特許第6190340号(P6190340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190340
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20170821BHJP
   F16K 7/16 20060101ALI20170821BHJP
   F16K 11/04 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F16K31/06 375
   F16K31/06 305L
   F16K7/16 F
   F16K11/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-172350(P2014-172350)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-48072(P2016-48072A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145611
【氏名又は名称】株式会社コガネイ
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】太田 益雄
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−61019(JP,A)
【文献】 特開平4−258581(JP,A)
【文献】 特開昭64−26077(JP,A)
【文献】 実開平6−65671(JP,U)
【文献】 特開2012−184845(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0006336(US,A1)
【文献】 特開2004−144243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
F16K 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座部に当接してポートの連通を遮断する閉塞位置と、前記弁座部から離れて前記ポートを連通させる開放位置とに作動する弁部材を備えた電磁弁であって、
基端部側に固定鉄心が配置され、先端部側に可動鉄心が軸方向に往復動自在に配置され、コイルが巻き付けられるボビンを備えたソレノイドと、
複数の前記ポートが設けられ、前記ソレノイドに装着されるバルブハウジングと、
長手方向中央部が揺動軸により前記バルブハウジングに揺動自在に装着され、前記弁部材が設けられる揺動部材と、
基端部が枢動軸により前記バルブハウジングに枢動自在に装着され、先端部に前記揺動部材の一端部に当接する作動部が設けられ、前記基端部と前記作動部の間に前記可動鉄心の先端が当接する力点部が設けられた枢動レバーと、
を有し、
前記可動鉄心の軸方向の移動ストロークを前記枢動レバーにより拡大して前記弁部材を開閉させる、電磁弁。
【請求項2】
請求項1記載の電磁弁において、前記可動鉄心に設けられ、前記枢動レバーに向けて前記可動鉄心にばね力を付勢する鉄心駆動ばね部材と、前記枢動レバーの基端部と前記揺動部材の他端部との間に配置され、前記揺動部材の他端部にばね力を付勢する揺動ばね部材と、を有する電磁弁。
【請求項3】
請求項1または2記載の電磁弁において、第1のポートと、前記第1のポートに連通する状態および前記第1のポートに対する連通が遮断される状態に前記弁部材により開閉する第2のポートとを、前記バルブハウジングに設けた電磁弁。
【請求項4】
請求項1または2記載の電磁弁において、第1のポートと、前記第1のポートに連通する状態および前記第1のポートに対する連通が遮断される状態に前記弁部材により開閉される第2のポートと、前記第2のポートが前記第1のポートに連通するときに前記第1のポートに対する連通が遮断される状態および前記第2のポートが前記第1のポートに対する連通が遮断されるときに前記第1のポートに連通する状態に前記弁部材により開閉される第3のポートとを、前記バルブハウジングに設けた電磁弁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁弁において、前記バルブハウジングは、前記ポートが設けられたポートプレートと、前記枢動レバーおよび前記揺動部材を収容する弁収容ケースとを有し、前記弁部材は前記ポートプレートと前記弁収容ケースとの間をシールするダイヤフラムである、電磁弁。