(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の定義は、本発明の幾つかの実施形態に関して説明する態様の幾つかに当てはまる。これらの定義は、本明細書にも同様に拡大することができる。各用語は、説明、図、及び実施例の全体でさらに説明し、例示する。この説明にある用語を解釈する場合は、本明細書で提示する詳細な説明、図、及び実施例を考慮に入れられたい。
【0018】
単数形の用語「ある」及び「前記」は、文脈が明らかに異なる意味を規定していない限り複数形を含む。したがって、例えばある対象に言及した場合、それは文脈が明らかに異なる意味を規定していない限り、複数の対象を含むことができる。
【0019】
「実質的に」及び「実質的な」という用語は、相当な程度又は範囲を指す。ある事象又は状況との関連で使用された場合、この用語は、その事象又は状況が厳密に生じた事例、さらに本明細書で説明する実施形態の典型的な公差レベル又は変動性を説明するように、その事象又は状況が近い近似性で発生した事例を指すことができる。
【0020】
「約」という用語は、本明細書で説明する実施形態の典型的な公差レベル、測定精度、又は他の変動性を説明するために、所与の値にほぼ近い値の範囲を指す。
【0021】
「遷移金属」という用語は、周期表第3族から第12族の化学元素を指し、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、ラザホージウム(Rf)、ドブニウム(Db)、シーポルギウム(Sg)、ボーリウム(Bh)、ハッシウム(Hs)、及びマイトネリウム(Mt)を含む。
【0022】
「ハロゲン」という用語は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びアスタチン(At)などの周期表第17族にある化学元素のいずれかを指す。
【0023】
「カルコゲン」という用語は、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)などの周期表第16族にある化学元素のいずれかを指す。
【0024】
「アルカリ金属」という用語は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)などの周期表第1族にある化学元素のいずれかを指す。
【0025】
「アルカリ土類金属」という用語は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びラジウム(Ra)などの周期表第2族にある化学元素のいずれかを指す。
【0026】
「希土類元素」という用語は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を指す。
【0027】
「卑金属」という用語は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)及びポロニウム(Po)という元素を指す。
【0028】
「メタロイド」という用語は、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、炭素(C)、アルミニウム(Al)、セレン(Se)、ポロニウム(Po)及びアスタチン(At)などの金属と非金属の特性の中間又は混合である特性を有する化学元素を指す。
【0029】
「金属」という用語は、メタロイド、卑金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属、及び遷移金属を、各用語が本明細書で定義された通りの状態で含む。
【0030】
「有機部分」という用語は、「有機」という用語が化学分野で広く理解された通りの状態で、炭素含有化合物を指す。
【0031】
「比容量」という用語は、ある材料が単位質量毎に保持(又は放出)することができる電子又はリチウムイオンの量(例えば合計又は最大量)を指し、mAh/gという単位で表される。特定の態様及び実施形態では、比容量は定電流放電(又は充電)分析で測定することができ、これは画定された対電極に対して画定された電圧範囲にわたって画定されたレートでの放電(又は充電)を含む。例えば、比容量は、Li/Li+対電極に対して約0.05C(例えば約12.5mA/g)、4.8Vから2.0Vのレートでの放電に基づいて測定することができる。他の放電レート及び他の電圧範囲、例えば約0.1C(例えば約25mA/g)、又は約0.5C(例えば約125mA/g)、又は約1.0C(例えば約250mA/g)のレートで使用することもできる。
【0032】
レート「C」は(状況に応じて)、(実質的に完全充電状態の)電池が1時間で実質的に完全に放電する「1C」という電流値に対して分数又は倍数としての放電電流、又は(実質的に完全放電状態の)電池が1時間で実質的に完全に充電される「1C」という電流値に対して分数又は倍数としての充電電流を指す。
【0033】
「NMC」という用語は、ニッケル、マンガン、及びコバルトが存在する式(I)又は(II)の材料を指す。式(II)は高リチウムNMC材料を示し、本明細書では「OLO」材料とも呼ぶ。
【0034】
特定の電池特性が温度とともに変動し得る限り、このような特性は、文脈が明らかに異なる意味を規定していない限り、室温(約30℃)にて規定される。
【0035】
