特許第6190675号(P6190675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190675
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】人工歯作製装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/08 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   A61C13/08 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-189469(P2013-189469)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-54119(P2015-54119A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】須山 晃裕
(72)【発明者】
【氏名】浜松 和秀
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102011109939(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工工具と被加工物との相対的な位置関係を3次元で変化させ、前記加工工具により前記被加工物を切削加工して人工歯を作製する人工歯作製装置において、
XYZ直交座標系のX軸方向およびZ軸方向に移動するとともに、加工工具を前記XYZ直交座標系の前記Z軸周りで回転させる加工手段と、
前記XYZ直交座標系のY軸方向に移動するとともに、被加工物に設けられたピンが挿入されて前記被加工物を固定可能な5つの孔がX軸方向に沿って設けられ、前記孔に前記ピンを挿入することにより、前記X軸方向に沿って複数の前記被加工物を保持する保持部材がX軸周りに回転自在に配設される保持手段と
を有し、
前記保持部材は、前記保持手段において前記X軸周りに回転する回転手段に取り付けられる支軸と、前記支軸の一方の端部に形成された板状部材と、前記板状部材に形成されるとともに前記X軸方向に延長した面を備えた固定部材とを有して構成され、
前記保持部材の前記5つ孔は、前記固定部材の前記面に設けられ、
前記面に設けられた前記5つの孔は、第1の孔、第2の孔、第3の孔、第4の孔、第5の孔の順番で前記X軸に沿って形成され、
前記第1の孔と前記第3の孔とは第1の間隔を空けて配設されるとともに、前記第3の孔と前記第5の孔とは前記第1の間隔を空けて配設され、
前記第1の孔と前記第2の孔とは前記第1の間隔より小さい第2の間隔を空けて配設され、前記第2の孔と前記第4の孔とは前記第2の間隔を空けて配設され、前記第4の孔と前記第5の孔とは前記第2の間隔を空けて配設され、
前記第1の孔、前記第3の孔、前記第5の孔にそれぞれ、前記被加工物に設けられた前記ピンを挿入して固定することにより、前記保持部材に3つの前記被加工物を保持させ、
前記第1の孔、前記第2の孔、前記第4の孔、前記第5の孔にそれぞれ、前記被加工物に設けられた前記ピンを挿入して固定することにより、前記保持部材に4つの前記被加工物を保持させる
ことが可能となることを特徴とする人工歯作製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工歯作製装置に関し、さらに詳細には、インプラント治療に用いる人工歯などを作製する人工歯作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インプラント治療に用いられる人工歯は、人工歯作製装置を用いて、ジルコニアなどのセラミックス材料やアクリル樹脂などの樹脂材料よりなる歯科材料を所望の形状に切削加工して作製していた。
【0003】
こうした人工歯作製装置は、略箱状の筐体の内部に加工空間が設けられ、この加工空間内に配設され、歯科材料たる被加工物を保持する保持部と、加工空間内に配設され、保持部に保持された被加工物を所定の形状に切削する切削部と、人工歯作製装置とは別体に設けられる集塵装置と加工空間とを連結する集塵管と、人工歯作製装置全体の動作の制御を行うマイクロコンピューターを有して構成されている。
【0004】
そして、マイクロコンピューターの制御により、保持部と切削部とがそれぞれ所定の方向に移動することによって、保持部に保持された被加工物と、切削部における加工工具との相対的な位置関係を3次元で変化させながら、当該被加工物を切削するようにしている。
【0005】
また、切削部による被加工物の切削加工の際に生じる削りカスは、集塵管を介して集塵装置で集塵され、加工空間内部から除去するようになされている。
【0006】
ところで、こうした人工歯作製装置においては、略直方体形状のセラミックス材料などの所定の面に台座200bを介してピン200aが配設されており(図1(a)を参照する。)、このピン200aを保持部に固定することにより、歯科材料たる被加工物200を保持部に1つだけ保持するようになされている(図1(b)を参照する。)。
【0007】
したがって、同一形状の人工歯を複数作製する場合には、1つの人工歯を作製する度に、新たな被加工物200を保持部に保持させる必要があり、こうした作業が作業者の負担となっていた。
