特許第6190416号(P6190416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190416
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20170821BHJP
【FI】
   H01R12/72
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-94776(P2015-94776)
(22)【出願日】2015年5月7日
(62)【分割の表示】特願2013-163326(P2013-163326)の分割
【原出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-135834(P2015-135834A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年5月8日
【審判番号】不服2016-19488(P2016-19488/J1)
【審判請求日】2016年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】玉井 暢洋
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 内田 博之
【審判官】 滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−363032(JP,A)
【文献】 実開昭51−144761(JP,U)
【文献】 実開昭56−119284(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0295453(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁材製の板状の回路部材の一方の面にて同一面上に複数設けられ各伝送路に対応して導通している導電材の接続部が相手接続部材の接触端子と接触可能なように回路部材の縁部に沿って該回路部材の幅方向に複数配列されており、伝送路の幅寸法よりも接続部存在位置距離範囲の方が大きく設定されている電気コネクタにおいて、
伝送路は隣接する二つの伝送路でペア伝送路を形成し、該二つの伝送路のそれぞれに導通する二つの接続部は、該二つの接続部のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔が上記二つの伝送路のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔よりも大きく、
上記接続部は、幅方向で少なくとも該接続部の両外側縁をなす位置に導電材の導電条部を有して形成され、両外側縁位置の導電条部同士間に導電材不在の絶縁域が上記導電条部と同じ表面レベルもしくは没した表面レベルで配されており、
上記回路部材は、複数の伝送路の配置範囲に対応する他方の面での領域を覆うグランドプレートを有し、該グランドプレートは、上記二つの接続部が配列されている範囲に対応する上記他方の面の領域範囲に、相手接続部材のグランド接触端子と接触可能なグランド接続領域が設けられ、
上記一方の面に位置する二つの接続部は、該二つの接続部同士間の幅方向中央位置における中央線が上記他方の面に位置する上記グランド接続領域内に位置しているとともに、一つのペア伝送路に導通する上記二つの接続部同士の間隔が、該一つのペア伝送路に導通する接続部と該一つのペア伝送路に隣接する他のペア伝送路に導通する接続部との間隔よりも小さくなっていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
回路部材に形成された接続部の導電条部は、両外側縁位置同士間の中間位置にも設けられていることとする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
回路部材に形成された接続部は、導電条部と、導電条部同士を連結する連結条部とにより枠状に形成されていることとする請求項1又は請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
