(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光学式センサは、前記緯糸が波打つ状態で飛走する状態を検知している場合と、前記緯糸がのびきり状態で飛走する状態を検知している場合とで、異なるタイミングでパルス信号を出力する請求項1又は請求項2に記載のエアジェット織機の緯糸検知装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緯糸側長貯留装置に貯留された緯糸がメインノズル及びサブノズルからのエア噴射により筬内通路を飛走する状態で緯入れされる際、
図6(a)に示すように、緯糸Yの先端が緯入れ完了の所定位置に到達する途中の状態では、その後端寄りの部分が波打つ状態で飛走する。そして、緯入れ完了近くの時点で
図6(b)に示すように、波打つ状態がなくなってのびきり状態で緯入れされる。
【0005】
緯糸先端が緯入れ範囲の終端に到達する時期である緯糸先端到達時期TWを一定とした状態で、サブノズルの噴射圧(サブ圧)と、緯糸先端到達時期TWと、緯糸側長貯留装置における緯糸解舒終了時期TBWとの差(TW−TBW)及びのびきり時との関係を示すと、
図7のようになる。なお、
図7においてTW及びTBWの角度は織機の回転角度を意味する。
図7からのびきり時における織機回転角度は、サブ圧が高いほど小さくなることが分かる。即ち、サブ圧が高ければのびきり時も早くなる。
【0006】
緯糸の緯入れ時におけるサブノズルの最適噴射圧を決定する場合、緯糸先端が緯入れ範囲の終端に到達する時期である緯糸先端到達時期TWと、緯糸側長貯留装置における緯糸解舒終了時期TBWとの差(TW−TBW)の変化点がひとつの目安となる。しかし、その場合は、直接経糸開口内の緯糸の状態を監視したものではなく、代替的な指標であり、TW−TBWの値から、のびきり時を適切な時期とするためのサブ圧にどの程度の余裕があるかの確認はできない。そのため、機台調整時には、ストロボを使用して緯糸の状態を目視で観察して、サブ圧の設定を行っている。しかし、例えば、繻子織り等のように上経糸が連続するような織物組織によっては、経糸開口内の緯糸の状態をストロボで確認することが困難な場合がある。
【0007】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、筬内通路を飛走する緯糸の状態を監視して、緯糸が緯糸先端到達時期前にのびきるタイミングを表示することができるエアジェット織機の緯糸検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する緯糸検知装置は、緯入れ用のメインノズル及びサブノズルからのエア噴射により、筬内通路を経て緯糸が緯入れされるエアジェット織機の緯糸検知装置であって、前記筬内通路の前記メインノズル側における前記緯糸の緩みの大きさを検知する光学式センサを備え
、前記光学式センサは、スレイの揺動に伴って経糸の列の間から経糸の開口内に対して出入り可能に前記スレイに固定されている。
【0009】
この構成によれば、筬内通路を飛走する緯糸Yの後端寄りの部分が波打つ状態で飛走しているか、のびきり状態で飛走しているかが光学式センサで検知される。したがって、筬内通路を飛走する緯糸の状態を監視して、緯糸が緯糸先端到達時期前にのびきるタイミングを表示することができる。
【0010】
前記光学式センサは、前記
サブノズルのうち最も前記メインノズル側に配置されるものよりも緯入れ方向の下流側において前記緯糸の緩みの大きさを検知することが好ましい。この構成によれば、光学式センサにより検知された緯糸の状態から、緯糸がのびきり状態か否かを判断することが、メインノズルの噴射圧の影響を受ける箇所で光学式センサにより検知された緯糸の状態から判断する場合に比べて容易、かつ正確になる。
【0011】
前記光学式センサは、前記緯糸が波打つ状態で飛走する状態を検知している場合と、前記緯糸がのびきり状態で飛走する状態を検知している場合とで、異なるタイミングでパルス信号を出力する。この構成によれば、光学式センサから出力されるパルス信号から緯糸がのびきり状態か否かを判断することができるため、緯糸の飛走状態の映像から緯糸がのびきり状態か否かを判断する場合に比べて判断が容易になる。また、光学式センサから出力されるパルス信号のパルス間隔が変化する時点が緯糸ののびきりタイミングとなるため、のびきりタイミングの判断も容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、筬内通路を飛走する緯糸の状態を監視して、緯糸が緯糸先端到達時期前にのびきるタイミングを表示することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図5にしたがって説明する。
