特許第6190377号(P6190377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シスメックス株式会社の特許一覧

特許6190377試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材
<>
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000002
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000003
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000004
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000005
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000006
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000007
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000008
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000009
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000010
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000011
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000012
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000013
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000014
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000015
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000016
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000017
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000018
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000019
  • 特許6190377-試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190377
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】試料調製装置、細胞分析装置およびフィルタ部材
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20170821BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20170821BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20170821BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20170821BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C12M1/02 A
   C12M1/34 B
   G01N1/28 J
   G01N1/10 B
   B01D29/00 B
   B01D29/04 510A
   B01D29/04 530A
【請求項の数】34
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-538586(P2014-538586)
(86)(22)【出願日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2013076053
(87)【国際公開番号】WO2014050963
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-217631(P2012-217631)
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】海老 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】田島 功規
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 俊邦
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−139112(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/010355(WO,A1)
【文献】 特開2011−164081(JP,A)
【文献】 特開2011−095247(JP,A)
【文献】 国際公開第98/020352(WO,A1)
【文献】 特表2005−506933(JP,A)
【文献】 特表2010−520446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料調製装置において、
筒状の内側面を有する筒状部を有し、試料中の分析対象の細胞と他の成分とを弁別するためのフィルタが前記筒状部の端縁から内方に変位した位置に配置されたフィルタ部材と、
前記フィルタを介して互いに結合される第1収容部および第2収容部と、
試料を収容可能な第3収容部と、
前記第1収容部に形成され、前記第1収容部に対して試料を出入りさせるための連通口と、
前記第3収容部と前記連通口とを連通する流路と、
前記第2収容部内に陰圧を付与することにより、前記第3収容部内の試料を前記流路および前記第1収容部を介して前記フィルタに移動させるとともに、分析対象以外の成分を、前記フィルタを介して前記第2収容部に移動させる陰圧部と、
分析対象の細胞が付着した前記フィルタに前記第2収容部側から陽圧を付与する陽圧部と、
前記第1収容部内に設けられ、前記筒状部内に挿入可能な内周部と、前記内周部の周りに形成され、前記内周部が前記フィルタに当接するのを規制する規制部とを有し、前記フィルタの濾過面に沿って回転する回転部材と、を備える、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料調製装置において、
前記第1収容部と前記第2収容部は前記フィルタを介して互いに液密的に結合され、
前記陰圧部は、前記第1収容部内の試料を前記フィルタ側に移動させる、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の試料調製装置において、
前記第1収容部および前記第2収容部に所定の液体を供給するための液体供給部をさらに備え、
前記陰圧部は、前記液体供給部によって前記第1収容部および前記第2収容部が所定の液体で満たされた状態で作動することにより、前記第1収容部内の液体と試料をフィルタ側に移動させる、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項4】
請求項3に記載の試料調製装置であって、
前記第2収容部は、当該第2収容部内を大気開放するための通気孔を有し、
前記通気孔を開閉するためのバルブをさらに備え、
前記バルブによって前記通気孔が開かれることにより、前記第1収容部内の分析対象の細胞を含む液体が前記連通口を介して前記第3収容部に移動される、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記第1収容部は、分析対象の細胞を貯留させるための貯留部を有し、
前記連通口は、前記貯留部に設けられ、
前記貯留部は、前記回転部材の回転により生じる試料の流れによって、分析対象の細胞が前記貯留部に移動する位置に配置されている、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項6】
請求項に記載の試料調製装置において、
前記第1収容部は、円形の内側面を有し、
前記回転部材は、前記円形の内側面の中心軸の周りに回転し、
前記貯留部は、前記円形の内側面に、前記中心軸から離れる方向に凹むように形成されている、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記フィルタ部材の前記筒状部が第一開口および第二開口を有し、
前記フィルタ部材は、前記第一開口の外周に前記規制部と当接する当接部を有し、
前記フィルタ部材には、前記当接部の外周に弾性体が設けられ、
前記当接部には、弾性体は設けられてない、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項8】
請求項に記載の試料調製装置において、
前記第二開口の外周に弾性体が設けられている、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記フィルタが、前記筒状部内の厚さ方向の一方寄りに配置されている、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項10】
請求項1ないしの何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記フィルタを含むフィルタ部材を、前記第1収容部と前記第2収容部との間に挿入するための挿入口を備える、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項11】
請求項10に記載の試料調製装置において、
前記挿入口から前記第1収容部と前記第2収容部との間に挿入された前記フィルタ部材が前記第1収容部に圧接されるよう、前記第2収容部を前記第1収容部側に移動させる圧接機構を備える、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記フィルタは、前記フィルタの濾過面が鉛直方向に略平行となるように配置される、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項13】
請求項12に記載の試料調製装置において、
前記連通口は、前記第1収容部の下方の位置に配置されている、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項14】
請求項1ないし13の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記第3収容部は、ピペットが挿入可能に構成され、当該ピペットから吐出された試料を収容する、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記連通口から、生体試料と保存液の混合液からなる試料が前記第1収容部に流入され、
前記第1収容部は、前記第1収容部に置換液を流入させるための置換液供給口を有し、
前記置換液供給口を開閉するためのバルブをさらに備える、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記試料は、子宮頚部から採取された生体試料を含み、
分析対象の細胞は、子宮頚部の上皮細胞である、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項17】
請求項1ないし16の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記フィルタ部材が、幅方向または厚み方向に非対称に構成される、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項18】
請求項17に記載の試料調製装置において、
前記フィルタ部材が幅方向の何れか一方の端部に切欠を有することにより左右非対称な形状となっている、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項19】
請求項10に記載の試料調製装置において、
光源と、前記光源からの光を受ける受光部と、をさらに備え、
前記フィルタ部材は、幅方向の何れか一方の端部に切欠を有し、
