特許第6190301号(P6190301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190301消費電力量から推定された生活行動を比較評価可能な装置、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190301
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】消費電力量から推定された生活行動を比較評価可能な装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20120101AFI20170821BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20170821BHJP
   G08B 21/04 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   G06Q50/22
   G06Q50/06
   !G08B21/04
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-66775(P2014-66775)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-191325(P2015-191325A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141313
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 富彦
(72)【発明者】
【氏名】平田 紀史
(72)【発明者】
【氏名】多屋 優人
【審査官】 大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−041322(JP,A)
【文献】 特開2002−189779(JP,A)
【文献】 特開2013−196631(JP,A)
【文献】 特開2010−267207(JP,A)
【文献】 特開2008−112267(JP,A)
【文献】 特開2004−086864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G08B 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定ユーザの生活行動を他のユーザの生活行動と比較可能な生活行動比較装置であって、
各ユーザの消費電力量データに基づいて、発生した生活行動と当該生活行動の発生した発生時刻又は時間帯とを推定する生活行動推定手段と、
当該特定ユーザの属性に係るユーザ情報に基づいて、他のユーザのうちで、当該ユーザ情報に関して当該特定ユーザと類似する類似ユーザを決定する類似ユーザ決定手段と、
当該特定ユーザにおける生活行動の発生時刻又は時間帯情報と、当該類似ユーザにおける当該生活行動の発生時刻又は時間帯情報とを比較した結果に基づいて比較ラベルを生成し、当該特定ユーザの当該生活行動に当該比較ラベルを付与した生活行動比較情報を生成する生活行動比較手段と
を有することを特徴とする生活行動比較装置。
【請求項2】
前記生活行動比較手段は、当該特定ユーザにおける比較に係る生活行動の発生時刻又は時間帯が、当該類似ユーザにおける当該比較に係る生活行動の発生時刻又は時間帯からみて所定閾値時間以上早い場合及び遅い場合に、それぞれ早めの発生及び遅めの発生を意味する比較ラベルを生成し、当該比較に係る生活行動に当該比較ラベルを付与した生活行動比較情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の生活行動比較装置。
【請求項3】
各ユーザについて、単位期間毎に推定された当該生活行動及び当該発生時刻若しくは時間帯に基づいて、生活行動に係る行動属性に対して属性値を付与した行動属性情報を生成する行動属性情報生成手段を更に有し、
前記類似ユーザ決定手段は、当該特定ユーザの当該行動属性情報を含むユーザ情報に基づいて、当該類似ユーザを決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生活行動比較装置。
【請求項4】
前記行動属性情報生成手段は、当該行動属性として生活行動種別を用い、単位期間毎に推定された当該生活行動種別の発生時刻若しくは時間帯に基づいて、当該生活行動種別の発生時刻若しくは時間帯の代表値を算出し、当該代表値に基づいて当該属性値を決定し、
前記類似ユーザ決定手段は、他のユーザのうちで、当該特定ユーザの行動属性と同一の生活行動種別を行動属性とするユーザであって、当該特定ユーザの当該行動属性の属性値である発生時刻若しくは時間帯からみて所定時間範囲内にある発生時刻若しくは時間帯を当該行動属性の属性値とするユーザを、当該類似ユーザに決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の生活行動比較装置。
【請求項5】
前記行動属性情報生成手段は、単位期間毎に推定された当該生活行動種別及び当該発生時刻若しくは時間帯について、当該発生時刻又は時間帯によるクラスタリングを行い、要素数が最大となるクラスタでの当該発生時刻又は時間帯の代表値に基づいて、当該行動属性としての当該生活行動種別に付与する属性値を決定することを特徴とする請求項4に記載の生活行動比較装置。
【請求項6】
各ユーザについて、当該ユーザの生活に係る静的な属性である静的属性情報を取得し保存する静的属性管理手段を更に有し、
前記類似ユーザ決定手段は、当該特定ユーザの当該静的属性情報を含むユーザ情報に基づいて、当該類似ユーザを決定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の生活行動比較装置。
【請求項7】
前記生活行動推定手段は、推定に使用する消費電力量データの時間帯に応じて、発生したか否かを推定する生活行動を予め設定し、当該時間帯に設定された生活行動に対応する判定閾値と当該消費電力量データとを比較して当該生活行動の発生した発生時刻又は時間帯を推定することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の生活行動比較装置。