回路部材はグランドプレートがめっき層であり、グランド接続領域、回路部材の一方の面における導電条部同士間の絶縁域に対応する部分が導電材不在の絶縁域となっていることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板材等の板状の回路部材における基板回路構造で、特に高速信号伝送に好適な基板回路構造を有する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタの回路部材における基板回路構造としては、例えば、特許文献1に開示されている回路構造が知られている。この特許文献1の回路構造は、最も一般的で簡単な構成として、回路基板内層に伝送路を有さずに、めっきにより回路基板の一方の面のみに複数の伝送路がそして他方の面に全面にわたるグランド板が設けられている。複数の伝送路は、回路基板の縁部に沿って配列された複数のパッド状の接続部にそれぞれ対応して導通している。各伝送路は対応する接続部よりも、幅(上記配列の方向での寸法)が小さい。すなわち接続部の方が幅広となっている。複数の伝送路は、一本のグランド伝送路、隣接する二本の信号伝送路、一本のグランド伝送路という具合に繰り返す配列をなしていて、ペア伝送路を形成する二本の信号伝送路の両側のそれぞれに一本のグランド伝送路を配している。グランド伝送路は基板を貫通するビアにより他方の面のグランド板と導通している。ペア伝送路は伝送路同士が幅方向で近接していて、いずれもペア接続部の対応接続部に接続されており、高速信号の伝送に好適なペア伝送路を形成している。ペア伝送路に導通しているペア接続部は、自ずと定まる基板の厚さに対応して、インピーダンスの調整のために、上述のごとく幅広としてペア接続部の両接続部同士間の幅方向距離を大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0295453A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のごとく、接続部を幅広の大面積のものとすると、両接続部同士間の幅方向距離を大きくすることとなり、これによりインピーダンスが調整されて改善されるものの、次のような課題をかかえる。
【0005】
第一には、接続部が大面積となることで、全数の接続部をめっきにより回路基板面上に形成すると、めっき総面積が大きくなってコストが嵩むということである。
【0006】
第二には、各接続部が大面積になるということは、相手端子との接触位置を十分にカバーできて、多少の幅方向での相対位置ずれがあっても接触範囲が広いので確実に接触するという点では有利にはなるが、接触面圧がそれだけ小さくなり、接触信頼性が低下するという課題をかかえる。
【0007】
本発明は、以上のような状況に鑑み、インピーダンスが調整可能な接続部同士間距離を確保しつつ、めっき面積を小さく抑え、高い接触面圧のもとで接触信頼性の高い回路部材を有する電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気コネクタは、電気絶縁材製の板状の回路部材の一方の面にて同一面上に複数設けられ各伝送路に対応して導通している導電材の接続部が相手接続部材の接触端子と接触可能なように回路部材の縁部に沿って該回路部材の幅方向に複数配列されており、伝送路の幅寸法よりも接続部存在位置距離範囲の方が大きく設定されている。ここで回路部材とは、単独で電子機器に取り付けられる通常の回路基板の他、モールドで所定形状とされてコネクタに組み込まれ保持されるブレード等、板状の回路部材に伝送路が形成され、他部材との電気的接続のために、該伝送路と導通したパッド状の接続部が回路部材の縁部に配列形成されているすべての回路部材を称する。接続部は、回路基板に直接めっきを施すか、あるいは端子部分として金属板層を設けた後、その金属板層をめっきするかにより形成されるが、いずれにせよ、めっきがなされる。
【0009】
