(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に開示されているように、静電容量型センサの誘電層としては、発泡体などの材料が用いられている。例えば、寝ている人の体圧分布を測定するためには、比較的小さな荷重を検出できることが必要である。このため、誘電層としては、荷重入力方向(厚さ方向)のばね定数が小さく、小荷重でも厚さの変化が大きい連続気泡構造の発泡体が、適している。一方、リハビリテーションや靴選びなどにおいて、足圧分布測定装置が活用されている。足圧分布の測定においては、より大きな荷重が繰り返しセンサ部に加わる。この場合、誘電層に連続気泡構造の発泡体を用いると、誘電層に圧縮永久歪みが残りやすい。つまり、誘電層がへたりやすい。これにより、荷重分布の正確な測定ができなくなるおそれがある。
【0006】
発泡体のなかでも、独立気泡構造の材料は、硬くへたりにくい。しかしながら、独立気泡構造の発泡体においては、荷重入力方向のばね定数が大きいため、荷重が小さい場合には厚さの変化が小さい。このため、誘電層に独立気泡構造の発泡体を用いると、小荷重の検出が難しくなる。
【0007】
この点、特許文献1には、表面および裏面のうち少なくとも一方に開口する複数の凹部を有する発泡体製の誘電層が、開示されている。特許文献1によると、発泡体の密度を高くして誘電層を硬くする分、複数の凹部を形成して、誘電層のばね定数を小さくしている。しかしながら、特許文献1に記載の誘電層によると、発泡体に貫通孔などの凹部を形成する必要があるため、製造工程が増え、コスト高になる。また、誘電層の硬さ(ばね定数)の調整も難しい。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、荷重検出範囲が広く、かつ、誘電層がへたりにくい静電容量型センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明の静電容量型センサは、誘電層と、該誘電層の表側に配置される表側電極部と、該誘電層の裏側に配置される裏側電極部と、を有するセンサ部と、該センサ部に電気的に接続され、該センサ部に電圧を印加すると共に、該センサ部の静電容量に関する電気量を測定する制御装置と、を備える静電容量型センサであって、該誘電層は、半独立気泡構造の発泡体からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の静電容量型センサの誘電層は、半独立気泡構造の発泡体からなる。半独立気泡構造とは、独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造である。このため、本発明の誘電層は、連続気泡構造由来の柔らかさと、独立気泡構造由来のへたりにくさと、の両方を備える。すなわち、本発明の誘電層は、小さな荷重でも厚さの変化が大きく、かつ、大きな荷重が繰り返し加わってもへたりにくい。したがって、本発明の静電容量型センサは、比較的小さな荷重を検出することができると共に、耐久性に優れる。
【0011】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記発泡体の40%圧縮荷重は0.002MPa以上0.2MPa以下であり、かつ、圧縮残留歪みは0.1%以上10%以下である構成とする方がよい。
【0012】
本構成によると、誘電層の柔らかさとへたりにくさとを、両立することができる。発泡体の40%圧縮荷重は、発泡体を40%圧縮するのに必要な荷重であり、発泡体の硬さの指標になる。発泡体の40%圧縮荷重は、0.002MPa以上0.02MPa以下であるとより好適である。40%圧縮荷重は、JIS K6254:2010の圧縮試験A法に準じて測定すればよい。
【0013】
発泡体の圧縮残留歪みは、発泡体のへたりにくさの指標になる。発泡体の圧縮残留歪みは、0.1%以上3.0%以下であるとより好適である。圧縮残留歪みは、JIS K6401:2011に準じて測定すればよい。具体的には、JIS K6400−4の4.5.2[A法(70℃の圧縮)]により、圧縮率75%、70℃で22時間加熱して測定すればよい。
【0014】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記発泡体は、ウレタンフォームである構成とする方がよい。本構成によると、所望の柔らかさとへたりにくさを有する誘電層を作製しやすい。
