(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190451
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】埋め込み型血液ポンプの銀線巻きモータステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/14 20060101AFI20170821BHJP
A61M 1/12 20060101ALI20170821BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20170821BHJP
F04D 7/04 20060101ALI20170821BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20170821BHJP
F04D 7/02 20060101ALI20170821BHJP
F04D 1/04 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
H02K7/14 B
A61M1/12 100
F04D29/00 B
F04D7/04 A
F04D29/42 B
F04D7/02 Z
F04D1/04
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-511767(P2015-511767)
(86)(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公表番号】特表2015-519863(P2015-519863A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】US2013040590
(87)【国際公開番号】WO2013170179
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年4月19日
(31)【優先権主張番号】61/646,028
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517132164
【氏名又は名称】ハートウェア,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HEARTWARE,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】ラローズ,ジェフリー・エイ
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−525871(JP,A)
【文献】
特表2007−535984(JP,A)
【文献】
特開2004−073725(JP,A)
【文献】
特表2002−532047(JP,A)
【文献】
特開昭59−177059(JP,A)
【文献】
実開昭62−061144(JP,U)
【文献】
特開平11−241695(JP,A)
【文献】
特開平10−179729(JP,A)
【文献】
特開2004−351213(JP,A)
【文献】
特開平11−123239(JP,A)
【文献】
特表平11−504549(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0311383(US,A1)
【文献】
特開2000−229125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/14
A61M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を形成するハウジングと、
前記流路内に配置されるロータと、
前記ハウジングの外部に配置されるステータを含むモータと
を備え、
前記ステータが、一定の長さの銀ワイヤであって、血液ポンプの一部の最外周領域を形成する銀ワイヤを含み、
前記ステータが、患者に埋め込んだときに体液に晒されて該体液に直接接触するように構成されている、埋め込み型の血液ポンプ。
【請求項2】
前記血液ポンプが遠心式渦巻血液ポンプとなっている、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項3】
前記血液ポンプが軸流式血液ポンプとなっている、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項4】
前記銀ワイヤが、前記ハウジングの外部にてコイルとして配置され、
前記銀ワイヤが、適切な電流を維持するように前記コイルの隣接部分の分離状態を保つ構成である絶縁カバーによって実質的に包囲されており、かつ前記銀ワイヤと前記体液との接触を防止しないようになっている、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項5】
ハウジングと、
該ハウジング内で回転するように取り付けられるロータと、
