特許第6190587号(P6190587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190587マイクロメカニクスによるコリオリ式回転速度センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190587
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】マイクロメカニクスによるコリオリ式回転速度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5712 20120101AFI20170821BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20170821BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   G01C19/5712
   B81B3/00
   H01L29/84 Z
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-277887(P2012-277887)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-140147(P2013-140147A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2015年12月8日
(31)【優先権主張番号】10 2011 056 971.5
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398071266
【氏名又は名称】マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ ロッキ
(72)【発明者】
【氏名】エレオノーラ マルケッティ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンソ ベルティーニ
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−525514(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0023600(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/032415(WO,A1)
【文献】 特表2008−514968(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/029878(WO,A1)
【文献】 特開平11−325905(JP,A)
【文献】 特開2002−207048(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0152019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/56 − 19/5783
B81B 1/00 − 7/04
B81C 1/00 − 99/00
H01L 27/20
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転速度を検出するためのマイクロメカニクスによるコリオリ式回転速度センサであって、
基板と、
互いに直交するよう配置された測定軸(X軸)、検出軸(Y軸)および、駆動軸(Z軸)と、
前記基板と平行なX−Y平面に配置され、Y軸に沿って配置される2つの中心サスペンションによって、それぞれが前記基板に回転可能に接続される第1および第2の駆動質量体(2)と、
前記中心サスペンションにおいて、前記駆動軸(Z)に関して前記駆動質量体(2)を回転振動させる駆動手段と、
前記駆動質量体(2)の動きを検出する検出素子(8)と、
前記中心サスペンションを挟んでX軸方向に配列され、弾性を有する複数の連結要素(5)と、を備え、
それぞれの前記連結要素は、前記Y軸の両側において、前記駆動質量体(2)を互いに連結し、かつ、前記駆動質量体(2)を、互いに調整し合うように連結して振動させるために、前記駆動質量体(2)から距離を置いて配置されると共に、X−Y平面において前記駆動質量体(2)を偏向させる弾性を有する
回転速度センサ。
【請求項2】
前記連結要素(5)は、前記X軸方向において、前記駆動質量体(2)の最外端に取り付けられる、請求項1に記載の回転速度センサ。
【請求項3】
前記連結要素(5)は、カンチレバーおよび弾性連結バネ(6’’’)を含む、請求項1および2のいずれかに記載の回転速度センサ。
【請求項4】