本明細書で提示する範囲はその端点を含む。したがって、例えば1から3の範囲は、中間の値ばかりでなく1及び3の値も含む。
【0036】
「微粉砕」及び「混合」という用語は代替使用されるが、低エネルギー混合プロセスが規定されている場合を除く。このような場合、材料は主に微粉砕ではなく混合される。
【0037】
OLO活物質の成分は下式のように表すことができる。
Li
1+a[Mn
bNi
cCo
d]O
2 (I)
式中、0.9≦a+b+c+d≦1.1であり、bはゼロでない数である。その活性化した形態では、式(I)で表された材料はリチウムイオン空孔を有し、したがって下式のように表すことができる。
Li
1+a−y[Mn
bNi
cCo
d]O
2−x (II)
式中、0.9≦a+b+c+d≦1.1、bはゼロでない数であり、0.1≦y≦1.1、0≦x<2である。リチウムイオンの喪失は空孔を生成し、電気化学セル中でリチウムイオンの移動を促進するのは、式(II)で表された活物質中のこの空孔である。
【0038】
本発明の特定の実施形態によれば、式(II)で表される活物質は、電気化学セルの組立前に形成することができ、それにより電気化学セルの第1の使用サイクル中に有意の不可逆的容量損失が回避されるので有利である。このような実施形態では、式(II)で表される活物質の形成は、以下の一般化された反応を介して生じる。
Li
1+a[Mn
bNi
cCo
d]O
2 + AB式(I)→
LiB + AO
2−x + Li
1+a−y[Mn
bNi
cCo
d]O
2−x(式II) (III)
式中、Aは有機部分又は金属であり、Bはハロゲン又はカルコゲンであり、0≦x<2であり、a、b、c、d及びyは、式(I)及び(II)でそれについて画定された値を保持する。式(III)の「AB型」材料は、本発明の実施形態により使用する場合、活性化化合物と呼ぶことができる。この反応は、リチウムなどのアルカリ金属と酸素イオンなどのアニオンとの両方を抽出することができる。
【0039】
本発明の実施形態では、酸化リチウム材料がAB化合物と反応し、したがってリチウムがハロゲン又はカルコゲンと反応する。幾つかの実施形態では、二元アルカリハロゲン塩又は二元アルカリカルコゲニド塩が形成され、これらの塩が形成されることにより、実質的な化学的脱リチウム化の熱力学的推進力が提供される。
【0040】
さらに一般的には、本発明の実施形態は、有機ハロゲン化物又は有機カルコゲニドとの高温反応によってセラミック材料から金属を抽出することに関する。このような反応では、ハロゲン化物又はカルコゲニド成分がセラミックと反応して、金属ハロゲン化物又は金属カルコゲニド化合物又は複合体を形成する。この方法で、有機ハロゲン化物又は有機カルコゲニドはセラミックから金属を抽出する。金属はアルカリ金属又はアルカリ土類金属であることが好ましい。
【0041】
式(III)の反応の利点の一つは、反応中に遊離する酸素があればすべて、カソードを製作する前に系から容易に除去されることである。式(III)の反応の別の利点は、式(I)で表される材料からのリチウム抽出を化学量論的にできることである。反応の制御は、ある量の活性化化合物を予め選択することによって実行される。対照的に、式(I)で表される材料からリチウムを抽出する特定の既知の方法は、組み立てたセルの第1のサイクルを使用して、リチウムを抽出する。このような先行技術のリチウム抽出方法では酸素が放出されることがあり、これは組み立てたセル中で問題となり、リチウム抽出の化学量論的制御が不可能になる。
【0042】
特定の実施形態の別の利点は、カソードの活物質を予備活性化することにより、カソードは電気化学的充電の場合より化学的充電の方が効果的になることである。式(II)で表された材料のように化学的に充電又は活性化した材料を使用すると、これらの高エネルギー密度のOLO材料又は同様の材料から一次電池を製作することが可能である。対照的に、従来のOLO材料は現在、充電/放電サイクル中に電気化学的に活性化することができる二次電池にのみ使用されている。したがって、本発明の実施形態は、カソード材料からアルカリ又はアルカリ土類金属イオンを完全に除去することを含め、電池材料を活性化し、それによってこのようなカソード材料を一次電池に使用できるようにするために使用することができる。
【0043】
例えば、PVdFを使用して化学的に活性化した酸化リチウムニッケルカソード材料の場合、少なくとも以下の2つの異なる反応が可能である。
LiNiO
2+C
2H
2F
2 → NiO
2+LiF (IV)
又は
LiNiO
2+C
2H
2F
2→NiO
2−x+LiF+
xCO(又はCO
2) (V)
式(V)は、酸素が遊離して、PVdFの炭素と反応するケースを示す。CO、CO
2、H
2O、CO
2F、C及び/又はC
xH
yを含むが、それに限定されない他の反応生成物も形成することができる。
【0044】
本発明の実施形態によれば、OLO材料の不可逆的容量損失は、式(III)で表された反応を介してOLO材料を予備活性化することによって減少する。有機ハロゲン化物、有機カルコゲニド、及び金属ハロゲン化物が、OLO材料のこの化学的活性化を促進するのに好ましい材料である。特定の実施形態によれば、活性化プロセスは、Li
2CO
3、LiOH、Ni(OH)
2、NiO、NiOOH、NiCO
3、MnO
2、Mn
2O
3、MnCO
