特許第6190322号(P6190322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190322
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】チェーンテンショナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   F16H7/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-117470(P2014-117470)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-230073(P2015-230073A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小野田 伸行
(72)【発明者】
【氏名】吉田 修
(72)【発明者】
【氏名】榑松 勇二
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−154850(JP,U)
【文献】 実開平01−111855(JP,U)
【文献】 実開昭62−069656(JP,U)
【文献】 特開2010−270809(JP,A)
【文献】 特開平01−229152(JP,A)
【文献】 特開2011−231881(JP,A)
【文献】 特開2002−039295(JP,A)
【文献】 実開平05−086057(JP,U)
【文献】 実開昭57−096842(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が開放したプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、前記プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャと、前記プランジャを突出方向に付勢する付勢機構を備えたチェーンテンショナであって、
前記プランジャの外周には、係合溝が設けられ、
前記テンショナボディが、前記プランジャ収容穴の内周面から前記係合溝に向けて出没する係止部材と、前記係止部材の突出状態を維持・開放するカム部材と、前記カム部材を一方向に押圧する押圧部材と、前記カム部材を前記押圧部材の押圧方向と逆方向に押圧する油圧供給路とを備えたことを特徴とするチェーンテンショナ。
【請求項2】
前記カム部材が、直線的に往復動するスライドバーであることを特徴とする請求項1に記載のチェーンテンショナ。
【請求項3】
前記係止部材が、球形であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチェーンテンショナ。
【請求項4】
前記係合溝が、螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーンテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのタイミングシステム等において、伝動ベルトや伝動チェーンに適正な張力を付与するために用いられるチェーンテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのタイミングシステム等に用いられるチェーン伝動装置において、伝動ベルトや伝動チェーンの弛み側にテンショナレバーを介して適正な張力を付与し、走行時に生じる振動を抑止するため、一方が開放したプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャと、プランジャを突出方向にバネ等で付勢する付勢機構を備えたチェーンテンショナが広く用いられている。
このようなチェーンテンショナにおいて、始動時等の大きな張力変動によるバタつきを防止すべくプランジャの収容側への動きを規制し、また、組立やメンテナンス等の時にプランジャの突出を一時的に制止するために、図16に示すような、テンショナボディ510に2つのラチェット爪531を有する揺動カム530を設け、プランジャ520の側面に形成されたラック歯522に係合可能としたチェーンテンショナ500が公知である(例えば、特許文献1、2、3等参照。)。
【0003】
このような公知のチェーンテンショナ500は、エンジン始動時にエンジンオイルがチェーンテンショナに供給されるまで、プランジャ520のラック歯522と揺動カム530のラチェット爪531との噛合により機械的にバックストップさせることで始動時の騒音を低減させるとともに、エンジンの熱膨張やチェーンの弾性伸びの変化を吸収するために、同じ噛み合い位置で所定のバックラッシュが設定してある。
