(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
水晶発振器は、高い周波数安定度が要求されるアプリケーションに組み込まれる場合、OCXO(oven controlled crystal oscillator)として構成されることがある。
図8に一例として、OCXO100のブロック図を示す。OCXO100の各部については、実施の形態で説明するため、この背景技術の項目では必要に応じて、各部の概略のみを説明するにとどめる。なお、特許文献1にも略同様の構成のOCXOについて記載されている。
【0003】
このOCXO100においては、恒温槽内に設けられる第1の水晶振動子10を発振させる第1の発振回路11からの発振周波数と、第2の水晶振動子20を発振させる第2の発振回路21からの各発振周波数との差を利用して、恒温槽内の温度が計算される。そして、恒温槽内の温度が前記第1の水晶振動子のZTC(Zero-Temperature Coefficient)点になるように、振動子用ヒーター52の制御が行われている。
【0004】
前記第1の発振回路11及び第2の発振回路21は、例えばLSI(集積回路)に含まれている。また前記ZTC点とは、水晶振動子の発振周波数について基準温度における発振周波数からの変化量を縦軸に設定し、さらに温度変化を横軸に設定したときのグラフの変曲点である。前記水晶振動子の温度が、このZTC点に合わされるように前記振動子用ヒーターが制御されることで、温度に対する周波数変動を極力小さくすることができる。OCXO100においては、このように温度制御される前記第1の水晶振動子10に接続される第1の発振回路11からの出力が、前記LSIの各部にクロックとして供給される。
【0005】
しかし、このようなOCXO100において、各水晶振動子10、20から各発振回路11、21をなすLSIが離れて設けられると、前記水晶振動子の温度と前記発振回路の温度とに乖離が発生する。そして、発振回路11、21には温度に対する出力周波数の変動特性がある。従って、恒温槽の外部の温度変動が起きたときに前記LSIの温度が変動し、それによって前記発振回路11、21からの出力周波数が変動することが考えられる。即ち、OCXO100の温度特性が劣化するおそれがある。
【0006】
各水晶振動子10、20が小型であり、さらに小型の恒温槽を有するように前記OCXO100を構成する場合は、水晶振動子とLSIとの距離を比較的近く配置して上記の水晶振動子10、20の温度と発振回路11、21をなすLSIの温度との乖離が比較的抑えられるように対処することも考えられる。しかし、例えば恒温槽が大型であり、且つ各水晶振動子10、20が大きく、これらの水晶振動子10、20が1つのケースに入らない場合などのように、第1及び第2の水晶振動子10,20とLSIとを、そのように温度の乖離が抑えられるように配置することができない場合がある。そのような場合には、特に上記のOCXO100の温度特性の劣化が懸念される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水晶発振器の実施の形態であるOCXO1について説明する。
図1には、OCXO1のブロック図を示している。このブロック図では、OCXO1における各回路のレジスタの設定及び読み書きが行われる際のデジタル制御データ信号の流れを、実線の矢印で示している。また、一点鎖線の矢印で高周波信号が流れる方向を示し、二点鎖線の矢印でアナログ信号が流れる方向を示している。さらに点線の矢印で、システムクロック信号が流れる方向が示されている。なお、背景技術の項目で説明した
図8のOCXO100も、この
図1のOCXO1と同様に各矢印を用いて、各信号の流れを示している。
【0013】
このOCXO1は、第1の水晶振動子10と、第2の水晶振動子20とを備え、各水晶振動子10、20はATカットされた水晶片と励振電極とにより構成されている。この例において第1の水晶振動子10及び第2の水晶振動子20は、互いに等しい周囲温度に置かれるように、共通のケース12内に互いに近接して収納されている。第1の水晶振動子10は、ケース12の外部に設けられる第1の発振回路11に接続され、第2の水晶振動子20は、同じくケース12の外部に設けられる第2の発振回路21に接続される。
【0014】
第1の水晶振動子10に接続された第1の発振回路11、第2の水晶振動子20に接続された第2の発振回路21の後段側には、周波数カウント部31、温度補正周波数計算部32、PLL回路部41、ローパスフィルタ(LPF)42、水晶電圧制御発振器(VCXO)43が接続されている。PLL回路部41は、第1の発振回路11からの発振出力をクロック信号とし、デジタル値である周波数設定信号に基づいて生成されるパルス信号とVCXO43からの帰還パルスとの位相差に相当する信号をアナログ化し、そのアナログ信号を積分してローパスフィルタ42に出力する。LPF42からの出力によりVCXO43の出力が制御される。VCXO43の出力がOCXO1の発振出力である。
