(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに噛み合う雄雌一対のスクリュロータを圧縮機のケーシングのロータ室内に収容し、ロータ軸を介して前記スクリュロータを軸受で支持し、前記ロータ室と前記軸受との間に形成される前記ケーシングの軸封空間に配設され、前記ロータ軸をシールする軸封装置を有するオイルフリースクリュ圧縮機において、
前記軸封装置は、
前記軸受側に配置されるオイルシールと、
前記ロータ室側に配置されるパッキンケースと、
ガスをシールするためのガスシールと、を備え、
前記パッキンケースの前記軸受側の端部と前記オイルシールの前記ロータ室側の端部とが締まりばめによって嵌合固定されることによって形成されたガスシール収容空間に、前記ガスシールが収容されている、オイルフリースクリュ圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、この発明の一実施形態に係るオイルフリースクリュ圧縮機1について、
図1を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
オイルフリースクリュ圧縮機1は、ケーシング本体12、吐出側ケーシング13及び吸込側ケーシング14によって構成されているケーシングを備え、ケーシングのロータ室15内に収容された雄雌咬合する一対のスクリュロータ16によって、対象ガスを圧縮するためのものである。
【0015】
ケーシング本体12は、ロータ室15に圧縮対象のガスを供給する吸込口17と、ロータ室15内でスクリュロータ16によって圧縮された圧縮ガスを排出する吐出口18とを、備えている。ケーシング本体12の吐出側及び吸込側には、それぞれ、吐出側ケーシング13及び吸込側ケーシング14が取り付けられている。スクリュロータ16の吐出側端部及び吸込側端部にはロータ軸21が設けられている。吐出側のロータ軸21の端部及び吸込側のロータ軸21の端部には、それぞれ、駆動ギア28及びタイミングギア27が分かれて取り付けられている。図示しないモータの回転駆動力は、駆動ギア28を介して一方のスクリュロータ16に伝達され、一方のスクリュロータ16に伝達された回転駆動力は、タイミングギア27を介して他方のスクリュロータ16に伝達される。一対のスクリュロータ16が非接触状態で互いに噛み合って回転することにより、吸込口17から吸い込まれたガスは、所定の圧力まで圧縮されたあと、吐出口18から吐出される。
【0016】
ケーシング本体12の吐出側には、吐出側のロータ軸21を回転可能に支持する軸受である玉軸受(2列のアンギュラ玉軸受)19及び吐出側軸受(ローラ軸受)22と、吐出側のロータ軸21を軸封する軸封装置である吐出側軸封装置30,40とを組み付けるための吐出側の軸封空間10が形成されている。吸込側ケーシング14には、吸込側のロータ軸21を回転可能に支持する吸込側軸受(ローラ軸受)23と、吸込側のロータ軸21を軸封する軸封装置である吸込側軸封装置50,60とを組み付けるための吸込側の軸封空間20が形成されている。
【0017】
ケーシング本体12においては、ケーシング本体12の外側(大気側)と吐出側の軸封空間10とを連通する第1大気連通孔24aが設けられている。吸込側ケーシング14においても、吸込側ケーシング14の外側(大気側)と吸込側の軸封空間20とを連通する第1大気開放連通孔25aが設けられている。また、前述した軸受19,22,23やタイミングギア28に潤滑オイルを供給するためのオイル供給孔26が、ケーシング本体12に設けられている。
【0018】
吐出側及び吸込側の軸封空間10,20のそれぞれに配設される吐出側軸封装置30,40及び吸込側軸封装置50,60は、ロータ室15に関して、実質的に軸方向に対称に構成されている。したがって、以下、図面を参照しながら、吐出側軸封装置30,40について説明する。
【0019】
図2は、第1実施形態に係る吐出側軸封装置30,40を示す部分断面図である。
【0020】
吐出側の軸封空間10において、吐出側軸受22側からロータ室15側に向けて順に、吐出側軸受22と、オイルに対してロータ軸21をシールする吐出側軸封装置30と、圧縮ガスに対してロータ軸21をシールする吐出側軸封装置40と、が配設されている。吐出側の軸封空間10に挿入された吐出側軸受22におけるロータ室15と反対側の端部が、ストッパ29によって規制されている。なお、吐出側軸封装置30,40は、後述する嵌合構造によって連結されて一体化された軸封装置を構成している。