図1及び
図2に示すように、エアジェット織機は、緯入れ用のメインノズル11と、緯入れ用のサブノズル12と、筬13と、巻付方式の緯糸測長貯留装置14とを備えている。
図2に示すように、メインノズル11、サブノズル12、筬13は、スレイ15上に固定されている。筬13は、ガイド凹部16a(
図3に図示)を有する筬羽16が緯入れ方向に複数列設されて構成されている。複数の筬羽16のガイド凹部16aにより筬内通路17が形成されている。
【0015】
図1に示すように、メインノズル11は、元圧タンク18に接続されたメインノズル用タンク19に管路を介して接続されている。メインノズル11とメインノズル用タンク19との間には電磁開閉弁20が設けられ、メインノズル11における緯入れ用の圧力エア噴射は、電磁開閉弁20の開閉により制御される。元圧タンク18とメインノズル用タンク19との間には電気式の圧力制御弁21が設けられ、メインノズル用タンク19の圧力は、圧力制御弁21により調整される。
【0016】
サブノズル12は、元圧タンク18に接続されたサブノズル用タンク22に管路を介して接続されている。サブノズル12とサブノズル用タンク22との間には電磁開閉弁23,24,25,26が設けられ、サブノズル用タンク22における緯入れ用の圧力エア噴射は、電磁開閉弁23,24,25,26の開閉により制御される。各電磁開閉弁23〜26は、それぞれ複数のサブノズル12へ圧縮エアの供給を制御するとともに、順次開閉制御されることで複数のサブノズル12群により所謂リレー噴射が行われるようになっている。元圧タンク18とサブノズル用タンク22との間には電気式の圧力制御弁27が設けられ、サブノズル用タンク22の圧力は、圧力制御弁27により調整される。
【0017】
緯糸測長貯留装置14は糸巻付面14aを有し、糸巻付面14a上への緯糸Yの巻付け及び糸巻付面14aからの緯糸Yの引き出し解舒が、電磁ソレノイド28の係止ピン28aの出没動作によって制御される。電磁ソレノイド28の励消磁は、制御装置Cの指令制御によって行われ、制御装置Cは、緯糸解舒検出器29からの緯糸解舒検出情報に基づいて電磁ソレノイド28の消磁を制御する。緯糸解舒検出器29は、糸巻付面14a上の巻き糸の解舒を検出する。
【0018】
電磁開閉弁20及び電磁開閉弁23〜26の開閉制御は、制御装置Cからの指令により行われる。制御装置Cは、織機回転角度検出用のロータリーエンコーダ31から得られる織機回転角度検出信号に基づいて電磁開閉弁20,23〜26の開閉及び電磁ソレノイド28の励磁を制御する。
【0019】
メインノズル用タンク19には圧力検出器32が接続されており、サブノズル用タンク22には圧力検出器33が接続されている。圧力検出器32,33によって得られる圧力検出情報は、制御装置Cに入力される。制御装置Cは、圧力検出器32,33からの圧力情報に基づいて圧力制御弁21,27をフィードバック制御する。
【0020】
図2に示すように、サブノズル12は、支持ブロック35を介してスレイ15上に固定されている。サブノズル12は、スレイ15の揺動に伴って経糸Tの列の間から経糸Tの開口内に対して出入り可能となっている。
【0021】
スレイ15上には、緯入れされた緯糸Yの先端が緯入れ範囲の終端に到達したことを検出する緯糸検出器37が、支持ブロック38を介して位置調整可能に固定されている。
図1に示すように、緯糸検出器37は制御装置Cに電気的に接続されている。
【0022】
図2及び
図3に示すように、スレイ15上には、筬内通路17のメインノズル11側における緯糸Yの緩みの大きさを検知する光学式センサ40が、支持ブロック38を介して位置調整可能に固定されている。光学式センサ40は、メインノズル11の噴射圧の影響を受けない範囲において緯糸Yの緩みの大きさを検知可能な位置に固定されている。
【0023】
図3及び
図4に示すように、光学式センサ40は、支持体41の先端部が筬内通路17と対向し、かつ
図3に鎖線で示すように、筬打ち時には支持体41の先端部が織布W及び織前W1の下方を移動して織布Wと干渉しないようにスレイ15に固定されている。支持体41は筒状に形成され、
図4に示すように、その先端部には発光ダイオードからなる投光部42及びフォトトランジスタよりなる受光部43が設けられており、投光部42及び受光部43はリード線44を介して制御装置Cに電気的に接続されている。
【0024】