【0015】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記センサ部の表側から荷重が入力される場合、該センサ部は、該誘電層の裏面に固着される補強層を備える構成とする方がよい。
【0016】
誘電層に大きな荷重が加わると、生じたせん断力により、誘電層が破壊されるおそれがある。本構成においては、誘電層の裏面に、補強層が固着される。これにより、誘電層を補強して、せん断力による誘電層の破壊を抑制することができる。
【0017】
補強層は、誘電層と比較して硬い。したがって、補強層を荷重入力面に配置すると、荷重を点で受けにくくなり、荷重が分散して、単位面積あたりの荷重が小さくなる。このため、静電容量変化が小さくなり、荷重を検出しにくくなる。また、荷重が加えられた位置の特定も難しくなり、荷重分布の測定精度が低下する。この点、本構成によると、誘電層の荷重入力面(表面)とは反対側の裏面に、補強層が配置される。したがって、誘電層への荷重の伝達を阻害することなく、誘電層を補強することができる。
【0018】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記表側電極部は、互いに平行に並ぶ複数の表側電極からなり、前記裏側電極部は、互いに平行に並ぶ複数の裏側電極からなり、表側または裏側から見て、複数の該表側電極と複数の該裏側電極とは、互いに交差する方向に延在し、複数の該表側電極と複数の該裏側電極とが重複する部分には、複数の検出部が設定される構成とする方がよい。
【0019】
本構成によると、複数の検出部において、荷重を検出することができる。このため、静電容量型センサの面方向(表裏方向に対して直交する方向)の荷重分布を測定することができる。
【0020】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記センサ部は、前記誘電層を挟んで配置される一対の表側基材および裏側基材を備え、前記表側電極部は、該表側基材の裏面に形成され、前記裏側電極部は、該裏側基材の表面に形成される構成とする方がよい。
【0021】
本発明の静電容量型センサにおいては、誘電層が発泡体からなる。このため、誘電層の表裏両面に、直接電極を形成することは難しい。この点、本構成によると、誘電層の表面に表側電極、裏面に裏側電極を、各々配置することができる。また、表側電極部が形成された表側基材と、裏側電極部が形成された裏側基材と、の間に誘電層を挟むことにより、容易にセンサ部を作製することができる。
【0022】
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、本発明の静電容量型センサは、足圧測定に用いられることが望ましい。
【0023】
上述したように、本発明の誘電層は、比較的大きな荷重が繰り返し加わっても、へたりにくい。このため、本発明の静電容量型センサは、人の足圧分布を測定するセンサとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の静電容量型センサの実施の形態について説明する。
【0026】
<第一実施形態>
以下の図においては、上側が本発明の「表側」に、下側が本発明の「裏側」に、各々対応している。荷重は、センサ部の上側から入力される。
【0027】
[静電容量型センサの構成]
まず、本実施形態の静電容量型センサの構成について説明する。
図1に、本実施形態の静電容量型センサの透過上面図を示す。
図2に、
図1のII−II方向断面図を示す。
図3に、同静電容量型センサのブロック図を示す。
【0028】
図1〜
図3に示すように、静電容量型センサ1は、センサ部Sと、コネクタ20と、ハーネス21と、制御装置22と、を備えている。センサ部Sは、カバー23と、誘電層30と、補強層31と、表側基材32と、表側電極部32Xと、9本の表側配線32xと、表側カバーコート34と、裏側基材33と、裏側電極部33Yと、9本の裏側配線33yと、裏側カバーコート35と、表側アース電極240と、裏側アース電極241と、表側絶縁スペーサ250と、裏側絶縁スペーサ251と、裏端基材26と、を備えている。
【0029】
(カバー23)
