(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
袋体に前記保持体を収容して開口部を閉鎖した未使用状態を形成するとともに、前記袋体の端部を開放して前記保持体の端部を露出した使用状態を形成可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の揮散体。
前記袋体は、少なくとも前記薬剤の揮散を防止するバリア層と、前記袋体の内側面を構成するシール層とを備え、該シール層に前記保持体の少なくとも周面を密着したことを特徴とする請求項2記載の揮散体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の揮散体にあっては、薬剤を長期にわたって揮散させることがまだ不十分であった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、保持した薬剤を長期にわたって揮散させることができる揮散体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の揮散体にあっては、揮散する薬剤を保持した保持体と、該保持体を包囲する包囲部とを備え、該包囲部が前記薬剤の揮散を防止する揮散体において、
前記保持体の外側面に一端から他端に渡って長さ方向に延在する溝を形成し、該溝に幅方向一方側へ折れ曲がって折り返す折返し部分及び幅方向他方側へ折れ曲がって折り返す折返し部分を前記長さ方向において交互に形成し当該溝を迷路状に形成する一方、当該保持体を前記包囲部内に収容し
、該包囲部の少なくとも一方の端部に前記保持体の端部を露出させる開口部を設けた。
【0009】
すなわち、薬剤を保持した保持体は、その外周面が包囲部で包囲されており、当該外周面からの薬剤の揮散が防止される。
【0010】
また、前記包囲部には、少なくとも一方の端部に開口部が設けられており、当該開口部によって前記保持体の端部が露出している。このため、前記保持体に保持された薬剤は、当該保持体の端部より揮散される。
また、前記保持体の外周面には、凹凸が設けられており、当該保持体と前記包囲部との間には、空間が形成される。
このため、この空間で薬剤が揮散し、滞留することにより、溝内の高濃度の薬剤が一端より外部に徐々に放出される。よって、高濃度の薬剤を濃度勾配により徐々に長期にわたって安定して空間に付与することができる。
そして、前記保持体の外側面には、一端から他端に渡って延在する溝が形成されており、当該保持体と前記包囲部との間には、この溝によって形成された溝空間が一端から他端に渡って延在する。
このため、この溝空間の一端から他端に向かって通風させることにより、溝空間内で揮散して滞留した高濃度の薬剤を安定して空間に付与することができる。
【0011】
また、請求項2の揮散体においては、袋体に前記保持体を収容して開口部を閉鎖した未使用状態を形成するとともに、前記袋体の端部を開放して前記保持体の端部を露出した使用状態を形成可能に構成した。
【0012】
すなわち、未使用時において、保持体は、袋体に収容された状態で薬剤の揮散が防止される。
【0013】
そして、使用時には、前記袋体の端部を開放して前記保持体の端部を露出することで、この露出部分から薬剤が揮散される。
【0014】
このとき、前記保持体の外周面は、前記袋体の内側面に密着しており、前記開放部分からの不要な離脱が防止される。
【0015】
また、前記袋体の一部が前記包囲部として保持部の外周面に残存した状態で揮散体として利用される。
【0016】
さらに、請求項3の揮散体では、前記袋体は、少なくとも前記薬剤の揮散を防止するバリア層と、前記袋体の内側面を構成するシール層とを備え、該シール層に前記保持体の少なくとも周面を密着した。
【0017】
すなわち、前記袋体の開口部を閉鎖する際には、前記シール層を重ね合わせた状態で熱圧着等することで、当該開口部を閉鎖することができる。
【0018】
このとき、このシール層は、前記保持体に保持された薬剤を吸着してしまう。このため、袋体から保持体を取り出して使用する場合には、予めシール層に吸着される薬剤量を見越して前記保持体に薬剤を保持させて置かなければならず、必要量以上の薬剤が必要となるという問題があった。
【0019】
