特許第6190358号(P6190358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190358
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】光学的不均一性による分析評価
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20170821BHJP
   G01N 21/896 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   G01N21/17 N
   G01N21/896
【請求項の数】21
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-506965(P2014-506965)
(86)(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公表番号】特表2014-512546(P2014-512546A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】IB2012052028
(87)【国際公開番号】WO2012147021
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年4月22日
(31)【優先権主張番号】11164118.9
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァース トゥーン ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】クルンダー デルク ジャン ウィルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】ニューエンハイス ジェロエン ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ゾン ジョアネス バプティスト アドリアヌス ディオニシウス
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−287502(JP,A)
【文献】 特開2007−017282(JP,A)
【文献】 特開平10−073535(JP,A)
【文献】 特開2003−121441(JP,A)
【文献】 特開2006−300799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17
G01N 21/896
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を用いて行われる分析を評価する方法であって、
a)感知面において光学測定を行うステップであって、前記感知面の画像の生成を含む、ステップと、
b)前記画像の少なくとも1つの関心領域における画像の均一性の指示子を決定するステップであって、前記画像の均一性は前記少なくとも1つの関心領域における画像値の広がりを指す、当該ステップと、
c)前記均一性の指示子に依存して、前記光学測定を評価し、
前記少なくとも1つの関心領域の前記均一性の指示子が、所与のターゲット範囲から逸脱する場合、前記光学測定は、
−全面的に不合格判定される、
−対応する前記関心領域に関して不合格判定される、又は、
−対応する前記関心領域のサブ領域に関して不合格判定される、ステップと、
を含み、
前記分析の少なくとも2つの段階において生成される画像の比較に基づいて、画像中の異なる種類の不均一性が検出される、方法。
【請求項2】
試料を用いて分析を行い、評価するセンサデバイスであって、
a)前記試料によって接触可能である感知面を有する担体と、
b)前記感知面において光学測定を行い、前記感知面の画像を生成可能な画像センサを含む光学センサユニットと、
c)前記光学センサユニットに結合され、
−前記画像センサによって生成された前記感知面の画像の少なくとも1つの関心領域における画像の均一性の指示子を決定し、前記画像の均一性は前記少なくとも1つの関心領域における画像値の広がりを指し、
−前記均一性の指示子に依存して、前記光学センサユニットによって提供される前記光学測定を評価し、
前記少なくとも1つの関心領域の前記均一性の指示子が、所与のターゲット範囲から逸脱する場合、前記光学測定は、
−全面的に不合格判定される、
−対応する前記関心領域に関して不合格判定される、又は、
−対応する前記関心領域のサブ領域に関して不合格判定される、評価ユニットと、
を含み、
前記分析の少なくとも2つの段階において生成される画像の比較に基づいて、画像中の異なる種類の不均一性が検出される、センサデバイス。
【請求項3】