かかる電気コネクタにおいて、本発明では、伝送路は隣接する二つの伝送路でペア伝送路を形成し、該二つの伝送路のそれぞれに導通する二つの接続部は、該二つの接続部のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔が上記二つの伝送路のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔よりも大きく、上記接続部は、幅方向で少なくとも該接続部の両外側縁をなす位置に導電材の導電条部を有して形成され、両外側縁位置の導電条部同士間に導電材不在の絶縁域が上記導電条部と同じ表面レベルもしくは没した表面レベルで配されており、上記回路部材は、複数の伝送路の配置範囲に対応する他方の面での領域を覆うグランドプレートを有し、該グランドプレートは、上記二つの接続部が配列されている範囲に対応する上記他方の面の領域範囲に、相手接続部材のグランド接触端子と接触可能なグランド接続領域が設けられ、上記一方の面に位置する二つの接続部は、該二つの接続部同士間の幅方向中央位置における中央線が上記他方の面に位置する上記グランド接続領域内に位置しているとともに、一つのペア伝送路に導通する上記二つの接続部同士の間隔が、該一つのペア伝送路に導通する接続部と該一つのペア伝送路に隣接する他のペア伝送路に導通する接続部との間隔よりも小さくなっていることを特徴としている。
【0010】
このような構成の本発明によると、接続部が、インピーダンス調整のために回路基板等の回路部材の厚さに応じた適切な接続部中央線同士間距離を確保したまま、絶縁域を設けてその両側に導電部材を位置させることで導電条部での接続部面積を大幅減することができ、接続部としてのめっき総面積を小さくしてめっきコストを低減すると共に、上記導電条部と相手となる接触端子との間での接触面圧を増大して接触信頼性が向上する。また、接触箇所の増加による幅方向ずれに対する許容量が増加する。
【0011】
本発明において、回路部材に形成された接続部の導電条部は、両外側縁位置同士間の中間位置にも設けられているようにすることができる。すなわち、幅方向両側縁に位置する導電条部同士間に、さらに導電条部を追加する形態である。こうすることで、上記幅方向ずれに対する許容量が増大する。
【0012】
本発明において、回路部材に形成された接続部は、導電条部と、導電条部同士を連結する連結条部とにより枠状に形成されていることが好ましい。こうすることで、すべて導電条部は、端部を有することなく伝送路とつながって閉路(閉ループ形状)を形成するので、端部が回路部材表面から剥離を始めるという問題もなく、強度が高まる。
【0013】
本発明において、回路部材はグランドプレートがめっき層であり、グランド接続領域、回路部材の一方の面における導電条部同士間の絶縁域に対応する部分が導電材不在の絶縁域となっているようにすることが好ましい。こうすることで、回路基板の両面にて、対応する複数の位置で絶縁域を形成でき、全体としてのめっき面積を減らすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように、伝送路と導通する回路部材の縁部における接続部の中央線同士間距離を高速信号伝送に適した回路部材の厚さにもとづく適正値に保ちつつ、接続部を両外側縁の導電条部で形成して、その間に絶縁域を設けることで、接続部の面積を小さくして、接続部のためのめっき総面積を小さくする結果、めっきコストを低減し、さらには、小面積の導電条部での相手接触端子との間の接触面圧を増大する結果、接触信頼性が向上するという効果を得る。さらには、一つの接続部として、両外側縁部位置で、すなわち、幅方向で二つ以上の導電条部を存在させることとなり、相手接触端子との同方向での接触位置のずれに対する幅が拡がる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のコネクタと上下相手コネクタとの組立状態(コネクタ組立体)を示す斜視図である。
図2図1のコネクタ組立体を、相手コネクタとの組立前の状態で示す斜視図である。
図3図1,2の本発明のコネクタに用いられる回路基板を示す斜視図である。
図4図3の回路基板から保護カバーを外した状態で示す(電気素子付き)基板本体を示す図である。
図5図4の基板本体を、電気素子を外した状態で、該基板本体の一方の面を示す詳細図である。
図6図5の基板本体の他方の面を示す詳細図である。
図7図5について一部接続部の周辺を拡大して示す図である。
図8図7におけるVIII‐VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、伝送路が形成された回路部材を保持している本実施形態のコネクタ10と、該コネクタ10に対して上下からそれぞれ接続される相手接続部材としての相手コネクタ50,60とで成るコネクタ組立体Iを組立後状態、図2は組立前状態でそれぞれの外観を示す斜視図である。相手コネクタ50,60はいずれも端子が植設された底板52を保持しており、上記コネクタ10に上下からそれぞれ接続されることで、二つの上記底板52を該コネクタ10を介して接続する機能を有している。一方の相手コネクタ60が下側に位置する回路基板(図示せず)に取り付けられ、他の相手コネクタ50が上側に位置する回路基板(図示せず)に取り付けられて使用される。相手コネクタ50,60の形態は全く同じである。
