【実施例1】
【0014】
以下に、本発明の第1実施形態であるチェーンテンショナについて、図面に基づいて説明する。
本発明の第1実施形態であるチェーンテンショナ100は、
図1、
図2に示すように、一方が開放したプランジャ収容穴を有するテンショナボディ110と、プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャ120と、プランジャ120を突出方向に付勢する付勢機構を備えている。
プランジャ120の外周には、係合溝121が設けられ、テンショナボディ110には、カム部材であるスライドバー132を収容するカム摺動孔113、プランジャ収容穴とカム摺動孔113に連通する出没孔112、カム摺動孔113に圧油を供給する油圧供給路114、カム摺動孔113から圧油を排出する油排出孔115が設けられている。
【0015】
出没孔112には、プランジャ収容穴の内周面から前記係合溝に向けて出没する球形の係止部材131が収容されている。
カム摺動孔113は、プランジャ収容穴の下方にプランジャ120の出没方向と垂直な方向に延びて設けられており、油圧供給路114が同一軸線上に連通し、油排出孔115が出没孔112と対向する位置に連通している。
スライドバー132は、
図2に示すように、中央に大径部134、両端側に小径部135を有しており、カム摺動孔113に収容されて、押圧部材133によって油圧供給路114側に付勢されている。
【0016】
係止部材131は、スライドバー132の大径部134がカム摺動孔113の出没孔112に位置した際には、プランジャ収容穴の内周面から突出してプランジャ120の外周の係合溝121と係合してプランジャ120の動作を制止し、スライドバー132の小径部135がカム摺動孔113の出没孔112に位置した際には、カム摺動孔113側に退避して係合溝121と係合が解除されプランジャ120の動作を開放するように構成されている。
なお、本実施形態では、スライドバー132は左右対称の単純な形状であるため、スライドバー132の製造が容易であるとともに、チェーンテンショナ100を製造組立する際に、カム摺動孔113へのスライドバー132の挿入方向を揃える必要はなく、組立も容易となる。
【0017】
以上のように構成されたチェーンテンショナ100の動作について、
図3に基づいて説明する。
まず、エンジン停止時及び始動直後の油圧供給路114に油圧が供給されるまでのタイムラグの間は、
図3aに示すように、スライドバー132は油圧供給路114側に押圧されており、スライドバー132の大径部134がカム摺動孔113の出没孔112に位置し、係止部材131がプランジャ収容穴の内周面から突出してプランジャ120の外周の係合溝121と係合してプランジャ120の動作を制止している。
このことで、エンジン始動時のチェーンの大きな張力変動によるバタつきが防止され、騒音も低減される。
【0018】
次に、エンジン始動後しばらくすると、
図3bに示すように、油圧供給路114から油が供給され、油圧による図示左方向への押圧力が押圧手段の押圧力より大きくなると、
図3cに示すように、スライドバー132が図示左方向にスライドし、スライドバー132の小径部135がカム摺動孔113の出没孔112に位置し、
図3dに示すように、係止部材131がカム摺動孔113側に退避し、係止部材131と係合溝121との係合が解除されてプランジャ120の動作が開放される。
この時、スライドバー132の大径部134の図示右側の小径部135とカム摺動孔113との隙間から漏出した油は、
図3cに示すように、油排出孔115から排出されるため、油圧により出没孔112内で係止部材131を突出させることはなく、確実に係止部材131と係合溝121との係合が解除される。
【0019】
エンジンが停止すると、油圧供給路114からの油の供給が停止し、
図3eに示すように、押圧手段の押圧力によりスライドバー132が図示右方向にスライドする。
そして、
図3fに示すように、スライドバー132の大径部134が出没孔112に達すると、係止部材131が出没孔112から突出し、
図3gに示すように、プランジャ120の係合溝121と係合してプランジャ120の動作をその位置で制止する。
なお、組立やメンテナンス等の時も、エンジン停止時の