【0021】
吐出側軸封装置30は、吐出側軸受22の側に配置されており、例えば、その内面にオイルシール部としてラビリンス32が形成された非接触のオイルシール31である。なお、ラビリンス32についての図示は省略している。オイルシール31は、ラビリンス32のような溝加工が施された内面を有するため、切削のしやすい金属材料からできている。オイルシール31のロータ室15側の端部36には、ロータ室15側に向けて突出する円筒状の外周面を有する嵌合凸端部33が形成されている。後述するように、嵌合凸端部33は、パッキンケース41の嵌合凹端部44に嵌合するように構成されている。オイルシール31の端部36におけるロータ室15側の側面には、ロータ軸21に対して垂直に延在するシール面37が形成されている。好ましくは、オイルシール31の端部36におけるロータ軸21側には、円筒状の空間が形成されており、この円筒状の空間におけるロータ室15側の側面にシール面37が形成される。後述のガスシール収容空間48の一部をオイルシール31側に設けることで、軸封装置の長さを短縮できるので、シール面37は、オイルシール31の円筒状の空間におけるロータ室15側の側面に形成されていることが望ましい。
【0022】
吐出側軸封装置40は、吐出側軸封装置30よりもロータ室15の側に配置された第1ガスシール40Aであり、第1ガスシール40Aは、パッキンケース41と、シールリング42と、弾性体43と、から構成されている。弾性体43は、ウェーブスプリング、ウェーブワッシャ又は圧縮コイルスプリングといった、シールリング42をシール面27に押し付けて支持する弾性力を使用時に発生する金属製の部材である。とりわけ、薄い鋼板を環状に且つ波状に加工したウェーブスプリングまたはウェーブワッシャが、高さ(厚さ)を小さくでき、設置スペースを小さくできる点で好ましい。パッキンケース41は、例えばステンレス鋼のような硬質材料からできている。好ましくは、パッキンケース41は、オイルシール31よりも硬質な材料からできている。パッキンケース41の吐出側軸受22側の端部には、オイルシール31の円筒状の外周面を有する嵌合凸端部33に嵌合するように構成された円筒状の内周面を有する嵌合凹端部44が形成されている。したがって、オイルシール31及び第1ガスシール40Aは、嵌合凸端部33及び嵌合凹端部44からなる嵌合構造によって連結され、吐出側軸封装置30,40が一体化されている。
【0023】
図2に示した嵌合構造では、相対的に軟質材料からなる嵌合凸端部33の嵌合接触面(円筒状の外周面)が径方向外側を向いており、相対的に硬質材料からなる嵌合凹端部44の嵌合接触面(円筒状の内周面)が径方向内側を向いている。したがって、嵌合による組み付け過程において軟質のオイルシール31が硬質のパッキンケース41で削られる場合であっても、第1ガスシール40A内に異物(削りカス)が混入することを防止することができる。
【0024】
これに対して、オイルシール31が嵌合凹端部を有するとともにパッキンケース41が嵌合凸端部を有するように上記嵌合構造を逆にした場合、パッキンケース41に対するオイルシール31の嵌合接触面(円筒状の内周面)が径方向内側を向くように位置する。そして、嵌合過程において相対的に軟質のオイルシール31が相対的に硬質のパッキンケース41で削られる場合には、第1ガスシール40A内に異物が混入してしまう恐れがある。なお、加工性や異物混入防止の観点から、
図2に示した嵌合構造が好ましいが、
図2の嵌合構造と逆の嵌合構造にしてもよい。また、オイルシール31及びパッキンケース41が同じ材質(例えば、ステンレス鋼)からなる構成にしてもよい。
【0025】
嵌合凹端部44及び嵌合凸端部33からなる嵌合構造は、嵌合凹端部44の円筒状の内周面の寸法(内径)よりも嵌合凸端部33の円筒状の外周面の寸法(外径)を大きくして締め代を与えて圧入や焼きばめや冷やしばめによって強固に固定される締まりばめに加えて、僅かな締め代を与えて比較的容易に分解ができる中間ばめであってもよい。いずれの場合であっても、嵌合凹端部44と嵌合凸端部33との隙間が、非常に小さくて実質的には無いように構成されているので、当該隙間からの圧縮ガスの漏洩が防止される。
【0026】