さらに、袋体は、保持体を取り出した後では廃棄してしまうため、シール層に吸着された薬剤は消費されずに無駄になってしまう。
【0020】
しかし、本願発明では、前記保持体を包囲する袋体の部分も揮散体として使用されるので、当該袋体のシール部に吸着された薬剤も揮散して使用することができる。これにより、保持体に保持する薬剤量が抑えられるとともに、薬剤の無駄が生じない。
【0030】
また、この内側空間の一端から他端に向かって通風させることにより、内側空間内で揮散して滞留した高濃度の薬剤を安定して空間に付与することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように本発明の請求項1の揮散体にあっては、保持体に保持した薬剤を当該保持体の一端部から揮散することができる。
【0035】
このため、包装体から保持体を取り出して使用する場合と比較して、その揮散面積が抑えられ、その薬剤揮散量を抑えることができる。
【0036】
これにより、保持体に保持した薬剤を長期にわたって揮散させることができ、薬剤効果を長期に渡って持続できる。
また、前記保持体の外周面に凹凸が設けられており、当該保持体と前記包囲部との間には、空間が形成される。
このため、この空間で薬剤が揮散し、滞留することにより、凹部に滞留した高濃度の薬剤を一端より外部に徐々に放出することができる。よって、高濃度の薬剤を濃度勾配により徐々に長期にわたって安定して空間に付与することができる。
そして、前記保持体の外側面には、一端から他端に渡って延在する溝が形成されており、当該保持体と前記包囲部との間には、この溝によって形成された溝空間が一端から他端に渡って延在する。
このため、この溝空間の一端から他端に向かって通風させることにより、溝空間内で揮散して滞留した高濃度の薬剤を安定して空間に付与することができる。
【0037】
また、請求項2の揮散体においては、未使用時において、保持体を袋体に収容された状態で薬剤の揮散を防止することができる。
【0038】
そして、使用時には、前記袋体の端部を開放して前記保持体の端部を露出することで、この露出部分から薬剤を揮散することができる。
【0039】
このとき、前記保持体の外周面は、前記袋体の内側面に密着しており、前記開放部分からの不要な離脱を防止することができる。
【0040】
また、前記袋体の一部を前記包囲部として保持部の外周面に残存した状態で揮散体として利用することができ、無駄を省くことができる。
【0041】
さらに、請求項3の揮散体では、前記袋体の開口部を閉鎖する際に、前記シール層を重ね合わせた状態で熱圧着等することで、当該開口部を閉鎖することができる。
【0042】
このとき、このシール層は、前記保持体に保持された薬剤を吸着してしまう。このため、袋体から保持体を取り出して使用する従来構造では、予めシール層に吸着される薬剤量を見越して前記保持体に薬剤を保持させて置かなければならず、必要量以上の薬剤が必要となるという問題があった。
【0043】
さらに、袋体は、保持体を取り出した後では廃棄してしまうため、シール層に吸着された薬剤は消費されずに無駄になってしまう。
【0044】
しかし、本願発明では、前記保持体を包囲する袋体の部分も揮散体として使用されるので、当該袋体のシール部に吸着された薬剤も揮散して使用することができる。これにより、保持体に保持する薬剤量を抑えることができるとともに、薬剤の無駄の発生を防止することができる。
【0051】
また、この内側空間の一端から他端に向かって通風させることにより、内側空間内で揮散して滞留した高濃度の薬剤を安定して空間に付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の第一の実施の形態を図に従って説明する。
【0058】
図1は、本実施の形態にかかる揮散体1を示す図であり、未使用状態2が示されている。
【0059】
この揮散体1は、揮散する薬剤を保持する保持体11と、該保持体11を包装する袋体12とによって構成されている。
【0060】
前記保持体11は、特に限定されないが薬剤を保持するものとして従来より利用されているものが利用でき、間伐材チップやPE、EVA等のプラスチック成形品で構成されており、揮散する薬剤が含浸されている。
【0061】
これらの間伐材チップやプラスチック成形品の含浸母材として、前記保持体11を形成する際には、例えば前記袋体12に、これらの母体を収容するとともに、この袋体12に前記薬剤を供給して当該袋体12を密閉する。これにより、密閉された袋体12内で含浸作用を行わせ、前記含浸母材に前記薬剤を含浸させる方法が挙げられる。
【0062】
また、前記保持体11をプラスチック成型品で構成した場合には、成型時に薬剤を練り込むことで、前記保持体11を形成することができる。プラスチック成型品で成型する場合は、従来の成型方法で成型可能であるが、特に押し出し成型で成型すると、薬剤の強さ、必要量、薬剤の持続期間等に応じて保持体11の長さ、厚さや表面の凹凸を自由に変えることができるため好ましい。
【0063】
すなわち、金型の変更が必要なインジェクション成型等により成型するものに比べて、保持体11の長さを調整するだけで、薬剤の強さ、持続期間を容易にコントロールすることができる。さらに別の方法では、含浸材を成型、加工後に前記薬剤を含浸処理した後、袋体12に収容して密閉する方法でもよい。
【0064】
また、前記保持体11を樹脂などの練り込み材で構成した場合には、この練り込み材で構成された母材に薬剤を練り込むことで、前記保持体11を形成することができる。
【0065】
この保持体11は、
図2から
図4にも示すように、横長の直方体形状に形成されており、その上面21及び下面22には、複数の矩形状の矩形溝23,・・・が形成されている。この矩形溝23,・・・は、当該保持体11の一端から他端に渡って長さ方向に延設されており、各矩形溝23,・・・は、幅方向に並設されている。
【0066】
この保持体11に保持される薬剤としては、揮散性薬剤であれば特に限定されないが、殺虫剤、消臭剤、香料、空気洗浄剤、環境汚染物質浄化剤などが挙げられ合成品でも天然物から抽出したものでもどちらでも使用できる。
【0067】
前記袋体12は、
図1に示したように、ラミネートフィルムで構成されており、該ラミネートフィルムは、外表面側を形成するバリア層31と、内側面を形成するシール層32とによって構成されている。前記バリア層31は、前記薬剤を透過しない薬剤不透過性材料で形成されており、薬剤の揮散を防止できるように構成されている。
【0068】
前記シール層32は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが用いられてなるシーラント層で構成されており、このシーラント層は、前記薬剤を吸着する性質を有している。
【0069】
この袋体12は、筒状に形成されており、当該袋体12の内部に前記保持体11が収容されている。この収容状態において、該保持体11の外周面41は前記袋体12の内側面42、すなわち前記シール層32に密着するように構成されている。これにより、前記袋体12には、前記保持体11を包囲する包囲部43が中央部に形成されている。
【0070】
この袋体12は、一端部51及び他端部52が重ねられた状態で加熱され圧接されており、前記シール層32が溶解して硬化することで接合されている。これにより、前記袋体12両端の開口部が閉鎖され密閉されており、前記袋体12の両端部には、当該袋体12が重合されてなる重合部53,53が形成されるとともに、各重合部53,53と前記包囲部43との間には、切断部54,54が形成されている。
【0071】
この未使用状態の揮散体1の使用する際には、
図1中に示したように、前記袋体12の前記両切断部54,54をハサミで切断するように構成されている。なお、薬剤の揮散量を抑える際には、一方の切断部54のみを切断するものとする。
【0072】
なお、袋体12の構成は、従来公知の手で容易に切断できる構成にしてもよい。
【0073】
これにより、
図2に示したように、前記袋体12の一端側と他端側とが開放する開口部60,60が形成され、前記保持体11の外周面41が前記包囲部43で包囲される一方、前記保持体11の端面61,61が露出した使用状態62を形成可能に構成されている。
【0074】
以上の構成にかかる本実施において、薬剤を保持した保持体11は、
図2に示したように、その外周面41が包囲部43の内側面42に密着しており、当該外周面41からの薬剤の揮散が防止される。
【0075】
また、前記包囲部43には、少なくとも一方の端部に開口部60が設けられており(