前記ハウジングの外部に配置され、かつ前記ハウジング上に取り付けられる少なくとも1つのステータを含むモータと
を備え、
前記ステータが、患者に埋め込んだときに血液ポンプの一部の最外周領域を形成する銀ワイヤコイルを含んでいる、埋め込み型の血液ポンプ。
【請求項6】
前記血液ポンプを埋め込むと、前記ステータが体液に晒されて該体液に直接接触するようになっている、請求項5に記載の血液ポンプ。
【請求項7】
前記血液ポンプが遠心式渦巻血液ポンプとなっている、請求項5に記載の血液ポンプ。
【請求項8】
前記血液ポンプが軸流式血液ポンプとなっている、請求項5に記載の血液ポンプ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのステータが2個のステータを含むようになっている、請求項5に記載の血液ポンプ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのステータが3個以上のステータを含むようになっている、請求項5に記載の血液ポンプ。
【請求項11】
前記銀ワイヤが、適切な電流を維持するように前記コイルの隣接部分の分離状態を保つ構成である絶縁シースによって実質的に包囲されており、かつ前記銀ワイヤと前記体液との接触を防止しないようになっている、請求項6に記載の血液ポンプ。
【請求項12】
前記銀ワイヤの長さが誘電体基板上に積層された導電経路となっている、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項13】
前記銀ワイヤの長さが誘電体基板上に積層された導電経路となっている、請求項5に記載の血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
埋め込み型血液ポンプは、通常、心臓疾患の後期ステージにて又は心臓に外傷が及んだ後にて、心臓自体が極めて弱っている状態、又はその他には、心臓自体が十分高い血圧を発生させることによって血液循環を生じさせる身体機能を維持することができない状態にて使用されている。
【0002】
血液ポンプについては種々のものが、既に使用に供されていて、損傷した心臓又は疾患を有する心臓の血液ポンプ作用を強化するか、又は血液ポンプ作用の代わりを果たすようになっている。血液ポンプは、広くは3つの状況において、すなわち、(1)心肺蘇生術と共に緊急輸血をしている状況、(2)手術後、心臓が回復するのを待機している状態で短時間に緊急輸血をしている状況、又は(3)患者を、心臓移植を待機している状態でつなぎとして生かし続けている状況において使用されている。これらのポンプは、右心室補助又は左心室補助のうちの少なくとも一方を行うように構成することができるが、左心室が右心室よりも疾患になり易く又は損傷を受け易いということが広く一般的に知られているために、最も一般的には左心室補助に適用されている。
【0003】
埋め込み型血液ポンプは、患者の血管系に位置するように又は血管系に隣接するように、経皮的又は外科的に挿入されることによって、通常、右心系補助若しくは左心系補助を行うか、又は心臓全体の機能を補助する場合がある。様々な種類の血液ポンプには、遠心式渦巻ポンプ及び軸流式ポンプが含まれている。このようなポンプは、通常、磁力又は電磁力を使用して、例えば、心臓内に流れ込むか若しくは心臓から流れ出す血液の流路内に配置されるか又は流路に隣接して配置される磁気ロータを駆動するようになっている。そして、少なくとも1つの電磁石又はステータが流路を収容する管状のケーシングの外周に配置されるのに対して、ロータは当該ケーシングの内部に配置されている。
【0004】
また、ロータは磁気ロータとなっており、ステータは、通常、一式の導電性ワイヤコイルとなっている。ロータは、電源によって交流電流がこれらのコイルを流れて回転磁場を形成することに伴って作動するようになっている。すなわち、当該磁場は、管状のケーシングの軸線に対して直交する方向に配向され、磁場の方向は、ケーシングの軸線の回りを回転するようになっている。磁場が回転すると、ロータが当該ロータの軸の回りを回転することによって、血液が流路内を流れることとなる。電源は、患者の身体における一定の部位に埋め込むことができ、又は本技術分野にて周知のように患者の外部に配置することができる。
【0005】
このようなポンプについて特許文献1に開示される1つのものは遠心式ポンプとなっており、かかる特許文献1の内容全体は、本明細書にて参照されることによって、本明細書にて全てが開示されるものとして本明細書に組み込まれるものとする。特許文献1の
図3及び
図7は、本明細書にて
図1及び
図2として再現されている。
図1及び