カバー23は、ウレタンゴム製であって、袋状を呈している。カバー23は、絶縁性を有している。カバー23の内部には、静電容量型センサ1を構成する各部材のうち、コネクタ20、ハーネス21、制御装置22以外の部材が、収容されている。
【0030】
(誘電層30、補強層31)
誘電層30は、厚さ1mmの長方形シート状を呈している。誘電層30は、半独立気泡構造のウレタンフォーム製である。当該ウレタンフォームの密度は200kg/m
3、40%圧縮荷重は0.008MPa、圧縮残留歪みは1.6%である。
【0031】
補強層31は、誘電層30の下側に配置されている。補強層31は、PET(ポリエチレンテレフタレート)製であって、厚さ0.05mmの長方形シート状を呈している。補強層31のヤング率は、4.3GPaである。補強層31は、誘電層30よりも、硬質である。補強層31は、絶縁性を有している。補強層31は、誘電層30の下面(裏面)全体に固着されている。補強層31は、誘電層30と一体成形されている。
【0032】
(表側基材32、表側電極部32X、表側配線32x、表側カバーコート34)
表側基材32は、誘電層30の上側に配置されている。表側基材32は、PET製であって、長方形シート状を呈している。表側基材32は、絶縁性を有している。
【0033】
9本の表側配線32xは、表側基材32の下面に、スクリーン印刷されている。表側配線32xは、銀ペースト製であって、導電性を有している。表側配線32xは、後述する表側電極32Xaと、コネクタ20と、を電気的に接続している。コネクタ20から延びる表側配線32xは、表側電極32Xaの長手方向全長に亘って直線状に延在している。表側配線32xは、表側電極32Xaの幅方向(左右方向)中央に配置されている。
【0034】
表側電極部32Xは、9本の表側電極32Xaを備えている。表側電極32Xaは、直線状であって、表側基材32の下面に、スクリーン印刷されている。表側電極32Xaは、前後方向(Y方向)に延在している。9本の表側電極32Xaは、左右方向(X方向)に並んでいる。表側電極32Xaは、カーボンペースト製であって、導電性を有している。表側電極32Xaは、表側配線32xを、部分的に下側から覆っている。
【0035】
表側カバーコート34は、アクリルゴム製であって、長方形膜状を呈している。表側カバーコート34は、絶縁性を有している。表側カバーコート34は、表側基材32の下面に、スクリーン印刷されている。表側カバーコート34は、9本の表側配線32xおよび9本の表側電極32Xaを、下側から覆っている。
【0036】
(表側絶縁スペーサ250、表側アース電極240)
表側絶縁スペーサ250は、表側基材32の上側に配置されている。表側絶縁スペーサ250は、ウレタンゴム製であって、厚さ0.4mmの長方形シート状を呈している。表側絶縁スペーサ250は、絶縁性を有している。
【0037】
表側アース電極240は、カーボンペースト製であって、長方形膜状を呈している。表側アース電極240は、導電性を有している。表側アース電極240は、表側絶縁スペーサ250の上面に、スクリーン印刷されている。
【0038】
また、表側絶縁スペーサ250の上面には、表側アース配線(図略)も、スクリーン印刷されている。表側アース配線は、銀ペースト製であって、表側絶縁スペーサ250の上面に、櫛歯状に延在している。表側アース配線は、表側絶縁スペーサ250と、表側アース電極240と、の間に介在している。表側アース電極240は、表側アース配線を介して、電気的に接地されている。
【0039】
(裏側基材33、裏側電極部33Y、裏側配線33y、裏側カバーコート35)
裏側基材33は、補強層31の下側に配置されている。裏側基材33は、PET製であって、長方形シート状を呈している。裏側基材33は、絶縁性を有している。
【0040】
9本の裏側配線33yは、裏側基材33の上面に、スクリーン印刷されている。裏側配線33yは、銀ペースト製であって、導電性を有している。裏側配線33yは、後述する裏側電極33Yaと、コネクタ20と、を電気的に接続している。コネクタ20から延びる裏側配線33yは、裏側電極33Yaの長手方向全長に亘って直線状に延在している。裏側配線33yは、裏側電極33Yaの幅方向(前後方向)中央に配置されている。
【0041】
裏側電極部33Yは、9本の裏側電極33Yaを備えている。裏側電極33Yaは、直線状であって、裏側基材33の上面に、スクリーン印刷されている。裏側電極33Yaは、左右方向に延在している。9本の裏側電極33Yaは、前後方向に並んでいる。裏側電極33Yaは、カーボンペースト製であって、導電性を有している。裏側電極33Yaは、裏側配線33yを、部分的に上側から覆っている。