前記挿入口に前記フィルタ部材が所定の姿勢で挿入された場合に、前記光源からの光が前記切欠を通して前記受光部に到達し、前記挿入口に前記フィルタ部材が前記所定の姿勢とは異なる姿勢で挿入された場合に、前記光源からの光は、前記フィルタ部材に遮断されて前記受光部には到達しない、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項20】
請求項19に記載の試料調製装置において、
前記挿入口に前記フィルタ部材が前記所定の姿勢とは異なる姿勢で挿入された場合に、前記フィルタ部材が前記所定の姿勢とは異なる姿勢で挿入された旨を表示する表示部をさらに備える、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項21】
請求項1ないし20の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記フィルタ部材は、前記フィルタの配置位置から長手方向に離れた端部付近に、長手方向内側に比して厚みが大きい変形部をさらに備える、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項22】
請求項10に記載の試料調製装置において、
前記フィルタ部材は、前記フィルタの配置位置から長手方向に離れた端部付近に、長手方向内側に比して厚みが大きい変形部をさらに備え、
前記フィルタ部材が、前記フィルタ部材を前記挿入口に挿入した際に、前記挿入口の上部に前記変形部が突出するような長さを有する、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項23】
請求項1ないし22の何れか一項に記載の試料調製装置において、
前記フィルタ部材が、前記フィルタ部材に関する情報を記録した識別体を有する、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項24】
請求項23に記載の試料調製装置において、
前記フィルタ部材に関する情報は、前記フィルタ部材の使用期限に関する情報を含む、
ことを特徴とする試料調製装置。
【請求項25】
請求項1ないし24の何れか一項に記載の試料調製装置と、
前記試料調製装置によって調製された測定試料に含まれる細胞を分析する分析部と、を備える、
ことを特徴とする細胞分析装置。
【請求項26】
第1収容部を有する第1部材と、前記第1収容部に向き合う第2収容部を有する第2部材と、前記第1収容部内に設けられ凸状の内周部および前記内周部の周りに形成された規制部を有する回転部材と、試料を前記第1収容部から前記第2収容部へと移動させるための圧力を付与する圧力生成部と、を備えた試料調製装置に対して、前記第1部材と前記第2部材とに挟まれるように設置されるフィルタ部材であって、
前記内周部に対向し、試料中の分析対象の細胞と他の成分とを弁別するためのフィルタと、
第一開口および第二開口を接続する筒状の内側面を有し、前記内周部が挿入される筒状部を有するフィルタ保持部材と、
前記第一開口の境界から離間した位置に配された第1弾性体と、
前記第二開口の外周に配された第2弾性体と、を備え、
前記フィルタ保持部材は、前記第一開口の外周に前記規制部と当接する当接部を有し、前記当接部の外周に前記第1弾性体が設けられ、前記第1弾性体は前記当接部には設けられておらず、
前記フィルタは、前記回転部材の前記規制部が前記当接部に当接することによって前記回転部材の前記内周部が前記フィルタに当接することが規制されるように、前記筒状部の端縁から内方に変位した位置に配置され、
前記第1部材と前記第2部材とによって前記フィルタ保持部材が挟まれた状態において、前記第1弾性体および前記第2弾性体が、それぞれ、前記第1部材および前記第2部材に圧接し、前記フィルタの前記第1収容部側の濾過面に前記回転部材の内周部が対向する、
ことを特徴とするフィルタ部材。
【請求項27】
請求項26に記載のフィルタ部材において、
前記フィルタ保持部材が、幅方向または厚み方向に非対称な形状を有する、
ことを特徴とするフィルタ部材。
【請求項28】
請求項27に記載のフィルタ部材において、
前記フィルタ保持部材は、幅方向の何れか一方の端部に切欠を有することにより左右非対称な形状となっている、
ことを特徴とするフィルタ部材。
【請求項29】
請求項26ないし28の何れか一項に記載のフィルタ部材において、
前記フィルタが、前記貫通孔の厚さ方向の一方寄りに設けられている、
ことを特徴とするフィルタ部材。
【請求項30】
請求項26ないし29の何れか一項に記載のフィルタ部材において、
前記フィルタ保持部材は、前記フィルタの配置位置から長手方向に離れた端部付近に、長手方向内側に比して厚みが大きい変形部をさらに備える、
ことを特徴とするフィルタ部材。
【請求項31】
請求項26ないし30の何れか一項に記載のフィルタ部材において、
前記フィルタ保持部材が、前記フィルタ部材に関する情報を記録した識別体を有する、
ことを特徴とするフィルタ部材。
【請求項32】
請求項31に記載のフィルタ部材において、
前記フィルタ部材に関する情報が、前記フィルタ部材の使用期限に関する情報を含む、
ことを特徴とするフィルタ部材。
【請求項33】
請求項26ないし32の何れか一項に記載のフィルタ部材において、
前記フィルタが金属製である、
ことを特徴とするフィルタ部材。
【請求項34】
請求項1に記載の試料調製装置に設置されるフィルタ部材であって、
前記内周部に対向し、試料中の分析対象の細胞と他の成分とを弁別するためのフィルタと、
第一開口および第二開口を接続する筒状の内側面を有し、前記内周部が挿入される筒状部を有するフィルタ保持部材と、
前記第一開口の境界から離間した位置に配された第1弾性体と、
前記第二開口の外周に配された第2弾性体と、を備え、
前記フィルタ保持部材は、前記第一開口の外周に前記規制部と当接する当接部を有し、前記当接部の外周に前記第1弾性体が設けられ、前記第1弾性体は前記当接部には設けられておらず、
前記フィルタは、前記回転部材の前記規制部が前記当接部に当接することによって前記回転部材の前記内周部が前記フィルタに当接することが規制されるように、前記筒状部の端縁から内方に変位した位置に配置されている、
ことを特徴とするフィルタ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者から採取した細胞から測定試料を調製する試料調製装置、調製された試料を分析する細胞分析装置および測定試料を調製するためのフィルタ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体から採取された生体試料に含まれる細胞を分析する細胞分析装置が知られている。たとえば、特許文献1には、被験者の子宮頚部から採取された試料に含まれる上皮細胞をフローサイトメータにより測定し、測定結果に基づき、癌化の進行状況を判定する細胞分析装置が記載されている。
【0003】
このような細胞分析装置では、個々の細胞に対して分析が行われるため、分析精度を高めるためには、分析対象となる細胞の数が多い方が望ましい。たとえば、特許文献2には、試料中に含まれる細胞の濃度を高めることにより、試料の量を抑えながら分析対象の細胞の数を高めることが可能な試料調製装置が記載されている。
【0004】
この試料調製装置は、上面が開放され試料が収容される収容室と、この収容室に挿入され下端面にフィルタが装着された円筒状のピストンと、フィルタからピストン内部に浸入した液体を吸引する吸引管と、収容室の底部に配置されたスターラーとを備えている。試料の濃縮工程では、まず、収容室に試料が注入され、その後、フィルタが試料に浸されるまでピストンが収容室に挿入される。このとき、ピストン内に漏れ出た液体が吸引管によって吸引され、収容室から排除される。分析対象の細胞は、フィルタを通らず、フィルタの下面に付着する。フィルタの下面に付着した細胞は、適宜、スターラーを駆動することによりフィルタから引き剥がされる。こうして、分析対象の細胞の濃度が高められた試料が、収容室内に残ることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/103920号公報
【特許文献2】特開2011−95247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載の試料調製装置では、ピストンを収容室内に挿入することに伴ってピストン内に漏れ出た液体を吸引管で排出するため、収容室内の液体を吸い切ることが困難である。そのため、収容室内に残る分析対象以外の細胞の量が多くなるおそれがある。また、この試料調製装置では、分析対象の細胞の濃縮処理を行うためにピストンを収容室内で何回も上下させる必要があるため、濃縮処理に時間がかかるおそれがある。
【0007】
かかる事情に鑑み、本発明は、分析対象の細胞の濃度が高められた試料を効率良く生成することが可能な試料調製装置、これを備えた細胞分析装置、およびフィルタ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、試料調製装置に関する。この態様に係る試料調製装置は、筒状の内側面を有する筒状部を有し、試料中の分析対象の細胞と他の成分とを弁別するためのフィルタが前記筒状部の端縁から内方に変位した位置に配置されたフィルタ部材と、前記フィルタを介して互いに結合される第1収容部および第2収容部と、試料を収容可能な第3収容部と、前記第1収容部に形成され、前記第1収容部に対して試料を出入りさせるための連通口と、前記第3収容部と前記連通口とを連通する流路と、前記第2収容部内に陰圧を付与することにより、前記第3収容部内の試料を前記流路および前記第1収容部を介して前記フィルタに移動させるとともに、分析対象以外の成分を、前記フィルタを介して前記第2収容部に移動させる陰圧部と、分析対象の細胞が付着した前記フィルタに前記第2収容部側から陽圧を付与する陽圧部と、前記第1収容部内に設けられ、前記筒状部内に挿入可能な内周部と、前記内周部の周りに形成され、前記内周部が前記フィルタに当接するのを規制する規制部とを有し、前記フィルタの濾過面に沿って回転する回転部材と、を備える。
【0009】
本態様に係る試料調製装置によれば、陰圧を用いて、第1収容部内の試料をフィルタを介して第2収容部に移動させる構成を備えているため、第1収容部内に存在する液体を第2収容部側に吸い切ることができ、第1収容部内に残る分析対象以外の成分の量を極力減らすことが可能となる。また、この試料調製装置では、フィルタを移動させることなく、陰圧および陽圧を利用して分析対象の細胞の濃縮処理を行えるため、迅速に濃縮処理を行うことができる。したがって、分析対象の細胞が濃縮された試料の生成効率を高めることができる。また、フィルタに付着した細胞を、回転部材によりフィルタから円滑に引き剥がすことができる。さらに、内周部がフィルタに当接することが規制部により規制されるため、誤って内周部がフィルタに当接してフィルタが損傷することを防止することができる。このため、内周部をフィルタに接近させながら回転させることができ、フィルタに付着した細胞を効果的に引き剥がすことができる。
【0010】
本態様に係る試料調製装置において、前記第1収容部と前記第2収容部は前記フィルタを介して互いに液密的に結合され、前記陰圧部は、前記第1収容部内の試料を前記フィルタ側に移動させる構成とされ得る。こうすると、陰圧を用いて、第1収容部内の試料を漏れ無く第2収容部へ移動させることができる。
【0011】
また、本態様に係る試料調製装置は、前記第1収容部および前記第2収容部に所定の液体を供給するための液体供給部をさらに備え、前記陰圧部は、前記液体供給部によって前記第1収容部および前記第2収容部が所定の液体で満たされた状態で作動することにより、前記第1収容部内の液体と試料をフィルタ側に移動させる構成とされ得る。こうすると、低陰圧で、第1収容部内の液体と試料をフィルタ側に移動させることができ、分析対象の細胞がフィルタを通過してしまうことを抑制できる。
【0012】
ここで、前記第2収容部は、当該第2収容部内を大気開放するための通気孔を有し、当該試料調製装置は、前記通気孔を開閉するためのバルブをさらに備え、前記バルブによって前記通気孔が開かれることにより、前記第1収容部内の分析対象の細胞を含む液体が前記連通口を介して前記第3収容部に移動される構成とされ得る。
【0014】
ここで、前記第1収容部は、分析対象の細胞を貯留させるための貯留部を有し、前記連通口は、前記貯留部に設けられ、前記貯留部は、前記回転部材の回転により生じる試料の流れによって、分析対象の細胞が前記貯留部に移動する位置に配置されている構成とされ得る。こうすると、分析対象の細胞が貯留部に集まるため、分析対象の細胞の濃度が高められた試料を、連通口から、効率的に取り出すことができる。
【0015】
