特許第6190330号(P6190330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190330
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】熱エネルギー回収装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 7/02 20060101AFI20170821BHJP
   F01K 25/00 20060101ALI20170821BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20170821BHJP
   F01K 7/22 20060101ALI20170821BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20170821BHJP
   F01D 17/24 20060101ALI20170821BHJP
   F01K 13/00 20060101ALI20170821BHJP
   F01K 17/04 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F01K7/02
   F01K25/00 H
   F01D25/12 Z
   F01K7/22 Z
   F01D17/00 H
   F01D17/24 P
   F01K13/00 E
   F01K17/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-135628(P2014-135628)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-14329(P2016-14329A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和雄
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 亮
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−019303(JP,A)
【文献】 特開2012−246902(JP,A)
【文献】 特開2014−109252(JP,A)
【文献】 特開2003−013707(JP,A)
【文献】 特開2013−076383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00
F01D 17/24
F01D 25/12
F01K 7/02
F01K 7/22
F01K 13/00
F01K 17/04
F01K 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した作動媒体が流入する膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記蒸発器、前記膨張機及び前記凝縮器を接続する循環流路と、
前記循環流路のうち前記凝縮器と前記蒸発器との間の部位に設けられており、前記循環流路から流入した作動媒体の一部を分流媒体として分流させることが可能なポンプと、
前記作動媒体のうち前記ポンプで分流された前記分流媒体を流す分流流路と、
前記分流流路に設けられており前記分流媒体を加熱するための加熱器と、を備え、
前記ポンプは、電動機と、前記循環流路に接続される第一流路と、前記第一流路を流れる作動媒体の一部を前記分流媒体として分流させるとともにその内部を流れる前記分流媒体によって前記電動機が冷却されるように配置された第二流路と、を有し、
前記分流流路は、前記第二流路と前記膨張機の中段部とを接続している、熱エネルギー回収装置。
【請求項2】
請求項に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記分流流路のうち前記ポンプと前記加熱器との間の部位、及び、前記循環流路のうち前記膨張機と前記凝縮器との間の部位又は前記凝縮器を接続する分岐流路と、
前記第二流路から前記分流流路に流出した分流媒体のうち前記分岐流路に分流する前記分流媒体の流量を調整可能な流量調整弁と、をさらに備える、熱エネルギー回収装置。
【請求項3】
請求項に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記膨張機に流入する前記分流媒体の過熱度が一定の範囲内に収まるように前記流量調整弁の開度を調整する制御部をさらに備える、熱エネルギー回収装置。
【請求項4】
請求項ないしのいずれかに記載の熱エネルギー回収装置において、
前記分流流路のうち前記ポンプと前記加熱器との間の部位に設けられており、前記分流媒体の圧力を調整可能な圧力調整弁をさらに備える、熱エネルギー回収装置。
【請求項5】
請求項ないしのいずれかに記載の熱エネルギー回収装置において、