【0042】
裏側カバーコート35は、アクリルゴム製であって、長方形膜状を呈している。裏側カバーコート35は、絶縁性を有している。裏側カバーコート35は、裏側基材33の上面に、スクリーン印刷されている。裏側カバーコート35は、9本の裏側配線33yおよび9本の裏側電極33Yaを、上側から覆っている。
【0043】
(裏側絶縁スペーサ251、裏側アース電極241、裏端基材26)
裏側絶縁スペーサ251は、裏側基材33の下側に配置されている。裏側絶縁スペーサ251は、ウレタンゴム製であって、厚さ0.4mmの長方形シート状を呈している。裏側絶縁スペーサ251は、絶縁性を有している。
【0044】
裏端基材26は、裏側絶縁スペーサ251の下側に配置されている。裏端基材26は、PET製であって、長方形シート状を呈している。裏端基材26は、絶縁性を有している。
【0045】
裏側アース電極241は、カーボンペースト製であって、長方形膜状を呈している。裏側アース電極241は、導電性を有している。裏側アース電極241は、裏端基材26の上面に、スクリーン印刷されている。
【0046】
また、裏端基材26の上面には、裏側アース配線(図略)も、スクリーン印刷されている。裏側アース配線は、銀ペースト製であって、裏端基材26の上面に、櫛歯状に延在している。裏側アース配線は、裏端基材26と、裏側アース電極241と、の間に介在している。裏側アース電極241は、裏側アース配線を介して、電気的に接地されている。
【0047】
(検出部C)
上側から見て、9本の表側電極32Xaと、9本の裏側電極33Yaと、は格子状に並んでいる。表側電極32Xaと、裏側電極33Yaと、が重複する部分には、検出部Cが設定されている。検出部Cは、合計81個配置されている。
【0048】
(コネクタ20、ハーネス21、制御装置22)
コネクタ20は、静電容量型センサ1の左前隅に配置されている。コネクタ20には、9本の表側配線32x、9本の裏側配線33yが、互いに絶縁を確保された状態で、電気的に接続されている。ハーネス21は、コネクタ20と、制御装置22と、を電気的に接続している。制御装置22は、電源220と、入力側切替回路221と、出力側切替回路222と、静電容量検出部223と、を備えている。
【0049】
電源220は、9本の表側配線32xを介して、9本の表側電極32Xaに、交流電圧(具体的には矩形波電圧)を印加する。
【0050】
入力側切替回路221は、9個のスイッチ(図略)を備えている。入力側切替回路221の一端は、電源220に接続されている。入力側切替回路221の他端は、9本の表側配線32xに接続されている。入力側切替回路221は、電源220に対して、9本の表側配線32xを、順番に切り替えて接続する。
【0051】
出力側切替回路222は、9個のスイッチ(図略)を備えている。出力側切替回路222の一端は、9本の裏側配線33yに接続されている。出力側切替回路222の他端は、静電容量検出部223に接続されている。出力側切替回路222は、静電容量検出部223に対して、9本の裏側配線33yを、順番に切り替えて接続する。
【0052】
静電容量検出部223は、合計81個の検出部Cのうち、電圧が印加されている表側電極32Xaと、静電容量検出部223に接続されている裏側電極33Yaと、に関する検出部Cの静電容量を測定する。具体的には、静電容量検出部223は、検出部Cの充電電流を静電容量に変換している。そして、当該静電容量を測定している。充電電流は、本発明の「静電容量に関する電気量」の概念に含まれる。合計81個の検出部Cには、走査的に電圧が印加される。このため、センサ部Sにおける荷重分布を測定することができる。
【0053】
[静電容量型センサの動き]
次に、本実施形態の静電容量型センサの動きについて説明する。制御装置22の静電容量検出部223は、センサ部Sの有する合計81個の検出部Cの静電容量を、走査的に、順番に測定している。したがって、例えば、人がセンサ部Sの上面に立つことにより、足圧分布を測定することができる。
【0054】
[静電容量型センサの作用効果]