さらに、前記第1収容部は、円形の内側面を有し、前記回転部材は、前記円形の内側面の中心軸の周りに回転し、前記貯留部は、前記円形の内側面に、前記中心軸から離れる方向に凹むように形成されている構成とされ得る。
【0017】
ここで、前記フィルタ部材の前記筒状部が第一開口および第二開口を有し、前記フィルタ部材は、前記第一開口の外周に前記規制部と当接する当接部を有し、前記フィルタ部材には、前記当接部の外周に弾性体が設けられ、前記当接部には、弾性体は設けられてない構成とされ得る。こうすると、弾性体によりフィルタ部材と第1収容部内との間の液密性を向上させることができる。また、当接部には弾性体が設けられていないため、回転部材の回転が弾性体によって妨げられることなく、円滑に行われ得る。
【0018】
ここで、前記第二開口の外周に弾性体が設けられ得る。こうすると、さらに液密性を向上させることができる。
【0019】
また、前記フィルタが、前記筒状部内の厚さ方向の一方寄りに配置され得る。
【0020】
また、本態様に係る試料調製装置は、前記フィルタを含むフィルタ部材を、前記第1収容部と前記第2収容部との間に挿入するための挿入口を備える構成とされ得る。こうすると、消耗品であるフィルタ部材を、挿入口を介して容易に交換することができる。
【0021】
ここで、本態様に係る試料調製装置は、前記挿入口から前記第1収容部と前記第2収容部との間に挿入された前記フィルタ部材が前記第1収容部に圧接されるよう、前記第2収容部を前記第1収容部側に移動させる圧接機構を備える構成とされ得る。こうすると、圧接機構により容易に第1収容部と第2収容部とをフィルタ部材を介して互いに結合させることができる。
【0022】
また、本態様に係る試料調製装置において、前記フィルタは、前記フィルタの濾過面が鉛直方向に略平行となるように配置される構成とされ得る。こうすると、フィルタの濾過面が水平方向に平行となるようフィルタが配置される場合に比べ、試料調製装置を水平方向に小型化することができる。このため、試料調製装置が搭載される細胞分析装置の設置面積を小さくすることができる。また、フィルタに付着した細胞が、重力により、フィルタから剥離し易くなる。
【0023】
ここで、前記連通口は、前記第1収容部の下方の位置に配置されている構成とされ得る。こうすると、フィルタから剥離した細胞が、重力により、連通口付近に集まり易くなる。このため、連通口を介して、効率的に、分析対象の細胞を回収することができる。
【0024】
また、本態様に係る試料調製装置において、前記第3収容部は、ピペットが挿入可能に構成され、当該ピペットから吐出された試料を収容する構成とされ得る。
【0025】
また、本態様に係る試料調製装置において、前記連通口から、生体試料と保存液の混合液からなる試料が前記第1収容部に流入され、前記第1収容部は、前記第1収容部に置換液を流入させるための置換液供給口を有し、当該試料調製装置は、前記置換液供給口を開閉するためのバルブをさらに備える構成とされ得る。こうすると、第1収容部とフィルタとによって形成される空間において、保存液を置換液に置換することが可能となる。また、バルブを閉じることにより、第1収容部とフィルタとによって形成される空間を外部に対して閉じた空間とすることができる。
【0026】
また、本態様に係る試料調製装置において、前記試料は、子宮頚部から採取された生体試料を含み、分析対象の細胞は、子宮頚部の上皮細胞であっても良い。
【0027】
また、本態様に係る試料調製装置において、前記フィルタ部材が、幅方向または厚み方向に非対称に構成され得る。こうすると、フィルタ部材の非対称性を検出することにより、フィルタ部材が装置に対して適切に装着されたか否かを判断することができる。
【0028】
ここで、前記フィルタ部材が幅方向の何れか一方の端部に切欠を有することにより左右非対称な形状とされ得る。
【0029】
本態様に係る試料調製装置は、光源と、前記光源からの光を受ける受光部と、をさらに備える構成とされ得る。前記フィルタ部材は、幅方向の何れか一方の端部に切欠を有し、前記挿入口に前記フィルタ部材が所定の姿勢で挿入された場合に、前記光源からの光が前記切欠を通して前記受光部に到達し、前記挿入口に前記フィルタ部材が前記所定の姿勢とは異なる姿勢で挿入された場合に、前記光源からの光は、前記フィルタ部材に遮断されて前記受光部には到達しない構成とされ得る。こうすると、たとえばフィルタが表裏逆向きに挿入されたことを受光部からの出力により検出することができ、フィルタ部材が適正な姿勢で挿入口に挿入されたか否かを判断することができる。
【0030】
ここで、本態様に係る試料調製装置は、前記挿入口に前記フィルタ部材が前記所定の姿勢とは異なる姿勢で挿入された場合に、前記フィルタ部材が前記所定の姿勢とは異なる姿勢で挿入された旨を表示する表示部をさらに備える構成とされ得る。こうすると、装置への誤挿入を防止することができる。
【0031】
本態様に係る試料調製装置において、前記フィルタ部材は、前記フィルタの配置位置から長手方向に離れた端部付近に、長手方向内側に比して厚みが大きい変形部をさらに備える構成とされ得る。こうすると、フィルタの配置位置から長手方向に離れた位置を把持することにより、変形部が指に当ってフィルタ部材が指に掛り易くなり、装置に装着されたフィルタ部材を容易に取り出すことができる。
【0032】
本態様に係る試料調製装置において、前記フィルタ部材は、前記フィルタの配置位置から長手方向に離れた端部付近に、長手方向内側に比して厚みが大きい変形部をさらに備える構成とされ得る。この場合、前記フィルタ部材は、前記フィルタ部材を前記挿入口に挿入した際に、前記挿入口の上部に前記変形部が突出するような長さを有する構成とされ得る。こうすると、装置からフィルタ部材を取り出す際に、挿入口から突出した変形部付近が把持される。この際、変形部が指に当ってフィルタ部材が指に掛り易くなり、装置に挿入されたフィルタ部材を容易に引き出すことができる。
【0033】
本態様に係る試料調製装置において、前記フィルタ部材が、前記フィルタ部材に関する情報を記録した識別体を有する構成とされ得る。こうすると、フィルタ部材を個別に認識することができるようになる。
【0034】
ここで、前記フィルタ部材に関する情報は、前記フィルタ部材の使用期限に関する情報を含む構成とされ得る。こうすると、フィルタ部材の使用期限を管理することができる。
【0035】
本発明の第2の態様は、細胞分析装置に関する。この態様に係る細胞分析装置は、上記第1の態様に係る試料調製装置と、前記試料調製装置によって調製された測定試料に含まれる細胞を分析する分析部と、を備える。
【0036】
本態様に係る細胞分析装置によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。また、試料の生成効率が高まるため、濃縮された試料をより多く回収することができ、より多くの量の試料を分析に供することができる。よって、分析精度を高めることができる。
【0037】
本発明の第3の態様は、第1収容部を有する第1部材と、前記第1収容部に向き合う第2収容部を有する第2部材と、前記第1収容部内に設けられ凸状の内周部および前記内周部の周りに形成された規制部を有する回転部材と、試料を前記第1収容部から前記第2収容部へと移動させるための圧力を付与する圧力生成部と、を備えた試料調製装置に対して、前記第1部材と前記第2部材とに挟まれるように設置されるフィルタ部材に関する。この態様に係るフィルタ部材は、前記内周部に対向し、試料中の分析対象の細胞と他の成分とを弁別するためのフィルタと、第一開口および第二開口を接続する筒状の内側面を有し、前記内周部が挿入される筒状部を有するフィルタ保持部材と、前記第一開口の境界から離間した位置に配された第1弾性体と、前記第二開口の外周に配された第2弾性体と、を備える。前記フィルタ保持部材は、前記第一開口の外周に前記規制部と当接する当接部を有し、前記当接部の外周に前記第1弾性体が設けられ、前記第1弾性体は前記当接部には設けられていない。前記フィルタは、前記回転部材の前記規制部が前記当接部に当接することによって前記回転部材の前記内周部が前記フィルタに当接することが規制されるように、前記筒状部の端縁から内方に変位した位置に配置されている。前記第1部材と前記第2部材とによって前記フィルタ保持部材が挟まれた状態において、前記第1弾性体および前記第2弾性体が、それぞれ、前記第1部材および前記第2部材に圧接し、前記フィルタの前記第1収容部側の濾過面に前記回転部材の内周部が対向する。
【0038】
本態様に係るフィルタ部材によれば、弾性体により、フィルタ部材と第一開口側に位置付けられる収容部との間の液密性を向上させることができる。また、当接部の外周に弾性体が配置されているため、フィルタに付着した細胞を引き剥がすための回転部材が弾性体に当接することを回避でき、よって、回転部材の駆動が円滑に行われ得る。さらに、回転部材の内周部がフィルタに当接することがないように、フィルタが筒状部の端縁から内方に変位した位置に配置されているため、フィルタに付着した細胞を引き剥がすための内周部をフィルタに接近させながら回転部材を駆動させることができる。
【0039】
本態様に係るフィルタ部材において、前記フィルタ保持部材が、幅方向または厚み方向に非対称な形状を有する構成とされ得る。こうすると、装置側でフィルタ部材の非対称性を検出することにより、フィルタ部材が装置に対して適切に装着されたか否かを判断することができる。
【0040】
ここで、前記フィルタ保持部材は、幅方向の何れか一方の端部に切欠を有することにより左右非対称な形状とされ得る。
【0041】
本態様に係るフィルタ部材において、前記フィルタが、前記貫通孔の厚さ方向の一方寄りに設けられ得る。
【0042】
本態様に係るフィルタ部材において、前記フィルタ保持部材は、前記フィルタの配置位置から長手方向に離れた端部付近に、長手方向内側に比して厚みが大きい変形部をさらに備える構成とされ得る。こうすると、フィルタの配置位置から長手方向に離れた位置を把持することにより、変形部が指に当って第一フィルタ保持部材が指に掛かり易くなり、装置に装着されたフィルタ部材を容易に取り出すことができる。
【0043】
また、本態様に係るフィルタ部材において、前記フィルタ保持部材が、前記フィルタ部材に関する情報を記録した識別体を有する構成とされ得る。こうすると、フィルタ部材を個別に認識することができる。
【0044】
ここで、前記フィルタ部材に関する情報が、前記フィルタ部材の使用期限に関する情報を含む構成とされ得る。こうすると、フィルタ部材の使用期限を管理することができる。
本態様に係るフィルタ部材において、前記フィルタは金属製とされ得る。
【0045】
本発明の第4の態様は、第1の態様に係る試料調製装置に設置されるフィルタ部材に関する。この態様に係るフィルタ部材は、前記内周部に対向し、試料中の分析対象の細胞と他の成分とを弁別するためのフィルタと、第一開口および第二開口を接続する筒状の内側面を有し、前記内周部が挿入される筒状部を有するフィルタ保持部材と、前記第一開口の境界から離間した位置に配された第1弾性体と、前記第二開口の外周に配された第2弾性体と、を備える。前記フィルタ保持部材は、前記第一開口の外周に前記規制部と当接する当接部を有し、前記当接部の外周に前記第1弾性体が設けられ、前記第1弾性体は前記当接部には設けられていない。前記フィルタは、前記回転部材の前記規制部が前記当接部に当接することによって前記回転部材の前記内周部が前記フィルタに当接することが規制されるように、前記筒状部の端縁から内方に変位した位置に配置されている。
【発明の効果】
【0046】
以上のとおり、本発明によれば、分析対象の細胞の濃度が高められた試料を効率良く生成することが可能な試料調製装置、これを備えた細胞分析装置、およびフィルタ部材を提供することができる。
【0047】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】実施の形態に係る癌化情報提供装置の外観の構成を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る測定装置の内部の構成を示す平面図である。
図3】実施の形態に係る弁別・置換部の構成を示す斜視図である。
図4】実施の形態に係るモータの側面図およびピストンを駆動させるための機構を上から見た場合の平面図である。
図5】実施の形態に係る収容体の構成を示す斜視図、収容体を切断したときの斜視図および収容体の側面図である。
図6】実施の形態に係るフィルタ部材の構成を示す斜視図およびスターラーの構成を示す斜視図である。
図7】実施の形態に係るフィルタ部材の詳細な構成を示す図である。
図8】実施の形態に係るフィルタ部材の詳細な構成を示す図である。
図9】実施の形態に係るピストンの構成を示す側面図および斜視図である。
