特許第6190433号(P6190433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190433
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/46 20060101AFI20170821BHJP
   B01D 29/66 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B01D29/46 A
   B01D29/38 510D
   B01D29/38 520A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-201807(P2015-201807)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-74533(P2017-74533A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】510307657
【氏名又は名称】株式会社新栄重機
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 政宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】岩永 陽二朗
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−042312(JP,A)
【文献】 特開2010−234291(JP,A)
【文献】 特開平09−024214(JP,A)
【文献】 特開2013−226499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/00−29/48
B04C 1/00−11/00
C02F 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒軸方向を鉛直方向と一致させた円筒状の濾過室と、前記濾過室の下方にこれと連通して形成されたドレン室と、を少なくとも有するケーシングと、
一端部が開口した円筒状をなし、前記濾過室内に前記一端部を前記ドレン室側に向けた姿勢で同軸状に配設された濾過エレメントと、
前記濾過室において、前記一端部側から前記濾過エレメントの内側にスラッジを含む液状体を流入するとともに、前記濾過エレメントを通過した前記液状体を前記濾過エレメントの外側から流出する流入流出手段と、を備え、
前記濾過エレメントは、その側面に、軸線方向を鉛直方向に沿わせた複数のウェッジワイヤを、楔形尖端部を周方向外側に向けるとともに、楔形底面部を周方向内側に向けた姿勢で、間隙を有して配列したウェッジワイヤフィルタを備え、
前記流入流出手段は、前記液状体に前記ウェッジワイヤの配列方向に沿って流れる旋回流を生じさせつつ、前記間隙から前記液状体を前記濾過エレメントの周方向内側から外側に向けて通過させる構成であり、
前記濾過エレメントの上方から流体を流入し、前記間隙から前記液状体を前記濾過エレメントの外側から内側に向けて通過させ、前記濾過エレメントに堆積した前記スラッジを剥離する構成である逆洗手段を更に備え、
前記濾過エレメントは、前記一端部とは反対側に位置する他端部において、軸線方向を水平方向に沿わせた複数のウェッジワイヤを、楔形尖端部を上側に向けるとともに、楔形底面部を下側に向けた姿勢で、間隙を有して配列した他端部側ウェッジワイヤフィルタを備えることを特徴とする濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、濾過装置として、下記特許文献1のものが知られている。下記特許文献1には、フィルターエレメント(濾過エレメント)を備える、使用済みクーラント液の濾過装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−297643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の濾過装置においては、濾過エレメントに目詰まりが生じると、その都度、逆流洗浄を行うことを余儀なくされるという問題がある。また、逆流洗浄によっても濾過エレメントの目詰まりを解消できない場合には、濾過エレメントをケーシングから取り外して、高圧洗浄にて濾過面を回復したり、濾過エレメントを交換したりすることを余儀なくされるという問題がある。
【0005】