また、長期的なチェーン伸びに対しては、プランジャ520のラック歯522と揺動カム530のラチェット爪531との噛み合い位置が変わり、ステップ式にプランジャ520が前進する機構になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−234088号公報
【特許文献2】特開2004−44749号公報
【特許文献3】特開平11−344036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような公知のチェーンテンショナの揺動カムは、プランジャにかかる大きな力をラック歯に係合したラチェット爪で受けるものであるため、ラチェット爪や揺動軸を含む揺動カムの破損や摩耗を防止するために、充分な強度としその大きさも充分な係合幅を確保できるものとする必要があった。
そのため、揺動カムとして、高価で、加工性の低い焼結金属等の材料を選択する必要があった。
また、一旦、噛み合い位置が前に進むと後退不可能な構造のため、例えば、極寒時にチェーン弾性伸びを生じさせるような運転をした場合、プランジャが本来の適切な噛み合い位置より前進してしまい、ラチェット爪を含む揺動カムにさらに大きな力を受けるという問題があった。
このような問題を抑制するためにバックラッシュ量を大きくすることも考えられるが、バックラッシュにより始動時の音が大きくなる問題があり、使用条件等に応じた最適なバックラッシュ量を設定することも困難であった。
さらに、組立やメンテナンス等の時にプランジャの突出を一時的に制止するためには、揺動カムを固定するための別途の構成と別途の操作を必要としていた。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するものであって、プランジャの動きを噛み合い位置で規制でき、プランジャにかかる大きな力を受けても破損や摩耗の発生が少なく、バックラッシュ量の設定が不要で、かつ、プランジャの噛み合い位置の前進、後退が自在なチェーンテンショナを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るチェーンテンショナは、一方が開放したプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、前記プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャと、前記プランジャを突出方向に付勢する付勢機構を備えたチェーンテンショナであって、前記プランジャの外周には、係合溝が設けられ、前記テンショナボディが、前記プランジャ収容穴の内周面から前記係合溝に向けて出没する係止部材と、前記係止部材の突出状態を維持・開放するカム部材と、前記カム部材を一方向に押圧する押圧部材と、前記カム部材を前記押圧部材の押圧方向と逆方向に押圧する油圧供給路とを備えたことにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本請求項1に係る発明のチェーンテンショナは、プランジャの外周には係合溝が設けられ、テンショナボディが、プランジャ収容穴の内周面から係合溝に向けて出没する係止部材と、係止部材の突出状態を維持・開放するカム部材と、カム部材を一方向に押圧する押圧部材と、カム部材を押圧部材の押圧方向と逆方向に押圧する油圧供給路とを備えたことにより、油圧の供給によってプランジャの往復動の制止、開放を自動的に切り替えることができ、エンジン等の運転及び停止に連動したプランジャの制止、開放の状態を変更することができる。
このことで、複数の係合溝を設けてプランジャの動きを任意の噛み合い位置で規制でき、プランジャの噛み合い位置の前進、後退が自在となる。
【0009】
また、プランジャ収容穴の内周面から係合溝に向けて係止部材を突出させてプランジャの係合溝と係合することでプランジャの動きを制止させるため、係合強度、係止部材の強度を向上させることができ、プランジャにかかる大きな力を受けても破損や摩耗の発生が少ない。
また、プランジャの自由な出没を許容する状態では、係合溝と係止部材の係合が解除されるため、バックラッシュ量の設定は不要となり、係止部材の破損や摩耗の発生もない。
さらに、油圧が供給されない状態でのカム部材の位置を、係止部材を突出させて係合溝に係合するようにすることで、組立やメンテナンス等の時にプランジャの突出を一時的に制止するためには、揺動カムを固定するための別途の構成や別途の操作を不要とすることができる。
【0010】
本請求項2に記載の構成によれば、カム部材が直線的に往復動するスライドバーであることにより、テンショナボディ内にカム部材を動作可能に配置するための構造が単純化され、複雑な構成や加工を必要とせず、大型化や高コスト化を抑制することができる。
本請求項3に記載の構成によれば、係止部材が、球形であることにより、係止部材を小型で強度の大きなものとすることが可能となるとともに、自由に回転可能なため、係合溝との当接箇所が一箇所に集中することがないため、さらに破損や摩耗の発生を抑制することが可能となる。