3、CoO、Co
2O
3及びCo(OH)
2、さらに、Li、Ni、Mn及びCoの様々な硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物及び酢酸塩など、高リチウム層状酸化物に基づきカソード材料を形成する従来の材料を使用する。これらの出発材料は、有機ハロゲン化物、有機カルコゲニド、金属ハロゲン化物、又はこれらの組み合わせなどの式(III)で表された活性化化合物で従来の微粉砕プロセス又は混合プロセスを使用して微粉砕する。次に、微粉砕したこの混合物をアニールする。
【0045】
Aが金属である式(III)の実施形態では、金属はアルカリ又はアルカリ土類金属であることが好ましい。Aが金属である式(III)の幾つかの実施形態では、金属は遷移金属とすることができる。Aが金属である式(III)の幾つかの実施形態では、金属は周期表第13、14又は15族の元素、又は希土類元素とすることができる。
【0046】
Aが有機部分である式(III)の実施形態では、有機部分は、アルカリ又はアルカリ土類金属と安定した複合体を形成する官能基を含むことが好ましい。有機部分の好ましいクラスの例にはフッ化ポリマー、クロロポリマー、炭素ハロゲン化物、フッ化アルキル、フッ化アリール、及びこれらの組み合わせが含まれる。好ましいフッ化ポリマーの例にはPVdF及びPTFEが含まれる。好ましいクロロポリマーの例にはポリ塩化ビニル(PVC)が含まれる。好ましい炭素ハロゲン化物の例には一フッ化炭素(CFx)が含まれる。好ましいフッ化アリールの例にはオクタフルオロナフタレンが含まれる。
【0047】
Bがハロゲンである式(III)の幾つかの実施形態では、ハロゲンはフッ素ではない。このような実施形態では、式(III)のAB材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの塩素をベースにした有機ハロゲン化物であることが好ましい。PVCは比較的低コストの有機ハロゲン化物であり、これによって活性化プロセスを効率的に拡大することができる。
【0048】
Bがカルコゲンである式(III)の幾つかの実施形態では、AB化合物はテルル化カドミウム、硫化インジウム、テルル化亜鉛、又はセレン化ナトリウムであることが好ましい。
【0049】
任意の特定の理論又は動作モードに束縛されずに、アニーリングプロセスは、カソード出発材料に含まれるリチウムと「B」材料の反応を促進することができる。例えば、高温は層状酸化物材料に含まれるリチウムとのフッ素反応を促進することができる。さらに、「A」材料はこのプロセスで遊離する任意の酸素と反応することができる。例えば、炭素などの有機「A」材料は、遊離した酸素と反応してCO
Nを形成することができる。このようなプロセスの結果、予め放出又は抽出された多少の量のリチウムを有するOLO材料となり、第1のサイクル中に観察される不可逆的容量損失が改善される。
【0050】
特定の実施形態によれば、微粉砕は、ボールミル粉砕又は他の実質的に同等の微粉砕プロセスなどの従来の微粉砕プロセスを介して遂行される。
【0051】
特定の実施形態では、低エネルギー微粉砕プロセスが粒子の形態を保持する場合、材料には低エネルギー混合プロセスが好ましい。微粉砕は粒子を変形することができ、金属を抽出する元である特定のセラミック又はカソード材料が、低エネルギー混合プロセスの恩恵を受ける。
【0052】
特定の実施形態によれば、微粉砕又は混合した混合物を比較的高温で十分な時間だけアニールする。適切な温度範囲は約150℃〜約800℃、約200℃〜約800℃、約250℃〜約800℃、約300℃〜約800℃、約350℃〜約800℃、約400℃〜約800℃、約450℃〜約800℃、約500℃〜約800℃、約550℃〜約800℃、約600℃〜約800℃、約650℃〜約800℃、又は約700℃〜約800℃とすることができる。好ましい温度範囲は約200℃〜約600℃とすることができる。
【0053】
アニール時間は約0時間〜約24時間まで変動してよい。アニール時間は約1時間〜約6時間、約1.5時間〜約6時間、約2.0時間〜約6時間、約2.5時間〜約6時間、約3.0時間〜約6時間、約3.5時間〜約6時間、約4.0時間〜約6時間、約4.5時間〜約6時間、又は約5.0時間〜約6時間まで変動することがさらに好ましい。
【0054】
本発明の実施形態は、本明細書ではOLO材料からのリチウム抽出に関して説明しているが、特定の実施形態はさらに一般的に、有機ハロゲン化物、有機カルコゲニド、金属ハロゲン化物、又は本明細書で開示した他の活性化材料との高温反応によってセラミック材料からアルカリ金属を抽出することに関する。本明細書で開示する特定の実施形態は、OLO材料以外の電池材料を活性化することができ、一次電池の活物質からリチウムなどのアルカリイオンを抽出するために使用することができる。
【0055】
特定の実施形態では、金属ハロゲン化物を使用して、高リチウム層状酸化物を予備活性化する(又は組み立てたセル中で任意の電気化学的活性化が生じる前に化学的に活性化する)。例えば、高リチウム層状酸化物は、AlF
3、MgF
2、BF
3、CaF
2、CoF
2、TiF
3、MnF
2、NiF
2、及びこれらの組み合わせなどの金属フッ化物と直接反応することによって予備活性化することができる。
【0056】