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁弁において、前記弁部材は加硫成形時に前記揺動部材に固着されるゴム製であり、前記弁部材の成形時にゴム材が入り込むゴム充填孔を前記揺動部材に設けた、電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁座部の連通孔を弁により開閉する電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
被供給機器に対する加圧された流体つまり液体や気体の供給を制御したり、被供給部材機器からの加圧された流体の排出を制御したり、さらには連通路の切り換えを制御するために、弁座部に設けられた連通孔を弁部材により開閉動作するようにした電磁弁が用いられている。
【0003】
圧縮気体源に連通される供給ポートと、被供給機器に連通される出力ポートの2つのポートを有する2ポート電磁弁においては、両方のポートを連通させる状態と、連通を遮断する状態とに弁により切換制御が行われる。一方、供給ポートと出力ポートに加えて排出ポートを有する、気体用3ポート電磁弁においては、供給ポートを出力ポートに連通させて排出ポートと出力ポートとの連通を遮断して出力ポートに加圧された気体を供給する状態と、供給ポートと出力ポートとの連通を遮断させて排出ポートと出力ポートとを連通させて出力ポートに戻された加圧された気体を排出ポートから外部に排出する状態とに、弁により切換制御が行われる。また、加圧された液体が供給される1つの供給ポートとその液体を外部に出力する2つの出力ポートとを備える液体用ポート電磁弁においては、供給ポートから一方の出力ポートに液体を供給する状態と、供給ポートから他方の出力ポートに液体を供給する状態とに、弁により切換制御が行われる。
【0004】
弁を開閉動作するためのソレノイドは、コイルが巻き付けられたボビンに取り付けられる固定鉄心と、コイルへの通電により駆動される可動鉄心とを有し、可動鉄心により弁部材が駆動される。可動鉄心には軸動形と揺動形とがある。軸動形の可動鉄心は、固定鉄心と同軸となって軸方向に往復動する。一方、揺動形の可動鉄心は、軸可動鉄心の一端部を中心に揺動往復動する。
【0005】
特許文献1には、揺動形の可動鉄心を有する電磁弁が記載されている。特許文献2〜4には、軸動形の可動鉄心を有する電磁弁が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−330130号公報
【特許文献2】特開2000−297876号公報
【特許文献3】特開2004−144243号公報
【特許文献4】特開2005−315326号公報
【特許文献5】実公昭35−21653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
揺動形の可動鉄心を有する電磁弁においては、特許文献1に記載されるように、固定鉄心は軸部と磁気フレームとにより全体的にU字形状に形成される。可動鉄心は、一端部を揺動中心として磁気フレームの先端に揺動自在に装着される。可動鉄心の他端部は、コイルへの通電時に軸部の先端に吸着される状態と、非通電時にばね力により軸部から離れる状態とに作動する。他端部の揺動運動は、弁棒を介して弁部材の開閉運動に伝達される。このように、可動鉄心を揺動形とする場合には、固定鉄心と可動鉄心とで磁気回路を形成するために、固定鉄心を軸部と磁気フレームとを有するU字形状とする必要があり、コイルとコイルが巻き付けられる固定鉄心とからなるソレノイド部の幅寸法が大きくなる。このため、電磁弁の小型化には限度がある。
【0008】
一方、可動鉄心を軸動形とすると、可動鉄心は固定鉄心と同軸に配置されるので、ソレノイド部の幅寸法を小さくすることができ、電磁弁を小型化することができる。バルブケーシングに平行となって形成された複数のポートを開閉するために、弁部材を揺動形として固定鉄心とポートとの間に配置すると、電磁弁の長手方向の寸法を小さくすることができる。これにより、電磁弁を小型化することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載されるように、可動鉄心と弁部材との間にブロック状の変位部材を配置し、弁部材を押圧するための押圧部材を変位部材の中に組み込むようにすると、電磁弁の長手方向の寸法を小さくすることには限度がある。また、特許文献3に記載されるように、可動鉄心の先端部が突出するバルブボディに可動鉄心と平行に押圧部材を配置し、揺動部材の一端に可動鉄心を当接し、他端部に押圧部材を当接するようにすると、ソレノイド部の幅寸法と、電磁弁の長手方向の寸法を小さくすることができない。同様に、特許文献4に記載されるように、可動鉄心と流路ブロックとの間にボディを配置し、弁部材としてのダイヤフラムを揺動する揺動部材と、揺動部材を押圧する2つの押圧部材とをボディの中に組み込むようにすると、ソレノイド部の幅寸法と、電磁弁の長手方向の寸法を小さくすることができない。また、特許文献5では、固定鉄心と可動鉄心の間のストロークを拡大して、弁10のストロークとしているが、幅寸法の増大は免れない。
このように、揺動形の部材により弁部材を開閉動作させるようにした従来の電磁弁においては、電磁弁の小型化に限度がある。
【0010】
本発明の目的は、電磁弁の小型化を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電磁弁は、弁座部に当接してポートの連通を遮断する閉塞位置と、前記弁座部から離れて前記ポートを連通させる開放位置とに作動する弁部材を備えた電磁弁であって、基端部側に固定鉄心が配置され、先端部側に可動鉄心が軸方向に往復動自在に配置され、コイルが巻き付けられるボビンを備えたソレノイドと、複数の前記ポートが設けられ、前記ソレノイドに装着されるバルブハウジングと、長手方向中央部が揺動軸により前記バルブハウジングに揺動自在に装着され、前記弁部材が設けられる揺動部材と、基端部が枢動軸により前記バルブハウジングに枢動自在に装着され、先端部に前記揺動部材の一端部に当接する作動部が設けられ、長手方向中央部に前記可動鉄心の先端が当接する力点部が設けられた枢動レバーと、を有し、前記可動鉄心の軸方向の移動ストロークを前記枢動レバーにより拡大して前記弁部材を開閉させる。
【発明の効果】
【0012】
上記電磁弁は、弁部材が設けられた揺動部材を有し、揺動部材の揺動によりポートが弁部材により開閉される。可動鉄心の軸方向の往復動は、枢動レバーを介して揺動部材の揺動運動に変換される。枢動レバーは、その基端部が枢動軸により枢動自在に支持され、先端部には揺動部材の一端部に当接する作動部が設けられ、基端部と作動部の間には可動鉄心の先端が当接する力点部が設けられている。弁部材の開閉ストロークは、可動鉄心の往復動ストロークよりも枢動レバーにより拡大される。これにより、電磁弁を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態である電磁弁を示す断面図であり、コイルが非通電の状態を示す。
図2】コイルが通電された状態における図1の電磁弁を示す断面図である。
図3】他の実施の形態である電磁弁を示す断面図であり、コイルが非通電の状態を示す。
図4】コイルが通電された状態における図3の電磁弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1および図2に示されるように、電磁弁10は、ソレノイド11とこのソレノイド11に装着されるバルブハウジング12とを有している。ソレノイド11は非磁性材料からなるボビン13を有している。ボビン13は、筒状本体部14と、その基端部側に一体となったフランジ部15と、筒状本体部14の先端部側に一体となったフランジ部16とを有している。筒状本体部14の外側にはコイル17が巻き付けられている。ボビン13の基端部側には固定鉄心18が配置されている。固定鉄心18の基端部に設けられたフランジ部19が、ボビン13のフランジ部15に突き当てられて、固定鉄心18はボビン13に固定されている。
【0015】
ボビン13の先端部側には、可動鉄心21が軸方向に往復動自在に配置されており、可動鉄心21は軸動形となっている。可動鉄心21はフランジ部16に設けられた貫通孔22からソレノイド11の前方に突出している。ボビン13は磁気フレーム23内に組み込まれている。磁気フレーム23は、フランジ部16に突き当てられる前フレーム片23aと、固定鉄心18のフランジ部19が組み込まれる後フレーム片23bと、前フレーム片23aおよび後フレーム片23bと一体となった側フレーム片23c,23dとを有している。磁気フレーム23は、ソレノイドケース24内に収容される。ソレノイドケース24にはソケット25が設けられている。ソケット25には、図示しないコネクタが取り付けられ、コネクタにより外部からコイル17に駆動電流が供給される。