【0015】
第1の発振回路11からの発振出力f1と第2の発振回路21からの発振出力f2との周波数差ΔFに対応する値は、水晶振動子10、20が置かれている雰囲気の温度に対応し、温度検出値ということができる。なお、説明の便宜上f1、f2は、夫々第1の発振回路11及び第2の発振回路21の発振周波数も表しているものとする。周波数カウント部31は、この例では、{(f2−f1)/f1}―{(f2r−f1r)/f1r}の値を取り出しており、この値が温度に対して比例関係にある温度検出値に相当する。f1r及びf2rは、夫々基準温度例えば25℃における第1の発振回路11の発振周波数及び第2の発振回路21の発振周波数である。
【0016】
温度補正周波数計算部32は温度の検出結果と、予め作成した周波数補正値との関係と、に基づいて周波数補正値を算出し、この周波数補正値と、予め設定された周波数設定値とを加算して周波数設定信号を設定する。前記温度検出値と周波数補正値との関係、及び前記周波数設定値はデジタル制御回路33に格納されている。前記周波数補正値は、第1の水晶振動子20の温度が目標温度から変動した時に、その変動分、つまり前記クロック信号の温度変動分を補償するための値である。
【0017】
例えば(f2−f2r)/f2r=OSC2、(f1−f1r)/f1r=OSC1とすると、水晶振動子の生産時に(OSC2−OSC1)と温度との関係を実測により取得し、この実測データから、温度に対する周波数変動分を相殺する補正周波数曲線を導き出し、最小二乗法により9次の多項近似式係数を導き出している。そして多項近似式係数を予めデジタル制御回路33に記憶しておき、温度補正周波数計算部32はこれら多項近似式係数を用いて、補正値の演算処理を行っている。結果として温度変動に対してクロックの周波数が安定し、以ってVCXO43からの出力周波数が安定することになる。つまり、前記OCXO1はTCXOとしても構成されており、いわば二重の温度対応が行われた、高い精度で出力を安定させることができる装置として構成されている。
【0018】
図中34は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)からなる外部メモリであり、35は外部メモリ34をデジタル信号処理部3(後述)に接続する接続端子である。前記多項式近似係数及び周波数設定値は、OCXO1の電源投入時に、この外部メモリ34からデジタル制御回路33のレジスタに取り込まれる。図中36は内部メモリであり、デジタル信号処理部3の各部が動作するための初期パラメータが格納されている。OCXO1の電源投入時にデジタル制御回路33により、当該デジタル信号処理部3の各回路に初期パラメータが設定され、各回路の動作が可能になる。図中37はアナログデジタル変換器であり、デジタル信号処理部3に供給されるアナログの直流電圧信号Vcをデジタルの直流電圧信号に変換する。デジタル制御回路33にも、第1の発振回路11の出力がシステムクロックとして供給される。
【0019】
図中38、38は、I
2C(Inter-Integrated Circuit)バスを介してデジタル制御回路33と外部コンピュータ39に含まれるインターフェイス回路とを接続する役割を有する。外部コンピュータ39により、OCXO1のユーザーは前記デジタル制御回路33に含まれるレジスタの各データを変更することができる。例えば前記予め設定された周波数設定値を変更し、OCXO1の出力周波数を変更することができる。
【0020】
OCXO1には温度の検出結果に基づいて、水晶振動子10,20が置かれる雰囲気が設定温度となるようにその温度を調整するための振動子用ヒーター制御回路51が設けられている。振動子用ヒーター制御回路51は、周波数差カウント部31から出力された温度検出値(デジタル値)と、デジタル制御回路33から出力される予め設定された温度設定値とに応じて、振動子用ヒーター52に電力を供給する。前記供給される電力が大きいほど、振動子用ヒーター52からの発熱量が大きくなり、第1の水晶振動子10が前記ZTC点になるように、水晶振動子10、20が温度補償される。
【0021】
OCXO1の縦断側面図である