【請求項8】
特定ユーザの生活行動を他のユーザの生活行動と比較可能な装置に搭載されたコンピュータを機能させる生活行動比較プログラムであって、
各ユーザの消費電力量データに基づいて、生活行動と当該生活行動の発生した発生時刻又は時間帯とを推定する生活行動推定手段と、
当該特定ユーザの属性に係るユーザ情報に基づいて、他のユーザのうちで、当該ユーザ情報に関して当該特定ユーザと類似する類似ユーザを決定する類似ユーザ決定手段と、
当該特定ユーザにおける生活行動の発生時刻又は時間帯情報と、当該類似ユーザにおける当該生活行動の発生時刻又は時間帯情報とを比較した結果に基づいて比較ラベルを生成し、当該特定ユーザの当該生活行動に当該比較ラベルを付与した生活行動比較情報を生成する生活行動比較手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする生活行動比較プログラム。
【請求項9】
特定ユーザの生活行動を他のユーザの生活行動と比較可能な装置に搭載されたコンピュータによる生活行動比較方法であって、
各ユーザの消費電力量データに基づいて、生活行動と当該生活行動の発生した発生時刻又は時間帯とを推定する第1のステップと、
当該特定ユーザの属性に係るユーザ情報に基づいて、他のユーザのうちで、当該ユーザ情報に関して当該特定ユーザと類似する類似ユーザを決定する第2のステップと、
当該特定ユーザにおける生活行動の発生時刻又は時間帯情報と、当該類似ユーザにおける当該生活行動の発生時刻又は時間帯情報とを比較した結果に基づいて比較ラベルを生成し、当該特定ユーザの当該生活行動に当該比較ラベルを付与した生活行動比較情報を生成する第3のステップと
を有することを特徴とする生活行動比較方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザによって消費された電力量を解析して、ユーザに関する所定の情報を推定するユーザ情報推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの生活状況、例えば在宅状況や起床・就寝時間に関する情報等に応じて、生活に関連する支援やアドバイスを実施するシステムが注目されている。ここで、ユーザの生活状況を把握するための1つの方法として、ユーザによって消費された電力量を利用することが挙げられる。この消費電力量を利用する利点は、ユーザの家屋等の生活空間に入ることなく、非侵入的な方法で生活状況の推定ができることである。
【0003】
このようにユーザによる過去の消費電力量のデータを利用し、生活に係るサービスを提供する技術として、特許文献1には、電力データに基づいた独居者見守りシステムが開示されている。このシステムでは、例えば電力値情報によって家電機器の使用状況を判定し、危険度を含む安否情報を生成している。特に、世帯間での生活リズムの違いを考慮して取得した情報の比較を行い、時間帯及び居住者によって適用するルールを変えることで、異常検知をより正確に行う工夫をしている。
【0004】
また、特許文献2には、電力量の計測値及び閾値から居住者の活動状態の有無の判定を行う活動状態判定システムが開示されている。電力量に係る閾値によって判定を行うが、この閾値として、過去の電力量データの標準偏差を利用している。
【0005】
さらに、特許文献3には、過去1年以上の期間にわたる月毎のエネルギー消費量の変化に基づいて各月の用途別エネルギー消費量を推定し、用途別エネルギー消費量に基づいて省エネテーブルの中から効果的な複数の省エネ手段を選択して表示する家庭用省エネルギー支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−226780号公報
【特許文献2】特開2009−15736号公報
【特許文献3】特開2001−56804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に記載された装置・システムのような従来技術は、いずれも各世帯における過去の消費電力量データを利用して、見守りサービス、異常検知又は省エネアドバイス等を行っている。従って、例えば、生活状況の推定対象である1つの世帯が、他の一般的な世帯と比べて異なった生活行動を行う傾向にある場合に、その傾向を抽出してその傾向に沿った適切なサービスを提供することは困難である。
【0008】
即ち、上記の従来技術では、消費電力量を他の世帯との間で直接比較することはなく、その結果、生活状況について平均的な他の世帯との比較に基づいた評価を行うことができない。例えば、「世帯Aは、間取りが同じであって世帯人員の構成も同じである他の世帯と比較して、夜間の消費電力量が大きい」といった相対的な評価を生成することは困難となる。
【0009】
ここで、上記の例にある「間取り」や「世帯人員の構成」は、世帯の静的な属性である。上記の従来技術では、そもそもこのような静的属性を取り入れて生活状況を評価・判定することが困難である。例えば、特許文献1に記載の技術では、独居者との静的属性を前提とはしているが、独居者以外の静的属性を利用することは想定されていない。
【0010】
そこで、本発明は、生活者の生活行動を、当該生活者に係る消費電力量に基づいて推定し、推定した生活行動の相対的な評価を行うことができる生活行動比較装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、特定ユーザの「生活行動」を他のユーザの「生活行動」と比較可能な生活行動比較装置であって、
各ユーザの消費電力量データに基づいて、発生した「生活行動」と当該生活行動の発生した発生時刻又は時間帯とを推定する生活行動推定手段と、
特定ユーザの属性に係るユーザ情報に基づいて、他のユーザのうちで、ユーザ情報に関して特定ユーザと類似する「類似ユーザ」を決定する類似ユーザ決定手段と、
特定ユーザにおける「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報と、「類似ユーザ」における当該「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報とを比較した結果に基づいて「比較ラベル」を生成し、特定ユーザの当該「生活行動」に「比較ラベル」を付与した生活行動比較情報を生成する生活行動比較手段と