図10】実施の形態に係るピストン、支持板、フィルタ部材、スターラーおよび収容体を、中心軸を通る平面によって切断した場合の断面図である。
図11】実施の形態に係るフィルタ部材が設置される手順を示す図である。
図12】実施の形態に係る測定装置の流体処理部を示す図である。
図13】実施の形態に係る測定装置の構成を示す図である。
図14】実施の形態に係る癌化情報提供装置の分析動作を示すフローチャートである。
図15】実施の形態に係る弁別・置換処理を示すフローチャートである。
図16】実施の形態に係る収容部および空間内における液体の状態を模式的に示す図である。
図17】変更例に係るフィルタ部材の構成を示す図である。
図18】変更例に係るフィルタ部材の構成を示す図である。
図19】変更例に係るフィルタ部材が誤設置された場合の処理および表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本実施の形態は、被検者(患者)から採取した細胞(生体試料)を含む測定試料を調製すると共に、調製した測定試料に基づいて細胞の癌化に関する情報を取得する癌化情報提供装置(細胞分析装置)に本発明を適用したものである。以下、本実施の形態に係る癌化情報提供装置1について、図面を参照して説明する。
【0050】
図1は、癌化情報提供装置1の外観の構成を示す斜視図である。
【0051】
癌化情報提供装置1は、被検者から採取した細胞(以下、「分析対象細胞」という)を含む測定試料をフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射する。そして、測定試料からの光(前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光)を検出してその光信号を分析することにより、細胞に癌化またはその過程にある細胞が含まれているか否かを判定する。具体的には、被検者から採取した子宮頸部の上皮細胞を用いて子宮頸癌をスクリーニングする場合に、癌化情報提供装置1が用いられる。
【0052】
癌化情報提供装置1は、分析対象細胞の測定等を行う測定装置2と、この測定装置2に接続され、測定結果の分析等を行うデータ処理装置3とを備えている。測定装置2の前面には、メタノールを主成分とする保存液と被検者の子宮頸部から採取した細胞との混合液(試料)を収容する試料容器4(図2参照)を複数セットするための検体セット部2aが設置されている。また、測定装置2にはカバー2bが設けられており、ユーザはカバー2bを上方に開けることで、測定装置2の内部にアクセスすることができる。また、測定装置2には、後述の検体ピペット部11が出入りするための開口2cが設けられている。データ処理装置3は、ユーザからの指示を受け付ける入力部31と、分析結果等を表示する表示部32を備えている。
【0053】
図2は、測定装置2の内部の構成を示す平面図である。
【0054】
検体セット部2aは、試料容器4が複数セットされたラック4aを、検体ピペット部11による試料の吸引位置まで順次搬送する。検体ピペット部11は、鉛直方向に延びたピペット11aを有し、ピペット11aを水平方向および鉛直方向に移動させて、試料の吸引と吐出を行うことが可能となるよう構成されている。
【0055】
検体セット部2aの吸引位置に試料容器4が位置付けられると、この試料容器4に収容される試料は、検体ピペット部11により吸引され、第1分散部12の試料収容部12aに吐出される。第1分散部12は、せん断力を付与することにより試料に含まれる凝集細胞を分散させる。第1分散部12により処理(第1分散処理)が完了した試料は、検体ピペット部11により吸引され、副検出部13の試料取込部13aに吐出される。副検出部13は、フローサイトメータを備えており、分析対象細胞の数を検出(プレ測定)することにより試料の濃度測定を行う。この濃度測定に基づいて、主検出部22による本測定を行うために必要な試料の吸引量が決定される。
【0056】
次に、第1分散部12の試料収容部12aに収容されている試料は、検体ピペット部11により、上記のように決定された吸引量だけ吸引され、吸引された試料は、弁別・置換部14の収容部210(図5(a)参照)に吐出される。弁別・置換部14は、処理を並行して行うことができるよう2つ設けられている。
【0057】
弁別・置換部14は、試料に含まれるメタノールを主成分とする保存液を、希釈液に置換する。すなわち、弁別・置換部14は、後工程の細胞染色処理が好適に行えるように、試料に含まれるメタノールの濃度を希釈液を用いて薄める処理を実行する。希釈液としてはTris−HCl(トリスバッファー)が用いられる。また、弁別・置換部14は、試料に含まれる分析対象細胞(子宮頸部の上皮細胞)と、それ以外の細胞(赤血球、白血球、細菌など)および夾雑物とを弁別する。これにより、癌細胞検出のために必要な細胞数を含むように分析対象細胞が濃縮された濃縮液が得られる。弁別・置換部14の詳細な構成については、追って説明する。
【0058】
次に、反応部18の保持部18bにセットされた測定試料容器5が、容器移送部15のはさみ状の把持部15aにより把持され、試料受渡部11bに位置付けられる。続いて、弁別・置換部14の収容部210に収容される濃縮液が、検体ピペット部11により吸引され、試料受渡部11bに位置付けられた測定試料容器5に吐出される。容器移送部15は、この測定試料容器5を第2分散部16に移送する。
【0059】
第2分散部16は、弁別・置換部14において濃縮された試料に超音波振動を付与する。これにより、第1分散処理の後に残存する凝集細胞が単一細胞に分散される。第2分散部16による処理(第2分散処理)が完了した測定試料容器5は、容器移送部15により液体除去部17にセットされる。液体除去部17は、測定試料容器5の外表面に付着した液分を除去(水切り)する。液体除去部17による処理が完了した測定試料容器5は、容器移送部15により反応部18の保持部18bにセットされる。
【0060】
反応部18は、保持部18bにセットされた測定試料容器5を所定温度(約37度)に加温して、測定試料容器5内の試料と、第1試薬添加部19および第2試薬添加部20により添加される試薬との反応を促進させる。また、反応部18は、回転可能に構成された円形の回転テーブル18aを備えており、回転テーブル18aの外周部に、測定試料容器5がセット可能となるよう複数の保持部18bが設けられている。
【0061】
第1試薬添加部19と第2試薬添加部20は、それぞれ、回転テーブル18aにセットされた測定試料容器5の上方の位置P1、P2まで移動可能な供給部19a、20aを有する。第1試薬添加部19と第2試薬添加部20は、それぞれ、回転テーブル18aにより位置P1、P2に測定試料容器5が搬送されたときに、測定試料容器5内に供給部19a、20aから所定量の試薬を添加する。
【0062】
第1試薬添加部19により添加される試薬は、細胞にRNA除去処理を行うためのRNaseであり、第2試薬添加部20により添加される試薬は、細胞にDNA染色処理を行うための染色液である。RNA除去処理により、細胞中のRNAが分解され、細胞核のDNAのみを測定することが可能となる。DNA染色処理は、色素を含む蛍光染色液であるヨウ化プロピジウム(PI)により行われる。DNA染色処理により、細胞内の核に選択的に染色が施される。これにより、核からの蛍光が検出可能となる。
【0063】
試料吸引部21は、回転テーブル18aにセットされた測定試料容器5の上方の位置P3まで移動可能なピペット21aを有し、回転テーブル18aにより位置P3に測定試料容器5が搬送されたときに、測定試料容器5内の測定試料を吸引する。また、試料吸引部21は、図示しない流路を介して、主検出部22のフローセルに接続されており、ピペット21aにより吸引された測定試料を主検出部22のフローセルに供給する。
【0064】
主検出部22は、測定試料からの光(前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光)を検出するためのフローサイトメータを備えており、各光に基づく信号を後段の回路に出力する。容器洗浄部23は、回転テーブル18aにセットされた測定試料容器5内に洗浄液を吐出することにより、試料吸引部21により測定試料が主検出部22に供給された後の測定試料容器5の内部を洗浄する。
【0065】
図3は、弁別・置換部14の構成を示す斜視図である。図3において、Z軸方向は鉛直方向であり、Z軸正方向とZ軸負方向は、それぞれ、上方向と下方向である。
【0066】
ベース100は、XY平面に平行な板状部材である。ベース100上には、収容体200と、支持部材110、130、170と、レール150が設置されている。なお、ベース100にはこの他種々の機構等が設置されているが、図3では、これら機構等の図示が、便宜上省略されている。
【0067】
支持部材110は、XZ平面に平行な板状部材であり、支持部材110には、Y軸方向に貫通する孔111(図10参照)が形成されている。収容体200と支持部材110の上面には、上板120が設置されている。上板120は、測定装置2のカバー2b(図1参照)が上方に開けられたときに、ユーザによって上板120へのアクセスが可能となるよう測定装置2内に位置付けられている。
【0068】
上板120には、上下方向に貫通する孔120a、120bが形成されている。検体ピペット部11のピペット11aは、孔120aを介して、後述する収容体200の収容部210に対して試料の吸引と吐出を行う。ユーザは、測定装置2に設けられたカバー2bを開けて、破線矢印(鉛直方向)に沿って、孔120bを介して、後述する収容体200の収容部220に対してフィルタ部材Fの設置と取り出しを行う。
【0069】
また、上板120は透光性を有する部材であり、上板120には、発光部と受光部からなるセンサ121、122が設置されている。フィルタ部材Fが正しく設置されている場合、センサ121の発光部から発光された光は、フィルタ部材Fによって遮蔽され、センサ122の発光部から発光された光は、フィルタ部材Fの切欠F6(図6(a)、(b)参照)を通過する。フィルタ部材Fの面F1、F2(図6(a)、(b)参照)が逆向きの状態でフィルタ部材Fが設置されると、センサ121、122の発光部から発光された光は、フィルタ部材Fによって遮蔽される。これにより、フィルタ部材Fが正しくセットされたか否かを検知することができる。
【0070】
支持部材130は、モータ141を支持している。レール150には、支持部材151がY軸方向に摺動可能となるよう設置されている。支持部材151には、鍔部152とピストン160が設置されており、ピストン160には、チューブT1〜T4が接続されている。支持部材170には、発光部と受光部からなるセンサ171、172が設置されている。
【0071】
図4(a)は、モータ141の側面図である。モータ141の回転軸はY軸に平行であり、後述する中心軸Aと一致している。また、モータ141のY軸負方向側の先端には、磁石142が設置されている。モータ141が駆動され、磁石142がXZ平面内で回転することにより、収容体200の壁を介して後述するスターラーRが回転される。
【0072】
図4(b)は、ピストン160を駆動させるための機構を上から見た場合の平面図である。図4(b)では、ピストン160の図示は、便宜上省略されている。支持部材151は、ベルト181に固定されている。ベルト181は、プーリ182、183によって支持されている。プーリ182は、ベース100の下面側に設置されたステッピングモータの回転軸に接続されている。このステッピングモータが駆動されると、支持部材151がレール150上をY軸方向に摺動され、ピストン160がY軸方向に駆動される。また、センサ171、172は、支持部材151に設置された鍔部152の遮光部152aを検出することができる位置に設置されている。センサ171、172の検出信号により、ピストン160が最も左側に位置付けられたことと、最も右側に位置付けられたことが検出される。
【0073】
図5(a)は、収容体200の構成を示す斜視図である。図5(b)は、図5(a)において、壁部222を含む平面で収容体200を切断したときの斜視図である。図5(c)は、図5(b)に示す収容体200をY軸正方向に見た時の側面図である。
【0074】
図5(a)を参照して、収容体200には、収容部210、220が形成されている。収容部210の上部に位置する挿入口211は、上板120の孔120aと繋がっており、収容部220の上部に位置する挿入口221は、上板120の孔120bと繋がっている。収容部220は、XZ平面に平行な壁部222を有しており、壁部222には、後述するスターラーRが収容される凹部230が形成されている。収容部220の底面223は曲面を有しており、底面223の最も低い位置には孔H21が形成されている。収容部220のY軸負方向側は開放されている。