【0018】
本発明において、コネクタ10により保持されている回路部材とは、単独で電子機器に取り付けられる通常の回路基板の他、モールドで所定形状とされてコネクタに組み込まれ保持されるブレード等、板状の回路部材に伝送路が形成され、他部材との電気的接続のために、該伝送路と導通したパッド状の接続部が回路部材の縁部に配列形成されているすべての回路部材を称する。
【0019】
上述したように、相手コネクタ50,60は同じであるので、図1,2にて、上方に位置する相手コネクタ50についてのみ説明し、下方に位置する相手コネクタ60についてはその説明を省略し、相手コネクタについて説明が必要があるときには共通部分について相手コネクタ50の符号に「10」を加えた60台の数字の符号で示すことにする。
【0020】
相手コネクタ50は、図2に見られるように、絶縁材料の四角枠状のコネクタ本体51の底面側(図1の底板52では上面側)の外面に二つの底板52,52が取り付けられており、これらの底板52は、底板52を板厚方向に貫通する接触端子が行そして列をなして複数植設されている。底板52の底面側では接触端子に半田ボール53が施されており、該接触端子はコネクタ本体51内では下方に向け底板52から接触端子が突出していてその先端(下端)側は、後述のコネクタ10の回路基板の面に弾性的に接触する接触部(図示せず)が設けられている。上記相手コネクタ50の接触端子は信号端子とグランド端子とが混在して配列されており、上記コネクタ10の回路基板の一方の面に形成された伝送路用の接続部に対し、信号端子の接触部が、そして他方の面に形成されたグランド接続部に対してグランド端子の接触部が弾圧接触するようになっている。信号端子とグランド端子とは配列方向で半ピッチだけそれらの位置がずれていて、信号端子とグランド端子が上記コネクタ10の回路基板に対して一方の面と他方の面とで、千鳥状になる位置で接触する。
【0021】
上記相手コネクタ50のコネクタ本体51の外周面は、コネクタ10との嵌合の際の被案内面をなしており、四隅角部に被案内突部51A,51Bが設けられ、また図で左端面では、左右の誤嵌合防止のためのキー突部51Cが設けられている。なお、誤嵌合防止をさらに確実にならしめるために、上記被案内突部51A,51Bもその形状等が異なっている。さらに、上記コネクタ本体51の外側面の側部には、コネクタ10との嵌合係止のための係止突部51Dが設けられている。
【0022】
このように形成された相手コネクタ50(相手コネクタ60も同様)は、本発明の主眼とするところではなく、本発明の後述のコネクタ10の接続相手対象として説明したものであり、これ以上の説明は省略する。
【0023】
コネクタ10は、上コネクタ20と下コネクタ30とが連結して一つのコネクタとして形成されている。上コネクタ20は、絶縁材の上ケース21、下コネクタ30は絶縁材の下ケース31を有していて、上下から互いに嵌合結合されて、一つの四角筒ケース状のハウジング11をなしており、後述の回路基板を保持する保持部材として機能する。
【0024】
上記上ケース21と下ケース31はともに、上下に貫通して開口しており、両ケース21,31とが嵌合結合された状態のハウジング11が、高さ方向で上下ケース21,31の両方にわたり延びる高さ寸法の回路基板を複数枚、列をなして保持している。
【0025】
四角筒ケース状の上記ハウジング11は、その上下開口内面が既述の相手コネクタ50,60を受入嵌合する大きさ形状となっており、図示はされていないが、相手コネクタ50の係止突部51Dと係止して抜け防止を図る係止段部も内周面に設けられている。下方の相手コネクタ60も内周面に相手コネクタ60の係止突部61Dと係止する係止段部が設けられている。かかるハウジング11自体は、本発明の主眼とするところではなく、複数の回路基板を相手コネクタの接触端子と接続可能な位置で配列保持する機能を有しているということが理解されていれば十分なので、これ以上のハウジング11についての説明は省略する。
【0026】
