特許第6190268号(P6190268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190268
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】支持構造体
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   E02D17/18 Z
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-271220(P2013-271220)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124570(P2015-124570A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 輝
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】中島 悠介
(72)【発明者】
【氏名】北本 幸義
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳峰
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 勝利
(72)【発明者】
【氏名】青木 修二
(72)【発明者】
【氏名】明本 守正
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−303582(JP,A)
【文献】 特開2005−163309(JP,A)
【文献】 特開昭57−054617(JP,A)
【文献】 特開昭56−039236(JP,A)
【文献】 特開2005−200868(JP,A)
【文献】 特開2009−249999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00〜 17/20
E02D 1/00〜 3/115
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土構造物を支持する支持構造体であって、
前記土構造物の下方に位置する基礎地盤において前記土構造物の両側の法尻部の下方にそれぞれ設けられた地盤改良部と、
前記基礎地盤の上面において前記地盤改良部間に亘って設けられ、前記地盤改良部に固定されたジオテキスタイルと、を備え
前記ジオテキスタイルは、棒状部材を格子状に組んだ格子状補強枠を有するシートであり、
前記棒状部材を格子状に組んだときの交点において、前記棒状部材同士は上下方向に重ねられている、支持構造体。
【請求項2】
前記シートは、前記格子状補強枠が形成する凹凸形状を有しており、前記地盤改良部ならびに前記土構造物に対して摩擦力によって固定される、請求項に記載の支持構造体。
【請求項3】
前記ジオテキスタイルは、前記地盤改良部に設けられた溝内に入れ込まれ、前記溝内に入れ込まれた前記ジオテキスタイルの上に充填部材が充填されることにより、前記地盤改良部に固定される、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項4】
前記ジオテキスタイルは、杭、鋼矢板或は鋼管矢板を打ちつけることによって、前記地盤改良部に固定される、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項5】
前記ジオテキスタイルは、前記土構造物の両側の法尻部より更に外側に向かって延在する、請求項1からのいずれか一項に記載の支持構造体。
【請求項6】
前記ジオテキスタイル上には、砕石層が設けられる、請求項1からのいずれか一項に記載の支持構造体。
【請求項7】
前記地盤改良部の下端は、前記基礎地盤の非液状化層まで延びている、請求項1からのいずれか一項に記載の支持構造体。
【請求項8】
土構造物を支持する支持構造体であって、
前記土構造物の下方に位置する基礎地盤において前記土構造物の両側の法尻部の下方にそれぞれ設けられた地盤改良部と、
前記基礎地盤の上面において前記地盤改良部間に亘って設けられ、前記地盤改良部に固定されたジオテキスタイルと、を備え、
前記ジオテキスタイルは、棒状部材を格子状に組んだ格子状補強枠を有するシートであり、
