特許第6190259号(P6190259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190259
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】自動車用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20170821BHJP
   B60N 2/44 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B60N2/06
   B60N2/44
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-253912(P2013-253912)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112889(P2015-112889A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】598147400
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山中 五月
(72)【発明者】
【氏名】古田 隆夫
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−103530(JP,A)
【文献】 特開2013−52841(JP,A)
【文献】 特開2003−39994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の底壁部を有し且つ該底壁部の端部近傍で車両フロアに固定手段により固定可能なる固定レールと、シートに固定可能とされ且つ前記固定レールの底壁部の上側を長尺方向に移動可能に連結されてなる長尺の可動レールとより構成されてなり、前記固定手段の頭部は、前記底壁部の上側に突出してなり且つ前記固定手段の反端部側に底壁部に近接した傾斜面を有する防止手段を配設されてなる自動車用シートスライド装置であって、
前記防止手段は、前記固定手段の頭部の下側の面と前記底壁部の上側の面との間で挟持される平板状をなし且つ前記固定手段の頭部の上面と略同一位置となる移動部を有することを特徴とする自動車用シートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用シートスライド装置であって、
前記可動レールの端部には、前記防止手段の移動部の上面に近接する下端部を有する掃き出し部を支持してなることを特徴とする自動車用シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用シートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用シートスライド装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この装置は、固定レールに対して可動レールが移動可能に連結されてなるもので、両レールの間に入ったコインなどの硬質の小物が可動レールの移動を阻害して挟み込むのを防止するためのブロック状の防止手段が固定レールの底壁部に備えている。即ち、固定レールの底壁部に設けた防止手段は、固定レールを車体に固持する固定手段に向かうに従って底壁部から上昇する傾斜面を有している。従って、防止手段の前側で両レールの間に入ったコインなどの硬質の小物は、可動レールの移動に伴い可動レールに押されて移動することで、防止手段の傾斜面に案内される態様で徐々に持ち上げられる。これにより、可動レールに押された前記小物が防止手段より後側に配置された固定手段の頭部を乗り越えることができ、当該小物が可動レールと固定手段の頭部との間に挟まれることによる可動レールの移動を阻害してしまうことを防止できる、と推定できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−052842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術の自動車用シートスライド装置にあっては、前記防止手段を固定レールの底壁部から外れないようにする手段が複雑となり、防止手段自体の製造原価が高騰するばかりか、固定レールの底壁部への取付工数が多大なものとなる恐れがある。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、小物が可動レールと固定手段の頭部との間に挟まれることによる可動レールの移動を阻害してしまうことを防止できる、という効果を維持しつつ、防止手段自体の製造原価を低減し、固定レールの底壁部への取付工数を少なくすることを可能にした自動車用シートスライド装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、長尺の底壁部を有し且つ該底壁部の端部近傍で車両フロアに固定手段により固定可能なる固定レールと、シートに固定可能とされ且つ前記固定レールの底壁部の上側を長尺方向に移動可能に連結されてなる長尺の可動レールとより構成されてなり、前記固定手段の頭部は、前記底壁部の上側に突出してなり且つ前記固定手段の反端部側に底壁部に近接した傾斜面を有する防止手段を配設されてなる自動車用シートスライド装置であって、前記防止手段は、前記固定手段の頭部の下側の面と前記底壁部の上側の面との間で挟持される平板状をなし且つ前記固定手段の頭部の上面と略同一位置となる移動部を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記可動レールの端部には、前記防止手段の移動部の上面に近接する下端部を有する掃き出し部を支持してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、前記防止手段は、前記固定手段の頭部の下側の面と前記底壁部の上側の面との間で挟持される平板状をなし且つ前記固定手段の頭部の上面と略同一位置となる移動部を有するので、防止手段の移動部により小物が可動レールと固定手段の頭部との間に挟まれることによる可動レールの移動を阻害してしまうことを防止できる、という効果を維持し、防止手段が平板よりなるので、防止手段自体の製造原価が低減でき、固定レールの底壁部への取付工数を少なくすることを可能にした、という効果を有する。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、前記可動レールの端部には、前記防止手段の移動部の上面に近接する下端部を有する掃き出し部を支持してなるので、前記小物は、確実に掃き出しが出来る、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係り、自動車用シートスライド装置の側面図である。
図2図1のSA−SA線にかかる断面図である。
図3図1の矢視Bにかかる斜視図である。
図4図2及び図3に示す防止手段単体の斜視図である。
図5図3のSC−SC線にかかる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
防止手段自体の製造原価を低減し、固定レールの底壁部への取付工数を少なくすることを可能にした自動車用シートスライド装置を提供する、という目的を、以下の構成により実現した。すなわち、長尺の底壁部を有し且つ該底壁部の端部近傍で車両フロアに固定手段により固定可能なる固定レールと、シートに固定可能とされ且つ前記固定レールの底壁部の上側を長尺方向に移動可能に連結されてなる長尺の可動レールとより構成されてなり、前記固定手段の頭部は、前記底壁部の上側に突出してなり且つ前記固定手段の反端部側に底壁部に近接した傾斜面を有する防止手段を配設されてなる自動車用シートスライド装置であって、前記防止手段は、前記固定手段の頭部の下側の面と前記底壁部の上側の面との間で挟持される平板状をなし且つ前記固定手段の頭部の上面と略同一位置となる移動部を有することで、実現した。
【実施例】
【0012】
以下、図1乃至図5を用いて、本発明の一実施形態に係る自動車用シートスライド装置4を説明する。自動車用シートスライド装置4は、左側LH及び右側RHに離間して並設され且つ前側FRから後側RRまでにそれぞれ長尺に形成されてなる固定レール5、5(図面は、その一方のみを示す。)と、シート1のシートクッション2の底部に固定可能とされ且つ固定レール5の上側UPを長尺方向、つまり、前側FRから後側RRまでに移動可能に連結されてなる長尺の可動レール6、6(図面は、その一方のみ示す。)とより構成されてなる。符号3はシート1のシートバックである。固定レール5、5に対する可動レール6、6の前側FRから後側RRまでの移動は、図示を省略したロック部材により通常は規制されており、該ロック部材に操作力を付与することで、その規制が解除可能とされているが、周知のため、これ以上の説明は割愛する。
【0013】
固定レール5は、鉄板よりなり、「車両フロア」であるフロアパネル9に略平行な底壁部5aと、該底壁部5aの右側RH及び左側LHよりなる車幅方向両側から立設された一対の第1側壁部5b、5bと、該第1側壁部5b、5bの上端部から車幅方向内側に張り出して第1側壁部5b、5bの下端側に折り返された第1折返し壁部5c、5cとが連続形成されてなる。
【0014】
可動レール6は、鉄板よりなり、固定レール5の両第1側壁部5b、5b間で上下方向に延びる一対の第2側壁部6a、6aと、両第2側壁部6a、6aの上端間を連結する連結部6bと、両第2側壁部6a、6aの下端から車幅方向外側に張り出して第1側壁部5b、5b及び第1折返し壁部5c、5cに包囲されるように折り返された第2折返し壁部6c、6cとが連続形成されてなる。前記可動レール6の後端部には、後述する防止手段12の移動部12a、12iの上面に近接する下端部を有する掃き出し部6dを支持してなる。
【0015】
従って、固定レール5及び可動レール6は、開口側が互いに突き合わされたU字状の断面をそれぞれ有しており、主として第1折返し壁部5c、5c及び第2折返し壁部6c、6cの係合によって上側UP及び下側LWR方向に抜けないように係合されている。これら固定レール5及び可動レール6により形成される断面は、矩形状をなす。
【0016】
第2折返し壁部6c、6c及びこれに対向する第1側壁部5b、5b間には、図示しない転動体が装着されており、可動レール6は、固定レール5との間で転動体を転動させることで、固定レール5に対し長手方向(前後方向)に摺動自在に支持されている。
【0017】
