(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190453
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】回転ピストン内燃機関の封止組立体
(51)【国際特許分類】
F16J 10/00 20060101AFI20170821BHJP
F16J 15/54 20060101ALI20170821BHJP
F02B 55/08 20060101ALI20170821BHJP
F02B 57/00 20060101ALI20170821BHJP
F01C 19/08 20060101ALI20170821BHJP
F01C 21/10 20060101ALI20170821BHJP
F01C 19/04 20060101ALI20170821BHJP
F01B 13/04 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
F16J10/00 B
F16J15/54
F16J10/00 C
F02B55/08 F
F02B57/00 Z
F01C19/08 A
F01C21/10
F01C19/04
F01B13/04
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-517604(P2015-517604)
(86)(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公表番号】特表2015-526657(P2015-526657A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】CZ2013000077
(87)【国際公開番号】WO2013189471
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年2月9日
(31)【優先権主張番号】PV2012-422
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】514308357
【氏名又は名称】ノブ エンジネス エス.アール.オー.
【氏名又は名称原語表記】KNOB ENGINES S.R.O.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ノブ、ヴァーツラフ
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第01705130(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0261731(US,A1)
【文献】
特表2005−503512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 1/00− 1/24
F16J 7/00−10/04
F16J 15/40−15/453
F16J 15/54−15/56
F01B 13/04
F01C 19/04
F01C 19/08
F01C 21/10
F02B 55/08
F02B 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ピストン内燃機関の封止組立体であって、ピストン(13)を有する径方向に位置付けられるシリンダ(12)を有する回転形状の回転ブロック(11)、並びに、少なくとも1つの吸気口(14)及び/又は排気口(15)を有する外側に配置される静止ケース(10)を備え、一方で、前記回転ブロック(11)の外面(16)は、直線又は湾曲した輪郭の曲線を有する回転面であり、該回転面上に、前記静止ケース(10)内に配置される横断封止部分及び/又は側部封止部分が着座し、
円形の側部溝(2)内に、横断溝(4)内に配置される隣接する横断封止片(3)間に常に配置される円形の側部封止セグメント(1)からなる側部封止部があり、前記横断封止片(3)は前記側部溝(2)を横切って延び、一方で、前記側部封止セグメント(1)及び前記横断封止片(3)が合流する位置には、該側部封止セグメント(1)及び該横断封止片(3)を挿入する切欠き部(7)を有する接合部(5)があることを特徴とする、回転ピストン内燃機関の封止組立体。
【請求項2】
前記接合部(5)は、前記静止した外周ケース(10)の孔(6)内に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の回転ピストン内燃機関の封止組立体。
【請求項3】