前記分析は、前記感知面上の少なくとも1つの結合スポットへの前記試料のターゲット成分の特定の結合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記感知面における前記光学測定は、前記感知面の複数の画像の生成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記均一性の指示子は、特徴検出手順によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記均一性の指示子は、前記関心領域における画像値のヒストグラムから決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記均一性の指示子は、前記関心領域の基準画像との比較から決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記画像は、前記分析の始まり、前記分析の終わり、及び/又は前記分析の途中で生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記段階は、試料による前記感知面の湿潤の前後の段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
不合格判定される前記関心領域の前記サブ領域は、所与の画像値範囲からの前記サブ領域の画像値の逸脱によって特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法を実行可能なコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムが記憶された記録担体。
【請求項13】
前記分析は、前記感知面上の少なくとも1つの結合スポットへの前記試料のターゲット成分の特定の結合を含む、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項14】
前記感知面における前記光学測定は、前記感知面の複数の画像の生成を含む、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項15】
前記均一性の指示子は、特徴検出手順によって決定される、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項16】
前記均一性の指示子は、前記関心領域における画像値のヒストグラムから決定される、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項17】
前記均一性の指示子は、前記関心領域の基準画像との比較から決定される、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項18】
前記画像は、前記分析の始まり、前記分析の終わり、及び/又は前記分析の途中で生成される、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項19】
前記段階は、試料による前記感知面の湿潤の前後の段階を含む、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項20】
不合格判定される前記関心領域の前記サブ領域は、所与の画像値範囲からの前記サブ領域の画像値の逸脱によって特定される、請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項21】
分子診断、生物試料分析、化学試料分析、食品分析、及び/又は法医学的分析のための請求項2、又は、13乃至20の何れか一項に記載のセンサデバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知面の画像の生成を含む分析を評価する方法に関する。更に、本発明は、当該分析を行い、評価するセンサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,410,613B2号は、血液検査から生じる様々なスポットが画像センサによって撮像される装置を開示する。スポットの不均一性及び/又は反応領域における微細な粉塵に対処するために、スポットの複数のサブ領域における検出された光強度が統計的に処理されてそれらの平均値、中央値又は正規分布が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、不均一性によって損なわれる測定結果のより正確な評価を可能にする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該目的は、請求項1に記載の方法、請求項2に記載のセンサデバイス、請求項13に記載のコンピュータプログラムプロダクト、請求項14に記載の記録担体、及び請求項15に記載の使用によって達成される。好適な実施形態は、従属請求項に開示される。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、試料、例えば血液又は唾液のような生体物質を用いて行われる分析を評価する方法に関する。ここでは、「分析」との用語は、かなり一般的な意味として理解されるべきであり、測定のための試料を単に提供するという最も単純な例が含まれる。しかし、多くの場合、分析は、例えば試薬を用いた試料の培養、試料からの物質のプローブへの結合等の試料の何らかの処理を含む。当該方法は、次のステップを含む。