図2も参照する。OCXO1は恒温槽44と、恒温槽44の内部に設けられた基板62と、を備えている。例えば基板45の表面には前記水晶振動子10、20を含むケース12が設けられ、基板45の裏面には、このケース12に重なるように前記振動子用ヒーター52が設けられている。ただし、水晶振動子10,20は、このように共通のケース12に格納することには限られない。また、基板62の表面には、前記ケース12から離れて、前記デジタル信号処理部3を構成する集積回路(LSI)が設けられている。上記の発振回路11、21、周波数カウント部31、温度補正周波数計算部32、PLL回路部41、振動子用ヒーター制御回路51、デジタル制御回路33、アナログデジタル変換器37、及び内部メモリ36については、この集積回路であるデジタル信号処理部3に含まれる。このように、デジタル信号処理部3と、水晶振動子10、20を囲うケース12とは、共に恒温槽44内の空間に設けられている。
【0022】
図1に戻って説明を続けると、OCXO1にはさらに発振回路(OSC)用ヒーター制御回路5と、内部温度センサ53と、発振回路用内部ヒーター54と、外部温度センサ55と、発振回路用外部ヒーター56と、が設けられている。内部温度センサ53及び外部温度センサ55は、夫々デジタル信号処理部3の周囲温度を検出し、この検出温度に対応したアナログの電圧信号を発振回路用ヒーター制御回路5に出力する。これらの温度センサ53、55は、例えばトランジスタやダイオードなどにより構成される。
【0023】
後述するように、これら温度センサ53、55のうちの一方の出力電圧が前記デジタル信号処理部3の周囲温度の検出に用いられる。また、発振回路用内部ヒーター54及び発振回路用外部ヒーター56のうちの一方が、デジタル信号処理部3の周囲温度を一定にするために用いられる。この例では、内部温度センサ53の出力を用いる場合には発振回路用内部ヒーター54により前記周囲温度の制御が行われ、外部温度センサ55の出力を用いる場合には発振回路用外部ヒーター56により夫々前記周囲温度の制御が行われる。
【0024】
前記内部温度センサ53、発振回路用内部ヒーター54及び発振回路用ヒーター制御回路5は、デジタル信号処理部3に含まれる。そして、
図2に示すように、外部温度センサ55は基板62の表面において当該デジタル信号処理部3に近接して設けられる。発振回路用外部ヒーター56は、例えば基板62の裏面においてデジタル信号処理部3と重なるように設けられる。
【0025】
図3には、発振回路用ヒーター制御回路5の構成を示している。内部温度センサ53、55のうちのいずれかの出力を、後段側へ供給するためにスイッチ61が設けられ、スイッチ61の後段にはアナログデジタル変換器(ADC)62が設けられている。ADC62の後段にはスイッチ63が設けられ、前段側から供給される出力を、内部温度メモリ64及び外部温度メモリ65のうちのいずれか一方に切り替えて出力する。内部温度メモリ64及び外部温度メモリ65の後段にはスイッチ66が設けられ、スイッチ66の後段にはPI制御回路67及び補正回路68が設けられている。
【0026】
スイッチ66は、内部温度メモリ64及び外部温度メモリ65のうちのいずれか一方の出力を、PI制御回路67及び補正回路68のうちの一方に供給する。つまりスイッチ66については、
図3では内部温度メモリ64とPI制御回路67とを接続した状態を示しているが、このような接続状態と、内部温度メモリ64と補正回路68とした状態と、外部温度メモリ65とPI制御回路67とを接続した状態と、外部温度メモリ65とPI制御回路67とを接続した状態と、を切り替えることができるように構成される。
【0027】
PI制御回路67及び補正回路68の後段にはスイッチ69が設けられ、これらPI制御回路67及び補正回路68のうちの一方を後段側に接続するように切り替えが行われる。スイッチ69の後段には、スイッチ71が設けられている。スイッチ71の後段には、既述の発振回路用内部ヒーター54及び発振回路用外部ヒーター56が設けられ、PI制御回路67または補正回路68から供給される電力は、発振回路用内部ヒーター54及び発振回路用外部ヒーター56のうちの一方に出力されるようにスイッチ71が切り替えられる。供給される電力が大きいほど、内部ヒーター54及び外部ヒーター56の発熱量が大きくなる。
【0028】
内部温度センサ53の出力に基づいて、デジタル信号処理部3の周囲温度を制御する場合、内部温度センサ53、内部温度メモリ64及び発振回路用内部ヒーター54が互いに接続されるように各スイッチが切り替えられる。外部温度センサ55の出力に基づいて、デジタル信号処理部3の周囲温度を制御する場合、外部温度センサ55、外部温度メモリ65及び発振回路用外部ヒーター56が互いに接続されるように各スイッチが切り替えられる。また、ユーザーの所望の温度制御方法によって、互いに接続される温度メモリ64、65とヒーター54、56との間にPI制御回路67及び補正回路68のうちの一方が介在するように、各スイッチによる接続が行われる。
【0029】
