圧電材料5(4)に印加されることで、他方の圧電材料5(4)は印加された電圧に応じた伸び変形、または縮み変形を圧縮力、または引張力の作用方向に生じ、この伸び変形量、または縮み変形量に応じた反力(押し返す力、または引き寄せる力)を他方の荷重受け部3(2)に作用させることになる。他方の圧電材料5(4)が発生した電圧が一方の圧電材料4(5)に印加されるときにも、一方の圧電材料4(5)は印加された電圧に応じた縮み変形、または伸び変形を引張力、または圧縮力の作用方向に生じ、この縮み変形量、または伸び変形量に応じた反力(引き寄せる力、または押し返す力)を一方の荷重受け部2(3)に作用させる(請求項2)。
【0033】
他方の圧電材料5(4)が圧縮力、または引張力を受けて縮み変形、または伸び変形しているときに、その圧電材料5(4)が現在、生じている変形と逆向きの伸び変形、または縮み変形を生ずることで、圧電材料5(4)は他方の荷重受け部3(2)において圧縮力、または引張力に対する抵抗力としての押し返す力、または引き寄せる力を発生する。他方の圧電材料5(4)の伸び変形量、または縮み変形量は一方の圧電材料4(5)が発生した電圧に応じた大きさであり、外力に対する抵抗力は伸び変形量、または縮み変形量に応じた大きさになる。
【0034】
縮み変形している他方の圧電材料5(4)が伸び変形しようとするときに発生する抵抗力は外力の圧縮力に抵抗する反力(押し返す力)として作用するため、外力としての圧縮力は抵抗力分、相殺され、外力の圧縮力が軽減される。外力として作用する圧縮力が軽減されることで、実質的に外力として荷重受け部3(2)に作用する圧縮力が小さくなるため、荷重受け部3(2)に生ずる変形量も小さくなり、結果的に外力による構造物20の揺れが低減される。
【0035】
同様に一方の圧電材料4(5)が引張力、または圧縮力を受けて伸び変形、または縮み変形しているときに、その圧電材料4(5)が現在、生じている変形と逆向きの縮み変形、または伸び変形を生ずることで、圧電材料4(5)は一方の荷重受け部2(3)において引張力、または圧縮力に対する抵抗力としての引き寄せる力、または押し返す力を発生する。一方の圧電材料4(5)の縮み変形量、または伸び変形量は他方の圧電材料5(4)が発生した電圧に応じた大きさであり、外力に対する抵抗力は縮み変形量、または伸び変形量に応じた大きさになる。
【0036】
伸び変形している一方の圧電材料4(5)が縮み変形しようとするときに発生する抵抗力は外力の引張力に抵抗する反力(引き寄せる力)として作用するため、外力としての引張力は抵抗力分、相殺され、外力の引張力が軽減される。外力として作用する引張力が軽減されることで、実質的に外力として荷重受け部3(2)に作用する引張力が小さくなるため、荷重受け部3(2)に生ずる変形量も小さくなり、結果的に外力による構造物20の揺れが低減される。
【0037】
図1は引張力を受けた圧電材料4が発生した電圧を反転回路10に出力し、反転回路10から出力された電圧を、圧縮力を受けた圧電材料5に印加することで圧縮力を受けた圧電材料5に圧縮力に対する反力を発生させる様子を概念的に示している。この場合、圧縮力を受けた圧電材料5が発生した電圧を反転回路10(11)に出力し、反転回路10(11)から出力された電圧を、引張力を受けた圧電材料4に印加することで、引張力を受けた圧電材料4に引張力に対する反力を発生させることも可能である(請求項2)。
【0038】
以上のように対になる荷重受け部2、3の各圧電材料4、5の内、少なくとも一方の荷重受け部2(3)の圧電材料4(5)が構造物20の振動に伴って伸び変形、または縮み変形したときに発生する電圧が他方の荷重受け部3(2)の、縮み変形、または伸び変形している圧電材料5(4)の伸び変形、または縮み変形に直接、反映されるため、圧電材料自体が外力を受けて変形したことに起因して電圧を発生することの圧電効果が有効に利用される。また電圧の授受が行われる圧電材料4、5は特許文献1のように構造物20の振動に伴って正負の向きに交互に変形する方向に対になる状態で配置されているため、与えられる電圧に応じて圧電材料4、5に生じる伸長が直接、構造物20の振動を抑制するために有効に利用される。
