特許第6190638号(P6190638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190638防振ブッシュおよび防振ブッシュの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190638
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】防振ブッシュおよび防振ブッシュの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/38 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   F16F1/38 F
   F16F1/38 U
   F16F1/38 H
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-134547(P2013-134547)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-10627(P2015-10627A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 典雅
(72)【発明者】
【氏名】久米 廷志
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−203428(JP,A)
【文献】 特開2004−001023(JP,A)
【文献】 特開2011−036912(JP,A)
【文献】 特開2003−226239(JP,A)
【文献】 実開平03−012029(JP,U)
【文献】 特開2012−202460(JP,A)
【文献】 特開2013−224729(JP,A)
【文献】 特開平09−100859(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02874670(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナ軸部材の外周側にアウタ筒部材が配されて、それらインナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で径方向に連結された防振ブッシュを製造するに際して、
前記アウタ筒部材において、軸方向両側部分で軸方向外方に向かって次第に小径になる一対の第一傾斜筒部と、該各第一傾斜筒部の軸方向端部から更に軸方向外方に向かって該第一傾斜筒部よりも小さな傾斜角度で延びる一対の第二傾斜筒部とを設けて、
該アウタ筒部材を前記インナ軸部材の外周側に配して前記本体ゴム弾性体で連結せしめた後、
該アウタ筒部材における該一対の第二傾斜筒部に絞り加工を施して傾斜角度を増大させて、該絞り加工後において該一対の第二傾斜筒部の傾斜角度を該一対の第一傾斜筒部の傾斜角度よりも小さい範囲内で設定すると共に、
該絞り加工により該一対の第二傾斜筒部の傾斜角度を増大させることにより、該本体ゴム弾性体の軸方向両端面に開口して設けた肉抜部の軸方向底面を該第一傾斜筒部よりも軸方向外方に位置せしめて該本体ゴム弾性体の軸方向端部に圧縮変形を及ぼすことを特徴とする防振ブッシュの製造方法。
【請求項2】
前記絞り加工に際して、前記一対の第一傾斜筒部の傾斜角度を維持しつつ、前記一対の第二傾斜筒部の傾斜角度を大きくする請求項1に記載の防振ブッシュの製造方法。
【請求項3】
前記本体ゴム弾性体において軸方向両端面に開口する前記肉抜部を設けて、該肉抜部の軸方向底面を、前記アウタ筒部材の絞り加工前において前記第一傾斜筒部の内周側に位置せしめる請求項1又は2に記載の防振ブッシュの製造方法。
【請求項4】
前記本体ゴム弾性体において軸方向両端面に開口する前記肉抜部を設けて、前記絞り加工で前記本体ゴム弾性体に軸直角方向の圧縮変形を及ぼして軸方向両側に膨出変形させることにより、該肉抜部の軸方向底面を前記第二傾斜筒部の内周側に位置せしめる請求項1〜の何れか一項に記載の防振ブッシュの製造方法。
【請求項5】
前記アウタ筒部材の軸方向中央部分および前記一対の第一の傾斜筒部に対しても絞り加工を施して縮径することにより前記本体ゴム弾性体に対して予圧縮を及ぼす請求項1〜の何れか一項に記載の防振ブッシュの製造方法。
【請求項6】
前記アウタ筒部材を前記インナ軸部材の外周側に配して前記本体ゴム弾性体で連結せしめる工程では、該本体ゴム弾性体の軸方向端部が該アウタ筒部材の軸方向開口に対して軸方向のアンダーカットを有しない構造とし、
その後に前記第二傾斜筒部に絞り加工を施して傾斜角度を増大させることにより、該本体ゴム弾性体の軸方向端部において該アウタ筒部材の軸方向開口に対する軸方向のアンダーカットを設定する請求項1〜の何れか一項に記載の防振ブッシュの製造方法。
【請求項7】