図3a、
図3gと同様の状態であり、押圧手段の押圧力によりスライドバー132が図示右方向に固定されるため、プランジャの突出を一時的に制止するための別途の構成や別途の操作は不要である。
【0020】
本実施形態では、スライドバー132を中央に大径部134、両端側に小径部135を有する左右対称の形状としたが、さまざまな形態とすることができる。
例えば、第1変形例のチェーンテンショナ100aは、
図4、
図5に示すように、スライドバー132aの中央から押圧部材133a側を全て大径部134aとし、端面から中空穴136aを設け、押圧部材133aであるコイルばねが中空穴136aの底部を押圧するものである(他の構成は、前述の第1実施形態と同様である。)。
このことで、スライドバー132aを軽量化することができる。
【0021】
第2変形例のチェーンテンショナ100bは、
図6、
図7に示すように、第1変形例と同様に、スライドバー132bの中央から押圧部材133b側を全て大径部134bとし、端面から中空穴136bを、押圧部材
133bであるコイルばねが中空穴
136bの底部を押圧するものである。
さらに、本変形例では、大径部134bが油圧供給路114b側の端部にも設けられている(他の構成は、前述の第1変形例と同様である。)。
このことで、寸法精度が要求されるスライドバー132bの内周面が、カム摺動孔113bの大径部134bの径のみとなり、カム摺動孔113bの加工が容易となる。
【0022】
第3変形例のチェーンテンショナ100cは、
図8、
図9に示すように、スライドバー132cの中央に大径部134cを配し、両側方に小径部135cを配し、さらに両端部に大径部134cを配しており、両端面から中空穴136cを設け、押圧部材133cであるコイルばねが中空穴136cの底部を押圧するものである(他の構成は、前述の第2変形例と同様である。)。
このことで、変形例2と同様に、寸法精度が要求されるスライドバー132cの内周面が、カム摺動孔113cの大径部134cの径のみとなり、カム摺動孔113cの加工が容易となるとともに、左右対称形状となり、前述の第1実施形態と同様に、チェーンテンショナ100cを製造組立する際に、カム摺動孔113cへのスライドバー132cの挿入方向を揃える必要はなく、組立も容易となる。
【実施例4】
【0025】
本発明の第4実施形態であるチェーンテンショナ400は、
図14、
図15に示すように、スライドバー432の中央から押圧部材433側を全て大径部434とし、端面から中空穴436を設け、押圧部材433であるコイルばねが中空穴436の底部を押圧するものである。
さらに、大径部434が油圧供給路414側の端部にも設けられ、該油圧供給路414側の大径部434の中央側に小径部435が設けられ、中央の大径部434から小径部435に向かって連続的に径が小さくなるテーパ部437が設けられている。
他の構成は、前述の第1実施形態の第2変形例と同様である。
このことで、油圧供給路414から油の供給が停止し、スライドバー432が図示右方向にスライドした際、係止部材431がスライドバー432にテーパ部437の途中に接触している段階で係止部材431と係合溝421とが完全に係合するように設計することで、停止時に係止部材431が固定され、振動等により騒音を発生することが防止されるとともに、熱変形等や製造誤差による係合不良を防止することができる。
【0026】
以上述べた各実施形態においては、カム部材であるスライドバーの断面形状が円柱状あるいは円筒状のものを示したが、楕円状、多角柱状等の他の形状であってもよい。
また、カム部材を円周方向に段部を設けた回転型や揺動型のものとし、その形状に応じた収容部をテンショナボディに設け、カム部材の回転、揺動方向に対して押圧部材及び油圧を作用させるように構成してもよい。
また、係止部材についても、球状及び断面形状が円柱状のものを示したが、他の形状であってもよい。
さらに、カム部材との接触部分やプランジャの係合溝への係合部分の形状も、半球状のものを示したが、いかなる形状であってもよく、両端で異なる形状としてもよい。
また、プランジャの係合溝も、その数、断面形状、配置範囲等は、係合する係止部材の形状、材質、配置位置等を考慮して、適宜設定可能である。