【0008】
このため、複数の歯科材料を保持することが可能な人工歯作製装置の提案が望まれていた。
【0009】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の技術の有する上記したような要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の歯科材料を保持することが可能な人工歯作製装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、加工工具と被加工物との相対的な位置関係を3次元で変化させ、上記加工工具により上記被加工物を切削加工して人工歯を作製する人工歯作製装置において、XYZ直交座標系のX軸方向およびZ軸方向に移動するとともに、加工工具を上記XYZ直交座標系の上記Z軸周りで回転させる加工手段と、上記XYZ直交座標系のY軸方向に移動するとともに、被加工物に設けられたピンが挿入されて上記被加工物を固定可能な5つの孔がX軸方向に沿って設けられ、上記孔に上記ピンを挿入することにより、上記X軸方向に沿って複数の上記被加工物を保持する保持部材がX軸周りに回転自在に配設される保持手段とを有し、上記保持部材は、上記保持手段において上記X軸周りに回転する回転手段に取り付けられる支軸と、上記支軸の一方の端部に形成された板状部材と、上記板状部材に形成されるとともに上記X軸方向に延長した面を備えた固定部材とを有して構成され、上記保持部材の上記5つ孔は、上記固定部材の上記面に設けられ、上記面に設けられた上記5つの孔は、第1の孔、第2の孔、第3の孔、第4の孔、第5の孔の順番で上記X軸に沿って形成され、上記第1の孔と上記第3の孔とは第1の間隔を空けて配設されるとともに、上記第3の孔と上記第5の孔とは上記第1の間隔を空けて配設され、上記第1の孔と上記第2の孔とは上記第1の間隔より小さい第2の間隔を空けて配設され、上記第2の孔と上記第4の孔とは上記第2の間隔を空けて配設され、上記第4の孔と上記第5の孔とは上記第2の間隔を空けて配設され、上記第1の孔、上記第3の孔、上記第5の孔にそれぞれ、上記被加工物に設けられた上記ピンを挿入して固定することにより、上記保持部材に3つの上記被加工物を保持させ、上記第1の孔、上記第2の孔、上記第4の孔、上記第5の孔にそれぞれ、上記被加工物に設けられた上記ピンを挿入して固定することにより、上記保持部材に4つの上記被加工物を保持させることが可能となるようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上説明したように構成されているので、複数の歯科材料を保持することが可能となり、作業性が改善されるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、歯科材料たる被加工物の概略構成説明図であり、また、図1(b)は、従来の技術による人工歯作製装置において被加工物が保持部に取り付けられた状態を示す説明図である。
図2図2は、本発明による人工歯作製装置の概略構成説明図である。
図3図3は、保持部材の概略構成斜視説明図である。
図4図4は、回転部材に取り付けられた状態の保持部材を示す説明図である。
図5図5(a)は、図3に示す保持部材に4つの被加工物を固定した状態を示す説明図であり、また、図5(b)は、図3に示す保持部材に3つの被加工物を固定した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による人工歯作製装置の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0020】
図2には、本発明による人工歯作製装置の概略構成説明図が示されている。
【0021】
この人工歯作製装置10は、筐体12内に設けられた加工空間30の上面30aに設けられ、被加工物200を切削する切削部14と、加工空間30の右側面30bに設けられ、歯科材料たる被加工物200を保持する保持部16と、加工空間30の後方側に設けられ、加工空間30の背面30dの下方側に設けられた開口部30daを介して、別体に設けられた集塵装置(図示せず。)と加工空間30とを連結する集塵管(図示せず。)とを有して構成されている。
【0022】
なお、加工空間30は、上面30a、右側面30b、左側面30c、背面30d、底面30eおよび筐体12のカバー12aにより閉空間となり、こうした加工空間30において被加工物200の切削加工が行われる。
【0023】
また、こうした人工歯作製装置10の全体の動作は、マイクロコンピューター(図示せず。)によって制御されている。なお、このマイクロコンピューターには、例えば、別体で設けられたパーソナルコンピューター(図示せず。)が接続されており、作業者により、このパーソナルコンピューターから、作製する人工歯の形状を表す加工データなどの各種のデータが当該マイクロコンピューターに入力されることとなる。
【0024】
より詳細には、切削部14は、加工空間30の上面30aにおいて、XYZ直交座標系のX軸方向およびZ軸方向に移動することが可能な移動部材(図示せず。)に、固定的に配設されたスピンドル20と、スピンドル20に着脱自在に設けられた加工工具22とを備えている。なお、スピンドル20は、取り付けた加工工具22をZ軸周りで回転することとなる。