パッキンケース41のロータ室15側の端部には、径方向内側に突出した突出部49が形成されている。突出部49における吐出側軸受22の側の側面には、ロータ軸21の軸線方向に対して垂直に延在する支持面49aが形成されている。オイルシール31の端部36とパッキンケース41の突出部49との間には、ガスシール収容空間48が形成されている。言い換えると、パッキンケース41の軸受側の端部(嵌合凹端部44)とオイルシール31のロータ室15側の端部(嵌合凸端部33)とが嵌合固定されることによって、ロータ軸21の外周面に面した円筒状のガスシール収容空間48が形成されている。ガスシール収容空間48は、軸線方向についての両端が、オイルシール31のシール面37と、パッキンケース41の支持面49aと、で画定されている。シールリング42及びウェーブスプリング43が、シール面37と支持面49aとの間で挟持されている。
【0027】
シールリング42は、その内径がロータ軸21の外径よりも僅かに大きいように寸法構成されていて、例えば、ロータ軸21と同じ材質(例えばステンレス鋼)を母材にして、母材の表面に摩擦係数の小さい皮膜をコーティングしたものを用いることができる。また、軸方向に圧縮されたウェーブスプリング43は、一端がシールリング42に当接し、他端が支持面49aに当接しており、その弾性力によって、シールリング42をシール面37に押圧している。シールリング42のシール面47は、ウェーブスプリング43によって、端部36のシール面37に圧接されている。したがって、シールリング42は、ガスシール収容空間48内において、ウェーブスプリング43の弾性力によって、オイルシール31の端部36(シール面37)に向けて押圧されているとともに弾性的に支持されている。
【0028】
上記構成によれば、シールリング42は、シール面37に沿って径方向に移動することができる。それにより、仮に、ロータ軸21が撓むことによって、シールリング42及びロータ軸21の間で偏芯が生じたとしても、シールリング42がロータ軸21に追従して径方向に移動する。このような構成によって、シールリング42及びロータ軸21の摩耗や破損を防止し、シールリング42とロータ軸21との隙間が大きくなることを防止して軸封性能を維持することができる。
【0029】
吐出側軸封装置40のシールリング構造では、オイルシール31のシール面37に密着したシールリング42が、ロータ軸21の外周面に対して微小な隙間を持って配置されている。当該シールリング構造によれば、シールリング42とロータ軸21との僅かな隙間を通過しようとする圧縮ガスに圧力損失を生じさせることによって、圧縮ガスの漏洩を抑制する軸封性能を発揮することができる。
【0030】
一体化された吐出側軸封装置30,40が吐出側の軸封空間10に対して容易に着脱自在に組み付けられるように、ケーシング本体12(ケーシング)と吐出側軸封装置30,40との間には、すき間ばめ(JIS B 0401)よりも大きめのクリアランスが設けられている。クリアランスを設けるとガスシール性が犠牲になるため、オイルシール31とケーシング本体12(ケーシング)との間及びパッキンケース41とケーシング本体12(ケーシング)との間には、それぞれ、Oリング35,46が配設されている。当然のことながら、Oリング35,46によるシール機能を発揮し得る範囲で、クリアランスの寸法が設定されている。好ましくは、Oリング35,46は、それぞれ、オイルシール31の外周面に周方向に沿って形成された凹部(環状の溝)34と、パッキンケース41の外周面に周方向に沿って形成された凹部(環状の溝)45と、に分かれて配設されている。オイルシール30のOリング35とパッキンケース41のOリング46とによって、ケーシング本体12と吐出側軸封装置30,40との間での圧縮ガスの漏洩等のガスの無用な流れをそれぞれ防止することができる。
【0031】
ケーシング本体12(ケーシング)には、Oリング46の配設された位置よりも軸受22側で、ケーシングを貫通するように、軸封空間10とケーシングの外側(大気側)とを連通する第1大気連通孔24aが少なくとも1つ形成されている。オイルシール30(吐出側の軸封装置)には、それを貫通するようにオイルシール大気連通孔31aが複数形成されている。複数のオイルシール大気連通孔31aは、その孔径よりも幅の広いオイルシール30の外周に設けられた環状の溝を介して、第1大気連通孔24aに連通している。また、複数のオイルシール大気連通孔31aは、オイルシール30の内周側において、軸封空間10におけるガスシール収容空間48とオイルシール30に設けられたラビリンス32(オイルシール部)とを接続する位置に連通するように形成される。このように、第1大気連通孔24aとオイルシール大気連通孔31aとその両者を接続する環状の溝とによって、第1大気開放通路24が構成されている。なお、第1大気連通孔24aの開口径が大きいほど、第1大気連通孔24aの形成や加工が容易になるとともに圧損を小さくすることができるので、オイルシール大気連通孔31aの位置する軸封空間10の圧力を大気圧に近づけることができる。したがって、Oリング35とOリング46との間に形成される軸方向スペースにおいては、第1大気連通孔24aの開口径をできるだけ大きく形成することが好ましい。