図2は遠心式埋め込み型血液ポンプを示しており、遠心式埋め込み型血液ポンプは、血液を装置内に流すように構成された流路を形成するハウジング14を含んでいる。かかる装置は、金属ワイヤコイル又は巻線57を有するステータ56をさらに含んでいる。このようなステータに共通して使用される金属は銅ワイヤとなっている。ステータの周りには、密閉状態をステータの周りに形成する第2のハウジング12が設けられ、当該ポンプを必要としている患者にポンプが一旦埋め込まれると、第2のハウジング12は、周りの体液がステータに接触することを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7575423号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在の埋め込み型血液ポンプは、当該ポンプを必要としている患者に非常に多くの利点をもたらすが、このような装置を、当該装置を必要としているさらに広範な患者が利用することができることの他に、現在の装置に対して改良を行えば、患者にさらに多くの利点をもたらすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る1つの実施形態によれば、埋め込み型血液ポンプは、流路を形成するハウジングと、前記流路内に配置されるロータと、前記ハウジングの外部に配置されるステータを含むモータとを備え、前記ステータが一定の長さの銀ワイヤを含み、該銀ワイヤは、前記血液ポンプを必要としている患者に前記血液ポンプを一旦埋め込もうとする状態になると、気密部(hermetically sealed compartment)内に位置しないように構成されている。
【0009】
この血液ポンプのステータは体液に晒されて該体液に直接接触することができる。本実施形態に係る血液ポンプは、遠心式渦巻血液ポンプ、渦巻型血液ポンプ等とすることができる。さらに、前記銀ワイヤの略全体を絶縁カバーによって包囲することができる。
【0010】
本発明はさらに、別の実施形態によれば、埋め込み型血液ポンプを埋め込む方法を含むことができ、該方法は、前記血液ポンプを、患者の体内に位置し、及び血管内に位置するか又は血管に隣接して位置するように埋め込むステップを含む。さらに、前記血液ポンプを埋め込むと、前記銀ワイヤは体液に接触するようになっている。前記血液ポンプは、心臓内に位置する状態、前記心臓の壁を貫通する状態、前記心臓に隣接する部位に位置する状態等にて埋め込むことができる。
【0011】
本発明は、別の実施形態によれば、埋め込み型血液ポンプを含むことができて、該血液ポンプが、ハウジングと、前記ハウジング内で回転するように取り付けられるロータと、前記ハウジングの外部に配置され、かつ前記ハウジング上に取り付けられる少なくとも1つのステータを含むモータとを備え、前記ステータが銀ワイヤコイルを含み、前記ステータは、前記血液ポンプを必要としている患者に前記血液ポンプを一旦埋め込もうとする状態になると、気密部内に位置しないように構成されている。
【0012】
さらに、前記少なくとも1つのステータは2個のステータを含むようにできる。また、前記少なくとも1つのステータは3個以上のステータを含むようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】先行技術における公知の埋め込み型血液ポンプを示している。
【
図2】先行技術における公知の埋め込み型血液ポンプを示している。
【
図3】本発明に係る埋め込み型血液ポンプの1つの実施形態を示している。
【
図4】本発明に係る埋め込み型血液ポンプの別の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書全体を通して使用される「埋め込み型血液ポンプ(implantable blood pump)」という用語は、一般的に、心臓内の部位であるような血管内に位置する状態、心臓、大動脈、種々の動脈、若しくは静脈等の壁を貫通する状態、又は心臓の壁に隣接する部位であるような血管に隣接する部位に位置するか若しくは心臓若しくは他の血管に隣接する腹部内に位置する状態にて使用することができる血液ポンプを指すために用いられる。通常、このような血液ポンプは、心臓の左心室又は右心室に埋め込まれるようになっている。このような埋め込み型血液ポンプの1つの例は、心室補助装置(VAD)又はポンプを必要としている患者に埋め込まれる他のポンプとすることができる。
【0015】
図3に示すように、1つの実施形態では、遠心式渦巻血液ポンプとして図示される埋め込み型血液ポンプ10が、ステータ56を有するモータを含んでおり、ステータ56は、コイル状に巻き回されると共に一定の長さである金属ワイヤ57を有している。装置10は、ハウジングを貫通する流路62を形成するハウジング14をさらに含んでいる。(
図1から最もはっきり分かるように)ロータ17はハウジング14内に配置されている。
【0016】
しかしながら、本発明の装置は、
図1及び
図2における先行技術に係る血液ポンプとは異なり、ハウジング12を含まないようになっている。
図1及び
図2のハウジング12は、一旦埋め込もうとする状態になると密閉状態を形成し、体液等の外部要素がハウジング12内に侵入することを防止して、ワイヤコイルを含むステータが体液に接触しないように構成されている。このようなハウジング12は、ステータの銅ワイヤと埋め込み型血液ポンプを取り囲む体液とが当該ポンプの耐用期間全体に渡って接触することを防止するために必要とされていた。本明細書では、体液がハウジング12に流入してステータに接触することを血液ポンプの耐用期間全体を通じて防止するような密閉状態を、気密状態と表記する。