前記インナ軸部材の外周面において、前記アウタ筒部材の軸方向中間部分に対して内周側に離隔位置する部分に突部を設け、該突部に対して前記本体ゴム弾性体の軸方向中間部分の内周面を固着せしめる請求項1〜の何れか一項に記載の防振ブッシュの製造方法。
【請求項8】
前記インナ軸部材の外周面において、前記アウタ筒部材の前記第二傾斜筒部の先端部分に対して内周側に離隔位置する部分に凹所を設け、該凹所に対して前記本体ゴム弾性体の軸方向両端部分の内周面を固着せしめる請求項1〜の何れか一項に記載の防振ブッシュの製造方法。
【請求項9】
前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材と前記本体ゴム弾性体を、中心軸回りの回転対称構造をもって形成する請求項1〜の何れか一項に記載の防振ブッシュの製造方法。
【請求項10】
インナ軸部材の外周側にアウタ筒部材が配されて、それらインナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で径方向に連結された防振ブッシュにおいて、
前記アウタ筒部材には、軸方向両側部分で軸方向外方に向かって次第に小径になる一対の第一傾斜筒部と、該各第一傾斜筒部の軸方向端部から更に軸方向外方に向かって該第一傾斜筒部よりも小さな傾斜角度で延びる一対の第二傾斜筒部とが設けられていると共に、
該アウタ筒部材の縮径により前記本体ゴム弾性体に予圧縮が及ぼされている一方、
該本体ゴム弾性体において軸方向両端面に開口する肉抜部が設けられていると共に、該肉抜部の軸方向底面が該第一傾斜筒部よりも軸方向外方に位置せしめられており、該本体ゴム弾性体の軸方向端部が該第二傾斜筒部によって圧縮変形されていることを特徴とする防振ブッシュ。
【請求項11】
前記本体ゴム弾性体において軸方向両端面に開口する前記肉抜部が設けられていると共に、前記第二傾斜筒部の軸方向先端開口部に対して該本体ゴム弾性体に軸方向のアンダーカット部が設けられている請求項10に記載の防振ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ブッシュに係り、例えば自動車のサスペンション機構等に用いられる防振ブッシュおよび防振ブッシュの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車のサスペンション機構では、アーム部材の車両ボデーへの連結部位に防振ブッシュが用いられている。かかる防振ブッシュは、一般にインナ軸部材とそれに外挿されたアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって弾性的に連結された構造となっている。
【0003】
ところで、防振ブッシュでは、自動車の走行安定性の向上等を目的として軸直角方向で硬いばね特性を要求されることが多い。そこで、例えば実開平4−111933号公報(特許文献1)に記載されているように、本体ゴム弾性体の径方向中間部分に金属等の中間スリーブを埋設固着することが提案されている。
【0004】
また、自動車の乗り心地向上の観点から、インナ軸部材とアウタ筒部材が相互に傾斜するこじり方向で柔らかいばね特性を要求されることも多い。そこで、例えば実開平3−12029号公報(特許文献2)に記載されているように、アウタ筒部材の軸方向両端部分を絞り加工で先細形状に傾斜させることで、こじり方向のばね定数の増大を抑えつつ軸直角方向のばね定数を大きく設定することも提案されている。
【0005】
しかしながら、前者の中間スリーブを採用した構造では、軸直角方向のばね特性だけでなくこじり方向のばね特性も硬くなってしまって、車両の乗り心地の低下を避け難いという問題があった。
【0006】
また、後者のアウタ筒部材の軸方向両端部分を先細形状とする構造では、こじり方向の荷重入力に伴う発生歪が最も大きくなる本体ゴム弾性体の軸方向端面において、アウタ筒部材の絞り加工により大きな予圧縮変形が加えられることとなる。そのために、こじり方向の荷重入力に際して本体ゴム弾性体の軸方向端面に発生する歪や応力が一層大きくなってしまい、亀裂が発生し易くなって要求される耐久性の実現が難しくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4−111933号公報