【0016】
可動鉄心21の先端部には括れ部26aが設けられ、磁気フレーム23の前フレーム片23aに設けられた環状の溝部26bと括れ部26aの間には鉄心駆動ばね部材27が設けられている。この鉄心駆動ばね部材27は、円錐圧縮コイルばねであり、この鉄心駆動ばね部材27により、可動鉄心21に対してソレノイド11から突出する方向のばね力が付勢されている。コイル17に駆動電流が供給されない非通電時には、図1に示されるように、ばね力により可動鉄心21は突出方向に駆動される。一方、コイル17に駆動電流が供給される通電時には、図2に示されるように、可動鉄心21は固定鉄心18の先端面に向けて吸引駆動される。吸引駆動されたときには、可動鉄心21の段部28がボビン13の内面に設けられたストッパ29に当接することにより、可動鉄心21の後退限位置が規制される。可動鉄心21は、軸方向の移動ストロークSの範囲で往復動する。
【0017】
バルブハウジング12は、第1のポート31,第2のポート32および第3のポート33が設けられたポートプレート34を有している。電磁弁10は3ポート電磁弁である。ポートプレート34には弁収容ケース35が組み付けられる。弁収容ケース35には弁収容室36が設けられており、弁収容室36の開口端側にポートプレート34が突き当てられる。弁収容ケース35には、バルブハウジング12が取り付けられる取り付け面に開口して貫通孔37が設けられ、可動鉄心21の先端部がこの貫通孔37から弁収容室36内に突出する。
【0018】
弁収容室36内には、揺動部材41が可動鉄心21の先端面よりも前方に設けられている。揺動部材41は、可動鉄心21の前方を横切る方向に延びて配置されている。揺動部材41は、その長手方向中央部を貫通する揺動軸42によりバルブハウジング12に揺動自在に装着されている。揺動軸42はバルブハウジング12に取り付けられている。したがって、揺動部材41は、中央部の揺動軸42を支点として揺動し、揺動部材41の両端部はポートプレート34に対して接近離反移動する。揺動部材41には、ゴム製の弁部材43が設けられている。この弁部材43は外周部44を有している。外周部44は、ポートプレート34と弁収容ケース35との間に挟み込まれ、両者の間をシールする。弁部材43は、外周部44が弾性変形するとともにポートプレート34と弁収容ケース35との間をシールする構造となっており、ダイヤフラムである。このダイヤフラムつまり弁部材43によって、バルブハウジング12内の空間は、弁収容室36と連通室38とに区画されている。
【0019】
ポートプレート34に形成された3つのポート31〜33は、それぞれ連通室38に開口されている。それぞれのポート31〜33は、揺動部材41に沿って所定の間隔を隔ててポートプレート34に相互に平行となって設けられている。第2のポート32の連通室38側の開口部は第1の弁座部45となっており、第3のポート33の連通室38側の開口部は第2の弁座部46となっている。弁部材43には、第1の弁座部45に当接して第2のポート32を開閉する第1の開閉部47と、第2の弁座部46に当接して第3のポート33を開閉する第2の開閉部48とが設けられている。それぞれの開閉部47,48は、ポートプレート34に向けて張り出した部分により形成されている。
【0020】
弁収容室36内には、可動鉄心21と揺動部材41との間に位置させて枢動レバー51が揺動部材41に沿って配置されている。枢動レバー51は、その基端部を貫通する枢動軸52によりバルブハウジング12の内部に枢動自在に装着されている。枢動軸52はバルブハウジング12に取り付けられている。枢動レバー51の先端部には、揺動部材41の一端部に当接する作動部53が設けられている。枢動レバー51の基端部と作動部53の間には、可動鉄心21の先端が当接する力点部54が設けられている。作動部53と力点部54は、それぞれ枢動レバー51の長手方向に沿って湾曲した凸面となっており、作動部53は揺動部材41に線接触し、力点部54は可動鉄心21の先端に線接触する。