発振回路用ヒーター制御回路5には選択機構をなす内部制御回路72が設けられる。内部制御回路72は、デジタル制御回路33からの制御信号に従って、各回路の動作及びスイッチの切り替えを制御する。既述のように内部制御回路72は、外部コンピュータ39によりその動作が制御できるので、発振回路用ヒーター制御回路5の動作は外部コンピュータ39によりOCXO1のユーザーが制御することができる。
【0030】
前記内部温度メモリ64及び外部温度メモリ65には、温度センサ53あるいは55から入力される信号電圧と、検出温度との対応関係が各々格納されている。そして、前記対応関係により前記検出温度に対応した信号が、PI制御回路67または補正回路68に出力される。
【0031】
PI制御回路67は、デジタル信号処理部3の周囲温度が一定になるように、発振回路用内部ヒーター54または発振回路用外部ヒーター56をPI制御するための回路である。PI制御回路67では温度メモリ64または65から入力された温度信号から、前記周囲温度の目標設定温度(X℃)と温度センサ53または55により検出された温度(Y℃)との偏差((X−Y)℃)が算出され、その偏差に基づいてヒーター54または56に供給する電力が算出され、算出された電力がヒーター54または56に供給される。
【0032】
図4は、このように温度の偏差によって、前記ヒーター出力が設定されることを示すために概念的に表したグラフであり、グラフに示すように目標設定温度X℃に対して検出温度Y℃が近づくほど、ヒーター出力が小さくなる。実際には、上記のようにヒーター出力はPI制御され、前記検出温度Y℃が目標設定温度X℃に合わせこまれるように制御される。
【0033】
補正回路68は前記検出温度Y℃と、ヒーターへの供給電力(ヒーター出力)との対応関係を規定したテーブルを備えている。前記検出温度に対応するヒーター出力が当該テーブルから読み出され、この読み出された出力が補正回路68からヒーター54または56に供給される。
図5は、前記テーブルに規定される対応関係の一例を、説明を容易にするためにグラフとして示したものである。このグラフに示すように、PI制御回路67を用いる場合とは異なり、補正回路68を用いる場合は、(X−Y)℃が演算されず、検出温度Y℃に対応するヒーター電力(A:単位W)がテーブルから読み出され、読み出された電力がヒーター54または56に供給される。
【0034】
補正回路68は、前記テーブルを備える代わりに検出温度Y℃についての1次〜N次(Nは2以上の整数)の計算式を備えるようにしてもよい。この計算式の値は、デジタル信号処理部温度3の周囲温度を目標設定温度X℃にするためのヒーターの出力値の近似値である。補正回路68は、この計算式と前記検出温度とにより、前記近似値を算出し、算出した値の電力がヒーター54または56に供給されるようにしてもよい。
【0035】
上記の補正回路68またはPI制御回路67によりヒーター54及び56の出力が制御されることで、温度センサ53または55とヒーター54または54とが熱結合される。つまり、温度センサによる検出温度の変化に従って、ヒーターの出力が変化する。
【0036】
例えば発振回路用ヒーター制御回路5の各スイッチの動作を制御するためのパラメータは外部メモリ34に記憶される。ユーザーがOCXO1の電源を投入すると、このパラメータがデジタル制御回路33に読み出され、当該パラメータに基づいてデジタル制御回路33が発振回路用ヒーター制御回路5に制御信号を送信する。この制御信号に基づいて発振回路用ヒーター制御回路5の各スイッチの切り替えが制御される。ここでは一例として、
図3に示すように内部温度センサ53、内部温度メモリ64、PI制御回路67及び発振回路用内部ヒーター54が互いに接続されるものとして説明する。
【0037】
OCXO1の外部温度が低下したときには、デジタル信号処理部3が置かれる雰囲気の温度(デジタル信号処理部3の周囲温度)及び水晶振動子10、20が置かれる雰囲気の温度(周囲温度)が設定温度から低下する。周波数カウント部31からの温度検出値{(f2−f1)/f1}―{(f2r−f1r)/f1r}が例えば低下し、それによって振動子用ヒーター制御回路51から振動子用ヒーター52への供給電力が増加する。その結果として、水晶振動子10、20の周囲温度が上昇し、前記設定温度になるように補償される。
【0038】
そのように水晶振動子10、20の温度補償が行われる一方で、内部温度センサ53により検出されるデジタル信号処理部3の周囲温度が低くなり、それによってPI制御回路67からの発振回路用内部ヒーター54への供給電力が増加する。その結果、前記内部ヒーター54への供給電力が増加し、デジタル信号処理部3の周囲温度が前記設定温度になるように補償される。
【0039】
OCXO1の外部温度が上昇したときには、デジタル信号処理部3の周囲温度及び水晶振動子10、20の周囲温度が設定温度から上昇する。周波数カウント部31からの温度検出値{(f2−f1)/f1}−{(f2r−f1r)/f1r}が例えば上昇し、それによって振動子用ヒーター制御回路51から振動子用ヒーター52への供給電力が低下する。その結果として、水晶振動子10、20の周囲温度が低下し、前記設定温度になるように補償される。