また、プランジャとカム部材を近接して配置することが可能となり、大型化を抑制することができる。
本請求項4に記載の構成によれば、係合溝が螺旋状に形成されていることにより、係合溝と係止部材が係合しても、係合溝と係止部材との摺動抵抗及びプランジャのプランジャ収容孔内での軸心周りの回転抵抗を受け、低速でプランジャの出没が許容される。
このことにより、始動時等にプランジャに大きな力を受けた場合、バタつくことなくプランジャが低速で移動するため、始動時等の過度な力を吸収可能で、かつ、騒音も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態であるチェーンテンショナの側方視及び正面視の断面図。
図2図1のチェーンテンショナのカム部材の側面図及び正面図。
図3】本発明の第1実施形態であるチェーンテンショナの動作説明図。
図4】本発明の第1実施形態の第1変形例の正面視の断面図。
図5図4のチェーンテンショナのカム部材の両側面図及び正面図。
図6】本発明の第1実施形態の第2変形例の正面視の断面図。
図7図6のチェーンテンショナのカム部材の両側面図及び正面図。
図8】本発明の第1実施形態の第3変形例の正面視の断面図。
図9図8のチェーンテンショナのカム部材の両側面図及び正面図。
図10】本発明の第2実施形態であるチェーンテンショナの側方視及び正面視の断面図。
図11図8のチェーンテンショナのプランジャの側面図。
図12】本発明の第3実施形態であるチェーンテンショナの側方視及び正面視の断面図。
図13図12のチェーンテンショナのカム部材の側面図及び正面図。
図14】本発明の第4実施形態であるチェーンテンショナの側方視及び正面視の断面図。
図15図14のチェーンテンショナのカム部材の両側面図及び正面図。
図16】従来公知のチェーンテンショナの側方視の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、一方が開放したプランジャ収容穴を有するテンショナボディと、プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャと、プランジャを突出方向に付勢する付勢機構を備えたチェーンテンショナであって、プランジャの外周には、係合溝が設けられ、テンショナボディが、プランジャ収容穴の内周面から係合溝に向けて出没する係止部材と、係止部材の突出状態を維持・開放するカム部材と、カム部材を一方向に押圧する押圧部材と、カム部材を押圧部材の押圧方向と逆方向に押圧する油圧供給路とを備え、プランジャの動きを噛み合い位置で規制でき、プランジャにかかる大きな力を受けても破損や摩耗の発生が少なく、バックラッシュ量の設定が不要で、かつ、プランジャの噛み合い位置の前進、後退が自在なものであれば、その具体的な構成は如何なるものであってもよい。
【0013】
本発明のチェーンテンショナのテンショナボディ、プランジャ、係止部材、カム部材等の具体的な素材は、チェーンの張力を適正に保持するための強度を有するものであれば如何なるものでも良く、強度、加工性、経済性の観点から鋼、鋳鉄、アルミ、アルミ合金等の金属系材料を用いるのが好ましい。
また、本発明のチェーンテンショナの付勢機構や押圧部材は、ばね等の弾性部材や油圧等の高圧流体、あるいはそれらを組み合わせたもの等、如何なるものであっても良い。
【実施例1】
【0014】
以下に、本発明の第1実施形態であるチェーンテンショナについて、図面に基づいて説明する。
本発明の第1実施形態であるチェーンテンショナ100は、図1図2に示すように、一方が開放したプランジャ収容穴を有するテンショナボディ110と、プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャ120と、プランジャ120を突出方向に付勢する付勢機構を備えている。
プランジャ120の外周には、係合溝121が設けられ、テンショナボディ110には、カム部材であるスライドバー132を収容するカム摺動孔113、プランジャ収容穴とカム摺動孔113に連通する出没孔112、カム摺動孔113に圧油を供給する油圧供給路114、カム摺動孔113から圧油を排出する油排出孔115が設けられている。
【0015】
出没孔112には、プランジャ収容穴の内周面から前記係合溝に向けて出没する球形の係止部材131が収容されている。
カム摺動孔113は、プランジャ収容穴の下方にプランジャ120の出没方向と垂直な方向に延びて設けられており、油圧供給路114が同一軸線上に連通し、油排出孔115が出没孔112と対向する位置に連通している。
スライドバー132は、図2に示すように、中央に大径部134、両端側に小径部135を有しており、カム摺動孔113に収容されて、押圧部材133によって油圧供給路114側に付勢されている。