前記ジオテキスタイル上には、前記格子状補強枠が形成する凹凸形状を覆う砕石層が設けられる、支持構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土構造物を支持する支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎地盤上に道路や防潮堤を設置するために盛土等の土構造物を設けることがある。このような土構造物は、基礎地盤が液状化すると、盛土や基礎地盤の剛性や強度の低下に伴う崩壊が生じる。この崩壊形態として、例えば、盛土の局所的或は全体的な滑り崩壊、盛土の沈下、盛土の側方流出等が挙げられる。
【0003】
このような崩壊を防止するために、盛土を支持する基礎地盤に対し液状化が生じないように地盤改良を施すことがある。このような、土構造物を支持する基礎地盤を改良する構成が、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−313314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、基礎地盤のうち、土構造物の下方部分全体について地盤改良を行うことが考えられるが、地盤改良を行う部分が広範囲となり、経済的ではない。これに対し、基礎地盤のうち、土構造物の下方部分の一部について地盤改良を行うことが考えられるが、部分的な改良では、巨大地震が生じた場合、未改良部の液状化の完全抑制は困難な場合が多いため、液状化の発生は許容しながらも土構造物に要求される性能を確保する、つまり土構造物が使用可能な範囲に沈下あるいは不同沈下を抑制することが可能な対策が求められる。また、土構造物の下方部分の地盤を部分的に改良した場合の問題点として、改良部分と非改良部分との境界部における不同沈下によって土構造物に亀裂が入ることが考えられ、これに対する対策が求められる。
【0006】
そこで、本発明は、土構造物の崩壊を効率よく抑制できる支持構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る支持構造体は、土構造物を支持するものであり、土構造物の下方に位置する基礎地盤において土構造物の両側の法尻部の下方にそれぞれ設けられた地盤改良部と、基礎地盤の上面において土構造物の両側の法尻部の下方の地盤改良部間に亘って設けられ、地盤改良部に固定されたジオテキスタイルと、を備え、ジオテキスタイルは、棒状部材を格子状に組んだ格子状補強枠を有するシートであり、棒状部材を格子状に組んだときの交点において、棒状部材同士は上下方向に重ねられている。
【0008】
この支持構造体では、地盤改良部が土構造物の法尻部の下方に設けられていることによって、液状化に起因した土構造物における滑り、あるいは基礎地盤を含めた滑り崩壊の発生を防止できる。また、地盤改良部間に亘って設けられたジオテキスタイルによって土構造物が支持されるので、土構造物の不同沈下を抑制できる。更に、ジオテキスタイルが地盤改良部に固定されていることにより、ジオテキスタイルに張力が生じ、土構造物の沈下抑制効果を増大させることができる。以上のように、本発明によれば、土構造物の下部全体の地盤改良を行うことなく、土構造物の崩壊を効率よく抑制できる。
【0009】
また、格子状補強枠を有していることで、シート単独使用の場合は主に引張にだけ抵抗するのに対し、格子状補強枠を具備することでシートに曲げ剛性が付与される。その結果、基礎地盤が液状化した際の土構造物の沈下抑制効果をより一層増大させることができる。特に、シートに曲げ剛性が付与されることによって、地盤改良部と地盤を改良していない部分との境界における不同沈下が緩和される。これにより、地盤改良部と地盤を改良していない部分との境界部から土構造物に亀裂が入ることが抑制できる。
【0010】
シートは、格子状補強枠が形成する凹凸形状を有しており、地盤改良部ならびに土構造物に対して摩擦力によって固定されていてもよい。このシートは、格子状補強枠を有していることにより、補強枠が設けられている部位と設けられていない部位とによって凹凸が生じる。この凹凸により、地盤改良部とシートとの間、あるいは土構造物とシートとの間での摩擦力が増大され、別の固定手段を用いることなく、シートを地盤改良部上に敷設するだけでシートの位置ずれを防止することができる。
【0011】
