特許第6190654号(P6190654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190654削り代の均一化方法及び板材の周縁研削装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190654
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】削り代の均一化方法及び板材の周縁研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20170821BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20170821BHJP
   B24B 49/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B24B9/00 601B
   B24B49/12
   B24B49/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-158080(P2013-158080)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-27712(P2015-27712A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】酒井 友基
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−035089(JP,A)
【文献】 特開2012−101967(JP,A)
【文献】 特開2012−187642(JP,A)
【文献】 特開2007−038327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00
B24B 49/00 − 49/12
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを保持するテーブル及び当該テーブルの回転装置と、
前記ワークの周縁を研削する砥石及び当該砥石を前記テーブルの回転中心に向けて接近及び離隔する方向に直線移動する送り装置と、
前記テーブルの回転角と前記砥石の移動位置とを関連づけて前記回転装置及び送り装置を制御する制御器と、
前記テーブル上のワークの周縁部の画像を取得するカメラとを備えた周縁研削装置の削り代均一化方法であって、
前記テーブルに保持されたワークの加工前と加工後に前記カメラで当該ワークの予め定めた直交する2方向の少なくとも一方が互いに離隔する周縁部の複数箇所の画像を取得し、それらの箇所における前記2方向の加工前と加工後の辺の位置を検出し、前記2方向のそれぞれについて、ワーク中心を挟んで対向する2箇所を含む3箇所以上の箇所における加工前後の辺の間隔が均一となる補正値を求めて前記制御器に設定する、削り代均一化方法。
【請求項2】
前記予め定めた互いに離隔する周縁部の複数箇所が、対角方向の2箇所の角部を含む3箇所ないし4箇所である、請求項1記載の削り代均一化方法。
【請求項3】
前記カメラで取得した画像に基づいてテーブル上のワークの搬入誤差を補正する補正値を制御器に設定する搬入誤差補正手段を備えた周縁研削装置の削り代均一化方法であって、
ワークの加工前に取得した前記対角方向の2箇所の角部の画像に基づいて前記搬入誤差を補正する補正値を制御器に設定し、当該補正値を用いてワークを加工した後、前記3箇所ないし4箇所の加工後の角部の画像を取得する、請求項2記載の削り代均一化方法。
【請求項4】
板状のワークを保持するテーブル及び当該テーブルの回転装置と、
前記ワークの周縁を研削する砥石及び当該砥石を前記テーブルの回転中心に向けて接近及び離隔する方向に直線移動する送り装置と、
前記テーブルの回転角と前記砥石の移動位置とを関連づけて前記回転装置及び送り装置を制御する制御器と、
前記テーブル上のワークの周縁部の画像を取得するカメラと、当該画像の取得手段、記憶手段及び解析手段と、前記テーブルの回転角ないし砥石の移動位置の補正手段とを備え、