【0016】
係止部材131は、スライドバー132の大径部134がカム摺動孔113の出没孔112に位置した際には、プランジャ収容穴の内周面から突出してプランジャ120の外周の係合溝121と係合してプランジャ120の動作を制止し、スライドバー132の小径部135がカム摺動孔113の出没孔112に位置した際には、カム摺動孔113側に退避して係合溝121と係合が解除されプランジャ120の動作を開放するように構成されている。
なお、本実施形態では、スライドバー132は左右対称の単純な形状であるため、スライドバー132の製造が容易であるとともに、チェーンテンショナ100を製造組立する際に、カム摺動孔113へのスライドバー132の挿入方向を揃える必要はなく、組立も容易となる。
【0017】
以上のように構成されたチェーンテンショナ100の動作について、図3に基づいて説明する。
まず、エンジン停止時及び始動直後の油圧供給路114に油圧が供給されるまでのタイムラグの間は、図3aに示すように、スライドバー132は油圧供給路114側に押圧されており、スライドバー132の大径部134がカム摺動孔113の出没孔112に位置し、係止部材131がプランジャ収容穴の内周面から突出してプランジャ120の外周の係合溝121と係合してプランジャ120の動作を制止している。
このことで、エンジン始動時のチェーンの大きな張力変動によるバタつきが防止され、騒音も低減される。
【0018】
次に、エンジン始動後しばらくすると、図3bに示すように、油圧供給路114から油が供給され、油圧による図示左方向への押圧力が押圧手段の押圧力より大きくなると、図3cに示すように、スライドバー132が図示左方向にスライドし、スライドバー132の小径部135がカム摺動孔113の出没孔112に位置し、図3dに示すように、係止部材131がカム摺動孔113側に退避し、係止部材131と係合溝121との係合が解除されてプランジャ120の動作が開放される。
この時、スライドバー132の大径部134の図示右側の小径部135とカム摺動孔113との隙間から漏出した油は、図3cに示すように、油排出孔115から排出されるため、油圧により出没孔112内で係止部材131を突出させることはなく、確実に係止部材131と係合溝121との係合が解除される。
【0019】
エンジンが停止すると、油圧供給路114からの油の供給が停止し、図3eに示すように、押圧手段の押圧力によりスライドバー132が図示右方向にスライドする。
そして、図3fに示すように、スライドバー132の大径部134が出没孔112に達すると、係止部材131が出没孔112から突出し、図3gに示すように、プランジャ120の係合溝121と係合してプランジャ120の動作をその位置で制止する。
なお、組立やメンテナンス等の時も、エンジン停止時の図3a、図3gと同様の状態であり、押圧手段の押圧力によりスライドバー132が図示右方向に固定されるため、プランジャの突出を一時的に制止するための別途の構成や別途の操作は不要である。
【0020】
本実施形態では、スライドバー132を中央に大径部134、両端側に小径部135を有する左右対称の形状としたが、さまざまな形態とすることができる。
例えば、第1変形例のチェーンテンショナ100aは、図4図5に示すように、スライドバー132aの中央から押圧部材133a側を全て大径部134aとし、端面から中空穴136aを設け、押圧部材133aであるコイルばねが中空穴136aの底部を押圧するものである(他の構成は、前述の第1実施形態と同様である。)。
このことで、スライドバー132aを軽量化することができる。
【0021】
第2変形例のチェーンテンショナ100bは、図6図7に示すように、第1変形例と同様に、スライドバー132bの中央から押圧部材133b側を全て大径部134bとし、端面から中空穴136bを、押圧部材133bであるコイルばねが中空穴136bの底部を押圧するものである。
さらに、本変形例では、大径部134bが油圧供給路114b側の端部にも設けられている(他の構成は、前述の第1変形例と同様である。)。
このことで、寸法精度が要求されるスライドバー132bの内周面が、カム摺動孔113bの大径部134bの径のみとなり、カム摺動孔113bの加工が容易となる。
【0022】
第3変形例のチェーンテンショナ100cは、図8図9に示すように、スライドバー132cの中央に大径部134cを配し、両側方に小径部135cを配し、さらに両端部に大径部134cを配しており、両端面から中空穴136cを設け、押圧部材133cであるコイルばねが中空穴136cの底部を押圧するものである(他の構成は、前述の第2変形例と同様である。)。