次に、本実施形態の静電容量型センサの作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1は、半独立気泡構造のウレタンフォームからなる誘電層30を備えている。このため、誘電層30は、小さな荷重でも厚さの変化が大きく、かつ、大きな荷重が繰り返し加わってもへたりにくい。したがって、静電容量型センサ1は、比較的小さな荷重を検出することができると共に、耐久性に優れる。
【0055】
また、誘電層30の下面には補強層31が固着されている。これにより、誘電層30を補強して、せん断力による誘電層30の破壊を抑制することができる。つまり、誘電層30の耐久性が高くなる。また、誘電層30の上面に補強層31を配置する場合と比較して、誘電層30を、荷重が加わった部分だけ、局所的に圧縮させることができる。このため、荷重分布の測定精度を高くすることができる。
【0056】
本実施形態の静電容量型センサ1によると、センサ部Sが面方向(水平方向)に合計81個の検出部Cを備えている。このため、足圧分布、座圧分布、体圧分布などの種々の荷重分布を測定することができる。
【0057】
本実施形態の静電容量型センサ1においては、表側電極32Xaに矩形波電圧が印加される。ここで、静電容量型センサ1は、表側絶縁スペーサ250、表側アース電極240を備えている。これにより、上下方向に発生する磁界に起因するノイズを、抑制することができる。また、本実施形態の静電容量型センサ1は、裏側絶縁スペーサ251、裏側アース電極241を備えている。これにより、フロアや寝具などに起因するセンサ部Sの下方からの環境ノイズを、抑制することができる。
【0058】
また、検出部Cの静電容量Caに対して、裏側電極33Yaと裏側アース電極241との間の電極間距離が一定未満の場合は、静電容量Caに起因する電流は、裏側アース電極241を介してグランドに逃げてしまう。この点、本実施形態の静電容量型センサ1は、裏側絶縁スペーサ251を備えている。このため、静電容量Caに起因する電流を、裏側電極33Ya、裏側配線33yを介して、制御装置22の静電容量検出部223に流すことができる。
【0059】
同様に、検出部Cの静電容量Caに対して、表側電極32Xaと表側アース電極240との間の電極間距離が一定未満の場合は、静電容量Caに起因する電流は、表側アース電極240を介してグランドに逃げてしまう。この点、本実施形態の静電容量型センサ1は、表側絶縁スペーサ250を備えている。このため、静電容量Caに起因する電流を、表側電極32Xa、表側配線32xを介して、制御装置22の静電容量検出部223に流すことができる。
【0060】
本実施形態の静電容量型センサ1によると、表側基材32の下面に、9本の表側配線32x、9本の表側電極32Xa、表側カバーコート34が、スクリーン印刷されている。このため、これらの部材の形状精度、位置精度が高くなる。同様に、本実施形態の静電容量型センサ1によると、裏側基材33の上面に、9本の裏側配線33y、9本の裏側電極33Ya、裏側カバーコート35が、スクリーン印刷されている。このため、これらの部材の形状精度、位置精度が高くなる。また、予め電極、配線、カバーコートが印刷された一対の表側基材32と裏側基材33とを、誘電層30および補強層31を挟んで積層させればよいため、静電容量型センサ1の製造が容易である。
【0061】
本実施形態の静電容量型センサ1によると、表側電極32Xaの全長に亘って、表側配線32xが配置されている。同様に、裏側電極33Yaの全長に亘って、裏側配線33yが配置されている。このため、複数の検出部C間(例えば、前端の検出部Cと後端の検出部Cとの間)における検出値のばらつきを小さくすることができる。したがって、荷重分布の測定精度を高くすることができる。
【0062】
<第二実施形態>
本実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサとの相違点は、表側アース電極、表側絶縁スペーサが配置されていない点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0063】
図4に、本実施形態の静電容量型センサの前後方向断面図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
図4に示すように、表側基材32は、カバー23の上壁の下側に配置されている。すなわち、カバー23と表側基材32との間には、