前記弾性連結バネ(6’’’)は、前記2つの駆動質量体の間にある空間に突出する、請求項3に記載の回転速度センサ。
【請求項5】
前記連結要素(5)は、前記第1および第2の駆動質量体(2)の間に配置される、請求項1から4のいずれかに記載の回転速度センサ。
【請求項6】
前記連結要素(5)は、前記弾性連結バネ(6’’’)によって前記第1および第2の駆動質量体(2)に連結される第1の質量部(14)である、請求項3から5のいずれかに記載の回転速度センサ。
【請求項7】
前記第1の質量部(14)によって第2の質量部(15)をフレーム状で囲い、バネ(16)を用いて、前記第1の質量部(14)と前記第2の質量部(15)とを連結する、請求項6に記載の回転速度センサ。
【請求項8】
前記連結要素(5)の前記第2の質量部(15)は、前記X軸に関して回転可能なように、アンカーによって前記基板に連結される、請求項7に記載の回転速度センサ。
【請求項9】
前記基板と前記駆動質量体(2)、および/または、前記第1の質量部(14)と前記第2の質量部(15)との間には、検出素子(8)が配置される、請求項7または8に記載の回転速度センサ。
【請求項10】
前記駆動質量体(2)と前記第1の質量部(14)との間、および/または、前記第1の質量部(14)と前記第2の質量部(15)との間には、前記駆動質量体(2)、前記第1の質量部(14)、および、前記第2の質量部(15)の変位を制限する変位ストッパ(19、20)が配置される、請求項7から9のいずれかに記載の回転速度センサ。
【請求項11】
前記駆動質量体(2)には駆動要素(7)が配置される、請求項1から10のいずれかに記載の回転速度センサ。
【請求項12】
前記駆動要素(7)にはフィードバック要素(12)が設けられている、請求項11に記載の回転速度センサ。
【請求項13】
前記駆動質量体(2)は、複数のアンカーバネ(4)によって前記中心サスペンションに配置される、請求項1から12のいずれかに記載の回転速度センサ。
【請求項14】
前記中心サスペンションと前記駆動質量体(2)との間には中心ストッパ(21)が配置される、請求項1から13のいずれかに記載の回転速度センサ。
【請求項15】
前記基板と前記駆動質量体(2)との間、および/または、前記駆動質量体(2)と前記アンカーバネ(4)との間にはストッパ(13)が配置される、請求項13に記載の回転速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに直交するよう配置された基板、測定軸(X軸)、検出軸(Y軸)、および、駆動軸(Z軸)を有する、回転速度を検出するためのマイクロメカニクスによるコリオリ式回転センサ(MEMS回転速度センサ)に関する。回転速度センサは、基板と平行なX−Y平面に配置された第1および第2の駆動質量体を有し、各駆動質量体は、中心サスペンションによって基板に回転可能に連結される。2つの中央サスペンションは、Y軸に沿って配置される。各中央サスペンションには、駆動軸に関して駆動質量体を回転振動させる駆動手段が設けられている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの駆動質量体を有する、MEMS技術を用いた従来の回転速度センサが開示されている。2つの駆動質量体はいずれも基板に取り付けられ、この基板に対して変位可能に配置される。2つの駆動質量体は、バネによって互いに連結され、それぞれの回転中心に関して回転運動する。2つの駆動質量体は、対応する駆動手段によって駆動されるが、中央にあるバネによってほぼ逆相の動きになる。基板が測定軸に関して回転すると、回転振動している2つの駆動質量体にコリオリ力が作用することによって、これらの駆動質量体は検出軸に関して同じ方向および反対方向に回転するかまたは傾く。その傾き動作、および、その結果生じる駆動質量体と基板との間の距離の変化によって、駆動質量体と基板との間に配置された電極から電気信号が生成され、その結果、基板が回転運動する。
【0003】
一般的なコリオリ式回転速度センサは、例えば、車両または他の装置など、センサが衝撃にさらされるところで用いられている。最先端の技術による回転速度センサの短所は、外力の影響を比較的受けやすいということである。それによって測定値が不正確になるか、または、センサが損傷する可能性さえある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,635,640号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、誤測定を防ぐために、その機械的構成による外力の影響を受けにくく、衝撃効果を検出できる、耐衝撃性に優れた回転センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載された、マイクロメカニクスによるコリオリ式回転速度センサによって達成される。