光学式センサ40は、受光部43で受光した受光信号に基づき、緯糸Yが波打つ状態で飛走する状態を検知している場合と、緯糸Yがのびきり状態で飛走する状態を検知している場合とで、異なるタイミングでパルス信号を出力する図示しない出力部を有する。具体的には、偏調光を用いて、受光部43からの緯糸Yの信号の変化状態をパルスに変換して信号を出力する。その結果、
図5に示すように、緯糸Yが波打つ状態で飛走する状態を検知している状態では、パルス信号Pの間隔が短くなり、緯糸Yがのびきり状態で飛走する状態を検知している状態では、パルス信号の間隔が長くなる。そして、
図5において、パルス信号の出力間隔が短い状態から長い状態に変化するタイミングがのびきりタイミングとなる。
【0025】
制御装置Cには図示しない表示装置が接続されている。制御装置Cは、マイクロコンピュータ及びメモリを備えており、
図5に示すパルス信号の出力状態から演算したのびきりタイミングを織機回転角度で表したデータを、例えば、過去数百回分メモリに記憶して、逐次更新するようになっている。そして、制御装置Cは、表示装置の表示画面に、過去複数回の緯入れについて、のびきりタイミングを織機回転角度で表した数値データで同時に表示したり、
図5に示すように、パルス波形を織機回転角度に対応する状態で表示したりする。制御装置Cは、光学式センサ40の出力信号に基づいて、緯糸Yが緯糸先端到達時期前にのびきるタイミングを判断する判断手段として機能する。
【0026】
次に前記のように構成されたエアジェット織機の緯糸検知装置の作用を説明する。
エアジェット織機の駆動時、緯糸検知装置は、光学式センサ40の投光部42から筬内通路17に向けて偏調光を出射し、筬羽16のガイド凹部16aで反射した光を受光部43で検知する。そして、受光部43の検出信号が信号処理によりパルス信号に変換されて出力され、筬内通路17を飛走する緯糸Yの飛走状態が検知される。投光部42及び受光部43と対向する箇所における筬内通路17内を飛走する緯糸Yの状態が、波打つ状態の場合は、出力されるパルス信号の間隔が短くなる。また、投光部42及び受光部43と対向する箇所における緯糸Yの状態がのびきり状態であると、出力されるパルス信号の間隔が長くなる。その結果、緯糸Yの飛走状態が波打ち状態からのびきり状態に変化する時点においては、
図5に示すように、パルス信号の間隔が短い状態から長い状態に変化する。
【0027】
制御装置Cは、緯入れ毎にパルス信号の間隔が短い状態から長い状態に変化した時の織機の回転角度をのびきり時のタイミングとして記憶する。こののびきり時のタイミングデータは、予め設定された緯入れ回数あるいは緯入れ時間を超えた時点から古いデータが順次削除されて新しいデータに更新される。制御装置Cは、表示装置の表示画面に、メモリに記憶されているデータから、所定回数分のデータをのびきり時のタイミングにおける織機回転角度の値として表示する。したがって、作業者はそのデータを見ることにより、緯入れが安定して行われているか及び予め設定された条件で行われているかを容易に確認することができる。
【0028】
また、緯糸Yの種類や織り幅を変更する場合には、メインノズル11及びサブノズル12から噴射される圧縮エアの圧力調整を行う必要がある。その際、サブノズル12から噴射される圧縮エアの圧力を変更しながら、制御装置Cに接続された表示装置の画面で、緯糸ののびきり状態の情報を確認しながらサブノズル12の適切なサブ圧を設定すれば、ストロボを使用してのびきり状態を確認する場合に比べて作業が容易になる。また、ストロボを使用した方法では経糸開口内の緯糸の状態を目視するのが難しい製織状態、例えば、繻子織り等のように上経糸が連続するような織物を製織する場合でも、緯糸の状態及びのびきりタイミングを容易に確認することができる。
【0029】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)緯糸検知装置は、緯入れ用のメインノズル11及びサブノズル12からのエア噴射により、筬内通路17を経て緯糸Yが緯入れされるエアジェット織機の緯糸検知装置であって、筬内通路17のメインノズル11側における緯糸Yの緩みの大きさを検知する光学式センサ40を備えている。この構成によれば、筬内通路17を飛走する緯糸Yの後端寄りの部分が波打つ状態で飛走しているか、のびきり状態で飛走しているかが光学式センサ40で検知される。したがって、筬内通路を飛走する緯糸の状態を監視して、緯糸が緯糸先端到達時期前にのびきるタイミングを表示することができる。
【0030】
(2)光学式センサ40は、メインノズル11の噴射圧の影響を受けない範囲において緯糸Yの緩みの大きさを検知する。メインノズル11の噴射圧の影響を受ける範囲では、光学式センサ40の検出信号から緯糸Yがのびきり状態か否かを判断するのが難しい。しかし、メインノズル11の噴射圧の影響を受けない範囲において、緯糸Yの緩みの大きさを検知すれば、緯糸Yがのびきり状態か否かの判断が容易になる。