a)以下、感知面と呼ばれ、試料によって接触される(又は接触可能な)表面において光学測定を行うステップ。光学測定は、感知面の、以下、「均一性画像」と呼ばれる(なぜならこの画像は均一性の特徴に関して評価されるからである)少なくとも1つの画像の生成を含む。
b)当該均一性画像の少なくとも1つの関心領域における画像の均一性の指示子を決定するステップ。この指示子は、以下、「均一性指示子」と呼ばれる。画像領域の「画像均一性」とは、画像値(例えばグレースケール画像の場合はグレー値)の広がりを指し、完全に均一な画像とは、単一の画像値だけを有するモノクロ画像である。均一性指示子は、考慮される関心領域が(ある所与の定義又は閾値に従い)均一であるか否かだけを表現する2値変数又は2進値である。しかし、均一性指示子は、均一性の程度を定量化できる多値又は連続的な変数であってもよい。均一性指示子は、例えば関心領域内に生じる最小画像値と最大画像値との差に対応する。
c)当該(少なくとも1つの)均一性指示子に依存して、感知面で行われた光学測定を評価するステップ。
【0006】
なお、「均一性画像」は、通常、分析の一時的でない段階に生成される、即ち、「均一性指示子」は、通常、一時的でない不均一性を捕捉することに留意すべきである。このコンテキストでは、フェーズ又は不均一性は、最大で数秒(例えば5秒)間、存続する場合に、「一時的である」と見なされる。一例としては、動く液体メニスカスによって引き起こされる一時的な画像の不均一性が挙げられよう。対照的に、本発明のコンテキストにおける関心の不均一性は、通常、より長い時間存続し、即ち、10秒、60秒等より長い時間存続し、又は、分析の全継続時間の間存続する。
【0007】
第2の態様によれば、本発明は、特に上記した方法に従って、試料を用いて分析を行い、評価するセンサデバイスに関する。センサデバイスは、次の構成要素を含む。
a)その中に試料が提供される(収容される)担体。当該担体は、試料によって接触可能である感知面を有する。担体は、例えば(生体)試料を用いた1回の測定に使用される使い捨てカートリッジである。
b)当該感知面において光学測定を行い、感知面の画像を生成可能な画像センサを含む光学センサユニット。多くの場合、光学センサユニットは、当該画像センサからなるが、任意選択的に、更なる構成要素(例えば光源、スペクトロメータ等)も含んでもよい。
c)光学センサユニットに結合され、専用電子ハードウェア、関連のソフトウェアを有するデジタルデータ処理ハードウェア、又はこれらの混合によって実現される評価ユニット。評価ユニットは、
‐画像センサによって生成された感知面の「均一性画像」の少なくとも1つの関心領域における画像の均一性の指示子を決定し、
‐均一性指示子に依存して、光学センサユニットによって提供される光学測定を評価する。
【0008】
上記定義された方法及びセンサデバイスは密接に関連するので、方法及びセンサデバイスのうちの一方に対し提供された定義及び説明は、他方にも同様に適用可能である。方法及びセンサデバイスは、1つ以上の「均一性指示子」が感知領域の少なくとも1つの(「均一性」)画像から決定され、分析時の光学測定の評価は、この決定結果に基づくべきであるという考えに基づいている。したがって、感知面(又はそのうちの関心領域)は、測定又は分析にも影響を及ぼす結果(例えば結合部位の不適切な結合、汚れによる汚染等)によってしばしば引き起こされる可能な(光学的)不均一性に関し明確に確認される。このような不均一性が検出される場合、行われた光学特性の有効性及び正確性を保証するために、適切な手段が取られる。このアプローチによって、最先端の技術、例えば米国特許第7,410,613B2号から知られている手順よりも相当に優れた結果が達成できる。当該米国特許では、不均一性は別々に検出されないが、平均値等に処理される。
【0009】
以下、上記のセンサデバイス及び方法の両方に関連する本発明の様々な好適な実施形態が説明される。
【0010】
第1の好適な実施形態によれば、当該方法及びセンサデバイスが参照する分析は、感知面上の少なくとも1つの結合スポットへの試料のターゲット成分の特定の結合を含む。次に、結合スポットにおけるターゲット成分の蓄積が光学的に検出され、これにより、試料におけるターゲット成分の存在及び/又は量が決定される。例えば結合スポットは結合部位によって均等にコーティングされていない、汚れによって汚染されている等で、結合スポットが均一ではない場合、このような測定の精度は損なわれる。しかし、このような状況は、結合スポット上の関心領域内に均一性指示子が決定される場合、検出される。
【0011】