【0025】
また、保持部16は、被加工物200を固定的に保持する保持部材18が、XYZ直交座標系のY軸方向に移動する移動部材(図示せず。)に設けられた回転部材19に着脱可能に取り付けられている。なお、この回転部材19は、取り付けた保持部材18をX軸周りに回転するものである。
【0026】
したがって、マイクロコンピューター(図示せず。)により、スピンドル20がX軸方向およびZ軸方向に移動するとともに、被加工物200がY軸方向に移動することとなる。
【0027】
これにより、スピンドル20に取り付けられた加工工具22と、保持部材18に保持された被加工物200との相対的な位置関係は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の任意の方向で変化することとなる。
【0028】
保持部材18は、支軸18aの一方の端部18aaに板状部材18bが形成されており、この板状部材18bの後方側においては、X軸方向に延長する固定部材18cが形成されている(図3を参照する。)。
【0029】
そして、保持部材18は、支軸18aが回転部材19の回転中心に位置する保持部材挿入口(図示せず。)に挿入され、支軸18aの中心軸Oを回転中心としてX軸周りに回転することとなる。
【0030】
また、固定部材18cは、XZ平面と平行な前面18caが、支軸18aの中心軸Oよりやや後方側に位置するように形成される(図4を参照する。)。
【0031】
固定部材18cの前面18caには、被加工物200である歯科材料に設けられたピン200aを挿入可能な5つの孔18ca−1、18ca−2、18ca−3、18ca−4、18ca−5が形成されている。
【0032】
この孔18ca−1、18ca−2、18ca−3、18ca−4、18ca−5は、前面18caにおいて右方側から左方側に向かって、孔18ca−1、孔18ca−2、孔18ca−3、孔18ca−4、孔18ca−5の順番でX軸に沿って並んでいる。
【0033】
そして、孔18ca−1は、板状部材18bが形成された固定部材18cの一方の端部18ccから左方側に間隔G3を空けて設けられ、孔18ca−3は、孔18ca−1と間隔G1を空けて設けられ、孔18ca−5は、孔18ca−3と間隔G1を空けて設けられている。また、孔18ca−2は、孔18ca−1と間隔G2(ただし、間隔G2<間隔G1である。)を空けて設けられ、孔18ca−4は、孔18ca−2と間隔G2を空けて設けられ、孔18ca−5は、孔18ca−4と間隔G2を空けて設けられている。なお、間隔G3については、孔18ca−1に被加工物200を固定したときに、被加工物200が板状部材18bに接触しない長さとする。
【0034】
即ち、孔18ca−1、18ca−3、18ca−5が等間隔で配設されるとともに、孔18ca−1、18ca−2、18ca−4、18ca−5が等間隔で配設されることとなる。
【0035】
また、前面18caの孔18ca−1、18ca−2、18ca−3、18ca−4、18ca−5の下方側にはそれぞれ、凸部26が形成されている。
【0036】
ここで、被加工物200においては、台座200bの下方側に切欠部200baが形成されており(図1(a)を参照する。)、この切欠部200bの幅は、固定部材18cの前面18caの各孔の下方側に形成された凸部26の幅と略一致する長さとなっている。
【0037】
したがって、被加工物200を固定部材18cの前面18caに挿入する際に、この切欠部200baに凸部26を嵌合させることにより、各孔において被加工物200を固定したときの被加工物200の向きが同じ状態となる。
【0038】
また、固定部材18cの上面18cbには、5つの孔18cb−1、18cb−2、18cb−3、18cb−4、18cb−5が形成されており、各孔の内面には、固定ネジ24を螺合することが可能なネジ溝が形成されている。
【0039】
この孔18cb−1、18cb−2、18cb−3、18cb−4、18cb−5は、X軸方向に沿って並んで設けられており、それぞれ固定部材18cの前面18caに形成された5つの孔18ca−1、18ca−2、18ca−3、18ca−4、18ca−5に対応する位置に設けられている。
【0040】
即ち、孔18cb−1、18cb−2、18cb−3、18cb−4、18cb−5は、上面18cbにおいて右方側から左方側に向かって、孔18cb−1、孔18cb−2、孔18cb−3、孔18cb−4、孔18cb−5の順番でX軸に沿って並んでいる。
【0041】
そして、孔18cb−1は、板状部材18bが形成された固定部材18cの一方の端部18ccから左方側に間隔G3を空けて設けられ、孔18cb−3は、孔18ca−1と間隔G1を空けて設けられ、孔18cb−5は、孔18ca−3と間隔G1を空けて設けられている。また、孔18cb−2は、孔18cb−1と間隔G2を空けて設けられ、孔18cb−4は、孔18cb−2と間隔G2を空けて設けられ、孔18cb−5は、孔18cb−4と間隔G2を空けて設けられている。
【0042】
