(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190328
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】フックキーパ付き釣竿
(51)【国際特許分類】
A01K 87/00 20060101AFI20170821BHJP
A01K 97/06 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
A01K87/00 640D
A01K87/00 640Z
A01K97/06 501
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-133465(P2014-133465)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-10352(P2016-10352A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮介
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−290037(JP,A)
【文献】
米国特許第3815273(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00
A01K 97/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿杆の外周面に対して固定される固定部と、前記固定部と一体形成され釣針が係止される係止部とを具備したフックキーパを有するフックキーパ付き釣竿において、
前記フックキーパは、線状の部材を屈曲することで形成されており、
前記係止部は、前記固定部の先端部から立ち上げられた部分の頂部である湾曲頂部と、前記湾曲頂部から次第に前記竿杆の外周面に向けて下降する下方湾曲部と、前記下方湾曲部から上昇して釣針が掛けられるループ部とを備えた半リング状に構成されており、
前記竿杆の外周面に、前記立ち上げられた係止部の基端部分に当て付いて前記係止部と竿杆の外周面との間に釣糸が入り込むことを阻止する侵入阻止部材を設けたことを特徴とするフックキーパ付き釣竿。
【請求項2】
前記侵入阻止部材は、前記竿杆の外周面に嵌入され、端面が前記立ち上げられた係止部の基端部分に当て付く管状体であることを特徴とする請求項1に記載のフックキーパ付き釣竿。
【請求項3】
前記侵入阻止部材は、前記立ち上げられた係止部の基端部分に当て付くOリングであることを特徴とする請求項1に記載のフックキーパ付き釣竿。
【請求項4】
竿杆の外周面に対して固定される固定部と、前記固定部と一体形成され釣針が係止される係止部とを具備したフックキーパを有するフックキーパ付き釣竿において、
前記フックキーパは、線状の部材を屈曲することで形成されており、
前記係止部は、前記固定部の先端部から立ち上げられた部分の頂部である湾曲頂部と、前記湾曲頂部から次第に前記竿杆の外周面に向けて下降する下方湾曲部と、前記下方湾曲部から上昇して釣針が掛けられるループ部とを備えた半リング状に構成されており、
前記竿杆の外周面には、端面に切欠部が形成された筒体である侵入阻止部材が嵌入されており、
前記立ち上げられた係止部の基端部分が、前記切欠部の領域に配置されていることを特徴とするフックキーパ付き釣竿。
【請求項5】
前記筒体には、前記竿杆の外周面との間で前記固定部を嵌め込む溝部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のフックキーパ付き釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸に締結された釣り針を引っ掛けることが可能なフックキーパ付きの釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣糸の先端に締結された仕掛けの釣針を固定するためのフックキーパが知られており、フックキーパは、釣り場を移動する場合など、仕掛けが絡んだり木や身体等の他物に掛かることを防止するために利用される。例えば、特許文献1には、弾力性のある材料で形成された線材を略楕円形のリング状に形成して係止部(フック部)とし、その中央部分を竿杆の外周面に糸止めした構成が開示されている。また、例えば、特許文献2には、釣竿の基端側の竿杆外周面に取り付ける取り付け部材と、取り付け部材と一体的に設けられ釣針を引っ掛ける係止部とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−187265号