【0031】
(3)光学式センサ40は、緯糸Yの緩みの大きさが許容範囲を超えている状態と超えていない状態とで異なるタイミングでパルス信号を出力する。この構成によれば、光学式センサ40からの出力パルス信号を確認することにより、緯糸Yがのびきり状態か否かを判断することができるため、緯糸Yの飛走状態の映像から緯糸Yがのびきり状態か否かを判断する場合に比べて判断が容易になる。また、光学式センサ40から出力されるパルス信号のパルス間隔が変化する時点が緯糸Yののびきりタイミングとなるため、のびきりタイミングの判断も容易になる。
【0032】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 制御装置Cは、のびきりタイミングのデータに基づいて、のびきりタイミングが予め設定された織機の運転状態における許容範囲からずれたことを確認した場合、警告行うようにしてもよい。例えば、警告の方法としては警告ランプを点灯させたり、警告音を発生させたりする。
【0033】
○ 制御装置Cは、のびきりタイミングのデータに基づいて、のびきりタイミングが予め設定された織機の運転状態における許容範囲からずれた状態が、予め設定された所定時間あるいは所定緯入れ回数継続した場合、サブノズル12の噴射圧を制御するようにしてもよい。また、サブノズル12の噴射圧を制御するとともに、警告行うようにしてもよい。
【0034】
○ 制御装置Cは、織機の運転中、常に緯糸検知装置(光学式センサ40)を駆動させて、緯糸Yののびきりタイミングに関するデータを確認して表示画面に表示する構成に限らない。例えば、作業者が緯糸検知装置を駆動状態にしたときにのみ、緯糸検知装置を駆動させて、緯糸Yののびきりタイミングに関するデータを確認して表示画面に表示する構成としてもよい。この場合、機台調整時あるいは作業者が必要としたときにのみ緯糸検知装置が駆動されるため、エネルギー消費が削減される。
【0035】
○ 光学式センサ40は、投光部42及び受光部43が独立した構成ではなく、投光部と受光部43が一体化された投受光部を備えていてもよい。
○ 緯糸検知装置は、筬内通路17の二箇所以上にセンサを配置して各センサで緯糸Yの有無を検知し、特定のセンサから緯糸有信号が安定して出力されたときをのびきりタイミングと判断するようにしてもよい。
【0036】
○ 緯糸検知装置は、緯糸Yののびきり後における緯糸安定飛走位置にセンサ検知領域を設定し、緯糸有信号が所定時間以上継続したらのびきりタイミングと判断するようにしてもよい。
【0037】
○ 光学式センサ40は、メインノズル11の噴射圧の影響を受けない範囲に限らず、メインノズル11の噴射圧の影響を受ける位置、例えば、メインノズル11の直近位置において緯糸Yの緩みの大きさを検知してもよい。
【0038】
○ 光学式センサは、一対の投光部と受光部を備え、投光部から偏調光を出射し、受光部の検出信号が信号処理によりパルス信号に変換されて出力される構成に限らない。例えば、複数の投受光部を有する光電センサを備えたものを使用し、特定の受光部から緯糸有信号が継続したらのびきりと判断するようにしてもよい。
【0039】
○ 光学式センサは、筬内通路17の近傍に配置される投光部(投光器)及び受光部(受光器)がリード線で投光用電源及び受光信号処理部と電気的に接続された構成に限らない。例えば、投光器及び受光器はスレイ15上に設けられ、基端部が投光器に接続された投光用光ファイバー及び基端部が受光器に接続された受光用光ファイバーを、先端部が筬内通路17と対向する状態となるように支持体41内に挿通された構成としてもよい。この場合、支持体41内に投光器及び受光器を設ける構成に比べて支持体41を細くすることができる。
【0040】
○ 光学式センサとして、投光用及び受光用の光ファイバーを用いた構成を採用した場合、支持体41内に複数本の光ファイバーを挿通して、複数の投光用光ファイバー及び受光用光ファイバーの先端部を、筬内通路17内の緯糸Yの振動方向に沿って配置することが容易になる。
【0041】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記光学式センサの出力信号に基づいて、緯糸が緯糸先端到達時期前にのびきるタイミングを判断する判断手段を備えている。
【0042】
(2)技術的思想(1)に記載の発明において、前記判断手段は、複数回の緯入れ時の緯糸ののびきりタイミングを織機回転角度で表示するデータを表示装置に出力する。