また、孔18cb−1は、孔18ca−1と連通しており、孔18ca−1から挿入された歯科材料たる被加工物200のピン200aを孔18cb−1において螺合した固定ネジ24により固定することができるようになされている。また、孔18cb−2は、孔18ca−2と連通しており、孔18ca−2から挿入された歯科材料たる被加工物200のピン200aを孔18cb−2において螺合した固定ネジ24により固定することができるようになされている。また、孔18cb−3は、孔18ca−3と連通しており、孔18ca−3から挿入された歯科材料たる被加工物200のピン200aを孔18cb−3において螺合した固定ネジ24により固定することができるようになされている。また、孔18cb−4は、孔18ca−4と連通しており、孔18ca−4から挿入された歯科材料たる被加工物200のピン200aを孔18cb−4において螺合した固定ネジ24により固定することができるようになされている。また、孔18cb−5は、孔18ca−5と連通しており、孔18ca−5から挿入された歯科材料たる被加工物200のピン200aを孔18cb−5において螺合した固定ネジ24により固定することができるようになされている。
【0043】
これにより、保持部材18において、所定の大きさの被加工物200を保持させる際には、4つの被加工物200のピン200aをそれぞれ孔18ca−1、18ca−2、18ca−4、18ca−5に挿入した後に、孔18cb−1、18cb−2、18cb−4、18cb−5に固定ネジ24を螺合させる。すると、所定の大きさの被加工物200は、隣り合う被加工物200と間隔g1を空けて固定部材18cの前面18caに、等間隔で固定されることとなる(図5(a)を参照する。)。
【0044】
また、保持部材18において、所定の大きさよりも大きい被加工物200を保持させる際には、3つの被加工物200のピン200aをそれぞれ孔18ca−1、18ca−3、18ca−5に挿入した後に、孔18cb−1、18cb−3、18cb−5に固定ネジ24を螺合させる。すると、所定の大きさよりも大きい被加工物200は、隣り合う被加工物200と間隔g2を空けて固定部材18cの前面18caに、等間隔で固定されることとなる(図5(b)を参照する。)。
【0045】
以上の構成において、人工歯作製装置10により歯科材料たる被加工物200から人工歯を作製する場合について説明する。
【0046】
まず、人工歯作製装置10を設置するなどの所定のタイミングで、各種の補正値を取得する。
【0047】
そして、実際に人工歯を作製する際には、加工する人工歯の大きさに応じたサイズの被加工物200を保持部材18に保持させる。
【0048】
このとき、被加工物200を孔8ca−1、18ca−2、18ca−4、18ca−5に挿入したときに、隣り合う被加工物200が接触したり、所定の間隔を空けることができない場合には、孔18ca−1、18ca−3、18ca−5に被加工物200を挿入する。なお、所定の間隔とは、所定の被加工物200を加工する際に、所定の被加工物200と隣り合う被加工物200に加工工具22が接触してしまうなど、被加工物200に対する切削処理の際に不具合が生じる可能性がある間隔である。
【0049】
ここで、孔18ca−1、18ca−2、18ca−4、18ca−5に被加工物200を固定する場合について説明する。
【0050】
4つの被加工物200のピン200aをそれぞれ孔18ca−1、18ca−2、18ca−4、18ca−5に挿入し、各孔の下方側に設けられた凸部26が被加工物200の台座200bに設けられた切欠部200baに嵌合した状態とする。
【0051】
その後、孔18cb−1、18cb−2、18cb−4、18cb−5にそれぞれ固定ネジ24を螺合させて、4つの被加工物200を固定部材18cに固定することにより、4つの被加工物200を保持部材18に保持させる。
【0052】
次に、4つの被加工物200を保持した状態の保持部材18を保持部16の回転部材19に取り付ける。
【0053】
そして、被加工物200を保持した状態の保持部材を回転部材19に取り付けた後に、筐体12のカバー12aを閉め、人工歯作製装置10を起動する。
【0054】
その後、人工歯作製装置10と別体に設けられたパーソナルコンピューター(図示せず。)から加工データや保持部材18に保持された被加工物の位置情報などをマイクロコンピューター(図示せず。)に入力する。
【0055】
そして、人工歯作製装置10に集塵管(図示せず。)を介して接続された集塵装置(図示せず。)を起動し、操作パネル(図示せず。)を介して作業者が切削加工の処理の開始を指示すると、マイクロコンピューター(図示せず。)の制御により、入力された加工データ、被加工物200の位置情報、人工歯作製装置10の補正値などに基づいて、例えば、最も左方側に位置する被加工物200から順番に切削加工が実施される。
【0056】
以上において説明したように、本発明による人工歯作製装置10は、保持部16における回転部材19に、複数の被加工物200を固定することが可能な保持部材18を着脱自在に配設するようにした。
【0057】
即ち、保持部材18のX軸方向に延長して配設される固定部材18cの前面18caにおいて、XYZ直交座標系のX軸に沿って、被加工物200のピン200aを挿入可能な5つの孔18ca−1、18ca−2、18ca−3、18ca−4、18ca−5を設けるようにした。
【0058】