高リチウム層状酸化物に基づくカソード材料は、本明細書で開示する共沈方法によって作製し、次にBF
3又はTiF
3などの金属ハロゲン化物とともにアニールして、材料を予備活性化する。このプロセスの結果、フルセルを組み立てる前に抽出された多少の量のリチウムを有する層状酸化物材料になり、観察される不可逆的容量損失などの重要な電池性能の特性が大幅に改善される。
【0057】
いかなる特定の理論又は動作モードにも束縛されず、本明細書で開示する特定の反応では、フッ化物成分が高リチウム層状酸化物と反応して、下式のように表される組成を形成する。
M
xM’
yX
z (VI)
式中、M及びM’はそれぞれ金属であり、Xは酸素又はフッ素又は両方の組み合わせである。例えば、OLO材料Li[Li
0.2Mn
0.54Ni
0.13CO
0.13]O
2では、MはLiであり、M’はLi、Mn、Ni、Coであり、X=0である。金属Mはアルカリ又はアルカリ土類金属であることが好ましく、M’は遷移金属、卑金属、メタロイド、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属である。
【0058】
さらに、特定の反応では、フッ素が高リチウム層状酸化物材料の本体と反応して、フッ化高リチウム層状酸化物を形成する。すなわち、酸素部位の幾つかにフッ素(又は前駆物質として他のハロゲン化物を使用する場合は、他のハロゲン化物)がドープされる。金属ハロゲン化物前駆物質の金属が、特定の反応に由来する酸素と反応して、下式として表される化合物を形成することができる。
M’O
y (VII)
式中、M’はアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、卑金属、又はメタロイドとすることができる。さらに、金属ハロゲン化物前駆物質の金属を高リチウム層酸化物にドープすることもできる。
【0059】
以下の実施例は、本発明の幾つかの実施形態の特定の態様について説明し、当業者への説明を例証し、提供する。実施例は本発明を制限するものとは解釈されない。何故なら、実施例は、本発明の幾つかの実施形態を理解して実践するのに有用な特定の方法を提供するにすぎないからである。
【0060】
実施例
二次電池の高リチウム層状酸化物
ハーフセル
材料及び合成方法。反応はすべて、高純度アルゴン充填のグローブボックス(M−Braun、酸素及び湿度含有率<0.1ppm)内で準備した。他に規定していない限り、材料は商業的供給源(シグマアルドリッチ、アドバンスリサーチケミカル社、アルファエイサーなど)から入手し、さらなる精製は実施しなかった。
【0061】
層状酸化物の活性化:有機ハロゲン化物及び高リチウム層状酸化物材料を、微粉砕プロセスを使用して混合した。場合によっては、低エネルギー混合プロセスを使用した。微粉砕容器に有機ハロゲン化物前駆物質(5wt%)、高リチウム層状酸化物、及び任意選択でアセトンなどの溶媒を装填した。次に容器を密封し、微粉砕した。微粉砕後、溶媒を60℃で混合物から蒸発させ、その後に混合物を空気中で、例えば約350℃から約450℃でアニールした。反応生成物は、任意選択で水洗又は他の方法で取り出すことができる。
【0062】
電極の形成。活性化した層状酸化物材料をベースにしたカソードを、以下の配合方法に従って85:7.5:7.5(活物質:結合剤:導電性添加剤)の配合組成を使用して作製した。すなわち、198mgのPVdF(シグマアルドリッチ)を15mLのNMP(シグマアルドリッチ)中に一晩溶解させた。198mgの導電性添加剤を溶液に添加し、数時間攪拌状態にした。次に、150mgの活性化した層状酸化物材料を、1mLのこの溶液に添加し、一晩攪拌した。約50μLのスラリーをステンレス鋼の集電器に滴下し、150℃で約1時間乾燥させることによって、薄膜を成型した。乾燥した薄膜を冷まし、次に1トン/cm
2で圧迫した。電極は、電池組立のためにグローブボックスに入れる前に、真空中で150℃にて12時間さらに乾燥させた。
【0063】
電気化学的特性決定。電池はすべて、他に規定していない限り、高純度アルゴン充填のグローブボックス(M−Braun、O
2及び湿度含有率<0.1ppm)内で組み立てた。ハーフセルは、アノードとしてのリチウム、Celgard2400のセパレータ、及び90μLの1MのLiPF
6を1:2のEC:EMCの電解質中で使用して作成した。電極及びセルは電気化学的に、25℃にて4.7Vと2.5Vの間の定電流C/10の充電及び放電率を特性とした。定電圧ステップは含めなかった。
【0064】
二次電池(フルセル)の高リチウム層状酸化物
材料及び合成方法。反応はすべて、高純度アルゴン充填のグローブボックス(M−Braun、酸素及び湿度含有率<0.1ppm)内で準備した。他に規定していない限り、材料は商業的供給源(シグマアルドリッチ、アドバンスリサーチケミカル社、アルファエイサーなど)から入手し、さらなる精製は実施しなかった。
【0065】
層状酸化物の活性化。有機ハロゲン化物及びOLO材料を、微粉砕プロセスを使用して混合した。微粉砕容器に有機ハロゲン化物前駆物質(5wt%)、OLO、及び任意選択でアセトンなどの溶媒を装填した。次に容器を密封し、微粉砕した。微粉砕後、溶媒を60℃で混合物から蒸発させ、その後に混合物を空気中で450℃にてアニールした。反応生成物は、任意選択で水洗又は他の方法で取り出すことができる。