【0021】
枢動レバー51は、基端部の枢動軸52を支点とし、先端部の作動部53を作用点とし、基端部と先端部との間の力点部54を力点とするテコ構造となっている。支点と力点の長さよりも支点と作用点の長さが長いので、力点部のストロークが拡大されて作用点の移動ストロークとなる。つまり、可動鉄心21の軸方向の移動ストロークSは、枢動レバー51により拡大されて揺動部材41の両端部の揺動ストローク、つまり弁部材43の開閉ストロークTに変換される。揺動部材41の両端部の開閉ストロークTは、可動鉄心の軸方向の移動ストロークSよりも大きい。これにより、可動鉄心21の移動ストロークSが小さいので、ソレノイドの消費電力は低い。一方、揺動部材41の両端部の開閉ストロークTは大きいので、弁部材43に設けられた開閉部47,48によるポートの開口度は大きく、従って、流量は大きい。つまり、電磁弁10は小型でありながら、消費電力が小さく、流量が大きい。
【0022】
枢動レバー51の基端部と、揺動部材41の他端部との間には、揺動ばね部材55が設けられている。この揺動ばね部材55は円筒形状の圧縮コイルばねであり、揺動ばね部材55の端部は、揺動部材41に形成された溝部56に嵌め込まれている。このばね部材55により、揺動部材41には、一端部が枢動レバー51の作動部53に向かい、他端部が枢動レバー51の基端部から離れる方向のばね力が付勢されている。揺動ばね部材55が揺動部材41の他端部を押圧して第3のポートを閉鎖する力よりも、鉄心駆動ばね部材27が揺動部材41の一端部を押圧して第2のポートを閉鎖する力のほうが、大きい。従って、コイル17に駆動電流を流さないときには、鉄心駆動ばね部材27の力によって第2のポートが閉鎖される。
【0023】
揺動ばね部材55は、枢動レバー51の基端部と揺動部材41の他端部との間に設けられている。さらに、枢動レバー51の枢動軸52は、揺動ばね部材55のばね受けも兼ねている。このように、揺動ばね部材55はわずかな隙間に設けられているので、電磁弁10の長さ寸法や幅寸法を増大させることがない。
【0024】
揺動部材41は、長手方向中央部の揺動軸42を支点とし、一端部が枢動レバー51の作動部53に当接する作用点とし、他端部が揺動ばね部材55のばね力が加わる力点とするテコ構造となっている。支点から作用点までの距離と、支点から力点までの距離は同一であるので、揺動部材41の両端部の揺動ストロークは相互に同一となる。
【0025】
電磁弁10の第1のポート31は、加圧された流体が外部から供給される供給ポートとなっており、他の2つのポート32,33はそれぞれ出力ポートとなっている。したがって、コイル17に駆動電流が供給されていない非通電時には、図1に示されるように、鉄心駆動ばね部材27により可動鉄心21に加えられるばね力によって、枢動レバー51の作用点としての作動部53が揺動部材41の一端部つまり作用点の部分を押圧し、第1の開閉部47が第1の弁座部45に押圧されて第2のポート32が閉塞される。これにより、弁部材43は、第1のポート31と第2のポート32との連通を遮断する閉塞位置となる。このときには、第2の開閉部48が第2の弁座部46から離れ、弁部材43は、第1のポート31と第3のポート33とを連通させる開放位置となり、第1のポート31に供給される加圧された流体は、第3のポート33から外部に供給される。
【0026】
一方、コイル17に駆動電流が供給される通電時には、図2に示されるように、可動鉄心21は、鉄心駆動ばね部材27のばね力に抗して後退限位置まで駆動される。揺動部材41の他端部つまり力点部には、第2の開閉部48を第2の弁座部46に押し付けるばね力が揺動ばね部材55により付勢されており、このばね力によって第2の開閉部48が第2の弁座部46に押し付けられて第3のポート33が閉塞される。これにより、弁部材43は、第1のポート31と第3のポート33との連通を遮断する閉塞位置となる。このときには、第1の開閉部47が第1の弁座部45から離れ、弁部材43は、第1のポート31と第2のポート32とを連通させる開放位置となり、第1のポート31に供給される加圧された流体は、第2のポート32から外部に供給される。
【0027】
揺動部材41の端部つまり作用点の部分と、他端部つまり力点の部分の開閉ストロークTは、可動鉄心21の移動ストロークSよりも、大きい。
【0028】