【0040】
その一方で、内部温度センサ53により検出されるデジタル信号処理部3の周囲温度が高くなり、それによってPI制御回路67からの発振回路用内部ヒーター54への供給電力が低下する。その結果、前記内部ヒーター54への供給電力が低下し、前記デジタル信号処理部3の周囲温度が設定温度になるように補償される。
【0041】
このように水晶振動子10、20の周囲温度及び発振回路11、21を含むデジタル信号処理部3の周囲温度が一定になるように温度補償されることで、発振回路11、21からの発振出力周波数が安定する。結果として、PLL回路部41に供給されるクロック信号の変動が抑えられ、さたに温度補正周波数計算部32にて演算される周波数補正値が、正確性高く算出されることになる。結果として、OCXO1の発振出力周波数が安定したものとなる。
【0042】
このようにOCXO1の動作中、例えばユーザーが外部コンピュータ39よりデジタル制御回路33のレジスタ内のパラメータを書き換えることで、発振回路用ヒーター制御回路5の各スイッチが切り替わる。例えば、
図6では
図3の状態から各スイッチを切り替え、外部温度センサ55、外部温度メモリ、補正回路68及び発振回路用外部ヒーター56が互いに接続された例を示している。このように接続を切り替えた場合も、内部温度センサ53の代わりに外部温度センサ55によりデジタル信号処理部3の周囲温度が検出されること、PI制御回路67の代わりに補正回路68によりヒーターへの出力が制御されること、発振回路用内部ヒーター54の代わりに発振回路用外部ヒーター56により前記周囲温度が加熱されることを除いて、既述の
図3のように各回路を接続した場合と同様の温度制御が行われる。
【0043】
このように水晶振動子10、20の周囲温度、デジタル信号処理部3の周囲温度が各々の設定温度になるように独立して制御されている。それによって、OCXO1の外部温度が変動しても、水晶振動子10、20とデジタル信号処理部3とが各々精度高く温度補償され、発振回路11、21からの出力周波数が安定する。結果として、OCXO1からの発振出力周波数が安定する。また、振動子用ヒーター52によって水晶振動子10、20の温度が変化するときに、この水晶振動子10、20と共に、発振回路11、21が温度変化するように、水晶振動子10、20と発振回路11、21とを互いに近接させて設ける必要が無くなる。従って、基板における水晶振動子10、20と、発振回路11、21を含むデジタル信号処理部3との配置について、自由度の高いレイアウトとすることができる。
【0044】
上記の構成例では、内部温度センサ53及び発振回路用内部ヒーター54の組と、外部温度センサ55及び発振回路用外部ヒーター56の組とのうち、いずれかを選択して使用することができるが、いずれか一方の組のみをOCXO1に設けてもよい。内部温度センサ53及び発振回路用内部ヒーター54の組のみを設ける場合、装置構成を簡素なものとすることができる。外部温度センサ55及び発振回路用外部ヒーター56の組のみを設ける場合、外部ヒーター56は、LSIの外部にあるため、LSIの大きさによらずに設計できることから、比較的大きな出力を得られるように構成することができる。つまり、恒温槽内において温度制御できる温度範囲及びヒーターからの距離の範囲が大きくなる。
【0045】
またPI制御回路67及び補正回路68についても、いずれか一方の回路のみをOCXO1に設けるようにしてもよい。さらに、外部温度センサ55の検出温度により発振回路用内部ヒーター54の出力が制御され、内部温度センサ53の検出温度により発振回路用外部ヒーター56の温度が制御されるようにしてもよい。
【0046】
また、恒温槽内においての各回路の配置については
図2の構成に限られず、
図7に示す構成としてもよい。この
図7の例は
図2の例と異なり、発振回路用外部ヒーター56が、デジタル信号処理部3及び外部温度センサ55の上方に設けられている。そして、ヒーター56からデジタル信号処理部3及び温度センサ55への熱伝導性を高めるために、当該ヒーター56と、デジタル信号処理部3及び温度センサ55との間に例えば金属からなる熱伝導部材63を設けている。
【0047】
上記の例では、第1の水晶振動子10の周囲温度を精度高く検出するために、第2の水晶振動子20、第2の発振回路21及び周波数カウント部31を温度センサとして構成しているが、これら第2の水晶振動子20及び第2の発振回路21を設ける代わりにサーミスタなどを設けて、前記第1の水晶振動子10の周囲温度を測定する温度センサとしてもよい。この場合、第1の発振回路11の出力が、そのままOCXOの出力となるようにしてもよい。