【0032】
また、ロータ軸21には、オイル戻し溝21aが、ラビリンス32(オイルシール部)の下流側(オイルシール大気連通孔31a側)となる位置に形成されている。オイル戻し溝21aは、ロータ室15の側に向けてテーパ状に縮径している。当該オイル戻し溝21aによれば、吐出側軸受22の潤滑オイルがロータ軸21を伝ってオイル戻し溝21aに漏出したとしても、当該潤滑オイルに遠心力が作用することによって、上流側に押し戻すことができる。
【0033】
ケーシング本体12の外側と、吐出側軸封装置(オイルシール)30に対応した軸封空間10と、を連通する第1大気開放通路24によって、吐出側軸封装置(オイルシール)30に対応した軸封空間10が大気開放されている。そのため、アンロード運転時において、ロータ室15内が負圧になって吐出側軸受22におけるオイルをロータ室15内に吸引しようとする力が働く場合でも、大気開放された第1大気開放通路24の介在によって、吐出側軸受22におけるオイルがロータ室15内に吸引されることを防止することができる。
【0034】
嵌合凹端部44と嵌合凸端部33との径方向の隙間が、シールリング42とロータ軸21との隙間やパッキンケース41とケーシング本体12とのクリアランスよりも非常に小さく、実質的には無いように構成されている。すなわち、締まりばめによって、嵌合凹端部44と嵌合凸端部33との隙間が、実質的にロータ軸21の撓みによる影響を受けないように構成されているので、当該隙間からの圧縮ガスの漏洩を防止することができる。また、パッキンケース41とケーシング本体12との間でのクリアランスは、Oリング46でシールされているので、当該隙間からの圧縮ガスの漏洩を防止することができる。また、パッキンケース41とオイルシール30とが締まりばめによって一体化されることで、ガスシール収容空間48が形成されている。これにより、オイルシール31のシール面37と、それに向けて押圧されているシールリング42のシール面47との密着状態がロータ軸21の撓みに影響されることなく適切に維持される。したがって、吐出側軸封装置40全体での圧縮ガスの漏洩を大幅に低減することができる。
【0035】
次に、この発明の第2実施形態について、
図3を参照しながら詳細に説明する。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態での構成要素と同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0036】
吐出側軸封装置40が、第1実施形態で説明した第1ガスシール40Aに加えて、第2ガスシール51を備えている。第2ガスシール51は、第1ガスシール40Aに対してロータ室15の側に配置されている。第2ガスシール51は、第1実施形態で説明したパッキンケース41と同様な部材を備えておらず、後述するようにケーシング本体12(ケーシング)内にシールリング52と弾性体53とを備えている。弾性体53は、第1実施形態で説明した弾性体43と同じ機能を有する同等の部材である。なお、オイルシール31と第1ガスシール40Aとは、第1実施形態で説明した嵌合構造によって連結されて一体化されている。他方で、第2ガスシール51は、ロータ軸21の撓みの影響を受けないケーシング本体(ケーシング)12内にシールリング52と弾性体53とを備えていると共に、吐出側軸封装置40の中でロータ軸21の撓みの影響を最も受け難いロータ室15に最も近い位置に設けられている。そのため、第1ガスシール40Aと第2ガスシール51との嵌合構造による一体化は必要ない。
【0037】
ケーシング本体12(ケーシング)における軸封空間10のロータ室15側の端部には、ガスシール40Aよりも小さな内径寸法を有する円筒状の空間が配設されている。この円筒状の空間のロータ室15側に形成されているケーシング本体12(ケーシング)の側面には、ロータ軸21の軸線方向に対して垂直に延在する支持面12aが形成されている。また、この円筒状の空間の吐出側軸受22側には、パッキンケース41の突出部49のシール面49bが配設されている。つまり、ガスシール収容空間58は、軸線方向についての両端が、ケーシング本体12の支持面12aと、パッキンケース41の突出部49のシール面49bと、で画定されている。シールリング52及びウェーブスプリング53(弾性体)は、シール面49bと支持面12aとの間で挟持されている。
