(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
〔変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法は、下記工程(1)、工程(2)を順に含む、変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法である。
工程(1):下記(A)、(B)を配合し、混練りする工程
(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部
(B)変性液状ポリマーを、前記(A)ゴム成分100質量部に対し0.5〜50質量部
工程(2):下記(C)、(D)を配合し、混練りする工程。
(C)シリカ無機充填剤を、前記(A)ゴム成分100質量部に対し10〜200質量部
(D)シランカップリング剤を、前記(B)シリカ系無機充填剤100質量部に対し、
0.1〜20質量部
上記のように構成されているため、本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法によれば、シリカ等の配合剤の分散性及び加硫特性が良好で、加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性に優れる変性共役ジエン系重合体組成物を得ることができる。
【0016】
以下、工程(1)において用いる(A)、(B)、及び工程(2)において用いる(C)、(D)について説明し、続いて本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法を構成する工程(1)、工程(2)について説明する。
【0017】
(工程(1)において用いる原料)
<(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法の工程(1)においては、(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分(以下、単に「(A)ゴム成分」、「(A)成分」又は「(A)」と記載する場合がある。)を用いる。(A)ゴム成分中に含まれる変性共役ジエン系重合体は、末端変性共役ジエン系重合体が好ましい。
【0018】
(A)ゴム成分中の変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量Mwは、20万以上200万以下とすることが好ましい。後述する(C)シリカ系無機充填剤を十分に分散させ、後述する(B)変性液状ポリマーによる添加効果(加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性及び耐摩耗性の向上)を十分に発現させる観点から20万以上とし、一方、加工性を実用的に十分なものとする観点から200万以下とすることが好ましい。より好ましくは25万以上150万以下である。
【0019】
重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を使用して、以下のように測定することができる。
【0020】
カラムは、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結して用い、溶離液としては、テトラヒドロフラン(THF)を用いる。カラムについて、詳細には、ガードカラムとして東ソーTSKguardcolumnHHR−H、他のカラムとして東ソーTSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、及びTSKgel G4000HHRを使用し、オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー製HLC8020)を用いる。試料は20mLのTHFに対して10mgを溶解し、200μL注入して測定する。上記の要領で標準ポリスチレンを使用した検量線を作成し、分子量の換算に用いる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0021】
前記変性共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。特に、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記変性共役ジエン系重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体であればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点からスチレンが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記変性共役ジエン系重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0024】
前記ランダム共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体等が挙げられる。
【0025】
共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、特に限定されず、例えば、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、組成がテーパー状に分布しているテーパー(勾配)ランダム共重合体等が挙げられる。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合や1,2−結合等の組成は、均一であってもよいし、分布があってもよい。
【0026】
前記ブロック共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体、3個からなる3型ブロック共重合体、4個からなる4型ブロック共重合体等が挙げられる。
【0027】
例えばスチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックをSで表し、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロック及び/又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体からなるブロックをBで表記すると、以下に限定されないが、例えば、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体等で表される。当該表記において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えば、ブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していてもテーパー状に分布していてもよい。また、ブロックBに、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらには、ブロックBに、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。共重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
前記(A)ゴム成分に含まれる変性共役ジエン系重合体は、不活性溶剤中で水素化することにより二重結合の全部又は一部が水素化され、飽和炭化水素に変換されたものであってもよい。水素化することにより、耐熱性、耐候性が向上し、高温で加工する場合の製品の劣化を防止することができる傾向にある。その結果、自動車用途等種々の用途で一層優れた性能を発揮する傾向にある。
【0029】
共役ジエン系化合物に基づく不飽和二重結合の水素化率(すなわち「水添率」)は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。加硫ゴムとして用いる場合には、上述した性能バランスをより良好にする観点から、共役ジエン部の二重結合が部分的に残存していることが好ましい。かかる観点から、重合体中の共役ジエン部の水添率は3〜70%であることが好ましく、5〜65%であることがより好ましく、10〜60%であることがさらに好ましい。水素化率は、核磁気共鳴装置(NMR)により求めることができる。
【0030】
なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体中の芳香族ビニル化合物に基づく芳香族二重結合の水添率については、特に限定されないが、上述した性能バランスをより良好にする観点から、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であるであることがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態において用いる変性共役ジエン系重合体の二重結合の全部又は一部を水素化する方法及び芳香族基を水素化する方法としては、特に限定されず、公知の方法が利用できる。特に好適な水素化方法としては、触媒の存在下、重合体溶液に気体状水素を吹き込む方法で水素化する方法が挙げられる。
【0032】
前記二重結合の水素化又は芳香族基の水素化に用いられる触媒としては、以下に限定されないが、例えば、貴金属を多孔質無機物質に担持させた触媒等の不均一系触媒;ニッケル、コバルト等の塩を可溶化し有機アルミニウム等と反応させた触媒、チタノセン等のメタロセンを用いた触媒等の均一系触媒等が挙げられる。また、芳香族基の水素化は、貴金属の担持触媒を用いることによって有効に行うことができる。
【0033】
共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合を水素化する触媒の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(a)Ni,Pt,Pd,Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(b)Ni,Co,Fe,Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(c)Ti,Ru,Rh,Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等が挙げられる。また、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報、特開平8−109219号公報に記載された水素化触媒も使用できる。好ましい水素化触媒としては、特にマイルドな水素化条件を選択できる観点から、チタノセン触媒が好ましく、具体的には、チタノセン化合物と還元性有機金属化合物との反応混合物が挙げられる。
【0034】
前記共役ジエン系重合体を製造する際、アニオン系重合開始剤を用いることができる。アニオン系重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、有機アルカリ金属化合物が挙げられる。当該有機アルカリ金属化合物としては、特に限定されるものではないが、有機リチウム化合物が好ましい。
【0035】
有機リチウム化合物としては、以下に限定されないが、例えば、有機基とリチウムの結合様式において炭素−リチウム結合からなる化合物、窒素−リチウム結合からなる化合物、錫−リチウム結合からなる化合物等が挙げられる。
【0036】
前記炭素−リチウム結合からなる化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等が挙げられる。
【0037】
前記窒素−リチウム結合からなる化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジ−n−ヘキシルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムモルホリド等が挙げられる。
【0038】
前記錫−リチウム結合からなる化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリブチル錫リチウム等が挙げられる。有機リチウム化合物としては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。
【0039】
上述した有機リチウム化合物は1種のみならず2種以上の混合物として用いてもよい。
【0040】
さらに、他の有機アルカリ金属化合物としては、以下に限定されないが、例えば、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機ルビジウム化合物、有機セシウム化合物等が挙げられる。具体的には、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。その他にも、リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等が挙げられる。また、他の有機金属化合物と併用してもよい。
【0041】
前記共役ジエン系重合体を製造するために用いるアニオン系重合開始剤としては、特に限定されないが、アルカリ土類金属化合物も適用できる。当該アルカリ土類金属化合物としては、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、有機ストロンチウム化合物等が挙げられる。また、アルカリ土類金属のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等の化合物を用いてもよい。これらの有機アルカリ土類金属化合物は、アルカリ金属化合物や、その他有機金属化合物と併用してもよい。
【0042】
本実施形態において、変性共役ジエン系重合体を得る際に使用できる共役ジエン系重合体は、上述したアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤とし、アニオン重合反応により成長して得られることが好ましい。特に、共役ジエン系重合体は、リビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する重合体であることがより好ましい。これにより、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得ることができる傾向にある。
【0043】
重合様式としては、特に限定されないが、例えば、回分式、連続式等の重合様式で行うことができる。連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。反応器は、撹拌機付きの槽型、管型等のものが用いられる。
【0044】
本実施形態において、変性共役ジエン系重合体を得るための変性反応の効率を十分なものとする観点から、上記の共役ジエン化合物中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていないことが好ましい。かかる観点から、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。なお、上記アレン類としては、例えば、プロパジエン、1,2−ブタジエン等が挙げられる。また、上記アセチレン類としては、例えば、エチルアセチレン、ビニルアセチレン等が挙げられる。
【0045】
共役ジエン系重合体の重合反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が使用でき、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等が挙げられる。
【0046】
重合反応に供する前に、重合単量体において、不純物となるアレン類やアセチレン類を有機金属化合物で処理することは、高濃度の活性末端を有する重合体が得られる傾向にあり、さらには高い変性率が達成される傾向にあるため好ましい。
【0047】
共役ジエン系重合体の重合反応においては、極性化合物を添加してもよい。極性化合物を用いることにより、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させることができる傾向にあり、当該極性化合物は、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる傾向にある。また、重合速度の改善等にも寄与する傾向にある。
【0048】
極性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等が挙げられる。これらの極性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができる。通常、上述した重合開始剤1モルに対して0.01〜100モルであることが好ましい。