固定レール5は、フロアパネル9に第1ブラケット7及び第2ブラケット11を介して支持されてなる。より詳細に説明する。固定レール5の前端部には、図1に示すように、概略逆L字状の第1ブラケット7が溶接支持される。下側LWRに突出した第1ブラケット7に挿入したボルト8を、フロアパネル9の下面に溶接支持されたナット10に締結支持することで、固定レール5の前端部が支持されている。
【0018】
固定レール5の後端部には、図3に示すように、右側RHから左側LHに延在された第2ブラケット11が「固定手段」である第1リベット13及び第2リベット14により支持され、第2ブラケット11の第1貫通孔11a及び第2貫通孔11bを介してフロアパネル9の下面に溶接支持されたナット10に締結支持するボルト8によりフロアパネル9に支持されてなる(第2ブラケット11の支持に関する説明で、ナット10及びボルト8の図示はしていないが、第1ブラケット7の支持に関する説明に重複するので省略した。)。第1貫通孔11a及び第2貫通孔11bの間の寸法を変えることで、フロアパネル9の板厚が薄くても確実な支持が可能となる。第1リベット13及び第2リベット14は、図3及び図5に示すように、前側FRから後側RRに適宜離間している。符号15は、固定レール5の後端部に配された乗員の靴の傷付きを防止するための合成樹脂製のカバーである。
【0019】
前記防止手段12は、前側FRから後側RRに長尺状をなし、前記底壁部5aの上面5aaに近接した下端部から45度の角度θ1を有する傾斜面12dと、第1リベット13及び第2リベット14の頭部13a、14aの下側LWRの面13d、14dと前記底壁部5aの上側UPの面5aaとの間で挟持される平板状をなすリング部12b、12cと、前記第1リベット13及び第2リベット14の頭部13a、14aの上面13aa、14aaと略同一位置となる移動部12a、12iとを有する。符号12j、12e、12fは、リング部12b、12cと、移動部12a、12iとの間に形成されてなる縦壁部である。符号12g、12hは、リング部12b、12cに形成されてなる第1リベット13及び第2リベット14の挿入部13c、14cの挿入可能なる貫通孔である。
【0020】
上面13aa、14aaと移動部12aとを「略同一位置」としたのは、全くの同一位置でも、移動部12aの方が若干上面13aa、14aaより落ち込んでいても、図5に示すように、移動部12aの方が寸法H分だけ若干上面13aa、14aaより突出していても、要はコイン、ライターなどの硬質の小物16が全体的に移動可能な面が形成されていることを意味する表現である。この明細書での「硬質の小物」とは、金属体、合成樹脂体など所定の厚さを有し、紙や風船などのような、力が加わるとそれ自体が容易に変形してしまうものを除外する表現である。前記第1リベット13及び第2リベット14のかしめ部13b、14bは、第2ブラケット11の裏面にて形成されてなる。
【0021】
以上の構成よりなる本発明の一実施形態の作用を次に説明する。
【0022】
前記防止手段12は、第1リベット13及び第2リベット14の頭部13a、14aの下側の面13d、14dと前記底壁部5aの上側の面5aaとの間で挟持される平板状をなし且つ前記第1リベット13及び第2リベット14の頭部13a、14aの上面13aa、14aaと略同一位置となる移動部12a、12iを有するので、防止手段12の移動部12a、12iにより、図5に示す白抜き矢印のように、小物16が移動でき、可動レール6と第1リベット13及び第2リベット14の頭部13a、14aとの間に挟まれることによる可動レール6の移動を阻害してしまうことを防止できる、という効果を維持し、防止手段12が平板をプレス成形により成形されてなるので、防止手段12自体の製造原価が低減でき、固定レール5の底壁部5aへの取付工数を少なくすることを可能にした、という効果を有する。
【0023】
前記可動レール6の後端部には、前記防止手段12の移動部12a、12iの上面に近接する下端部を有する掃き出し部6dを支持してなるので、前記小物16は、確実に掃き出しが出来る、という効果を有する。
【0024】
前記実施形態では、「固定手段」として、第1リベット13及び第2リベット14を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、ボルトなどの締結部材であっても良い。また、自動車用シートスライド装置4は、前後FR、RRに長尺なるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、左右LH、RHに長尺なるものとしても良い。また、傾斜面12dの角度θ1は、45度を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、30度でも良い。
【符号の説明】
【0025】
1 シート
4 自動車用シートスライド装置
5 固定レール
5a 固定レールの底壁部
5aa 底壁部の上側の面
6 可動レール
6d 可動レールの掃き出し部
9 フロアパネル(車両フロア)
12 防止手段
12a、12i 防止手段の移動部
12d 防止手段の傾斜面
13、14 第1リベット、第2リベット(固定手段)
13a、14a 第1リベット、第2リベットの頭部(固定手段の頭部)
13aa、14aa 第1リベット、第2リベットの頭部の上面(固定手段の頭部の上面)
13d 第1リベット、第2リベットの頭部の下側の面(固定手段の頭部の下側の面)
図1
図2
図3
図4
図5