【0007】
本発明に従うマイクロメカニクスによるコリオリ式回転速度センサは、測定軸(X軸)に関する回転速度を検出するために提供される。回転速度センサは、基板と、第1および第2の駆動質量体とを有する。測定軸(X軸)、検出軸(Y軸)、および、駆動軸(Z軸)は、互いに直交するように配置される。第1および第2の駆動質量体は、基板と平行なX−Y平面に配置される。各駆動質量体は、中心のサスペンションによって基板に回転可能に連結される。2つの中心サスペンションがY軸に沿って配置されることにより、2つの駆動質量体は、互いにほぼ平行に位置合わせされる。各中央サスペンションには、駆動軸に関して駆動質量体を回転振動させる手段がさらに設けられる。一般的に、このような駆動手段は、極性を交互に替えることにより中心サスペンションの周りで駆動質量体を振動させる電極である。
【0008】
本発明によれば、衝撃に特に強い回転速度センサを提供すべく、少なくとも1つの弾性連結要素が駆動質量体の検出軸(Y軸)の両側に、Y軸とは間隔を置いて配置される。それによって2つの駆動質量体は互いに連結され、2つの駆動質量体の振動が相互に調整されることができる。回転速度センサに衝撃が与えられた場合、この連結要素によって、2つの駆動質量体は逆位相ではなく同相で偏向する。したがって、2つの駆動質量体は、通常操作においては互いに逆方向に変位するが、衝撃によって同じ方向に偏向することになる。これら2つの駆動質量体を連結要素で連結することにより、回転速度センサに衝撃が与えられた場合に同一の方向に偏向するようになる。よって、基板が回転すると、基板と駆動質量体との間に配置された検出素子は、通常操作では正反対の信号を生成する一方、回転速度センサに衝撃が与えられることにより、例えば左側など、Y軸の一方の側に配置された検出素子は、同一の信号を生成するようになる。その直後、電気信号が分析されることにより、回転速度センサに衝撃が与えられて実際の回転速度の測定値が誤っていることが決定される。
【0009】
また、連結要素によってシステムをさらに安定させることができる。なぜなら、Y軸に関して同じ方向に偏向している場合の2つの駆動質量体は互いに影響し合っているおり、回転速度センサの衝撃状態に関する感度を著しく下げるからである。
【0010】
駆動質量体は、X軸(測定軸)方向への伸長を含む。駆動質量体の一実施形態としては、有利には、駆動質量体の、X軸の方向における最外端に連結要素が連結される。駆動質量体が駆動軸に関して振動すると、連結要素が比較的大きく偏向する。衝撃が与えられると、2つの駆動質量体の力が互いに対して最も強く作用する。なぜなら、中心サスペンションおよび駆動質量体の回転軸に関して大きなモーメントアームが得られるからである。
【0011】
連結要素の好適な実施形態では、連結要素はカンチレバーおよび弾性連結バネを含む。したがって目的とする方法で、相互作用に影響を及ぼすことができる。特に、連結バネおよびカンチレバーの設計は、2つの駆動質量体の逆位相での振動に影響を及ぼすことができる。したがって、連結バネは、互いに向かって移動している駆動質量体の一方の側の端部では圧縮され、2つの駆動質量体が同時に互いから離れる逆側の端部では伸長されるよう有利に配置される。これらのバネは、同じ設計で、X−Y平面における弾性力に優れるように設けられている。Z方向の偏向に関しては、バネは、通常動作において2つの駆動質量体が互いに逆方向で偏向することを可能にするだけでなく、回転速度センサへの衝撃の影響で起きうるような同じ方向における偏向の場合は、2つの駆動質量体に対して一定の押力をかける。
【0012】
連結バネの特性に良い影響を与え、回転速度センサの設置スペースをできるだけ小さく保つように、連結バネは2つの駆動質量体2の間にある空間に突出する。よって、弾性力および剛性を所望の様態で発揮することができるよう、連結バネは、蛇行していることが望ましい。
【0013】
本発明の別の実施形態では、連結要素は、2つの駆動質量体の間に配置される。これによって、2つの駆動質量体が互いに近づく/互いから離れるという異なる動作に関して2つの駆動質量体の連結をより安定させることができるので、回転速度センサはさらに堅牢になる。
【0014】
