特許第6190277号(P6190277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190277
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】保護キャップ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   B25B21/00 540D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-578(P2014-578)
(22)【出願日】2014年1月6日
(65)【公開番号】特開2015-128803(P2015-128803A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小出 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 知哉
(72)【発明者】
【氏名】大内 渉
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭50−23196(JP,Y1)
【文献】 米国特許第3712352(US,A)
【文献】 米国特許第5182973(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第1045734(GB,A)
【文献】 特開2006−159307(JP,A)
【文献】 実開昭63−166316(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00 − 21/02
B25B 23/00 − 23/18
B23B 45/00
B27C 3/08
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス打ち用動力式回転工具に装着する保護キャップであって、
前記保護キャップは、一方の主平面と、他方の主平面とを備えた、直径が24mm以上30mm以下の円柱形状を有し、
前記保護キャップは前記一方の主平面から前記他方の主平面へと貫通する貫通孔を備え、
前記貫通孔の前記一方の主平面側には前記貫通孔の径を部分的に狭めるクッション部が設けられ、
前記クッション部は、厚さが2mm以上5mm以下であり、
前記保護キャップはゴム硬度(タイプAデュロメータ硬さ)が40以上90以下の一材の弾性材料により構成される保護キャップ。
【請求項2】
前記保護キャップの直径が25mm以上28mm以下である請求項1に記載の保護キャップ。
【請求項3】
前記弾性材料のゴム硬度(タイプAデュロメータ硬さ)が50以上80以下である請求項1または2に記載の保護キャップ。
【請求項4】
前記クッション部の厚さが2mm以上3mm以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の保護キャップ。
【請求項5】
前記一方の主平面と、側面との間に面取り部が設けられている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の保護キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井板や、床材、壁材等の板状体を施工する方法として、板状体の表面側からビスを打ち、下地材等に固定する施工方法が従来から知られている。
【0003】
しかしながら、天井板等の板状体をビスにより固定する際、例えばビスを打ち込みすぎてビス打ち機の先端部が板状体にあたり、板状体に凹みを生じる場合があった。特に近年では例えば天井板において、天井落下防止の観点から比重が軽い、すなわち、柔らかい板状体を用いる場合が増えており、凹みを生じ易くなっていた。
【0004】
天井板等の板状体に凹みが生じると、斜光が当たった場合に該凹みが目立って見え、見栄えが悪くなるという問題がある。また、凹みを生じないようにするにはビスを打ち込み過ぎないように慎重に作業することが求められるため、作業スピードが低下するという問題がある。
【0005】
そこで、板状体に凹みが生じることを防止することを目的として、ビスを打ち込む際に用いるビス打ち機に装着する保護キャップが従来から検討されてきた。
【0006】
例えば特許文献1には、面板部と取り付け部とからなり、面板部の表面には軟質部を備えていることを特徴とする動力式回転工具用アタッチメントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−39789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された動力式回転工具用アタッチメントは、鉄製の取り付け部、面板部と、ゴム製シートの軟質部と、を含んだ構造を有している。このように、複数の異なる材料からなる部材を含むためコストが高くなるという問題があった。
【0009】
また、特許文献1に開示された動力式回転工具用アタッチメントは、面板部の直径が例えば40mm程度と大きいため、例えばビスと板状体との間の角度が直角からずれた場合、面板部の角部が板状体にあたってかえって板状体を傷つける場合があった。さらには、隅部等狭い空間では面板部のサイズが大きいため使用が困難であった。