【0039】
構造物20に入力する外力としての水平力は正負の向きに交互に作用することから、例えば前記のように一方の荷重受け部2(3)が引張力を受け、圧電材料4(5)が伸び変形したときには、同時に他方の荷重受け部3(2)が圧縮力を受け、圧電材料5(4)が縮み変形しており、それぞれの圧電材料4、5が発生する電圧は互いに対になる側の圧電材料5、4に生じている変形と逆向きの変形を生じさせるために利用可能である。
【0040】
そこで、一方の荷重受け部2、3に引張力、または圧縮力が作用したときに、他方の荷重受け部3、2において厚さ方向の圧力を負担して縮み変形、または伸び変形している圧電材料5、4が発生する、縮み変形量、または伸び変形量に応じた電圧を一方の、引張力、または圧縮力を負担している荷重受け部2、3の、伸び変形、または縮み変形している圧電材料4、5に印加することで(請求項2)、対になる荷重受け部2、3の圧電材料4、5が同時に発生する電圧を互いに他方側の荷重受け部3、2に、外力と逆向きの反力を発生させるために利用することが可能になる。この場合も、一方の圧電材料4(5)の変形と他方の圧電材料5(4)の変形が逆である場合には、電圧の授受の際に電圧の正負を入れ替えることが必要になる。
【0041】
請求項2では前記のように一方の荷重受け部2、3の圧電材料4、5は、他方の荷重受け部3、2の圧電材料5、4が発生し、印加された電圧に応じた縮み変形、または伸び変形を引張力、または圧縮力の作用方向(圧電材料4、5の厚さ方向)に生ずるため、縮み変形量、または伸び変形量に応じた反力(引き寄せる力、または押し返す力)を一方の荷重受け部2、3に作用させることになる。
【0042】
請求項2では対になる荷重受け部2、3の圧電材料4、5が外力の作用時に同時に発生する電圧を互いに他方側の荷重受け部3、2に、外力と逆向きの反力を発生させるために利用できる関係が成立することで、正負の向きに交互に繰り返される外力(水平力)の向きに関係なく、常に一方の荷重受け部2(3)の圧電材料4(5)が発生した電圧を他方の荷重受け部3(2)の圧電材料5(4)に印加すると同時に、他方の荷重受け部3(2)の圧電材料5(4)が発生した電圧を一方の荷重受け部2(3)の圧電材料4(5)に印加する状態が得られる。
【0043】
従って外力(水平力)が作用し続ける限り、対になる荷重受け部2、3の内、いずれか一方の荷重受け部2(3)の、伸び変形、または縮み変形した圧電材料4(5)が発生する電圧を他方の荷重受け部3(2)の、縮み変形、または伸び変形した圧電材料5(4)に加えると同時に、他方の荷重受け部3(2)の、伸び変形、または縮み変形した圧電材料5(4)が発生する電圧を一方の荷重受け部2(3)の、縮み変形、または伸び変形した圧電材料4(5)に加える状況が連続して繰り返される。
【0044】
この結果、一方の荷重受け部2(3)と他方の荷重受け部3(2)は互いに、いずれか一方が負担する外力を他方が負担する外力に起因する反力が打ち消す関係になり、外力のいずれの向きの作用時にも外力を軽減する効果が生ずるため、構造物20の振動を低減し、減衰させる効果が向上する。
【0045】
各荷重受け部2、3の圧電材料4、5には圧縮力と引張力の作用方向に予め圧縮力が与えられていることもある(請求項3)。
【0046】
圧電材料4、5に予め圧縮力が与えられることは、例えば後述のように荷重受け部2、3を構成する一方の構造部材と他方の構造部材との間に圧電材料4、5が介在した状態で、一方の構造部材と他方の構造部材が圧電材料4、5の外力を受ける方向の正負の向きに相対変位自在な状態に接合されることで可能になる(請求項4)。その上で、
図3に示すように圧電材料4、5が厚さ方向、もしくは軸方向に縮み変形可能な範囲で、一方の構造部材と他方の構造部材が互いに接近する向きに圧力を及ぼし合った状態で接合されることで、圧電材料4、5に予め圧縮力が与えられる状態になる。
【0047】
各荷重受け部2、3は前記のように主に構造部材同士の接合部(継手部を含む)であり、圧電材料4、5は接合部において異なる構造部材間に挟まれた状態で介在するが、外力の作用していない状態から、外力の作用の向きに応じて伸び変形、または縮み変形を生じ、その変形の直後に縮み変形、または伸び変形を生ずることから、外力の作用していない平常時には伸び変形と縮み変形のいずれの変形も生じ得る状態にある必要がある。