を有する生活行動比較装置が提供される。
【0012】
この本発明の生活行動比較装置によれば、生活行動比較手段は、特定ユーザにおける比較に係る「生活行動」の発生時刻又は時間帯が、「類似ユーザ」における比較に係る「生活行動」の発生時刻又は時間帯からみて所定閾値時間以上早い場合及び遅い場合に、それぞれ早めの発生及び遅めの発生を意味する「比較ラベル」を生成し、比較に係る「生活行動」に「比較ラベル」を付与した生活行動比較情報を生成することも好ましい。
【0013】
また、本発明の生活行動比較装置における一実施形態として、各ユーザについて、単位期間毎に推定された「生活行動」及び発生時刻若しくは時間帯に基づいて、「生活行動」に係る行動属性に対して属性値を付与した行動属性情報を生成する行動属性情報生成手段を更に有し、類似ユーザ決定手段は、特定ユーザの行動属性情報を含むユーザ情報に基づいて、「類似ユーザ」を決定することも好ましい。
【0014】
さらに、本発明の生活行動比較装置によれば、行動属性情報生成手段は、行動属性として「生活行動」種別を用い、単位期間毎に推定された「生活行動」種別の発生時刻若しくは時間帯に基づいて、当該「生活行動」種別の発生時刻若しくは時間帯の代表値を算出し、この代表値に基づいて属性値を決定し、
類似ユーザ決定手段は、他のユーザのうちで、特定ユーザの行動属性と同一の「生活行動」種別を行動属性とするユーザであって、特定ユーザの行動属性の属性値である発生時刻若しくは時間帯からみて所定時間範囲内にある発生時刻若しくは時間帯を行動属性の属性値とするユーザを、「類似ユーザ」に決定することも好ましい。
【0015】
また、本発明の生活行動比較装置における他の実施形態として、行動属性情報生成手段は、単位期間毎に推定された「生活行動」種別及び発生時刻若しくは時間帯について、当該発生時刻又は時間帯によるクラスタリングを行い、要素数が最大となるクラスタでの発生時刻又は時間帯の代表値に基づいて、行動属性としての「生活行動」種別に付与する属性値を決定することも好ましい。
【0016】
さらに、本発明の生活行動比較装置における更なる他の実施形態として、各ユーザについて、ユーザの生活に係る静的な属性である静的属性情報を取得し保存する静的属性管理手段を更に有し、類似ユーザ決定手段は、特定ユーザの静的属性情報を含むユーザ情報に基づいて、「類似ユーザ」を決定することも好ましい。
【0017】
また、本発明の生活行動比較装置において、生活行動推定手段は、推定に使用する消費電力量データの時間帯に応じて、発生したか否かを推定する「生活行動」を予め設定し、当該時間帯に設定された「生活行動」に対応する判定閾値と当該消費電力量データとを比較して当該「生活行動」の発生した発生時刻又は時間帯を推定することも好ましい。
【0018】
本発明によれば、また、特定ユーザの生活行動を他のユーザの生活行動と比較可能な装置に搭載されたコンピュータを機能させる生活行動比較プログラムであって、
各ユーザの消費電力量データに基づいて、「生活行動」と当該生活行動の発生した発生時刻又は時間帯とを推定する生活行動推定手段と、
特定ユーザの属性に係るユーザ情報に基づいて、他のユーザのうちで、ユーザ情報に関して特定ユーザと類似する「類似ユーザ」を決定する類似ユーザ決定手段と、
特定ユーザにおける「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報と、「類似ユーザ」における当該「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報とを比較した結果に基づいて「比較ラベル」を生成し、特定ユーザの当該「生活行動」に「比較ラベル」を付与した生活行動比較情報を生成する生活行動比較手段と
してコンピュータを機能させる生活行動比較プログラムが提供される。
【0019】
本発明によれば、さらに、特定ユーザの生活行動を他のユーザの生活行動と比較可能な装置に搭載されたコンピュータによる生活行動比較方法であって、
各ユーザの消費電力量データに基づいて、「生活行動」と当該生活行動の発生した発生時刻又は時間帯とを推定する第1のステップと、
特定ユーザの属性に係るユーザ情報に基づいて、他のユーザのうちで、ユーザ情報に関して特定ユーザと類似する「類似ユーザ」を決定する第2のステップと、
特定ユーザにおける「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報と、「類似ユーザ」における当該「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報とを比較した結果に基づいて「比較ラベル」を生成し、特定ユーザの当該「生活行動」に「比較ラベル」を付与した生活行動比較情報を生成する第3のステップと
を有する生活行動比較方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の生活行動比較装置、プログラム及び方法によれば、生活者の生活行動を、当該生活者に係る消費電力量に基づいて推定し、推定した生活行動の相対的な評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る生活行動比較システムの一実施形態における模式図である。
図2】本発明による生活行動比較装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
図3】消費電力データ蓄積部に蓄積される消費電力量データの一実施例を示すテーブルである。
図4】行動推定結果保存部に保存・管理された生活行動及びその発生時刻の推定情報の一実施例を示すテーブルである。
図5】行動属性情報保存部に保存・管理された行動属性情報の一実施例を示すテーブルである。
図6】類似ユーザを決定するための比較条件の一実施例を示すテーブルである。
図7】比較結果保存部に保存された生活行動比較情報の一実施例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る生活行動比較システムの一実施形態における模式図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態での生活行動比較システムは、例えば事業者通信網5に設置された生活行動比較装置1を含む。生活行動比較装置1は、特定ユーザの「生活行動」を他のユーザの「生活行動」と比較することができる装置である。