【0075】
図5(b)、(c)を参照して、凹部230は、凹部230をY軸負方向側に開放する開口231と、Y軸方向に見て円形の内側面232と、内側面232の下方に形成された貯留部233と、XZ平面に平行な壁部234を有する。凹部230は、平面視において、すなわち、XY平面内の方向(水平方向)において、収容部210と離れている。図5(b)に点線で示す中心軸Aは、内側面232をY軸方向に見た時の円形状の中心を通り、且つ、Y軸方向に平行な軸である。貯留部233は、内側面232に、中心軸Aから離れる方向に凹むように形成されている。貯留部233の最も低い位置には、孔H22が形成されている。壁部234には、中心軸Aが壁部234と交わる位置に、孔H23が形成されている。
【0076】
収容部210は、深さ方向(下方向)に徐々に内部が狭くなる形状を有している。収容部210の内側面の上部には、孔H11〜H13が形成されており、収容部210の最深部には、孔H14、H15が形成されている。孔H14は、貯留部233の孔H22に対して、流路241を介して繋がっており、孔H15は、収容体200の外面に形成された孔H16に対して、流路242を介して繋がっている。孔H14は孔H22よりも低くなるよう、収容部210と、凹部230と、流路241の配置が調整されている。なお、孔H16は、バルブV25(図12参照)に接続されており、流路242の径は十分に小さい。このため、収容部210に収容された試料は、孔H15よりも下方に流れることはない。
【0077】
また、収容部210には、ピン212〜214が設置されている。ピン212〜214は、抵抗式の液面センサ部293(図13参照)と接続されている。液面センサ部293は、ピン212、214の通電状態に基づいて、収容部210に収容されている液面がピン212の高さ位置を上回っているか否かを検知し、ピン213、214の通電状態に基づいて、収容部210に収容されている液面がピン213の上部の高さ位置を上回っているか否かを検知する。
【0078】
図6(a)、(b)は、フィルタ部材Fの構成を示す斜視図である。図6(a)、(b)には、フィルタ部材Fが収容部220に対して適正にセットされている状態の座標軸が併せて示されている。
【0079】
フィルタ部材Fは、XZ平面に平行な面F1、F2と、フィルタ部材FをY軸方向に貫通する孔F3と、フィルタF4と、面F1に設置された薄膜状のゴムF51と、面F2に設置された薄膜状のゴムF52を備えている。面F1、F2は、それぞれ、Y軸正方向側とY軸負方向側に位置している。孔F3は、筒状の内側面F31を備えている。
【0080】
フィルタF4は、孔F3の内側面F31に対して濾過面がXZ平面に平行となるよう設置されており、分析対象細胞(子宮頸部の上皮細胞)よりも小径の細胞等(赤血球、白血球、細菌、夾雑物)を通過させ、分析対象細胞を通過させないような径の孔を有する。
【0081】
子宮頸部の上皮細胞の大きさは、概ね20〜80μm(平均は60μm程度)である。また、かかる測定対象細胞より小さい細胞である赤血球の大きさは、概ね7〜10μmであり、同じく測定対象細胞より小さい細胞である白血球の大きさは、概ね8〜15μmである。更に、細菌等の夾雑物の大きさは、概ね1〜数μm程度である。
【0082】
よって、本実施の形態におけるフィルタF4は金属製であり、上皮細胞が前記フィルタF4の孔を通過しないように、8μm以上20μm未満の径の孔を有する。孔の径が8μm未満であれば、細胞や夾雑物が孔に詰まる現象が多く見られ、孔の径が20μm以上であれば、上皮細胞がフィルタF4の孔を通過してしまうおそれがある。好ましくは、フィルタF4の孔の径は、10μm前後である。
【0083】
このようなフィルタは、公知の方法によって作製することができ、たとえば、エレクトロ・ファイン・フォーミング技術や、CVD(ChemicalVapor Deposition:化学気相成長法)で作製され得る。
【0084】
また、Y軸方向において、フィルタF4と面F1との距離は、フィルタF4と面F2との距離よりも小さい。ゴムF51は、孔F3の面F1側の開口の周囲に設置されており、孔F3の面F1側の開口とゴムF51との間には、面F1の一部である面F11が露出している。ゴムF52は、孔F3の面F2側の開口の周囲に設置されている。
【0085】
ここで、図6(a)、(b)に示すフィルタ部材Fは、より詳細には、図7(a)〜図8(e)に示すように構成される。以下、図7(a)〜図8(e)を参照して、フィルタ部材Fの詳細な構成について説明する。
【0086】
図7(a)は、フィルタ部材Fの分解図であり、図7(b)は、保持部材F100のZ軸負方向側の端部の構成を示す図であり、図7(c)は、保持部材F200の構成を示す図である。図8(a)、(b)は、保持部材F100、F200によってフィルタF4が挟持された状態を示す図であり、図8(c)、(d)は、フィルタ部材Fの完成図である。図8(e)は、フィルタ部材Fを、X軸とZ軸に対して45度傾いた面で切断した場合の断面図である。
【0087】
図7(a)に示すように、フィルタ部材Fは、板状の保持部材F100と、円形の保持部材F200と、円形形状を有するフィルタF4と、リング状のゴムF51、52からなる。図7(a)、(b)に示すように、保持部材F100の下方(Z軸負方向側)のY軸負方向側には、周囲の面よりも一段低い面F111を有する凹部F110が形成されている。面F111の中心には、保持部材F100をY軸方向に貫通する孔F120が形成されている。孔F120は、筒状の内側面F121を備えている。面F111の外周には、保持部材F100をY軸方向に貫通する4つの孔F130が形成されている。
【0088】
図7(b)と図8(e)に示すように、孔F130の外周側の面は、凹部F110の内壁よりも外側方向に凹ませられた形状となっている。これにより、凹部F110の内壁に段差が形成され、この段差が、後述する抜け止めF231と係合する係合部F131となる。なお、孔F130は、凹部F110から保持部材F100の裏面まで貫通している。これは、保持部材F100の成型の際に、係合部F131を形成するための金型部分をY軸正方向に引き抜くことによるものである。すなわち、このように孔F130を保持部材F100の裏面まで貫通させることにより、係合部F131を容易に形成することができる。
【0089】
図7(a)、(b)に示すように、孔F120のY軸負方向側の外周には、2色成型により、弾性体F140が成型されている。弾性体F140の上面は、面F111よりも一段低くなっている。また、弾性体F140の外周の径は、フィルタF4の外周の径と略同じである。これにより、フィルタ部材Fの組み立て時に、フィルタF4を弾性体F140上に載置するだけで、フィルタF4の位置が決められる。
【0090】
図8(a)に示すように、孔F120のY軸正方向側の外周には、円形形状の面F151が形成されており、面F151の外周には、面F151よりも一段低い面F152が形成されている。面F151の外周の径は、ゴムF51の孔F51aの径と略同じである。これにより、フィルタ部材Fの組み立て時に、ゴムF51を面F152上に載置するだけで、ゴムF51の位置が決められる。
【0091】
図7(a)、図8(a)に示すように、保持部材F100には、周囲の面よりも一段低い面F101が形成されている。これにより、保持部材F100は、フィルタF4が装着される位置からZ軸正方向(長手方向)に離れた上端部F102付近の厚みが、これより長手方向内側(Z軸負方向側)にある面F101部分の厚みに比べて大きくなっている。また、フィルタ部材Fが収容部220に装着された場合、図3に示すように、フィルタ部材Fの上部と共に上端部F102が、上板120の孔120bの上部に突出するよう構成される。なお、保持部材F100のX軸正方向側の端部には、上述したように、保持部材F100をY軸方向に貫通する切欠F6が形成されている。
【0092】
図7(a)、(c)に示すように、保持部材F200のY軸負方向側には、XZ平面に平行な面F210が形成されており、面F210の中心には、保持部材F200をY軸方向に貫通する円形の孔F220が形成されている。孔F220は、筒状の内側面F221を備えている。孔F220の径は、ゴムF52の孔F52aの径と略同じである。保持部材F200のY軸正方向側には、4つの突片F230が形成されている。各突片F230の先端には、外周側に突出した抜け止めF231が形成されている。
【0093】
孔F220のY軸正方向側の外周には、2色成型により、弾性体F240が成型されている。弾性体F240の上面は、弾性体F240の周囲の面よりも一段高くなっている。また、弾性体F240の外周の径は、フィルタF4の外周の径と略同じである。
【0094】
図7(a)に示すように、フィルタF4は、中心部F41と肉厚部F42からなる。中心部F41は、上述したように、分析対象細胞(子宮頸部の上皮細胞)よりも小径の細胞等(赤血球、白血球、細菌、夾雑物)を通過させ、分析対象細胞を通過させないような径の孔を有する。中心部F41の厚みは、約10μmである。肉厚部F42は、中心部F41の外周に電鋳により形成される。肉厚部F42の厚みは、中心部F41よりも大きくなるよう構成されており、約0.1mmである。
【0095】
ゴムF51、F52は、それぞれ、中心に孔F51a、F52aが形成されている。ゴムF51、F52の外周の径は、それぞれ、保持部材F100の面F152の外周の径と、保持部材F200の外周の径と略同じである。
【0096】
フィルタ部材Fを組み立てる場合、まず、保持部材F100の弾性体F140にフィルタF4を載置する。このとき、フィルタF4の肉厚部F42が弾性体F140に接触する。続いて、保持部材F200の突片F230が、保持部材F100の孔F130に対向するようにして、保持部材F200を保持部材F100の凹部F110に嵌合させる。このとき、突片F230が凹部F110の内壁に当接して内側方向に弾性変形する。その後、突片F230の抜け止めF231が係合部F131の位置に到達すると、図8(e)に示すように、突片F230が外側方向に弾性復帰して、抜け止めF231が係合部F131に係合する。これにより、フィルタF4の肉厚部F42が、弾性体F140、F240によって挟まれる。こうして、図8(a)、(b)に示すように、フィルタF4が、保持部材F100、F200によって挟持される。
【0097】
次に、保持部材F100の面F152に、両面テープによりゴムF51を貼り付け、保持部材F200の面F210に、両面テープによりゴムF52を貼り付ける。これにより、図8(c)、(d)に示すように、フィルタ部材Fが完成する。
【0098】
なお、図6(a)、(b)において、面F11は、保持部材F200の面F151に相当する。孔F3は、保持部材F100の孔F120と、保持部材F200の孔F220によって構成される。内側面F31は、保持部材F100の内側面F121と、保持部材F200の内側面F221によって構成される。以下の説明では、便宜上、図6(a)、(b)に示すフィルタ部材Fを用いて行う。
【0099】
図6(c)、(d)は、スターラーRの構成を示す斜視図である。図6(c)、(d)は、スターラーRが凹部230に収容されている状態の座標軸が併せて示されている。
【0100】
スターラーRは、筒状の形状を有する胴部R1と、XZ平面に平行な面R2、R3と、磁石R4を備えている。面R2、R3は、それぞれ、Y軸負方向側とY軸正方向側に位置している。面R2には、面R2に対してY軸負方向側に突出する筒状の凸部R21が形成されており、凸部R21の径は、面R2の外周の径よりも小さい。また、凸部R21には、鍔部R21aが形成されている。面R3には、面R3の中心において交差する溝R31が形成されている。磁石R4は、スターラーRの中心を通り、XZ平面内においてスターラーRを貫通するように設置されている。これにより、スターラーRは、図4(a)に示す磁石142がモータ141によって回転すると、Y軸を中心として回転する。
【0101】
図9(a)、(b)は、ピストン160の構成を示す側面図と斜視図である。
【0102】
ピストン160は、Y軸正方向側に円柱形状の先端部161を有している。先端部161のY軸正方向側には、凹部162と、凹部162をY軸正方向側に開放する開口163と、面164が形成されている。凹部162のY軸負方向側の面には、孔H31〜H34が形成されており、孔H31〜H34は、それぞれ、ピストン160の内部に設けられた流路を介してチューブT1〜T4と接続されている。孔H31には、L字型のパイプ165が接続されており、パイプ165の先端は、凹部162内の上部(Z軸正方向側)に位置付けられている。面164は、XZ平面に平行であり、開口163の周囲に形成されている。