本願発明者らは、鋭意研究した結果、濾過対象物である異物を含む流体の流れと、濾過エレメントの形状を適宜設計することで、濾過エレメントが目詰りし難い濾過装置を実現することができることを新たに見出した。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、濾過エレメントが目詰りし難い濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の濾過装置は、筒軸方向を鉛直方向と一致させた円筒状の濾過室と、前記濾過室の下方にこれと連通して形成されたドレン室と、を少なくとも有するケーシングと、一端部が開口した円筒状をなし、前記濾過室内に前記一端部を前記ドレン室側に向けた姿勢で同軸状に配設された濾過エレメントと、前記濾過室において、前記一端部側から前記濾過エレメントの内側にスラッジを含む液状体を流入するとともに、前記濾過エレメントを通過した前記液状体を前記濾過エレメントの外側から流出する流入流出手段と、を備え、前記濾過エレメントは、その側面に、軸線方向を鉛直方向に沿わせた複数のウェッジワイヤを、楔形尖端部を周方向外側に向けるとともに、楔形底面部を周方向内側に向けた姿勢で、間隙を有して配列したウェッジワイヤフィルタを備え、前記流入流出手段は、前記液状体に前記ウェッジワイヤの配列方向に沿って流れる旋回流を生じさせつつ、前記間隙から前記液状体を前記濾過エレメントの周方向内側から外側に向けて通過させる構成である。
【0008】
本発明によれば、液状体がウェッジワイヤの配列方向に沿って流れる旋回流を生じるから、スラッジがウェッジワイヤフィルタの間隙に挟まり難く、また、液状体と分離されたスラッジを、鉛直方向に延びるウェッジワイヤの楔形底面部に沿って落下させ、ドレン室に溜ることができる。この結果、目詰まりし難い濾過装置を提供することができる。
【0009】
上記構成において、前記濾過エレメントの上方から流体を流入し、前記間隙から前記液状体を前記濾過エレメントの外側から内側に向けて通過させ、前記濾過エレメントに堆積した前記スラッジを剥離する構成である逆洗手段を更に備えていてもよい。このような構成によれば、逆洗時に、鉛直方向に沿って流れる液状体によりスラッジを剥離することができ、剥離したスラッジをドレン室から、好適に、排出することができる。
【0010】
上記構成において、前記濾過エレメントは、前記一端部とは反対側に位置する他端部において、軸線方向を水平方向に沿わせた複数のウェッジワイヤを、楔形尖端部を上側に向けるとともに、楔形底面部を下側に向けた姿勢で、間隙を有して配列した他端部側ウェッジワイヤフィルタを備えていてもよい。このような構成によれば、逆洗時に、他端部側ウェッジワイヤフィルタの間隙から液状体を濾過エレメント内に流入させることができ、特に、スラッジが堆積し易い濾過エレメントの上部を好適に洗浄することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、濾過エレメントが目詰りし難い濾過装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る濾過装置を示す模式図
図2図1の濾過装置におけるケーシングを一部切り欠いて示す拡大図
図3】濾過装置を示す断面図(図2のIII−III線で切断した図に対応)
図4】濾過エレメントを示す分解斜視図
図5】逆洗手段の作用を模式的に表す説明図
図6】本発明の実施形態2に係る濾過装置におけるケーシングを一部切り欠いて示す拡大図
図7】流入流出手段と逆洗手段の作用をそれぞれ模式的に表す説明図
図8】逆洗手段の作用を模式的に表す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図5によって説明する。各図の一部には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、Z軸方向が鉛直方向と一致している。図1は、濾過装置10の全体的な構成を示す側面図である。本実施形態では、濾過装置10として、使用済みクーラント液(スラッジ15を含む液状体)を処理するものを例示する。スラッジ15は、被加工物あるいは加工機等から生じた固体粒子、油分、及びこれらが混合した粘性を有する粒状体等からなる。
【0014】
濾過装置10は、図1及び図2に示すように、ケーシング20と、濾過エレメント30と、流入流出手段50と、逆洗手段60と、を備えて構成されている。また、濾過装置10は、流入流出手段50と逆洗手段60を制御する制御部や各種計器類(ともに不図示)と、を更に備えて構成されている。この濾過装置10は、処理対象物であるクーラント液を溜めおくタンク(不図示)や、濾過装置10から排出された残渣を溜めるタンクと共に使用される。