【特許文献2】実開平3−12029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、軸直角方向では硬く且つこじり方向では柔らかいばね特性を、良好な耐久性を確保しつつ実現せしめ得る、新規な構造の防振ブッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様の特徴とするところは、インナ軸部材の外周側にアウタ筒部材が配されて、それらインナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で径方向に連結された防振ブッシュを製造するに際して、前記アウタ筒部材において、軸方向両側部分で軸方向外方に向かって次第に小径になる一対の第一傾斜筒部と、該各第一傾斜筒部の軸方向端部から更に軸方向外方に向かって該第一傾斜筒部よりも小さな傾斜角度で延びる一対の第二傾斜筒部とを設けて、該アウタ筒部材を前記インナ軸部材の外周側に配して前記本体ゴム弾性体で連結せしめた後、該アウタ筒部材における該一対の第二傾斜筒部に絞り加工を施して傾斜角度を増大させて、該絞り加工後において該一対の第二傾斜筒部の傾斜角度を該一対の第一傾斜筒部の傾斜角度よりも小さい範囲内で設定すると共に、該絞り加工により該一対の第二傾斜筒部の傾斜角度を増大させることにより、該本体ゴム弾性体の軸方向両端面に開口して設けた肉抜部の軸方向底面を該第一傾斜筒部よりも軸方向外方に位置せしめて該本体ゴム弾性体の軸方向端部に圧縮変形を及ぼす防振ブッシュの製造方法にある。
【0010】
本態様の製造方法に従えば、本体ゴム弾性体の軸方向両端部分における軸方向外方への膨出変形に対して、アウタ筒部材の第一傾斜筒部が規制作用を発揮することにより、軸直角方向の荷重入力に際しての本体ゴム弾性体の変形が抑えられて硬いばね特性が発揮され得る。一方、かかる第一傾斜筒部は、こじり方向の荷重入力に際してのインナ軸部材に対する相対変位方向に傾斜しており、本体ゴム弾性体の弾性変形において圧縮成分に対する剪断成分を増大させ得て、柔らかいばね特性を実現せしめ得る。
【0011】
そのうえで、アウタ筒部材の第二傾斜筒部を、本体ゴム弾性体の加硫成形後に絞り加工することにより、本体ゴム弾性体の軸方向両端部分に対する予圧縮を一層細かく調節設定することができる。その際、本体ゴム弾性体の加硫成形等による固着前から傾斜形状とされた第一傾斜筒部による上述の如き軸直角方向の高ばね特性とこじり方向の低ばね特性を確保したうえで、本体ゴム弾性体の加硫成形等による固着後に第二傾斜筒部を絞り加工することにより、それらの特性の更なる向上と調節を精度良く図ることが可能になる。それ故、目標とする軸直角方向の高ばね特性とこじり方向の低ばね特性の両立に際して、予め傾斜形状とされた第一傾斜筒部が有効に作用することとなり、第二傾斜筒部を絞り加工で大きく縮径する必要もないことから、本体ゴム弾性体の成形後における第二傾斜筒部の縮径加工に起因した本体ゴム弾性体の軸方向端部における過大な歪や応力の発生を抑えることが可能になり、良好な耐久性も併せて得ることができるのである。
さらに、本態様の製造方法に従えば、第二傾斜筒部の絞り加工に伴って本体ゴム弾性体の軸方向端部に及ぼされる予圧縮を適切に抑えると共に、本体ゴム弾性体の軸方向端面の自由表面をある程度大きく設定することが可能になり、本体ゴム弾性体ひいては防振ブッシュの耐久性を一層効果的に確保することができる。
【0014】
本発明の第の態様は、前記第一の態様に従う防振ブッシュの製造方法において、前記絞り加工に際して、前記一対の第一傾斜筒部の傾斜角度を維持しつつ、前記一対の第二傾斜筒部の傾斜角度を大きくするものである。
【0015】
本態様の製造方法に従えば、第一傾斜筒部に予め設定された傾斜角度によって発揮される軸直角方向のばね特性とこじり方向のばね特性との関係を維持しつつ、第二傾斜筒部の傾斜角度を変更設定することにより、軸直角方向のばね特性とこじり方向のばね特性との関係をより精度良く予測可能に調整することが可能になる。尤も、本態様では、第一傾斜筒部の傾斜角度を積極的に変更することなく実質的に維持されれば良く、例えば第二傾斜筒部の傾斜角度を変更設定するのに伴って第一傾斜角度に歪が及ぼされること等により、第一傾斜筒部の傾斜角度が僅かに変化することも、特性に悪影響が及ぼされない範囲で許容され得る。
【0016】
本発明の第の態様は、前記第一又は第二の態様に従う防振ブッシュの製造方法であって、前記本体ゴム弾性体において軸方向両端面に開口する前記肉抜部を設けて、該肉抜部の軸方向底面を、前記アウタ筒部材の絞り加工前において前記第一傾斜筒部の内周側に位置せしめるものである。
【0017】
本態様の製造方法に従えば、本体ゴム弾性体の軸方向端面における自由表面積を肉抜部により確保して、荷重入力時の最大歪を抑えることで耐久性の更なる向上を図ることが可能になる。また、アウタ筒部材の絞り加工前の状態で肉抜部の軸方向最深部を第一傾斜筒部の内周側に位置せしめたことにより、それ以上の深底とすることに伴う軸直角方向のばね定数の低下を回避しつつ、自由表面積を十分に確保して優れた耐久性を得ることが可能になる。
【0018】
本発明の第の態様は、前記第一〜の何れかの態様に従う防振ブッシュの製造方法であって、前記本体ゴム弾性体において軸方向両端面に開口する前記肉抜部を設けて、前記絞り加工で前記本体ゴム弾性体に軸直角方向の圧縮変形を及ぼして軸方向両側に膨出変形させることにより、該肉抜部の軸方向底面を前記第二傾斜筒部の内周側に位置せしめるものである。