【0103】
図10は、ピストン160と、支持部材110と、フィルタ部材Fと、スターラーRと、収容体200を、中心軸Aを通るYZ平面によって切断した場合の断面図である。図10では、便宜上、各部がY軸方向に間隔を開けた状態で図示されている。また、d11〜d16は、Z軸方向の長さを示しており、この順に値が大きい。d21〜d26は、Y軸方向の長さを示しており、この順に値が大きい。
【0104】
ピストン160において、凹部162の直径はd12であり、面164の外周の直径はd15である。支持部材110において、孔111の直径はd16である。フィルタ部材Fにおいて、孔F3の直径はd12であり、面F11の外周の直径はd14であり、面F1とフィルタF4との間隔はd22であり、面F2とフィルタF4との間隔はd23であり、面F1、F2の間隔はd24である。スターラーRにおいて、胴部R1の直径はd13であり、凸部R21の直径はd11であり、胴部R1の幅はd25であり、鍔部R21aを含む凸部R21の幅はd21である。収容体200において、内側面232の直径はd14であり、凹部230の幅はd26である。
【0105】
なお、図7(a)〜図8(e)に示すフィルタ部材Fの場合、孔F120、F220の直径はd12であり、面F151の外周の直径(ゴムF51の孔F51aの直径)はd14であり、面F151とフィルタF4との間隔はd22であり、ゴムF52の上面とフィルタF4との間隔はd23であり、ゴムF51の上面とゴムF52の上面との間隔はd24である。
【0106】
なお、Y軸方向から見たときの、凹部162と、面164の外周と、孔111と、孔F3と、面F11の外周と、胴部R1と、凸部R21と、凹部230は、円形状であり、これら円形状の中心は中心軸Aと一致している。
【0107】
図11(a)〜(d)は、フィルタ部材Fが収容部220に設置される手順を示す図である。図11(a)〜(d)は、図10と同様の断面図である。
【0108】
図11(a)は、フィルタ部材Fが収容部220に設置されていない状態を示す図である。このとき、ピストン160は最も左側に位置付けられており、スターラーRの面R3は、磁石142(図4(a)参照)により右方向に引かれて壁部234に接地している。図11(a)の状態から、上板120の孔120bと収容部220の挿入口221を介して、フィルタ部材Fが収容部220内に挿入されると、図11(b)に示す状態となる。このとき、フィルタ部材Fは収容部220の底面223によって上方向に支持されている。
【0109】
図11(b)に示す状態から、ピストン160が最も右側に位置付けられると、図11(c)に示すように、ピストン160の面164がフィルタ部材FのゴムF52に押し付けられ、フィルタ部材FのゴムF51が収容部220の壁部222に押し付けられる。これにより、フィルタF4を介して凹部230と凹部162が結合されることになる。このとき、凹部230の開口231がフィルタ部材Fによって塞がれることにより、外部に対して閉じた空間S1が形成される。また、凹部162の開口163がフィルタ部材Fによって塞がれることにより、外部に対して閉じた空間S2が形成される。
【0110】
空間S1は、具体的には、フィルタF4の凹部230側の側面と、内側面F31と、面F11と、ゴムF51と、内側面232と、貯留部233と、壁部234によって形成される。このとき、空間S1は、孔H22、H23を介して構造的には外部へと繋がっている。しかしながら、弁別・置換の処理時に、孔H22の先の流路241の下端に位置する収容部210の最深部には試料が貯留しているため、孔H22は実質的に閉じられた状態となる。また、孔H23の先の流路には流路を閉じることが可能なバルブV24(図12参照)が設置されており、孔H23には外部から希釈液が空間S1内へと流れるのみとなっているため、孔H23は実質的に閉じられた状態となる。これにより、空間S1は、外部に対して閉じた空間となる。
【0111】
また、フィルタF4は、上述したように、分析対象細胞よりも小径の細胞等を通過させ、分析対象細胞を通過させないような径の孔を有する。これにより、空間S1内の分析対象細胞よりも小径の細胞等は、フィルタF4を通過するものの、空間S1内の分析対象細胞は、空間S1内に留まることになる。
【0112】
空間S2は、具体的には、フィルタF4の凹部230と反対側の側面と、内側面F31と、ゴムF52と、凹部162によって形成される。このとき、空間S2は、孔H31〜H34を介して構造的には外部へと繋がっている。しかしながら、孔H31〜H34の先の流路には流路を閉じることが可能なバルブが設置されているため、孔H31〜H34は実質的に閉じられた状態となる。これにより、空間S2は、外部に対して閉じた空間となる。
【0113】
また、図11(c)に示す状態で、磁石142(図4(a)参照)が回転されることにより、スターラーRが中心軸Aを中心として、フィルタF4の凹部230側の側面(濾過面)に沿って回転させられる。このとき、図6(d)に示すように、スターラーRの平面R3には溝R31が形成されている。これにより、孔H23から空間S1内へ、希釈液が円滑に流入するようになる。
【0114】
また、スターラーRは、磁石142によって回転させられているときに、図11(d)に示すように、壁部234から離れてフィルタ部材Fの方へ移動することがある。しかしながら、図10に示したように、鍔部R21aを含む凸部R21の幅d21は、面F11とフィルタF4との間隔d22よりも小さく、凸部R21の直径d11は、孔F3の直径d14よりも小さく、面R2の外周(胴部R1の直径)d13は、孔F3の直径d14よりも大きい。これにより、図11(d)に示すように、面R2が面F11に当接することにより、鍔部R21aを含む凸部R21がフィルタF4に当接して、フィルタF4が傷つけられることが抑制される。
【0115】
図12は、測定装置2の流体処理部FLを示す図である。
【0116】
バルブV11〜V15、V21〜V26は、流路を開放する状態と流路を閉じる状態とに切り替え可能に構成されている。バルブV16、V17は、右側の1つの流路に対して、左側に接続された流路の何れか一方を接続可能に構成されている。孔H31〜H34は、それぞれ、バルブV15と、バルブV17と、バルブV11と、バルブV12、V14に接続されている。孔H11〜H13は、それぞれ、バルブV21〜V23に接続されている。孔H23、H16、H21は、それぞれ、バルブV24、V25、V26に接続されている。バルブV12、V13、V23、V25、V26には、陰圧源P11が接続されており、バルブV17には、陽圧源P12が接続されている。バルブ13〜V15には、圧力を一定にするためのレギュレータP13が接続されている。流体処理部FLの駆動と、流体処理部FL内の流体の動きについては、追って図15を参照して説明する。
【0117】
図13は、測定装置2の構成を示す図である。
【0118】
測定装置2は、図2に示した主検出部22と、副検出部13と、上述したように試料に対する調製を自動的に行うための各部を含む調製デバイス部29と、を備えている。また、測定装置2は、信号処理部24と、測定制御部25と、I/Oインターフェース26と、信号処理部27と、調製制御部28と、を備えている。
【0119】
主検出部22は、測定試料から、前方散乱光信号(FSC)と、側方散乱光信号(SSC)と、側方蛍光信号(SFL)を出力する。信号処理部24は、主検出部22から出力された各信号FSC、SSC、SFLを処理し、測定制御部25に出力する。測定制御部25は、マイクロプロセッサ251と記憶部252を含んでいる。マイクロプロセッサ251は、I/Oインターフェース26を介して、データ処理装置3と調製制御部28に接続されている。各信号FSC、SSC、SFLは、マイクロプロセッサ251によって、データ処理装置3に送信される。
【0120】
なお、データ処理装置3は、各信号FSC、SSC、SFLに基づいて、前方散乱光強度、側方蛍光強度等の特徴パラメータを取得し、これらの特徴パラメータに基づいて、細胞や核を分析するための頻度分布データを作成する。そして、データ処理装置3は、この頻度分布データに基づいて、測定試料中の粒子の弁別処理を行い、分析対象細胞が異常であるか否か、具体的には癌化した細胞(異型細胞)であるか否かを判定する。
【0121】
副検出部13は、前方散乱光信号(FSC)を取得するよう構成されており、信号FSCに基づいて表層細胞および中層細胞に該当する大きさの細胞の数を計数するための信号を出力する。信号処理部27は、副検出部13から出力された信号FSCを処理し、調製制御部28に出力する。調製制御部28は、マイクロプロセッサ281と記憶部282を含んでいる。マイクロプロセッサ281は、調製デバイス部29に接続されており、I/Oインターフェース26を介して、データ処理装置3と測定制御部25に接続されている。
【0122】
調製デバイス部29は、センサ部291と、モータ部292と、液面センサ部293と、空圧源294と、バルブ駆動部295と、図2に示した検体ピペット部11と試料吸引部21を含んでいる。機構部296は、図2に示した他の機構を含んでいる。調製デバイス部29の各部は、調製制御部28により制御され、調製デバイス部29の各部から出力された信号は、調製制御部28に出力される。
【0123】
センサ部291は、図3に示すセンサ121、122、171、172を含んでいる。モータ部292は、図4(a)に示すモータ141と、図4(b)に示すプーリ182に接続されたステッピングモータを含んでいる。液面センサ部293は、図5(c)に示すピン212〜214に接続されている。空圧源294は、陰圧源P11と、陽圧源P12と、流体処理部FL内の液体(希釈液、洗浄液等)を流すため陽圧源を含んでいる。バルブ駆動部295は、図12に示す流体処理部FL内の各バルブとレギュレータP13を電磁駆動するための機構を含んでいる。
【0124】
図14は、癌化情報提供装置1の分析動作を示すフローチャートである。
【0125】
癌化情報提供装置1による分析に際して、メタノールを主成分とする保存液と被検者から採取した細胞との混合液(試料)を収容する試料容器4が、ユーザにより検体セット部2a(図2参照)にセットされ、癌化情報提供装置1による分析が開始される。
【0126】
測定が開始されると、測定装置2の調製制御部28は、第1分散部12により試料中の凝集細胞に対して第1分散処理を行う(S11)。第1分散処理が終了すると、調製制御部28は、副検出部13により分析対象細胞の数の検出(プレ測定)を行い(S12)、プレ測定により得られた分析対象細胞の数と、副検出部13に供給された試料の体積とから、この試料の濃度を算出する。そして、調製制御部28は、算出された濃度に基づいて、本測定を行うために必要な試料の吸引量を決定する(S13)。続いて、調製制御部28は、弁別・置換部14により弁別・置換処理を実行する(S14)。弁別・置換処理については、追って図15を参照して説明する。
【0127】
次に、調製制御部28は、第2分散部16により試料中の凝集細胞に対して第2分散処理を行う(S15)。続いて、調製制御部28は、第1試薬添加部19により試料に試薬(RNase)を添加し、この試料を含む測定試料容器5を反応部18により加温して、測定試料容器5内の分析対象細胞のRNA除去処理を行う(S16)。続いて、調製制御部28は、第2試薬添加部20により試料に試薬(染色液)を添加し、この試料を含む測定試料容器5を反応部18により加温して、測定試料容器5内の分析対象細胞のDNA染色処理を行う(S17)。
【0128】
次に、調製制御部28は、試料吸引部21によりDNA染色処理済みの測定試料を吸引し、主検出部22に送り、測定制御部25は、主検出部22により測定試料中の細胞に対する本測定を行う(S18)。測定制御部25は、本測定により得られた測定データをデータ処理装置3に送信する(S19)。データ処理装置3は、測定装置2から測定データを受信すると、受信した測定データに基づいて分析処理を行い(S20)、分析結果を表示部32に表示する。
【0129】
図15は、弁別・置換処理を示すフローチャートであり、図16(a)〜(i)は、収容部210と空間S1、S2内における液体の状態を模式的に示す図である。
【0130】
弁別・置換処理が開始されるとき、ピストン160とフィルタ部材Fは、図11(c)に示す状態とされ、収容部210と空間S1、S2内が洗浄される。図12を参照して、洗浄動作では、孔H23、H33を介してそれぞれ空間S1、S2内に希釈液が供給され、孔H11、H12を介してそれぞれ洗浄液と希釈液が収容部210内に供給される。また、空間S1内の廃液は孔H22、H14を介して収容部210に送られ、収容部210内の廃液は、孔H13、H15、H16を介して廃棄され、空間S2内の廃液は、孔H31、H34を介して廃棄される。これにより、液体の状態は、図16(a)に示す状態となる。