【0066】
電極の形成。活性化した層状酸化物材料をベースにしたカソードを、以下の配合方法に従って85:7.5:7.5(活物質:結合剤:導電性添加剤)の配合組成を使用して作製した。すなわち、198mgのPVdF(シグマアルドリッチ)を15mLのNMP(シグマアルドリッチ)中に一晩溶解させた。198mgの導電性添加剤を溶液に添加し、数時間攪拌状態にした。次に、150mgの活性化した層状酸化物材料を、1mLのこの溶液に添加し、一晩攪拌した。約66μLのスラリーをステンレス鋼の集電器に滴下し、150℃で約1時間乾燥させることによって、薄膜を成型した。乾燥した薄膜を冷まし、次に1トン/cm
2で圧迫した。電極は、電池組立のためにグローブボックスに入れる前に、真空中で150℃にて12時間さらに乾燥させた。
【0067】
MCMB(中間細孔質炭素マイクロビーズ)をベースにしたアノードを、以下の配合方法に従って85:7:8(活物質:結合剤:導電性添加剤)の配合組成を使用して作製した。すなわち、132mgのPVdF(シグマアルドリッチ)、115mgの導電性添加剤、及び1400mgのMCMBを10mLのNMP(シグマアルドリッチ)中に一晩溶解させた。約50μLのスラリーをステンレス鋼の集電器に滴下し、150℃で約1時間乾燥させることによって、薄膜を成型した。乾燥した薄膜を冷まし、次に1トン/cm
2で圧迫した。電極は、電池組立のためにグローブボックスに入れる前に、真空中で150℃にて12時間さらに乾燥させた。
【0068】
電気化学的特性決定。電池はすべて、他に規定していない限り、高純度アルゴン充填のグローブボックス(M−Braun、O
2及び湿度含有率<0.1ppm)内で組み立てた。フルセルは、アノードとしてのMCMB、Celgard2400のセパレータ、及び90μLの1MのLiPF
6を1:1のEC:EMCの電解質中で使用して作成した。電極及びセルは電気化学的に、30℃にて4.6Vと2.0Vの間の定電流C/20の充電及び放電率を特性とした。
【0069】
一次電池の脱リチウム化した酸化リチウムニッケル
材料及び合成方法。反応はすべて、高純度アルゴン充填のグローブボックス(M−Braun、O
2及び湿度含有率<0.1ppm)内で準備した。他に規定していない限り、材料は商業的供給源(デュラセル)から入手し、さらなる精製は実施しなかった。
【0070】
酸化リチウムニッケルの脱リチウム化。有機ハロゲン化物及び酸化リチウムニッケル材料を、低エネルギー混合プロセスを使用して混合した。混合容器に有機ハロゲン化物前駆物質(70モル比)及び酸化リチウムニッケルを装填した。次に、混合物を約450℃にて不活性雰囲気中で約6時間アニールした。
【0071】
電極の形成。酸化リチウムニッケル材料をベースにしたカソードを、以下の配合方法に従って79:21(脱リチウム化した材料:炭素)の配合組成を使用して作製した。すなわち、1gの脱リチウム化した材料を267mgの炭素と混合した後、66.7μLのKOH(9M)を添加した。450mgの十分に混合した材料をカソード缶中に移行し、手で圧迫した。2.4gのZnスラリーをアノード缶に添加し、絶縁リングで囲んだ。KOH(9M)を使用してセパレータを湿らせ、セロハンテープがカソード薄膜に面する状態でカソード缶に入れた。カソード缶とアノード缶を一緒に手でかしめた。
【0072】
電気化学的特性決定。電池は空気中で組み立てた。電極及びセルは電気化学的に、25℃にて約2.5Vと約0.2Vの間の定電流C/40の放電率を特性とした。定電圧ステップは含めなかった。
【0073】
金属フッ化物で活性化した高リチウム層状酸化物
材料及び合成方法。反応はすべて、空気中で実行した。他に規定していない限り、材料は商業的供給源(例えばシグマアルドリッチ又はフィッシャーサイエンティフィック)から入手し、さらなる精製は実施しなかった。
【0074】
高リチウム層状酸化物材料の合成。高リチウム層状酸化物材料は、共沈プロセスを介して作製した。金属硝酸塩を、高リチウム層状酸化物材料のLi、Mn、Ni及びCo成分の前駆物質として使用した。受け取ったままの前駆物質を脱イオン水中に溶解させた。その結果の金属硝酸塩溶液を、目標の組成の化学量論比で混合した。NH
4HCO
3溶液を、混合した金属硝酸塩溶液に共沈剤としてゆっくり添加した。0.5時間混合した後、溶液を60℃で一晩乾燥した。次に、乾燥した材料を200℃に加熱し、3時間保持した。次に、材料を900℃で10時間アニールした。乾燥、加熱、及びアニールステップはすべて空気中で実行した。
【0075】
金属フッ化物との直接反応による層状酸化物の活性化。商業的に入手可能な金属フッ化物(例えばシグマアルドリッチからのBF
3・2H
2O又はTiF
3)を前駆物質として使用した。5mLの脱イオン水を、上記合成ステップで合成したままの高リチウム材料を500mg含むるつぼに添加した。選択した量のBF
3・2H
2Oをるつぼに添加した。その結果のるつぼの内容物を0.5時間混合し、次に60℃で一晩乾燥した。乾燥した材料を、400℃で6時間アニールした。アニールステップは空気又は窒素中で実行することができる。
【0076】
金属硝酸塩及びフッ化アンモニウムでの層状酸化物の活性化。場合によっては、商業的に入手可能な金属硝酸塩及びNH
