(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したような水性眼科組成物における溶解確認、異物検査の工程の重要性により、水性眼科組成物において、消泡時間を短縮させることは重要な課題である。本発明は、このような従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、水性眼科組成物、特に、界面活性剤などの溶解補助剤が配合された泡立ちし易い水性眼科組成物について、振動又は衝撃により泡が発生しても、消泡時間が短縮された水性眼科組成物、及び該水性眼科組成物において消泡時間を短縮させる方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の別の目的は、特定の非イオン性界面活性剤を含有する水性眼科組成物において、防腐剤を配合して防腐効果を付与しているか否かに拘わらず、長期間にわたり保存効力が増強された水性眼科組成物を提供すること、及び該水性眼科組成物における保存効力を増強する方法を提供することである。
【0011】
更に、本発明者等の研究によれば、後述する本発明の水性眼科組成物に含まれる成分の内で、ポリオキシエチレンヒマシ油が光に晒された場合に分解が生じ易いことが確認された。水性眼科組成物における含有成分の光分解は、安全性を含む品質の低下や商品価値の低下を招来し、更に、含有成分が本来有する性能を発揮することを妨げることから、光安定性を向上させることは極めて重要な課題である。
【0012】
従って、本発明のその他の目的は、 光安定性が改善された水性眼科組成物を提供すること、及び該水性眼科組成物における安定性を向上できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ってきた。その結果、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンヒマシ油(以下、単に「(A)成分」と表記することもある)を含有する水性眼科組成物に、ゴマ油(以下、「(B)成分」と表記することもある)を配合することによって、振動又は衝撃により泡が発生した場合に、該水性眼科組成物における消泡時間を顕著に短縮でき、溶解確認、異物確認等を短時間で行うことが可能となることを見出した。また、泡が発生した状態の点眼剤等の水性眼科組成物は、使用時に1回ごとの滴下量のバラツキが大きくなり、特に1回の使用量が比較的少ない点眼剤、コンタクトレンズ装着液において、1回毎の使用量を使用者自身がコントロールし難く、扱いづらいなどの不都合が生じ、特に水性眼科組成物が医薬品の場合などはコンプライアンスの低下等に繋がる可能性もある。本発明によれば、消泡時間が短縮される結果、該水性眼科組成物における滴下量のバラツキをも抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明者等の研究によれば、ポリオキシエチレンヒマシ油とゴマ油を併用した水性眼科組成物では、保存効力が増強されることが見出された。一般に、非イオン性界面活性剤は、防腐剤を不活性化し、防腐力を低下させる作用を有することが知られている。このため、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンヒマシ油をゴマ油と組み合わせて用いる場合に、保存効力が増強されることは、全く予想外の効果といえる。
【0015】
更に、本発明者等の研究によれば、ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物にゴマ油を配合することによって、該水性眼科組成物におけるポリオキシエチレンヒマシ油の光分解が抑制されて光安定性が改善されることが見出された。
【0016】
本発明は、これらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。
【0017】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の水性眼科組成物を提供するものである。
項1−1.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B)ゴマ油を含む、水性眼科組成物。
項1−2.(A)成分が、酸化エチレンの平均付加モル数が2〜70モルのポリオキシエチレンヒマシ油である、項1−1に記載の水性眼科組成物。
項1−3.(A)成分が、酸化エチレンの平均付加モル数が2〜35モルのポリオキシエチレンヒマシ油である、項1−1又は項1−2に記載の水性眼科組成物。
項1−4.水性眼科組成物の総量を基準として、(A)成分の総含有量が0.0005〜5w/v%である、項1−1乃至1−3のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−5.水性眼科組成物の総量を基準として、(B)成分の総含有量が0.0001〜5w/v%である、項1−1乃至1−4のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−6.(A)成分の総含有量1重量部に対して、(B)成分の総含有量が0.00002〜10000重量部である、項1−1乃至1−5のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−7.(A)成分の総含有量1重量部に対して、(B)成分の総含有量が0.005〜10重量部である、項1−1乃至1−6のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−8.更に、ホウ酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種(以下、(「(C)成分」ということがある)を含有する、項1−1乃至1−7のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−9.水性眼科組成物の総量を基準として、(C)成分の総含有量が0.01〜10w/v%である、項1−8に記載の水性眼科組成物。
項1−10.更に緩衝剤を含有する、項1−1乃至1−9のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−11.更に(A)成分以外の非イオン性界面活性剤を含有する、項1−1乃至1−10のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−12.(A)成分以外の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーからなる群より選択される少なくとも一種である、項1−11に記載の水性眼科組成物。
項1−13.水性眼科組成物の総量を基準として、(A)成分以外の非イオン性界面活性剤の総含有量が0.001〜3w/v%である、項1−11又は1−12に記載の水性眼科組成物。
項1−14.更に、多価アルコールを含有する、項1−1乃至項1−13に記載の水性眼科組成物。
項1−15.多価アルコールが、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マンニトール、及びソルビトールからなる群から選択される少なくとも一種である項1−14に記載の水性眼科組成物。