前記循環流路のうち前記蒸発器と前記膨張機との間の部位に設けられており、前記作動媒体に含まれる油を回収する油回収機と、
前記油回収機で回収された油を前記膨張機に供給するための油供給流路と、をさらに備え、
前記加熱器は、前記油により前記分流媒体が加熱されるように前記油供給流路に接続されている、熱エネルギー回収装置。
【請求項6】
請求項ないしのいずれかに記載の熱エネルギー回収装置において、
前記分流流路のうち前記ポンプと前記加熱器との間の部位に設けられた熱交換器をさらに備え、
前記熱交換器は、前記分流媒体が流れる分流媒体流路と、前記分流媒体流路を流れる分流媒体を加熱するための媒体であって前記蒸発器において前記作動媒体と熱交換した後の加熱媒体が流れる加熱媒体流路と、を有する、熱エネルギー回収装置。
【請求項7】
請求項ないしのいずれかに記載の熱エネルギー回収装置において、
前記分流流路のうち前記ポンプと前記加熱器との間の部位に設けられた熱交換器をさらに備え、
前記熱交換器は、前記分流媒体が流れる分流媒体流路と、前記分流媒体流路を流れる分流媒体を加熱するための媒体であって前記膨張機から流出した後でかつ前記凝縮器に流入する前の作動媒体が流れる加熱媒体流路と、を有する、熱エネルギー回収装置。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれかに記載の熱エネルギー回収装置において、
前記膨張機は、前記作動媒体を膨張させる第一膨張部と、前記第一膨張部で膨張した後の作動媒体をさらに膨張させる第二膨張部と、を有し、
前記分流流路は、前記中段部である前記第一膨張部及び前記第二膨張部の間に接続されている、熱エネルギー回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等の各種設備の排熱から動力を回収する熱エネルギー回収装置が知られている。例えば、特許文献1には、蒸発器と、蒸発器から流出した作動媒体が流入する膨張機と、膨張機に接続された発電機本体と、膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、凝縮器から流出した作動媒体を蒸発器へ送出する循環ポンプと、作動媒体が循環する循環配管と、熱媒体ラインと、を備えた発電システムが開示されている。この発電システムでは、循環ポンプとして、いわゆるリバースサーキュレーション形のポンプが用いられている。具体的に、循環ポンプは、電動機を有しており、循環配管から当該循環ポンプに流入した液状の作動媒体の一部で前記電動機を冷却した後に当該作動媒体を熱媒体として熱媒体ラインに排出する。熱媒体ラインは、循環ポンプと循環配管のうち膨張機と凝縮器との間の部位とを接続している。熱媒体ラインは、循環配管のうち循環ポンプと蒸発器との間の部位に設けられた予熱用熱交換器を通るように構成されている。このため、循環ポンプから熱媒体ラインに排出された熱媒体(電動機から熱を受け取った後の作動媒体)は、予熱用熱交換器において、循環ポンプから吐出された作動媒体に熱を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−019303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される発電システムでは、熱媒体が循環ポンプの電動機を冷却した際に当該電動機から受け取った熱エネルギーを作動媒体に与えることにより、電動機の排熱が有効に回収されている。しかしながら、このシステムでは、動力の回収効率に改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、ポンプの電動機を冷却しつつ、動力回収効率の向上が可能な熱エネルギー回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する手段として、本発明は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した作動媒体が流入する膨張機と、前記膨張機に接続された動力回収機と、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記蒸発器、前記膨張機及び前記凝縮器を接続する循環流路と、前記循環流路のうち前記凝縮器と前記蒸発器との間の部位に設けられており、前記循環流路から流入した作動媒体の一部を分流媒体として分流させることが可能なポンプと、前記作動媒体のうち前記ポンプで分流された前記分流媒体を流す分流流路と、を備え、前記ポンプは、電動機と、前記循環流路に接続される第一流路と、前記第一流路を流れる作動媒体の一部を前記分流媒体として分流させるとともにその内部を流れる前記分流媒体によって前記電動機が冷却されるように配置された第二流路と、を有し、前記分流流路は、前記第二流路と前記膨張機の中段部とを接続している、熱エネルギー回収装置を提供する。
【0007】