図2中では両端側に開口部60,60が設けられた状態を図示)、当該開口部60によって前記保持体11の端面61が露出している。このため、前記保持体11に保持された薬剤は、当該保持体11の端面61より揮散される。
【0076】
このように、当該揮散体1では、前記保持体11に保持された薬剤を当該保持体11の端部から揮散することができる。
【0077】
このため、包装体から保持体を取り出して使用する場合と比較して、その揮散面積が抑えられ、その薬剤揮散量を抑えることができる。
【0078】
また、本実施の形態では、袋体12の包囲部を持ったままで一端又は両端を切断部で切断しただけで、そのまま揮散体として使用することができるため、手に薬剤が付着してしまうことがない。
【0079】
これにより、前記保持体11の大きさ、すなわち保持できる薬剤を所定量に維持しつつ、薬剤をゆっくりと長期に渡って放出することができ、薬剤効果を長期に渡って持続することができる。
【0080】
そして、本実施の形態では、未使用時において、前記保持体11は、密閉された袋体12に収容されるので、薬剤の揮散を防止することができる。
【0081】
また、使用時には、前記袋体12の端部を開放して前記保持体11の端面61,61を露出することで、この露出部分から薬剤を揮散することができる。
【0082】
このとき、前記保持体11の外周面41は、前記袋体12の内側面42に密着しており、前記開放部分からの不要な離脱を防止することができる。
【0083】
さらに、前記袋体12の一部を前記包囲部43として利用することができ、無駄を省くことができる。
【0084】
そして、前記袋体12の開口部を閉鎖する際には、前記シール層32を重ね合わせた状態で熱圧着することで、当該開口部を閉鎖することができる。
【0085】
このとき、このシール層32は、前記保持体11に保持された薬剤を吸着してしまう。このため、袋体から保持体を取り出して使用する従来構造では、予めシール層に吸着される薬剤量を見越して前記保持体に薬剤を保持させて置かなければならず、必要量以上の薬剤が必要となり、薬剤を取り出した後の袋体12は廃棄してしまうため、シール層32に吸着された薬剤も一緒に廃棄されてしまい薬剤が無駄になってしまうという問題があった。
【0086】
しかし、本実施の形態では、前記保持体11を包囲する袋体12のシール層32部分も揮散体として使用されるので、当該袋体12のシール層32に吸着された薬剤も揮散して使用することができる。これにより、保持体11に保持させる薬剤量を抑えることができ、薬剤の無駄の発生を防止することができる。
【0087】
加えて、前記保持体11の上面21及び下面22に一端から他端に渡って延在する矩形溝23,・・・が形成されており、当該保持体11と前記包囲部43との間には、この矩形溝23,・・・によって形成された溝空間が一端から他端に渡って延在することとなる。
【0088】
このため、溝空間内で揮散し、滞留することにより、溝内の高濃度の薬剤が一端より外部に徐々に放出される。よって、高濃度の薬剤を濃度勾配により徐々に長期間にわたって安定して空間に付与することができる。さらに、この溝空間の一端から他端に向かって通風させることにより、溝空間内で揮散し滞留した高濃度の薬剤を安定して空間に付与することができる。
【0089】
このため、この溝空間で揮散した薬剤を、その一端及び他端から放出することができ、保持体11の大きさを変えることなく揮散量を向上することができる。また、この溝空間によって一端から他端に渡る空気の流れを形成することができる。
【0091】
なお、第一の実施の形態では、
図4に示すように、一端から他端に真っ直ぐ伸びる溝空間を形成したものについて説明したが、これに限られることはなく、
図5に示されるように溝71の形状を迷路状に設けたり、溝71の中間に壁を作るようにしてもよい。
【0092】
このように構成することで、空気を溝空間内に貯留しておく効果を高めることができるとともに、通風させた際の空気と保持体11との接触面積を多くすることにより揮散量を多くすることができる。すなわち、溝71形状や構造を変えることにより揮散量や持続時間を調整することができる。
【0094】
図6は、本発明の第三の実施の形態にかかる揮散体101を示す図であり、第一の実施の形態と同一又は同等部分に付いては同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分に付いてのみ説明する。