前記接合部(5)は、n−多面体の形状の断面を有し、ここで、nは3〜∞の範囲であり、接合部(5)と前記静止ケース(10)との間にはばね(8)があり、前記接合部(5)は、それらの前記切欠き部(7)の底部によって前記側部封止セグメント(1)及び/又は前記横断封止片(3)に同時に着座し、これは、これらの封止部を前記回転ブロック(11)の前記外面(16)に対して押圧することを確実にすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の封止組立体。
【請求項4】
前記側部封止セグメント(1)及び/又は前記横断封止片(3)には、前記静止ケース(10)内の前記側部溝(2)及び/又は前記横断溝(4)に配置される他のばね(9)が備え付けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の封止組立体。
【請求項5】
前記側部封止セグメント(1)は、少なくとも2つの側部溝(2)内にある互いに隣り合う少なくとも2つの列であり、一方で、前記側部封止セグメント(1)の最も近い列は、前記回転ブロック(11)のシリンダ孔(12)に近接して配置されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の封止組立体。
【請求項6】
前記接合部(5)は、少なくとも1つの横断片(3)及び少なくとも2つの側部封止セグメント(1)の接続位置に配置されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の封止組立体。
【請求項7】
前記横断封止片(3)には、着座面(18)に面取り部(17)が設けられ、該面取り部(17)は、点火プラグ(19)の反対の側にあるような向きにされることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の封止組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンを有する径方向に位置付けられるシリンダを有する回転形状の回転ブロックを含む内燃機関の封止の実施形態に関する。回転シリンダブロックの外側には、少なくとも1つの吸気口及び/又は排気口を有する静止ケースがある。回転シリンダブロックは、静止ケースとともに、回転弁のように動作する。
【背景技術】
【0002】
ピストンを有する径方向に位置付けられるシリンダを有する回転形状の回転ブロック、並びに、吸気口及び/又は排気口を有する外側の静止ケースを有する多くの機関が設計されている。回転シリンダブロックは、静止ケースとともに、回転弁のように動作する。2ストローク機関及び4ストローク機関、2シリンダ構成、3シリンダ構成、及びマルチシリンダ構成の設計が良く知られている。機関によっては、クランク軸機構が備え付けられているものもあれば、ピストンの運動を軸に伝達する他の既知の機構が備え付けられているものもある。これらの設計はいずれも、疑う余地のない可能性にもかかわらず、より広い拡大及び利用が達成されていない。
【0003】
これらの機関が成功しなかったのには多くの理由がある。主な理由は、回転ブロックと静止ケースとの間の封止が最適に設計されていなかったためである。たいていは、シリンダ空間と静止ケースとの間の封止は、回転シリンダブロック内に配置される封止要素によってなされていた。それらの封止要素はこの場合、回転ブロックの回転から生じる遠心力に曝されていた。これは、回転の増加とともに、これらの封止要素のかなりの応力、高い摩擦損失及び潤滑の問題につながる。そのような設計は、例えば特許文献1、特許文献2に記載されている。
【0004】
機関の静止ケース内に配置される封止部を有する設計も存在した。最も単純であるのは、回転ブロックの外周の両側に配置されるリングの形態の封止部である。別の封止は、静止ケース内に、回転ブロックの外周の運動に対して横断方向に配置される横断封止片によってなされる。そのような設計は、例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6等において記載されている。この解決策は、封止部分に作用する遠心力が存在しないため有利である。燃焼空間内の隙間の容積を最小限にすることに起因して、側部封止リングを、可能な限りシリンダ孔の近くに配置する必要がある。側部封止部分がシリンダ孔に近すぎる場合、これらのシリンダ孔が横断封止片を通過するとき、これらの封止片はシリンダ孔を越えてほとんど延びない。これによって、摩耗が増し、封止片の気密性及び耐久性が低下する。高い圧力を有する空間の封止部の全長に起因して、可能な限り完全な封止を達成する必要がある。封止片及びリングが合流する位置において気密性がないことが問題である。ガスは、封止部分の間の間隙、及び特にそれらの接続された溝の底部の双方を通って吹き抜けることができる。側部封止リングが2つ以上ある場合、第1のリングを克服するガスが、側部リング間の周方向の隙間を通って更に吹き抜けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第2732779号