本発明では、ポンプから第一流路を通じて循環流路に吐出された作動媒体に加え、ポンプから第二流路を通じて分流流路に流出した分流媒体(電動機から熱を受け取った後の作動媒体)も膨張機に流入するので、従来(ポンプから循環流路に吐出された作動媒体のみが膨張機に流入し、ポンプで分流された分流媒体は膨張機に流入しない場合)に比べて膨張機に流入する作動媒体の総量が増大するとともに、電動機から受け取った熱も回収される。よって、動力回収機での動力回収率が向上する。ここで、第二流路から分流流路に流出した分流媒体の圧力は、第一流路から循環流路に吐出された作動媒体の圧力よりも小さいものの、分流流路は、膨張機の中段部、すなわち作動媒体の圧力が膨張機の入口よりも低くなっている部位に接続されているので、第二流路から分流流路へ流出した分流媒体の膨張機への流入が許容される。
【0008】
この場合において、前記分流流路に設けられており前記分流媒体を加熱するための加熱器をさらに備えることが好ましい。
【0009】
この態様では、分流媒体が膨張機に流入する前に加熱器において分流媒体をより確実に気相とすることができる。よって、膨張機の駆動が安定する。
【0010】
さらにこの場合において、前記分流流路のうち前記ポンプと前記加熱器との間の部位、及び、前記循環流路のうち前記膨張機と前記凝縮器との間の部位又は前記凝縮器を接続する分岐流路と、前記第二流路から前記分流流路に流出した分流媒体のうち前記分岐流路に分流する前記分流媒体の流量を調整可能な流量調整弁と、をさらに備えることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、電動機を有効に冷却しつつ、気相の分流媒体を膨張機に流入させることが可能となる。具体的に、電動機を十分に冷却可能な分流媒体の流量を確保しようとすると、第二流路を通じて分流流路に流出する分流媒体の流量が多くなる場合がある。この場合において、分岐流路及び流量調整弁を備えていない場合には、分流流路に流出した分流媒体の全量が加熱器に流入するので、その分流媒体が加熱器において気相とならずに気液二相の状態で膨張機に流入するおそれがある。これに対し、本発明では、分岐流路及び流量調整弁を備えているので、分流媒体の分流流路への流出量が多くなった場合であっても、加熱器において分流媒体が気相となるように分岐流路へ分流させる分流媒体の流量を調整可能となる。このため、電動機の冷却に必要となる分流媒体の流量を制限する必要がなくなる。例えば、流量調整弁の膨張機側開度がゼロの状態からこの膨張機側開度を少しずつ大きくすることによって、加熱器で気相となる流量の分流媒体が加熱器に流入するように調整する。よって、電動機の冷却と気相の分流媒体を膨張機に流入させることとを両立することができる。
【0012】
加えて、前記膨張機に流入する前記分流媒体の過熱度が一定の範囲内に収まるように前記流量調整弁の開度を調整する制御部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、分流媒体は、一定の範囲内の過熱度で膨張機に流入するので、膨張機の駆動がより安定する。
【0014】
また、本発明において、前記分流流路のうち前記ポンプと前記加熱器との間の部位に設けられており、前記分流媒体の圧力を調整可能な圧力調整弁をさらに備えることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、分流媒体の圧力を膨張機の中段部に流入しやすい圧力に調整可能となる。例えば、圧力調整弁の開度(設定圧)が最小の状態からこの開度を少しずつ大きくすることによって、分流媒体の圧力を膨張機の中段部に流入しやすい圧力に調整する。
【0016】
また、本発明において、前記循環流路のうち前記蒸発器と前記膨張機との間の部位に設けられており、前記作動媒体に含まれる油を回収する油回収機と、前記油回収機で回収された油を前記膨張機に供給するための油供給流路と、をさらに備え、前記加熱器は、前記油により前記分流媒体が加熱されるように前記油供給流路に接続されていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、油回収機で回収された油の排熱を有効に利用することにより分流媒体を加熱することが可能となる。さらに、加熱器において分流媒体によって冷却されることにより油の粘度が上昇するので、膨張機におけるいわゆる油膜切れの発生が抑制される(潤滑性能が向上する)。
【0018】
また、本発明において、前記分流流路のうち前記ポンプと前記加熱器との間の部位に設けられた熱交換器をさらに備えることが好ましい。この場合において、前記熱交換器は、前記分流媒体が流れる分流媒体流路と、前記分流媒体流路を流れる分流媒体を加熱するための媒体であって前記蒸発器において前記作動媒体と熱交換した後の加熱媒体が流れる加熱媒体流路と、を有していてもよい。
【0019】
このようにすれば、蒸発器で作動媒体と熱交換した後の加熱媒体の熱エネルギーの残余分を有効に回収することにより分流媒体をさらに加熱することが可能となる。