【0019】
本態様の製造方法に従えば、上述の第の態様と同様に、肉抜部による本体ゴム弾性体の耐久性の更なる向上と併せて、アウタ筒部材の絞り加工後の状態で肉抜部の軸方向最深部を第二傾斜筒部の内周側に位置せしめたことにより、軸直角方向のばね特性の確保と耐久性の向上とを、高度に両立して実現することが可能になる。なお、本態様では、アウタ筒部材の絞り加工前における肉抜部の軸方向底面位置を限定するものでなく、例えばアウタ筒部材の絞り加工前に第一傾斜筒部の内周側に位置せしめられていた肉抜部の軸方向底面位置が、アウタ筒部材の絞り加工に伴う本体ゴム弾性体の変形に伴って、第二傾斜筒部の内周側に変位して位置せしめられるものであっても良い。
【0020】
本発明の第の態様は、前記第一〜の何れかの態様に従う防振ブッシュの製造方法であって、前記アウタ筒部材の軸方向中央部分および前記一対の第一傾斜筒部に対しても絞り加工を施して縮径することにより前記本体ゴム弾性体に対して予圧縮を及ぼすものである。
【0021】
本体ゴム弾性体の成形後にアウタ筒部材を縮径することで、形成条件等によって本体ゴム弾性体に内在する引張応力を解消して軸直角方向ばね特性や耐久性の更なる向上を図ることも可能になる。
【0022】
本発明の第の態様は、前記第一〜の何れかの態様に従う防振ブッシュの製造方法であって、前記アウタ筒部材を前記インナ軸部材の外周側に配して前記本体ゴム弾性体で連結せしめる工程では、該本体ゴム弾性体の軸方向端部が該アウタ筒部材の軸方向開口に対して軸方向のアンダーカットを有しない構造とし、その後に前記第二傾斜筒部に絞り加工を施して傾斜角度を増大させることにより、該本体ゴム弾性体の軸方向端部において該アウタ筒部材の軸方向開口に対する軸方向のアンダーカットを設定するものである。
【0023】
本態様の製造方法に従えば、本体ゴム弾性体の成形時にはアンダーカットのない構造で容易な成形を実現しつつ、成形後のアウタ筒部材への絞り加工により、本体ゴム弾性体にアンダーカットを設定することで、製品たる防振ブッシュにおける本体ゴム弾性体の形状の設計自由度を大きくすることができる。例えば、本体ゴム弾性体の成形後に施されるアウタ筒部材への絞り加工で本体ゴム弾性体にアンダーカットを設定することにより、弾性変形時に応力や歪の発生し安い本体ゴム弾性体の端面の自由表面積を大きくして耐久性の更なる向上を図ること等も容易に実現可能となる。
【0024】
本発明の第の態様は、前記第一〜の何れかの態様に従う防振ブッシュの製造方法であって、前記インナ軸部材の外周面において、前記アウタ筒部材の軸方向中間部分に対して内周側に離隔位置する部分に突部を設け、該突部に対して前記本体ゴム弾性体の軸方向中間部分の内周面を固着せしめるものである。
【0025】
本態様の製造方法に従えば、インナ軸部材の突部により本体ゴム弾性体の軸方向中間部分の肉厚寸法を軸方向両側部分の肉厚寸法に比して相対的に小さく設定することが可能になる。その結果、こじり方向のばね定数に対して軸直角方向のばね定数を相対的に一層大きく設定することが可能になると共に、耐久性の確保と軸直角方向のばね定数の増大とをより高度に両立して設定することも可能になる。なお、インナ軸部材に設ける突部の形状は具体的に限定されるものでないが、例えば軸方向中央部分が両側部分よりも大きな突出高さとされた円弧状や台形状等の山形形状の如き断面形状とされて中央が膨らんだバルジ状の突部が好適に採用される。
【0026】
本発明の第の態様は、前記第一〜の何れかの態様に従う防振ブッシュの製造方法であって、前記インナ軸部材の外周面において、前記アウタ筒部材の前記第二傾斜筒部の先端部分に対して内周側に離隔位置する部分に凹所を設け、該凹所に対して前記本体ゴム弾性体の軸方向両端部分の内周面を固着せしめるものである。
【0027】
本態様の製造方法に従えば、こじり方向でのインナ軸部材とアウタ筒部材との相対変位に際しての歪が大きくなる本体ゴム弾性体の軸方向端部のゴムボリュームが、インナ軸部材の凹所によって有利に確保され得る。その結果、本体ゴム弾性体の耐久性の更なる向上が図られ得る。
【0028】
本発明の第の態様は、前記第一〜の何れかの態様に従う防振ブッシュの製造方法において、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材と前記本体ゴム弾性体を、中心軸回りの回転対称構造をもって形成するものである。
【0029】
本態様の製造方法に従えば、インナ軸部材やアウタ筒部材,本体ゴム弾性体の形状が簡略化されて製造が容易になるだけでなく、荷重入力時に本体ゴム弾性体に生ずる応力や歪が周方向で分散されて局所的な集中の軽減や回避が図られることにより、耐久性の更なる向上も実現可能となる。
【0030】