項1−16.水性眼科組成物の総量を基準として、多価アルコールの総含有量が0.005〜10w/v%である、項1−14又は1−15に記載の水性眼科組成物。
項1−17.ポリエチレンテレフタレート製容器に充填されてなる、項1−1乃至1−16のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−18.ポリエチレン製ノズルが装着された容器に充填されてなる、項1−1乃至1−17のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−19.点眼剤である項1−1乃至1−18のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−20.洗眼剤である項1−1乃至1−18のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−21.コンタクトレンズ装着液である項1−1乃至1−18のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1−22.コンタクトレンズケア用剤である項1−1乃至1−18のいずれかに記載の水性眼科組成物。
【0018】
また、本発明は、下記に掲げる態様の、水性眼科組成物における消泡時間の短縮方法、及び使用時の滴下量のバラツキ抑制方法を提供するものである。
項2.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B)ゴマ油を、水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における消泡時間を短縮させる方法。
項3.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物に、(B)ゴマ油を配合することを含む、該水性眼科組成物における消泡時間を短縮させる方法。
項4.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B)ゴマ油を、水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における使用時の滴下量のバラツキを抑制する方法。
【0019】
また、本発明は、下記に掲げる態様の、水性眼科組成物における保存効力を増強する方法を提供する。
項5.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B)ゴマ油を、水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における保存効力を増強する方法。
【0020】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の、水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法を提供するものである。
項6.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物に、(B)ゴマ油を配合することを含む、該水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法。
項7.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、及び(B)ゴマ油を水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法。
【0021】
更に、本発明は、下記の掲げる態様の使用も提供する。
項8.水性眼科組成物の製造のための、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と(B)ゴマ油の使用。
項9.水性眼科組成物が、上記項1−1乃至1−22のいずれかに記載の組成物である、項8に記載の使用。
【0022】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の使用も提供する。
項10.水性眼科組成物としての、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と(B)ゴマ油を含む組成物の使用。
項11.組成物が、上記項1−1乃至1−22のいずれかに記載の組成物である、項10に記載の使用。
【0023】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の組成物も提供する。
項12.水性眼科組成物としての使用のための、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と(B)ゴマ油を含む組成物。
項13.上記項1−1乃至1−22のいずれかに記載されたものである、項12に記載の組成物。
【0024】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の水性眼科組成物の製造方法も提供する。
項14.水を含む担体に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と(B)ゴマ油を添加することを含む、水性眼科組成物の製造方法。
項15.水性眼科組成物が、上記項1−1乃至1−22のいずれかに記載の組成物である、項14に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、以下に示す各種の効果が奏される。
(1)本発明によれば、ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物における消泡時間を短縮させることができる。その結果、水性眼科組成物の製造時における溶解確認又は異物確認を短時間で行うことが可能となり、製造効率を改善することができる。更に、消泡時間が短縮されることにより、滴下量のバラツキをも抑制することができる。(2)本発明の水性眼科組成物は、保存効力が増強されている。このため、菌汚染に対して特に高い安全性が要求される眼科分野においても、使用時の水性眼科組成物の汚染、及び微生物感染症のリスク等を低減できる。
(3)本発明によれば、ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物において、光に晒した場合に生じ易いポリオキシエチレンヒマシ油の光分解を抑制することができる。よって、本発明の水性眼科組成物は、安全性や品質を低下させることなく、ポリオキシエチレンヒマシ油の有する優れた性能を長期間安定して発揮することができる。
【0026】
本発明の水性眼科組成物は、上述した各種の優れた効果を有するものであり、より安全且つ快適に、長期に亘って有効に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において含有量の単位「%」は「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
【0028】
本明細書中、特に記載の無い限り、略号「POE」はポリオキシエチレンを意味する。
【0029】