当該ターゲット成分は、特に、磁力によるターゲット成分の取扱いを可能にする磁気粒子によってラベル付けされる。したがって、結合処理は加速されるか、及び/又は、非結合成分は測定の前に感知面から磁気的に洗い流される。このような分析及び適切な光学測定についての詳細は、例えば国際特許公開公報WO2008/155716A1、国際特許公開公報WO2009/125339A2、国際特許公開公報WO2009/001276A1、又は国際特許公開公報WO2008/142492A1に説明される。これらは、参照することにより本願に組み込まれる。
【0012】
感知面における光学測定は、好適には、感知面の複数の画像の生成を含むか、又は、完全に当該生成からなる。したがって、均一性画像を生成するために使用される画像センサは、光学測定又は少なくともその一部を提供するためにも使用される。特に、均一性画像は、光学測定のうちのほんの1つである。
【0013】
本発明の一実施形態では、均一性指示子は、均一性画像に作用する特徴検出手順によって決定される。特徴検出手順は、例えば感知面における気泡から発生する不均一な画像構造体を特定する。関心領域内に疑似特徴が検出される場合、対応する均一性指示子は、不均一性の存在を示す値に設定される。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、均一性指示子は、関心領域における画像値のヒストグラムから決定される。当業者には知られているように、ヒストグラムは、特定の画像値(例えば0乃至255のグレー値)が関心領域内で出現する頻度を表す。この領域が均一である場合、対応するヒストグラムは、鋭い(理想的には単一値の)ピークを有する。したがって、この種のヒストグラムからの逸脱は、画像不均一性を示す。具体的には、関心領域は、そのヒストグラムが2つ以上のピークを有する場合、不均一であると考えられる。
【0015】
本発明の更に別の実施態様では、均一性指示子は、基準データとの均一性画像の比較、特に関心領域の1つ以上の基準画像との比較から決定される。基準画像は、例えばカートリッジの画像であり、うまくいくことが知られている。更に、比較は、特に測定された均一性画像と基準画像とのヒストグラムの比較(又はより具体的には減算)を含む。
【0016】
分析の種類に依存して、均一性画像が生成されるべきタイミングは様々である。均一性画像は、特に分析の始まり、分析の終わり、又は実行中の分析の途中で生成される。当然ながら、分析の様々なタイミングにおいて複数の均一性画像を生成することも可能である。
【0017】
1つの分析について2つ以上の均一性指示子が決定される場合、光学測定の評価は、これらの比較に基づく。具体的には、分析の様々な段階において生成された均一性画像の均一性指示子(通常は、同じ関心領域について)が比較される。分析の様々な段階は、特定の歪みを出現又は消滅させる。したがって、均一性指示子における対応変化は、しばしば、どの種類の歪みが存在するのかを推測することを可能にする。
【0018】
分析の上記様々な段階は、特に、試料による感知面の湿潤が生じる前後の段階を含む。このような湿潤は、液体試料が使用される分析においてはほぼ常に生じる。これは、液体試料は、第1の段階として、測定が行われる空間に導入されなければならないからである。したがって、通常は、常に、このような湿潤の前後の段階を観察し比較する機会がある。既に上述したように、湿潤時の均一性指示子の変化によって、歪みの可能な種類の歪みについて幾らか結論付けることが可能となる。例えば、
−最初に存在した不均一性が湿潤中に消失した場合、この不均一性は、例えば結合スポット上の保護ショ糖層における割れ目による溶解性成分内の不規則性に因るものである。
−不均一性が湿潤中に出現する場合、この不均一性は、汚れ又は試料中の気泡の存在に因るものである。
−不均一性が湿潤中も変わらない場合、この不均一性は、例えば光学窓上の汚れ又はかすり傷による光路における外乱に因るものである。
【0019】
少なくとも1つの関心領域の決定された均一性指示子が、「正常」又は「許容」値の所与のターゲット範囲から逸脱する場合、これは、光学測定の評価に様々な影響を及ぼす。光学測定は例えば不合格判定される。即ち、有効値として考慮されない。具体的には、不均一性が感知面のどこかに検出された場合に、すべての光学測定が全面的に不合格判定される。或いは、均一性指示子がターゲット範囲から逸脱した対応する関心領域を参照する測定のみが不合格判定されてもよい(一方で、その他の領域の光学測定は依然として使用される)。最後に、不合格判定は、影響を受けた関心領域のサブ領域のみを対象としてもよい。この場合、十分に均一であるこの領域の一部は、分析について得られる最終測定結果に依然として貢献する。
【0020】
関心領域のサブ領域(のみ)の光学測定の不合格判定は、当該関心領域の不合格判定された部分と合格判定された部分とを区別する適切な手順を必要とする。具体的には、不合格判定された関心領域のサブ領域は、当該サブ領域の画像値の所与の画像値範囲からの逸脱によって特定される。例えば関心領域が、通常、所与の区間からのグレー値を有するべきであるが、この区間から外れた画像値を有する関心領域の部分(画素)は、評価からは外される。