本発明の第の態様は、インナ軸部材の外周側にアウタ筒部材が配されて、それらインナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体で径方向に連結された防振ブッシュにおいて、前記アウタ筒部材には、軸方向両側部分で軸方向外方に向かって次第に小径になる一対の第一傾斜筒部と、該各第一傾斜筒部の軸方向端部から更に軸方向外方に向かって該第一傾斜筒部よりも小さな傾斜角度で延びる一対の第二傾斜筒部とが設けられていると共に、該アウタ筒部材の縮径により前記本体ゴム弾性体に予圧縮が及ぼされている一方、該本体ゴム弾性体において軸方向両端面に開口する肉抜部が設けられていると共に、該肉抜部の軸方向底面が該第一傾斜筒部よりも軸方向外方に位置せしめられており、該本体ゴム弾性体の軸方向端部が該第二傾斜筒部によって圧縮変形されている防振ブッシュを特徴とする。
本発明の第十一の態様は、前記第十の態様に従う防振ブッシュにおいて、前記本体ゴム弾性体において軸方向両端面に開口する前記肉抜部が設けられていると共に、前記第二傾斜筒部の軸方向先端開口部に対して該本体ゴム弾性体に軸方向のアンダーカット部が設けられているものである。
【0031】
第十及び第十一の態様に従う構造とされた防振ブッシュでは、軸直角方向の荷重入力時における本体ゴム弾性体の軸方向外方への膨出変形に対して第一及び第二傾斜筒部が規制作用を発揮する一方、こじり方向の荷重入力時における本体ゴム弾性体の弾性変形に際して圧縮成分に対する剪断成分を増大させることにより、軸直角方向の硬いばね特性とこじり方向の柔らかいばね特性の両立が実現可能となる。
【0032】
特に、第一傾斜筒部より軸方向外方に位置する第二傾斜筒部において傾斜角度が小さくされて二段階の傾斜角度が設定されていることにより、本体ゴム弾性体の軸方向先端部分における過大な応力や歪の発生を回避して、良好な耐久性も併せて得ることが可能になる。
【0033】
加えて、第十一の態様に従う構造とされた防振ブッシュでは、本体ゴム弾性体には、アウタ筒部材に対する軸方向のアンダーカット部が設けられていることにより、第一及び第二傾斜筒部の傾斜によりアウタ筒部材の軸方向開口部が小径とされていても本体ゴム弾性体の軸方向端面の自由表面を大きく設定することが出来ることから、第一及び第二傾斜筒部の傾斜設定に基づいて発揮される上述の如き軸直角方向の硬いばね特性とこじり方向の柔らかいばね特性との両立と共に、本体ゴム弾性体の耐久性の向上が一層効果的に実現可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明方法に従えば、本体ゴム弾性体の成形前に予め傾斜形状とされた第一傾斜筒部で本体ゴム弾性体の変形を制限して軸直角方向の高ばね特性とこじり方向の低ばね特性を向上設定したうえで、本体ゴム弾性体の成形後に第二傾斜筒部を絞り加工することにより、第二傾斜筒部の縮径量を抑えて縮径加工に伴う本体ゴム弾性体の歪や応力に起因する耐久性の低下を抑えつつ、目標とする軸直角方向の高ばね特性とこじり方向の低ばね特性の両立が図られた防振ブッシュを得ることが可能になる。
【0035】
また、本発明に従う構造とされた防振ブッシュでは、アウタ筒部の軸方向端部に設けられた二段階の傾斜角度が設定された第一及び第二傾斜筒部とアンダーカット構造の本体ゴム弾性体とによって、軸直角方向の高ばね特性とこじり方向の低ばね特性を、本体ゴム弾性体の軸方向先端部分における過大な応力や歪の発生を回避して良好な耐久性を確保しつつ、高度に実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明方法に従って製造される防振ブッシュの一実施形態を示す図であって、図2におけるI−I断面図。
図2図1における左側面図。
図3図1の要部拡大図。
図4図1に示された防振ブッシュの絞り加工前における一体加硫成形品の縦断面図であって、図5におけるIV−IV断面図。
図5図4における左側面図。
図6図4の要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0038】
まず、図1,2には、本発明方法に従って製造される防振ブッシュの一実施形態として、自動車のサスペンション機構等に用いられる防振ブッシュ10が示されている。この防振ブッシュ10は、インナ軸部材としてのインナ筒金具12と、インナ筒金具12の外周側に離隔して配置されたアウタ筒部材としてのアウタ筒金具14とが、本体ゴム弾性体16で径方向に連結された構造とされている。
【0039】
より詳細には、インナ筒金具12は、ストレートな中心軸をもって延びる厚肉の略円筒形状とされている。インナ筒金具12は、軸方向の中央部分が大径化されており、外周面に突出する突部18が形成されている。かかる突部18は、円弧凸形の断面形状で周方向の全周に連続して形成されており、インナ筒金具12の外周面が、軸方向中央部分にバルジ状の突部を有する略ピロボール形状とされている。
【0040】