【特許文献2】特開平2−128636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のフックキーパでは、釣針を係止部に引っ掛けた状態で釣糸が弛むと、釣糸が係止部と竿杆外周面との間の隙間に入り込んで糸切れや釣糸の損傷が生じる可能性がある。特に、係止部は、釣針を引っ掛け易いように竿杆外周面に対してある程度の傾斜角度で立ち上げられているため、立ち上がった基端部分と竿杆外周面との間には、釣糸が挟持され易い隙間が生じた状態となっている。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、釣針を引っ掛ける係止部と竿杆外周面との間に釣糸が入り込むことを防止するフックキーパを備えた釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係るフックキーパ付き釣竿は、竿杆の外周面に対して固定される固定部と、前記固定部と一体形成され釣針が係止される係止部とを具備したフックキーパを有するフックキーパ付き釣竿において、
前記フックキーパは、線状の部材を屈曲することで形成されており、前記係止部は、前記固定部の先端部から立ち上げられた部分の頂部である湾曲頂部と、前記湾曲頂部から次第に前記竿杆の外周面に向けて下降する下方湾曲部と、前記下方湾曲部から上昇して釣針が掛けられるループ部とを備えた半リング状に構成されており、前記竿杆の外周面に、前記係止部の基端部分に当て付いて前記係止部と竿杆の外周面との間に釣糸が入り込むことを阻止する侵入阻止部材を設けたことを特徴とする。
また、上記した目的を達成するために、本発明に係るフックキーパ付き釣竿は、竿杆の外周面に対して固定される固定部と、前記固定部と一体形成され釣針が係止される係止部とを具備したフックキーパを有するフックキーパ付き釣竿において、前記フックキーパは、線状の部材を屈曲することで形成されており、前記係止部は、前記固定部の先端部から立ち上げられた部分の頂部である湾曲頂部と、前記湾曲頂部から次第に前記竿杆の外周面に向けて下降する下方湾曲部と、前記下方湾曲部から上昇して釣針が掛けられるループ部とを備えた半リング状に構成されており、前記竿杆の外周面には、端面に切欠部が形成された筒体である侵入阻止部材が嵌入されており、前記係止部の基端部分が、前記切欠部の領域に配置されていることを特徴とする。
【0007】
上記した構成のフックキーパ付きの釣竿では、たとえば釣り場を移動するに際しては、釣糸の先端に締結された仕掛けの釣針をフックキーパの係止部に引っ掛ける。この場合、穂先と係止部との間の釣糸(ここでの釣糸は、道糸、或いはハリスが該当する)が緩んでも、その釣糸は、前記侵入阻止部材によって係止部と竿杆の外周面との間に入り込むことはないため、釣糸の糸切れや損傷が確実に防止される。
【0008】
なお、上記したフックキーパの固定部は、竿杆の外周面に対して、糸止め等によって直接固定されるもの、或いは、竿杆の外周面に嵌入される筒体等に固定されて、竿杆の外周面に対して間接的に固定されるものであっても良い。また、侵入阻止部材は、釣針が掛けられる係止部と竿杆の外周面との間の隙間を生じさせないものであれば良く、竿杆の外周面に別途装着するもの、或いは、上記したような筒体に、釣糸の侵入を阻止するような機能を持たせても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、釣針を係止部に係止した際、係止部と竿杆外周面との間に釣糸が入り込むことが防止され、釣糸の糸切れや損傷等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るフックキーパ付きの釣竿の主要部を示す図。
【
図2】竿杆の外周面に装着されるフックキーパの第1の実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は拡大断面図。
【
図3】竿杆の外周面に装着されるフックキーパの第2の実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は拡大断面図。
【
図4】竿杆の外周面に装着されるフックキーパの第3の実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はフックキーパの装着状態を示す斜視図。
【
図5】竿杆の外周面に嵌入される筒体とフックキーパの構成を示しており、(a)は筒体の縦断面図、(b)は筒体の横断面図、(c)はフックキーパを筒体に嵌入した状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係るフックキーパ付き釣竿について説明する。