【0021】
本発明による方法は、典型的に、コンピュータデバイス、例えばマイクロコントローラ又はパーソナルコンピュータを用いて実現される。したがって、本発明は更に、コンピュータデバイス上で実行された場合に、本発明による方法の何れかの方法の機能を提供するコンピュータプログラムプロダクトを含む。
【0022】
更に、本発明は、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、EPROM、又はコンパクトディスク(CD−ROM)である、コンピュータプロダクトを機械可読形式に記憶し、データ担体に記憶されたプログラムがコンピュータデバイス上で実行される場合に、本発明の方法のうちの少なくとも1つの方法を実行する当該データ担体を含む。データ担体は、前段落において言及したコンピュータデバイスのプログラムを記憶するのに特に適している。
【0023】
今日では、当該ソフトウェアは、しばしば、インターネット又は企業内イントラネット上にダウンロード用に提供されている。したがって、本発明は、本発明によるコンピュータプロダクトをローカル又はワイドエリアネットワークを介して送信することも含む。
【0024】
本発明は更に、分子診断、生物試料分析、化学試料分析、食品分析、及び/又は法医学的分析のための上記センサデバイスの使用に関する。分子診断は、例えばターゲット分子に直接的又は間接的に付着する磁気ビーズ又は蛍光粒子を用いて達成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施形態を参照することにより明らかとなろう。
【0026】
図1図1は、本発明によるセンサデバイスの側面図を概略的に示す。
図2図2は、画像値が評価される対応関心領域と合せた結合スポットの例示的な画像を示す。
図3図3は、試料流体による湿潤前(左)及び後(右)の保護ショ糖層に割れ目を有する感知面の画像を示す。
図4図4は、試料流体による湿潤前(左)及び後(右)の光学的歪みを有する感知面の画像を示す。
図5図5は、気泡を有する感知面の画像を示す。
図6図6は、ヒストグラムを用いて関心不均一領域の評価を示す。
図7図7は、分析の様々な段階における不均一な結合スポットを示す。
図8図8は、図7の結合スポットの縁及び中心の画像値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明は、ナノ粒子ラベル、特に電磁場によって作動可能な磁気ビーズに基づくバイオセンサに関して説明される。具体的な例としては、心筋梗塞を診断するために心臓トロポニンの検出を可能にする高速心臓検査のためのハンドヘルド式バイオセンサ、又は、術中モニタリングのために上皮小体ホルモン(PTH)の検出を可能にするハンドヘルド式PTH検査プロダクトが挙げられる。しかし、本発明は、これらの用途に限定されず、試料検査一般に使用可能であることに留意されたい。
【0028】
図1は、本発明によるセンサデバイス100の側面図を概略的に示す。当該センサデバイス100は、試料チャンバ111を有する交換可能な(廃棄可能な)担体又はカートリッジ110を含み、試料チャンバ111内で、液体試料が感知面112の隣に提供される。更に、センサデバイスは、(カートリッジ110が分析器上又は分析器内に適切に配置される場合に)感知面において光学測定を行うことができる分析器150を含む。分析器150は、感知面に向けて入力光ビームL1を放射する光源151(例えばLED)と、集束レンズ152と、感知面112から戻る出力光ビームL2を検出する画像センサ153(2Dカメラ)とを有する光学センサユニットを含む。画像センサ153によって生成される測定データ(画像又は画素値)は、評価ユニット170によって処理される。更に、分析器150は、試料チャンバ111内に磁場を発生させるための磁石154及び155を含む。
【0029】
通常、試料は、特定のアナライト分子を化学結合可能な抗体で官能化された磁気ビーズ1を含む。ビーズ1は、感知面112に引き寄せられ、そこでビーズは間接的に(捕捉されたアナライトによって)又は直接的に感知面上にプリントされた捕捉プローブ(例えば抗体)に結合する。結合ビーズの数が、試料中に存在するアナライト分子の量に直接的に又は逆比例して関連する。次に、ビーズは、感知面に近いビーズにより敏感である任意の技術を使用して検出される。図示される例では、検出技術は、例えば国際特許公開公報WO2008/155716A1により詳細に説明されるエバネセント光場、即ち、漏れ全反射(FTIR)に基づいている。
【0030】
別の検出原理では、カートリッジ/流体の界面は、図1に示されるように入力光線によって照射されるが、感知面付近の粒子からの散乱光は、カートリッジの下に配置される高NA対物レンズを使用して直接検出される。
【0031】