本明細書中、特に記載の無い限り、略号「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。
【0030】
本明細書中、特に記載の無い限り、コンタクトレンズとは、ハード、酸素透過性ハード、ソフト(シリコーンハイドロゲルレンズを含む)、カラー等のあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する意味とする。
【0031】
以下、本発明について、具体的に説明する。
【0032】
[1.水性眼科組成物]
本発明の水性眼科組成物は、ポリオキシエチレンヒマシ油((A)成分)を含有するものである。これを後述するゴマ油と併用することによって、上記した本発明の優れた効果が発揮される。
【0033】
ポリオキシエチレンヒマシ油は、ヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる公知の化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。本発明では、(A)成分として用いられるポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数は特に定めないが、例えば、2〜70モル程度である。具体的には、酸化エチレンの平均付加モル数が3であるポリオキシエチレンヒマシ油3、酸化エチレンの平均付加モル数が4であるポリオキシエチレンヒマシ油4、酸化エチレンの平均付加モル数が6であるポリオキシエチレンヒマシ油6、酸化エチレンの平均付加モル数が7であるポリオキシエチレンヒマシ油7、酸化エチレンの平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンヒマシ油10、酸化エチレンの平均付加モル数が13.5であるポリオキシエチレンヒマシ油13.5、酸化エチレンの平均付加モル数が17であるポリオキシエチレンヒマシ油17、酸化エチレンの平均付加モル数が20であるポリオキシエチレンヒマシ油20、酸化エチレンの平均付加モル数が25であるポリオキシエチレンヒマシ油25、酸化エチレンの平均付加モル数が30であるポリオキシエチレンヒマシ油30、酸化エチレンの平均付加モル数が35であるポリオキシエチレンヒマシ油35、酸化エチレンの平均付加モル数が40であるポリオキシエチレンヒマシ油40、酸化エチレンの平均付加モル数が50であるポリオキシエチレンヒマシ油50、酸化エチレンの平均付加モル数が60であるポリオキシエチレンヒマシ油60、酸化エチレンの平均付加モル数が70であるポリオキシエチレンヒマシ油70などが挙げられる。
【0034】
これらの内で、本発明の効果を好適に発揮できるポリオキシエチレンヒマシ油の一例として、酸化エチレンの平均付加モル数が2〜35、好ましくは2〜30、更に好ましくは2〜20、特に好ましくは2〜12のポリオキシエチレンヒマシ油を挙げることができる。
【0035】
本発明において、これらのポリオキシエチレンヒマシ油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。尚、本発明で用いるポリオキシエチレンヒマシ油は、硬化ヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することにより得られるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とは異なる化合物であり、これとは区別される。
【0036】
本発明の水性眼科組成物における、(A)成分の含有量は特に限定はなく、(A)成分の種類、併用する(B)成分の含有量、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、(A)成分の総含有量として、0.0005〜5w/v%、好ましくは0.001〜4w/v%、より好ましくは0.002〜3w/v%、更に好ましくは0.005〜2w/v%、特に好ましくは0.01〜1w/v%である。
【0037】
上記(A)成分の含有量は、水性眼科組成物において消泡時間を短縮させる作用、保存効力の増強作用、及び光安定性を向上させる作用を一層高めるという観点から好適である。
【0038】
本発明の水性眼科組成物は、上記(A)成分に加えて、ゴマ油((B)成分)を含有することが必要である。このように、(A)成分と(B)成分を併用することによって、上記した効果、即ち、消泡時間の短縮、保存効力の増強、光安定性の向上等の効果が発揮される。
【0039】
ゴマ油は、ゴマ科ゴマ属の植物(Sesamumindicum Linne(Pedaliaceae)等)の種子から得た植物油をいう。
【0040】
本発明に用いられるゴマ油としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されず、公知の搾取方法や公知の精製方法を用いて種子から得たものや、市販のものを使用することができる。
【0041】
本発明の水性眼科組成物における、上記(B)成分の含有量は特に限定はなく、併用する(A)成分の種類及び含有量、該水性眼科用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科用組成物の総量を基準として、(B)成分の総含有量として、0.0001〜5w/v%、好ましくは0.0005〜1w/v%、更に好ましくは0.001〜0.5w/v%、特に好ましくは0.005〜0.1w/v%である。
【0042】
上記(B)成分の含有量は、本発明の効果をより一層高めるという観点から好適である。
【0043】
本発明の水性眼科組成物における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に制限はなく、(A)成分及び(B)成分の種類、該水性眼科用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1重量部に対して、(B)成分の総含有量として、0.00002〜10000重量部、好ましくは0.0001〜1000重量部、より好ましくは0.0005〜200重量部、更に好ましくは0.002〜50重量部、特に好ましくは0.005〜10重量部である。
【0044】
上記(A)成分に対する(B)成分の含有比率は、本発明の効果をより一層高めるという観点から好適である。
【0045】
本発明の水性眼科組成物には、後述する通り、その使用目的に応じて、種々の薬理活性成分、生理活性成分等を配合することができ、更に、各種の添加剤も配合することができる。この場合、生理活性成分、添加物等の溶解性を向上させるために、溶解補助剤として、(A)成分以外に、更に、その他の界面活性剤を配合することができる。このような界面活性剤を配合すると通常泡立ちが多くなるが、本発明によれば、(A)成分以外の界面活性剤を配合することによって泡立ちし易くなった水性眼科組成物についても、(A)成分と(B)成分を同時に配合することによって、消泡時間を短縮させることができ、製造効率を改善し、更に、滴下量のバラツキを抑制することができる。
【0046】
本発明の水性眼科組成物に配合することができる、(A)成分以外の界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0047】