【0050】
前記ビニル化剤としての極性化合物は、重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。
【0051】
多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整や、スチレンブロック量の調整剤として用いることができる。
【0052】
共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、特に限定されず、例えば、特開昭59−140211号公報に記載されているような極性化合物を用い、かつ、共重合の途中に1,3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0053】
共役ジエン系重合体の重合工程における重合温度は、リビングアニオン重合が進行する温度であれば、特に限定されないが、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、120℃以下であることが好ましい。
【0054】
本実施形態の製造方法に用いる変性共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、40〜100質量%であることが好ましく、例えば、タイヤのベーストレッド用途の目的で好ましい物性を呈する観点から、60〜80質量%であることがより好ましい。
【0055】
また、本実施形態の製造方法に用いる変性共役ジエン系重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0〜90質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。結合共役ジエン量及び結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、転がり抵抗性転がり抵抗性とウェットスキッド抵抗性のバランスに優れ、耐摩耗性も満足する加硫物を得ることができる傾向にある。ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、結合スチレン量を測定する方法に準じて、後述する実施例に従った方法により測定することができる。
【0056】
また、変性共役ジエン系重合体の共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10〜85モル%であることが好ましく、15〜70モル%であることがより好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、転がり抵抗性とウェットスキッド抵抗性のバランスがさらに優れ、耐摩耗性も満足する加硫物を得ることができる傾向にある。ここで、変性共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。
【0057】
ミクロ構造(変性共役ジエン系共重合体中の結合共役ジエン量、結合芳香族ビニル量、1,2−結合量)が上記範囲にあり、さらに変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度が−45〜−15℃の範囲にあるときに、転がり抵抗性とウェットスキッド抵抗性のバランスにより一層優れた加硫物を得ることができる傾向にある。ガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度として求めることができる。
【0058】
本実施形態における共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が少ないか又は無いものであることが好ましい。具体的には、共役ジエン系重合体がブタジエン−スチレン共重合体の場合であって、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析する公知の方法で評価する場合において、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックが、変性共役ジエン系重合体の総量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0059】
次に、本実施形態の製造方法に用いられる変性共役ジエン系重合体について説明する。本実施形態に用いられる変性共役ジエン系重合体は末端変性共役ジエン系重合体であることが好ましい。変性共役ジエン系重合体が末端変性共役ジエン系重合体を含むと、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性及び引張特性が向上する傾向にあるため、好ましい。変性共役ジエン系重合体中の末端変性共役ジエン系重合体の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0060】
変性共役ジエン系重合体は、アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる上述の共役ジエン系重合体の重合活性末端に、シリル基に結合したアルコキシ基が1個以上であり、2個以上の3級アミノ基を有する化合物、或いは、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する化合物を反応させ、末端変性することによって得ることが好ましい。
【0061】
末端変性共役ジエン系重合体を製造するための変性剤として好ましく用いられる、シリル基に結合したアルコキシ基が1個以上であり、2個以上の3級アミノ基を有する化合物の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、N−[2−(トリアルコキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリアルキルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(アルキルジアルコキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリアルキルエタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリアルキルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリアルキルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラアルキルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラアルキルプロパン−1,3−ジアミン等が挙げられる。また、1−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−4−アルキルピペラジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−4−アルキルピペラジン、1−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルイミダゾリジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルイミダゾリジン、1−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−3−アルキルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリアルコキシシラニル)−プロピル]−1−アルキル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(アルキルジアルコキシシラニル)−プロピル]−1−アルキル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン等も挙げられる。さらに、2−(トリアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルイミダゾリジン、2−(アルキルジアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルイミダゾリジン、2−(トリアルコキシシラニル)−1,4−ジアルキルピペラジン、2−(アルキルジアルコキシシラニル)−1,4−ジアルキルピペラジン、5−(トリアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルヘキサヒドロピリミジン、5−(アルキルジアルコキシシラニル)−1,3−ジアルキルヘキサヒドロピリミジン等も挙げられる。