センサデバイス100を用いて分析が行われた後、捕捉プローブ(抗体)がプリントされたスポットSにおけるカメラ画像の暗さが、スポットSに結合された粒子の数の尺度である。図2は、これに関して、磁気ナノ粒子がインクジェットプリントされた抗体に結合された後のスポットSの4つのFTIR画像を示す。矩形「ROI」は、その中の信号(即ち、画素値)が評価される関心領域を示す。
【0032】
図2の左上図は、比較的均一なスポットSにROIが正しく位置決めされた所望のケースを示す。
【0033】
図2の右上図は、比較的均一なスポットSに間違って置かれたROIを示す。
【0034】
図2の下部図は、ROI内に明らかな不均一性を有するスポットSを示す。
【0035】
通常は、(矩形の)関心領域(ROI)内のグレー度は、考慮された結合スポットSの最終結果を得るために平均値が求められる。より正確な結果を得るために、より多くの画像画素に亘って平均値を求めることができるように、ROIはスポットの大部分をその範囲内とすることが好適である。しかし、ROIが、感知面上の結合粒子の量における不均一性を含み、不正確な分析結果がもたらされる可能性がある。ROIにおけるこのような不均一性は多くの原因によって引き起こされる。例えば、
‐スポット上でのROIの誤配置(図2、右上図)、
‐(例えばプリントされたスポットの乾燥時の食塩結晶の形成によって引き起こされる)スポット内の抗体の不均一なローディング、
‐スポット内の抗体の部分損傷。
【0036】
不正確な結果を防ぐために、本発明は、分析の前、途中、及び/又は後に、ROIにおける検出された信号の均一性を測定することを提案する。この測定は、少なくとも1つの対応する「均一性画像」において行われ、この測定の結果は、少なくとも1つの「均一性指示子」として表現される。これらの測定結果(即ち、均一性指示子)に基づいて、光学測定全体、特定のスポットのみ、又はスポットの一部のみが不合格判定される。
【0037】
この一般アプローチは、以下、様々な原因による不均一性の検出に関して、また、分析手順全体の間の様々な時間に、幾つかの好適な実施形態の詳細に関して説明される。
【0038】
第1の実施形態では、ショ糖層欠陥が検出される。通常のワークフローでは、抗体スポットS及び乾燥ナノ粒子を含むカートリッジ110は、試料が追加される前に、分析器150内に挿入される。したがって、カートリッジ面112が湿潤される前の当該カートリッジ面112の(均一性)画像が得られる。この乾燥状態における不均一性の原因としては、例えば(プラスチック)センサ面又はカートリッジを通る光路の入射及び出射窓への損傷が挙げられる。別の原因としては、長期ストレージを使用して抗体活性を保存するために通常付与される保護層への損傷が挙げられる。このような保護層の典型的な物質はショ糖である。ショ糖層が損傷されると、その下にある抗体も同様に損傷される。
【0039】
図3は、抗体スポットがプリントされた領域上のショ糖層における「割れ目」Cの一例を示す。割れ目Cは、乾燥状態、即ち、試料によって感知面を湿潤する前(図3左)にのみ可視である。湿潤後、割れ目は消える。図3の右図は、結合された磁気ビーズによって結合スポットSが可視となった後の状態を示す。ショ糖層における割れ目のもともとの位置は、抗体がプリントされたS上の薄い縞模様として依然として見ることができる。即ち、これらの領域は、磁気粒子の結合が少ないことを示す。これらの領域は、結果計算からは除外されるように選択可能である。
【0040】
第2の実施形態では、光路における欠陥が検出される。このことは図4に示される。図4では、試料による湿潤前(左)及び後(右)のカートリッジの2つのFTIR画像を示す。
【0041】
上述したように、ショ糖層によって引き起こされた不均一性Cは、試料を付与した後は消失する。不均一性が依然として存在する場合、この不均一性は、例えば光ビームがカートリッジに入射する/カートリッジから出射する光学窓(図1)の汚れ又は損傷によってもたらされることがある。図4は、そのような不均一性、即ち、汚れのスポットDの一例を示し、これは、試料が付与された後も依然として見られる。原則としては、このような不均一性は、スポットに結合する粒子の量に影響を及ぼすべきではなく、また、最終測定結果は、磁気作動前のグレー値に対する相対変化として計算されるので、相殺される。しかし、このような不均一性がROIにある場合、非常に低い信号変化、例えばカートリッジの微細なシフトであっても、比較的大きい誤差をもたらしてしまう。
【0042】
原則としては、このような不均一性は、例えば光路のどこかにおける感知面等(分析器窓、レンズ、センサ等)への汚れ、損傷(例えばかすり傷)によってもたらされることがある。これは、分析器を修理/洗浄する必要があることを示す。湿潤後も同じ不均一性が一連の測定間に観察される場合に分析器が、修理、洗浄、又は交換が望ましいことを示すように、分析器に不均一性の形状及び場所を記憶することが可能である。
【0043】
第3の実施形態では、気泡が検出される。このことは図5に示される。図5は、複数の小さい気泡Bを有するFTIR画像を示し、そのうちの1つはROIに近い。