図2に示す表側アース電極240、表側絶縁スペーサ250は、配置されていない。
【0064】
本実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の静電容量型センサにおいては、表側アース電極240、表側絶縁スペーサ250を備えない分だけ、構成が単純になる。また、荷重が誘電層30に伝達しやすいため、小荷重に対する検出精度が向上する。
【0065】
<第三実施形態>
本実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサとの相違点は、表側アース電極、裏側アース電極、裏端基材が配置されていない点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0066】
図5に、本実施形態の静電容量型センサの前後方向断面図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
図5に示すように、カバー23の上壁と、表側基材32と、の間には、ウレタンスラブ製の表側絶縁スペーサ250が配置されている。表側絶縁スペーサ250の厚さは10mmである。また、カバー23の下壁と、裏側基材33と、の間には、ウレタンスラブ製の裏側絶縁スペーサ251が配置されている。裏側絶縁スペーサ251の厚さは10mmである。
図2に示す表側アース電極240、裏側アース電極241、裏端基材26は、配置されていない。
【0067】
本実施形態の静電容量型センサと、第一実施形態の静電容量型センサとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の静電容量型センサのように、表側絶縁スペーサ250、裏側絶縁スペーサ251の表裏方向厚さを大きくすれば、表側アース電極、裏側アース電極を配置しなくても、ノイズを抑制することができる。
【0068】
<その他>
以上、本発明の静電容量型センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0069】
上記実施形態においては、誘電層として、半独立気泡構造のウレタンフォームを使用した。しかしながら、誘電層の材質は、半独立気泡構造の発泡体であれば特に限定されない。例えば、シリコーンゴム、ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)などの発泡体を使用してもよい。誘電層に使用する発泡体の40%圧縮荷重は、0.002MPa以上0.2MPa以下であることが望ましい。0.002MPa以上0.02MPa以下であるとより好適である。また、発泡体の圧縮残留歪みは、0.1%以上10%以下であることが望ましい。0.1%以上3.0%以下であるとより好適である。また、発泡体の密度は、50kg/m
3以上500kg/m
3以下であることが望ましい。100kg/m
3以上300kg/m
3以下であるとより好適である。誘電層として好適な材料としては、例えば、株式会社ロジャースイノアック製のマイクロセルポリマーシート「PORON(登録商標)」などが挙げられる。
【0070】
誘電層の厚さは、耐へたり性、計測静電容量値、計測荷重などを考慮して決定すればよい。例えば、人の足圧分布、体圧分布を測定するためには、1.0mm以上3.0mm以下にすることが望ましい。
【0071】
上記実施形態においては、誘電層の下面に補強層を固着した。しかしながら、補強層は必ずしも必要ではない。補強層の材質は、特に限定されない。絶縁性を有し、人の体重により湾曲する程度の柔軟性を有していればよい。例えば、ヤング率が20MPa以上5GPa以下程度の樹脂、エラストマーを用いればよい。樹脂としては、PET、PE(ポリエチレン)、PI(ポリイミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などが挙げられる。エラストマーとしては、シリコーンゴム、EPDM、NBR、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0072】
補強層は、誘電層の荷重入力面とは反対側に配置されることが望ましい。補強層は、誘電層に固定されることが望ましい。補強層は、接着剤などを使用して、あるいは誘電層と一体成形することにより、誘電層に固定すればよい。
【0073】