【0062】
また、シリル基に結合したアルコキシル基が1個以上であり、2個以上の3級アミノ基を有する化合物の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジメトキシメチルシラニル)−エチル]−N−エチル−N’,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−N−エチル−N’,N’−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−N,N’,N’−トリエチル−2−メチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジエトキシプロピルシラニル)−エチル]−N’−(3−エトキシプロピル)−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N’−メトキシメチル−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジメチル−N’−(2−トリメチルシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリエトキシシラニル)−エチル]−N,N’−ジエチル−N’−(2−ジブチルメトキシシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン等が挙げられる。また、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシラニル)−プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシラニル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチル)ジメチルアミン等も挙げられる。さらに、2−(トリメトキシシラニル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシラニル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシラニル)−1,4−ジエチルピペラジン、2−(ジメトキシメチルシラニル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(トリエトキシシラニル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシラニル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(エチルジメトキシシラニル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(トリメトキシシラニル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(エチルジメトキシシラニル)−1,3−ビス−トリメチルシラニルヘキサヒドロピリミジン等も挙げられる。上記した中でも、好ましい化合物としては、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2−(トリメトキシシラニル)−1,3−ジメチルイミダゾリジンが挙げられる。
【0063】
また、変性剤として好ましく用いられる、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する化合物としては、以下に限定されないが、例えば、下記式(1)、(2)、及び(3)で表されるものが挙げられる。
【0064】
【化1】
(一般式(1)中、R
1〜R
4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20アリール基を表し、R
5は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R
6は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。)
【0065】
【化2】
(一般式(2)中、R
7〜R
10は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20アリール基を表し、R
11及びR
12は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R
13及びR
14は、各々独立して、炭素数1〜6の炭化水素基を表し、かつ隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造を形成し、p及びqは、各々独立して、2又は3の整数を表す。)
【0067】
一般式(3)中、X
1及びX
2は、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R
15及びR
16は、それぞれ、炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、A
1及びA
2は、それぞれ、単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、A
3は下記式(a)、(b)で表される基である。複数の、X
1、X
2、R
15、R
16、A
1、A
2又はA
3が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。r及びsは、それぞれ0〜3の整数である。tは0〜20の整数であり、tが2以上の場合、(A
1−A
3−A
2)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。
【0069】
一般式(a)中、R
17は水素原子又は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。なお、A
3が式(a)で表される場合、(r+s)は5又は6である。
【0071】
一般式(b)中、A
4は単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、X
3は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R
18は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX
4又はR
18が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。uは0〜3の整数である。なお、A
3が式(b)で表される場合、[r+(t×u)+s]は5以上の整数である。
【0072】
前記一般式(1)で表される変性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン等が挙げられる。これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、mが2、nが3であるものがより好ましい。具体的には、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンがより好ましい。
【0073】
前記一般式(2)で表される変性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]ピペラジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(ジエメトキシエチルシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン等が挙げられる。これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、p及びqが3であるものがより好ましい。具体的には、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジンよりが好ましく、これらの中でも、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジンがさらに好ましい。