【0025】
具体的に、生活行動比較装置1は、生活者(電力のユーザ)の消費電力量に基づいて、各ユーザがどのような「生活行動(居住者行動)」を如何なる発生時刻又は時間帯で発生させたかを推定し、さらに、特定ユーザについて推定した「生活行動」に対し、他の類似するユーザとの比較結果に基づいて「比較ラベル」を付与した生活行動比較情報を生成する。ここで、ユーザとは、本実施形態において1つの世帯(ユーザ世帯)又は当該世帯の構成員である。また、「生活行動」としては、例えば、「起きた」(起床)、「外出した」(外出)、「帰宅した」(帰宅)、「寝た」(就寝)等が挙げられる。
【0026】
同じく図1によれば、ユーザ(1つの世帯)の消費電力量は、本実施形態においてユーザの生活区域(自宅)に設置されたホームゲートウェイ(HGW)4から事業者通信網5を介して生活行動比較装置1に送信される。ここで、消費電力量はスマートメータ3で計測され、この計測値が、例えばHEMS(Home Energy Management System)を介してHGW4に出力されてもよい。また、変更態様として、スマートメータ3がネットワークに設置された(図示されていない)MDMS(Meter data Management System)に消費電力量を送信し、生活行動比較装置1は、このMDMSから消費電力量を取得することも可能である。
【0027】
事業者通信網5は、例えば光ファイバ網若しくはADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等の固定系アクセスネットワークとすることができる。また、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)又は3G(3rd Generation)等の無線系アクセスネットワークとすることも可能である。
【0028】
スマートメータ3は、ユーザによる自宅における消費電力量を計測し、単位時間毎の消費電力量の計測値を、例えばHEMSを介してHGW4に出力する。ここで、スマートメータの代わりに、分電盤に設置されたCTセンサ、クランプメータ(架線電流計)、又はコンセントに設置されたコンセントタップ(タップ型電力計)等を使用してもよい。この場合、CTセンサやコンセントタップ等によって宅内各配電の消費電力量又は家電機器の個別の消費電力量を計測し、消費電力量の計測値をHGW4に出力することになる。
【0029】
HGW4は、例えば、宅内に設けられたホームネットワークと事業者通信網5との間の通信を中継・制御する装置である。このホームネットワークには例えば無線アクセスポイント(AP)を介してパーソナルコンピュータ(PC)が接続されている。HGW4は、さらに、スマートメータ3から取得した単位時間毎の消費電力量の計測値を、事業者通信網5を介して生活行動比較装置1宛てに送信する。
【0030】
静的属性情報管理装置2は、例えば事業者通信網5内に設置されており、各ユーザ(世帯)から、例えばPCを用いたアンケート調査に対する回答の形で、ユーザの生活に係る静的な属性である「静的属性情報」の申告を受信し、この「静的属性情報」をユーザ(世帯)IDと対応付けて記憶・管理する。ユーザは、「静的属性情報」として、例えば、(a)世帯人員の構成(構成員の人数や年齢・性別)、(b)世帯の住所(地域)、(c)生活空間の間取り、(d)契約アンペア数、(e)年収、といった自らの情報をPCに入力し、HGW4から事業者通信網5を介して静的属性情報管理装置2に送信してもよい。生活行動比較装置1は、この静的属性情報管理装置2から、ユーザIDに紐付けられた「静的属性情報」を取得する。尚、変更態様として、生活行動比較装置1は、アンケートの実施や「静的属性情報」及びユーザIDの取得を含む静的属性情報管理装置2の機能を、自ら備えていてもよい。
【0031】
生活行動比較装置1は、ユーザの生活区域(自宅)内における消費電力量の計測値を受信し、当該計測値から消費電力量データを生成して蓄積する。尚、変更態様として、自宅内に設置されたサーバやPCが、消費電力量の計測値から消費電力量データを生成し蓄積することも可能である。
【0032】
次いで、生活行動比較装置1は、生成した消費電力量データに基づいて、
(a)各ユーザ(世帯)の消費電力量データに基づいて、発生した「生活行動」と当該生活行動の発生した発生時刻又は時間帯とを推定し、
(b)特定ユーザ(世帯)の属性に係るユーザ情報に基づいて、他のユーザ(世帯)のうちで、ユーザ情報に関して特定ユーザと類似する「類似ユーザ(世帯)」を決定し、
(c)特定ユーザにおける「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報と、「類似ユーザ」における当該「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報とを比較した結果に基づいて「比較ラベル」を生成し、
(d)特定ユーザの「生活行動」に「比較ラベル」を付与した生活行動比較情報を生成する。
【0033】
ここで、「比較ラベル」は、例えば起床という生活行動に付与される場合、「早起き(他ユーザ(世帯)よりも早めの起床)」、「他ユーザと同様の(標準的な)起床」、「遅起き(他ユーザ(世帯)よりも遅めの起床)」といった情報であり、他ユーザとの比較による相対的な生活行動上の意味を含む情報となる。
【0034】
本実施形態では、上述したように、消費電力量データに基づいて各ユーザ(世帯)での「生活行動」及びその発生時刻又は時間帯を推定し、特定ユーザ(相対評価対象ユーザ)に類似する「類似ユーザ」を選定した上で、特定ユーザの「生活行動」に付与される「比較ラベル」を生成している。このように、本来生活行動上の意味づけがなされるものではない消費電力量変化パターンから「生活行動」を推定し、さらに、推定した「生活行動」を、属性の類似する他ユーザと比較するので、より意味のある比較結果を得てより有効な相対評価を行うことが可能となる。
【0035】