【0048】
そこで、接合部等の荷重受け部2、3を構成する一方の構造部材と他方の構造部材との間に圧電材料4、5が介在した状態で、一方の構造部材と他方の構造部材が圧電材料4、5の、外力を受ける方向である厚さ方向、もしくは軸方向の正負の向きに相対変位自在な状態に接合されていることが適切である(請求項4)。一方と他方の構造部材は前記した柱、梁、ブレース、免震装置等である。
【0049】
圧電材料4、5は両構造部材間に直接、もしくは間接的に挟み込まれる。「間接的に」とは、圧電材料4、5が直接的には構造部材に突設(接合)されるプレート等の部材に挟み込まれるようなことを言う。また請求項4における「一方の構造部材と他方の構造部材が相対変位自在な状態」とは、一方の構造部材と他方の構造部材が圧電材料4、5を挟んだ状態で、両構造部材が圧電材料4、5の厚さ方向(対向する方向)に互いに相対移動できる状態に連結されていることを言う。このことは例えば圧電材料4、5が
図2−(b)に示すように一方の構造部材(鉄骨梁71)に接合されたプレート(フランジプレート8a)と他方の構造部材(鉄骨柱61)のプレート(フランジ61a)との間に挟み込まれ、両プレートが対向する方向を向くボルト9により連結される場合に、
図3−(a)、(b)に示すように両プレートがボルト9の軸方向に互いに接近する向きにも、遠ざかる向きにも相対移動可能な状態にあることを言う。
【0050】
圧電材料4、5を挟み込む構造部材同士が圧電材料4、5を挟み込んだ状態で、外力の作用に応じて圧電材料4、5の厚さ方向等のいずれの向きにも相対変位可能であることで、圧電材料4、5は平常時の状態から外力の作用の向きに応じて伸び変形することも縮み変形することもできる状態にあり、伸び変形と縮み変形を交互に繰り返すことができるため、いずれの変形を生じたときにも変形量に応じた電圧を発生することが可能になる。
【0051】
圧電材料4、5が圧縮力と引張力の作用方向、すなわち圧電材料4、5の厚さ方向(軸方向)に予め圧縮力(初期圧縮力)が与えられている場合(請求項3)、外力として作用する引張力の大きさが初期圧縮力の大きさ以下であれば、例えば
図2−(b)に示す対になる荷重受け部2、3の各圧電材料4、5に外力としての圧縮力が作用したときと引張力が作用したときのいずれのときにも、
図6−(a)に示すように圧電材料4、5を、時刻毎に荷重の大きさが変動する圧縮力を負担した状態に置くことができる。
【0052】
厚さ方向に初期圧縮力が与えられた圧電材料4、5は想定される外力としての引張力の大きさ以上の大きさの初期圧縮力が与えられていれば、荷重受け部2、3に外力として引張力が作用し、圧電材料4、5が引張力を負担していないときにも圧縮力を負担し続ける状態になるため、
図6−(b)に示すように外力として引張力が作用している間にも圧電材料4、5は電圧を発生し続けることができる。
【0053】
荷重受け部2、3に引張力が作用したときにも圧電材料4、5が圧縮力を負担し続ける状態になることで、実際に圧電材料4、5が引張力や圧縮力を負担していなくても、圧縮力を負担している場合と同じように圧縮力を負担し、電圧を発生し続けることができるため、外力として引張力が作用している間も対になる他方の圧電材料5、4に、圧縮力の負担による縮み変形分の電圧を供給することが可能になる。このことは圧電材料4、5に初期圧縮力を与えておけば、荷重受け部2、3に引張力が作用するときに、必ずしも圧電材料4、5に引張力を負担させる状態に、圧電材料4、5を荷重受け部2、3に組み込んでおく必要がないことを意味する。
【0054】