また、突部18の軸方向両側には、それぞれ、インナ筒金具12の外周面に開口する凹所20が形成されている。かかる凹所20は、略一定の断面形状で周方向の全周に連続して延びる周溝構造とされている。各凹所20の幅方向(図1中の左右方向)両側は、突部18とインナ筒金具12の軸方向両端部分の外周面とに対して、それぞれ滑らかに接続されている。なお、各凹所20の軸方向外側に位置するインナ筒金具12の軸方向両端部分は、一定外径寸法で軸方向に延びる円筒外周面22,22とされている。
【0041】
一方、アウタ筒金具14は、インナ筒金具12よりも大径且つ薄肉で、ストレートな中心軸をもって延びる略円筒形状とされている。アウタ筒金具14の軸方向中央部分は、一定の径寸法で軸方向に延びる中央筒部24とされている。また、中央筒部24の軸方向両側には、それぞれ先細となるテーパ形状をもって軸方向に延びる一対のテーパ筒状部26,26が一体形成されている。
【0042】
さらに、テーパ筒状部26は、図3に示されているように、中央筒部24の軸方向端部から外方に延び出した第一傾斜筒部28と、第一傾斜筒部28の軸方向端部から更に外方に延び出した第二傾斜筒部30から構成されている。また、第一傾斜筒部28の傾斜角度αに比して、第二傾斜筒部30の傾斜角度βが小さくされている。なお、傾斜角度α,βは、アウタ筒金具14の中心軸に対する傾斜角度である。これにより、テーパ筒状部26は、軸方向中間部分で傾斜角度が変化する二段階のテーパ筒形状とされている。
【0043】
そして、アウタ筒金具14は、インナ筒金具12に外挿されて軸方向中央部分の外周を覆うようにして配置されており、両筒金具12,14が同一の中心軸L上で、互いに径方向に離隔して配置されている。なお、アウタ筒金具14は、インナ筒金具12よりも軸方向長さが短くされており、アウタ筒金具14の軸方向両側からインナ筒金具12の軸方向端部が突出している。
【0044】
また、アウタ筒金具14の中央筒部24は、インナ筒金具12における突部18の軸方向中央部分の外周を離隔して覆うように配されている。更に、各テーパ筒状部26は、インナ筒金具12における突部18の軸方向端部から凹所20の外周を覆うように配されている。更にまた、各テーパ筒状部26の軸方向端部、即ち各第二傾斜筒部30は、凹所20の外周側に離隔して位置せしめられている。即ち、アウタ筒金具14の中央筒部24の軸方向長さは、インナ筒金具12の突部18の軸方向長さよりも小さくされている。また、アウタ筒金具14の軸方向全長は、インナ筒金具12の突部18の軸方向長さより大きく、且つ、軸方向両側の凹所20,20の軸方向外側端部間の距離よりも小さくされている。
【0045】
このように内外挿状態で同一中心軸L上に配置されたインナ筒金具12とアウタ筒金具14との径方向対向面間には、本体ゴム弾性体16が配設されている。本体ゴム弾性体16は、全体として厚肉の略円筒形状とされており、本体ゴム弾性体16の内周面にインナ筒金具12の外周面が固着されていると共に、本体ゴム弾性体16の外周面にアウタ筒金具14の内周面が固着されている。
【0046】
本体ゴム弾性体16とインナ筒金具12の固着面は、アウタ筒金具14の軸方向両端よりも外方まで延びており、インナ筒金具12の円筒外周面22にまで略達する長さとされている。そして、インナ筒金具12の突部18に対して本体ゴム弾性体16の軸方向中間部分が固着されていると共に、インナ筒金具12の凹所20,20には、その全体に本体ゴム弾性体16の軸方向両端部分が充填するように固着されている。一方、本体ゴム弾性体16とアウタ筒金具14の固着面は、中央筒部24と第一傾斜筒部28の各全面に亘り、第二傾斜筒部30の内面にまで達し、第二傾斜筒部30の軸方向中央を越えて先端近くまで広がっている。
【0047】
さらに、本体ゴム弾性体16の軸方向両端部分は、軸方向端面において軸方向外方に向かって開口する一対の肉抜部32,32が形成されている。かかる肉抜部32は、断面が横向きの略U字形状とされており、周方向の全周に亘って一定断面形状で延びるすぐり溝とされている。
【0048】
また、肉抜部32の軸方向最深部となる軸方向底面34が、テーパ筒状部26の内周側に位置せしめられており、特に本実施形態では第二傾斜筒部30の内周側に位置せしめられている。
【0049】
更にまた、肉抜部32が形成された本体ゴム弾性体16の軸方向端部には、第二傾斜筒部30の軸方向先端開口部に対して、軸方向のアンダーカット形状が付されている。即ち、図3に示されているように、本体ゴム弾性体16のアウタ筒金具14への固着端部や肉抜部32の軸方向底面34には、本体ゴム弾性体16の加硫成形型の型抜方向となる軸方向において、第二傾斜筒部30の軸方向開口部の内周端縁に対して径方向のオーバーラップδを有するアンダーカットが設定されている。
【0050】
上述の如き構造とされた本実施形態の防振ブッシュ10の製造は、例えば以下の如き工程によって実施され得る。
【0051】