具体的に、例えば「世帯構成員の人数が同じであって起床時刻が類似する他の世帯の今日の就寝時刻と比較して、世帯A(特定ユーザ)の今日の就寝時刻はより遅い」といった相対的評価を含む生活行動比較情報を生成することができる。さらに、この生成された生活行動比較情報を用いて、居住者の実際の生活行動パターンに適合している的を射たサービス、例えば生活改善アドバイスや、異常検知による見守りサービス、さらには生活状況に合った配信情報のレコメンド等を提供することも可能となる。1つの例として、両親と2人の小学生の子供の世帯において、他の同構成の世帯と比較して「遅寝」の日が連続した場合に、例えば生活改善アドバイスを行ったりすることが可能となる。
【0036】
生活行動比較装置1は、さらに、
(e)各ユーザ(世帯)について、単位期間(例えば1日間)毎に推定された「生活行動」及び発生時刻若しくは時間帯に基づいて、生活行動に係る「行動属性」に対して「属性値」を付与した「行動属性情報」を生成し、
(f)特定ユーザの「行動属性情報」を含むユーザ情報に基づいて、「類似ユーザ」を決定することも好ましい。
【0037】
さらにまた、生活行動比較装置1は、
(g)各ユーザ(世帯)について、当該ユーザの生活に係る静的な属性である「静的属性情報」を、例えば静的属性情報管理装置2から取得して保存し、
(h)特定ユーザの「静的属性情報」を含むユーザ情報に基づいて、「類似ユーザ」を決定することも好ましい。
さらに、特定ユーザの「行動属性情報」及び「静的属性情報」の両方を含むユーザ情報に基づいて、「類似ユーザ」を決定してもよい。
【0038】
ここで、「行動属性」は、発生したと推定された生活行動種別であり、例えば「起床」を指す。また、「属性値」は、この行動属性における具体的な値であり、行動属性の発生時刻又は時間帯とすることができる。従って、「行動属性情報」は、例えば、「6:30に起床」との生活行動に係る情報となる。
【0039】
この実施形態によれば、「行動属性情報」及び/又は「静的属性情報」を用いることによって、「生活行動」を比較するのに適切な「類似ユーザ」を、より確実に選定することができる。
【0040】
図2は、本発明による生活行動比較装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
【0041】
図2によれば、生活行動比較装置1は、通信インタフェース部101と、消費電力データ蓄積部102と、プロセッサ・メモリとを有する。さらに、静的属性管理部103を有することも好ましい。ここで、プロセッサ・メモリは、生活行動比較装置1に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって、その機能を実現させる。
【0042】
また、プロセッサ・メモリは、n個(nは自然数)の推定部11-1〜11-nからなる生活行動推定部11と、m個(mは自然数)の行動属性情報生成部12-1〜12-mと、類似ユーザ決定部13と、生活行動比較部14として機能する。ここで、図2に示したような各機能構成部を矢印で接続した処理の流れは、本発明による生活行動比較方法の一実施形態としても理解される。
【0043】
通信インタフェース部101は、
(a)ユーザの自宅(生活区域)に設置されたスマートメータ3やHGW4等から、消費電力量の計測値データを受信し、
(b)静的属性情報管理装置2から「静的属性情報」を受信し、さらに、
(c)生活行動比較部14から出力される特定ユーザ(相対評価対象ユーザ)についての生活行動比較情報を外部の通知先に送信する。例えば、ウェブサイトやアプリケーション等を介する形で、この推定結果を提示することもできる。
【0044】
消費電力データ蓄積部102は、通信インタフェース部101を介して受信した消費電力量の計測値から生成される消費電力量データを蓄積・管理する。例えば、1日を構成する15分毎、30分毎又は1時間毎の時間帯における消費電力量を、生活区域(世帯)毎且つ単位期間(1日)毎に蓄積・管理してもよい。なお、このような消費電力量データは、変更態様として、装置1の外部、例えばユーザの自宅内のストレージ等に蓄積されていてもよい。
【0045】
図3は、消費電力データ蓄積部102に蓄積される消費電力量データの一実施例を示すテーブルである。
【0046】
図3によれば、消費電力データ蓄積部102は、多数の消費電力量データ(データ識別子(ID):d0001,d0002,・・・)を蓄積・管理している。1つの消費電力量データは、世帯ID(ユーザID)毎に、データを計測した年月日と、1日(単位期間)における30分毎の時間帯(0:00〜0:30,0:30〜1:00,・・・,23:30〜24:00)での計測された消費電力量とを対応付けたものである。
【0047】
尚、消費電力量データは、当然に、他の形式で蓄積・管理されていてもよい。例えば15分の時間帯毎の消費電力量が蓄積されてもよく、また、例えば1時間の時間帯における4つの15分帯での消費電力量の代表値が算出されて蓄積されてもよい。
【0048】
図2に戻って、静的属性管理部103は、通信インタフェース部101を介して「静的属性情報」を取得し、保存・管理する。ここで、「静的属性情報」は、上述したように例えば、例えば、(a)世帯人員の構成(構成員の人数や年齢・性別)、(b)世帯の住所(地域)、(c)生活空間の間取り、(d)契約アンペア数、(e)年収等の、ユーザの生活に係る静的な情報であり、消費電力量データ以外の情報源によって取得可能な情報となっている。
【0049】
生活行動推定部11は、本実施形態においてn個(nは自然数)の推定部11-1〜11-nからなり、各ユーザの消費電力量データに基づいて、発生した「生活行動」と当該生活行動の発生した発生時刻又は時間帯とを推定する。ここで、1つの推定部11-i(i=1,2,・・・,n)が1つの「生活行動」についての推定を担当してもよい。即ち、n個の推定部11-1〜11-nはそれぞれ、n個の互いに異なる「生活行動」を推定する推定器とすることができる。
【0050】
具体的に、生活行動推定部11(各推定部11-i)は、推定に使用する消費電力量データの時間帯に応じて、発生したか否かを推定する「生活行動」を予め設定し、当該時間帯に設定された「生活行動」に対応する判定閾値と当該消費電力量データとを比較して当該「生活行動」の発生した発生時刻又は時間帯を推定することも好ましい。
【0051】