【0010】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、単一の材料から構成され、ビス打ち用動力式回転工具でビス打ちを行った際に板状体に凹みが生じることを抑制できる保護キャップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明は、ビス打ち用動力式回転工具に装着する保護キャップであって、
前記保護キャップは、一方の主平面と、他方の主平面とを備えた、直径が24mm以上30mm以下の円柱形状を有し、
前記保護キャップは前記一方の主平面から前記他方の主平面へと貫通する貫通孔を備え、
前記貫通孔の前記一方の主平面側には前記貫通孔の径を部分的に狭めるクッション部が設けられ、
前記クッション部は、厚さが2mm以上5mm以下であり、
前記保護キャップはゴム硬度(タイプAデュロメータ硬さ)が40以上90以下の一材の弾性材料により構成される保護キャップを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、単一の材料から構成され、ビス打ち用動力式回転工具でビス打ちを行った際に板状体に凹みが生じることを抑制できる保護キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における保護キャップの斜視図。
図2図1のA−A´線における断面図。
図3】本発明の実施形態における保護キャップの上面図及び底面図。
図4】本発明の実施形態における保護キャップをビス打ち用の動力式回転工具に装着した際の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0015】
本実施形態の保護キャップは、ビス打ち用動力式回転工具に装着する保護キャップであって、保護キャップは、一方の主平面と、他方の主平面とを備えた、直径が24mm以上30mm以下の円柱形状を有することができる。
【0016】
そして、保護キャップは一方の主平面から他方の主平面へと貫通する貫通孔を備え、貫通孔の一方の主平面側には前記貫通孔の径を部分的に狭めるクッション部が設けられ、クッション部は、厚さが2mm以上5mm以下とすることができる。
【0017】
また、保護キャップはゴム硬度(タイプAデュロメータ硬さ)が40以上90以下の一材の弾性材料により構成することができる。
【0018】
本実施形態の保護キャップの構成例について図1図4を用いて説明する。
【0019】
図1は本実施形態の保護キャップの斜視図を示しており、図2図1のA−A´線における断面図を、図3(A)は保護キャップの上面図、図3(B)は保護キャップの底面図を示している。図4は保護キャップをビス打ち用の動力式回転工具に装着した際の断面図を示している。
【0020】
なお、本実施形態の保護キャップは、既述のようにビス打ち用の動力式回転工具に装着することができる。ここで、ビスとは、内装壁板や天井板等の板状体を下地に固定するためのねじ全般を含む。また、ビス打ち用動力式回転工具(以下、単に「回転工具」とも記載する)とは、ビス頭部に設けられたすりわりや、十字形状等に対応した先端形状を有するビットを固定するビット固定部を有する。そして、該ビット固定部を工具内部に備えたモーター等の動力により回転させることにより、ビットを介してビスを回転させてビスを板状体に打つことができる工具を意味している。
【0021】
本実施形態の保護キャップ10は外形が、図1に示したように、一方の主平面(上面)11A及び他方の主平面(底面)11Bを有する円柱形状とすることができる。
【0022】
そして、図2に示すように、保護キャップ10は、一方の主平面11Aから、他方の主平面11Bへと貫通する貫通孔21を、設けることができる。貫通孔21は図2に示すように、保護キャップ10の外形である円柱の中心軸に沿って形成することが好ましい。貫通孔21は図2図3(A)、図3(B)に示すように、一方の主平面11A側に回転工具のビットを露出するための開口部21Aを、他方の主平面11B側にビス打ち用動力式回転工具を挿入するための開口部21Bを有することができる。
【0023】
なお、開口部21A及び開口部21Bは、図3(A)、図3(B)に示したように同心円状に配置されることが好ましい。
【0024】
図3(A)は上面図のため、他方の主平面11B側の開口部21Bは本来見えないが、位置関係が明らかになるように点線で他方の主平面11B側の開口部21Bを示している。
【0025】
上述の保護キャップ10を回転工具に装着した際の説明図を図4に示す。図4は回転工具のビット42の中心軸を通る平面での断面図を示している。図4に示したように、本実施形態の保護キャップ10は、回転工具の先端部41に装着することができる。なお、回転工具の先端部とは、回転工具を用いてビスを打つ際に回転工具のうちビット42を除いて板状体に最も接近する部分である。回転工具の先端部41に保護キャップ10を装着することにより、板状体にビスを打つ際にビスを打ち込みすぎた場合でも、回転工具の先端部41の板状体と対向する面41Aが板状体と直接接触することを防止できる。このため、板状体に凹みが形成されることを抑制できる。