4F溶液を、それぞれ反応の金属源及びフッ素源として使用した。指定された量の金属フッ化物前駆物質、高リチウム層状酸化物、及び脱イオン水を装填したるつぼを、0.5時間混合した。溶液を乾燥し、その後に空気中でアニールした。これらの材料は、本発明の実施形態に照らして試験する比較用の実施例を提供する。
【0077】
電極の形成。活性化した層状酸化物材料をベースにしたカソードを、活物質:結合剤:導電性添加物が80:10:10である配合組成を使用して作成した。詳細に述べると、198mgの結合剤(シグマアルドリッチからのポリ(フッ化ビニリデン))を11mLの溶媒(シグマアルドリッチからのN−メチル−2−ピロリドン)中に一晩溶解させた。198mgの導電性炭素SuperLiを溶液に添加し、数時間攪拌状態にした。次に、144mgの活性化した層状酸化物材料を、1mLのこの溶液に添加して(所望の80:10:10の比率を生成し)、一晩攪拌した。約50μLのこのスラリーをステンレス鋼の集電器に滴下し、次にこれを150℃で約1時間乾燥させて、薄膜を成型した。乾燥した薄膜を冷まし、1トン/cm
2で圧迫した。圧迫した電極薄膜を、真空中で150℃にて12時間さらに乾燥させた。
【0078】
電気化学的特性決定。電池はすべて、他に規定していない限り、高純度アルゴン充填のグローブボックス(M−Braun、O
2及び湿度含有率が0.1ppm未満)内で組み立てた。セルは、アノードとしてのリチウム、Celgard2400のセパレータ、及び90μLの1MのLiPF
6の電解質配合を炭酸エチレン(EC):炭酸エチルメチル(EMC)の有機溶媒が1:2の混合物中で使用して作成した。電極及びセルは電気化学的に、30℃にて4.8Vと2.0Vの間のC/10(25mA/g)という定電流充電及び放電率を特性とした。特性決定サイクルには定電圧ステップを含めなかった。
【0079】
結果
図1は、従来のOLO材料の第1のサイクル後の不可逆的容量損失を示す電圧トレースである。この修飾されていない従来の材料のクーロン効率(グラフで「CE」のラベルがある)を測定し、78%であった。第1の充電放電サイクル中に71mAh/gの不可逆的容量損失があった。
図1は、先行技術のOLO材料に不可逆的容量損失があることを実際に示す。
【0080】
図2は、本発明の実施形態による化合物及び方法を使用した不可逆的容量損失が、従来の材料と比較して改善したことを示す電圧トレースである。OLO材料は、上述したプロセスで「AB」材料(有機フッ化物)としてPVdFを使用して化学的に脱リチウム化した。
図2は、不可逆的容量損失の改善、すなわち従来の材料の71mAh/gに対して化学的に脱リチウム化した材料(「PVdFで処理」というラベルがある)では24mAh/gであることを実際に示す。化学的に脱リチウム化した材料のクーロン効率を測定し、91%であった。
【0081】
図3は、本発明の実施形態による化合物及び方法を使用した不可逆的容量損失が、従来の材料と比較して改善したことを示す電圧トレースである。化学的に脱リチウム化した材料は改善された不可逆的容量損失を示す。材料は、炭素アノードを使用してフルセル中で測定した。不可逆的容量損失は、従来のOLO材料の76mAh/gから、PVdFで化学的に脱リチウム化したOLO材料の49mAh/gへと改善した。クーロン効率は、従来のOLO材料の77.2%からPVdFで化学的に脱リチウム化したOLO材料の82.0%へと改善した。
【0082】
図4は、炭素アノードを有するフルセル中で従来の材料と比較して本発明の実施形態による化合物及び方法に帰することができる性能改善を示すデータの表である。上の行は、従来のOLO材料とPVdFで化学的に脱リチウム化したOLO材料について、第1のサイクルにおける実際の不可逆的容量損失を比較する。OLO材料は、約80mAh/gと約75mAh/gの間の不可逆的容量損失を有し、化学的に脱リチウム化した材料は約55mAh/gの不可逆的容量損失を有する。中央の行は、従来のOLO材料とPVdFで化学的に脱リチウム化したOLO材料について、第1のサイクルの不可逆的容量損失の百分率を比較する。OLO材料は、約31%と約29%の間の不可逆的容量損失を有し、化学的に脱リチウム化した材料は約25%と約24%の間の不可逆的容量損失を有する。下の行は、従来のOLO材料とPVdFで化学的に脱リチウム化したOLO材料のクーロン効率を比較する。OLO材料は約77%のクーロン効率を有し、化学的に脱リチウム化した材料は約81%前後のクーロン効率を有する。
【0083】
図5は、従来の高リチウム材料とPVdFを使用して化学的に脱リチウム化した材料との電圧トレースの比較である。
図5は、OLO材料を化学的に脱リチウム化することによって、比容量を全く減少させずに不可逆的容量が18.7%から3.9%に減少していることを実際に示す。さらに、
図5は、化学的に脱リチウム化した材料では第1の充電でクーロン効率が81.3%から96.1%に増加したことを示す。
【0084】
図6は、化学的に脱リチウム化してある従来のOLO材料(円)と化学的に脱リチウム化していないもの(四角形)とのレート性能の比較である。本明細書で開示した実施形態により活性化した(すなわち化学的に脱リチウム化した)OLO材料は、改善されたレート性能を実際に示した。場合によっては、化学的活性化プロセスは、OLO材料のレート性能を64.5%から76.1%へと改善する。
【0085】
図7A、
図7B及び