【特許文献2】仏国特許第2767156号 A1
【特許文献3】仏国特許第2639676号 A1
【特許文献4】米国特許第1705130号 A
【特許文献5】国際公開第9823850号 A1
【特許文献6】国際公開第8302642号 A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記で述べた欠点は、本発明による、回転ピストン内燃機関の封止組立体であって、ピストンを有する径方向に位置付けられるシリンダを有する回転形状の回転ブロック、並びに、少なくとも1つの吸気口及び/又は排気口を有する外側の静止ケースを備え、一方で、回転ブロックの外面は、直線の輪郭の曲線又は曲線の輪郭の曲面を有する回転面であり、回転面上に、静止ケース内に配置される横断封止部及び/又は側部封止部が着座する、回転ピストン内燃機関の封止組立体によって大部分が解消される。本質的には、円形の側部溝内に、横断溝内に配置される隣接する横断封止片間に常に位置付けられる円形の側部封止セグメントからなる側部封止部がある。それらの封止片は側部溝を横切って延びる。側部封止セグメント及び横断封止片が合流する位置には、側部封止セグメント及び横断封止片を挿入する切欠き部を有する接合部がある。
【0007】
それらの接合部は、有利には、外側の静止ケースの孔内に配置される。接合部の断面は、n−多面体の形状であり、ここで、nは3〜∞の範囲であり、すなわち、断面は多面体、円又は楕円等の形状であるものとすることができる。接合部と静止ケースとの間にはばねがある。接合部は、それらの切欠き部の底部によって側部封止セグメント及び/又は横断封止片に同時に着座し、これは、これらの封止部を回転ブロックの面に対して押圧することを確実にする。側部封止セグメント及び/又は横断封止片には、有利には、静止ケース内の側部溝及び/又は横断溝に配置されるより多くのばねが備え付けられる。
【0008】
側部封止セグメントは、有利には、少なくとも2つの側部溝内にある互いに隣り合う少なくとも2つの列であり、一方で、側部封止セグメントの最も近い列は、回転ブロックにあるシリンダ孔に近接して配置される。
【0009】
接合部は、有利には、少なくとも1つの横断片及び少なくとも2つの側部封止セグメントが合流する位置に配置される。
【0010】
横断封止片は、有利には、着座面に面取り部を有する。その面取り部は、点火プラグの反対の側にあるような向きにされる。
【0011】
回転ピストン内燃機関の封止組立体は、回転ブロックと静止ケースとの間の効果的な封止を可能にする。静止ケース内に封止要素を配置することは、封止要素の圧力が機関速度に依存しないことを確実にし、これによって、高い機関速度、したがって高い特定のパラメータに達することを可能にする。全ての横断封止片及び側部封止セグメントは、回転ブロックの回転外面との平面接点を有する。これによって、封止要素材料、及び回転ブロックの外側表面領域の質に対する要求が低下する。封止要素の平面接点は、封止要素の潤滑に対する要求も低下させ、それらの効率及び耐久性を高める。主な利点は、横断封止片が長く、シリンダ孔が横断片を通過するときに、回転ブロックのシリンダ孔の最も広い地点にわたって両側に十分に延びることができることである。同時に、側部封止セグメントを回転ブロックのシリンダ孔の近くに配置することで、回転ブロックと静止ケースとの間の隙間の空間を最小限に抑えることが可能である。回転ブロックと静止ケースとの間の空間を高いシリンダ圧で封止することは、横断方向及び側方方向の双方への複数の封止部によってなすことができ、これは高レベルの封止を確実にする。
【0012】
封止の接合部も重要であり、これは、接合部が、横断封止片と側部封止セグメントとの間の間隙の封止を確実にするためである。接合部は、その切欠き部の底部によって横断封止片又は側部封止セグメントに着座する場合、切欠き部の底部において間隙を閉じ、横断溝及び側部溝の底部において間隙にガスが吹き抜けることを防止する。
【0013】
横断片の輪郭の好適な形状は、シリンダ圧を用い、片を回転ブロックに対して押圧する圧力を増大させることができる。シリンダ圧が低下するか、又はシリンダ孔が横断片を通過すると、横断封止片の負荷が低下し、これは、より低い摩擦損失及び摩耗につながる。
【0014】
接合部は、外側の静止ケースの孔に着座することができ、それらの孔は、機関製造の任意の段階において容易に作られる。接合部は、三角形から円形まで、種々の断面形状を有することができる。接合部と静止ケースとの間のばねは、封止セグメント及び/又は横断封止片を回転ブロックの外面に対して押圧する十分な圧力を確実にする。圧力は他のばねによっても形成される。横断封止片の面取り部は、点火プラグの反対の側にあるような向きにされる。これによって、封止片のより良い着座及び案内を確実にする。
【0015】