【0015】
ケーシング20は、図2に示すように、筒軸方向を鉛直方向と一致させた円筒状の濾過室21と、濾過室21の下方にこれと連通して形成されたドレン室25と、を少なくとも有する。ドレン室25は、円錐筒状をなし、鉛直方向下方に向かうにつれて、縮径する形をなす。濾過室21の上方には、これと連通して形成された上部空間27が設けられている。上部空間27は、円錐筒状をなし、鉛直方向上方に向かうにつれて、縮径する形をなす。
【0016】
濾過エレメント30は、図2に示すように、一端部31が開口した円筒状をなし、濾過室21内に一端部31をドレン室25側に向けた姿勢で同軸状に配設されている。詳細には、濾過エレメント30は、一端部31側が濾過室21に設けられた円環状の隔壁23に着脱自在に取り付けられている。このような構成により、濾過エレメント30は、その内面がスラッジ15を分離するための濾過面を構成している。
【0017】
濾過エレメント30は、図2及び図4に示すように、その側面32と上面33(一端部31とは反対側に位置する他端部)に、ウェッジワイヤフィルタ40A,40Bを備える。以下の説明では、側面32に配されたウェッジワイヤフィルタをウェッジワイヤフィルタ40Aと呼び、上面33に配されたウェッジワイヤフィルタを他端部側ウェッジワイヤフィルタ40Bと呼んでこれらを区別する。また、濾過エレメント30は、他端部側ウェッジワイヤフィルタ40Bと重なる形をなすパンチング板35と、パンチング板35の上面に設けられた取手36と、パンチング板35、ウェッジワイヤフィルタ40A,40Bを互いに組み付けるリング状部材37と、を更に備える。
【0018】
ウェッジワイヤフィルタ40Aは、図3及び図4に示すように、軸線方向を鉛直方向に沿わせた複数のウェッジワイヤ41Aを、楔形尖端部42Aを周方向外側に向けるとともに、楔形底面部43Aを周方向内側に向けた姿勢で、間隙44Aを有して配列した構成とされている。楔形底面部43Aの幅寸法は、0.25〜1mm程度に設定することが好ましく、0.25〜0.5mm程度に設定されることが特に好ましい。また、間隙44Aの幅寸法は、スラッジ15の除去率と、目詰まりのし難さの観点から、5〜200μm程度に設定することが好ましく、20〜50μm程度に設定されることが特に好ましい。各ウェッジワイヤ41Aは、濾過エレメント30の周方向外側においてウェッジワイヤ41Aと直交する方向(水平方向)に沿って延設された複数の環状のサポートロッド46Aで支持されている。本実施形態では、サポートロッド46Aが濾過エレメント30の周方向外側に配されているから、濾過面側において、クーラント液の流れがサポートロッド46Aによって妨げたり、ドレン室25側に排出されるスラッジ15がサポートロッド46Aに引っ掛かったりすることがない。言い換えれば、ウェッジワイヤフィルタ40Aは、楔形底面部43Aで構成されたフラット状をなす濾過面に、鉛直方向に沿って長手状をなす間隙44Aが並列して設けられた構成とされている。
【0019】
他端部側ウェッジワイヤフィルタ40Bは、図4に示すように、軸線方向を水平方向に沿わせた複数のウェッジワイヤ41Bを、楔形尖端部42Bを上側に向けるとともに、楔形底面部43Bを下側に向けた姿勢で、間隙44Bを有して配列した構成とされている。なお、楔形底面部43B及び間隙44Bの幅寸法は、それぞれ楔形底面部43A及び間隙44Aの幅寸法と同様とされている。各ウェッジワイヤ41Bは、濾過エレメント30の外側(上側)においてウェッジワイヤ41Bと直交する方向に沿って延設された複数のサポートロッド46Bで支持されている。
【0020】
流入流出手段50は、図3に示すように、濾過室21において、一端部31側から濾過エレメント30の内側にスラッジ15を含むクーラント液を流入するとともに、濾過エレメント30を通過したクーラント液を濾過エレメント30の外側から流出するものである。流入流出手段50は、クーラント液にウェッジワイヤ41Aの配列方向に沿って流れる旋回流を生じさせつつ、間隙44Aから液状体を濾過エレメント30の周方向内側から外側に向けて通過させる。具体的には、流入流出手段50は、濾過室21の内周面22と、隔壁23より下方に開口し、スラッジ15を含む液状体を濾過室21内に流入する流入管51と、隔壁23より上方に開口し、処理された液状体を濾過室21から流出する流出管53と、を備えて構成されている。流入管51は、管軸が濾過室21の内周面22に対して接線方向に延びる姿勢で配されている。