例えば、推定部11-iは、各世帯の朝の時間帯(例えば3:00〜9:00)での消費電力量データを取得し、「起床」という生活行動の発生時刻又は時間帯を推定してもよい。例えば、A宅において「6:30から7:00の間に起床した」といった「生活行動」とその発生時間帯を推定することができる。また、例えば各世帯における夜の時間帯(例えば18:00〜24:00)での消費電力量データを取得し、「就寝」という生活行動の発生時刻又は時間帯を推定してもよい。さらに、例えば各世帯における6:00〜12:00での消費電力量データを取得し、「外出」という生活行動の発生時刻又は時間帯を推定してもよい。また、例えば各世帯における17:00〜23:00での消費電力量データを取得し、「帰宅」という生活行動の発生時刻又は時間帯を推定してもよい。
【0052】
尚、上述した例の「6:30から7:00の間に起床した」といった「生活行動」とその発生時間帯とを用いた表現については、その代わりに、発生時間帯の中央の時刻をとって「6:45に起床した」といった「生活行動」とその発生時刻として表現してもよい。
【0053】
また、具体的な「生活行動」の発生時刻又は時間帯の推定方法として、例えば、起床時刻又は時間帯を推定する場合、朝の時間帯において、消費電力量が、当日の夜間の(待機)電力量と比較して、所定閾値以上の差をもって大きくなった際、その増大した時点の時刻又は単位時間帯(例えば30分帯)で「起床」が発生したとすることができる。または、例えば、朝の時間帯(例えば3:00〜9:00)における特定の単位時間帯での消費電力量が直前の単位時間帯での消費電力量と比べて50%以上増加した場合、この特定の単位時間帯で「起床」が発生したとしてもよい。
【0054】
また、例えば、就寝時刻又は時間帯を推定する場合、夜の時間帯において、消費電力量が、過去の夜間での(待機)電力量の代表値と比較して、所定閾値内の差の値にまで小さくなった際、その減少した時点の時刻又は単位時間帯(例えば30分帯)で「就寝」が発生したとすることができる。
【0055】
尚、推定部11-iにおける「生活行動」及びその発生時刻若しくは時間帯の推定方法は、上述したものに限定されるものではない。例えば、消費電力量についての単純な閾値判定による発生・非発生の推定や、消費電力データを30分毎又は1時間毎に分割し特徴量ベクトル化して、クラスタリング法、ランダムフォレスト法やロジスティック回帰分析法を利用して発生時刻若しくは時間帯を判定する等、様々な公知の手法が適用可能である。
【0056】
また、以上に説明したように、第1〜第nの推定部11-1〜11-nの各々は互いに独立した構成を有していることも好ましい。これにより、推定対象となる生活行動項目を追加する必要が生じた場合に、新たな推定部を付加して容易に対応することができる。実際、推定対象とする生活行動項目は、推定・評価結果の利用先によって様々なパターンが考えられるが、本実施形態の推定部は、このような生活行動項目の追加を容易にする構成となっている。
【0057】
また、第1〜第nの推定部11-1〜11-nのうちの少なくとも1つは、ユーザの全消費電力量のデータだけではなく又は全消費電力量のデータに代えて、ユーザの使用する特定の機器による消費電力量のデータに基づいて生活状況を推定するものであってもよい。例えば、エアコンやIH(Induction Heating)調理器等の家電機器をそれぞれ単独で配下に接続した配電系統について消費電力量のデータが取得される場合、このデータに基づいて、生活行動として在室状況や調理中か否かの推定を実行することも可能となる。さらに、スマートタップやエコーネットライト(ECHO-Net Lite)に対応した電力消費機器が使用されていて、各機器の詳細な利用状況に係る情報が取得される場合には、これらの情報を利用して生活行動を推定してもよい。ここで、エコーネットライトは、スマートメータとHEMSとを繋ぐ標準の通信プロトコルである。
【0058】
同じく図2において、m個(mは自然数)の行動属性情報生成部12-1〜12-mは、各ユーザ(世帯)について、単位期間(例えば1日間)毎に推定された「生活行動」及び当該発生時刻若しくは時間帯に基づいて、生活行動に係る「行動属性」に対して「属性値」を付与した「行動属性情報」を生成する。この際、1つの行動属性情報生成部12-j(j=1,2,・・・,m)が1つのユーザ(世帯)を担当し、異なるユーザ(世帯)の「行動属性情報」は異なる行動属性情報生成部12-jで生成されることも好ましい。
【0059】
ここで、各行動属性情報生成部12-jは、図2に示すように、行動推定結果保存部121-j(j=1,2,・・・,m)を有することも好ましい。この場合、行動推定結果保存部121-jは、生活行動推定部11から、推定された「生活行動」及びその発生時刻若しくは時間帯情報を入力し、保存・管理する。次いで、行動属性情報生成部12-jは、行動推定結果保存部121-jからこれらの情報を取り出して「行動属性情報」の生成に使用する。
【0060】
図4は、行動推定結果保存部121-jに保存・管理された生活行動及びその発生時刻の推定情報の一実施例を示すテーブルである。
【0061】
図4のテーブルでは、消費電力量データ毎に、当該電力の消費元である世帯(世帯識別子(ID))と、推定された「生活行動」と、当該生活行動の発生日時・時刻とが対応付けられている。行動推定結果保存部121-jは、相対評価対象ユーザ(図4のテーブルでは世帯a)と推定された「生活行動」及び発生時刻との関係をこのような形式で保存することができる。ここで、同じ世帯aの「起床」についても、単位期間毎(4/1及び4/2のそれぞれ)に異なる消費電力量データ(データID1及びID2)が対応し、発生時刻(起床時刻)も異なっていることが分かる。
【0062】
図2に戻って、具体的に、行動属性情報生成部12-jは、
(a)1つの担当ユーザ(世帯)について統計期間(例えば100日間)における単位期間(例えば1日間)毎に推定された「生活行動」及びその発生時刻若しくは時間帯情報を、行動推定結果保存部121-jから取り出し、
(b)「行動属性」として生活行動種別(例えば「起床」)を用い、単位期間(1日間)毎に推定された生活行動種別(「起床」)の発生時刻若しくは時間帯に基づいて、生活行動種別(「起床」)の発生時刻若しくは時間帯の代表値を算出し、当該代表値に基づいて「属性値」を決定する。
【0063】