【0026】
そして本実施形態の保護キャップ10においては、板状体に凹みが生じることを特に防ぐために、貫通孔21の一方の主平面11A側には図2に示すように、一方の主平面の一部を形成するようクッション部22を配置することが好ましい。
【0027】
クッション部22を設けることによりビスを打ち込みすぎた場合に、回転工具の先端部が板状体を押圧する力を吸収、分散し、板状体に凹みが発生することを抑制できる。また、例えば、ビスと板状体との間の角度が直角からずれた場合であっても、クッション部22が配置されていることにより回転工具の先端部41が板状体に直接当たることを防ぎ、板状体に凹みが生じることを抑制できる。
【0028】
なお、後述のように本実施形態の保護キャップ10は一材の弾性材料により構成されていることが好ましいため、クッション部22と他の部材との明確な境界線はない。ただし、貫通孔21のうち一方の主平面11A側で貫通孔21の径を部分的に狭めている部材をクッション部22とする。
【0029】
クッション部22は十分なクッション性を発揮するため、クッション部22の厚さh22は2mm以上であることが好ましい。クッション部22の厚さh22の上限値は特に限定されるものではないが、クッション部22が厚くなりすぎると、回転工具のビット42が保護キャップ10に覆われて作業性を損ねる可能性がある。このため、クッション部22の厚さh22は5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。
【0030】
上述した一方の主平面11A側の開口部21Aの開口径d21Aは、回転工具のビット42部分を露出できるようにビット42の直径よりも長いことが好ましい。ただし、本実施形態の保護キャップ10を回転工具に装着した時に、回転工具の先端部41に固定できるよう、回転工具の先端部41の外周よりも小さいことが好ましい。このため、一方の主平面11A側の開口部21Aの開口径d21Aは8mm以上14mm以下であることが好ましく、9mm以上12mm以下であることがより好ましい。
【0031】
また、他方の主平面11B側の開口部21Bの開口径d21Bは、回転工具の先端部41を収容できるように構成されることが好ましい。ただし、開口径d21Bが長過ぎると保護キャップ10が回転工具から離脱し易くなる恐れがある。このため、他方の主平面11B側の開口部21Bの開口径d21Bは回転工具の先端部41の径に合わせて調整することが望ましい。
【0032】
なお、保護キャップ10に形成された貫通孔21は、保護キャップ10の一方の主平面11Aから、クッション部22の他方の主平面側の面22Bまでの間は図2に示すように一定の開口径d21Aであることが好ましい。そして、クッション部22の他方の主平面側の面22Bから、保護キャップ10の他方の主平面11B間での間は、一定の開口径d21Bであることが好ましい。また、クッション部22により開口径d21Aが開口径d22Bより小さくなることが好ましい。
【0033】
図2に示した保護キャップ10の直径d10は特に限定されないが、回転工具の先端部41に装着でき、また板状体と接触した際に回転工具による押圧力を分散させ板状体に凹みが発生することを十分に防ぐため24mm以上であることが好ましい。保護キャップ10の直径d10は25mm以上であることがより好ましい。
【0034】
保護キャップ10の直径d10の上限は特に限定されるものではないが、入隅部のように狭い場所でも使用することができ、作業性に悪影響を与えないため30mm以下であることが好ましく、28mm以下であることがより好ましい。
【0035】
保護キャップ10の厚さh10(図2を参照)は回転工具に装着した際に容易に離脱しないように、また、上述のクッション部に十分な厚さを付与できるように11mm以上14mm以下であることが好ましい。特に保護キャップ10の厚さh10は11mm以上12mm以下であることがより好ましい。
【0036】
また、図2に示すように保護キャップ10の一方の主平面11Aの外周縁、即ち一方の主平面11Aと、側面との間に面取り部23が設けられていることが好ましい。面取り部23は、図3(A)に示すように一方の主平面11Aの外周全体に渡って形成することができる。面取り部23を形成することにより、例えばビスを打つ際にビスと、天井板等の板状体と、の間の角度が直角からずれ、保護キャップ10の一方の主平面の外周縁が板状体に当たった場合であっても、板状体に凹みが生じることを抑制することができる。面取り部23の形状については特に限定されるものではないが、R面取り加工や角面取り加工等の加工を施すことが好ましい。例えば図2に示したように、保護キャップ10の中心軸を通る断面における面取り部23の断面形状23Aが1/4円となるR面取り加工とすることができる。また保護キャップ10の中心軸を通る断面において、面取り部23の断面形状23Aが三角形になる角面取り加工とすることもできる。なお、断面形状23Aを三角形とする場合、該三角形は直角二等辺三角形であることが好ましい。
【0037】