【0020】
あるいは、前記熱交換器は、前記分流媒体が流れる分流媒体流路と、前記分流媒体流路を流れる分流媒体を加熱するための媒体であって前記膨張機から流出した後でかつ前記凝縮器に流入する前の作動媒体が流れる加熱媒体流路と、を有していてもよい。
【0021】
このようにすれば、膨張機で動力が回収された後(温度が低下した後)の作動媒体の熱エネルギーを有効に回収することにより分流媒体をさらに加熱することが可能となる。
【0022】
また、本発明において、前記膨張機は、前記作動媒体を膨張させる第一膨張部と、前記第一膨張部で膨張した後の作動媒体をさらに膨張させる第二膨張部と、を有し、前記分流流路は、前記中段部である前記第一膨張部及び前記第二膨張部の間に接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、ポンプの電動機を冷却しつつ、動力回収効率の向上が可能な熱エネルギー回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施形態の熱エネルギー回収装置の構成の概略を示す図である。
図2図1の熱エネルギー回収装置の制御部の制御内容を示すフローチャートである。
図3】本発明の第二実施形態の熱エネルギー回収装置の構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好ましい実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0026】
(第一実施形態)
本発明の一実施形態の熱エネルギー回収装置について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0027】
図1に示されるように、熱エネルギー回収装置は、蒸発器10と、油回収機12と、膨張機14と、動力回収機16と、凝縮器18と、ポンプ20と、蒸発器10、油回収機12、膨張機14、凝縮器18及びポンプ20をこの順に直列に接続する循環流路30と、分流流路32と、加熱器34と、分岐流路36と、を備えている。
【0028】
蒸発器10は、液状の作動媒体を蒸発させてガス状の作動媒体とする。具体的に、蒸発器10は、作動媒体が流れる作動媒体流路10aと、外部の熱源から供給される加熱媒体が流れる加熱媒体流路10bと、を有する。作動媒体流路10aに流入した液状の作動媒体は、加熱媒体流路10bに流入した加熱媒体と熱交換することにより蒸発する。蒸発器10に供給される加熱媒体としては、例えば、工場等から排出される温水や高温ガスが挙げられる。
【0029】
油回収機12は、循環流路30における蒸発器10の下流側の部位に設けられている。油回収機12は、作動媒体に含まれる油を分離する。油回収機12で回収された油は、油回収機12と膨張機14とを接続する油供給流路13を通じて膨張機14に供給される。
【0030】
膨張機14は、循環流路30における油回収機12の下流側の部位に設けられている。本実施形態では、膨張機14として、油回収機12から流出したガス状の作動媒体の膨張エネルギーにより回転駆動されるロータを有する容積式のスクリュー膨張機が用いられている。具体的に、膨張機14は、雌雄一対のスクリュロータからなる第一膨張部14aと、第一膨張部14aの下流側に設けられた雌雄一対のスクリュロータからなる第二膨張部14bと、各膨張部14a,14bを収容するケーシング14cと、を有している。
【0031】
第一膨張部14aは、循環流路30からケーシング14c内に流入した作動媒体の膨張エネルギーによって回転駆動される。第二膨張部14bは、第一膨張部14aの駆動により圧力が低下した作動媒体の有する膨張エネルギーによって回転駆動される。第二膨張部14bを駆動することにより圧力が低下した作動媒体は、ケーシング14cに形成された排出口から循環流路30に排出される。なお、膨張機14としては、容積式のスクリュー膨張機に限らず、遠心式のものやスクロールタイプのもの等が用いられてもよい。
【0032】
動力回収機16は、膨張機14に接続されている。本実施形態では、動力回収機16として発電機が用いられている。この動力回収機16は、膨張機14の一対のスクリュロータのうちの一方に接続された回転軸を有している。動力回収機16は、前記回転軸が前記スクリュロータの回転に伴って回転することにより電力を発生させる。なお、動力回収機16として、発電機の他、圧縮機等が用いられてもよい。
【0033】
凝縮器18は、循環流路30における膨張機14の下流側の部位に設けられている。凝縮器18は、膨張機14から流出した作動媒体を冷却媒体(冷却水等)で冷却することにより凝縮(液化)させる。
【0034】