【0074】
前記一般式(3)で表される変性剤としては、A
3が一般式(a)の場合、以下に限定されるものではないが、例えば、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン等が挙げられる。
【0075】
前記一般式(3)で表される変性剤としては、A
3が一般式(b)の場合、以下に限定されるものではないが、例えば、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン等が挙げられる。
【0076】
一般式(3)で表される変性剤として上述した中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、r、s、及びuが3であるものがより好ましい。具体的には、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンがより好ましい。
【0077】
上述した変性剤を用いて、共役ジエン系重合体を変性し、末端変性共役ジエン系重合体を得る変性反応について説明する。なお、変性反応において、上述した変性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
上述した変性剤を共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間などについては、特に限定されないが、0℃以上120℃以下で、30秒以上反応させることが好ましい。
【0079】
上述した変性剤は、添加した当該変性剤中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、上述したアニオン重合開始剤に含まれるリチウムの合計モル数の0.1〜5倍となる範囲となるように添加することが好ましく、0.2〜3倍となる範囲になるように添加することがより好ましい。
【0080】
変性共役ジエン系重合体の官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率は、変性共役ジエン系重合体を用いた組成物を加硫物とした場合において、転がり抵抗性とウェットスキッド抵抗性とのバランスがさらに良好なものとなり、実用上十分な耐摩耗性、引張特性を得る観点から、6質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0081】
官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率は、官能基含有の変性部分と非変性部分を分離できるクロマトグラフィーによる測定方法にて求める。このクロマトグラフィーによる測定方法は、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたゲルパーミエーショングロマトグラフィー(GPC)カラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法である。
【0082】
上述した変性反応を経て得られる変性共役ジエン系重合体のGPCを使用して測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、以下の観点から、20万以上200万以下であることが好ましい。すなわち、無機充填剤を十分に分散させ、変性液状ポリマーによる添加効果(加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性の向上)をより好ましく発現させる観点から、20万以上であることが好ましく、一方、加工性を実用的に十分なものとする観点から200万以下であることが好ましい。かかる観点から、より好ましくは、25万以上150万以下である。
【0083】
また、回分式プロセスで共役ジエン系重合体の重合を行った場合には、GPCの分子量分布で複数のピークがみられる。その最も低分子側のピークは主に、アニオン重合開始剤中に混在している単官能成分により重合が開始して生成した成分であると考えられる。また、アニオン重合開始剤中の高分子側の量が多いほど転がり抵抗性、耐摩耗性等の物性に優れる傾向にある。一方で加工性をより良好にする観点からは、最も低分子側のピーク面積が、GPC全体のピーク面積に対して、10〜70%であることが好ましい。
【0084】
本実施形態において用いる変性共役ジエン系重合体として上述した末端変性共役ジエン系重合体を用いる場合については、変性反応を行った後、共重合体溶液に、必要に応じて失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤としては、以下に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、以下に限定されないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
【0085】
また、本実施形態において用いる変性共役ジエン系重合体は、重合後の仕上げ工程におけるゲル生成を防止する観点や、加工時の安定性を向上させる観点から、末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。ゴム用安定剤は、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等が好ましい。
【0086】
また、変性共役ジエン系重合体の加工性をさらに改善するために、末端変性共役ジエン系重合体のいずれにおいても、必要に応じて伸展油を変性共役ジエン系共重合体に添加することができる。伸展油を変性共役ジエン系重合体に添加する方法としては、特に限定されないが、伸展油を重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。伸展油としては、以下に限定されないが、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点や、オイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、以下に限定されないが、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)等が挙げられる。伸展油の添加量は、特に限定されないが、通常は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し10〜60質量部であり、20〜37.5質量部が好ましい。
【0087】
変性共役ジエン系重合体を、重合体溶液から得る方法としては、末端変性共役ジエン系重合体においても、公知の方法を用いることができ、以下に限定されないが、例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法;フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法;ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が挙げられる。
【0088】
[ゴム状重合体]
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法に用いる、上記(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分においては、本発明の特性を満たす範囲で、上述した変性共役ジエン系重合体以外に、他のゴム状重合体を含んでいてもよい。このようなゴム状重合体としては、以下に限定されないが、例えば、共役ジエン系重合体又はその水素添加物;共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物;共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物;非ジエン系重合体等が挙げられる。具体的には、ブタジエンゴム又はその水素添加物;スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物;スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマー;アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