特に好適な実施形態では、連結要素は、バネによって2つの駆動質量体に結合された第1の質量部である。例えば、電極などの検出素子を設ければ、回転速度を測定するためであろうと、センサの衝撃条件を検出するためであろうと、この第1の質量部によって駆動質量体のX−Y平面外の動きを検出することができる。連結要素は、好適にはバネによって駆動質量体に取り付けられる。これら2つの連結要素は、Y軸の両側に配置される。駆動質量体が逆位相で駆動する場合、バネは伸縮するが、連結要素は、2つの駆動質量体の間に不動のままでいる。回転速度を検出するために駆動質量体が逆位相で偏向する場合、連結要素が傾き、この連結要素の動きは、電圧を単独でまたは駆動質量体の位置変化と共に変更することにより、検出素子によって検出される。2つの駆動質量体が同じZ方向に偏向する場合、2つの連結要素は、駆動質量体と共に変位する。この状態も、電気検出素子によって上記の動きを検出することによって非常に明確に決定されかつ分析されることができる。
【0015】
駆動質量体および連結要素を特に安定して導くべく、第2の質量部を囲い、バネによって第2の質量部に連結されるフレーム状の第1の質量部が都合よく設けられる。これによって連結要素の安定性はさらに高まり、2つの駆動質量体およびフレーム状の第1の質量部の偏向を検出することができ、また、任意で第2の質量部の偏向も検出することができる。
【0016】
連結要素を安定させるべく、第2の質量部は、好ましくはX軸の周りを回転可能に、アンカーによって基板に取り付けられる。バネと取付けの設計としては、X軸に関する回転速度を検出するために2つの駆動質量体と、連結要素の第1および第2の質量部とが偏向するようにする。この場合の駆動質量体は、コリオリ力が生じたことによって互いに逆方向に偏向するので、連結要素、および、第1および第2の質量部は、第2の質量部の支持体に関して、または、X軸に関して傾く。しかしながら、センサに衝撃が与えられると、2つの駆動質量体は同じ方向に偏向するので、それによって特にフレーム状の第1の質量部がZ軸方向に変位し、それに合わせて駆動質量体も変位する。連結要素の第2の質量部は、アンカーのX軸に関してしか変位できず、ほとんど静止したままであり、これによってフレーム状の第1の質量部は、駆動質量体と共にX−Y平面における初期位置に戻る。これによって衝撃を受けた後もセンサは非常にすばやく確実に安定する。
【0017】
検出素子が基板と駆動質量体、および/または、第1の質量部と第2の質量部との間に配置されている場合、前述したX−Y平面外にある構成要素の動きが検出されて、分析装置にフィードバックされることができる。上述のように、この検出素子の一実施形態は、基板の一方の側と、該基板に対向する構成要素の側とに配置される電極形状であり、2つの電極間の距離が変わるたびに電流が変化することにより、検出を行う。本発明の有利な実施形態では、駆動質量体は、駆動要素、特に、櫛歯電極によって駆動される。駆動要素の交流電流により、駆動質量体は、対応する支持体、または、回転速度センサのZ軸に関して振動するようになる。
【0018】
駆動質量体が同時に正確に振動するよう、駆動質量体の振動回転運動を検出し、対応する信号を駆動コントローラに送るフィードバック要素が設けられる。それによって駆動要素に印加される交流電圧が変化し、駆動質量体の振動に影響を及ぼす。
【0019】
本発明の好適な実施形態では、駆動質量体は、複数のアンカーバネによって中心サスペンションに配置される。それによって駆動質量体は、X−Y平面に対しては安定するが、衝撃状態を検出してそれに耐えるだけでなく、回転速度も検出するために目標とする均一な偏向を生じる。
【0020】
変位した個別のパーツの損傷を防ぐべく、さまざまなストッパが設けられてよい。ストッパは、質量部の変位を制限するため、駆動質量体と連結要素の第1の質量部、および/または、第1の質量部と第2の質量部との間に好ましくは配置される。ストッパは、一般的に、隣接する質量部を損傷することなく衝撃を受け止める隆起または突起として設けられる。ストッパは、中心サスペンションと駆動質量体との間に配置されてもよい。ストッパは、基板と駆動質量体、および/または、駆動質量体と連結バネとの間に設けられると特に有利である。この場合、ストッパは、基板に強固に取り付けられることにより、駆動質量体および/または、連結あるいはアンカーバネの変位を制限する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明のさらなる効果は、以下の図面に例示される実施形態に記載される。
図1】駆動質量体の外部に連結要素が配置されている第1の実施例を示す。
図2】駆動質量体の間に連結要素が一部配置されている本発明の第2の実施形態を示す。
図3図1と同様の、本発明に従う回転速度センサを示す。
図4】2つの駆動質量体の間に連結要素が配置されている本発明のさらなる実施形態を示す。
図5a図4に従う実施形態であって、駆動質量体が逆位相で振動している様子を示す。
図5b図4に従う実施形態であって、駆動質量体が同相で振動している様子を示す。
