(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190314
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】巾木コーナー部材
(51)【国際特許分類】
E04F 19/04 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
E04F19/04 101D
E04F19/04 101A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-91035(P2014-91035)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-209671(P2015-209671A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356610
【氏名又は名称】株式会社 サンキョウエポック
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀史
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−019255(JP,A)
【文献】
特開平11−042610(JP,A)
【文献】
特開平07−197637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巾木の先端が突き合う出隅コーナー又は入隅コーナーに取付ける巾木コーナー部材において、表面部の下端部には切取り部を設け、巾木の下縁にパッキンを設けた場合には切取り部から下端部を切り取ることなく取付け、下縁にパッキンの無い巾木の場合には切取り部から下端部を切り取って取付けることが出来るように、表面部の表面に沿って溝を形成すると共に、該溝底には表面部両先端及びその他の箇所に複数の細長い穴を貫通して設けたことを特徴とする巾木コーナー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巾木のコーナーに取付ける巾木コーナー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8(a)に示すように、部屋の壁面(イ)と床面(ロ)の境界には巾木(ハ)が取付けられている。巾木(ハ)は高さH
1の長方形断面をした一定断面の長尺材であり、表面(ホ)と上面(ヘ)との間にはR面又はC面を有し、これを壁面(イ)に固定することで該壁面(イ)と床面(ロ)との間に残される隙間が塞がれる。巾木(ハ)は木製やプラスチック製のものが多用されているが、建物の床がコンクリート製や鉄筋コンクリート製である場合、該床面(ロ)は均一な平坦面でなく、多少の凹凸面と成ることが多い。したがって、巾木(ハ)を取付けても巾木(ハ)と床面(ロ)との間に隙間が形成される。
【0003】
そこで、このような凹凸をした床面(ロ)の場合、
図8(b)に示すように、下縁にパッキン(ニ)を備えた巾木(ハ)が用いられる。該パッキン(ニ)は変形して床面(ロ)との間の隙間を塞ぐことが出来る。下縁にパッキン(ニ)を取付けるならば、巾木(ハ)はパッキン(ニ)の高さH
2が加わることで、高さHと成る。
実開平5−52082号に係る「巾木」は、部屋の壁面と床面の間に取着される巾木であって、該巾木の端縁には内側が空間となされた可撓性シートからなる緩衝部を形成することにより、端縁が凹凸のある床面に当接されても、該凹凸を緩衝部で吸収し、床面との間の隙間や端縁の波打ちをなくすことが出来るようにしている。
【0004】
ところで、巾木が交わる凸状コーナーには、夫々の巾木先端を45°に切断して互いに突き合わせることもあるが、コーナー部材を取付けることも出来る。
コーナー部材は下縁にパッキン(ニ)を取付けた巾木に対応する場合は高さ寸法Hは大きくなり、パッキンを備えていない巾木に対応する場合には高さ寸法H
1は低く成る。そのために、2種類のコーナー部材を準備しておく必要があり、コーナー部材の製作はもとより、管理の点でも面倒である。
【特許文献1】実開平5−52082号に係る「巾木」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、巾木が交わるコーナーに取付けるコーナー部材には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、パッキン付きの巾木であっても、パッキン無しの巾木であっても両方に対応することが出来る巾木コーナー部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の巾木コーナー部材は、パッキン付き巾木であっても、パッキンなし巾木であってもコーナーに取付け出来るように、すなわち高さ寸法を調整可能に構成している。
ここで、巾木コーナー部材をコーナーに取付けする具体的な取付方法に関しては特に限定しないことにする。巾木コーナー部材は互いに垂直を成す表面部を形成したL形横断面を有し、上端には上面部を設けている。下端には下面部はなく開口している。
そして、両表面部が交わる角部はR面又はC面が形成され、同じく表面部と上面部が交わる角部にも適度な大きさのR面又はC面を有している。時には、R面やC面を設けることなく角張った状態とする場合もあり、巾木コーナー部材の表面は巾木の面形状にフィットするように構成している。
【0007】
そして、両表面部の下端部には切取り部が下端から所定の高さに設けている。該切取り部は表面部より肉厚を薄くしたり、複数の穴を一定間隔で設けるなどして、手で簡単に除去することが出来るように成っている。切取り部が設けられる下端からの高さは、パッキンの高さ寸法に相当し、パッキンを備えていない巾木であれば、切取り部から下端部を除去したコーナー部材が巾木のコーナーに取付けられる。そして、パッキンを下縁に設けている巾木の場合には、下端部を切り取ることなくコーナーに取付ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る巾木コーナー部材は、その下端部に切取り部を設けている。したがって、巾木コーナー部材は必要に応じて切取り部から下端部を除去することが出来、下縁にパッキンを持たない巾木であっても、逆に下縁にパッキンを備えた巾木の場合であっても適用可能となる。すなわち、パッキンを備えた巾木の場合には、コーナーにそのまま取付け、パッキンの無い巾木であれば、切取り部から下端部を除去してその高さを低くした状態でコーナーに取付けることが出来る。すなわち、一種類のコーナー部材でもって何れの巾木にも兼用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】巾木の出隅コーナー及び入隅コーナーに巾木コーナー部材を取付けた場合。