回転ピストン内燃機関においてこの封止組立体を用いることは、少数の可動部品を有し、均衡のとれた静かな動作及び高い特定のパラメータを有する、小さい寸法の単純で製造が安価な機関の実現を可能にする。
【0016】
本発明による回転ピストン内燃機関の封止組立体は、添付の図面によってモデルの実施形態に対してより綿密に明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】静止ケースの半分、並びに、シリンダ及びピストンを有する回転ブロックを有する封止組立体の不等角投影図である。シリンダブロックはピストンとともに、より良く示すために外側の静止ケースから軸方向に移動されている。
【
図2】静止ケースの内面の展開図、及び回転軸を長手方向に通る回転ブロックの断面図も示す図である。
【
図3】回転軸に対して垂直にとった回転ピストン機関の断面図を概略的に示し、ここでは、面取り部を有する横断封止片が描かれている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1による回転ピストン内燃機関のモデルの封止部は、円形の側部封止セグメント1、横断封止片3、接合部5、ばね8及び他のばね9を含む。これらの部品は全て静止ケース10に配置され、静止ケース10内には、径方向に位置付けられるシリンダ12及びピストン13を有する回転ブロック11が配置される。回転ブロック11の外面16は回転円筒面である。静止ケース10には吸気口14及び排気口15が設けられている。側部封止セグメント1は、円形の側部溝2内に2列に配置される。ばね8及び接合部5は孔6内に配置される。横断封止片3は横断溝4内に配置され、他のばね9は横断溝4及び側部溝2内に配置される。点火プラグ19と双方の吸気口14及び排気口15との間には、3つの横断片3がある。接合部5には切欠き部7が設けられており、切欠き部7には側部封止セグメント1及び横断封止片3が届く。接合部5は、1つの横断封止片3及び4つの側部封止セグメント1を常に接続する。
【0019】
図2による回転ピストン内燃機関の封止組立体の実施形態は、
図1による実施形態に従う。その差異は、異なる接合部5の使用にある。接合部5は切欠き部7の異なる形状及び形態を有する。幾つかの接合部5は1つの横断片3を4つの側部封止セグメント1と接続する。幾つかの接合部5は1つの横断片3を2つのみの側部封止セグメント1と接続し、幾つかの接合部5は2つの横断片3を4つの側部封止セグメント1と接続する。
【0020】
図3による回転ピストン内燃機関の封止組立体の実施形態は、
図1による実施形態に従う。横断封止片3は、それらの着座面18に面取り部17を有する。面取り部は、点火プラグ19の反対の側にあるような向きにされる。
【0021】
回転ピストン内燃機関の封止組立体の機能は以下の通りである。ばね8は、接合部5を回転ブロック11の外面16に対して押圧する。接合部5は、それらの切欠き部7の底部によって側部封止セグメント1及び/又は横断封止片3に着座することができる。ばね8の圧力はこの場合、側部封止セグメント1及び/又は横断封止片3にも伝わり、側部封止セグメント1及び/又は横断封止片3は回転ブロック11の外面16に対して押圧される。側部封止セグメント1及び/又は横断封止片3は、他のばね9によっても回転ブロック11の外面16に対して押圧することができる。回転ブロック11が静止ケース10内で回転すると、シリンダ孔12は全ての横断封止片3を段階的に通過するが、横断封止片3は、シリンダ孔12の両側に十分に延び、横断封止片3が損傷を受ける危険はない。点火の時点で、有利には、シリンダ孔12と吸気口14及び/又は排気口15との間にはより多くの横断片3がある。横断片3は、シリンダ空間12の良好な封止を確実にする。封止は、側部封止セグメント1を互いに隣り合ってより多くの列で配置することによっても改善される。接合部5は、より多くの側部封止セグメント1を1つ又は複数の横断片3と接続することができる。横断片3は着座面18に面取り部17を有することができ、面取り部17は、点火プラグ19の反対の側にあるような向きにされる。シリンダ圧12は次に、横断片3に作用する付加的な圧力を形成し、これによって、それらの気密性が更に高まる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明による回転内燃機関の封止組立体は、例えば航空機の機関、オートバイの機関、レーシングカーの機関、及び回転ピストン機関の他の用途において用いることができ、この場合、低重量での高い性能及び小さい寸法の優先度が高い。封止組立体の単純さ及び小さい寸法のおかげで、本発明による封止組立体が備え付けられている回転ピストン機関は、庭設備、予備発電機等の駆動力としても用いることができる。潤滑油の消費量が大幅に制限されるのであれば、従来の車両における、例えば電気自動車のレンジエクステンダとしての用途を検討することが可能である。