図7Cはそれぞれ、本発明の実施形態による様々な材料の走査電子顕微鏡画像である。
図7Aは、未加工の受け取ったままのOLO材料の画像である。
図7Bは、ボールミル粉砕混合プロセスを使用して加工したOLO材料の画像である。
図7Cは、低エネルギー混合プロセスを使用して加工したOLO材料の画像であり、
図7Cは、低エネルギー混合プロセスが初期の形態を保持することを実際に示す。
図5及び
図6に示した性能改善が、
図7Cに示すように、元の粒子形態(
図7A)を変更せずに遂行されることは重要である。低エネルギー混合プロセスを使用すると、受け取ったままの粒子の形態が維持され、それでも不可逆的容量及びレート性能は改善する。
【0086】
図8は、従来のOLO材料(実線)と、PTFEを使用して化学的に脱リチウム化してある同じ材料(点線)との電圧トレースの比較である。
図8は、不可逆的容量が18.7%から5.5%へと減少している一方、材料間に同様の比容量が維持されていることを実際に示す。
【0087】
表1は、PVdFを使用して化学的に脱リチウム化してある同じ材料と比較した従来のOLOのデータを要約している。表1は、容量、クーロン効率、レート性能、及びサイクル寿命が、化学的に脱リチウム化した材料では同様又は向上していることを示す。
【0089】
図9は、PVdFを使用して脱リチウム化したLiNiO
2カソード材料を有する一次電池セルの電圧トレースである。
図9は、PVdFを使用した固相リチウム抽出プロセスで約70%の抽出効率を実際に示す。これらの結果から、LiNiO
2を十分に脱リチウム化するには、100%を超えるPVdFと酸化ニッケル出発材料との比率が必要であることが理解される。
【0090】
図10A、
図10B及び
図10Cは、様々な量の金属フッ化物(この場合はBF
3)と反応した高リチウムNMC材料と比較した対照標準の高リチウムNMC材料のX線回折パターンを示す。
図10Aは、回折パターンの全範囲を示し、
図10B及び
図10Cは、円で囲み、それぞれ「B」及び「C」のラベルをつけた回折パターンのピークを示す。反応したBF
3の変動量は0.7重量パーセント、1.3重量パーセント、又は2重量パーセントであった。
図10Aは、高リチウムNMC材料が、試験した試料全部で主要相であったことを実際に示す。しかし、ほぼ37°の28及び44°の28の主要回折ピークが低い方の28の角度へと対称にシフトし、BF
3の濃度が増加する。
図10A、
図10B又は
図10Cには描かれていないが、BF
3の含有率が2重量パーセント超まで増加した場合、これらのピークのさらなるシフトは観察されなかった。
図10Dに示すように、AlF
3を活性化前駆物質として使用した場合、このようなシフトは観察されなかった。
【0091】
これらのピークが低い方の28の角度へとシフトしたことは、高リチウムNMC材料の結晶相の1つ又は複数の格子定数が増加したことを実際に示す。格子拡張は、高リチウムNMC材料への反応物のドープなどのメカニズムと合致する。例えば、フッ素原子を高リチウムNMC材料の酸素部位にドープすることができ、これで少なくとも1つの格子定数が増加することになる。
【0092】
図10A、
図10B及び
図10Cのデータは、金属フッ化物材料が高リチウムNMC材料と反応して、反応生成物を生成することを立証する。反応生成物は、未反応の高リチウムNMCとは構造的に別個である。対照的に、高リチウムNMC材料を金属フッ化物で被覆した場合、X線回折パターンは、元の高リチウムNMC材料の回折パターンと金属フッ化物の回折パターンとの重ね合わせを示す。すなわち、高リチウムNMC材料でシフトするピークはないが、金属フッ化物材料に関連する追加のピークが回折パターンに現れることになる。
【0093】
図11は、従来の材料(合成したままの高リチウムNMC)と比較して、本発明の実施形態の化合物及び方法を使用した不可逆的容量損失の改善を示す一連の電圧トレースである。
図11は、BF
3の濃度が上昇するとともに不可逆的容量が改善することを示す。改善された材料は、合成したままの高リチウムNMCを、0.7重量パーセント、1.3重量パーセント、及び2重量パーセントなどの様々な量のBF
3で予備活性化することによって生成した。不可逆的容量は、未処理の高リチウムNMC材料の15.1%から、2wt%のBF
3で予備活性化した高リチウムNMC材料を使用した5.5%へと減少しており、比放電容量に減少はなかった。さらに、
図11は、1回目の充電で測定されるクーロン効率が、未処理の高リチウムNMC材料の84.9%から、2wt%のBF
3で予備活性化した高リチウムNMC材料を使用した94.5%へと増加することを示す。
【0094】
表2は、金属ハロゲン化物(この場合はBF
3)を使用して予備活性化してある材料と比較した、従来の高リチウムNMC材料のデータを要約している。表2は、金属フッ化物で予備活性化することによって形成した電極の不可逆的容量及びクーロン効率の改善を示す。放電容量は基本的に一定のままであったが、不可逆的容量及びクーロン効率が改善されたことは注目に値する。表2のデータを生成するために、セルはC/10のレート及び30℃の温度で4.8Vと2.0Vの間を循環させた。
【0096】