ゴム製の弁部材43は、加硫成形により揺動部材41に固着される。加硫成形時にゴム材料が揺動部材41に食い込むように、揺動部材41の外周部には、ゴム材料が入り込む凹溝57が設けられている。さらに、揺動部材41にはゴム充填孔58が外面に開口して設けられている。これにより、弁部材43を成形するときには、ゴム材料が凹溝57とゴム充填孔58に入り込み、弁部材43は強固に揺動部材41に固定される。
【0029】
電磁弁10を図示しない部材に取り付けるために、ポートプレート34には取付孔59が設けられている。複数の電磁弁10を集合してマニホールドベースに搭載し、マニホールド電磁弁を組み立てるには、ポートプレート34はマニホールドベースに搭載される。一方、ポートが設けられたマニホールドベースに電磁弁10を搭載する場合には、弁収容ケース35を直接マニホールドベースに取り付けるようにしても良い。
【0030】
図3および図4は、他の実施の形態である電磁弁10aを示す断面図であり、図3はコイルが非通電の状態を示し、図4はコイルが通電された状態を示す。図3および図4においては、図1および図1に示された部材と共通する部材には、同一の符号が付されており、重複とした説明を省略する。
【0031】
電磁弁10aは、第1のポート31と第2のポート32とを有し、上述した電磁弁10が第3のポート33を有しているのに対し、電磁弁10aは第3のポート33を有しておらず、2ポート電磁弁である。弁部材43には第1の開閉部47が設けられているが、上述した第2の開閉部48は設けられてない。また、ポートプレート34には上述した第2の弁座部46は設けられていない。電磁弁10aにおける他の構造は、電磁弁10と同様となっている。
【0032】
第1のポート31は入力ポートとなっており、第2のポート32は出力ポートとなっている。したがって、コイル17に駆動信号が供給されていない非通電時には、図3に示されるように、鉄心駆動ばね部材27により可動鉄心21に加えられるばね力によって、第1の開閉部47が第1の弁座部45に押圧されて第2のポート32が閉塞される。これにより、弁部材43は、第1のポート31と第2のポート32との連通を遮断する閉塞位置となる。
【0033】
一方、コイル17に駆動電流が供給される通電時には、図4に示されるように、可動鉄心21は、鉄心駆動ばね部材27のばね力に抗して後退限位置まで駆動される。揺動部材41の他端部には、この他端部をポートプレート34に向けて押し付けるばね力が揺動ばね部材55により付勢されており、このばね力によって揺動部材41が駆動される。これにより、第1の開閉部47が第1の弁座部45から離れ、弁部材43は第1のポート31と第2のポート32とを連通させる開放位置となり、第1のポート31に供給される加圧された流体は、第2のポート32から外部に供給される。
【0034】
このように、3ポート電磁弁としても2ポート電磁弁としても本発明を適用することができる。いずれの電磁弁においても、可動鉄心21は軸方向に往復動する軸動形となっており、ソレノイド11の幅寸法を小さくすることができる。さらに、可動鉄心21の軸方向のストロークを、枢動レバー51により拡大して揺動部材41を揺動させるようにしたので、電磁弁10,10aの長手方向寸法を短くすることができる。これにより、電磁弁10,10aを小型化することができる。
【0035】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、この電磁弁10,10aは、電磁弁単体としても流体圧回路に適用することができるとともに、多数の電磁弁を集合したマニホールド電磁弁としても適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
11 ソレノイド
12 バルブハウジング
13 ボビン
17 コイル
18 固定鉄心
21 可動鉄心
23 磁気フレーム
24 ソレノイドケース
27 鉄心駆動ばね部材
31 第1のポート
32 第2のポート
33 第3のポート
34 ポートプレート
35 弁収容ケース
36 弁収容室
38 連通室
41 揺動部材
42 揺動軸
43 弁部材
44 外周部
45 第1の弁座部
46 第2の弁座部
47 第1の開閉部
48 第2の開閉部
51 枢動レバー
52 枢動軸
53 作動部
54 力点部
55 揺動ばね部材
58 ゴム充填孔
図1
図2
図3
図4