また、固定部材18cの上面18cbには、孔18ca−1、18ca−2、18ca−3、18ca−4、18ca−5にそれぞれ連通する孔18cb−1、18cb−2、18cb−3、18cb−4、18cb−5をX軸に沿って設けるようにした。
【0059】
そして、孔18ca−1、18ca−2、18ca−3、18ca−4、18ca−5に挿入された被加工物200のピン200aを孔18cb−1、18cb−2、18cb−3、18cb−4、18cb−5から螺合された固定ネジ24により固定することにより、固定部材18cの前面18caに、3つまたは4つの被加工物200を固定するようにした。
【0060】
このため、本発明による人工歯作製装置10においては、容易に、3つまたは4つの被加工物200を保持部において保持することができるようになる。
【0061】
また、3つまたは4つの被加工物200を保持することができるため、一度に、3つまたは4つの同形状の人工歯を作製することができるようになり、従来の技術による人工歯作製装置と比較して、作業性が向上する。
【0062】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(5)に示すように変形するようにしてもよい。
【0063】
(1)上記した実施の形態においは、固定部材18cの前面18caに5つの孔18ca−1、18ca−2、18ca−3、18ca−4、18ca−5を設けるとともに、上面18cbに5つの孔18cb−1、18cb−2、18cb−3、18cb−4、18cb−5を設けるようにし、3つまたは4つの被加工物200が隣り合う被加工物200と等間隔になるよう固定部材18cに固定するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0064】
即ち、固定部材18cの前面18caにおいて、被加工物200が隣り合う被加工物200と等間隔になるよう、被加工物200を5つ以上固定することが可能なように、前面18caおよび上面18cbに複数の孔を設けるようにしてもよい。
【0065】
また、固定部材18cの前面18caにおいて、被加工物200が隣り合う被加工物200と等間隔にならず、3つまたは4つの被加工物200を固定することが可能なように、前面18caおよび上面18cbに複数の孔を設けるようにしてもよい。
【0066】
さらに、固定部材18cの前面18caにおいて、単に、加工処理の際に不具合が生じない間隔を確保しながら、被加工物200を5つ以上固定することが可能なように、前面18caおよび上面18cbに複数の孔を設けるようにしてもよい。
【0067】
(2)上記した実施の形態においては、前面18caが支軸18aの中心軸Oより、やや後方側に位置するように固定部材18cを形成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0068】
即ち、前面18caが、支軸18aの中心軸O上に位置するように固定部材18cを形成するようにしてもよいし、当該中心軸Oよりやや前方側に位置するように固定部材18cを形成するようにしてもよく、要は、前面18caが支軸18aの中心軸O上あるいは中心軸Oの近傍に位置するように固定部材18cを形成するようにすればよい。
【0069】
(3)上記した実施の形態においては、特に記載しなかったが、本発明による人工歯作製装置10では、保持部材18に保持することができない大きさの被加工物200については、保持部16の回転部材19に被加工物200のピン200aを挿入して、回転部材19に直接被加工物200を取り付けるようにしてもよい。
【0070】
(4)上記した実施の形態においては、被加工物200をX軸周りで回転可能に保持する保持部16がY軸方向に移動するとともに、加工工具22が取り付けられる切削部14がX軸方向およびY軸方向に移動するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0071】
即ち、保持部16がX軸方向およびY軸方向に移動し、切削部14がZ軸方向に移動するようにしてもよいし、保持部16が移動せず、切削部14がX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動するようにしてもよく、要は、保持部16に保持された被加工物200と、切削部14に取り付けられた加工工具22との相対的な位置関係が3次元で変化するようであれば、保持部16と切削部14とはどのように移動するようにしてもよい。
【0072】
(5)上記した実施の形態においては、上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(4)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、インプラント治療に使用する人工歯などを作製する際に用いて好適である。
【符号の説明】
【0074】
10 人工歯作製装置、12 筐体、14 切削部、16 保持部、18 保持部材、
18c 固定部材、18ca−1、18ca−2、18ca−3、18ca−4、18ca−5、18cb−1、18cb−2、18cb−3、18cb−4、18cb−5 孔、
20 スピンドル、22 加工工具、24 固定ネジ、30 加工空間、200 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5