予め初期圧縮力が与えられた一方の圧電材料4(5)はその側の荷重受け部2(3)に外力としての引張力が作用しているときに、引張力を負担せずに縮み変形分の電圧を発生し続ける。その荷重受け部2(3)と対になる他方の荷重受け部3(2)における、電圧を供給される他方の圧電材料5、4は外力としての圧縮力を負担し、縮み変形しているため、予め初期圧縮力が与えられた一方の圧電材料4(5)が発生した電圧を伸び変形のために利用することができる。逆に一方の圧電材料4(5)が外力としての圧縮力を負担し、縮み変形するときに、引張力が作用する他方の荷重受け部3(2)の圧電材料5(4)に予め初期圧縮力を与えておくことで、圧縮力を負担して縮み変形している一方の圧電材料4(5)を伸び変形させるために、縮み変形し続けている他方の圧電材料5(4)が発生する電圧を利用することができる。これらの場合、荷重受け部2、3に外力が作用しているときは対になる圧電材料4、5は共に縮み変形しているため、電圧の正負を入れ替える必要はない。
【0055】
図2−(b)の例においても、上部のフランジ71aに配置された圧電材料4と下部のフランジ71aに配置された圧電材料5の双方に初期圧縮力を与えておく場合には、圧電材料4と圧電材料5が常に縮み変形して電圧を発生する状況になるため、圧電材料4、5のそれぞれが発生した電圧を、正負を入れ替えることなく互いに授受すればよいことになる。
【0056】
ある荷重受け部2、3に外力としての圧縮力と引張力が交互に作用するときの時刻毎の荷重は
図4に示すように変動する。外力としての引張力が作用したときに引張力を負担できる状態にない圧電材料4、5に初期圧縮力が与えられていない場合には、圧電材料4、5は
図5−(a)に示すように外力としての圧縮力が作用したときにのみ圧縮力を負担し、
図5−(b)に示すように圧縮力を負担したときにのみ電圧を発生する。外力として引張力が作用したときには圧縮力を負担することはなく、引張力も負担しないため、電圧を発生することはない。
【0057】
これに対し、
図2−(b)における圧電材料4、5に初期圧縮力が与えられている場合(請求項3)には、圧電材料4、5は前記のように荷重受け部2、3に外力としての圧縮力が作用しているときと引張力が作用しているときのいずれのときにも、
図6−(a)に示すように大きさが時刻毎に変動する圧縮力を負担し続ける状態になる。この結果、初期圧縮力が与えられたる圧電材料4、5は
図6−(b)に示すように電圧を発生し続けることができるため、電圧の発生効率が向上する。圧電材料4、5は静的荷重には応答しにくい性質があるが、荷重受け部2、3に外力としての圧縮力と引張力のいずれが作用しているときにも、圧電材料4、5が圧縮力を変動荷重として負担し続ける状態になることで、圧電材料4、5の応答性が向上するため、圧電材料4、5が発生する電圧を有効に利用することが可能である。
【0058】
このことから、
図3−(a)、(b)に示すように各荷重受け部2(3)において、圧電材料4(5)を荷重受け部2(3)に黒塗りの矢印で示す圧縮力が作用したときに圧縮力を負担する圧縮抵抗部41(51)と、荷重受け部2(3)に白抜きの矢印で示す引張力が作用したときに圧縮力を負担する引張抵抗部42(52)とに分割し、圧縮抵抗部41(51)と引張抵抗部42(52)の少なくともいずれか一方に、厚さ方向に予め圧縮力(初期圧縮力)を与えておくことで(請求項7、8)、後述のように一方の荷重受け部2(3)と他方の荷重受け部3(2)の圧縮抵抗部41、51間、または引張抵抗部42、52間で互いに電圧を授受させる関係を成立させることが可能になる。
【0059】
初期圧縮力が与えられている場合の圧縮抵抗部41(51)と引張抵抗部42(52)のいずれかは外力として圧縮力が作用しているときと引張力が作用しているときのいずれのときにも、
図6−(a)に示すように圧縮力を負担した状態になる。
【0060】
但し、
図3−(a)〜(c)に示す例のように圧電材料4と圧電材料5をそれぞれ圧縮抵抗部41、51と引張抵抗部42、52とに分割する場合に、一方の荷重受け部2(3)の圧縮抵抗部41(51)と、他方の荷重受け部3(2)の引張抵抗部42(52)との間で互いに電圧を授受させる場合(請求項5、6)には、圧縮抵抗部41(51)と引張抵抗部42(52)に厚さ方向の初期圧縮力を与えておくことは必要ではない。
【0061】