他の絶縁性を有する部材(例えば、カバー23、表側絶縁スペーサ250、裏側絶縁スペーサ251、表側基材32、裏側基材33、裏端基材26、表側カバーコート34、裏側カバーコート35など)の材質についても、特に限定されない。補強層と同様に、PET、PE、PI、PENなどの樹脂、シリコーンゴム、EPDM、NBR、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのエラストマーを用いればよい。また、絶縁性を有する部材の材料として、樹脂、エラストマーの発泡体(例えば、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォームなど)を用いてもよい。また、絶縁性を有する部材の材料として、樹脂繊維(例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維など)の織布、不織布などを用いてもよい。
【0074】
導電性を有する部材(例えば、表側電極部32X、裏側電極部33Y、表側配線32x、裏側配線33y、表側アース電極240、裏側アース電極241など)の材質は、特に限定されない。人の体重により湾曲する程度の柔軟性を有していればよい。例えば、母材であるエラストマーに導電性フィラーを含有させた導電性材料を用いることができる。この場合、エラストマーとしては、シリコーンゴム、EPDM、NBR、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどを用いればよい。導電性フィラーとしては、炭素材料および金属から選ばれる一種以上を用いればよい。金属としては、導電性の高い銀、銅などが好適である。例えば、導電性フィラーとして、銀、銅などの粉末の他、表面に銀などのめっきを施した被覆粒子の粉末を使用することができる。また、炭素材料は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、炭素材料製の導電性フィラーを用いると、静電容量型センサの製造コストを低減することができる。炭素材料としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの誘導体、グラファイト、導電性炭素繊維などが挙げられる。また、導電性を有する部材の材料として、導電性繊維の織布、不織布などを用いてもよい。
【0075】
表側電極部を構成する表側電極、裏側電極部を構成する裏側電極の本数、形状、配置パターンは特に限定されない。表側電極と裏側電極とが重複することにより、少なくとも一つの検出部を設定できればよい。複数の検出部を配置する場合、検出部の配置密度は、検出エリア(荷重分布を検出可能なエリア)全面に亘って、一定でなくてもよい。例えば、荷重が集中しやすい部分に密に、荷重が集中しにくい部分に疎に、検出部を配置してもよい。また、表側電極、裏側電極のうち、一方を、同心円状に配置してもよい。並びに、他方を、一方と同心の放射状に配置してもよい。
【0076】
上記実施形態においては、表側基材の下面に、9本の表側配線、9本の表側電極、表側カバーコートを、スクリーン印刷した。並びに、裏側基材の上面に、9本の裏側配線、9本の裏側電極、裏側カバーコートを、スクリーン印刷した。しかしながら、インクジェット印刷方法、フレキソ印刷方法、グラビア印刷方法、パッド印刷方法、リソグラフィー、ディスペンサー印刷方法など、他の印刷方法により、上記各部材を印刷してもよい。また、接着、貼着、成形など、他の配置方法により、上記各部材を配置してもよい。
【0077】
本発明の静電容量型センサの表裏方向は、上下方向でなくてもよい。例えば、表裏方向が前後方向、左右方向(例えば、静電容量型センサを壁面に配置する場合)であってもよい。また、本発明の静電容量型センサは、平面は勿論、曲面に配置してもよい。曲面に配置する場合、静電容量型センサは曲面の形状に沿って湾曲する。
【0078】
また、上記実施形態においては、表側電極部を入力側切替回路に、裏側電極部を出力側切替回路に、各々接続したが、表側電極部、裏側電極部の接続先は特に限定されない。例えば、表側電極部を出力側切替回路に、裏側電極部を入力側切替回路に、各々接続してもよい。
【0079】
本発明の静電容量型センサは、足圧、座圧、体圧などの測定に好適であるが、相互容量式のタッチセンサとして具現化してもよい。この場合、表側電極部、裏側電極部のうち、一方を受信電極に、他方を送信電極に、設定すればよい。