ポンプ20は、循環流路30における凝縮器18の下流側の部位(凝縮器18と蒸発器10との間の部位)に設けられている。ポンプ20は、循環流路30から流入した作動媒体の一部を分流媒体として分流させることが可能となっている。具体的に、ポンプ20は、作動媒体を加圧する加圧部(本実施形態では羽根車)22と、加圧部22を駆動するための電動機24と、循環流路30に接続される第一流路26と、第一流路26から分岐した第二流路28と、を有している。
【0035】
第二流路28は、第一流路26を流れる作動媒体の一部を前記分流媒体として分流させる。第二流路28は、当該第二流路28内を流れる分流媒体によって電動機24が冷却される位置に配置されている。換言すれば、分流媒体は、第二流路28を通過する過程で電動機24と熱交換することによって当該電動機24から熱を受ける。
【0036】
分流流路32は、作動媒体のうちポンプ20で分流された分流媒体を流すための流路である。分流流路32は、ポンプ20の第二流路28と膨張機14の中段部(第一膨張部14aと第二膨張部14bとの間の部位)とを接続している。
【0037】
加熱器34は、分流流路32に設けられている。加熱器34は、分流媒体が流れる分流媒体流路34aと、分流媒体流路34aを流れる分流媒体を加熱する加熱媒体が流れる加熱媒体流路34bと、を有している。本実施形態では、加熱媒体流路34bは、油供給流路13に接続されている。すなわち、本実施形態では、分流媒体を加熱する媒体として油回収機12で回収された油が用いられている。この油は、蒸発器10において作動媒体とともに加熱されている。
【0038】
分岐流路36は、ポンプ20の第二流路28から分流流路32に流出した分流媒体の一部を分岐させる流路である。具体的に、分岐流路36は、分流流路32のうちポンプ20と加熱器34との間の部位と循環流路30のうち膨張機14と凝縮器18との間の部位とを接続している。なお、分岐流路36は、分流流路32のうちポンプ20と加熱器34との間の部位と凝縮器18を接続していてもよい。
【0039】
本実施形態では、膨張機14に流入する分流媒体(分流流路32のうち加熱器34と膨張機14との間の部位を流れる分流媒体)の過熱度Tαが一定の範囲内に収まるように、膨張機14に流入する分流媒体の流量を調整可能に構成されている。具体的に、熱エネルギー回収装置は、流量調整弁V1と、圧力センサ38と、温度センサ39と、制御部40と、をさらに備えている。
【0040】
流量調整弁V1は、分流流路32と分岐流路36との接続部に設けられている。流量調整弁V1は、ポンプ20の第二流路28から分流流路32に流出した分流媒体のうち分岐流路36に分流する分流媒体の流量(加熱器34へ流入させる分流媒体の流量)を調整可能となっている。例えば、流量調整弁V1の膨張機側開度を大きくすることにより、分流媒体の膨張機14への流入量が増加するとともに、分流媒体の分岐流路36への流入量が減少する。
【0041】
圧力センサ38及び温度センサ39は、分流流路32のうち加熱器34と膨張機14との間の部位に設けられている。
【0042】
制御部40は、圧力センサ38の検出値P1及び温度センサ39の検出値T1に基づいて過熱度Tαを算出するとともに、その過熱度Tαが一定の範囲内に収まるように、流量調整弁V1の開度(膨張機側開度)を調整する。より好ましくは、制御部40は、過熱度Tαが予め設定された設定過熱度T0となるように流量調整弁V1の開度を調整する。
【0043】
また、本実施形態では、分流流路32に圧力調整弁V2が設けられている。より具体的には、圧力調整弁V2は、分流流路32のうち流量調整弁V1と加熱器34との間の部位に設けられている。圧力調整弁V2は、当該圧力調整弁V2の下流側に流出する分流媒体の圧力を調整可能な弁(減圧弁)である。圧力調整弁V2から流出する分流媒体の圧力は、圧力調整弁V2の開度(設定圧)の調整により行われる。この圧力調整弁V2は、分流媒体の圧力を膨張機14の中段部(第一膨張部14aと第二膨張部14bとの間の部位)に流入しやすい圧力に調整するために設けられている。具体的に、膨張機14の中段部に流入可能な分流媒体の圧力は、特定の範囲内に制限されているので、分流媒体の圧力の前記特定の範囲内への調整が容易となるように圧力調整弁V2が設けられている。
【0044】
制御部40は、圧力センサ38の検出値P1が特定の圧力範囲に収まるように、圧力調整弁V2の開度(設定圧)をも調整する。より好ましくは、制御部40は、検出値P1が予め設定された設定圧力P0となるように圧力調整弁V2の開度を調整する。ここで、設定圧力P0は、膨張機14の中段部における作動媒体の圧力以上の値に設定される。
【0045】
さらに、本実施形態の熱エネルギー回収装置は、分流流路32に設けられた熱交換器50と、蒸発器10において作動媒体と熱交換した後の加熱媒体が流れる加熱媒体排出流路52と、さらに備えている。
【0046】
熱交換器50は、分流流路32における加熱器34と圧力調整弁V2との間の部位に設けられている。熱交換器50は、分流媒体が流れる分流媒体流路50aと、分流媒体流路50aを流れる分流媒体を加熱する加熱媒体が流れる加熱媒体流路50bと、を有している。本実施形態では、加熱媒体流路50bは、加熱媒体排出流路52に接続されている。