まず、上述の如き突部18と一対の凹所20,20を外周面を備えた特定形状のインナ筒金具12と、中央筒部24の軸方向両側にテーパ筒状部26,26を備えた特定形状のアウタ筒金具14とを、それぞれ準備する。
【0052】
次に、これらインナ筒金具12とアウタ筒金具14に対して、必要に応じて化成皮膜形成等の加硫接着用の前処理を施した後、本体ゴム弾性体16の成形用金型の成形キャビティ内にインナ筒金具12とアウタ筒金具14を位置決めセットする。そして、成形用金型を型閉じして成形キャビティ内へ所定のゴム材料を充填した後、加熱等の加硫処理を施すことにより、本体ゴム弾性体16を加硫成形すると共に、本体ゴム弾性体16をインナ筒金具12およびアウタ筒金具14に対して加硫接着する。
【0053】
このようにして得られた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品36を、図4〜6に示す。
【0054】
これら図4〜6に示されているように、一体加硫成形品36におけるアウタ筒金具14は、最終製品である防振ブッシュ10に比して、その径寸法が全体的に一回り大きくされている。また、一体加硫成形品36における第一傾斜筒部28は、最終製品である防振ブッシュ10と略同じ傾斜角度αとされているが、第二傾斜筒部30は、最終製品である防振ブッシュ10よりも小さな傾斜角度とされている。
【0055】
本実施形態では、一体加硫成形品36のアウタ筒金具14における第二傾斜筒部30の傾斜角度が略0度とされており、第一傾斜筒部28の軸方向端部から軸方向に円筒形状で延び出している。
【0056】
また、一体加硫成形品36の本体ゴム弾性体16における軸方向両端部分に設けられた一対の肉抜部32,32は、最終製品である防振ブッシュ10よりも径方向および軸方向において大きな内部空間をもって形成されている。
【0057】
特に本実施形態では、一体加硫成形品36において、肉抜部32の軸方向最深部となる軸方向底面34が、第一傾斜筒部28の内周側に位置せしめられている。また、肉抜部32が形成された本体ゴム弾性体16の軸方向端部の全体が、軸方向のアンダーカット形状を有しないで、第二傾斜筒部30の軸方向開口部から軸方向に露呈されている。
【0058】
このようにして得られた一体加硫成形品36には、続いてアウタ筒金具14における一対の第二傾斜筒部30,30に対する絞り加工が施される。具体的には、例えば八方絞りや十六方絞りなどの絞り加工用の金型を用い、かかる金型の成形面をアウタ筒金具14の外周面に押し当てて中心軸への接近方向へ押圧変位させること等によって行われる。
【0059】
この絞り加工により、アウタ筒金具14の中央筒部24と第一傾斜筒部28に対しては、断面形状を実質的に保持したままで、最終製品である防振ブッシュ10における径寸法となるように縮径変形が加えられる。これにより、本実施形態では、本体ゴム弾性体16に対して予圧縮が及ぼされている。一方、第二傾斜筒部30に対しては、縮径させつつ、その傾斜角度を大きくすることで、最終製品である防振ブッシュ10における径寸法および傾斜角度βとなるように縮径変形が加えられる。
【0060】
なお、かかる絞り加工に際しては、目標とするアウタ筒金具14の外周面形状に精度良く加工した成形面をもった金型を採用して、アウタ筒金具14の外周面の全体を当該成形面に密接させて成形加工することも可能であるが、中央筒部24の軸方向両端部から目標とする第二傾斜筒部30の先端部分に至る直線(図3中の直線M)を与える成形面を備えた金型を採用して絞り加工を施すことも可能である。
【0061】
このような直線Mを与える金型では、第一傾斜筒部28と成形面との間に隙間が発生するおそれもあるが、先端側に位置する第二傾斜筒部30に対してより大きな絞り加工力が作用することから、第一傾斜筒部28の傾斜角度を略保持したままで、第二傾斜筒部30の傾斜角度を略目標とする角度まで加工することが可能となる。
【0062】
さらに、上述の如き絞り加工に際しては、第二傾斜筒部30が縮径加工されてインナ筒金具12との径方向対向面間距離が小さくなると共に、本体ゴム弾性体16に対して径方向の圧縮変形が及ぼされるのに伴い、本体ゴム弾性体16が軸方向両側に膨出変形せしめられる。これにより、本体ゴム弾性体16の軸方向両端部分に形成された肉抜部32,32が、径方向および軸方向において内部空間が減少せしめられて、図3に示されている如き最終製品の形状とされる。
【0063】
特に本実施形態では、絞り加工前には第一傾斜筒部28の内周側に位置していた肉抜部32の軸方向底面34が、絞り加工により第二傾斜筒部30の内周側に位置せしめられることとなる。
【0064】
また、絞り加工によって第二傾斜筒部30の傾斜角度が大きくされることにより、本体ゴム弾性体16の軸方向端部におけるアウタ筒金具14との固着部や肉抜部32の軸方向底面34には、アウタ筒金具14の軸方向開口部に対する軸方向のアンダーカット形状が与えられる。