【0044】
測定チャンバ内の気泡の封入は、試料による湿潤後の画像における不均一性の別の重要な原因である。気泡Bは、適切な画像処理アルゴリズムによって、単一の画像から検出される。特にROI上に又は付近に小さい気泡がある場合(図5)、これらの気泡は、通常はROIの付近にはない特別にデザインされた湿潤検出器構造体を用いてでは検出されない。
【0045】
第4の実施形態では、結合スポットにおける粒子密度の均一性が決定される。このことは図6に示される。図6は、不均一性を有するスポットSの略図(左)と、指示されたROIの対応する強度ヒストグラム(右)とを示す。
【0046】
図2にも示されるように、磁気粒子が結合スポットSに結合された後、粒子密度に不均一性があることがある。この不均一性は、適切な画像処理アルゴリズムによって検出され、対応する領域は、測定から除外されるか、又は、測定全体が不合格判定される。
【0047】
図6に、これを達成する単純なアルゴリズムが示される。均一なスポットSが多くのより小さい領域(最小可能領域は画像の単一画素)に分割されると、その強度のヒストグラムは、グレー値の狭い分布を示す。しかし、不均一性(例えばより明るい領域)がある場合、これは、違うグレー値における追加のピーク(図6の右を参照)として出現する。対応する領域を検出又は除外する1つの可能性としては、検出された主ピークの幅に閾値を設定し、その閾値から外れるすべての値が、ROIの平均グレー値の計算には使用されないようにすることである。当然ながら、不均一領域の位置も考慮するより高度な画像処理アルゴリズムを利用してもよい。
【0048】
なお、上述したすべての実施形態について、特定の画像フレーム(「均一性画像」)において検出された不均一性は、測定の後の又は先のフレームからの結果を補正するために使用することができることに留意されたい。図7に示される状況では、結合スポットSは、2つの領域、即ち、主(中心)領域S1と外縁S2とから構成される。様々な領域が機能的抗体の様々な密度を含み、したがって、粒子が感知面に結合する割合は様々である。分析の終わり(時間t)において、縁について測定された信号変化は、(図6に示される)所定の均一性閾値内に含まれるが、この縁を考慮しない方がより正確な結果が得られる。縁における信号は飽和状態になるので、2つの領域間の信号の差は、tでは、非常に小さくなる。しかし、分析のより早い時点(t)では、主領域S1は、縁C2からより明確に区別される。このことは図7から分かる。図7では、縁及び中心の画像値G(例えばグレー値)をそれぞれ示す。tにおいて検出された不均一性(外縁)を含む領域は、tにおいても除外される。
【0049】
更に、不均一性は、単一のフレーム/測定から決定される必要はないが、複数の(均一性)画像を評価する又はそれらの平均値を求めることによっても決定される。磁気ビーズの作動時の均一性検出のために、好適な時間は、非結合粒子を感知面から取り除く「ウォッシュパルス(wash pulse)」の直後である。
【0050】
まとめると、捕捉プローブ(例えば抗体)の(インクジェットプリントされた)スポットの不均一ローディングは、免疫学的検定における不正確な分析結果をもたらす。そのような不均一性及び測定に影響を及ぼす他の不均一性を検出及び補正する方法が、本発明によって提供される。不正確な結果を防ぐために、全分析の間、ROIにおける検出された信号の均一性を測定し、すべての捕捉されたフレームのうち所定の均一性要件を満たす領域のみを考慮に入れることによって所与のフレームにおける不均一性を補正するか、又は、特定の均一性要件が満たされない場合は、分析結果を不合格判定することが提案される。
【0051】
本発明は、図面及び上記説明において詳細に例示かつ説明されたが、このような例示及び説明は、例示であって限定と考えられるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態への他の変更は、図面、開示内容及び添付の特許請求の範囲の検討から、クレームされた発明を実施する際に、当業者によって理解かつ実現される。請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、不定冠詞「a」又は「an」は複数形を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載される幾つかのアイテムの機能を発揮する。特定の手段が相互に異なる従属項に記載されるからと言って、それらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定しているものと解釈すべきではない。
図1
図2
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図4
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図7
図8