【0095】
すなわち、円筒状の包囲部111に収容された保持体112は、円筒状に形成されており、当該保持体112の内部には、中空部113が形成されている。該中空部113は、当該揮散体101に一端及び他端に開口している。
【0096】
図7は、前記揮散体101の使用状態を示す図であり、当該揮散体101が揮散装置121にセットされた状態が示されている。
【0097】
すなわち、前記揮散装置121のケーシング131底面132には、ファンモータ133が設けられており、該ファンモータ133の回転軸134には、プロペラ135が設けられている。また、前記ケーシング131の周面には、吸気口136,136が設けられており、当該ケーシング131の天面137は、中央へ従って上方へ突出した形状に形成されている。
【0098】
この天面137に中央には、上方へ向けて延出した円筒部141が設けられており、該円筒部141に前記揮散体101を内嵌した状態でセットできるように構成されている。
【0099】
以上の構成にかかる本実施の揮散体101においても、第一の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
また、前記保持体112は、筒状に形成されており、当該保持体112内側の中空部113で揮散した薬剤を、その一端及び他端から放出することができる。
【0101】
これにより、前記保持体112の大きさを変えること無く、揮散量を向上を図ることができる。
【0102】
そして、この揮散体101は円筒状に形成されており、前記保持体112内部には、中空部113が形成されている。
【0103】
このため、この揮散体101を前記揮散装置121にセットし、当該揮散体101の一端側から他端側へ向かってファンモータ133のプロペラで空気を通風させることにより、前記中空部113内で揮散して滞留した高濃度の薬剤を安定して空間に付与することができる。
【0104】
なお、前記各実施の形態では、前記袋体12又は前記包囲部43、111をラミネートフィルムで構成した場合に付いて説明したが、これに限定されるものではない。
【0106】
なお、第三の実施の形態では、円筒状の保持体112の中空部113は円柱形に形成されたものについて説明したが、これに限定されることなく、
図8の(a)に示す通り、中空部を星形にしたり、任意の形状にすることができる。
【0107】
このように構成することで、空気を中空部113内に貯留しておく効果を高めることができるとともに、通風させた際の空気と保持体112との接触面積を多くすることにより揮散量を多くすることができる。
【0109】
また、
図8(b)に示すような保持体113を円柱状に形成し、外周に溝151を設けるようにしてもかまわない。
【0110】
このように構成することで、空気を溝151空間内に貯留しておく効果を高めることができるとともに、通風させた際の空気と保持体112との接触面積を多くすることにより揮散量や持続時間を調整することができる。
【0112】
また、
図9に示すように、円筒状の包囲部111内に螺旋状に形成した保持体161を収容しても良い。
【0113】
この場合、螺旋状の保持体161を形成する際に、その太さや、長さや、保持体161を巻く際の密度等をフレキシブルに変更することができる。
【0114】
そして、これらを変更することで、揮散量や持続時間を容易に調整することができる。
【0116】
また、
図10の(a)に示す揮散体201のように、包囲部を矩形筒状の金属ケース202で構成するとともに、保持体を、薬剤を含浸させた木片203で構成しても良い。
【0118】
さらに、
図10の(b)に示す揮散体301のように、一端が開口されたラミネートフィルムからなる袋体302に、含浸体303を収容し、その中に液状の薬剤304を供給して揮散体301を形成しても良い。
【0120】
以下、本発明の第九の実施の形態を図に従って説明する。
【0121】
図11及び
図12は、本実施の形態にかかる揮散体1001を示す図であり、当該揮散体1001の製造手順に従って説明する。なお、
図12には、未使用状態1002が示されている。
【0122】
この揮散体1001を製造する際には、