図12は、0.1Cのレート及び30℃の温度で4.8Vと2.0Vの間で循環させたセル中の電極材料の第1のサイクルのクーロン効率を示す。最も左側の列は、対照標準材料(合成したままの高リチウムNMC材料)のデータ(塗りつぶした円で表す)を示す。白抜きの円は、本明細書で説明する実施形態による金属フッ化物の直接反応によって予備活性化された電極材料で収集したデータを表す。詳細に述べると、白抜きの円は、AlF
3(4.4重量パーセントと6.2重量パーセントの濃度)、BF
3(0.7重量パーセント、1.3重量パーセント、及び2重量パーセントの濃度)、及びTiF
3(1重量パーセント、2重量パーセント、及び3重量パーセントの濃度)を使用して合成したままの高リチウムNMCを予備活性化することに対応する。予備活性化材料AlF
3、BF
3及びTiF
3はそれぞれ、クーロン効率に濃度依存の増加を実際に示す。
図12は、特定の金属硝酸塩及びNH
4F溶液を前駆物質として使用した追加の実施例からのデータを示す。
【0097】
図13は、0.1Cのレート及び30℃の温度で4.8Vと2.0Vの間で循環させたセル中の電極材料の第1のサイクルの放電容量を示す。最も左側の列は、対照標準材料(合成したままの高リチウムNMC材料)のデータ(塗りつぶした円で表す)を示す。白抜きの円は、本明細書で説明する実施形態による金属フッ化物の直接反応によって予備活性化された電極材料で収集したデータを表す。詳細に述べると、白抜きの円は、AlF
3(4.4重量パーセントと6.2重量パーセントの濃度)、BF
3(0.7重量パーセント、1.3重量パーセント、及び2重量パーセントの濃度)、及びTiF
3(1重量パーセント、2重量パーセント、及び3重量パーセントの濃度)を使用して合成したままの高リチウムNMCを予備活性化することに対応する。
図13は、予備活性化の幾つかの実施例にわたって放電容量が同等であることを実際に示す。
図12と同様に、三角形は金属硝酸塩及びNH
4F溶液を前駆物質として使用することを示す。
【0098】
図14は、30℃の温度で4.8Vと3.0Vの間で循環させたセル中の電極材料のレート容量(1Cのレートで放電時に保持される0.1Cのレート容量の百分率)を示す。最も左側の列は、対照標準材料(合成したままの高リチウムNMC材料)のデータ(塗りつぶした円で表す)を示す。白抜きの円は、本明細書で説明する実施形態による金属フッ化物の直接反応によって予備活性化された電極材料で収集したデータを表す。詳細に述べると、白抜きの円は、AlF
3(4.4重量パーセントと6.2重量パーセントの濃度)、BF
3(0.7重量パーセント、1.3重量パーセント、及び2重量パーセントの濃度)、及びTiF
3(1重量パーセント、2重量パーセント、及び3重量パーセントの濃度)を使用して合成したままの高リチウムNMCを予備活性化することに対応する。
図14は、金属フッ化物で化学的活性化ステップを使用した高リチウムNMC材料のレート容量が改善したことを実際に示す。AlF
3及びNH
4Fは両方とも、85%を超える1C容量保持を示した。
【0099】
クーロン効率の改善は、他のセラミック材料(リチウムが過剰な電池のカソード材料など)にも適用可能とすることができる。
【0100】
さらに、塩素系の金属ハロゲン化物は、金属フッ化物と同様の方法で機能することができるが、本明細書で説明したように、有機ハロゲン化物に関しては、より低価格な代替物(例えばAlCl
3)として機能することができる。金属塩化物は、層状酸化物材料から、リチウムに加えて他のアルカリ又はアルカリ土類イオンの抽出にも使用することができた。
【0101】
本明細書で開示した金属ハロゲン化物反応は、本明細書で開示した一次電池の有機ハロゲン化物の使用法と同様に、一次電池材料の活性化に使用することができた。例えば、金属ハロゲン化物との反応を介してアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを取り出すと、カソード材料を一次電池に使用可能とすることができる。
【0102】
本明細書で開示した金属ハロゲン化物反応の重要な利点の一つは、反応を空気中で実行できることである。反応のこの特徴は、先行技術の反応方法に対して効率及び安全性を大幅に改善させる。
【0103】
本明細書で開示した実施形態により、従来のOLO材料は、レート性能が改善し、第1のサイクルにおける不可逆的容量損失が5%未満であるように化学的脱リチウム化プロセスを使用して改善することができる。以上及び他の性能の改善は、比容量などの他の特性を低下させずに達成される。粒子の形態も保持することができる。
【0104】
本発明を特定の実施形態に関して説明してきたが、特許請求の範囲で画定される本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更ができ同等物を置換できることを、当業者には理解されたい。また、特定の状況、材料、物質の組成、方法、又はプロセスを本発明の目的、精神及び範囲に適応させるために、多くの修正をすることができる。このような修正はすべて、特許請求の範囲に入るものとする。特に、本明細書で開示した方法は、特定の順序で実行する特定の作業に関して説明してきたが、これらの作業は、本発明の教示から逸脱することなく、同等の方法を形成するために組み合わせる、さらに分割する、又は順序変更することができることが理解される。したがって、本明細書で特に指示しない限り、作業の順序及び組分けは本発明を制限するものではない。