【0017】
図3の実施形態の血液ポンプ10は、銀ワイヤから成る金属ワイヤ57を含んでいる。銀ワイヤを使用すると、(ハウジング12のような)補助ハウジングの必要性を無くすことができるので、ステータの周りの密閉部の必要性を無くすことができる。実際、銀ワイヤをステータ56に用いると、ステータとそれを取り囲む体液との接触であって、血液ポンプ10を必要としている患者に当該ポンプを埋め込む際に生じる接触が許容されることとなる。従って、例えば、気密状態のような密閉状態は、一旦ポンプ10を埋め込もうとする状態になると、ポンプ10に形成されなくてもよくなり、かつさらには、
図3の実施形態において必要とならなくなる。
【0018】
この実施形態のステータ56の銀ワイヤ57は、一定の長さの銀ワイヤとすることができ、好適には、本技術分野にて周知の如く、磁極片(図示せず)又は他の材料の外周にコイル状に巻き付けられる連続的な長さの銀ワイヤとすることができる。この実施形態では、銀ワイヤは従来のワイヤ、すなわち、裁断された銀糸となっている。銀ワイヤ57は、さらに、コイルを形成する場合に、一定の長さであるワイヤの隣接部位の分離状態を維持するための絶縁カバーを含むことができ、これによって、電流が一定の長さのワイヤを正しく流れる状態を維持することができる。しかしながら、このような絶縁カバーは、ステータの銀ワイヤと埋め込み型血液ポンプを取り囲む体液とが接触することを防止するために用いられる訳ではなく、詳細には、このような絶縁カバーは、ステータの銀ワイヤと体液とが接触することをポンプ10の耐用期間全体に渡って防止するために用いられる訳ではない。
【0019】
裁断された糸ではなく、このような銀ワイヤ57は、例えば、回路基板上の導体と同様の構造を有することもできる。1つの例では、このような構造は、材料のうちの銀に相当する長手部分が導電経路を非導電性基板に沿って形成することができるという点で、プリント回路基板と同様とすることができる。銀に相当する導電経路は、非導電性基板上にコイル状等の形状にて積層することができ、ポンプ10内にステータ56として配置することができる。従って、本開示において使用されるように、「ワイヤ(wire)」という用語は、誘電体基板上に配置される導体を指すものとする。
【0020】
図3は、ステータ56が1個だけハウジング14上に配置された状態を示している。しかしながら、ポンプ10は、1個よりも多くのステータを有することができるので、2個のステータ、3個のステータ、又は3個よりも多くのステータを有することができる。3個のステータ56を有するポンプ10の実施形態では、このようなステータは、ハウジング14の外周に沿って配置され、かつハウジング14の外側表面に取り付けられることになり、各ステータの中心部は、好適には、互いに略等距離離れた位置(例えば、ポンプ10の長手中心軸線を中心に互いに約120度を成す位置)に配置されることになる。各ステータのサイズによって異なるが、各ステータの一部は、隣接するいずれか一方のステータ、又は隣接する両方のステータの一部に重ねることができる。
【0021】
図3は遠心式の埋め込み型血液ポンプ10を示しているが、銀ワイヤコイルは他の種類の血液ポンプのステータに使用することができ、他の種類の血液ポンプとしては、米国特許出願公開第2011/0311383号として発行された米国特許出願第13/163,253号に開示されているポンプのような軸流型血液ポンプを挙げることができる。なお、米国特許出願第13/163,253号の内容全体は、本明細書において参照されることによって、この米国特許出願の全体が本明細書において開示されるものとして本明細書に組み込まれるものとする。
図4は、このような埋め込み型血液ポンプ110を示している。この実施形態では、ポンプ110は、流路162を有するハウジング150内に配置されるロータ120と、ハウジング150の外部に配置され、かつハウジング150の上に取り付けられる少なくとも1つのステータ156を含むモータとを含んでおり、ステータ156は、磁極片又は同様の基材(図示せず)の外周にコイル巻きされる導電長さの銀ワイヤ157を含んでいる。ポンプ110は、少なくとも1つのステータ156を含むか、又は図示のように、ポンプ110は、互いに略等距離離れた位置にある2つのステータを含むことができ、2つのステータのうち一方のステータは、ハウジングの一方側に位置し、もう一方のステータはハウジングの反対側に位置している(例えば、ポンプ110の中心長手軸線を中心に互いに約180度を成す位置に配置されている)。各ステータのサイズによって異なるが、各ステータの一部は、隣接するステータのいずれか一方側の一部、又は隣接するステータの両側の一部に重なるようにすることができる。これらのステータをこのように等距離離れた位置に配置することによって、ロータをより効率的に、かつより滑らかに回転させることができる。