ジオテキスタイルは、地盤改良部に設けられた溝内に入れ込まれ、溝内に入れ込まれたジオテキスタイルの上に充填部材が充填されることにより、地盤改良部に固定されていてもよい。このように、溝内に入れ込まれたジオテキスタイル上に充填部材を充填することにより、ジオテキスタイルを地盤改良部に強固に固定することができる。
【0012】
ジオテキスタイルは、杭、鋼矢板或は鋼管矢板を打ちつけることによって、地盤改良部に固定されていてもよい。この場合には、杭、鋼矢板或は鋼管矢板を用いて容易、且つ強固に固定することができる。
【0013】
ジオテキスタイルは、土構造物の両側の法尻部よりも更に外側に向かって延在していてもよい。この場合には、例えば土構造物が防潮堤である場合、防潮堤を乗り越えた津波や高波による越流が生じたとしても、ジオテキスタイルが法尻部よりも更に外側に延在していることによって、越流による基礎地盤の洗掘の進行を抑制できる。
【0014】
ジオテキスタイル上には、砕石層が設けられていてもよい。この場合には、ジオテキスタイルと砕石層とが一体となって剛性が向上し、土構造物の沈下をより一層防止できる。また、砕石層に排水性の良い材料を用いた場合、液状化時に上昇する基礎地盤、ならびに土構造物中の地下水の水圧を消散させる効果があるため、砕石層を設けることで、土構造物の耐液状化性能が向上する。ジオテキスタイル上に砕石層を設けることで、土構造物を設ける前の状態において、ジオテキスタイルを保護することができると共に、ジオテキスタイル上を工事車両等が通る道路として利用することができる。特に、前述の格子状補強枠を用いた場合、排水機能とシート材の保護のため、砕石層厚は格子状補強枠の凹凸部を完全に覆う程度の層厚を確保することが望ましい。
【0015】
地盤改良部の下端は、基礎地盤の非液状化層まで延びていてもよい。これにより、地盤改良部がより一層強固なものとなり、土構造物の崩壊をより一層防止できる。
本発明の一側面に係る支持構造体は、土構造物を支持する支持構造体であって、土構造物の下方に位置する基礎地盤において土構造物の両側の法尻部の下方にそれぞれ設けられた地盤改良部と、基礎地盤の上面において地盤改良部間に亘って設けられ、地盤改良部に固定されたジオテキスタイルと、を備え、ジオテキスタイルは、棒状部材を格子状に組んだ格子状補強枠を有するシートであり、ジオテキスタイル上には、格子状補強枠が形成する凹凸形状を覆う砕石層が設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、土構造物の崩壊を効率よく抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る支持構造体の概略構成を示す断面図である。
図2図1のシートの詳細を示す斜視図である。
図3】シートと地盤改良部との固定部分を示す拡大図である。
図4】変形例における支持構造体の概略構成を示す断面図であり、地盤改良部の形状を変更したものである。
図5】変形例における支持構造体の概略構成を示す断面図であり、シートの構成を変更したものである。
図6】変形例における支持構造体の概略構成を示す断面図であり、地盤改良部の形状及びシートの構成を変更したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に示すように、支持構造体1は、土構造物Yを下方から支持するものである。土構造物Yとして、例えば、道路盛土、鉄道盛土、防潮堤、或いは、宅地造成盛土等が挙げられる。支持構造体1は、地盤改良部10、シート(ジオテキスタイル)20、及び、砕石層30を含んで構成される。
【0020】
地盤改良部10は、土構造物Yの下方に位置する基礎地盤Xにおいて、土構造物Yの両側の法尻部Y1の下方にそれぞれ設けられる。なお、地盤改良部10は、土構造物Yの法尻部Y1の延在方向(土構造物Yの長手方向)に沿って連続して設けられていてもよく、所定の隙間を設けて非連続的に設けられていてもよい。地盤改良部10の上面は、基礎地盤Xの上面と同じ高さでシート20と接する配置が理想であるが、表層まで地盤改良を施すことが困難な場合や、地盤改良後に施工基面層が造成される場合等が考えられるため、地盤改良部10の上面は、基礎地盤Xの上面やシート20と違う高さに配置されていてもよい。地盤改良部10の下端は、非液状化層X1まで延びている。
【0021】