ここで、上記(b)での代表値は、例えば日毎に推定された起床時刻又は時間帯の中央値、最頻値又は平均値とすることができる。このように、各行動属性情報生成部12-jによれば、例えば、世帯aについて「起床」という「行動属性」に対して6:30といった「属性値」を付与し、世帯aについての「起床時間が6:30」といった「行動属性情報」を生成することができる。
【0064】
さらに、行動属性情報生成部12-jは、単位期間(1日間)毎に推定された「生活行動」種別及びこの発生時刻若しくは時間帯について、発生時刻又は時間帯によるクラスタリングを行い、要素数が最大となるクラスタでの発生時刻又は時間帯の代表値に基づいて、「行動属性」としての生活行動種別に付与する「属性値」を決定してもよい。
【0065】
例えば、世帯a(ユーザ)での100日間(の統計期間)における「起床」の発生時刻について階層的クラスタリングを実施し、3つのクラスタc1、c2及びc3に分類した際、クラスタc3の要素数(65個)が最大であったとする。ここで、このクラスタc3の要素(発生時刻)の中央値である6:30を、「起床」という行動属性に付与する「属性値」に決定する。
【0066】
尚、推定された「生活行動」種別及びこの発生時刻若しくは時間帯から「行動属性」の「属性値」を算出する方法は、上述した階層的クラスタリング法に限定されない。例えば、k-means法のような非階層的クラスタリング法や決定木法でも実現することができる。
【0067】
同じく図2に示すように、各行動属性情報生成部12-jは、行動属性情報保存部122-j(j=1,2,・・・,m)を有することも好ましい。行動属性情報保存部122-jは、生成された「行動属性情報」を保存・管理する。
【0068】
図5は、行動属性情報保存部122-jに保存・管理された行動属性情報の一実施例を示すテーブルである。
【0069】
図5のテーブルでは、世帯aについて、推定された「生活行動」(行動属性)毎に、当該生活行動の代表値(「属性値」)と、代表値を求めるのに使用した発生時刻の期間であって、推定に用いた消費電力量データの計測期間である統計期間とが対応付けられている。行動属性情報保存部122-jは、相対評価対象ユーザ(図5のテーブルでは世帯a)における「行動属性情報」をこのような形式で保存することができる。
【0070】
図2に戻って、類似ユーザ決定部13は、特定ユーザ(相対評価対象ユーザ)の属性(行動属性及び/又は静的属性)に係るユーザ情報に基づいて、他のユーザのうちで、当該ユーザ情報に関して特定ユーザと類似する「類似ユーザ」を決定する。この「類似ユーザ」の決定は、後の生活行動比較処理において比較対象を意味のある対象に限定して、より有効な生活行動比較結果を取得するために行う処理である。具体的に、類似ユーザ決定部13は、特定ユーザの
(a)「行動属性情報」を含むユーザ情報、
(b)「静的属性情報」を含むユーザ情報、又は
(c)「行動属性情報」及び「静的属性情報」を含むユーザ情報
に基づいて、「類似ユーザ」を決定する。
【0071】
ここで、上記(a)の場合、類似ユーザ決定部13は、他のユーザのうちで、特定ユーザの「行動属性」と同一の生活行動種別を「行動属性」とするユーザであって、特定ユーザの「行動属性」の「属性値」である発生時刻若しくは時間帯からみて所定時間範囲内にある発生時刻若しくは時間帯を「行動属性」の「属性値」とするユーザを、「類似ユーザ」に決定する。例えば、特定ユーザ(世帯)と同一時間帯に起床するユーザ(世帯)を「類似ユーザ(世帯)」とすることができる。図5の実施例では、世帯aの属性としての「起床」の「属性値」は6:45である。従って、例えば所定時間範囲として±15分、即ち6:30〜7:00内の起床時刻を「属性値」として有する他の世帯を「類似世帯」とすることもできる。
【0072】
さらに、変更態様として、各「行動属性」について、「行動属性」とその「属性値」とを要素とする特徴ベクトルを生成し、ユークリッド距離や内積によって距離を計算して、特徴ベクトル間の類似度を算出し、所定閾値以上の類似度を有する特徴ベクトルのユーザを「類似ユーザ」とすることも可能である。
【0073】
次いで、上記(b)の場合、類似ユーザ決定部13は、他のユーザのうちで、所定の「静的属性情報」の項目の内容又は値が一致又は互いに所定範囲内にあるユーザを「類似ユーザ」とする。例えば、静的属性情報として「世帯構成員の人数」を使用する場合、特定ユーザ(世帯)の「世帯構成員の人数」と同じ数の「世帯構成員の人数」を有する他のユーザ(世帯)を「類似ユーザ(世帯)」とすることができる。当然に、「世帯構成員の人数」だけではなく、他の「静的属性情報」の項目、例えば「世帯の住所(地域)」や「生活空間の間取り」等を組み合わせることで、より詳細な条件での類似判定を行うことも可能である。
【0074】
さらに、上記(c)の場合、類似ユーザ決定部13は、「行動属性情報」及び「静的属性情報」を組み合わせて「類似ユーザ」を決定する。ここで、「静的属性情報」による条件付けで選別した結果に対し、さらに「行動属性情報」を用いて類似度を判定して「類似ユーザ」を決定してもよい。例えば、「世帯構成員の人数」が同一であって、且つ「起床時刻の代表値」が±15分以内のユーザ(世帯)を類似とする、といった判定が可能である。
【0075】
図6は、類似ユーザを決定するための比較条件の一実施例を示すテーブルである。
【0076】
図6によれば、「類似ユーザ」を決定するための比較条件として、条件a、条件b、条件c、・・・が規定されている。これらの各条件は、「静的属性情報」に関する条件と「行動属性情報」に関する条件との組合せとなっている。ここで、この組合せの方法は、例えば条件aではANDであって条件bではORとなっている。これらの「静的属性情報」の条件の内容と、「行動属性情報」の条件の内容と、組合せ方法とを適切に選択することによって、比較に意味をもたせることのできる有効な「類似ユーザ」を決定し、所望の生活行動の比較結果(生活行動比較情報)を取得することができるのである。
【0077】
尚、消費電力量データを解析して取得される「行動属性情報」も静的な属性である。従って、「行動属性情報」は、「静的属性情報」の要素を増加させるものと捉えることも可能である。また、このことから、「行動属性情報」を利用することによって、「類似ユーザ」選定の際のフィルタの種類を増加させ、より好適な「類似ユーザ」を決定するとの効果も奏される。
【0078】
図2に戻って、生活行動比較部14は、