前記取得手段は、前記テーブルに保持されたワークの加工前と加工後に前記カメラで当該ワークの予め定めた直交する2方向の少なくとも一方が互いに離隔する周縁部の複数箇所の画像を取得し、前記記憶手段は、加工前の前記複数箇所の周縁部の画像を記憶し、前記解析手段は、それらの
箇所における前記2方向の加工前と加工後のワークの辺の位置を検出し、
前記補正手段は、前記2方向のそれぞれについて、ワーク中心を挟んで対向する2箇所を含む3箇所以上の箇所における加工前後の辺の間隔が均一となるように前記制御器から前記回転装置ないし送り装置に与える指令値を補正する、
板材の周縁研削装置。
【請求項5】
前記取得手段が取得する3箇所以上の周縁部の画像が、対角方向の2箇所の角部を含む3箇所ないし4箇所の画像であり、前記記憶手段が、加工前の当該3箇所ないし4箇所の画像を記憶し、前記補正手段が、当該3箇所ないし4箇所における加工前後の辺の間隔が均一となるように前記制御器から前記回転装置ないし送り装置に与える指令値を補正する、
請求項4記載の板材の周縁研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯端末のディスプレイパネルに用いるガラス基板その他の板材の周縁を研削加工する装置に関し、特に研削加工時の削り代を均一化する方法及び当該方法を実施する上記装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板材の研削装置には、ワークに対する砥石の相対位置を直交する2方向に移動して加工を行うマシニングセンタ方式(直交座標系、特許文献1参照)の装置と、ワークを保持するテーブルの回転角と当該回転の半径方向に移動する砥石の位置とを関連づけて制御することによって加工を行うコンタリング方式(極座標系、特許文献3参照)の装置とがある。直角座標系の装置は、テレビ受像器のディスプレイパネル用のガラス板のように、大型で矩形の板材の加工に適している。一方、極座標系の装置は、携帯端末のディスプレイパネルに用いるガラス板などの小型の板材の加工に適しており、直角座標系の装置に比べて加工形状の自由度が大きいこと及び装置を小型にできるという特徴がある。
【0003】
板材の研削装置は、ワークの基準辺をテーブルに設けた突起に当接させて位置決めするなどの方法でテーブル上のワークの位置決めをすることができない。そのため、正しい位置からずれた(偏倚した)位置でテーブルに保持されたワークを正しい形状に加工するための補正値を制御器に設定して加工を行う必要がある。
【0004】
そこで、装置内にカメラを設け、ワークが研削装置に搬入されてテーブル上に固定される毎に、当該カメラでテーブル上のワークの角や位置決めマークの画像を取得し、その画像から当該角や位置決めマークのあるべき位置からの偏倚を検出し、検出された偏倚からテーブルの回転角や砥石の位置の補正値を演算し、当該補正値で制御器からの指令値を補正しながら加工を行っている(特許文献3)。
【0005】
一方、機械の経年変化、熱変形、砥石の摩耗などにより、ワークの加工精度は低下する。このような経時的な加工精度の低下を防止するために、所定数のワーク加工毎に加工されたワークを抜き取って、ワーク寸法の計測を行い、その計測値から加工精度を補正するための補正値を演算して制御器に入力することにより、所望の加工精度を維持するようにしている。
【0006】
この機械精度の補正について、特許文献1には、直角座標系の研削装置において、搬入誤差を検出するために設けたカメラを用いて加工済ワークの周縁の位置と面取幅を計測して、機械精度の補正値を自動設定する手段が示されている。また、特許文献2には、そのようなカメラを用いて、加工済ワークの加工形状を計測して機械精度を補正する技術が示されている。
【0007】
一方、研削加工は加工速度が遅く、板材の加工では砥石の切り込みを大きくするとワークにクラックや欠けなどを起こす危険が増大する。そのため、板材周縁の研削加工においては、周縁全体に削り代が均一になるようにするのが好ましく、それによって、加工精度や加工能率の向上と共に砥石摩耗の低減も図ることができる。
【0008】