図5c】逆位相にある偏向した駆動質量体と連結要素とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1の実施形態は、本発明に従う、2つの駆動質量体2を有するマイクロメカニクスによるコリオリ式回転速度センサ1を示す平面図である。駆動質量体2は、図における平面内に配置された基板(図示せず)と平行に配置される。駆動質量体2は、その上に配置されたアンカーバネ3およびアンカーバネ4によってそれぞれ基板に接続される。アンカーバネ4は、直交座標系のZ軸に関して回転可能である。この座標系では、Z軸は図の平面から突出しており、X軸は、駆動質量体2の縦方向に配置され、Y軸は、駆動質量体2の横方向に配置されている。X軸は測定軸となり、このことは、回転センサによってX軸に関するセンサまたは基板の回転を決定しうることを意味する。同じ平面においてX軸と直交するY軸は、検出軸を表す。基板が測定軸、すなわちX軸に関して回転すると、駆動質量体2は、Y軸に関して移動し、X−Y平面外になる。これは、駆動質量体がその駆動軸またはZ軸に関して振動する際に生じるコリオリ力によるものである。この変位は、アンカー3およびアンカー4バネによって駆動質量体2に配置され、接続された中心サスペンションによって起きうる。したがって、アンカーバネ4は、駆動質量体2をアンカー3またはZ軸に関して回転させ、駆動質量体2がY軸に関して旋回できるように設けられている。その一方、アンカーバネ4は、駆動質量体2をX軸に関しては固定させて、原則として変位させないように設けられている。
【0023】
上記説明では、図に示す平面には収まらない方向をZ軸と称していることに留意されたい。X軸は、図の平面を横切る方向にあり、Y軸は、図の上下方向を指す。このことはX軸とY軸が互いに平行移動しても当てはまる。
【0024】
2つの駆動質量体2は、連結要素5および連結バネ6によって互いに連結される。1つの連結要素5には複数の連結バネ6が設けられ、X軸方向においてそれぞれの駆動質量体2の両端部に配置される。連結要素5および連結バネ6によって、2つの駆動質量体2は同時に回転運動する。これによって、2つの駆動質量体2が逆位相で振動した場合、すなわち、2つの駆動質量体2の端部同士がそれぞれ互いに近づくかまたは互いから離れるように移動する場合に安定したシステムになり、X軸に関するセンサの回転速度を検出する場合は、2つの駆動質量体2が偏向することによって、X−Y平面外では同じ振幅になる。駆動質量体2がY軸に関して旋回するだけでなく、X−Y平面で偏向することができるように連結バネ6が設けられている。1つの連結要素の2つの連結バネは、駆動質量体2のX−Y平面外での偏向に対して反対方向に動く一方で、X−Y平面内での偏向に対しては同じ方向に動く。
【0025】
駆動質量体2を各アンカー3またはZ軸に関して回転可能にするために、駆動要素7が設けられる。駆動要素7は、駆動質量体2に設けられ、例えば、駆動質量体2をアンカー3に関して回転させることができる交流電圧が供給される櫛形電極からなる。櫛形電極の極性によって回転運動が切り替わる、すなわち、振動するので、アンカー3の周りで振動が起きる。
【0026】
基板と駆動質量体2との間には検出素子8が配置される。検出素子8は、例えば、平板コンデンサ、基板に配置されている電極、その反対側の、基板に対向する駆動質量体側に配置されている電極である。駆動質量体2をY軸に関して回転運動させるべく、検出素子8としての対向する電極間の距離を変更することによって、電気信号が変化する。この電気信号は、駆動質量体2の偏向を示すものなので、基板はX軸に関して回転する。検出素子8のこの電気信号を分析することによって、回転速度センサの回転速度を決定することができる。
【0027】
本発明のさらなる実施形態を図2に示す。図2は、図1の実施形態と同様に構成された回転速度センサ1を示す。駆動質量体2は、アンカー3およびアンカーバネ4によって、Y軸およびZ軸に関して回転可能に基板(図示せず)に取り付けられる。駆動質量体2は、駆動要素7によって駆動され、駆動質量体2のX−Y平面外の偏向は、検出素子8によって検出される。
【0028】
図1の実施形態との相違点は、連結要素5のタイプが異なることである。図2の実施形態では、別々の連結要素5’が両側にある。連結要素5’は、その上に配置されている連結バネ6’と共に、図1の連結要素5と同じように2つの駆動質量体2を連結しており、さらなる連結要素5”も設けられている。連結要素5”は、連結バネ6”によって各駆動質量体2に取り付けられている。また、連結要素5”は、アンカー10およびアンカーバネ11によって基板に取り付けられている。連結要素5’および5”がX軸に関して回転するだけでなく、Z軸に関しても回転できるようにアンカーバネ11が設けられている。連結要素5’および5”のこのような構成は、駆動質量体2が逆位相でなく同相で駆動されるときに特に好都合である。これによって駆動質量体2も回転運動し、X軸に関して回転する場合には、Y軸に関して傾くようになる。この場合、駆動質量体2の各アンカー3の周りで同相の回転振動が起きるので、コリオリ力による駆動質量体2の偏向は、同相になることが予想される。これは、2つの駆動質量体2がY軸を中心とした一方の側の領域でY軸に関して同時に上下に傾くことを意味する。逆相動作の駆動質量体2ほどにはセンサの堅牢さ、および、回転速度センサに対する衝撃の検出において有利ではなくとも、本発明による回転速度センサの動作は、このモードでも可能である。