図3−(a)〜(c)に示すように各荷重受け部2(3)において、圧電材料4(5)を荷重受け部2(3)に黒塗りの矢印で示す圧縮力が作用したときに圧縮力を負担する圧縮抵抗部41(51)と、荷重受け部2(3)に白抜きの矢印で示す引張力が作用したときに圧縮力を負担する引張抵抗部42(52)とに分割した場合(請求項5〜8)を考える。この場合に、圧縮抵抗部41(51)と引張抵抗部42(52)に初期圧縮力が与えられていない場合(請求項5、6)、各荷重受け部2(3)に圧縮力が作用するときと引張力が作用するときのいずれのときにも、圧縮抵抗部41(51)と引張抵抗部42(52)のいずれかが圧縮力を負担し、負担した圧縮力に応じた電圧を発生させることが可能になる。この場合、荷重受け部2(3)に圧縮力が作用したとき、圧縮抵抗部41(51)が圧縮力を負担しながら圧縮力に応じた電圧を発生し、荷重受け部2(3)に引張力が作用したときに引張抵抗部42(52)が圧縮力を負担しながら圧縮力に応じた電圧を発生する。
【0062】
図3−(a)は荷重受け部2、3を構成する一方の構造部材である鉄骨梁71に接合されたスプリットティー金物8のフランジ8aと、他方の構造部材である鉄骨柱61のフランジ61aとの間に圧縮抵抗部41(51)を介在させ、引張抵抗部42(52)をフランジ61aとナット91との間に介在させた場合の例を示している。スプリットティー金物8のフランジ8aと鉄骨柱61のフランジ61aとは両者を貫通するボルト9により接合されている。この例では荷重受け部2(3)に圧縮力が作用し、圧縮抵抗部41(51)がフランジ8aとフランジ61aから圧縮力を受けたときに、圧縮抵抗部41(51)が縮み変形して電圧を発生し、荷重受け部2(3)に引張力が作用し、引張抵抗部42(52)がフランジ61aとナット91から圧縮力を受けたときに、引張抵抗部42(52)が縮み変形して電圧を発生する。
【0063】
図3−(b)は引張抵抗部42(52)をスプリットティー金物8のフランジ8aと、その側に位置するボルト9の頭部との間に介在させた場合であり、(c)は(a)における1枚板の圧縮抵抗部41(51)を各ボルト9単位で分割した場合である。
図3−(b)に示す例では荷重受け部2(3)に圧縮力が作用したときに、圧縮抵抗部41(51)がフランジ8aとフランジ61aから圧縮力を受けて縮み変形し、荷重受け部2(3)に引張力が作用したときには、引張抵抗部42(52)がボルト9の頭部とフランジ8aから圧縮力を受けて縮み変形する。
【0064】
一方の荷重受け部2(3)の引張抵抗部42(52)が圧縮力を負担したときに発生する電圧を、対になる他方の荷重受け部3(2)の圧縮抵抗部51(41)に印加する場合(請求項5)、
図7−(a)に示すように一方の荷重受け部2(3)に引張力が作用し、その一方の荷重受け部2(3)の引張抵抗部42(52)が圧縮力を負担したときに発生する縮み変形量に応じた電圧が、圧縮力が作用している他方の荷重受け部3(2)において圧縮力を負担し、縮み変形している圧縮抵抗部51(41)に印加される。この他方の荷重受け部3(2)の圧縮抵抗部51(41)は一方の荷重受け部2(3)の引張抵抗部42(52)が発生し、印加された電圧に応じた伸び変形を圧縮力の作用方向に生じ、この伸び変形量に応じた反力を他方の荷重受け部3(2)に作用させる(請求項5)。
【0065】
同様に一方の荷重受け部2(3)の圧縮抵抗部41(51)が圧縮力を負担したときに発生する電圧を他方の荷重受け部3(2)の引張抵抗部52(42)に印加する場合(請求項6)も
図7−(a)に示すように一方の荷重受け部2(3)に圧縮力が作用し、その一方の荷重受け部2(3)の圧縮抵抗部41(51)が圧縮力を負担したときに発生する縮み変形量に応じた電圧が、引張力が作用している他方の荷重受け部3(2)において圧縮力を負担し、縮み変形している引張抵抗部52(42)に印加される。この他方の荷重受け部3(2)の引張抵抗部52(42)は一方の荷重受け部2(3)の圧縮抵抗部41(51)が発生し、印加された電圧に応じた伸び変形を引張力の作用方向に生じ、この伸び変形量に応じた反力を他方の荷重受け部3(2)に作用させる(請求項6)。
【0066】
図7−(a)に示す電圧の授受の場合(請求項5、6)も、共に圧縮力を負担して縮み変形している圧縮抵抗部41(51)と引張抵抗部52(42)間で電圧を授受するため、電圧の正負を入れ替える必要はない。