本発明の水性眼科組成物に配合可能な(A)成分以外の非イオン性界面活性剤としては、具体的には、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE−POPアルキルエーテル;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0048】
また、本発明の水性眼科組成物に配合可能な両性界面活性剤としては、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩(例えば、塩酸塩等)等が例示される。
【0049】
また、本発明の水性眼科組成物に配合可能な陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示される。
【0050】
また、本発明の水性眼科組成物に配合可能な陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、α−オレフィンスルホン酸等が例示される。
【0051】
本発明の水性眼科組成物に配合可能な(A)成分以外の界面活性剤として、好ましくは、(A)成分以外の非イオン性界面活性剤であり、更に好ましくは、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POE・POPブロックコポリマーであり、特に好ましくは、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポロクサマー407である。
【0052】
本発明の水性眼科組成物において、上記(A)成分以外の界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
本発明の水性眼科組成物に上記(A)成分以外の界面活性剤を配合する場合、その含有量は、該界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、(A)成分以外の界面活性剤の総含有量として、0.001〜3w/v%、好ましくは0.005〜2w/v%、更に好ましくは0.01〜1w/v%、特に好ましくは0.05〜1w/v%である。
【0054】
本発明の水性眼科組成物は、更に、ホウ酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種((C)成分))を含有することが好ましい。ホウ酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有することによって、本発明の効果をより一層向上させることができる。
【0055】
ホウ酸は、三酸化二ホウ素が水化して生ずる酸素酸の総称であり、オルトホウ酸、メタホウ酸、テトラホウ酸等が含まれる。ホウ酸は、公知の化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0056】
また、ホウ酸の塩としては、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。また、ホウ酸塩として、ホウ酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な(C)成分の例として、ホウ酸(オルトホウ酸)、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等が例示できる。ホウ酸及びその塩は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(C)成分の好適な具体例として、ホウ酸とその塩の組み合わせ;好ましくはホウ酸と、ホウ酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の組み合わせ;更に好ましくはホウ酸と、ホウ酸のアルカリ金属塩の組み合わせ;特に好ましくはホウ酸とホウ砂の組み合わせが例示される。
【0057】
本発明の水性眼科組成物における、(C)成分の含有量は特に限定はなく、(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、(C)成分の総含有量として、0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%、更に好ましくは0.1〜3w/v%、特に好ましくは0.2〜2w/v%である。
【0058】
本発明の水性眼科組成物は、更に緩衝剤を含有することができる。これにより、本発明の水性眼科組成物のpHを調整できる。本発明の水性眼科組成物に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような緩衝剤の一例として、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、イプシロン-アミノカプロン酸等が挙げられる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。リン酸緩衝剤としては、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸、又は炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸、又はクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、リン酸緩衝剤として、リン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤の中でも、リン酸緩衝剤(特に、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組合せ)が好ましい。
【0059】
また、本発明の水性眼科組成物は、更に等張化剤を含有していてもよい。本発明の水性眼科組成物に配合できる等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような等張化剤の具体例として、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本発明の水性眼科組成物に配合可能な等張化剤として、好ましくは、多価アルコールであり、具体的には、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。更に好ましくは、グリセリン、プロピレングリコールであり、特に好ましくは、グリセリンである。
【0061】
本発明の水性眼科組成物に等張化剤を配合する場合、その含有量は、該等張化剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、該等張化剤の総含有量として、0.005〜10w/v%、好ましくは0.01〜5w/v%、更に好ましくは0.05〜3w/v%である。
【0062】
本発明の水性眼科組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明の水性眼科組成物のpHの一例として、4.0〜9.5、好ましくは5.0〜9.0となる範囲が挙げられ、更に好ましくは5.5〜8.5である。
【0063】