流入管51には、ポンプPによって供給された、使用済みクーラント液が流通する。このような構成により、流入管51から流入するクーラント液に、濾過室21の内周面22に沿った旋回流を発生させることが可能となっている。なお、図3における白抜き矢印は、濾過運転時のクーラント液の流れを示す。一方、流出管53は、管軸が濾過室21の内周面22に対して法線方向に延びる姿勢で配されている。さらに、流入管51と流出管53とは、互いに直交する姿勢で配されている。なお、流出管53には、後述する逆洗手段60による逆流洗浄に先立って、加圧エアにより濾過室21において濾過エレメント30の外側に溜まった濾液を抜くための液抜き管53Aが接続されている(図1参照)。
【0021】
逆洗手段60は、図2に示すように、濾過エレメント30の上方から流体(本実施形態では、加圧エア)を流入し、間隙44A,44Bからクーラント液を濾過エレメント30の外側から内側に向けて通過させ、濾過エレメント30に堆積したスラッジ15を剥離する構成である。具体的には、逆洗手段60は、上部空間27の天井面に配されたエア吹込口61と、ドレン室25の底面に配された残渣排出口63と、を備えて構成されている。本実施形態では、エア吹込口61からのエアの吹き込み方向、残渣排出口63からのクーラント液及び残渣の排出方向、ウェッジワイヤ41Bの軸線及び間隙44Bの延びる方向が、すべて鉛直方向下向きに設定されている。このエア吹込口61は、ケーシング20の上部空間27に集まった、クーラント液より比重が軽いスラッジ15を排出するための排出口としても機能させることができる。なお、濾過運転する際には、エア吹込口61及び残渣排出口63は閉じておく。
【0022】
続いて、本実施形態の作用・効果について説明する。
濾過装置10の濾過運転時の作用として、まず、スラッジ15のうち、特に目詰まりし易い、粘性を有する粒状体の挙動について説明する。図3に示すように、スラッジ15を含むクーラント液は、流入流出手段50により旋回流を生じて、ウェッジワイヤフィルタ40Aの濾過面に沿って流れる。すると、ウェッジワイヤフィルタ40Aの間隙44Aより大きいスラッジ15がウェッジワイヤフィルタ40Aの内側に留まる一方、クーラント液が間隙44Aを通過してウェッジワイヤフィルタ40Aの外側に流れ出る。この際、スラッジ15に、ウェッジワイヤフィルタ40Aの外側に向く力が作用すると、スラッジ15は一部が変形しつつ、間隙44A内に陥入する形となり、間隙44Aを目詰まりさせる要因となる。本実施形態では、スラッジ15には、クーラント液の旋回流により、これを濾過面から引き剥がす方向に力が作用するから、スラッジ15が間隙44A内に陥入する形となり難い。
【0023】
ところで、仮に、比較例1として、濾過エレメントの側面を構成する部分が平織金網とされる場合には、一般的に、同じ径の異物を除去可能なウェッジワイヤフィルタ40Aに比べて濾過面における濾過エレメントの表面積が大きくなる傾向にある。この結果、比較例1の濾過エレメントを備える濾過装置は、濾過エレメントとスラッジ15との接触面積が大きくなり、スラッジ15が網目に目詰まりし易かった。一方、本実施形態では、比較例1の濾過エレメントに比べて、濾過エレメント30とスラッジ15との接触面積を低減することで、濾過エレメント30が間隙44Aに目詰まりし難い構成を実現している。さらに、比較例1の濾過エレメントでは、網目の径を小さくしようとする程、その線径を細くせざるを得ず、粘性があり大容量の処理を要求される工業用排水等の処理には強度的に不向きであるといった問題がある。一方、本実施形態の濾過エレメント30では、間隙44Aの幅寸法を小さくする場合であっても、ウェッジワイヤ41Aを十分な線径とすることができ、また、間隙44Aが小さくなればウェッジワイヤ41Aの本数が増えることで、濾過エレメント30の強度が増す結果となり、そのような問題が生じる虞がない。
【0024】
また、仮に、比較例2として、濾過エレメントの側面を構成するウェッジワイヤがその軸線を水平方向に沿わせて配列されている場合には、その間隙が旋回流に沿って延びることになるため、一部が間隙に嵌まり込んだスラッジ15は、旋回流に沿って移動しつつ、さらに間隙の奥方に嵌まり込んでいくこととなる。一方、本実施形態では、仮に、間隙44にスラッジ15の一部が嵌まり込んだとしても、当該スラッジ15が旋回流に沿って移動することにより、隣接するウェッジワイヤ41Aの楔形底面部43Aに乗り上げる形で、間隙44Aへのさらなる陥入が規制される。つまり、本実施形態では、スラッジ15と濾過エレメント30の間隙44Aとの接触確率が、ウェッジワイヤがその軸線を水平方向に沿わせて配列されている濾過エレメントに比べて低減されることで、間隙44Aが目詰まりし難い構成を実現している。さらに、比較例2の濾過エレメントでは、ウェッジワイヤが逆洗運転時の逆洗流の流れを妨げる形となるため、逆洗効率が低下する虞があるが、本実施形態では、そのような問題が生じる虞がない。