このことで、変形例2と同様に、寸法精度が要求されるスライドバー132cの内周面が、カム摺動孔113cの大径部134cの径のみとなり、カム摺動孔113cの加工が容易となるとともに、左右対称形状となり、前述の第1実施形態と同様に、チェーンテンショナ100cを製造組立する際に、カム摺動孔113cへのスライドバー132cの挿入方向を揃える必要はなく、組立も容易となる。
【実施例2】
【0023】
本発明の第2実施形態であるチェーンテンショナ200は、図10図11に示すように、プランジャ220の外周には、螺旋状の係合溝221が設けられており、他の構成は第1実施形態のものと同様である。
本実施形態では、係合溝221を螺旋状とすることによって、エンジン始動直後の油圧供給路214に油圧が供給されるまでのタイムラグの間の、係合溝221と係止部材231が係合していても、係合溝221と係止部材231との摺動抵抗及びプランジャ220のプランジャ収容孔内での軸心周りの回転抵抗を受けつつ、低速でプランジャ220の出没が許容される。
このことにより、プランジャ220に大きな力を受けた場合はプランジャ220が低速で移動して過度な力を吸収でき、かつ、高速で出没して振動したりバタつくことがなく、騒音も抑制できる。
【実施例3】
【0024】
本発明の第3実施形態であるチェーンテンショナ300は、図12図13に示すように、係止部材331が両端に半球状の端面を持ち中間に大径部を有する棒状に形成されており、出没孔312が長く段付きに形成され、他の構成は第1実施形態の第3変形例のものと同様である。
このことで、プランジャ収容穴とカム摺動孔313の距離を長くとれ、カム摺動孔313の加工が容易となる。
また、係止部材331を下方に押圧するように、段部にスプリング等を配置することで、係止部材331が常にスライドバー332に押圧されて出没孔312内で上下に移動することを抑制できるため、振動等により騒音を発生することが防止される。
【実施例4】
【0025】
本発明の第4実施形態であるチェーンテンショナ400は、図14図15に示すように、スライドバー432の中央から押圧部材433側を全て大径部434とし、端面から中空穴436を設け、押圧部材433であるコイルばねが中空穴436の底部を押圧するものである。
さらに、大径部434が油圧供給路414側の端部にも設けられ、該油圧供給路414側の大径部434の中央側に小径部435が設けられ、中央の大径部434から小径部435に向かって連続的に径が小さくなるテーパ部437が設けられている。
他の構成は、前述の第1実施形態の第2変形例と同様である。
このことで、油圧供給路414から油の供給が停止し、スライドバー432が図示右方向にスライドした際、係止部材431がスライドバー432にテーパ部437の途中に接触している段階で係止部材431と係合溝421とが完全に係合するように設計することで、停止時に係止部材431が固定され、振動等により騒音を発生することが防止されるとともに、熱変形等や製造誤差による係合不良を防止することができる。
【0026】
以上述べた各実施形態においては、カム部材であるスライドバーの断面形状が円柱状あるいは円筒状のものを示したが、楕円状、多角柱状等の他の形状であってもよい。
また、カム部材を円周方向に段部を設けた回転型や揺動型のものとし、その形状に応じた収容部をテンショナボディに設け、カム部材の回転、揺動方向に対して押圧部材及び油圧を作用させるように構成してもよい。
また、係止部材についても、球状及び断面形状が円柱状のものを示したが、他の形状であってもよい。
さらに、カム部材との接触部分やプランジャの係合溝への係合部分の形状も、半球状のものを示したが、いかなる形状であってもよく、両端で異なる形状としてもよい。
また、プランジャの係合溝も、その数、断面形状、配置範囲等は、係合する係止部材の形状、材質、配置位置等を考慮して、適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0027】
100、200、300、400、500 ・・・ チェーンテンショナ
110、210、310、410、510 ・・・ テンショナボディ
112、212、312、412 ・・・ 出没孔
113、213、313、413 ・・・ カム摺動孔
114、214、314、414 ・・・ 油圧供給路
115、215、315、415 ・・・ 油排出路
120、220、320、420、520 ・・・ プランジャ
121、221、321、421 ・・・ 係合溝
522 ・・・ ラック歯
131、231、331、431 ・・・ 係止部材
132、232、332、432 ・・・ スライドバー(カム部材)
133、233、333、433 ・・・ 押圧部材
134、234 ・・・ 大径部
135、235 ・・・ 小径部
436 ・・・ 中空穴
437 ・・・ テーパ部
530 ・・・ 揺動カム
531 ・・・ ラチェット爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16