面取り部23の断面形状23Aを1/4円とした場合、その半径は例えば0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。また、面取り部23の断面形状23Aを直角二等辺三角形とした場合、直角を挟む辺の長さは例えば0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0038】
このように保護キャップ10に面取り部23を設けることにより、保護キャップ10の一方の主平面の外周縁が板状体と接触した場合であっても、板状体に凹みが生じることを特に抑制できる。
【0039】
本実施形態の保護キャップ10を構成する材料については特に限定されるものではないが、保護キャップ10全体が一つの材料により構成されていることが好ましい。これは保護キャップ10が例えば複数の材料から構成される場合、異なる材料同士の界面で剥離が生じたり、コストが高くなるという問題があるためである。そして、本実施形態の保護キャップ10に含まれるクッション部22が十分なクッション性を有するために、保護キャップ10は、一材の弾性材料により構成されることが好ましい。弾性材料としては例えばゴムが挙げられ、弾性材料としては特にシリコーンゴムをより好ましく用いることができる。これはシリコーンゴムの場合、板状体にビスを打った際に出る切粉が保護キャップに付着することを抑制でき、板状体の表面に汚れが付くことを防止できるためである。
【0040】
また、本実施形態の保護キャップ10が一材の弾性材料により構成される場合、該弾性材料のゴム硬度が40以上90以下であることが好ましく、50以上80以下であることがより好ましい。これは、ゴム硬度が上記範囲にある場合、十分なクッション性を示し、板状体に凹みが生じることを特に防ぐことができるためである。
【0041】
なお、上記ゴム硬度は、タイプAデュロメータ硬さ、すなわち、JIS K 6253で規定するタイプAデュロメータ硬さ試験により測定されたゴム硬度を意味する。
【0042】
保護キャップ10は、色が板状体の色に近いことが好ましい。これは摩擦等により保護キャップの一部が板状体に付着した場合でも、保護キャップの色が板状体の色に近い場合は、外観を損ねることを防げるためである。一般的に天井板や、床材、壁材等の板状体はグレーや白に近い場合が多いことから、保護キャップ10も色がグレーまたは白であることが好ましい。
【0043】
また、保護キャップ10の一方の主平面11Aは平滑でもよいし、任意の表面形状とすることもできる。具体的には例えば保護キャップ10の一方の主平面11Aにエンボスやスリットを施してもよい。
【0044】
以上に本実施形態の保護キャップについて説明したが、本実施形態の保護キャップによれば、単一の材料から構成され、ビス打ち用動力式回転工具でビス打ちを行った際に板状体に凹みが生じることを抑制することができる。
【実施例】
【0045】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)評価方法
以下の実験例において示した条件で作製した保護キャップを装着したビス打ち用動力式回転工具(日立工機株式会社製 型式:W4SA2)により板状体である天井板を暗室内の天井面にビスで固定した。そして、固定した天井板の表面に斜光が入るように天井板の表面に配置した蛍光灯を点灯し、天井板のビスを打った箇所、及び、ビスを打った箇所の周辺に凹みが生じていないかを目視で確認して評価を行った。
【0046】
天井板としては縦910mm×横455mm×厚さ12mmのロックウール製の天井板(日本ソーラトン株式会社製 製品名:ソーラトンワイド)を用い、0.455m×3.64mの天井面全体に隙間なく配置し、固定した。すなわち、4枚の天井板を天井面に固定した。固定に当たっては、1枚の天井板をビス20本で固定している。このため、一つの実施例または比較例について評価を行う際に合計80本のビスを打っている。
【0047】
そして、天井板を固定する際ビスを打った80箇所のうち、1箇所も凹みが生じなかった場合には◎、1箇所以上5箇所以下凹みが生じた場合には○、5箇所よりも多く凹みが生じた場合には×と評価した。
【0048】
天井板に凹みは生じないことが好ましいが、1m×1mの天井面に凹みが3箇所以下の割合であれば外観に大きく影響を与えることはないため、上記評価で◎または○の場合を合格とし、×は不合格とした。
(2)実験内容
以下に示す実験例1〜実験例3の各実施例、比較例の条件でそれぞれ保護キャップを作製し、作製した保護キャップ毎に上述した評価方法により評価を行った。
(実験例1)
以下の実施例1−1〜実施例1−4、比較例1−1、比較例1−2の条件に従い、図1図3に示した形状を有する保護キャップ10を作製し、作製した保護キャップ毎に上記評価を行った。
【0049】
保護キャップ10の直径d10は26mm、一方の主平面11A側の開口部21Aの開口径d21Aを10mm、他方の主平面11B側の開口部21Bの開口径d21Bを15mm、保護キャップ10全体の厚さh10を12mmとした。保護キャップ10の一方の主平面と側面との間の面取り部23の形状は、断面形状23Aが半径1mmの1/4円になるようにした。
【0050】
また、保護キャップはゴム硬度(タイプAデュロメータ硬さ)が70の弾性材料であるシリコーンゴム一材で形成した。
【0051】