地盤改良部10は、液状化することがないように基礎地盤Xを改良等することによって形成される。地盤改良部10を形成するための工法として、例えば、サンドコンパクションパイル工法やグラベルコンパクションパイル工法に代表される密度増大工法、機械式撹拌工法や高圧噴射撹拌工法に代表される深層混合処理工法(杭式改良、格子状改良を含む)、注入固化工法、又は、シートパイル締切工法等を用いることができる。
【0022】
シート20は、基礎地盤Xの上面において地盤改良部10間に亘って設けられる。本実施形態においては、シート20として、棒状部材を格子状に組んだ補強枠を有するシートを用いる。より詳細には、シート20は、図2に示すように、シート部21及びジャケット22を含んで構成される。シート部21として、土木シート等、所定の引っ張り強度を有する各種のシートを用いることができる。ジャケット22は、補強枠として機能する。ジャケット22は、チューブ状の繊維材の内部に流動性固化材等が充填されており、内部の充填材の圧縮抵抗とチューブ状繊維材の引張抵抗により高い曲げ剛性を有している。棒状のジャケット22は格子状に組まれている。格子状に組まれたジャケット22は、シート部21の上面に配置されるのが一般的であるが、表層がヘドロ層のように超軟弱な場合等は、施工性を考慮してジャケット22をシート部21の下に配置することも可能である。ジャケット22を格子状に配置した際にジャケット22同士が交差する部位において、結束紐などを用いてジャケット22同士を結束してもよい。
【0023】
シート20の端部は、地盤改良部10の上面に固定される。シート20の地盤改良部10への固定方法の一例として、例えば図3に示すように、地盤改良部10の上面に溝10aを設け、溝10a内にシート20を入れ込む。そして、溝10a内に入り込んだシート20の上に、ブロック、砕石或いは土等の充填部材10bを充填することにより、シート20を地盤改良部10に固定することができる。
【0024】
本実施形態において、シート20は、土構造物Yの下面部分のみを覆っている。即ち、シート20の縁部の位置と、法尻部Y1の縁部の位置とは略一致している。
【0025】
シート20の上面には、砕石層30が設けられる。砕石層30の厚さは、シート20のジャケット22が隠れる程度とすることができる。これにより、シート20、ジャケット22及び砕石層30が一体の補強層として、土構造物Yの崩壊に抵抗する。砕石層30の上に、土構造物Yが形成される。
【0026】
本実施形態は以上のように構成され、この支持構造体1では、地盤改良部10が土構造物Yの法尻部Y1の下方に設けられていることによって、基礎地盤Xに液状化が生じても、土構造物Yにおける法尻部分の滑り、あるいは基礎地盤Xを含めた滑り、及び、側方への流動の発生を防止でき、更に、地盤改良部10によって支持構造体1の外側の地盤で発生した過剰間隙水圧の基礎地盤X内への伝播を抑制することができる。また、地盤改良部10間に亘って設けられたシート20によって土構造物Yが支持されることによって、基礎地盤Xに液状化が生じた場合であっても、土構造物Yの沈下、及び、不同沈下等を抑制できる。更に、シート20が地盤改良部10に固定されていることにより、地盤改良部10間においてシート20に張力が生じ、土構造物Yの沈下抑制効果を増大させることができる。また、曲げ剛性を有するジャケット22によって構成されたシート20を用いた場合には、地盤改良部10の境界において不同沈下が緩和されるという効果もあり、土構造物Yの不同沈下をより一層抑制することができる。以上のように、本実施形態によれば、土構造物Yの下部全体の地盤改良等を行うことなく、土構造物Yの崩壊を効率よく抑制できる。
【0027】
シート20として、格子状補強枠を有するシートを用いることで、シート部21単独使用の場合は主に引張にだけ抵抗するのに対し、格子状補強枠としてのジャケット22を具備することでシートに曲げ剛性が付与される。その結果、基礎地盤Xが液状化した際の土構造物Yの沈下抑制効果をより一層増大させることができる。
【0028】
シート20の端部を地盤改良部10の溝10a内に入れ込み、入れ込んだシート20の上に充填部材10bを充填することによって、シート20を地盤改良部10に固定する。このように、溝10a内に入れ込んだシート20の上に充填部材10bを充填することにより、シート20を地盤改良部10に強固に固定することができ、シート20の抜け出しを防止できる。
【0029】