【0047】
ここで、具体的な制御部40の制御内容を図2を参照しながら説明する。
【0048】
まず、ポンプ20の起動中(熱エネルギー回収装置の起動中)において、流量調整弁V1及び圧力調整弁V2が初期状態に設定される。初期状態とは、流量調整弁V1の膨張機側開度がゼロであり、圧力調整弁V2の開度が最小の状態をいう。
【0049】
そして、制御部40は、圧力センサ38の検出値P1及び温度センサ39の検出値T1に基づいて過熱度Tαを算出するとともに(ステップS11)、その過熱度Tαが設定過熱度T0よりも大きいか否かを判定する(ステップS12)。
【0050】
この結果、過熱度Tαが設定過熱度T0よりも大きい場合(ステップS12でYES)、制御部40は、加熱器34への分流媒体の流入量を増やすために流量調整弁V1の膨張機側開度を上げる(ステップS13)。一方、過熱度Tαが設定過熱度T0以下の場合(ステップS12でNO)、制御部40は、過熱度Tαが設定過熱度T0よりも小さいか否かを判定する(ステップS14)。
【0051】
この結果、過熱度Tαが設定過熱度T0よりも小さい場合(ステップS14でYES)、制御部40は、加熱器34への分流媒体の流入量を減らすために流量調整弁V1の膨張機側開度を下げる(ステップS15)。
【0052】
そして、制御部40は、ステップS13又はステップS15の後、過熱度Tαが設定過熱度T0と等しいか否かを判定する(ステップS16)。この結果、過熱度Tαが設定過熱度T0と等しくない場合(ステップS16でNO)、ステップS12に戻る。一方、過熱度Tαが設定過熱度T0と等しい場合(ステップS16でYES)、及び、ステップS14でNOの場合(過熱度Tαが設定過熱度T0と等しい場合)、制御部40は、圧力センサ38の検出値P1が設定圧力P0よりも小さいか否かを判定する(ステップS17)。
【0053】
この結果、検出値P1が設定圧力P0よりも小さい場合(ステップS17でYES)、制御部40は、膨張機14の中段部に流入する分流媒体の圧力を上げるために、すなわち分流媒体の膨張機14の中段部への流入が許容されるようにするために、圧力調整弁V2の開度(設定圧)を上げる(ステップS18)。一方、検出値P1が設定圧力P0以上の場合(ステップS17でNO)、制御部40は、検出値P1が設定圧力P0よりも大きいか否かを判定する(ステップS19)。
【0054】
この結果、検出値P1が設定圧力P0よりも大きい場合(ステップS19でYES)、制御部40は、膨張機14の中段部に流入する分流媒体の圧力を下げるために圧力調整弁V2の開度を下げる(ステップS20)。
【0055】
そして、制御部40は、ステップS18又はステップS20の後、検出値P1が設定圧力P0と等しいか否かを判定する(ステップS21)。この結果、検出値P1が設定圧力P0と等しくない場合(ステップS21でNO)、ステップS17に戻る。一方、検出値P1が設定圧力P0と等しい場合(ステップS21でYES)、及び、ステップS19でNOの場合(検出値P1が設定圧力P0と等しい場合)、ステップS11に戻る。このようにして、過熱度Tα及び検出値P1が一定となるように制御される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の熱エネルギー回収装置では、ポンプ20から第一流路26を通じて循環流路30に吐出された作動媒体に加え、ポンプ20から第二流路28を通じて分流流路32に流出した分流媒体(電動機24から熱を受け取った後の作動媒体)も膨張機14に流入するので、従来(ポンプから循環流路に吐出された作動媒体のみが膨張機に流入し、ポンプで分流された分流媒体は膨張機に流入しない場合)に比べて膨張機14に流入する作動媒体の総量が増大するとともに、電動機24から受け取った熱も回収される。よって、動力回収機16での動力回収率が向上する。ここで、第二流路28から分流流路32に流出した分流媒体の圧力は、第一流路26から循環流路30に吐出された作動媒体の圧力よりも小さいものの、分流流路32は、膨張機14の中段部、すなわち作動媒体の圧力が膨張機14の入口よりも低くなっている部位に接続されているので、第二流路28から分流流路32へ流出した分流媒体の膨張機14への流入が許容される。
【0057】
また、本実施形態では、分流流路32に加熱器34が設けられているので、分流媒体が膨張機14に流入する前に加熱器34において分流媒体をより確実に気相とすることができる。よって、膨張機14の駆動が安定する。
【0058】