また、本発明の水性眼科組成物の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明の水性眼科組成物の浸透圧比の一例として、0.5〜5.0、好ましくは0.6〜3.0、更に好ましくは0.7〜2.0、特に好ましくは0.9〜1.55である。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いればよい。
【0064】
本発明の水性眼科組成物の粘度については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。例えば、回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター:1°34‘x24)で測定した25℃における粘度が、0.01〜1000mPa・s、好ましくは0.05〜100mPa・s、更に好ましくは0.1〜10mPa・sである。
【0065】
本発明の水性眼科組成物は、本発明の効果が奏される限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分及び/又は生理活性成分を単独又は適宜組み合わせて適当量含有してもよい。このような成分は特に制限されず、具体的には、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
【0066】
抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤:例えば、イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウム、クロモグリク酸ナトリウム等。
【0067】
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硫酸ナファゾリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン等。
【0068】
ビタミン:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、酢酸トコフェロール等。
【0069】
アミノ酸:例えば、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、イプシロン−アミノカプロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等。
【0070】
消炎剤:例えば、ブロムフェナクナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、プラノプロフェン、アラントイン、アズレン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グアイアズレン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、塩化リゾチーム、甘草等。
【0071】
その他:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等。
【0072】
また、本発明の水性眼科組成物には、発明の効果が奏される範囲であれば、その用途、製剤形態等に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
【0073】
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
【0075】
糖アルコール:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0076】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸ポリヘキサニド、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、グローキル(商品名、ローディア社)等。
【0077】
粘稠化剤又は増粘剤:アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ソルビトール、デキストラン70、トラガント末、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴール4000等。
油類:ヒマシ油等。
【0078】
本発明の水性眼科組成物は、所望量の上記(A)成分及び(B)成分、及び必要に応じて他の配合成分を所望の濃度となるように担体に添加することにより調製される。例えば、点眼剤、コンタクトレンズ装着液、洗眼剤又はコンタクトレンズケア用剤の場合、精製水で前記成分を溶解又は懸濁させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。上記(A)成分及び(B)成分の溶解及びその他疎水性の高い成分の溶解に関しては、予め界面活性剤などの溶解補助作用のある成分とあわせて攪拌を行なってから、さらに精製水を加えて溶解又は懸濁させてもよい。
【0079】
従って、本発明は、別の観点から、水性眼科組成物の製造方法として、水を含む担体に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、及び(B)ゴマ油を添加することを含む、方法を提供するものである。
【0080】
本発明において水性眼科組成物とは、水の含有量が、該水性眼科組成物の総量に対して、85w/v%以上の眼科組成物を意味する。該水性眼科組成物における水の含有量は、好ましくは90w/v%以上、より好ましくは92w/v%以上、更に好ましくは94w/v%以上、特に好ましくは96w/v%以上である。本発明の水性眼科組成物に用いられる水としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。また本発明における水性眼科組成物の剤型については、眼科分野で使用可能である限り特に制限されないが、液状が好ましい。これらの定義は第十六改正日本薬局方に基づく。
【0081】
本発明の水性眼科組成物の具体例として、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう)[但し、点眼剤には人工涙液、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む]、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬ともいう)[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む]、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用品(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤、コンタクトレンズ用消毒・保存・洗浄剤(コンタクトレンズ用マルチパーパスソリューション))等が挙げられる。本発明の水性眼科組成物は、消泡時間が短縮し、使用時の滴下量のバラツキが少ないため、他の剤型と比較して特に一回の使用量が少ない、点眼剤、コンタクトレンズ装着液に好適に用いられる。特に点眼剤が好ましい。
【0082】