(a)特定ユーザにおける比較に係る「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報と、「類似ユーザ」における当該「生活行動」の発生時刻又は時間帯情報とを比較した結果に基づいて「比較ラベル」を生成し、
(b)特定ユーザの「生活行動」に「比較ラベル」を付与した生活行動比較情報を生成する。
【0079】
特に、上記(a)について具体的に、生活行動比較部14は、特定ユーザにおける比較に係る「生活行動」の発生時刻又は時間帯が、「類似ユーザ」における当該「生活行動」の発生時刻又は時間帯からみて、
(a1)所定閾値時間以上早い場合に、早めの発生を意味する「比較ラベル」を生成し、
(a2)所定閾値時間以上遅い場合に、遅めの発生を意味する「比較ラベル」を生成する
ことも好ましい。尚、比較する「生活行動」の発生時刻又は時間帯は、比較評価対象となる1日での値であり、例えば図5のテーブルに示した発生時刻の代表値(「属性値」)を利用しないことも好ましい。即ち、特定ユーザの評価対象当日と同日での「類似ユーザ」のデータを用いて、比較を行うことが好ましい。
【0080】
また、上記(b)で例えば、生活行動が「就寝」であって比較ラベルが「遅め(の起床)」である場合、生成される生活行動比較情報は、例えば「世帯構成員の人数が同じであって起床時刻が類似する他の世帯の今日の就寝時刻と比較して、世帯A(特定ユーザ)の今日の就寝時刻はより遅い」といった形となる。ここで、「比較ラベル」は、例えばこの例を用いれば、以下に示す方法で決定することができる。
【0081】
最初に、「類似ユーザ」の就寝時刻について、比較評価対象となる日の代表値を算出する。この代表値は、全ての「類似ユーザ」の就寝時刻の平均値、中央値又は最頻値等とすることができる。次いで、例えば、次式(1)〜(3)を用いて比較ラベルlabelを算出する。
(1)time(a,date,就寝)<time(S,date,就寝)−Tである場合、
label(a,S,date,就寝)="早寝"
(2)time(a,date,就寝)>time(S,date,就寝)+Tである場合、
label(a,S,date,就寝)="遅寝"
(3)その他の場合、
label(a,S,date,就寝)="同等"
【0082】
ここで、上式は、比較評価対象とする世帯をa、比較評価対象とする日をdate、比較評価対象とする生活行動を"就寝"とした場合の処理となる。また、time(a, date, 就寝)は、日付dateにおいて世帯aが就寝した時刻である。さらに、time(S, date, 就寝)は、日付dateにおいて「類似世帯(ユーザ)」の集合Sにおける就寝時刻の代表値を表す。また、Tは早寝でも遅寝でもない"同等"との「比較ラベル」を決定する範囲を表す値であり。例えば15分とすることができる。
【0083】
生活行動比較部14は、比較結果保存部14aを有することも好ましい。比較結果保存部14aは、「生活行動」に「比較ラベル」を付与して生成された生活行動比較情報を保存する。
【0084】
図7は、比較結果保存部14aに保存された生活行動比較情報の一実施例を示すテーブルである。
【0085】
図7のテーブルでは、消費電力量データ毎に、決定された「比較ラベル」と、「類似世帯(ユーザ)」を決定する際に用いた比較条件とが対応付けられている。比較結果保存部14aは、生活行動比較情報をこのような形式で保存することができる。ここで、消費電力量データIDは、図4に示した実施例での消費電力量データIDと同じものである。従って、図7に示した生活行動比較情報は、世帯aについて生成されたものであることが分かる。
【0086】
また、比較条件である条件a、条件b、条件c、・・・は、図6のテーブルに示されたものと同一である。例えば、図7において、消費電力量データID1については、比較条件aを採用した場合、「より早い起床」との比較ラベルが対応付けられ、比較条件bを採用した場合、「通常の起床」との比較ラベルが対応付けられている。このように、「類似世帯(ユーザ)」を決定する比較条件を変えることによって「比較ラベル」も変わってくる。即ち、「行動属性情報」及び「静的属性情報」を適切に組み合わせて、好適な比較条件を選択して「類似ユーザ」を決定することによって、特定ユーザの生活状況をより適切に表現する生活行動比較情報を取得することもできるのである。
【0087】
以上に説明したように、本発明によれば、特定ユーザ(相対評価対象ユーザ)に類似する他のユーザを選定した上で、特定ユーザの「生活行動」に付与される「比較ラベル」を生成している。従って、本来生活行動上の意味づけがなされるものではない消費電力量変化パターンから「生活行動」を推定し、さらに、推定した「生活行動」を、類似する他ユーザと比較することによって、より意味のあるより有効な生活行動の相対評価を行うことが可能となる。
【0088】
また、生成された生活行動比較情報を用いて、居住者の実際の生活行動パターンに適合している的を射たサービス、例えば生活改善アドバイスや、異常検知による見守りサービス、さらには生活状況に合った配信情報のレコメンド等を提供することも可能となる。ここで、生活改善アドバイスを、さらに消費電力量を加味して生成することもできる。例えば、世帯構成員の人数や世帯の地域が同一であって外出時間と帰宅時間とから算出される在宅時間が類似する他の「類似世帯」と比べて、「特定世帯」の当日の消費電力量がより高い場合、この「特定世帯」に節電を勧めるアドバイスを行うことも可能となる。
【0089】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0090】
1 生活行動比較装置
101 通信インタフェース部
102 消費電力データ蓄積部
103 静的属性管理部
11 生活行動推定部
11-1、11-2、11-n 推定部
12-1、12-2、12-m 行動属性情報生成部
121-1、121-2、121-m 行動推定結果保存部
122-1、122-2、122-m 行動属性情報保存部
13 類似ユーザ決定部
14 生活行動比較部
14a 比較結果保存部
2 静的属性情報管理装置
3 スマートメータ
4 HGW
5 事業者通信網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7