(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190222
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】横断溝
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
E03F5/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-190921(P2013-190921)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-55142(P2015-55142A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】594156880
【氏名又は名称】三重県
(73)【特許権者】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100079636
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】森 眞高
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 利将
(72)【発明者】
【氏名】東浦 巧
(72)【発明者】
【氏名】井戸浦 隆司
(72)【発明者】
【氏名】網野 満
(72)【発明者】
【氏名】岸田 裕
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−063770(JP,A)
【文献】
実公平04−052302(JP,Y2)
【文献】
特開2008−075331(JP,A)
【文献】
実開昭51−149968(JP,U)
【文献】
実開昭61−141385(JP,U)
【文献】
特開2010−222895(JP,A)
【文献】
実開昭55−159280(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00〜 11/00
E01C 1/00〜 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する側壁と、両側壁を連結する底壁よりなり、上り勾配又は下り勾配の道路を横断し、水平ないし略水平な下地の基礎上に設置されるコンクリート製の横断溝であって、前記側壁の天端に道路勾配に相当する勾配の天端を備えた鋼製の受枠を取付けてなる横断溝において、前記受枠は、前記勾配の天端のほか、内側に道路勾配に対応して傾斜する段と、該段を介し、前記天端と向き合う底部とを備え、該底部にはナットが固着され、該ナットに捩じ込んだボルトを前記側壁の天端に当てることにより側壁天端上に前記受枠を支持し、前記側壁天端と前記受枠底部との間にはモルタルが充填された構造をなす横断溝。
【請求項2】
受枠は内部が空洞であり、かつ内部に自動車荷重に耐えられる補強手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の横断溝。
【請求項3】
対向する両側壁の天端は、道路の上り側の天端が下り側の天端より高くなる高低差を有している請求項1又は2記載の横断溝。
【請求項4】
側壁天端は水平面である請求項1ないし3のいずれかの請求項に記載の横断溝。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坂道のような勾配を備えた道路に横断して設置されるコンクリート製の横断溝に関する。
【背景技術】
【0002】
勾配を備えた道路にコンクリート製の横断溝を設置する場合、従来はプレキャストコンクリート製の横断溝を
図1に示すように設置していたが、横断溝1で段を生ずるため、車両の走行時の衝撃により横断溝1の側壁天端にひびや割れを生ずることがあった。横断溝1で段を生じないようにするために、
図2に示すように道路勾配に相当する勾配を備えた下地の基礎2を施工したのち、横断溝1を基礎上に設置することも行われているが、道路勾配に相当する勾配を備えた下地の基礎2を施工するのに手間と時間がかかっていた。
【0003】
図3に示すように、側壁天端に勾配を設けたプレキャストコンクリート製の横断溝7も提案されているが(特許文献1)、勾配の異なる道路に適用できるようにするには、天端の勾配が異なる多くの横断溝を製作し、保管しておかねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】意匠登録第1355152号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、設置の手間と時間を軽減させることができるコンクリート製の横断溝を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、対向する側壁と、両側壁を連結する底壁よりなり、上り勾配又は下り勾配の道路を横断し、水平ないし略水平な下地の基礎上に設置されるコンクリート製の横断溝であって、
前記側壁
の天端に道路勾配に相当する勾配の天端を備えた
鋼製の受枠を取付けてなる横断溝
において、前記受枠は、前記勾配の天端のほか、内側に道路勾配に対応して傾斜する段と、該段を介し、前記天端と向き合う底部とを備え、該底部にはナットが固着され、該ナットに捩じ込んだボルトを前記側壁の天端に当てることにより側壁天端上に前記受枠を支持し、前記側壁天端と前記受枠底部との間にはモルタルが充填された構造をなすものであり、