【0038】
シールリング52及びウェーブスプリング53(弾性体)は、例えば、第1実施形態で説明したシールリング42及びウェーブスプリング43(弾性体)と同じものを使用して、部品の共通化によって低コスト化を図ることができる。シールリング52は、ガスシール収容空間58内において、ウェーブスプリング53の弾性力によって、パッキンケース41の突出部49(シール面49)に向けて押圧されているとともに弾性的に支持されている。
【0039】
シールリング52は、シール面49bに沿って径方向に移動可能であり、ロータ軸21が撓む場合であっても、シールリング52がロータ軸21に追従して径方向に移動する。したがって、第1実施形態で説明した第1ガスシール40Aに加えて第2ガスシール51を備えることにより、吐出側軸封装置40の軸封性能を向上させることができる。
【0040】
この発明の第3実施形態について、
図4を参照しながら詳細に説明する。なお、この第3実施形態において、上記第2実施形態での構成要素と同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0041】
吐出側軸封装置40が、第1ガスシール40A及び第2ガスシール51に加えて、第3ガスシール40Bを備えている。第3ガスシール40Bは、吐出側の軸封空間10の軸方向において、第1ガスシール40Aと第2ガスシール51との間で挟まれるように配設される。第3ガスシール40Bは、第1実施形態で説明した第1ガスシール40Aと同様の部材で構成されていて、パッキンケース61とシールリング62と弾性体63とを備えている。シールリング62及び弾性体63は、例えば、シールリング42及び弾性体43と同じものを使用して、部品の共通化によって低コスト化を図ることができる。
【0042】
パッキンケース61のロータ室15側の端部には、径方向内側に突出した突出部69が形成されている。突出部69における吐出側軸受22の側の側面には、ロータ軸21の軸線方向に対して垂直に延在する支持面69aが形成されている。パッキンケース41の突出部49とパッキンケース61の突出部69との間には、ガスシール収容空間68が形成されている。言い換えると、パッキンケース61の軸受側の端部(嵌合凹端部64)と、パッキンケース41のロータ室15側の端部(嵌合凸端部41a)とが嵌合固定されることによって、ロータ軸21の外周面に面した円筒状のガスシール収容空間68が形成されている。ガスシール収容空間68は、軸線方向についての両端が、パッキンケース61の突出部69の支持面69aと、パッキンケース41の突出部49のシール面49bと、で画定されている。シールリング62及びウェーブスプリング63(弾性体)が、シール面49bと、パッキンケース61の支持面69aとの間で挟持されている。
【0043】
シールリング62は、ガスシール収容空間68内において、ウェーブスプリング63の弾性力によって、パッキンケース61の突出部49(シール面49b)に向けて押圧されているとともに弾性的に支持されているので、シールリング62は、シール面49bに沿って径方向に移動可能である。
【0044】
パッキンケース61のロータ室15の側の側面には、ロータ軸21の軸線方向に対して垂直に延在するシール面69bが形成されている。ガスシール収容空間58は、軸線方向についての両端が、パッキンケース61の突出部69のシール面69bと、ケーシング本体12(ケーシング)の支持面12aと、で画定されている。
【0045】
シールリング52のシール面57が、ウェーブスプリング53によって、パッキンケース61の突出部69のシール面69bに押圧されているので、シール面57とシール面69bとの間がシールされている。
【0046】