また、本発明の水性眼科組成物は、保存効力が増強されているために、クロルヘキシジン等公知の防腐剤を含有しなくても、優れた防腐作用を有している。このため、マルチドーズ型の水性眼科組成物、即ち製品を一旦開封した後、数回以上に亘り使用される水性眼科組成物に対して好適に用いられ、該水性眼科組成物を数日、あるいは数週間以上、安定して保存することができる。
【0083】
更に、本発明の水性眼科組成物は、消泡時間が短縮され、保存効力が増強されていることに加えて、光安定性が改善されている。このため、界面活性剤としてポリオキシエチレンヒマシ油が有する本来の性質を安定して発揮できる。従って、本発明の水性眼科組成物は、他の剤型と比較して十分な洗浄作用を必要とする水性眼科組成物に対して好適に用いられる。この観点からは、本発明の水性眼科組成物の用途としては特に洗眼剤が好ましい。
【0084】
本発明の水性眼科組成物を収容する容器としては、水性眼科組成物を収容する容器として通常用いられる容器を用いることができ、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。本発明の水性眼科組成物を収容する容器として、プラスチック製を使用する場合、該プラスチック容器の構成材質については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドのいずれか1種、これらの共重合体、または2種以上の混合体が挙げられる。また、上記共重合体としては、エチレン−2,6−ナフタレート単位、アリレート単位、エチレンテレフタレート単位、プロピレン単位、エチレン単位、イミド単位のいずれか1種を主体として、他のポリエステル単位、イミド単位を含む共重合体が挙げられる。尚、本発明において例えばポリエチレンテレフタレート製容器と記載する場合は、容器の構成材質全体の重量に対し、ポリエチレンテレフタレートが50w/w%以上であるものを意味する。
【0085】
また、本発明の水性眼科組成物を収容する容器に備えられているノズルなどの容器注口周辺部についても、その構造、構成素材等については特に制限されるものではない。ノズルなどの容器注口周辺部の構造については、眼科組成物用容器(例えば点眼剤容器)の注出口(例えばノズル)として一般的に採用されている構造であればよく、容器本体と一体に成形されていてもよく、容器本体とは別に成形されていても良い。注口周辺部また注出口(例えばノズル)の構成素材については、例えば、上記プラスチック容器の構成素材と同様のものが例示される。
【0086】
特に、柔軟性、コスト面、及び/又は滴下量のバラツキ抑制効果を一層良好にさせるという観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンを構成素材として含む注出口が好適である。ポリエチレンの種類としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が挙げられるが、中でも低密度ポリエチレンを構成素材として含む注出口が好適である。また、注出口としては、点眼剤容器に用いられるノズルが好適である。
【0087】
本発明の水性眼科組成物を収容する容器及び容器注口周辺部の好ましい組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート製容器とポリエチレン製容器注口周辺部の組み合わせ、より好ましくはポリエチレンテレフタレート製点眼容器とポリエチレン製ノズルの組み合わせ、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート製点眼容器と低密度ポリエチレン製ノズルの組み合わせであり、このような組み合わせとすることで、本発明における滴下量のバラツキ抑制効果を良好に発揮することができる。
【0088】
本発明の水性眼科組成物は、消泡時間を短縮させ、使用時の滴下量のバラツキを抑制し、毎回の使用で一定量を点眼することができるので、特に薬理活性成分及び/又は生理活性成分を含有する点眼剤として適するものである。このような点眼剤の用途として、ドライアイ用点眼剤、充血除去用点眼剤、抗菌用点眼剤、抗炎症用点眼剤、痒み抑制用点眼剤、疲れ目抑制用点眼剤などが挙げられる。
【0089】
また、本発明は、別の観点から、水性眼科組成物の製造のための、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と(B)ゴマ油の使用も提供する。
【0090】
更に、本発明は、別の観点から、水性眼科組成物としての、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、及び(B)ゴマ油を含む組成物の使用も提供する。
【0091】
更に、本発明は、別の観点から、水性眼科組成物としての使用のための、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、及び(B)ゴマ油を含む組成物を提供する。
【0092】
[2.消泡時間の短縮方法]
前述したように、本発明の水性眼科組成物では、(A)成分及び(B)成分を含有させることによって、水性眼科組成物において消泡時間を短縮させることができ、更にその結果、使用時の滴下量のバラツキを抑制することができる。
【0093】
従って、本発明は、更に別の観点から、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B)ゴマ油を、水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における消泡時間を短縮させる方法を提供する。
【0094】
また、本発明は、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物に、(B)ゴマ油を配合することを含む、該水性眼科組成物における消泡時間を短縮させる方法をも提供する。
【0095】
また、本発明は、(A) ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B)ゴマ油を、水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における使用時の滴下量のバラツキを抑制する方法を提供する。
【0096】
これらの方法において、(A)成分及び(B)成分が共存するのであれば、それらの添加は同時であっても、別々であってもよく、その順序も特に限定されない。使用する(A)成分及び(B)成分の種類、それらの含有量(または配合量)、含有比率、その他に配合する成分の種類、含有量(または配合量)、水性眼科組成物の製剤形態、容器の種類、組み合わせ、実施方法等については、前記「1.水性眼科組成物」と同様である。
【0097】
なかでも、これらの方法は、水性眼科組成物が、点眼剤、コンタクトレンズ装着液の場合に好適に適用される。
【0098】
なお、本明細書において、水性眼科組成物における消泡時間が短縮されているか否かは、後述の実施例に記載の方法によって判定することが可能である。
【0099】
[3.保存効力の増強方法]
また、前述したように、(A)成分及び(B)成分を含有させることによって、水性眼科組成物において保存効力を増強させることができる。
【0100】