【
図2】本発明の巾木コーナー部材を示す実施例で、正面図を表している。
【
図3】本発明の巾木コーナー部材を示す実施例で、背面図を表している。
【
図5】下端部を切り取った巾木コーナー部材で、(a)は正面図、(b)は背面図。
【
図6】巾木コーナー部材を取付ける前の出隅コーナーで、(a)は下縁にパッキンを取付けている場合、(b)は下縁にパッキンのない場合。
【
図8】(a)は下縁にパッキンのない巾木を取付けた場合、(b)は下縁にパッキンを備えた巾木を取付けた場合。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は互いに垂直に折れ曲がっている巾木1a,1b,1cの各コーナーに巾木コーナー部材2,3を取付けた場合を表す実施例である。巾木1a,1b,1cはその下縁4a,4b,4cを床面5に接し、背面6a,6b,6cは壁面7に接している。このように、巾木1a,1b,1cを配置することで、床面5と壁面7の境界の外観を向上することが出来る。巾木1の形態も色々あるが、本発明では該巾木1の形態や構造に関しては特に限定しない。
【0011】
ところで、巾木1aと巾木1bとの入隅コーナーには巾木コーナー部材2が取付けられ、そして、巾木1bと巾木1cとの出隅コーナーには巾木コーナー部材3が取付けられている。このように各コーナーに巾木コーナー部材2,3を取付けることで、各巾木1a,1b,1cの先端突合せ面が不揃いであっても、巾木コーナー部材2,3にて被覆され、入隅コーナー及び出隅コーナーでの外観が向上する。
【0012】
図2、
図3は本発明に係る巾木コーナー部材3を示す具体例であり、
図2は正面図、
図3は背面図を表している。該巾木コーナー部材3は互いに垂直を成す表面部8a,8bを有した概略L形横断面を成し、上端には上面部9を設けている。そして、背面側には
図3に示すように、表面部8bから垂直を成して中仕切り板10を延ばし、中仕切り板10は表面部8aと所定の間隔をおいて平行と成っている。したがって、表面部8aと中仕切り板10とで一定幅の空間15が形成される。
【0013】
また、両表面部8a,8bが交わるコーナーは角張ることなく適度な大きさの丸みを形成し、同じく両表面部8a,8bと上面部9とが交わるコーナーも角張ることなく適度な大きさの丸みを有している。また、表面部8a,8bの表面16には巾木表面に設けた窪みの位置(高さ)に合わせて窪み17を形成している。そして、本発明の巾木コーナー部材3は、その表面部8a,8bに切取り部11を設け、下端部12を切り取ることが出来るようにしている。
【0014】
切取り部11は表面部8a,8bの表面に沿って溝13を設け、該溝13の所々には該表面部8a,8bを背面側に貫通する細長い穴14,14・・・が形成されている。しかも、表面部8a,8bの先端部には先端から切り込んだ細長い穴14a,14bを設けており、上記溝13と複数の穴14a,14b,14・・・によって、残される肉厚は僅かと成り、下端部12を簡単に切り取ることが出来る。
【0015】
図4は上記穴14a,14b,14・・・を設けている下端部12の背面側拡大図を示している。中仕切り板10は下端部12までは延びずに、上記穴14a,14b,14・・・までと成っており、下端部12を切り取るに際して、中仕切り板10が障害になることが無いようにしている。
【0016】
図5は上記穴14a,14b,14・・・、及び溝13を介して下端部12を切り取った場合の巾木コーナー部材3で、(a)は正面図、(b)は背面図をそれぞれ表している。このように、下端部12が切り取られることで、巾木コーナー部材3の高さ寸法は小さく成る。
【0017】
図6は壁面下端に巾木1b,1cを取付けた場合を示しており、(a)に示す巾木1b,1cは下縁にパッキン18b,18cを備え、(b)に示す巾木1b、1cは下縁にパッキンを設けていない。パッキン18b,18cを下縁に設けることで、床面から巾木上縁19b,19cまでの高さはH+Nとなり、パッキンを下縁に備えない巾木1b,1cの上縁19b,19cまでの高さはHとなる。
【0018】
そこで、パッキンを備えた巾木1b,1cのコーナーに取付ける巾木コーナー部材3は前記
図2、
図3に示すように下端部12を備えたものとし、パッキンを備えていない巾木1b、1cのコーナーには
図5に示すような下端部12を切り取った巾木コーナー部材3が取付けられる。
【0019】
ところで、コーナーに巾木コーナー部材を取付ける方法に関して本発明では限定しないが、前記
図2、
図3、
図5の実施例に示す巾木コーナー部材3の場合、一方の巾木先端を表面部8aと中仕切り板10の間に形成される空間15に嵌め、他方の巾木先端を中仕切り板10に当接することで取付けることが出来る。すなわち、一方の巾木先端に巾木コーナー部材3を取付けた状態で該巾木を配置し、そして、他方の巾木を中仕切り板10に先端を当接して取付けることが出来る。
このように取付けられた巾木コーナー部材3は巾木1b,1cのコーナーから外れることなく安定した取付けが出来る。
【0020】
以上説明した実施例の巾木コーナー部材3は出隅コーナーに取付けられる場合であり、入隅コーナーに取付ける巾木コーナー部材2の場合も同じように、その下端部20を切り取ることが出来る構造としている。
図7は巾木コーナー部材2を示す実施例であり、互いに垂直を成す表面部21a,21b及び上面部22を有し、下端には切り取ることが出来る下端部20を設けている。
該下端部20は巾木コーナー部材3と同じように、表面部21a,21bの表面には溝23を設け、該溝23の所々には複数の細長い穴24,24・・・を形成している。そして、該溝23、及び穴24,24・・・を介して下端部20を簡単に切り取ることが出来る。壁面と床面のコーナーに取付けた巾木下縁にパッキンがない場合には、下端部20を切り取って取付けることが出来るようにしている。
【符号の説明】
【0021】
1 巾木
2 巾木コーナー部材
3 巾木コーナー部材
4 下縁
5 床面
6 背面
7 壁面
8 表面部
9 上面部
10 中仕切り板
11 切取り部
12 下端部
13 溝
14 穴
15 空間
16 表面
17 窪み
18 パッキン
19 上縁
20 下端部
21 表面部
22 上面部
23 溝
24 穴