直角座標系の研削装置、特に、特許文献1に示すようなワークの対向辺を同時加工する2個の砥石を備え、各砥石の送り台にそれぞれカメラを搭載した装置では、カメラで同時に撮影した素材ワークの辺の位置を基準にして左右の砥石の切り込み寸法を(加工する辺と直交する方向の送り量)を同じにすることで削り代を均一にすることができる。
【0009】
しかし、極座標系の装置では、解像度の高いカメラを使用しても、テーブルの回転中心をカメラで検出してテーブルと砥石とカメラの位置関係を定めることができない関係もあって、直角座標系の装置のような単純な方法で削り代を均一化することができない。そこで従来は、素材ワークにその周縁から一定距離の箇所に基準線を入れ、加工前にワークの周縁から基準線までの距離を顕微鏡などの非接触測定器で計測し、当該ワークの加工を行った後、ワークの周縁から基準線までの距離を同様な計測器で計測し、加工前後の計測値から、削り代が均一になるように補正値を計算して制御器に設定する、という方法で、ワークの周縁全体の削り代が均一になるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−125876号公報
【特許文献2】特開2012−121100号公報
【特許文献3】特開2013−35089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしこのような従来手段では、加工後のワークを計測する際にワークを装置から取り外す必要があること、素材ワークに基準線を入れたり、削り量の計測及び補正値の計算と制御器への設定を人手で行うため、作業者の熟練が必要で、計測誤差や入力ミスが発生する虞があるなどの問題がある。また、特許文献2に示されたような従来の機械精度の補正方法では、削り代を均一化するところまでの補正ができなかった。
【0012】
この発明は、上記のような問題を解決して、極座標系の研削装置においても、ワークの搬入誤差を検出するために設けられているカメラを用いてワークの削り代をワークの周縁全体にわたって均一化するための補正値の設定を自動で行うことを可能にした研削装置を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の削り代の均一化方法は、板状のワークwを保持するテーブル12及び当該テーブルの回転装置15と、ワークwの周縁を研削する砥石3及び当該砥石をテーブル12の回転中心Pに向けて接近及び離隔する方向に直線移動する送り装置23と、テーブル12の回転角θと砥石3の移動位置sとを関連づけて回転装置15及び送り装置23を制御する制御器4と、テーブル12上のワークwの画像を取得するカメラ5とを備えた板材の周縁研削装置に用いられる削り代の均一化方法である。
【0014】
この発明の方法は、テーブル12に保持されたワークwの加工前と加工後にカメラ5で当該ワークの予め定めたワーク中心を挟んで対向する2箇所を含む3箇所以上の周縁部A〜Hの画像を取得し、それぞれの周縁部における加工前と加工後のワークの直交する2方向の辺の位置の差(辺の間隔)Δx(Δxa〜Δxf)、Δy(Δya〜Δyh)を検出し、当該3箇所以上の周縁部における辺の位置の差Δx、Δyが均一となる補正値を求めて制御器4に設定する。制御器4は、テーブルの回転装置15と砥石の送り装置23に与える指令値を設定された補正値で補正して当該回転装置15と送り装置23とを制御することにより、上記課題を解決したものである。

【0015】
上記方法において、加工後に取得する周縁部の画像を、テーブル12への素材ワークの搬入誤差を補正して加工を行った後の周縁部の画像とすることで、ワークの搬入誤差を含まない補正値を設定することができる。また、複数個のワークについて取得した加工前後の周縁部の画像から計測した辺の位置の差の平均値から補正値を求めることにより、より正しい補正値の設定が可能になる。
【0016】
この発明の方法を実施するこの発明の周縁研削装置は、板状のワークwを保持するテーブル12及び当該テーブルの回転装置15と、テーブル12上のワークwの周縁を研削する砥石3及び当該砥石をテーブル12の回転中心Pに向けて接近及び離隔する方向に直線移動する送り装置23と、テーブル12の回転角θと砥石3の移動位置sとを関連づけて制御する制御器4と、テーブル12上のワークwの周縁部A〜Hの画像を取得するカメラ5と、当該画像の取得手段43と、加工前のワークの周縁部の画像を記憶する記憶手段44と、加工前後の画像の解析手段45と、テーブルの回転角θないし砥石の移動位置sの補正手段46とを備えている。