従って、本発明は、更に別の観点から、 (A)ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B)ゴマ油を、水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における保存効力を増強する方法を提供する。
【0101】
この方法において、(A)成分及び(B)成分が共存するのであれば、それらの添加は同時であっても、別々であってもよく、その順序も特に限定されない。使用する(A)成分及び(B)成分の種類、それらの含有量(または配合量)、含有比率、その他に配合する成分の種類、含有量(または配合量)、水性眼科組成物の製剤形態、容器の種類、組み合わせ、実施方法等については、前記「1.水性眼科組成物」と同様である。
【0102】
なかでも、これらの方法は、水性眼科組成物が、マルチドーズ型の水性眼科組成物、即ち製品を一旦開封した後、数回以上に亘り使用される水性眼科組成物に対して好適に用いられる。このような水性眼科組成物としてはマルチドーズ型の点眼剤、マルチドーズ型の洗眼剤、マルチドーズ型のコンタクトレンズ装着液、マルチドーズ型のコンタクトレンズケア用品が挙げられる。
【0103】
なお、本明細書において、水性眼科組成物における保存効力が増強されているか否かは、後述の実施例に記載の方法によって判定することが可能である。
【0104】
[4.光安定化方法]
前述した通り、水性眼科組成物中に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と共に、(B)ゴマ油を配合することによって、水性眼科組成物に含まれるポリオキシエチレンヒマシ油の光分解を抑制することができる。
【0105】
従って、本発明は、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物に、(B)ゴマ油を配合することを含む、該水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法を提供するものである。
【0106】
また、本発明は、水性眼科組成物中に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、及び(B)ゴマ油を配合することを含む、該水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法を提供するものである。
【0107】
上記した方法において、水性眼科組成物中に(A) 成分と(B)成分が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。また、(A)成分及び(B)成分については、各成分の種類や含有量、含有比率、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の水性眼科組成物と同様である。
【0108】
なお、本明細書において、水性眼科組成物における光安定性が改善されているか否かは、後述の実施例に記載の方法によって判定することが可能である。
【実施例】
【0109】
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
【0110】
[
試験例1 消泡時間に関する試験(1)]
下記表1〜表3に示す組成の水性眼科組成物を常法により調製し、これらを用いて、消泡時間を評価した。ポリオキシエチレンヒマシ油10としては、医薬品添加物規格2003のポリオキシエチレンヒマシ油の規格に適合する酸化エチレンの平均付加モル数が10のものを用い、ゴマ油としては、SIGMA製のものを用いた。
【0111】
次いで、50mL容量のガラス製遠沈管に各水性眼科組成物を30mLずつ充填し、それらをRECIPAD SHAKER SR−2w(TAITEC)を用いて、1500回振とうした。振とう終了直後、目視により、泡部分と水溶液部分を確認し、泡部分の容積を測定した。次に、それらを静置し、経時的に泡部分の容積を測定し、泡が完全に消失するまでの所要時間を測定した。
【0112】
各コントロール及び実施例の消泡時間に基づいて、ゴマ油による消泡時間の短縮率を下記式により算出した。短縮率が大きいほど、泡の消える速度が速いことを意味する。
【0113】
消泡時間短縮率(%)=(対応するコントロールの消泡時間−各実施例の消泡時間)/(対応するコントロールの消泡時間)×100
なお、対応するコントロールとは、具体的には、実施例1−1、1−2についてはコントロール1、実施例2−1、2−2についてはコントロール2、実施例3−1、3−2についてはコントロール3、実施例4−1、4−2についてはコントロール4、実施例5−1、5−2についてはコントロール5、実施例6−1、6−2についてはコントロール6である。結果を表1〜表3に併せて示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
表1〜表3に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油10を含有し、ゴマ油を含有しない水性眼科組成物(コントロール1〜6)と比較して、各濃度のポリオキシエチレンヒマシ油10と共にゴマ油を含有する水性眼科組成物(実施例1−1〜6−2)では、いずれも大幅に消泡時間が短縮されることが確認できた。
【0118】
[
試験例2 消泡時間に関する試験(2)]
下記表4及び表5に示す組成の水性眼科組成物を常法により調製し、消泡時間を評価した。ポリオキシエチレンヒマシ油35としては、医薬品添加物規格2003のポリオキシエチレンヒマシ油の規格に適合する酸化エチレンの平均付加モル数が35のものを用い、ゴマ油としては、試験例1と同じものを用いた。
【0119】
これらの水性眼科組成物を用い、試験例1と同様の方法で、ゴマ油による消泡時間の短縮率を下記式から算出した。尚、消泡時間は、試験例1に比べ長時間に亘ったため、当初の泡が半減するまでの所要時間を泡半減期として評価し、その短縮率を下記式により算出した。短縮率が大きいほど、泡の消える速度が速いことを意味する。
【0120】
泡半減期短縮率(%)=(対応するコントロールの泡半減期−各実施例の泡半減期)/(対応するコントロールの泡半減期)×100
なお、対応するコントロールとは、具体的には、実施例7についてはコントロール7、実施例8についてはコントロール8、実施例9についてはコントロール9である。結果を表4及び表5に併せて示す。
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
表4及び表5に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油35を含有し、ゴマ油を含有しない水性眼科組成物(コントロール7〜9)と比較して、各濃度のポリオキシエチレンヒマシ油35と共にゴマ油を含有する水性眼科組成物(実施例7〜9)では、いずれも大幅に泡半減期が短縮されることが確認できた。
【0124】
[
試験例3 消泡時間に関する試験(3)]
下記表6及び表7に示す組成の水性眼科組成物を常法により調製し、消泡時間を評価した。ポリオキシエチレンヒマシ油35としては、試験例2と同じものを用い、ヒマシ油としては、WAKO製のものを用いた。表中、ビタミンA油としては、ビタミンAであるパルミチン酸レチノールを55重量%とヒマワリ油を45重量%含有するものであり、ビタミンAの量に関する国際単位であるIUに換算すると、100万IU/gのものを用いた。これらの水性眼科組成物を用い、試験例2と同様の方法で、泡半減期の短縮率を下記式から算出した。