【0065】
上述の如き工程を経て製造された本実施形態の防振ブッシュ10は、例えば、自動車の車体に固定された取付ボルトがインナ筒金具12に挿通されてインナ筒金具12が車体側に取り付けられる一方、サスペンション機構を構成するサスペンションアームの端部に設けられたアームアイにアウタ筒金具14が圧入固定されてアウタ筒金具14がサスペンションアームに取り付けられることにより、サスペンションアームの車体への取付部位に装着される。
【0066】
そして、かかる装着状態下、防振ブッシュ10の中心軸方向が略車両前後方向となり、軸直角方向が略車両左右方向となる状態で、サスペンションアームを車体に対して防振連結せしめることとなる。なお、本実施形態の防振ブッシュ10は、インナ筒金具12、アウタ筒金具14、本体ゴム弾性体16を含む全体が、中心軸L回りの回転対称構造をもって形成されていることから、車両への装着に際して周方向の位置決めも不要となって安定した防振性能を得ることができる。
【0067】
かかる装着状態下、防振ブッシュ10には、車両走行安定性の確保等を目的として軸直角方向で高ばね特性が要求される一方、軸方向では良好な乗り心地を実現するために柔らかいばね特性が要求される。
【0068】
ここにおいて、上述の如き構造とされた防振ブッシュ10においては、本体ゴム弾性体16の加硫成形前から傾斜形状とされた第一傾斜筒部28により、本体ゴム弾性体16の軸方向への膨出変形に対する規制作用に基づく軸直角方向の高ばね化が図られると共に、こじり方向における相対的な低ばね化が図られ得ることから、本体ゴム弾性体16の加硫成形後における第二傾斜筒部30の傾斜角度の増大量を過度に大きくせずとも、防振ブッシュ10に要求される軸直角方向の高ばね特性とこじり方向の低ばね特性とを効果的に得ることが可能になる。
【0069】
それ故、防振ブッシュ10に要求される軸直角方向の高ばね特性とこじり方向の低ばね特性とを確保しつつ、本体ゴム弾性体16の加硫成形後における第二傾斜筒部30の絞り加工に際しての傾斜角度の増大量を抑えて、本体ゴム弾性体16の軸方向端部における歪や応力の発生を軽減することにより、亀裂発生を防止して優れた耐久性を得ることが可能になる。
【0070】
また、上述の如き防振ブッシュ10では、本体ゴム弾性体16の軸方向両端面の肉抜部32,32において、本体ゴム弾性体16の加硫成形時にはアンダーカットの発生を回避して容易な成形を可能としつつ、加硫成形後のアウタ筒金具14の絞り加工によってアンダーカット形状の肉抜部32,32を形成することができる。それ故、製造工程や製造コストの増大を回避しつつ、本体ゴム弾性体16の軸方向端面における自由表面を大きく設定することが可能になって、本体ゴム弾性体16ひいては防振ブッシュ10の耐久性の更なる向上が図られ得る。
【0071】
なお、本実施形態の防振ブッシュ10では、第二傾斜筒部30の縮径加工に伴ってインナ筒金具12とアウタ筒金具14との径方向対向面間距離ひいてはかかる対向面間に介在される本体ゴム弾性体16の肉厚寸法が、軸方向両端部分で小さくなるおそれがある。しかし、インナ筒金具12の凹所20,20によって、本体ゴム弾性体16の軸方向両端部分の厚さ寸法が確保されていることから、第二傾斜筒部30の縮径加工に起因するばね特性の著しい変化や耐久性の低下の問題が効果的に軽減または回避され得る。
【0072】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、本発明の製造方法は、インナ筒金具12において突部18や凹所20が形成されていない場合や本体ゴム弾性体16に肉抜部が形成されていない場合等であっても同様に適用され得るものであり、本発明方法においてそのような構成は必須でない。
【0073】
また、前記実施形態では、アウタ筒金具14に対する絞り加工として八方絞りや十六方絞りを例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、へら絞り等の従来公知の絞り加工方法も採用可能である。
【0074】
更にまた、アウタ筒金具14における第一傾斜筒部28や第二傾斜筒部30の軸方向長さは、要求される防振特性や防振ブッシュのサイズ等に応じて適宜に設定可能であり、限定されるものでない。
【0075】
さらに、本発明に係る防振ブッシュは、自動車のサスペンションブッシュに限定されず、トルクロッドブッシュ等に用いても良い。
【符号の説明】
【0076】
10:防振ブッシュ、12:インナ筒金具(インナ軸部材)、14:アウタ筒金具(アウタ筒部材)、16:本体ゴム弾性体、18:突部、20:凹所、26:テーパ筒状部、28:第一傾斜筒部、30:第二傾斜筒部、32:肉抜部、34:軸方向底面、36:一体加硫成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6