【0025】
そして、クーラント液の旋回流により、濾過面から引き剥がされたスラッジ15は、ドレン室25に向けて落下する。この時、ウェッジワイヤ41Aの楔形底面部43A及び間隙44Aには、スラッジ15が引っ掛かるような構造物が設けられていないから、スラッジ15がスムーズにドレン室25に向けて移動する。ケーシング20内において、クーラント液とともに移動するスラッジ15には、遠心力と、圧力勾配によって生じる向心力とが作用するが、ドレン室25の底面付近では、摩擦による遠心力の低下により、スラッジ15がその回転軸に向けて移動する。そして、ドレン室25は、鉛直方向下方に向かうにつれて、縮径する形をなすとともに、その底面に残渣排出口63を有するから、スラッジ15を好適に残渣排出口63上部に局部的に滞留させて、外部に排出することが可能となっている。
【0026】
次に、濾過エレメント30の間隙44A,44Bより小径のスラッジ15及び油分からなるスラッジ15の挙動について説明する。このようなスラッジ15は、間隙44A,44Bを通過して、濾過エレメント30の外側に移動することとなる。これらのスラッジ15にはクーラント液より比重が低い浮上性のものがあり、浮上性のスラッジ15は上部空間27に溜まる。そして、上部空間27に溜まったスラッジ15は、エア吹込口61に接続された排出経路から外部に排出することが可能となっている。
【0027】
本実施形態では、上述のような作用により、濾過エレメント30が目詰まりし難い濾過装置10を提供することができる。この結果、濾過装置10における逆洗運転の頻度、及び、逆洗運転によっても取り除けないスラッジ15に対応するべく、濾過エレメント30を取り外しメンテナンスする頻度を低減して、濾過装置10を長期運転することが可能となっている。なお、濾過装置10で濾液として得られたクーラント液はそのまま再利用してもよく、さらに清浄なものとするために、循環運転により、再度、濾過装置10で濾過してもよい。
【0028】
次に、濾過装置10の逆洗運転時の作用について説明する。逆洗運転を行う際には、流入流出手段50を停止して、流入管51及び流出管53のバルブを閉める。この状態で、エア吹込口61から加圧エアをケーシング20内に吹き込み加圧した直後、残渣排出口63を開放する。すると、図5に示すように、ケーシング20内のクーラント液が逆洗流となって、鉛直方向上側から下側、かつ、濾過エレメント30の外側から内側に向かって勢いよく流れる。この際、ウェッジワイヤフィルタ40A,40Bは、濾過エレメント30の外側から内側に向かうにつれて間隙44A,44Bが縮径する形とされるから、楔形尖端部42A,42B側に比べて楔形底面部43A,43B側における逆洗流の流速が早くなる。すると、濾過エレメント30の濾過面に粘着したスラッジ15は、逆洗流により濾過面から引き剥がされて、クーラント液とともに残渣排出口63から外部に排出される。なお、本実施形態では、間隙44Aが鉛直方向に沿って延びる形とされるとともに、残渣排出口63が鉛直方向下側に配設されており、エア吹込口61から加圧エアを吹き込まない場合であっても、残渣排出口63を開放して、ケーシング20内の液状体を下方に排出することで、所定の逆洗性能を発揮可能とされている。
【0029】
ところで、濾過装置10の濾過運転時において、濾過エレメント30の上部では、濾過エレメント30の下部に比べてクーラント液の旋回流が弱まり、スラッジ15が目詰まりしやすくなっている。本実施形態では、濾過エレメント30の上面33が他端部側ウェッジワイヤフィルタ40B及びパンチング板35によってクーラント液が流入出可能とされるから、間隙44B及びパンチング板35の孔を介して逆洗流が濾過エレメント30の上部に流入して、他端部側ウェッジワイヤフィルタ40Bやウェッジワイヤフィルタ40Aの上部に付着したスラッジ15を、好適に剥離可能となっている。
【0030】
本実施形態では、上述のような作用により、逆洗時に、鉛直方向に沿って流れるクーラント液によりスラッジ15を剥離することができ、剥離したスラッジ15をドレン室25から、好適に、排出することができる。また、本実施形態では、上述のような作用により、逆洗時に、特に、スラッジ15が堆積し易い濾過エレメント30の上部を好適に洗浄することができる。