図1及び
図2は第1の実施形態を示す図であり、
図1は釣竿の主要部を示す図、
図2は竿杆の外周面に装着されるフックキーパを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は拡大断面図である。
【0012】
釣竿1は、複数の竿杆(図示せず)を振出式に構成したり、並継式にすることで構成されており、
図1に示すように、基端となる竿杆(元竿杆)1Aの外周面にフックキーパ10が装着されている。前記釣竿を構成する各竿杆は、繊維強化樹脂製の管状体で形成されており、例えば、強化繊維(主に炭素繊維やガラス繊維等)にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し加熱工程を経た後、脱芯する等、定法に従って形成することが可能である。なお、本発明に係る釣竿は、1本竿として構成されていても良く、竿杆については、中実状に構成されていても良い。
【0013】
前記元竿杆1Aには、公知のように、魚釣用リールを固定するリールシート2が設けられており、竿杆の外周面には、魚釣用リールから繰り出される釣糸を挿通させる複数の釣糸ガイド(図示せず)が固定されている。また、元竿杆1Aには、握持性を向上するために、複数のグリップ5A,5Bが設けられるとともに、リールシート2の反対側にトリガー6が設けられている。本実施形態のフックキーパ10は、前記グリップ5A,5Bの間の元竿杆1Aの外周面に装着されている。
以下、フックキーパ10の構成について説明する。
【0014】
フックキーパ10は、竿杆1Aの外周面に対して固定される固定部11と、固定部11と一体形成され、釣針が係止される係止部12とを具備している。本実施形態の固定部11と係止部12は、アルミニウム等の金属によって構成された線状の部材を屈曲することで形成されており、線材の先端を180°折り返して竿杆の軸方向に沿うように延在させ、両側が対称形状となるように屈曲した形状となっている。具体的には、固定部11は、竿杆1Aの表面に載置されるように軸方向に水平状に延出しており、その基端側(穂先竿側)の端部が垂直に屈曲されて屈曲部11aが形成されるとともに、固定部11の先端部11b(フックキーパ10の中間部分)が竿杆外周面から立ち上げられ、立ち上げられた部分よりも先側に釣針が係止される係止部12が形成されている。
【0015】
前記屈曲部11a及び固定部11は、グリップ5Aの基端側に装着されるキャップ7に嵌め込まれて、フックキーパ10の位置決めする機能を備えていても良い。例えば、キャップ7の内面に固定部11が嵌合する溝を形成しておき、この溝に固定部11を嵌合して屈曲部11aをキャップ7に係止することでフックキーパ10をキャップ7に装着固定することが可能である。或いは、竿杆に対してフックキーパ10を固定するのは、例えば、
図2に示すように、屈曲部11aをグリップ5A側に当て付ける等して位置決めした状態で固定部11に対して糸13を巻回して糸止めし、表面から樹脂を塗布することで竿杆1Aの外周面に固定しても良い。また、このような構成では、糸13の部分に、
図1に示すようなキャップ7を嵌めて糸13が露出しないようにしても良い。
【0016】
前記先端部11bより先側は、竿杆外周面から立ち上げられて釣針を掛けることが可能となるように半リング状(平面視した際、糸13による糸止部から先が閉じた空間を規定する半リング状になっている)に構成された係止部12となっており、係止部12は、湾曲頂部12a、湾曲頂部12aから次第に竿杆外周面に向けて下降する下方湾曲部12b、及び下方湾曲部12bから上昇して釣針が掛けられるループ部12cを備えている。
【0017】
また、前記竿杆1Aには、前記係止部12と竿杆1Aの外周面との間に釣糸が入り込むことを阻止する侵入阻止部材20が設けられている。上記したように、係止部12は、竿杆1Aの外周面から立ち上がった状態で釣針が掛けられることから、竿杆1Aの外周面と係止部12との間は隙間が生じてしまい、この部分に釣糸(釣針に連結されたハリスや魚釣用リールからの道糸)が入り込む可能性がある。このため、そのような隙間を埋めるように侵入阻止部材20を設けることで、釣糸の侵入を防止して糸切れ等が生じないようにしている。
【0018】
本実施形態の侵入阻止部材20は、竿杆1Aの外周面に嵌入される管状体として構成されており、
図2(c)に示すように、その端面(端縁)20aが、前記立ち上げられた係止部12の基端部分(固定部11の先端部11b)に対して当て付くことで、前記隙間に釣糸が侵入できないようにしている。すなわち、釣糸は、