【0131】
調製制御部28は、バルブV11〜V15、V21〜V26を閉じ、バルブV16の大気開放側の流路を閉じ、バルブV17の陽圧源P12側の流路を閉じておき、スターラーRの回転を開始する(S101)。続いて、調製制御部28は、空間S1内に希釈液を充填する(S102)。
【0132】
S101では、具体的に、まずバルブV24が開放され、希釈液が孔H23を介して空間S1内に供給される。このとき、希釈液が流路241を通って収容部210に移動する。そして、液面がピン212の高さに到達してから所定時間が経過すると、バルブV24が閉じられて希釈液の供給が停止される。これにより、液面は図16(b)に示す状態となる。そして、バルブV13、V15が開放され、陰圧源P11により孔H31を介して空間S2内に陰圧が印加されることにより、空間S1と収容部210内の希釈液が、フィルタF4を通して空間S2側に吸引される。空間S2が希釈液で満たされると、バルブV13、V15が閉じられる。これにより、図16(c)に示すように、空間S2内に希釈液が充填される。
【0133】
次に、調製制御部28は、検体ピペット部11により、図14のS13で決定された吸引量だけ第1分散部12の試料収容部12aから試料を吸引する(S103)。続いて、調製制御部28は、ピペット11aを上板120の上方から、孔120bと挿入口211を介して収容部210内に挿入し、S103で吸引した試料を収容部210に吐出する(S104)。これにより、液面は図16(d)に示す状態となる。
【0134】
次に、調製制御部28は、空間S2内に陰圧を印加して、空間S1と収容部210内にある液体(希釈液と試料)の吸引を開始する(S105)。具体的には、バルブV13、V15が開放され、陰圧源P11により空間S2内に陰圧が印加されることにより、空間S1と収容部210内にある液体が、フィルタF4を通して空間S2側に吸引される。続いて、調製制御部28は、図16(e)に示すように、収容部210内の液面がピン213の高さに到達すると(S106:YES)、所定時間経過後に、バルブV13、V15を閉じて、陰圧による吸引を停止する(S107)。これにより、液面は図16(f)に示す状態となる。
【0135】
次に、調製制御部28は、空間S2内に逆圧(陽圧)を印加して、フィルタF4の孔に詰まった細胞と、空間S1側のフィルタF4の面に付着している細胞とを、空間S1内に押し出す(S108)。具体的には、バルブV17の陽圧源P12側の流路が開放され、陽圧源P12により空間S2内に陽圧が印加されることにより、上記細胞が空間S1内に押し出される。逆圧による押出しが終了すると、バルブV17の陽圧源P12側の流路が閉じられる。
【0136】
次に、調製制御部28は、S105〜S108の処理が1回目または2回目であるとき(S109:NO)、収容部210に希釈液を供給する(S110)。具体的には、バルブV24が開放され、希釈液が孔H23を介して空間S1内に供給される。このとき、希釈液が流路241を通って収容部210に移動する。そして、液面がピン212の高さに到達してから所定時間が経過すると、バルブV24が閉じられて希釈液の供給が停止される。これにより、液面は図16(d)に示す状態となる。そして、処理がS105に戻され、S105〜S108の処理が計3回繰り返される。
【0137】
こうして、試料に含まれていたメタノールを主成分とする保存液が希釈液に置換され、試料に含まれていた分析対象細胞以外の細胞および夾雑物が弁別される。また、空間S1内には、分析対象細胞が濃縮された濃縮液が生成される。
【0138】
次に、S105〜S108の処理が3回行われると(S109:YES)、調製制御部28は、空間S2内を大気開放する(S111)。具体的には、液面が図16(f)に示す状態から、バルブV17の大気開放側の流路ならびにバルブV16が開放され、空間S2内が大気圧とされることにより、空間S1内の液体が収容部210側に移動する。続いて、調製制御部28は、収容部210内の液面がピン213の高さに到達すると(S112:YES)、バルブV17の大気開放側の流路ならびにバルブV16を閉じて、空間S2内の大気開放を停止し(S113)、スターラーRの回転を停止する(S114)。
【0139】
これにより、空間S1内で生成された分析対象細胞の濃縮液が、空間S1から収容部210へと移動させられ、液面は図16(g)に示す状態となる。こうして、収容部210の下方には、分析対象細胞の濃縮液が貯留される。このとき、濃縮液の濃度は、収容部210の下方で最も高くなっており、収容部210の下方から空間S1に向かうに従って低くなっている。
【0140】
次に、調製制御部28は、図16(h)に示すように、ピペット11aを上板120の上方から、孔120bと挿入口211を介して、収容部210の最深部に挿入する。そして、調製制御部28は、ピペット11aを介して収容部210の最深部に貯留された濃縮液を吸引する(S115)。これにより、液面は図16(i)に示す状態となる。こうして、弁別・置換処理が終了し、S115においてピペット11aにより吸引された濃縮液に基づいて、図14のS15以降の処理が行われる。
【0141】
なお、図16(h)に示す状態では、空間S2が大気開放されていないため、ピペット11aによる吸引が終了すると、図16(i)に示すように、空間S1と流路241には濃縮液が僅かに残ることがある。
【0142】
以上、本実施の形態によれば、陰圧を用いて、空間S1内の液体をフィルタF4を介して空間S2に移動させる構成を備えているため、空間S1内に存在する液体を空間S2側に吸い切ることができ、空間S1内に残る分析対象以外の細胞の量を極力減らすことが可能となる。また、この弁別・置換部14では、フィルタF4を移動させることなく、陰圧および陽圧を利用して分析対象細胞の濃縮処理を行えるため、迅速に濃縮処理を行うことができる。これにより、分析対象細胞が濃縮された濃縮液の生成効率を高めることができる。また、濃縮液をより多く回収することができ、より多くの量の濃縮液を分析に供することができる。このため、細胞の分析精度を高めることができる。
【0143】
また、本実施の形態によれば、陰圧による吸引開始(図15のS105)の前に、凹部230により形成される空間S1と、凹部162により形成される空間S2とが、フィルタF4を介して互いに液密的に結合されている。これにより、陰圧を用いて、空間S1内の液体と試料を漏れ無く空間S2へ移動させることができる。
【0144】
また、本実施の形態によれば、空間S1、S2に、孔H23を介して希釈液が満たされた状態で、陰圧による吸引が行われる。これにより、低陰圧で、空間S1内の液体と試料をフィルタF4側に移動させることができ、分析対象細胞がフィルタF4を通過してしまうことを抑制できる。
【0145】
また、本実施の形態によれば、凹部162に形成された孔H32に繋がる流路が、バルブV16、V17によって大気開放されることにより、空間S2内が大気圧とされる。これにより、空間S1内の分析対象細胞を含む液体が、孔H22を介して収容部210に移動するようになる。
【0146】
また、本実施の形態によれば、凹部230内に設けられたスターラーRが、フィルタF4の凹部230側の側面(濾過面)に沿って回転するため、空間S1側のフィルタF4の面に沿って回転する試料の流れを生成することができる。これにより、フィルタF4に付着した分析対象細胞を、フィルタF4から円滑に引き剥がすことができる。
【0147】
また、本実施の形態によれば、凹部230は円形の内側面232を有し、スターラーRは内側面232の中心軸Aの周りに回転し、貯留部233は、内側面232に、中心軸Aから離れる方向に凹むように形成されている。これにより、弁別・置換処理時に、スターラーRの回転によって、空間S1内の試料に含まれる分析対象細胞が、貯留部233に集まる。よって、分析対象細胞が濃縮された濃縮液を、貯留部233に形成された孔H22から効率よく取り出すことができる。
【0148】
また、本実施の形態によれば、図10に示すように、フィルタ部材Fの筒状の内側面F31には、フィルタF4と面F1との間隔がd22となるようフィルタF4が設置されており、内側面F31の直径d12は、スターラーRの鍔部R21aを含む凸部R21の直径d11よりも大きく、スターラーRの面R2の外周の直径d13よりも小さい。これにより、図11(d)に示すように、スターラーRがフィルタ部材F側に移動しても、面R2により、凸部R21がフィルタF4に当接することが規制されるため、フィルタF4が損傷することを防止することができる。また、フィルタF4に対する凸部R21の当接が防止されるため、凸部R21をフィルタF4に接近させるよう凹部230とスターラーRのY軸方向の幅を設定することができる。これにより、フィルタF4に付着した分析対象細胞を効果的に引き剥がすことができる。
【0149】
また、本実施の形態によれば、フィルタF4はフィルタ部材Fに設けられており、フィルタ部材Fは、図3に示す孔120bと、図5(a)に示す収容部220の挿入口221を介して、凹部230と凹部162との間に挿入される。このとき、フィルタF4は、凹部230の開口231に対向する位置(Y軸負方向側)に位置付けられる。これにより、消耗品であるフィルタ部材Fを、孔120bと挿入口221を介して容易に交換することができる。
【0150】
また、本実施の形態によれば、凹部162を形成するピストン160がY軸正方向に移動されることにより、挿入口221から凹部230と凹部162との間に挿入されたフィルタ部材Fが、凹部230に対して圧接される。これにより、凹部230と凹部162とがフィルタ部材Fを介して結合され、図11(c)に示すように、凹部230内に閉じた空間S1を容易に生成することができる。
【0151】
また、本実施の形態によれば、フィルタ部材Fは、フィルタF4の濾過面がXZ平面に平行となるように配置される。このように、フィルタF4の濾過面が鉛直方向に平行となるよう配置されると、フィルタF4の濾過面が水平方向に平行となるよう配置される場合に比べ、弁別・置換部14を水平方向に小型化することができる。このため、測定装置2を水平方向に小型化することができ、測定装置2を含む癌化情報提供装置1の設置面積を小さくすることができる。また、フィルタF4に付着した分析対象細胞が、重力により、フィルタF4から剥離し易くなる。
【0152】
また、本実施の形態によれば、孔H22は、凹部230の下方の位置に形成されている。これにより、フィルタF4から剥離した分析対象細胞が、重力により、孔H22付近に集まり易くなる。このため、孔H22を介して、効率的に、分析対象細胞を回収することができる。
【0153】
また、本実施の形態によれば、メタノールを主成分とする保存液と被検者から採取した細胞との混合液(試料)が収容部210に吐出される。収容部210に吐出された試料は、流路241を通り、孔H22を介して凹部230に流入される。また、バルブV24が開放されることにより、希釈液(置換液)が、孔H23を介して凹部230に流入される。これにより、空間S1において、保存液を置換液に置換することが可能となる。また、バルブV24を閉じることにより、空間S1を外部に対して閉じた空間とすることができる。
【0154】
また、本実施の形態によれば、図7(a)に示すように、フィルタF4を保持部材F100と保持部材F200との間に介在させながら、保持部材F200を保持部材F100に嵌合させて、保持部材F100、F200を一体化することにより、フィルタF4が保持部材F100、F200によって挟持され、フィルタF4がフィルタ部材Fに取り付けられる。このとき、弾性体F140、F240がフィルタF4に密着するため、フィルタF4は液密性良く強固に、保持部材F100、F200に挟持される。このように、本実施の形態に係るフィルタ部材Fによれば、フィルタ部材Fに対するフィルタF4の取り付け強度を高めながら、安価にかつ簡便な作業により、フィルタF4をフィルタ部材Fに取り付けることができる。よって、フィルタ部材Fの製造コストを低く抑えることができる。
【0155】
また、本実施の形態によれば、図8(e)に示すように、突片F230の抜け止めF231が係合部F131に係合される。これにより、保持部材F100に対して保持部材F200が固定されるため、さらに強固に、フィルタF4をフィルタ部材Fに取り付けることができる。
【0156】
また、本実施の形態によれば、図7(a)に示すように、フィルタF4には、弾性体F140、F240との接触面に肉厚部F42が設けられている。これにより、保持部材F100、F200によって挟まれる部分において、フィルタF4の厚みが大きくなっているため、フィルタF4の破損を抑制することができる。