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、受枠は内部が空洞であり、かつ内部に自動車荷重に耐えられる補強手段を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、対向する両側壁の天端は、道路の上り側の天端が下り側の天端より高くなる高低差を有していることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3に係る発明において、側壁天端は水平面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、横断溝に共通のプレキャストコンクリート製横断溝を用い、側壁天端に受枠を取付けることで種々の道路勾配を有する道路に適用可能であり、横断溝が設置される下地の基礎に勾配を付ける必要がないため、下地の施工が従前と同様、短時間で容易に行え、横断溝を応急的に或いは簡易に設置するのに好適である。
【0010】
前記受枠はコンクリート製であってもよいが、請求項2に係る発明のように鋼製にして内部を空洞にし、自動車荷重に耐えられるような補強手段を設ければ、受枠の軽量化が可能となり、使用上の問題もない。
【0011】
請求項3に係る発明によると、道路の上り側での受枠の高さを抑えて低くすることができるため、必要な強度が容易に得られ、受枠を低コストで製作することができる。
【0012】
横断溝の側壁天端は傾斜していてもよいが、請求項4に係る発明のように水平にする方が製作及び受枠の取付けが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の横断溝について図面により説明する。
図4は、勾配を備えた道路に施工され、受枠11a、11bを左右に備えた横断溝12の断面を示すものであり、
図5は受枠部分の側面を示すもので、横断溝12はプレキャストコンクリート製で、側壁12a、12bを連結する底壁12cよりなり、両側壁12a、12bはそれぞれ天端が水平面をなし
ている。この側壁天端は、道路の上り方向側の天端が下り方向側の天端より高く、高低差を有している。図示する横断溝12は、底壁12cが側壁12a、12bの全長にわたって形成されているが、底壁12cは横断溝12の長手方向に部分的に形成されていてもよい。また横断溝12は底壁12cを設けないで、両側壁12a、12bを上下方向の中間部又は上端において連結部で連結した形態をなしていてもよい。
【0015】
受枠11a、11bはいずれも鋼製で、それぞれ天端が道路勾配に相当する勾配となっており、輪郭が凸形を半割にして対向する内側にそれぞれ道路勾配に対応して傾斜する段11d、11eを備え、内部が空洞である形態をなしており、路面に続く天端の端部には、受枠天端の強度を増すため、下向きの屈折部11fが形成され、受枠内部には、
図5に示すように道路の横断方向に沿って適当間隔で補強手段を構成するリブ15を備えている。前記受枠11a、11bは、
図4に示すように底部下面にナット14を固着し、該ナット14に捩じ込んだボルト13を側壁天端に当てることにより受枠11a、11bを支持し、ボルト13の捩じ込み量、すなわちナット14からの突出量を変えることにより受枠11a、11bの高さ調整
できるようにされ、高さ調整後、受枠11a、11bの底部11cと側壁天端との間にモルタル19を充填する。これにより受枠11a、11bが固定される。図中、16は溝蓋として受枠11a、11b間に設置されるグレーチングを示す。
【0016】
勾配を備えた道路に横断溝12を設置する際には、先ず道路を横断する溝を掘削する。そして下地の基礎17を常法のように水平ないしほぼ水平に施工したのち(
図4)、横断溝12を設置し、ついて各側壁12a、12bの上端面に受枠11a、11bをそれぞれ取付ける。この受枠11a、11bは横断溝12に予め取付けておいてもよい。
【0017】
受枠取付後、或いは受枠11a、11bを備えた横断溝12を設置後、横断溝外側の溝に土砂を埋め戻す。土砂18は受枠内まで充填されるように施工するのが望ましく、受枠内に充填された土砂18は前記リブ15と共に、受枠11a、11bを補強する機能を果す。土砂に代えて受枠内にコンクリートを充填してもよい。したがってこの場合、土砂或いはコンクリートはリブ15と共に補強手段を構成する。補強手段はリブのみ、或いは受枠内に充填される土砂或いはコンクリートのみで構成することもできる。
【0018】
次に受枠11a、11bの段11d、11e間にグレーチング16を取付ける。このグレーチング16はコンクリート製或いはその他の溝蓋に変えてもよく、取付けは受枠の段11d、11eに単に載置するだけでもよいし、図示するようにボルトやナットよりなる止着具
21により取付けてもよい。グレーチング16はまた、前述の土砂を埋め戻したり、或いはコンクリートを充填するのに先立って横断溝に取付けておいてもよい。
【0019】
本実施形態の横断溝によると、横断溝12はどのような道路勾配の道路に対しても受枠11a、11bを変えるだけで共通使用でき、下地の基礎17を常法のように水平ないしほぼ水平に施工して道路勾配に対応した勾配を設ける必要がないため、下地の基礎の施工が容易であり、横断溝にプレキャスト製の横断溝12を用いること
と相俟って横断溝の施工が容易となって短時間で行え、林道その他横断溝を応急的に或いは簡易に設置するのに好適であること、受枠11a、11bは鋼製で、リブ15を有する以外、内部が空洞であるため軽量化され、リブ15と充填された土砂或いはコンクリートで自動車荷重に充分耐えられること、側壁天端は道路の上り側の天端が下り側の天端より高く形成されているため、上り側の受枠11bを小型軽量化することができ、必要な強度を容易に得ることができると共に、製作コストを低減できること、側壁天端は水平面をなすことから、従前と同様、横断
溝12の製作や受枠11a、11bの取付けが容易に行えること等の効果を有する。
【符号の説明】
【0020】
11a、11b・・受枠
12・・横断溝
12a、12b・・側壁
15・・リブ
16・・グレーチング
18・・土砂