【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。尚、本発明の実施例における評価方法は下記の通りである。上昇融点については、基準油脂分析試験法2.2.4.2−1996にて、SFCについては、基準油脂分析試験法2.2.9−2013固体脂含量(NMR法)にて分析を行った。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
曳糸性チーズ様加工食品の品質評価
(曳糸性)
曳糸性の評価方法は、シュレッド状(縦35mm×横5mm×厚さ2mm)に成形した曳糸性チーズ様加工食品10g分をアルミ箔の上に乗せ、100V、810Wのオーブンで3分間加熱した後、測定装置として、株式会社山電製「クリープメータ レオナー(RE−3305S)」、測定プランジャーとして、同社規定の円盤型プランジャーNo.37(直径11.3mm、厚さ1mm)を使用して下記の条件で測定した。
円盤型プランジャーの先端が曳糸性チーズ様加工食品と接触するようにセットし、曳糸性チーズ様加工食品を10mm/secのテーブルスピードで下方向に移動させ、プランジャーの先端から曳糸性チーズ様加工食品が剥離した時点で移動を停止した。アルミ箔上の曳糸性チーズ様加工食品の表面とプランジャーの先端との距離を測定し、3回測定した平均を曳糸性の長さとした。プランジャーから剥離せずに装置の測定限界(77mm)に達した場合は77mm以上とした。なお曳糸性評価判定は下記に示す基準とした。
◎:60mm以上 ○:20mm以上60mm未満 ×:20mm未満
(加熱溶融性)
加熱溶融性の評価方法は以下の条件で評価した。シュレッド状(縦35mm×横5mm×厚さ2mm)に成形した曳糸性チーズ様加工食品10g分をアルミ箔の上に乗せ、100V、810Wのオーブンで加熱し、溶融性が良好なものから以下の基準にて3段階で評価した。
◎:3〜5分で溶融し、かつ程よい流動性が見られる
○:3〜5分で溶融するが、流動性は見られない
×:5分経過して加熱してもほとんど溶融しない
(成形加工適性)
成形加工適性は以下の2つの方法によって評価した。
(1) カット適性
5℃で3日間冷蔵保管した曳糸性チーズ様加工食品を室温下、ナイフで切断した時の切り易さについて以下の基準で評価した。
◎:曳糸性チーズ様加工食品がナイフに付着することなく切れ、ナイフがほとんど汚れない
○:曳糸性チーズ様加工食品がナイフに付着するが、ナイフとチーズ様食品は容易に分離する
×:曳糸性チーズ様加工食品がナイフに付着し、ナイフとチーズ様食品が容易に分離しない
(2) 硬度
直径50mm、深さ25mmのカップに曳糸性チーズ様加工食品を30g入れ、5℃で3日間冷蔵保管した。株式会社山電製「クリープメータ レオナー(RE−3305S)」に該サンプルをセットし、プランジャーNo.5(5mm×22mm)、試料台速度を5mm/secに設定し、プランジャーを挿入した時の応力(gf)を読みとった。硬度は以下の基準で評価した。
◎:1000gf以上
○:500gf以上1000gf未満
×:500gf未満
(30℃での油脂の分離)
シュレッド状(縦35mm×横5mm×厚さ2mm)に成形した曳糸性チーズ様加工食品5g分を30℃に静置させ、以下の基準で評価した。
〇:4時間経過しても曳糸性チーズ様加工食品の表面に油滴(=オイルオフ)が見られない
×:1時間以上4時間未満で曳糸性チーズ様加工食品の表面に油滴が見られる
(食感の評価)
ダイス状(縦20mm×横20mm×厚さ20mm)に成形した20℃の曳糸性チーズ様加工食品を食べた時の感触を、以下の基準で評価した。
○:チーズ特有の弾力感、粘りを感じる
×:チーズ特有の弾力感、粘りを感じない
【0032】
(実施例1)ヒドロキシプロピルデンプン:タピオカ
水相部として食塩を1.5質量部、水を45.5質量部添加して昇温し、50℃に達した後、酸化デンプン1(アミロース含量:21質量%、カルボキシル基量:1.1質量%)を26.0質量部、ヒドロキシプロピルデンプン1を5.0質量部添加し、プロペラミキサー(1,300rpm)で混合攪拌して溶解させた。デンプンがしっかり膨潤糊化した後、油脂1を22.0質量部添加し乳化させ85℃まで混合攪拌した。85℃に到達後、そのままの回転数で1分間攪拌保持した。加熱乳化したチーズ様乳化物を容器に充填し、5℃の冷蔵庫で3日間冷却して曳糸性チーズ様加工食品を得た。このものについて曳糸性や加熱溶融性、成形加工適性等を評価した。
該曳糸性チーズ様加工食品のタンパク質含量は0.0質量%、酸化デンプンの中のアミロース含量は21.0質量%、酸化デンプン/ヒドロキシプロピルデンプン比は5.2、5℃における硬度は1,800gfであり、曳糸性及び810W、3分間加熱した際の加熱溶融性、成形加工適性とも良好な物性であった。品質評価結果は表3に示した。
【0033】
(実施例2) ヒドロキシプロピルデンプン:馬鈴薯
表3に示した配合により、実施例1と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。実施例1と同様の評価を行ったところ、曳糸性及び加熱溶融性、成形加工適性とも良好な物性であった。品質評価結果は表3に示した。
【0034】
(実施例3〜10) 酸化デンプンの組み合わせ
表3に示した配合により、実施例1〜2において酸化デンプンの由来や、酸化デンプンの組み合わせを変えた以外は同様の手順で製造し、曳糸性チーズ様加工食品を得た。品質評価結果は表3に示した。
【0035】
(実施例11) 酸化デンプン/ヒドロキシプロピルデンプン比:3.1