【0017】
画像の取得手段43は、テーブル12に保持されたワークwの加工前と加工後にカメラ5でワークの予め定めた3箇所以上の周縁部A〜Hの画像を取得する。画像の記憶手段44は、加工前の前記3箇所以上の周縁部の画像を記憶する。画像の解析手段45は、それぞれの周縁部A〜Hにおける加工前と加工後のワークの辺の位置の差Δx、Δyを検出する。補正手段46は、3箇所以上の周縁部A〜Hにおける辺の位置の差Δx、Δyが均一となる補正値を記憶して当該補正値で制御器4から回転装置15ないし送り装置23に与える指令値を補正する。
【0018】
前記3箇所以上の周縁部は、対向する2箇所の角部を含む3箇所又は4箇所の角部とすることで、取得する画像の数を少なくできると共に、カメラを移動しないテーブルの回転のみで全ての箇所の画像を取得できることから、短い時間で補正値の設定を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、機械に設けられているカメラを用いて、加工前の素材ワークと加工後のワークの形状を画像で比較することにより、削り代の偏りを検出し、ワーク全体の削り代が均一になるように補正することで、加工精度の向上と砥石摩耗の低減を図ったものである。
【0020】
この発明により、ワークの連続加工中に機械に設置したカメラを用いて削り代の計測及び補正値の設定を行うことができるため、ワークを機械から取り外す必要がなく、計測工数が削減でき、人為的な計測誤差や入力ミスを防止できる。更に、削り代を計測するカメラは、機械への素材ワークの搬入時の位置決め確認用カメラを使用できるので、削り代を計測するための高価な測定器を準備する必要がない。
【0021】
また、この発明の方法を定期的に行わせることにより、ワークの削り代を均一に保持することが可能となり、加工負荷が一定となるため、ワークの寸法精度の向上、チッピングの低減などにより加工精度が向上し製品の品質も安定し、砥石の寿命も延びるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】周縁研削装置の実施例を示す模式的な側面図
図2図1の装置の主要な機器配置を示す平面図
図3】極座標系の加工方法を示す説明図
図4】カメラで取得したワークの角部Aの加工前後の画像を重ねて示す模式的な図
図5】角部Bの図4と同様な図
図6】角部Cの図4と同様な図
図7】カメラで取得したワーク全体の加工前後の画像を重ねて示す模式的な図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照してこの発明の周縁研削装置の実施形態を説明する。図1は極座標系の周縁研削装置の模式的な側面図、図2は機器配置を示す平面図である。
【0024】
図において、ワーク軸1は、鉛直方向の中空軸で、図示しない機械フレームに軸受11で回転自在に軸支されている。ワーク軸1の上端には、テーブル12が固定されており、このテーブルの上面は、水平なワーク保持面13となっている。ワーク保持面13には、ワーク軸1の中空孔を通して負圧が供給されており、ワーク保持面13に載せたワークwは、下面を真空吸着されてテーブル12に固定される。ワーク軸1の下端には、主軸モータ(サーボモータ)15が連結されている。主軸モータ15は、サーボアンプ41を介して制御器4に接続され、制御器4の指令によってワーク軸1の回転角が制御されている。
【0025】
ワーク軸1の上方には、横送り台21が設けられている。横送り台21は、前記機械フレームに設けた水平方向の横ガイドに移動自在に案内され、横送りモータ(サーボモータ)23で回転駆動される横送りねじ24に螺合している。横送りモータ23は、サーボアンプ42を介して制御器4に接続されており、横送り台21の移動位置が制御器4によって制御されている。
【0026】