【0125】
泡半減期短縮率(%)=(対応するコントロールの泡半減期−各比較例の泡半減期)/(対応するコントロールの泡半減期)×100
なお、対応するコントロールとは、具体的には、比較例1についてはコントロール10、比較例2についてはコントロール11、比較例3、4についてはコントロール12である。結果を表6及び表7に併せて示す。
【0126】
【表6】
【0127】
【表7】
【0128】
表6及び表7に示す通り、各濃度のポリオキシエチレンヒマシ油35と共に、ヒマシ油又はビタミンA油を含有する水性眼科組成物(比較例1〜4)では、ポリオキシエチレンヒマシ油35を含有しヒマシ油及びビタミンA油をいずれも含有しない水性眼科組成物(コントロール10〜12)と比較した場合に、泡半減期が同程度であるか、或いは泡半減期が延長されており、消泡時間を短縮させる効果が認められなかった。
【0129】
[
試験例4 保存効力に関する試験]
下記表8に示す水性眼科組成物を常法に従って調製して、下記の方法で各水性眼科組成物の保存効力試験を実施した。なお、ポリオキシエチレンヒマシ油10及びゴマ油としては、試験例1と同じものを用いた。
【0130】
まず、Staphylococcusaureus(ATCC6538)を、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト斜面培地の表面に接種して、33℃で、24時間培養した。培養菌体を白金耳で無菌的に採取し、適量の滅菌生理食塩水に浮遊させて、約1×10
6CFU/mLの生菌を含む細菌浮遊液を調製した。なお、浮遊液の生菌数は、別途培養して計測した。次に、15mLCORNINGコニカルチューブ(PET)に、ろ過滅菌した各水性眼科組成物を5mLずつ充填した。この水性眼科組成物に、生菌数(最終濃度)が約10
4CFU/mLとなるよう、Staphylococcus aureus菌液(生理食塩水で懸濁)を接種し、よく攪拌して試料とした。試料を48時間、遮光下23℃で保存した。48時間後に菌を含む試料を計数に適切な濃度となるよう調製し、レシチン・ポリソルベート80が添加されたソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・寒天培地(SCDLP寒天培地)上に播種し、33℃にて一晩培養後、観察されたコロニー数をカウントする事により、生菌数を求めた。結果を表8に併せて示す。
【0131】
【表8】
【0132】
表8に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油10及びゴマ油を共に含まない比較例5の水性眼科組成物と比較すると、ポリオキシエチレンヒマシ油10のみを含有する比較例6の水性眼科組成物では、生菌数は殆ど変わらず、比較例7の水性眼科組成物では菌数が120まで減少したが、ゴマ油のみを含有する比較例8の水性眼科組成物については、比較例5の水性眼科組成物と比べて48時間後の菌数が多く、ゴマ油単独では保存効力を増強する作用がなく、却って菌の減少を遅らせることが判った。これに対して、ポリオキシエチレンヒマシ油10とゴマ油を含有する実施例10及び11の水性眼科組成物では、比較例6及び7の水性眼科組成物と比べて、菌の減少が加速された。これにより、ポリオキシエチレンヒマシ油10とゴマ油を含有することによって、保存効力が増強されることが確認できた。
【0133】
[
試験例5 光安定性に関する試験]
下記表9に示す組成の水性眼科組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。なお、ポリオキシエチレンヒマシ油10及びゴマ油としては、試験例1と同じものを用いた。
【0134】
次いで、調製した水性眼科組成物を10mL容量ガラススクリューバイアルに5mLずつ充填した。光安定性試験装置(「Light-TronLT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65ランプを光原として、室温の下、5000lxの光を120時間連続照射し、水性眼科組成物に対して積算照射量60万lx・hrの光を曝光した。曝光後、HPLCを用いて水性眼科組成物におけるポリオキシエチレンヒマシ油10の含有量を定量し、下記式に従い、残存率を算出した。
【0135】
残存率(%)=(光照射後のポリオキシエチレンヒマシ油10含有量)/(光照射前のポリオキシエチレンヒマシ油10含有量)×100
更には、次式を用いて、光安定性改善率(%)を算出した。算出の結果を表9に併せて示す。
【0136】
光安定性改善率(%)={(実施例12の残存率/比較例9の残存率)−1}×100
【0137】
【表9】
【0138】
表9に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油10を含有する水性眼科組成物(比較例9)に対して、ポリオキシエチレンヒマシ油10と共に、ゴマ油を含有する水性眼科組成物では、ポリオキシエチレンヒマシ油10の残存率が顕著に向上し、ポリオキシエチレンヒマシ油10の光安定性改善率が上昇することが確認された(実施例12)。
【0139】
この結果から、ポリオキシエチレンヒマシ油と共に、ゴマ油を含有する水性眼科組成物は、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンヒマシ油の有する性質を長期間安定して発揮でき、洗眼剤などの用途に適したものであることが示された。
【0140】
[試験例6 保存効力に関する試験(2)]
下記表10に示す水性眼科組成物を常法に従って調製して、下記の方法で各水性眼科組成物の保存効力試験を実施した。なお、ポリオキシエチレンヒマシ油35及びゴマ油としては、試験例1、2と同じものを用いた。
【0141】
各水性眼科組成物を用いて、試験例4と同様の方法で、生菌数を求めた。結果を表10に併せて示す。
【0142】
【表10】
【0143】
表10に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油35及びゴマ油を共に含まない比較例10の水性眼科組成物と比較して、ポリオキシエチレンヒマシ油35のみを含有する比較例11の水性眼科組成物については、48時間後の菌数が多く、ポリオキシエチレンヒマシ油35単独では保存効力を増強する作用がなく、却って菌の減少を遅らせることが判った。これに対して、ポリオキシエチレンヒマシ油35とゴマ油を含有する実施例13及び14の水性眼科組成物では、比較例10の水性眼科組成物と比べて、菌の減少が加速された。これにより、ポリオキシエチレンヒマシ油35とゴマ油を含有することによって、保存効力が増強されることが確認できた。
【0144】
製剤例
表11及び表12に記載の処方で、点眼剤(製剤例1−8)、洗眼剤(製剤例9及び10)、並びにソフトコンタクトレンズ用点眼剤(製剤例11)が調製される。
【0145】
【表11-1】
【0146】
【表11-2】
【0147】
【表12-1】
【0148】
【表12-2】