ハウジング11内で配列保持されている回路基板40は、図2のごとく、上下方向に見たときに、ハウジング11の長手方向に定間隔で複数枚配置されており、各回路基板40は上下方向に延び、それらの上下縁部に、相手コネクタ50,60との電気的接続のための接続部が設けられている。
【0027】
各回路基板40は、図3に見られるような外観をなしており、電気絶縁材の母材板42の一方の面に設けられた信号伝送用の伝送路43と接続部44及びグランド路45、他方の面に設けられたグランドプレート46(図6にて説明)がそれぞれめっきで施された板状の基板本体41と、ペア伝送路43に取り付けられた後述の電気素子47及び保護カバー48とを有している。
【0028】
図4は上記基板本体41の一方の面にめっきにより設けられた信号用のペア伝送路43及び接続部44及びこれに接続された電気素子47とグランド路45を示す該一方の面についての概要図であり、図5は電気素子47を接続前の上記基板本体41の一方の面を示す詳細図、そして図6は該基板本体41の他方の面を示す図である。
【0029】
図5に見られるように、信号用のペア伝送路43は、隣接位置で対をなして上下に延びる二つの伝送路43A,43Bにより形成されている。このペア伝送路43は、図5の例では、基板幅方向(横方向)に間隔をもって五対設けられている。ペア伝送路43は図5では、上部と下部に分離して形成されているが、両者は基板本体41の他方の面を示す図6に見られるようにパッド43A−2,43B−2にそれぞれ形成されたビア(基板本体の両面に貫通して導通するための小孔)(図示せず)を通して基板本体41の両面が導通しており、上下方向では基板本体41の上縁そして下縁近傍まで連続している。
【0030】
なお、図5では電気素子47の図示が省略されているため、上部の伝送路43A、43Bは、その下端で不連続になっているように見えるが、ここは、図4に示されているように電気素子47により電気的に導通している。図5では、上述の五対のペア伝送路43は、上下方向中間位置で分離された位置にビアが形成されたパッド43A−1U,43B−1Uそしてパッド43A−1L,43B−1Lが設けられていて、上述のように、各ビアを通して、他面側のパッド43A−2,43B−2を仲介して、ペア伝送路43の上部と下部は一つの連続した伝送路をなしている。なお、五つのペア伝送路43についての、パッド43A−1U,43B−1U;43A−1L,43B−1L;43A−2,43B−2の位置には差異があるが、これは、図5において、信号の高速伝送そしてノイズの低減の目的から二つの伝送路線をペアとしてもつ差動ペア線路とするように、五つの差動ペア線路に、隣接する差動ペア同士間のクロストークを低減するために、基板本体41の板厚内で、ストレートペアとクロスペアとを交互に配して形成していることにもとづくものである。
【0031】
対をなすペア伝送路43の二つの伝送路43A,43Bは、基板本体41の上縁そして下縁にめっきでペアをなして設けられた接続部44(44A,44B)に導通しており、上下方向で、この接続部44と上記パッド43A−1U,43B−1U;43A−1L,43B−1Lの間で至近間隔をもって隣接しており、上記接続部44との連絡位置そしてパッド43A−1U,43B−1U;43A−1L,43B−1Lとの連絡移行範囲にてのみ、間隔が拡大されている。上記接続部44は、本発明の主眼とするところであり、後に再度詳述する。
【0032】
図5に見られるように、基板本体41の一方の面では、各ペア伝送路43同士間そして基板本体41の両側縁位置で上下に連続したグランド路45がめっきにより設けられている。すなわち、グランド路45は、各ペア伝送路43を挟むようにペア伝送路43の両側に位置している。各グランド路45には、基板本体41の他面側に設けられた後述するグランドプレート46との導通のために複数のビア45Aが形成されている。図5においては、グランド路45の領域内でパッド43A−1U,43B−1Uの近傍位置に円形の貫通孔41Bが基板本体41をその板厚方向に貫通して形成されているが、これは図4に示された保護カバー48の取付けのために使用される。
【0033】
保護カバー48は、図3に見られるように、基板本体41に対し上下方向で中間位置に設けられていて、基板本体41の一方の面におけるパッド43A−1U,43B−1U;43A−1Lの存在範囲を覆う蓋状に形成されている。保護カバー48は、絶縁材で作られていて、図3に見られるように、上記基板本体41の一方の面に面する平板部48Aと、両側の側板部48B,48Cとを有して、薄い蓋状をなしている。