横送り台21には、縦送り台25が設けられている。縦送り台25は、横送り台21に固定した鉛直方向、すなわちワーク軸1と平行な方向の縦ガイド(図示されていない)に移動自在に装着され、縦送りモータ26で回転駆動される縦送りねじ27に螺合している。
【0027】
縦送り台25には、砥石軸31が軸支され、この砥石軸の下端に砥石3が装着されている。砥石軸31は、鉛直方向の軸受け32でワーク軸1と平行に軸支されている。砥石軸31の上端は、歯付ベルト33を介して砥石駆動モータ34に連結されている。
【0028】
ワーク軸1の軸心及び砥石軸31の軸心は、横送り台21の移動方向と平行な同一鉛直面S上に位置している。図3は、極座標系の装置によるワークwの周縁研削加工を模式的に示した図で、制御器4で横送り台21の移動量sとワーク軸1の回転角θとを関連付けて制御することにより、所望の平面形状の周縁加工を行う。なお図には示してないが、ワークに貫通孔や内径加工を行う装置では、縦送り台25に、砥石3に対して相対昇降可能な小径の砥石を設けて、貫通孔や内径加工を行う。
【0029】
横送り台21の定位置には、テーブル12上のワークの周縁部の画像を取得するカメラ5が装着されている。ワークwは、4箇所の角部A〜D迄の距離が等しい点であるワーク中心をテーブル12の回転中心Pに一致させてテーブル12上に搬入される。カメラ5の光軸Oは、テーブル12の回転中心Pと砥石3の軸心Qとを結ぶ鉛直面S上に設定されている。カメラ5は、テーブル12の中心部を撮影した画像からテーブル12の回転中心Pを認識できないので、テーブル12の回転中心P、砥石3の軸心Q及びカメラ5の光軸Oの位置は、機械の加工誤差及び組立誤差を含んでいる。
【0030】
制御器4には、テーブル12に保持されたワークwの加工前と加工後にカメラ5でワークの角部A〜Dの内の予め定めた3箇所の角部A〜Cの画像を取得する画像の取得手段43と、当該取得手段が取得した加工前の前記3箇所以上の角部の画像を記憶する画像記憶手段44と、角部A〜Cにおける加工前後のワークのX方向とこれに直交するY方向の辺の位置の差(辺の間隔)Δx(Δxa〜Δxc)、Δy(Δya〜Δyc)を検出する画像解析手段45とが設けられている。更に制御器4には、前記3箇所の角部A〜Cにおける加工前後の辺の位置の差Δx、Δyが均一となる補正値を記憶して制御器4から回転装置15ないし送り装置23に与える指令値を補正する補正手段46が設けられている。
【0031】
テーブル12にワークwを固定してテーブル12を当該ワークの縦横比で決まる角度αだけ回転し、横送り台21をカメラ5の光軸Oがテーブル12の回転中心Pからワークwの対角寸法Lの半分の位置に来るように移動することにより、カメラ5をワークwの角部A〜Dの撮影位置に設定することができる。また、カメラ5は、例えば20mm×25mm程度の撮影領域を備えており、テーブル12上に固定されたワークの偏倚量や研削による取り代は、このカメラの撮影領域に比べて十分に小さい。従って、偏倚した状態でテーブルに固定された加工前後のワークの角部A〜Dは、テーブル12を回転させることにより、定位置に保持したカメラ5の撮影領域内に入れることができる。
【0032】
搬入されたワークwがテーブル12に固定された後、当該ワークのあるべき角の位置(ワークがテーブル上の正しい位置に置かれたときの角の位置)に光軸Oを位置決めしたカメラ5でワークの加工前の角部Aの画像a1(図4)を取得する。次にカメラ5の位置を固定したままテーブル12を回転(ワークが矩形の場合は180度回転)して、ワークwの第2の角部Bの画像b1(図5)を取得する。更にテーブル12をワークの縦横比で定まる角度を回転して、ワークwの第3の角部Cの画像c1(図6)を取得して記憶する。なお、画像中心Oは、ワークがテーブル上に正しく置かれたときのワークの角の位置である。
【0033】
次に、対角上の角部A、Bの画像a1、b1と画像原点Oとの偏差から、テーブル上のワークの搬入誤差を補正する補正値を求めて制御器に設定し(特許文献3参照)、その補正値を使用してテーブル12の回転角θと横送り台21の位置sとを関連づけて制御することにより、砥石3でワークwの周縁の研削加工を行う。
【0034】