【0031】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図6から図8を用いて説明する。この実施形態2では、実施形態1の流出管53と位置が異なる流出管153を備えて構成される流入流出手段150と、エア吹込口61に加えて第2のエア吹込口165を備える逆洗手段160を備える濾過装置110について例示する。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0032】
流出管153は、図6及び図7に示すように、管軸が濾過室21の内周面22に対して接線方向に延びる姿勢で配されている。さらに、流入管51と流出管153は、ケーシング20の同じ側において、互いに平行する姿勢で配されている。このような構成により、流入流出手段150は、クーラント液の旋回流を、流入管51からの流入のみならず、流出管153への流出によっても、発生することが可能となっている。また、この流出管153は、後述する第2のエア吹込口165からの加圧エアの吹き込みにより、濾過室21における隔壁23の上部において舞い上がった異物を排出するための排出口としても機能させることができる。
【0033】
第2のエア吹込口165は、図6及び図7に示すように、濾過室21の上部において、管軸が濾過室21の内周面22に対して接線方向に延びる姿勢で配されるとともに、そのエアの吹き込み方向が、濾過運転時におけるクーラント液の旋回流(図7(A)参照)とは逆方向の流線(図7(B)参照)を形成するように設けられている。なお、逆洗運転における第2のエア吹込口165からの加圧エアの吹き込みは、エア吹込口61と同時に行ってもよく、これとは別に単独で行ってもよい。
【0034】
本実施形態では、第2のエア吹込口165からのエアの吹き込みにより、逆洗運転時に、濾過エレメント30に付着したスラッジ15に対して鉛直方向のみならず、水平方向に向けて引き剥がすような逆洗流を作用させることができる。具体的には、濾過運転時において、濾過エレメント30に付着したスラッジ15は、図8の1点鎖線矢印で示すクーラント液の旋回流により、ウェッジワイヤ41Aにおける旋回流の進行方向後側に位置する面に引っ掛かっている状態であると推測される。このような濾過エレメント30を、濾過運転時における旋回流とは逆向きの逆洗流(図8の白抜き点線矢印)によって逆洗することで、好適に、スラッジ15のウェッジワイヤ41Aへの引っ掛かりを取り除くことが可能となる。この結果、逆洗手段160による逆洗効率を向上することができる。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
(1)上記実施形態では、濾過装置で処理するスラッジを含む液状体として、使用済みクーラント液を例示したが、処理対象物はこれに限られない。
【0037】
(2)上記実施形態では、逆洗手段において流入される流体として加圧エアを例示したが、これに限られない。例えば、流入される流体は液体であってもよい。
【0038】
(3)上記実施形態では、ケーシングが、円錐筒状の上部空間を有する構成を例示したが、上部空間を有しない構成も本願発明に含まれる。
【0039】
(4)上記実施形態では、濾過エレメントが他端部側ウェッジワイヤフィルタを備える構成を例示したが、これに限られない。例えば、濾過エレメントは、その上部が間隙を有しないプレートで閉塞されていてもよい。
【0040】
(5)上記実施形態以外にも、エア吹き込み口をケーシングの壁面に複数設け、高圧洗浄ノズルの取付口として利用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10,110…濾過装置、15…スラッジ、20…ケーシング、21…濾過室、22…内周面、23…隔壁、25…ドレン室、27…上部空間、30…濾過エレメント、30A…濾過エレメント、31…一端部、32…側面、33…上面(他端部)、35…パンチング板、36…取手、37…リング状部材、40A,40B…ウェッジワイヤフィルタ、41A,41B…ウェッジワイヤ、42A,42B…楔形尖端部、43A,43B…楔形底面部、44A,44B…間隙、46A…サポートロッド、50,150…流入流出手段、51…流入管、53,153…流出管、53A…液抜き管、60,160…逆洗手段、61…エア吹込口、63…残渣排出口、165…エア吹込口、P…ポンプ
図1
図2
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図8