第3ガスシール40Bと第1ガスシール40Aとは、第1実施形態で説明したのと同様の嵌合構造によって連結されて一体化されている。すなわち、第1ガスシール40Aのパッキンケース41でのロータ室15側の端部には、ロータ室15側に向けて突出する嵌合凸端部41aが形成されている。他方、パッキンケース61の吐出側軸受22側の端部には、パッキンケース41の嵌合凸端部41aに嵌合するように構成された嵌合凹端部64が形成されている。例えば、第3ガスシール40Bのパッキンケース61が、第1ガスシール40Aのパッキンケース41と同じ材質(例えば、ステンレス鋼)から構成されている。嵌合凸端部41a及び嵌合凹端部64の嵌合構造は、締まりばめ、又は、僅かな締め代を与えて比較的容易に分解ができる中間ばめである。
【0047】
当該嵌合構造によれば、嵌合凸端部41aと嵌合凹端部64との隙間が、非常に小さくて実質的には無いように構成されているので、当該隙間からの圧縮ガスの漏洩が防止される。
図4に示した嵌合構造でも、嵌合凸端部41aの嵌合接触面が径方向外側を向いており、嵌合凹端部64の嵌合接触面が径方向内側を向いているので、嵌合過程における第3ガスシール40B内部への異物混入を防止することができる。
【0048】
図4に示した第3実施形態では、オイルシール31と第1ガスシール40Aと第3ガスシール40Bとが、上述した嵌合構造によって連結されて一体化されているので、吐出側の軸封空間10への軸封装置30,40の組み付け性が良好である。
【0049】
シールリング62は、シール面49bに沿って径方向に移動可能であるため、ロータ軸21が撓む場合であっても、シールリング62もロータ軸21に追従して径方向に移動する。これにより、パッキンケース41のシール面49bと、それに向けて押圧されているシールリング62のシール面67との密着状態が、ロータ軸21の撓みに影響されることなく適切に維持される。したがって、第1ガスシール40A及び第2ガスシール51に加えて第3ガスシール40Bを備えることにより、吐出側軸封装置40の軸封性能をさらに向上させることができる。そして、ロータ軸21が撓む場合であっても、吐出側軸封装置40の軸封性能を維持することができる。
【0050】
第3の実施形態と同様に、ケーシング本体12(ケーシング)と吐出側軸封装置40との間には、すき間ばめ(JIS B 0401)よりも大きめのクリアランスが設けられている。また、パッキンケース61とケーシング本体12(ケーシング)との間には、Oリング66が配設されている。Oリング66によるシール機能を発揮し得る範囲で、クリアランスの寸法が設定されている。Oリング66は、パッキンケース61の外周面に周方向に沿って形成された凹部(環状の溝)65に配設されている。パッキンケース41、61のOリング46、66によって、ケーシング本体12と吐出側軸封装置40との間での圧縮ガスの漏洩等のガスの無用な流れを防止することができる。
【0051】
この発明の第4実施形態について、
図5を参照しながら詳細に説明する。なお、この第4実施形態において、上記第3実施形態での構成要素と同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0052】
図5に示した吐出側軸封装置40は、第1ガスシール40Aと第3ガスシール40Bとが嵌合構造によって一体化されていない点で、第3実施形態と相違している。
【0053】
第1ガスシール40Aと第3ガスシール40Bとの間では、嵌合構造を有しないため、パッキンケース41のロータ室15側の端部とパッキンケース61の吐出側軸受22の側の端部とが接する部分は、いずれもフラットな形状になっている。
【0054】
第4実施形態の吐出側軸封装置40は、上述した嵌合凸端部41a及び嵌合凹端部64を用いた嵌合構造によるシールを備えていない。しかしながら、第4実施形態の吐出側軸封装置40は、上記第2実施形態の吐出側軸封装置40に更に第3ガスシール40Bを付加したものである。したがって、第4実施形態の吐出側軸封装置40は、上記第2実施形態と同等以上で上記第3実施形態と同等以下の軸封性能を有している。
【0055】
この発明の第5実施形態について、
図6を参照しながら詳細に説明する。なお、この第5実施形態において、上記第3実施形態での構成要素と同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0056】
図6に示した吐出側軸封装置40は、上記第3実施形態との比較で、第1ガスシール40Aのパッキンケース41がパッキンケース大気連通孔45aを備えており、ケーシング本体12が第2大気連通孔26aを備えている。
【0057】