【0034】
保護カバー48の平板部48Aには、基板本体41の伝送路43に取り付けられた電気素子47を接触して圧しないように窓状部48A―1が形成され、さらに窓状部48A−1を保護するために基板本体41の面から離間してもち上がって横方向に延びる保護帯部48A−2が上記平板部48Aに一体的に形成されている。側板部48Bと側板部48Cには、後述する基板本体41の側縁に設けられた突起を突出せしめるための切欠部48C−1,48C−2が形成されている。左方に位置する側板部48Bは右方に位置する側板部48Cよりも厚くなるように段条部をなしているが、これは、回路基板40がハウジング11の内壁に形成された所定の挿入溝に挿入配置される際に上記保護カバー48が上記挿入溝に案内挿入されるので、左縁と右縁とが向きを誤って挿入されないよう、厚さに差異をもたせている、という理由によるものである。保護カバー48は、平板部48Aから突出する短円柱状のボスを既述の貫通孔41Bに挿入させた後、超音波溶着等によりボスが軟化して貫通孔41Bを塞ぎその後の降温硬化により、基板本体41に固定される。
【0035】
基板本体41には、図3〜5に見られるように、両側縁に複数の突起が形成されているが、これらはハウジング11内での位置のために保護カバー48の切欠部48C−1,48C−2から突出するよう設けられているものであり、特に高さ方向中央位置で細かくしかも他の突起よりも突出量の大きい突起41Aは、ハウジング11をなす上ケース21と下ケース31とに上下から挟持されて、位置決めかつ保持されるための突起である。
【0036】
次に、本発明の主眼とする、接続部44について説明する。接続部44は、基板本体41の上縁そして下縁にめっきにより配列形成されていてペア伝送路43の上端そして下端と導通している。図7は、図4の回路基板40の下縁右部における一つのペア伝送路43(伝送路43A及び伝送路43B)に対応して設けられた二つの接続部44(44A,44B)付近についての拡大図である。図7において、二つの伝送路43A及び43Bのそれぞれは、その幅方向(図にて横方向)に近接して並行に配置されており、下端位置で若干伝送路自体の幅を拡げつつ、伝送路43A,43B同士の間隔をも拡げている。上記ペア伝送路43の両側には、グランド路45が位置している。
【0037】
伝送路43A,43Bの幅方向での中央位置を通る中央線L1A,L1B間の間隔dに対して、伝送路43A,43Bに対応する接続部44A,44Bの中央線L2A,L2B間の間隔dは、d>dという関係になっている。この関係におけるdとdとの比の値は、インピータン調整がなされるように、基板本体41の厚みにより適宜設定される。上記d>dなる関係は、既述のように、伝送路43A,43Bが接続部44A,44Bへ移行する範囲で、それ自体の幅、それらの間隔を拡げることにより実現される。
【0038】
接続部44A;44Bは、いずれも、枠状に形成されている。すなわち、いずれの接続部44A;44Bも、それらの幅方向両側縁に導電材で導電条部44A−1;44B−1を設け、両導電条部44A−1同士そして44B−1同士を下端側で連結条部44A−2そして44B−2で連結し、伝送路43A;43Bと相俟って四角な枠状を形成している。両導電条部44A−1同士間の距離(両導電条部44B−1同士間も同様)bは対応する伝送路43Aの幅bよりも大きい。しかしながら、本実施形態では、一つの導電条部44A−1の幅bは上記伝送路43Aの幅bよりも小さい。連結条部44A−2,44B−2の帯幅(図7で、高さ方向寸法b)は、上記幅b,b,bとの関係で限定されないが、好ましくは、bに近い値とする。かくして、接続部44A;44Bは、上記両導電条部44A−1;両導電条部44B−1そして連結条部44A−2;44B−2によって形成される。本発明において、接続部44A,44Bは、両導電条部44A−1そして両導電条部44B−1の存在を必須とするが、連結条部44A−2;44B−2は必須ではなく、両導電条部44A−1は下端で連結されてなくてもよい。しかしながら、両導電条部44A−1;44B−1の基板本体1による保持強度を高めるためには、連結部44A−2;44B−2の存在は望まれる。両導電条部44B−1も同様である。
【0039】