【0157】
また、本実施の形態によれば、図6(a)、(b)および図8(c)、(d)に示すように、切欠F6が形成されることにより、フィルタ部材Fは、X軸方向(幅方向)において非対称な形状となっている。このため、収容部220にフィルタ部材Fを装着した場合に、センサ121、122によりフィルタ部材Fの非対称性が検出される。これにより、フィルタ部材Fが、表裏が正しい状態で適切に装着されたか否かを判断することができる。
【0158】
また、本実施の形態によれば、図7(a)〜図8(e)に示すように、孔F120、F220は円形に構成されている。このため、保持部材F100、F200が一体化されると、孔F120、F220によって、円筒状の内側面F121、F221を有する筒状部が構成される。これにより、スターラーRを回転させると、フィルタF4に付着した細胞を、フィルタF4から容易且つ効率的に剥離することができる。
【0159】
また、本実施の形態によれば、図8(a)、(c)に示すように、保持部材F100の面F152にゴムF51が貼り付けられる。これにより、フィルタF4と、収容部220の壁部222との液密性が向上する。
【0160】
また、本実施の形態によれば、図8(c)に示すように、ゴムF51は、孔F120の境界(面F151の内周)から隔離して貼り付けられる。これにより、フィルタF4と、収容部220の壁部222との液密性を向上させながら、スターラーRの駆動が、ゴムF51によって妨げられることなく、円滑に行われ得る。
【0161】
また、本実施の形態によれば、図8(b)、(d)に示すように、保持部材F200の面F210にゴムF52が貼り付けられる。これにより、フィルタF4と、ピストン160の面164との液密性が向上する。
【0162】
また、本実施の形態によれば、保持部材F100の上部に上端部F102が形成されている。また、フィルタ部材Fが収容部220に装着された場合、フィルタ部材Fの上部と共に上端部F102が、上板120の孔120bの上部に突出するよう構成されている。これにより、フィルタF4を収容部220から取り出すときに上端部F102を把持すると、上端部F102が指に当たって保持部材F100が指に掛かり易くなり、フィルタ部材Fを容易に取り出すことができる。
【0163】
以上、本発明の実施の形態ついて説明したが、本発明は、上記実施の形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0164】
たとえば、上記実施の形態では、子宮頸部の上皮細胞が分析対象とされたが、口腔細胞、膀胱、咽頭などの他の上皮細胞、さらには臓器の上皮細胞が分析対象とされ、これら細胞の癌化の判定が行われても良い。
【0165】
また、上記実施の形態では、図11(d)に示すように、スターラーRの面R2により、凸部R21がフィルタF4に当接することが規制されたが、これに限らず、胴部R1の直径が、凸部R21の直径d11と同じとなるよう構成され、凸部R21と胴部R1との間に、中心軸Aに対して放射状に突出した複数の突起が設けられても良い。この場合、突起により凸部R21がフィルタF4に当接することが規制される。
【0166】
また、上記実施の形態では、凹部230の内側面232の下方に貯留部233が形成されたが、これに替えて、内側面232に貯留部233は形成されず、内側面232の下方に孔H22が設けられるようにしても良い。この場合も、スターラーRの回転によって、空間S1内の試料に含まれる分析対象細胞を、重力に従って孔H22近傍に集めることができる。しかしながら、上記実施の形態のように、貯留部233を設ける場合の方が、分析対象細胞をより効果的に集めることができる。
【0167】
また、上記実施の形態では、測定装置2が分析対象細胞の測定を行い、データ処理装置3が測定データに基づいて分析を行ったが、これに限らず、これら2つの装置が一体化され、分析対象細胞の測定と分析が併せて行われるようにしても良い。
【0168】
また、上記実施の形態では、図13に示すように、調製制御部28と、副検出部13と、信号処理部27と、調製デバイス部29により測定試料の調製が行われ、測定制御部25と、主検出部22と、信号処理部24により調製によって得られた測定試料の測定が行われた。しかしながら、これに限らず、上記測定試料の調製を行う機構と、上記測定を行う機構とが、別の装置として構成されても良い。
【0169】
また、上記実施の形態では、保持部材F200に突片F230が設けられ、保持部材F100に、突片F230の抜け止めF231と係合する係合部F131が設けられた。しかしながら、これに限らず、保持部材F100に突片が設けられ、保持部材F200に、保持部材F100に設けられた突片の抜け止めと係合する係合部が設けられても良い。
【0170】
また、上記実施の形態では、切欠F6が形成されることにより、フィルタ部材Fは、X軸方向(幅方向)において非対称な形状とされたが、これに限らず、フィルタ部材FはY軸方向(厚み方向)に非対称な形状とされても良い。たとえば、図17(a)、(b)に示すように、図8(c)、(d)に示すフィルタ部材Fにおいて、切欠F6が形成されず、フィルタ部材FのY軸正方向側の面F101に鍔部F7が形成されるようにしても良い。この場合、センサ121、122に替えて、上板120近傍にリミット式センサを設置する。こうすると、リミット式センサにより、フィルタ部材Fが、表裏が正しい状態で適切に装着されたか否かを判断することができる。
【0171】
また、上記実施の形態では、フィルタ部材Fに、周囲よりも一段低い面F101が形成されることにより、フィルタ部材Fの上部に、長手方向内側の部分よりも厚みが大きい上端部F102が設けられたが、フィルタ部材Fの取り出しを容易にする構成はこれに限られない。たとえば、図17(c)、(d)に示すように、保持部材F100の上端に、Y軸正負の方向に突出する突条部F103が形成されるようにしても良い。また、図17(e)、(f)に示すように、保持部材F100の上部に、Z軸方向の中心付近が窪んだ変形部F104が形成されるようにしても良い。また、上端部F102と、突条部F103と、変形部F104のように、指が掛かり易い構造の配置位置は、フィルタ部材Fを収容部220に装着したときに外部に露出する位置であれば、他の位置であっても良い。
【0172】
また、上記実施の形態において、フィルタ部材Fの上部に、個々のフィルタ部材Fを識別するためのバーコードやRFID等が貼付されても良い。こうすると、フィルタ部材Fの精度を管理することが容易になり、フィルタ部材Fの交換等を適切に行うことができる。
【0173】
図18(a)は、バーコードラベルF8が貼付されたフィルタ部材Fを示す図である。バーコードラベルF8には、このフィルタ部材Fに関する情報(たとえば、使用期限)を記録したバーコードが印刷されている。このフィルタ部材Fを使用する場合、データ処理装置3に接続されたバーコードリーダを用いて、バーコードラベルF8のバーコードを読み取った後に、フィルタ部材Fを収容部220内に装着する。これにより、データ処理装置3において、フィルタ部材Fを個別に認識できると共に、フィルタ部材Fの使用期限を管理することができる。
【0174】
図18(b)は、RFIDタグF9が貼付されたフィルタ部材Fを示す図である。RFIDタグF9には、このフィルタ部材Fに関する情報(たとえば、使用期限)が記録されている。この構成例では、フィルタ部材Fを収容部220に装着すると、収容部220の近傍に設置されたアンテナにより、RFIDタグF9が自動的に読み取られる。これにより、データ処理装置3において、フィルタ部材Fを個別に認識できると共に、フィルタ部材Fの使用期限を管理することができる。
【0175】
また、上記実施の形態では、センサ121、122からの出力に基づいて、フィルタ部材Fが正しく設置されたか否かを検知可能であったが、この検知結果が、データ処理装置3の表示部32に表示されても良い。たとえば、フィルタ部材Fの設置状態が不適正である場合に、その旨が、表示部32に表示されても良い。
【0176】
図19(a)は、フィルタ部材Fの設置状態を判定する際の測定装置2における処理例を示すフローチャート、図19(b)は、フィルタ部材Fの設置状態を判定する際のデータ処理装置3における処理例を示すフローチャート、図19(c)は、フィルタ部材Fの設置状態が不適正である場合の表示例を示す図である。図19(a)の処理は、測定装置2の調製制御部28によって行われる。
【0177】
図19(a)を参照して、まず、調製制御部28は、センサ部291から供給される信号に基づいて、センサ121の受光部が光を受光しなくなったか否かを判定する(S201)。センサ121の受光部が光を受光しなくなると(S201:YES)、調製制御部28は、タイマーを起動し(S202)、センサ121の受光部が光を受光しなくなったタイミングから所定時間が経過したか否かを判定する(S203)。タイマー起動から所定時間が経過すると(S203:YES)、調製制御部28は、そのタイミングにおいて、センサ122の受光部が光を受光しているか否かを判定する(S204)。
【0178】
センサ122の受光部が光を受光している場合(S204:YES)、調製制御部28は、フィルタ部材Fが正しく設置されたと判定し、処理を終了する。他方、センサ122の受光部が光を受光していない場合(S204:NO)、調製制御部28は、フィルタ部材Fの設置状態が不適正であると判定し、その旨を示す設置エラーデータをデータ処理装置3に送信する。
【0179】
図19(b)を参照して、設置エラーデータを受信すると(S301:YES)、データ処理装置3は、図19(c)に示す設置エラー画面を表示部32に表示させる(S302)。この画面を見ることで、ユーザは、フィルタ部材Fの設置状態が不適正であることを知ることができる。ユーザは、適宜、フィルタ部材Fの向きを変えながら、フィルタ部材Fの再設置を行い、その後、入力部31を操作して、画面中のOKボタンを押下する。OKボタンが押下されると(S303:YES)、データ処理装置3は、エラー設置画面を消去し、OKボタンが押下されたことを示すデータを測定装置2に送信する(S304)。
【0180】
図19(a)に戻り、OKボタンが押下されたことを示すデータを受信すると(S206:YES)、測定装置2の調製制御部28は、処理をS201に戻し、再度、S201以降の処理を実行する。こうして、ステップS204の判定がYESとなると、調製制御部28は、フィルタ部材Fが正しく設置されたと判定して、処理を終了する。なお、図11(a)〜(d)を参照して説明した動作は、図19(a)のS204における判定がYESとなった後に実行される。
【0181】
この構成例によれば、フィルタ部材Fが適正に設置されていないことをユーザに知らしめることができるため、フィルタ部材Fが誤って設置されることを防止することができる。また、ユーザは、図19(c)に示す画面を見ることで、その後の措置を円滑に進めることができる。
【0182】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0183】
1 … 癌化情報提供装置(細胞分析装置)
2 … 測定装置(分析部)
3 … データ処理装置(表示部、分析部)
32 … 表示部
11a … ピペット
14 … 弁別・置換部(試料調製装置)
28 … 調製制御部(表示部)
120b … 孔(挿入口)
122 … センサ(光源、受光部)
160 … ピストン(圧接機構)
162 … 凹部(第2収容部)
210 … 収容部(第3収容部)
221 … 挿入口
230 … 凹部(第1収容部)
232 … 内側面
233 … 貯留部
241 … 流路
294 … 空圧源(陰圧部、陽圧部)
A … 中心軸
F … フィルタ部材
F11 … 面(当接部)
F3 … 孔(筒状部、貫通孔)
F31 … 内側面
F4 … フィルタ
F51、F52 … ゴム(弾性体)
F6 … 切欠
F8 … バーコードラベル(識別体)
F9 … RFIDタグ(識別体)
F102 … 上端部(変形部)
F103 … 突条部(変形部)
F104 … 変形部
F120 … 孔(筒状部、貫通孔)
F121 … 内側面
F151 … 面(当接部)
F220 … 孔(筒状部、貫通孔)
F221 … 内側面
H22 … 孔(連通口)
H23 … 孔(液体供給部、置換液供給口)
H32 … 孔(通気孔)
P11 … 陰圧源(陰圧部)
P12 … 陽圧源(陽圧部)
P13 … レギュレータ(陰圧部)
R … スターラー(回転部材)
R2 … 面(規制部)
R21 … 凸部(内周部)
V24 … バルブ
V16、V17 … バルブ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19