【0067】
圧電材料4、5が圧縮抵抗部41、51と引張抵抗部42、52とに分割され、圧縮抵抗部41、51と引張抵抗部42、52の少なくともいずれか一方に、厚さ方向に予め圧縮力(初期圧縮力)を与えておく場合(請求項7、8)においては、圧縮抵抗部41(51)が圧縮力を負担していないときは荷重受け部2(3)に引張力が作用しているときであり、引張抵抗部42(52)が圧縮力を負担しているときである。この関係から、初期圧縮力は
図7−(b)に示すように圧縮抵抗部41(51)に与えられ、この圧縮抵抗部41(51)が圧縮力を負担せずに縮み変形し続けるときの電圧は他方の荷重受け部3(2)において圧縮力を負担し、縮み変形している圧縮抵抗部41(51)に印加される(請求項7)。
【0068】
同様に引張抵抗部42(52)が圧縮力を負担していないときは荷重受け部2(3)に圧縮力が作用しているときであり、圧縮抵抗部41(51)が圧縮力を負担しているときであるから、初期圧縮力は
図7−(c)に示すように引張抵抗部42(52)に与えられ、引張抵抗部42(52)が圧縮力を負担せずに縮み変形し続けるときの電圧は他方の荷重受け部3(2)において圧縮力を負担し、縮み変形している引張抵抗部45(42)に印加される(請求項8)。
【0069】
請求項7では
図7−(b)に示すように一方の荷重受け部2(3)に引張力が作用し、圧縮力を負担せずに縮み変形し続ける圧縮抵抗部41(51)が発生する縮み変形量に応じた電圧が他方の荷重受け部3(2)の圧縮抵抗部51(41)に印加される。他方の荷重受け部3(2)の圧縮抵抗部51(41)は一方の荷重受け部2(3)の圧縮抵抗部41(51)が発生し、印加された電圧に応じた伸び変形を他方の荷重受け部3(2)に作用している外力としての圧縮力の作用方向に生じ、伸び変形量に応じた反力を他方の荷重受け部3(2)に作用させる。
【0070】
図7−(b)に示すように一方の荷重受け部2(3)に引張力が作用し、引張抵抗部42(52)が外力としての引張力により圧縮力を負担し、縮み変形しているとき、一方の圧縮抵抗部41(51)は
図6−(a)に示すように初期圧縮力により圧縮された状態にあり、縮み変形中であるから、(b)に示すように電圧を発生し続けている。他方の荷重受け部3(2)の圧縮抵抗部51(41)は一方の荷重受け部2(3)の圧縮抵抗部41(51)が発生した電圧が印加されることで、伸び変形を生じ、伸び変形量に応じた反力を他方の荷重受け部3(2)に生じさせる(請求項7)。
図3−(a)〜(c)の例では圧縮抵抗部51(41)の伸び変形は収縮しているスプリットティー金物8のフランジ8aと鉄骨柱61のフランジ61aとの間の距離を拡大しようとする。
【0071】
請求項8では
図7−(c)に示すように一方の荷重受け部2(3)に圧縮力が作用し、圧縮力を負担せずに縮み変形し続ける引張抵抗部42(52)が発生する縮み変形量に応じた電圧が他方の荷重受け部3(2)の引張抵抗部52(42)に印加される。他方の荷重受け部3(2)の引張抵抗部52(42)は一方の荷重受け部2(3)の引張抵抗部42(52)が発生し、印加された電圧に応じた伸び変形を他方の荷重受け部3(2)に作用している外力としての引張力の作用方向に生じ、伸び変形量に応じた反力を他方の荷重受け部3(2)に作用させる。
【0072】
図7−(c)に示すように一方の荷重受け部2(3)に圧縮力が作用し、圧縮抵抗部41(51)が外力としての圧縮力をそのまま負担し、縮み変形しているとき、一方の引張抵抗部42(52)は初期圧縮力により圧縮された状態にあり、縮み変形中であるから、電圧を発生し続けている。他方の荷重受け部3(2)の引張抵抗部52(42)は一方の荷重受け部2(3)の引張抵抗部42(52)が発生した電圧が印加されることで、伸び変形を生じ、伸び変形量に応じた反力を他方の荷重受け部3(2)に生じさせる(請求項8)。
図3−(a)、(c)の例では引張抵抗部52(42)の伸び変形は収縮しているフランジ61aとナット91との間の距離を拡大しようとする。
図3−(b)の例では引張抵抗部52(42)の伸び変形は収縮しているボルト9頭部とフランジ8aとの間の距離を拡大しようとする。