ワークの加工が終了したら、テーブル回転角と横送り台の位置とを加工前と同一角度及び位置にしてカメラ5で加工後の角部A、B、Cの画像a2、b2、c2を取得する。図4〜6は、加工前後に取得した角部A〜Cを重ねて表示した図で、Δxa〜Δxc、Δya〜Δycは、それぞれの角部におけるX方向(砥石の移動方向)とそれに直交するY方向の削り代である。
【0035】
そこで、ワークの長辺をX方向として、ΔyaとΔybとの差とワークの対角寸法Lから、テーブル12の回転角の偏差を求め、ΔxaとΔxcの差及びΔybとΔycの差から、それぞれX方向及びY方向の削り代の偏差を求めて、これらの偏差を補正する補正値を制御器に設定する。
【0036】
なお、上記の実施例では、ワークの3箇所の角部A〜Cの画像から補正値を設定しているが、4箇所の角部A〜Dの任意の3箇所(必ず対角位置にある2箇所が含まれる。)を選べば良く、また4箇所全てを選んでそれらの平均値を補正値としても良い。また、加工前のワークの寸法ないし形状のばらつきを考慮すれば、複数枚のワークについて検出した偏差の平均値から求めた補正値を設定するのが良い。
【0037】
ワークの寸法が小さいときは、ワークの半分ないし全体がカメラ5の撮影領域に入る。このような場合には、カメラ5で取得したワークの半分ないし全体の画像から上記3箇所以上の箇所の画像が得られる。図7は、カメラ5で取得した加工前後のワーク全体の画像の一例を示した図である。この例では、カメラ5を同一位置にして取得した加工前のワーク全体の画像w1と加工後のワーク全体の画像w2とを重ね合わせ、A〜Hの8箇所の画像から、箇所A、B、E、Fについては辺のX方向の偏倚Δxa、Δxb、Δxe、Δxfを取得し、箇所C、D、G、Hについては辺のY方向の偏倚Δyc、Δyd、Δyg、Δyhを取得し、更に偏倚を計測した各箇所間の距離Lab、Lcd、Lef、Lghを取得している。
【0038】
そして、取得したこれらの偏差から、テーブル回転角の偏差Δθを加工前後の各辺の傾きの差の平均、すなわち、
Δθ=(Δθab+Δθcd+Δθef+Δθgh)/4
Δθab=Atan(Δxa-Δxb)/Lab)
Δθcd=Atan(Δyc-Δyd)/Lcd)
Δθef=Atan(Δxe-Δxf)/Lef)
Δθgh=Atan(Δyg-Δyh)/Lgh)
で演算する。
【0039】
X方向の偏差は、ワーク中心の座標を(0,0)とし、Δxa、Δxbを正の寸法、Δxe、Δxfを負の寸法としてそれらの平均値、
Δx=(Δxa+xb+Δxe+Δxf)/4
を演算する。また、Y方向への偏差は、ワーク中心の座標を(0,0)とし、Δc、Δdを正の寸法、Δg、Δhを負の寸法としてそれらの平均値、
Δy=(Δyc+Δyd+Δyg+Δyh)/4
を演算する。
【0040】
そして、得られたΔθ、Δx、Δyの偏差を工具の切込軸(S軸)とテーブルの回転軸(C軸)に極座標変換して工具経路の補正値に変換して制御器に設定し、以後のワークの加工については、テーブル回転および工具位置の指令値を設定した補正値で補正して加工を行う。
【0041】
以上の実施例では、矩形のワークについて説明したが、矩形以外の樽形や角丸矩形は勿論、五角形や六角形などであっても、それらから3箇所以上の角部を選んで上記と同じ方法で削り代の均一化を行うことができる。
【0042】
以上のようにして設定した補正値を記憶し、その補正値とワークが搬入される毎に検出される搬入誤差の補正値とで主軸モータ15に与える回転角の指令値と送りモータ23に与える砥石位置の指令値とを補正してワークwの加工を行ってやれば、以後のワークについて、削り代を均一にしたワークの研削加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
3 砥石
4 制御器
5 カメラ
12 テーブル
15 主軸モータ
23 横送りモータ
43 画像取得手段
44 画像記憶手段
45 画像解析手段
46 補正手段
A〜H ワークの周縁部
P 回転中心
w ワーク
s 砥石の移動位置
θ 回転角
Δx、Δy ワークの辺の位置の差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7