水相部として食塩を2.5質量部、クエン酸を0.15質量部、アミノ酸を0.2質量部、酵母エキスを0.15質量部、水を46.8質量部添加して昇温し、50℃に達した後、酸化デンプン1(アミロース含量:21質量%、カルボキシル基量:1.1質量%)を22.0質量部、ヒドロキシプロピルデンプン1を7.0質量部添加し、プロペラミキサー(1,300rpm)で混合攪拌して溶解させた。デンプンがしっかり膨潤糊化した後、油脂2を21.0質量部添加し、乳化させ85℃まで混合攪拌した。85℃に到達後、チーズ香料を0.2質量部添加してそのままの回転数で1分間攪拌保持した。加熱乳化したチーズ様乳化物を容器に充填し、5℃の冷蔵庫で3日間冷却して曳糸性チーズ様加工食品を得た。品質評価結果は表4に示した。
【0036】
(実施例12) 酸化デンプン/ヒドロキシプロピルデンプン比:13.0
表4に示した配合により、実施例11と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表4に示した。
【0037】
(実施例13〜16)他の油脂の使用:パーム油、パームステアリン、配合油脂、バターオイル
表4に示した配合により、実施例11と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表4に示した。
【0038】
(実施例17)乳以外のタンパク質使用:大豆タンパク質
表4に示した配合により、実施例11と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表4に示した。
【0039】
(実施例18)増粘剤使用:アラビアガム
表4に示した配合により、実施例11と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表4に示した。
【0040】
(実施例19)チーズ風味以外の加工食品:チョコレート風味
水相部として砂糖を6.0質量部、水を44.3質量部添加して昇温し、50℃に達した後、酸化デンプン1(アミロース含量:21質量%、カルボキシル基量:1.1質量%)を19.0質量部、酸化デンプン2(アミロース含量:25質量%、カルボキシル基量:0.4質量%)を4.0%、ヒドロキシプロピルデンプン1を4.0質量部添加し、プロペラミキサー(1,300rpm)で混合攪拌して溶解させた。デンプンがしっかり膨潤糊化した後、ココアパウダーを10.0質量部添加し、デンプンとよく馴染むように混合攪拌した。そこに油脂1を12.5質量部添加し、乳化させ85℃まで混合攪拌した。85℃に到達後、チョコレート香料を0.2質量部添加してそのままの回転数で1分間攪拌保持した。加熱乳化したチョコレート様乳化物を容器に充填し、5℃の冷蔵庫で3日間冷却して曳糸性チョコレート様加工食品を得た。品質評価結果は表4に示した。
【0041】
(実施例20)乳化剤使用:ポリグリセリン脂肪酸エステル
表4に示した配合により、実施例11と同様の手順でチーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表4に示した。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
(比較例1)酸化デンプン以外のデンプン:酸処理デンプン
水相部として食塩を1.5質量部、水を45.5質量部添加して昇温し、50℃に達した後、酸処理デンプンを26.0質量部、ヒドロキシプロピルデンプン1を5.0質量部添加し、プロペラミキサー(1,300rpm)で混合攪拌して溶解させた。デンプンがしっかり膨潤糊化した後、油脂1を22.0質量部添加し乳化させ85℃まで混合攪拌した。85℃に到達後、そのままの回転数で1分間攪拌保持した。加熱乳化したチーズ様乳化物を容器に充填し、5℃の冷蔵庫で3日間冷却して曳糸性チーズ様加工食品を得た。品質評価結果は表5に示した。
【0045】
(比較例2)酸化デンプン以外のデンプン:ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン
表5に示した配合により、酸処理デンプンをヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンに代えた以外は比較例1と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造しようとしたが、水相部が高粘度となり、油相部と乳化せずチーズ様加工食品は得られなかった。品質評価結果は表5に示した。
【0046】
(比較例3)酸化デンプン以外のデンプン:酸化デンプン+未加工デンプン
表5に示した配合により、比較例1と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表5に示した。
【0047】
(比較例4)アミロース含量:23.0質量%以上
表5に示した配合により、比較例1と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表5に示した。
【0048】
(比較例5〜6)油脂の変更:大豆油、パームオレイン
表5に示した配合により、比較例1と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表5に示した。
【0049】
(比較例7)酸化デンプン/ヒドロキシプロピルデンプン含有比:下限以下(1.0)
表5に示した配合により、比較例1と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表5に示した。
【0050】
(比較例8)酸化デンプン/ヒドロキシプロピルデンプン含有比:上限以上(26.0)
表5に示した配合により、比較例1と同様の手順で曳糸性チーズ様加工食品を製造した。品質評価結果は表5に示した。
【0051】
【表5】