シート20上に砕石層30を設けることによって、シート20と砕石層30とが一体となって剛性が向上し、土構造物Yの沈下をより一層防止できる。砕石層30に排水性の良い材料を用いた場合、液状化時に上昇する基礎地盤X、ならびに土構造物Y中の地下水の水圧を消散させる効果があるため、砕石層30を設けることで、土構造物Yの耐液状化性能が向上する。シート20上に砕石層30を設けることで土構造物Yを設ける前の状態において、シート20を保護することができると共に、シート20上を工事車両等が通る道路として利用することができる。
【0030】
地盤改良部10の下端を基礎地盤Xの非液状化層X1まで延ばすことにより、地盤改良部10がより一層強固なものとなり、土構造物Yの崩壊をより一層防止できる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、シート20として、格子状補強枠を有するシートを用いるものとしたが、これ以外の他のジオテキスタイル、例えばジオネット、ジオグリッド等を用いることができる。
【0032】
また、シート20の地盤改良部10への固定方法は、上述した方法に限定されない。例えば、シート20を地盤改良部10に固定する他の方法として、地盤改良部10の上にシート20を設置し、シート20を介して地盤改良部10に向けて杭、鋼矢板或は鋼管矢板を打ちつけることによって固定することもできる。この場合には、容易、且つ強固にシート20を地盤改良部10に固定することができる。更に、他の例として、例えば、地盤改良部10の上面にシート20を設置するだけであっても、シート20と地盤改良部10との摩擦力あるいはシート20と土構造物Yとの摩擦力によって、シート20の位置ずれを防止することができる。これは、シート20が格子状のジャケット22を有していることにより、ジャケット22が設けられている部位と設けられていない部位とによって凹凸が生じる。これにより、シート20と地盤改良部10との間の摩擦力あるいはシート20と土構造物Yとの摩擦力が増大され、別の固定手段を用いることなく、シート20を地盤改良部10上に敷設するだけで摩擦力によりシートの位置ずれを防止できる。
【0033】
シート20を設置する際に、水平方向に対して所定角度傾斜させた状態で設置してもよい。この場合には、土構造物Yの内部の排水性をより一層向上させることができる。
【0034】
上記実施形態では、図1に示すように、地盤改良部10の下端の全ての部分が非液状化層X1まで延びているものとしたが、地盤改良部10の下端の一部分のみが非液状化層X1まで延びていてもよい。具体的には、図4に示す支持構造体1Aのように、土構造物Yの法尻部Y1の下方に、下端の一部分のみが非液状化層X1まで延びる地盤改良部10Aを設ける。地盤改良部10Aの外側部10cの下端は、非液状化層X1まで延びている。地盤改良部10Aの内側部10dの下端は、非液状化層X1に達していない。また、地盤改良部10Aの内側部10dは、地盤の改良深度が土構造物Yの内側に向かって徐々に浅くなっている。このように、地盤改良部10Aの内側部10dを、外側部10cから土構造物Yの下方の未改良範囲に向かって張り出した形状としてもよい。
【0035】
また、図5に示す支持構造体1Bのように、シート20を、土構造物Yの両側の法尻部Y1よりも外側に向かって更に延在させてもよい。この場合には、例えば土構造物Yが防潮堤である場合、防潮堤を乗り越えた津波や高波による越流が生じたとしても、シート20が延在していることによって、越流による基礎地盤Xの洗掘の進行を抑制できる。
【0036】
また、図6に示す支持構造体1Cのように、地盤改良部10Bを、土構造物Yの横断面内において土構造物Yの法尻部Y1よりも外側に配置してもよい。この場合、シート20を、地盤改良部10Bの上面の少なくとも一部を覆うように、土構造物Yの両側の法尻部Y1よりも外側に向かって更に延在させる。これにより、シート20における法尻部Y1よりも外側に延在する部分を、地盤改良部10Bの上面に固定することができる。
【符号の説明】
【0037】
1,1A,1B,1C…支持構造体、10,10A,10B…地盤改良部、20…シート(ジオテキスタイル)、30…砕石層、X…基礎地盤、X1…非液状化層、Y…土構造物、Y1…法尻部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6