そして、クッション部22の厚さh22を以下の表1に示すように実施例、比較例毎に変化させて保護キャップを作製した。各実施例、比較例のクッション部22の厚さ及び評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
表1の結果によると、実施例1−1〜実施例1−4においては、天井板に凹みが生じていないことが確認できた。これに対してクッション部22の厚さが1mmと薄い比較例1−1においては、回転工具の先端部と天井板の表面との間でクッション性を十分に発揮できず、天井板に多くの凹みが生じることが確認できた。また、比較例1−2については、クッション部22の厚さが6mmと厚く、回転工具のビット部の先端が保護キャップに隠れてしまいビットを打つことができず、評価できなかった。
(実験例2)
以下の実施例2−1〜実施例2−4、比較例2−1、比較例2−2の条件に従い、図1図3に示した形状を有する保護キャップ10を作製し、作製した保護キャップ毎に上記評価を行った。
【0053】
保護キャップ10の一方の主平面11A側の開口部21Aの開口径d21Aを10mm、他方の主平面11B側の開口部21Bの開口径d21Bを15mm、保護キャップ10全体の厚さh10を12mmとし、クッション部22の厚さh22は2mmとした。保護キャップ10の一方の主平面と側面との間の面取り部23の形状は、断面形状23Aが半径1mmの1/4円になるようにした。
【0054】
また、保護キャップはゴム硬度(タイプAデュロメータ硬さ)が70の弾性材料であるシリコーンゴム一材で形成した。
【0055】
そして、保護キャップ10の直径d10を以下の表2に示すように実施例、比較例毎に変化させて保護キャップを作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
表2の結果によると、実施例2−1〜実施例2−4においては、評価が◎または○となっており、天井板に凹みが生じていない、または、凹みが生じてもその数が少ないことが確認できた。これは、保護キャップ10の直径d10を24mm以上とすることにより天井板に対して押し付ける圧力を分散して天井板表面の凹みの発生を抑制できたためと考えられる。また、保護キャップ10の直径d10を30mm以下とすることにより、作業性が向上し、天井面の隅部などでビスを打つ際でも回転工具の一部が天井板に当たることを抑制できたためと考えられる。
【0057】
特に、保護キャップ10の直径d10を25mm以上とすることにより天井板に対して押し付ける圧力の分散効果が高まり、また、d10を28mm以下とすることにより作業性が特に向上するため、上記のように天井板表面に凹みが発生しなかったと考えられる。
【0058】
これに対して保護キャップ10の直径d10が22mmの比較例2−1では、天井板に対して押し付ける圧力を十分に分散できずに凹みが発生したと考えられる。また、直径d10が32mmの比較例2−2の場合、作業性の低下により例えばビスと天井板の角度が直角からずれ易くなり、天井板に対するビスの角度によって回転工具の一部が天井板に当たり、天井板の表面に凹みが生じたものと考えられる。
(実験例3)
以下の実施例3−1〜実施例3−4、比較例3−1、比較例3−2の条件に従い、図1図3に示した形状を有する保護キャップ10を作製し、作製した保護キャップ毎に上記評価を行った。
【0059】
保護キャップ10の直径d10は26mm、一方の主平面11A側の開口部21Aの開口径d21Aを10mm、他方の主平面11B側の開口部21Bの開口径d21Bを15mm、保護キャップ10全体の厚さh10を12mmとした。また、クッション部22の厚さh22は2mmとした。保護キャップ10の一方の主平面と側面との間の面取り部23の形状は、断面形状23Aが半径1mmの1/4円になるようにした。
【0060】
そして、保護キャップ10を構成する弾性材料のゴム硬度(タイプAデュロメータ硬さ)を以下の表3に示すように実施例、比較例毎に変化させて保護キャップを作製し、上記評価を行った。なお、いずれも弾性部材としてシリコーンゴムを用いている。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
表3の結果によると、実施例3−1〜実施例3−4においては、天井板に凹みが生じていない、または、凹みが生じてもその数が少ないことが確認できた。これは、保護キャップ10を構成する弾性部材のゴム硬度が40以上90以下であるため、クッション部22が回転工具の先端部と天井板の表面との間で十分なクッション性を示したためと考えられる。
【0062】
特に弾性部材のゴム硬度が50以上80以下である実施例3−2、実施例3−3においては、天井板に凹みが生じていないことから、特に高いクッション性を示すことが確認できた。
【0063】
これに対して保護キャップ10を構成する弾性材料のゴム硬度が30の比較例3−1やゴム硬度が100の比較例3−2では、クッション部22が十分なクッション性を示さず、天井板に凹みが発生したと考えられる。
【符号の説明】
【0064】
10 保護キャップ
11A 一方の主平面
11B 他方の主平面
21 貫通孔
22 クッション部
23 面取り部
図1
図2
図3
図4