【0029】
本発明のさらなる実施形態を図3に示す。この実施形態は、図1の実施形態と同様である。さまざまな相違点に加え、具体的な表現を特に選んでいる。駆動質量体2のそれぞれは、4つのアンカーバネによってアンカー3に取り付けられている。これによって、矢印Pの方へ駆動するために、駆動質量体2は、アンカー3またはZ軸に関して同様に回転運動することができる。そして駆動質量体2は、X−Y平面で駆動する。駆動要素7の櫛形電極が駆動質量2を駆動させる。駆動要素7は、基板に固定された静止部分と、第2の部分とによって構成され、櫛形電極は、変位可能な駆動質量体2に取り付けられている。駆動要素7の第2の部分は、互いに係合し、駆動質量体2をアンカー3に関して回転運動するよう導く。駆動要素7による駆動質量体2の回転運動を決定し、かつ、任意で修正することを可能とすべく、フィードバック要素12が設けられる。これらのフィードバック要素12も櫛形電極からなる。これらの櫛形電極は、互いに係合し、その第1の部分は基板に取り付けられ、第2の部分は、駆動質量体2と共に変位し、それに応じた電圧の変化によって駆動質量体2がZ軸に関して振動する周波数を決定する。実際の周波数と目標周波数との間に差があると決定された場合、目標周波数に合わせるように駆動要素7に働きかけることによって、駆動質量体2の周波数を適宜変更することができる。それぞれの駆動要素7の間にはフィードバック要素12が配置される。それによって、各フィードバック要素12は、回転軸Zからほぼ同じ距離を有するようになり、駆動要素7と同様の正確さで動作することができる。
【0030】
X軸方向に見られるように、2つの駆動質量体2は、それらの各端部で連結要素5’’’に連結される。連結要素5’’’は、駆動質量体2に固定されるカンチレバー形状で設けられる。カンチレバーであるそれぞれの連結要素5’’’の間に連結バネ6’’’が配置される。連結バネ6’’’は、蛇行しており、2つの駆動質量体2の間にある空間に突出する。連結要素5’’’と連結バネ6’’’とにより、回転速度を検出するために駆動質量体2がX−Y平面内において逆位相で変位するだけでなく、X−Y平面外に偏向することが可能になる。X−Y平面外での偏向も逆位相で起きる。X−Y平面外での駆動質量体2の回転運動は、符号Sによって示されている。この回転運動も、駆動質量体2の駆動と同様に逆位相で起きる。
【0031】
駆動質量体2または他の要素の損傷を防ぐべく、ストッパが設けられる。図3の実施形態では、ストッパ13が基板に取り付けられ、アンカーバネ4の領域に突出している。駆動質量体2が過度に偏向するとアンカーバネ4がストッパ13に当たるようになっているので、過度な偏向による駆動質量体2またはバネ4の損傷が防止される。
【0032】
4つのアンカーバネ4によって駆動質量体2をアンカー3に取り付けることにより、駆動質量体2がZ軸に関して良好に回転運動することに加え、良好な衝撃安定性を得ることができる。駆動質量体2は、センサ1への衝撃に応じてX軸およびY軸の両方に関して傾くことができる。 衝撃を受けた場合における駆動質量体2の同じ方向への動作は、図1および図2と同様に、図示されない検出素子によって決定されることができる。通常動作においては、検出素子8のそれぞれの電極の接近および離反は逆になることが予想されるが、そうではなく、同じように接近および離反することが決定される。このようなことが検出されると、衝撃状態が想定されるので、センサ1の回転速度を決定したと思われる測定結果は、削除するかまたは破棄されなければならない。
【0033】
さらなる実施形態を図4に示す。図4の実施形態は、衝撃状態を取り除き、センサ1を損傷から防御することに最も適している。図に示された実施形態には、2つの駆動質量体2が相対的に距離を置いて配置されている。2つのアンカー3がY軸に沿って配置され、前述の実施形態同様に、アンカー3に関する回転運動を可能にしている。それと共に、駆動要素7、フィードバック要素12、および、アンカー3に対応するアンカースプリング4も設けられている。回転速度によってコリオリ力が生じ、X軸に関してセンサ1に作用した場合、駆動質量体2は、Y軸に関して偏向してからX−Y平面外に偏向する。