上記枠状に形成された接続部44A;44Bはそれらの枠内の領域は、基板本体41の母材板42の面そのものであり、絶縁域42A;42Bとなっており、図7におけるVIII―VIII断面である図8に見られるように、絶縁域42A;42Bは導電条部44A−1;44B−1よりも没している。かくして、相手接続材の接触端子が上記接続部44A;44Bに対して、基板本体41の厚み方向で弾性圧をもって接触する際に、確実に導電条部44A−1;44B−1と接触するようになる。しかも、その際、相手接続材の接触端子に対する導電条部44A−1;44B−1の接触面積は、上記絶縁域42A;42Bの存在により小さいものとなり、接触圧が高められ、接触信頼性向上する。これと共に、すべての接続部44を形成する際のめっき総面積を小さくし、めっきコストを低減できる。なお、上記絶縁縁42A;42Bは、導電条部44A−1;44B−1と相手接続材の接触端子との接触を阻害しない限り、また接触圧を適正値よりも減じない限り、上記導電条部44A−1;44B−1と同一もしくは同一近くのレベル面とすることもできる。図示の実施形態では、接続部44A,44Bは、それらの両側にのみ導電条部44A−1;44B−1を設けたが、中間に他の導電条部を設け、例えば、平行に三つの導電条部が存在するようにしてもよい。この場合も、中間の導電条部も連結条部44A−2;44Bと連結していることが好ましい。
【0040】
既述したように、基板本体41は、一方の面にペア伝送路43等が形成されていると共に、他方の面には、図6に見られるように、グランドプレート46が設けられている。該グランドプレート46は、上記ペア伝送路43等と同様、基板本体41の母材板42上にめっきにより形成されていて、きわめて限られた除外部分以外は、母材板42の全面にわたる範囲に及んでいる。このグランドプレート46が形成されていない上記除外部分とは、母材板42の周囲縁のシールド不要な狭い領域、パッド43A−2,43B−2の存在域、保護カバー48の固定のための貫通孔41Bの部分、そして、後述するグランド接続部における限定域である。
【0041】
上記グランドプレート46は、図5にて基板本体41の一方の面に形成されているペア伝送路43のための複数の接続部44が存在する上下方向そして幅方向をカバーする範囲に対応する範囲で、基板本体41の他方の面にグランド接続部49が存在している。図6に見られるように、グランド接続部49は、略櫛歯状をなしていて、グランドプレート46の存在部分と不存在部分とが交互に繰り返し形成されている。この状況を、図6でのVIII−VIII断面として示す図8に見られるように、グランド接続部49は、幅広で相手接続部材のグランド接触端子と接触するための主部49Aと、幅狭の副部49Bとが交互に配置される。主部49Aは、図8に見られるように、基板本体41の一方の面に形成された接続部44(44A,44B)に対し、他方の面で千鳥状をなす位置に設けられている。例えば図8にて、中央に位置する主部49Aは、接続部44Aが有する二つの導電条部44A−1のうちの右方の導電条部44A−1(2)と、隣接する接続部44Bが有する二つの導電条部44B−1の左方のうちの導電条部44B−1(1)とをまたがる範囲に位置している。副部49Bは、上記接続部44Aの左方の導電条部44A−1(1)に対応し、また導電条部44B−1(2)に対応して、それぞれ位置し、導電条部に対してのシールドとしての機能を果たしている。したがって副部49Bは相手接続部材のグランド接触端子とは接触する役目は担っていない。主部49Aと副部49Bとの間は、グランド接続部49の部分が存在しておらず、絶縁域49Cを形成し、幅方向にて接続部44の絶縁域42Aに対応して位置している。シールドとして機能する副部49Bを設けつつも、上記絶縁域49Cを設けることにより、グランドプレート46をめっきで形成する際、全体として、めっき領域を低減させることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 (電気)コネクタ 44A,44B 接続部
11 保持部材(ハウジング) 44A−1,44B−1 導電条部
40 回路部材(回路基板) 44A−2,44B−2 連結条部
42A 絶縁域 45 グランド路
43 ペア伝送路 46 グランドプレート
43A,43B 伝送路 49 グランド接続部
44 (ペア)接続部 49C 絶縁域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8