【0022】
別の構成では、ポンプ110は、ハウジングの外周に沿って互いに略等距離離れた位置に配置される(例えば、ポンプ110の中心長手軸線を中心に互いに約120度を成す位置に配置される)少なくとも3個のステータを含むことができる。各ステータのサイズによって異なるが、各ステータの一部は、隣接するいずれか一方のステータ、又は隣接する両方のステータの一部に重ねることができる。
【0023】
上記にて説明したように、ステータのこれらの銀ワイヤコイル157は、ハウジング150の外部に配置され、従って、密閉収容部内に(例えば、第2の外側ハウジング内に)配置されていないので、剥き出しになっており、装置110を必要としている患者に当該装置を埋め込むと体液に接触することとなる。また、上記にて説明したように、この実施形態の銀ワイヤ157は、任意であるが絶縁カバーを含むことによって、一定の長さであるワイヤの隣接部分が分離された状態を、コイルを形成した場合に維持することができ、これによって、正しい電流が当該長さのワイヤを流れる状態を維持することができる。しかしながら、このような絶縁カバーは、ステータの銀ワイヤと埋め込み型血液ポンプを取り囲む体液とが接触することを防止するために用いられる訳ではなく、詳細には、このような絶縁カバーは、ステータの銀ワイヤと体液との接触をポンプ10の耐用期間全体に渡って接触することを防止するために用いられる訳ではない。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、埋め込み型血液ポンプ10,110を埋め込む方法を含むことができる。この方法では、埋め込み型血液ポンプを必要としている患者の体内に進入し、血液ポンプ10,110を、患者の体内に血管と連通するように埋め込む。血液ポンプ10,110は、心臓内の部位であるような血管内に位置する状態、心臓の壁を貫通する状態、大動脈内に位置する状態、種々の動脈内又は静脈内に位置する状態等にて埋め込むことができる。または、心臓の壁に隣接する部位であるような血管に隣接する部位に位置する状態、又は心臓若しくは他の血管に隣接する腹部内に位置する状態にて埋め込むことができる。一旦埋め込まれると、ステータの銀ワイヤは体液に接触する可能性がある。当該方法は、血液ポンプ自体を血管内に埋め込まない構成においては、ポンプからの人工血管を血管に埋め込んで、血液をポンプと血管との間で流す血液の流路を形成する別のステップを含むことができる。一般的に、血液ポンプ110(
図4に示す)が血管内に埋め込まれるのに対し、血液ポンプ10(
図3)は、一般的に、心臓の壁を貫通して埋め込まれるか、又は血管に隣接して埋め込まれる。
【0025】
銀ワイヤをステータに使用することによっては非常に多くの利点を得ることができる。例えば、銀ワイヤを使用すると、密閉状態、例えば、気密状態をステータの周りに形成する必要性を無くすことができる。銀は生体適合性金属であるので、体液と銀ワイヤとの接触を許容することができる。さらに、銀はバクテリア及び他の細菌が増殖することに適する基材でないので、銀ワイヤを体液に晒したままにしても、周囲の組織における感染の危険性、又は装置10,110に対する患者の拒絶反応を起こす危険性が高まることがない。
【0026】
外側ハウジングを無くす(従って、ステータの周りの密閉状態を無くす)ことによって、装置は、現在利用可能な埋め込み型血液ポンプよりも小さな寸法及び軽い重量を有することができる。このようなより小型かつより軽量のポンプは、周囲の組織に対する侵襲度をより低くすることができるので、このようなポンプをより多くの患者が、特に、例えば、より大型の血液ポンプを支える強さ又は能力を持たない組織を有する患者が利用することができる。
【0027】
銀ワイヤをステータに使用する別の潜在的な利点は銀の伝導性に関連する。銀は、現在使用されている銅のような他の金属よりも良好な導体である(6.3×107ジーメンス/メートル対5.96×107ジーメンス/メートル(銅))。従って、他の金属ではなく銀を使用すると、埋め込んだポンプの熱の蓄積を、銀の高い伝導性に及び伝導性に反比例して低い銀の抵抗率のために低減することができる。
【0028】
さらに、銀の伝導性が高くかつ抵抗率が低いことによって、バッテリ耐用期間を長くすることができる。ほとんどの埋め込み型血液ポンプは充電式バッテリパックを使用して動作するので、装置10,110を使用する患者は、バッテリパックの充電間隔がより長くなって、患者の標準的な生命機能及び自立性を高めることができるという利点を享受することができる。
【0029】
本発明を本明細書において、特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途を単に例示しているに過ぎないことを理解されたい。従って、多くの変形をこれらの例示的な実施形態に加えることができ、他の構成は、添付の請求項により規定される本発明の思想及び範囲から逸脱しない限り想到することができることを理解されたい。