ケーシング本体12(ケーシング)には、Oリング66の配設された位置よりも第1大気開放通路24側で、ケーシング本体12(ケーシング)を貫通するように、軸封空間10とケーシング本体12(ケーシング)の外側(大気側)とを連通する第2大気連通孔26aが、少なくとも1つ形成されている。パッキンケース41には、それを貫通するようにパッキンケース大気連通孔45aが複数形成されている。複数のパッキンケース大気連通孔45aは、その孔径よりも幅の広いパッキンケース41の外周に設けられた環状の溝を介して、第2大気連通孔26aに連通している。また、複数のパッキンケース大気連通孔45aは、パッキンケース41の内周側において、軸封空間10に接続されたガスシール収容空間48に連通するように形成されている。このように、第2大気連通孔26aとパッキンケース大気連通孔45aとその両者を接続する環状の溝とによって、第2大気開放通路26が構成されている。
【0058】
吐出側軸封装置30が、吐出側軸封装置(オイルシール)30に対応した軸封空間10とケーシング本体12(ケーシング)の外側とを連通する第1大気開放通路24を備えることに加えて、吐出側軸封装置40が、吐出側軸封装置(ガスシール)40に対応した軸封空間10(ガスシール収容空間48)とケーシング本体12(ケーシング)の外側とを連通する第2大気開放通路26を備えている。それによって、吐出側軸封装置(オイルシール)30に対応した軸封空間10と、吐出側軸封装置(ガスシール)40に対応した軸封空間10とが、それぞれ大気開放されている。そのため、長時間のアンロード運転時において、ロータ室15内が負圧になって吐出側軸受22におけるオイルが第1大気連通孔24aに達したとしても、第1大気開放通路24と略同圧で大気開放された第2大気連通孔26aと、シールリング42との介在によって、オイルがロータ室15内に吸引されることを防止することができる。
【0059】
この発明の第6実施形態について、
図7を参照しながら詳細に説明する。なお、この第6実施形態において、上記第3実施形態での構成要素と同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0060】
図7に示した吐出側軸封装置40は、上記第3実施形態との比較で、第2ガスシール51が省略されていて、第1ガスシール40Aと第3ガスシール40Bとによって構成されている。
【0061】
第6実施形態の吐出側軸封装置40は、第1ガスシール40Aと第3ガスシール40Bとを備えることによって、上記第2実施形態と同等以上で上記第3実施形態と同等以下の軸封性能を有している。吐出側の軸封空間10において、第2ガスシール51を配設するための空間及び当該空間の加工が不要になる。それとともに、嵌合構造によって連結・一体化されたオイルシール31と第1ガスシール40Aと第3ガスシール40Bとが、吐出側の軸封空間10に組み付けられるので、軸封装置30,40の組み付け性がさらに良好である。
【0062】
なお、上記各実施形態は、オイルフリースクリュ圧縮機1の吐出側軸封装置30,40について説明したが、吸込側軸封装置50,60についても適用することができる。軸封装置におけるガスシール構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、ガスシールの個数は、適宜に変更することができる。ガスシールとしては、シールリング42,52,62の代わりに、ラビリンスシール等の公知のシール部材を用いることもできる。吐出側軸封装置30のオイルシール31として、所謂ラビリンスシールを例示したが、スクリュビスコシール等の公知のシール部材を用いることができる。
【0063】
なお、上記各実施形態では、オイルシール31及び各パッキンケース41,61は、それぞれ、単一の部材で構成されているが、組付け時に一体的な状態となるものであれば、それぞれ、軸方向に分割された2以上の部材で構成されていてもよい。また、非接触のオイルシール31は、ラビリンスシールやスクリュビスコシールにおけるオイルシール部32が、それを保持する本体部と別部材として構成されていても良い。また、ロータ軸21の表面は、母材そのものであっても、母材表面に各種皮膜等が設けられていてもよく、また、ロータ軸21の外周面側に固定されたスリーブで形成されていてもよい。
【0064】