図11の上図に示すように、揮散する薬剤を保持した保持層としてのシール層1011と、前記薬剤を透過しない不透過層としてのバリア層1012とが積層されてなる二層構造のシート体1013を押し出し成型により製造する。なお、本実施の形態では、押し出し成型で形成する場合について説明するが、この製法に限定されるものではない。
【0123】
前記バリア層1012は、前記薬剤を透過しない薬剤不透過性材料で形成されており、薬剤の揮散を防止できるように構成されている。
【0124】
また、前記シール層1011は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが用いられてなるシーラント層で構成されており、このシーラント層は、前記薬剤を吸着する性質を有している。
【0125】
このシール層1011は、前記薬剤が保持されており、その薬剤としては、揮散性薬剤であれば特に限定されないが、殺虫剤、消臭剤、香料、空気洗浄剤、環境汚染物質浄化剤などが挙げられ合成品でも天然物から抽出したものでもどちらでも使用できる。
【0126】
前記薬剤を前記シール層1011に保持させる方法としては、シール層1011にあらかじめ薬剤を練り込んでおく方法や、シール層1011成形後もしくは後述する袋体成型時に薬剤を液体のまま封入することで前記シール層1011に薬剤を含浸させる方法が挙げられる。
【0127】
次に、このようにして形成されたシート体1013の一側縁部と他側縁部とを、
図11の下図に示すように、前記シール層1011側にて対面させ、熱圧着等の手法により接合して接合部1021を形成する。すると、前記シール層1011が溶解して硬化することで前記シート体1013が接合され、長さ方向両端が開放された円筒袋状の袋体1022が形成される。このとき、前記バリア層1012が当該袋体1022の外側面1023を形成するように構成するとともに、前記シール層1011が当該袋体1021の内側面1024を形成するように構成する。
【0128】
そして、この袋体1022を、
図12に示すように、所定の長さにおいて切断すると同時に、熱圧着することで、両端部に端部接合部1031,1031を形成するとともに、ジグザグの端縁1032,1032を形成する。これにより、前記薬剤を保持したシール層1011で内側面1024を形成するとともに、内部に閉鎖空間が形成されたピロー袋1033が形成される。
【0129】
この未使用状態1002の揮散体1001を使用する際には、前記ピロー袋1033両端部の切断部1035,1035をハサミ等で切断するように構成されている。なお、薬剤の揮散量を抑える際には、一方の切断部1035のみを切断するものとする。
【0130】
なお、このピロー袋1033の構成は、従来公知の手で容易に切断できる構成にしてもよい。
【0131】
これにより、
図11の下図に示したように、前記ピロー袋1033の一端側と他端側とを開放する解放部1041が形成され、前記バリア層1012で覆われた前記シール層1011は、その内側面1024より揮散した薬剤を前記解放部1041から揮散するように構成されている。
【0132】
以上の構成にかかる本実施において、薬剤を保持した保持層としてのシール層1011は、その外周面が不透過層を構成するバリア層1012で覆われており、当該外周面からの薬剤の揮散が防止される。
【0133】
また、前記シール層1011及び前記バリア層1012で形成されたシート体1013は、少なくとも一箇所が開放されるので、前記シール層1011に保持された薬剤を、その開放部1041より揮散することができる。
【0134】
このため、薬剤を保持した保持体を包装体から取り出して使用する場合と比較して、その揮散面積が抑えられ、その薬剤揮散量を抑えることができる。
【0135】
これにより、前記シール層1011に保持された薬剤を長期にわたって揮散させることができ、薬剤効果を長期に渡って持続できる。
【0136】
また、本実施の形態では、外面がバリア層1012で形成された袋体1022を持ったまま一端又は両端を切断するだけで、そのまま揮散体1001として使用することができるため、手に薬剤が付着してしまうことがない。
【0137】
そして、前記袋体1022は任意の長さで切断してシールすることで、前記ピロー袋1033を製造できるので、長さを調整するだけで、薬剤の強さ、持続時間を容易にコントロールすることができる。