図2(c)の符号Pで示す部分によって、竿杆1Aの外周面と係止部12との間の隙間に入り込むことができないことから、糸切れや損傷を防止することが可能となる。
【0019】
本実施形態の係止部12は、上記のように湾曲頂部12aを備えた構成となっているため、緩んだ釣糸が引っ掛かり難くなっている。また、下方湾曲部12bと侵入阻止部材20との隙間を狭くすることで、竿杆1Aの外周面と係止部12との間の隙間に釣糸を入り難くして糸切れ等を確実に防止することが可能となる。さらに、下方湾曲部12bからループ部12cを上昇するように形成したことで、釣針を掛け易くすることが可能となる。
なお、前記係止部12については、掛けた釣針が外れないように、線状の部材が閉じた状態となるように屈曲されたリング状(半リング状)になっていれば良く、その全体形状については
図2に示すような形状に限定されることはない。
【0020】
図3(a)〜(c)は、フックキーパの第2の実施形態を示す図であり、侵入阻止部材をOリングとして構成した例を示している。すなわち、侵入阻止部材22を竿杆1Aの外周面に装着されるOリングとして構成しており、このOリングを、前記立ち上げられた係止部12の基端部分(固定部11の先端部11b)に対して当て付くように装着することで、竿杆1Aの外周面と係止部12との間の隙間に釣糸が侵入できないようにしている(釣糸は、
図3(c)の符号Pで示す部分によって竿杆1Aの外周面と係止部12との間の隙間に入り込むことが防止される)。
【0021】
以上のように、侵入阻止部材は、竿杆の外周面に直接固定されたフックキーパ10に対して、竿杆1Aの外周面と係止部12との間の隙間に釣糸が入り込まないような部材で構成することが可能であり、本実施形態のように、Oリングで構成することによって侵入阻止部材の構成が簡略され、コストを低減することが可能となる。
【0022】
図4(a)(b)、及び
図5(a)〜(c)は、フックキーパの第3の実施形態を示す図である。
本実施形態では、侵入阻止部材24を、竿杆1Aの外周面に嵌入されてフックキーパ10を固定する筒体によって構成している。
【0023】
具体的に、竿杆1Aの外周面に嵌入される侵入阻止部材(以下、筒体24と称する)には、その端面24Aの一部に凹状の切欠部24aが形成されており、この切欠部24aの領域に、上記した実施形態のフックキーパと同様な構成のフックキーパ10の係止部12が配置されるように固定されている。すなわち、
図5(c)に示すように、フックキーパ10は、固定部11の先端部11bから立ち上がる部分が、筒体24の端面24Aよりも固定部側となるように筒体24に対して固定されている。この場合、フックキーパ10は、筒体24の端面24Aよりも固定部側で係止部12が立ち上げられた状態になっていれば良い。
【0024】
このような構成の筒体24を設けることにより、釣針に連結されたハリスや魚釣用リールからの道糸は、端面24Aによって竿杆の外周面と係止部12との間に入り込むことが防止され、糸切れや損傷等が生じることを防止することが可能となる。
【0025】
また、フックキーパ10は、筒体24に対して固定された状態で、筒体24が竿杆1Aの外周面に嵌入されることで竿杆1Aに対して固定することができるため、フックキーパ10の固定が容易に行えるようになる。この場合、筒体24の内面に、竿杆1Aの外周面との間で固定部11を嵌め込むような溝部24bを形成しておくことが好ましく、これにより、組み付け作業が容易に行えるようになる。また、フックキーパ10を筒体24に対して固定する場合、溝部24bに固定用の樹脂30を塗布しても良く、この樹脂30が端面24A側に露出した状態になることで、その樹脂30によっても釣糸の侵入阻止効果を得ることが可能となる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、釣竿は、リールシートが装着されていない構成であっても良い。また、フックキーパ10は、第1、第2の実施形態のように、竿杆の外周面に直接装着されるものであっても良いし、第3実施形態のように、筒体等の竿杆とは別部材に固定し、別部材を竿杆に対して固定し、間接的に竿杆に対して装着するものであっても良い。さらに、釣針が係止される係止部については、そのループ部が釣竿の基端側に向くように構成されていたが、穂先側に向くように構成されていても良く、ループ部の形状についても適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 釣竿
1A 竿杆
10 フックキーパ
11 固定部
12 係止部
20 管状体(侵入阻止部材)
22 Oリング(侵入阻止部材)
24 筒体(侵入阻止部材)