以上の説明から明らかなように、この発明に係るオイルフリースクリュ圧縮機1では、互いに噛み合う雄雌一対のスクリュロータ16を圧縮機1のケーシング12のロータ室15内に収容し、ロータ軸21を介してスクリュロータ16を軸受22,23で支持し、ロータ室15と軸受23との間に形成されるケーシング12の軸封空間10内に配設され、ロータ軸21をシールする軸封装置30,40を有し、軸封装置30,40は、軸受22側に配置されるオイルシール31と、ロータ室15側に配置されるパッキンケース41と、ガスをシールするためのガスシール42と、を備え、パッキンケース41の軸受22側の端部44とオイルシール31のロータ室15側の端部33とが締まりばめによって嵌合固定されることによって形成されたガスシール収容空間48に、ガスシール42が収容されている。
【0065】
上記構成によれば、軸封装置30,40をそれぞれ構成するパッキンケース41及びオイルシール31が締まりばめによって嵌合固定されて一体化されているので、軸封装置30,40の組み付け性が良好であり、締まりばめによる隙間が非常に小さいので、嵌合固定部分からの圧縮ガスの漏洩を低減することができる。
【0066】
この発明は、上記特徴に加えて次のような特徴を備えることができる。
【0067】
すなわち、前記オイルシールが前記パッキンケースよりも軟質の材料からできており、前記オイルシールの前記端部が嵌合凸端部であり、前記パッキンケースの前記端部が嵌合凹端部である。当該構成によれば、複雑な加工を要するオイルシールの加工性が良好であり、軟質材料からできているオイルシールの嵌合凸端部の嵌合接触面が径方向外側を向いているので、嵌合過程でオイルシールの削りカスが発生した場合に、その削りカスがガスシール収容空間内に混入することを防止することができる。
【0068】
前記ガスシールが、ロータ軸の軸心周りに設けられたシールリングと、前記シールリングを弾性力によって支持する弾性体と、を備える。当該構成によれば、ロータ軸が撓んでガスシールとロータ軸との間で偏芯が生じても、シールリングがロータ軸に追従して径方向に移動するので、シールリングとロータ軸との隙間が大きくなることを防止して軸封性能を維持することができる。
【0069】
前記軸封装置が、前記パッキンケースの外周面に形成された溝に配設されたパッキンケース側のOリングを備える。当該構成によれば、パッキンケースとケーシング本体との間でのクリアランスに起因した圧縮ガスの漏洩を防止することができる。
【0070】
オイルフリースクリュ圧縮機が、前記ケーシングを貫通するように形成され、前記パッキンケース側のOリングの配設された位置よりも前記軸受側で前記軸封空間と前記ケーシングの外側とを連通する第1大気連通孔と、前記軸封装置を貫通するように形成され、前記第1大気連通孔に連通するとともに前記軸封空間における前記ガスシール収容空間と前記オイルシールに設けられたオイルシール部とを接続する位置に連通するオイルシール大気連通孔と、を備えていてもよい。当該構成によれば、アンロード運転時において、第1大気開放通路によって、吐出側軸封装置(オイルシール)に対応した軸封空間が大気開放されているので、ロータ室内が負圧になって吐出側軸受におけるオイルをロータ室内に吸引しようとする力が働く場合でも、吐出側軸受からのオイルがロータ室内に吸引されることを防止することができる。
【0071】
オイルフリースクリュ圧縮機が、前記ケーシングを貫通するように形成され、前記パッキンケース側のOリングの配設された位置よりも前記軸受側で前記軸封空間と前記ケーシングの外側とを連通する第2大気連通孔と、前記パッキンケースを貫通するように形成され、前記第2大気連通孔に連通するとともに前記ガスシール収容空間に連通したパッキンケース大気連通孔と、をさらに備えていてもよい。当該構成によれば、吐出側軸封装置(オイルシール)に対応した軸封空間と、吐出側軸封装置(ガスシール)に対応した軸封空間とがそれぞれ大気開放されているので、長時間のアンロード運転時において、ロータ室内が負圧になって吐出側軸受からのオイルが第1大気連通孔に達したとしても、第1大気開放通路と略同圧で大気開放された第2大気連通孔と、シールリングとの介在によって、吐出側軸受におけるオイルがロータ室内に吸引されることを防止することができる。
【0072】
前記軸封装置が、前記オイルシール大気連通孔よりも軸受側における前記オイルシールの外周面に形成された溝に配設されたオイルシール側のOリングを備える。当該構成によれば、オイルシールとケーシングとの間でのクリアランスに起因したオイルの漏洩を防止することができる。
【0073】
前記軸封装置が、前記ガスシール収容空間に収容された前記ガスシールよりもさらに前記ロータ室の側に、更なるガスシールを備える。当該構成によれば、より多くのガスシールを備えることによって、圧縮ガスの漏洩をさらに低減することができる。