【0034】
前述のX−Y平面外の駆動質量体2の回転運動は、符号Sによって示されている。この回転運動は、駆動質量体2の駆動と同様に逆位相で起きる。
【0035】
本実施形態の駆動質量体2の間には連結要素5’’’’が設けられる。連結要素5’’’’は、連結バネ6’’’’によって駆動質量体2に結合されている。連結要素5’’’’は、第1の質量部14および第2の質量部15からなる。第1の質量部14は、フレーム状に第2の質量部15を囲み、連結バネ6’’’’によって駆動質量体2に連結されている。第1の質量部14は、連結バネ16によって第2の質量部15に連結されている。連結バネ16によって、第1の質量部14は、X−Y平面において第2の質量部15に関して変位可能になる。それによって、第1の質量部14は、Y軸方向に変位できる。連結バネ6’’’’は、X軸方向およびY軸方向では固定なので、駆動質量体2が動くと、連結バネ6’’’’によって第1の質量部14および第2の質量部15も同時に動くようになる。
【0036】
第2の質量部15は、バネ17によってアンカー18に配置される。バネ17は、X軸に関する回転運動が可能なように設計されている。これによって、駆動質量体2がX−Y平面外に偏向した場合、連結要素5’’’’は、アンカー18またはX軸に対して確実に傾く。駆動質量体2と連結要素5’’’’との間の距離、特に、第1の質量部14および第2の質量部15との間の距離の変化を検出できる検出素子、は、駆動質量体2または連結要素5’’’’と、基板との間に配置される。このときの回転運動は、符号Sによって示されている。
【0037】
ストッパ19は、第1の質量部14と第2の質量部15との間に配置され、過度に偏向した場合にバネ要素、あるいは、第1または第2の質量が損傷することを防ぐ。第1の質量部14の外側に配置されたストッパ20も同じ役目を果たす。ストッパ20は、駆動質量体2、第1の質量部14、および、ストッパ20同士の間に配置された連結バネ6’’’’が損傷するのを防ぐ。
【0038】
センサ1に衝撃が与えられた場合、駆動要素7によって駆動される場合のように、駆動質量体2は互いに逆方向でX−Y平面外には傾かない。むしろ、2つの駆動要素2は、X−Y平面外に同じ方向で傾く。その直後、第1の質量部14もX−Y平面外に変位し、その一方で第2の質量部15は、バネ17のバネ特性によって不動のままである。したがって、第1の質量部14は、第2の質量部15に関し、連結バネ16によってX−Y平面と平行かつX−Y面外に大きく変位し、基板に近づくかまたは基板から離れる。これは、第1の質量部14と基板との間に配置された検出素子8による電気信号の変化によって決定されうる。
【0039】
図に示すような回転速度センサ1の構成は、回転速度センサ1に特に安定性と衝撃耐性とをもたらす。検出可能な衝撃状態による誤測定も確実に防ぐことができる。
【0040】
図4の回転速度センサ1の異なる条件を図5a、5b、および、5cに示す。図5aは、駆動質量体2の逆位相運動を示す。駆動質量体2がアンカー3に対して時計回りおよび反時計回りの方向に変位しているのがわかる。アンカー3付近にフィードバック要素12が配置される。連結要素5’’’’は、基本的に静止したままである。
【0041】
図5bは、回転速度センサ1の同相での動作を示す。2つの駆動質量体2は、時計回りまたは反時計回りの同じ方向に旋回する。それによって連結要素5’’’’の第1の質量部14に力がかかり、その結果、第1の質量部14が第2の質量部15に対して移動する。連結要素5’’’’はすべてX−Y平面内で変位する。
【0042】
図5cは、X軸に関する回転速度によりコリオリ力が生じ、駆動質量体2に作用する様子を示す。図5cでは、逆方向の偏向が起き、駆動質量体2が逆位相で駆動される。駆動質量体2がY軸に対して反対方向に傾くことにより、連結要素5’’’’も同様に傾く。連結要素5’’’’は、アンカー18およびバネ17によってX軸に関してしか回転できないので、連結要素5’’’’は、2つのアンカー18に沿ってX軸に対して傾く。それによって、下に配置された基板と連結要素5’’’’との間の距離が変化する。基板と連結要素5’’’’との間に配置された検出素子8(図示せず)は、電気信号の変化によって距離の変化を検出でき、それに対応する、X軸に関する回転速度センサの回転速度が検出される。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されない。特に、本発明の例示した個々の構成要件は、請求項によってのみ限定される。開示の範囲は変更可能であり、請求項によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c