また、本実施形態では、分岐流路36及び流量調整弁V1が設けられているので、電動機24を有効に冷却しつつ、気相の分流媒体を膨張機14に流入させることが可能となる。具体的に、電動機24を十分に冷却可能な分流媒体の流量を確保しようとすると、第二流路28を通じて分流流路32に流出する分流媒体の流量が多くなる場合がある。この場合において、分岐流路36及び流量調整弁V1を備えていない場合には、分流流路32に流出した分流媒体の全量が加熱器34に流入するので、その分流媒体が加熱器34において気相とならずに気液二相の状態で膨張機14に流入するおそれがある。これに対し、本実施形態では、分岐流路36及び流量調整弁V1を備えているので、分流媒体の分流流路32への流出量が多くなった場合であっても、加熱器34において分流媒体が気相となるように分岐流路36へ分流させる分流媒体の流量を調整可能となる。この流量調整弁V1の開度調整は、制御部40によって行われる。
【0059】
さらに、本実施形態では、制御部40は、膨張機14に流入する分流媒体の過熱度Tαが設定過熱度T0となるように流量調整弁V1の膨張機側開度を調整する。よって、膨張機14の駆動がより安定する。
【0060】
また、本実施形態では、分流流路32に圧力調整弁V2が設けられているので、分流媒体の圧力を膨張機14の中段部に流入しやすい圧力に調整可能となる。この圧力調整弁V2の開度調整は、制御部40によって行われる。
【0061】
また、上記実施形態では、加熱器34の加熱媒体流路34bが油供給流路13に接続されているので、油回収機12で回収された油の排熱を有効に利用することにより分流媒体を加熱することが可能となる。さらに、加熱器34において分流媒体によって冷却されることにより油の粘度が上昇するので、膨張機14におけるいわゆる油膜切れの発生が抑制される(潤滑性能が向上する)。
【0062】
また、本実施形態では、分流流路32設けられた熱交換器50の加熱媒体流路50bが加熱媒体排出流路52に接続されている。よって、蒸発器10で作動媒体と熱交換した後の加熱媒体の熱エネルギーの残余分を有効に回収することにより分流媒体をさらに加熱することが可能となる。
【0063】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態の熱エネルギー回収装置について、図3を参照しながら説明する。なお、第二実施形態では、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第一実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0064】
本実施形態では、熱交換器50の加熱媒体流路50bの接続先が第一実施形態のそれと異なっている。具体的に、本実施形態の加熱媒体流路50bは、循環流路30のうち膨張機14の下流側でかつ循環流路30と分岐流路36との接続部よりも上流側の部位に接続されている。すなわち、本実施形態では、熱交換器50において分流媒体を加熱する媒体として、膨張機14から流出した後の作動媒体が用いられている。
【0065】
このように、本実施形態では、膨張機14で動力が回収された後(温度が低下した後)の作動媒体の熱エネルギーを有効に回収することにより、加熱器34で油に加熱される前に分流媒体をさらに加熱することが可能となる。
【0066】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0067】
例えば、上記各実施形態では、加熱器34の加熱媒体流路34bが油供給流路13に接続された例(分流媒体が油により加熱される例)が示されたが、分流媒体は、油以外の加熱媒体(蒸発器10に供給される加熱媒体と同じ加熱媒体等)によって加熱されてもよい。
【0068】
また、制御部40は、過熱度Tαが一定の範囲内に収まるように流量調整弁V1の開度を調整するとともに検出値P1が特定の圧力範囲に収まるように圧力調整弁V2の開度を調整してもよい。この場合、制御部40は、過熱度Tαが一定の範囲の上限値よりも大きい場合、流量調整弁V1の開度を上げ、過熱度Tαが一定の範囲の下限値よりも小さい場合、流量調整弁V1の開度を下げる。その後、制御部40は、検出値P1が特定の圧力範囲の下限値よりも小さい場合、圧力調整弁V2の開度を上げ、検出値P1が特定の圧力範囲の上限値よりも大きい場合、圧力調整弁V2の開度を下げる。
【0069】
また、上記各実施形態において、加熱器34及び熱交換器50は省略されてもよい。また、分岐流路36、流量調整弁V1、圧力調整弁V2、圧力センサ38、温度センサ39及び制御部40は、省略されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 蒸発器
12 油回収機
13 油供給流路
14 膨張機
14a 第一膨張部
14b 第二膨張部
16 動力回収機(発電機)
18 凝縮器
20 ポンプ
22 加圧部
24 電動機
26 第一流路
28 第二流路
30 循環流路
32 分流流路
34 加熱器
34a 分流媒体流路
34b 加熱媒体流路
36 分岐流路
38 圧力センサ
39 温度センサ
40 制御部
50 熱交換器
50a 分流媒体流路
50b 加熱媒体流路
52 加熱媒体排出流路
V1 流量調整弁
V2 圧力調整弁
図1
図2
図3