【0089】
また、非ジエン系重合体としては、以下に限定されないが、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
【0090】
上述した各種ゴム状重合体は、水酸基やアミノ基等の極性を有する官能基を付与した変性ゴムであってもよい。またその重量平均分子量は、性能と加工特性のバランスの観点から、200,000〜2,000,000であることが好ましく、250,000〜1,500,000であることがより好ましい。これらのゴム状重合体は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
<(B)変性液状ポリマー>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、工程(1)で、上述した(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、(B)変性液状ポリマーを0.5〜50質量部を配合する。(A)ゴム成分100質量部に対する(B)変性液状ポリマーの配合量は、変性液状ポリマーによる添加効果(加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性の向上)を発現させる観点から、0.5質量部以上とし、前記(C)シリカ系無機充填剤と後述する(D)シランカップリング剤との反応阻害の抑制及び耐摩耗性等の観点から、50質量部以下とする。かかる観点から、好ましくは0.5質量部以上45質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上40質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以上35質量部以下である。
【0092】
本実施形態において、変性液状ポリマーとは、常温(5℃〜35℃)で液状であり、ポリマーを構成する単量体単位が2個以上であり、特定の官能基を有しており、数平均分子量が200〜20000であるものをいう。ポリマーを構成する単量体としては、ブタジエン、エチレン,プロピレン及びアクリロニトリル、が挙げられる。なお、本実施形態において液状とは、2000年度版JIS K 2283試験法における30℃粘度が0.1〜2000Pa・Sであり、好ましくは、0.5〜1000Pa・Sであるものをいう。また、数平均分子量は、より好ましくは500〜10000である。ここで、数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、溶媒としてTHF(テトロヒドロフラン)を用い、40℃で測定される値である。
【0093】
変性液状ポリマーが有する特定の官能基については、アミノ基、カルボキシル基(−COOH)、エポキシ基及びヒドロキシル基(−OH)からなる群から選択された少なくとも1種の官能基を持つものが好ましく用いられる。このようなシリカと良好に相互作用する官能基を持つ変性液状ポリマーを用いることにより、シリカと結合してその分散性を向上することができる傾向にある。ここで、相互作用とは、上記官能基がシリカ表面のシラノール基との間で化学反応による化学結合や水素結合等により結合することを意味する。上述の官能基を有する場合、より強固にシリカ表面に変性液状ポリマーが結合することができる傾向にあるため、よりシリカのゴム成分への分散性が向上し、低発熱性を示す傾向にある。
【0094】
上記官能基について、アミノ基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基のいずれでもよく、以下に限定されないが、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、アリルイソプロピルアミン、非環式ポリアミン及びその誘導体並びにこれらの塩;エチレンジアミン(NH
2CH
2CH
2NH
2)及びその塩;ヘキサメチレンジアミン、飽和脂環式モノアミン、不飽和脂環式モノアミン、シクロテルペンモノアミン、飽和脂環式ポリアミン、不飽和指環式ポリアミン、シクロテルペンポリアミン及びこれらの誘導体並びにこれらの塩等に由来するものが挙げられ、これらはシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサン等を含む。また、芳香族モノアミン及びその誘導体並びにこれらの塩;アニリン(C
6H
5NH
2)(フェニルアミン)、アニリンの塩、アニリンのハロゲン化誘導体(クロロアニリン)、アニリンのスルホン化誘導体(メタ−アミノベンゼンスルホン酸、パラ−アミノベンゼンスホン酸)、アニリンのニトロ化誘導体(ニトロアニリン等)、アニリンのニトロソ化誘導体、アニリンのスルホハロゲン化誘導体、アニリンのニトロハロゲン化誘導体、アニリンのニトロスルホン化誘導体、アニリンのアルキル誘導体(N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルアニリン及びN,N−ジエチルアニリン);トルイジン、ジフェニルアミン、1−ナフチルアミン(アルファ−ナフチルアミン)(C
10H
7NH
2)、2−ナフチルアミン、キシリジン、芳香族ポリアミン及びその誘導体並びにこれらの塩;オルト−フェニレンジアミン、メタ−フェニレンジアミン、パラ−フェニレンジアミン(C
6H
4(NH
2)
2)、オルト−フェニレンジアミン、メタ−フェニレンジアミン、パラ−フェニレンジアミン、ジアミノトルエン(CH
3C
6H
3(NH
2)
2)、N−アルキルフェニレンジアミン(例えば、N,N−ジメチル−パラ−フェニレンジアミン、N−アルキルトリレンジアミン、ベンジジン(NH
2C
6H
4C
6H
4NH
2));ジフェニルメタン若しくはトリフェニルメタン又はこれらの同族体又はこれらの誘導体から得られるテトラメチルジアミノジフェニルメタン、テトラエチルジアミノジフェニルメタン等のポリアミン等に由来するものが挙げられる。
【0095】
カルボキシル基としては、以下に限定されないが、マレイン酸、フタル酸、アクリル酸、メタクリル酸等に由来するものが挙げられる。なお、ヒドロキシル基には、メチロール基(−CH
2OH)やエチロール基などの他、フェノール基も含まれる。
【0096】
上記変性液状ポリマーとしては、上述した官能基を分子内に1種以上有するものであれば好適に使用することができる。より好ましくは、上記官能基がポリマー末端に導入された末端変性液状ポリマーを用いることである。官能基をポリマー末端に持つ場合、シリカとの相互作用やシリカに結合したアミノシランカップリング剤との相互作用により、表面処理シリカの分散性改良効果をより向上することができる傾向にある。官能基としては、シリカとポリマーの結合反応の観点からアミノ基が好ましく用いられる。
【0097】
上記変性液状ポリマーとしては、ジエン系液状ポリマーからなるものが好ましい。すなわち、ジエン系液状ポリマーをベースポリマーとして、これに官能基が導入されたものが好ましく用いられる。ジエン系液状ポリマーとしては、以下に限定されないが、例えば、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状スチレン−ブタジエンゴム、液状スチレン−イソプレンゴム、液状ニトリルゴムなどが挙げられる。このような変性液状ポリマーは、例えば、アニオン重合等で合成された未変性の液状ポリマーに、上記官能基を有する化合物を反応させることで当該官能基を導入させることにより得られる。あるいはまた、上記官能基を有する重合性単量体を用いて重合することにより、官能基を有する液状ポリマーを得ることができる。このようなポリマーの重合方法及び変性方法自体は、従来から公知の方法によることができる。
【0098】
(工程(2)において用いる原料)
<(C)シリカ系無機充填剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、工程(2)で、上述した(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、(C)シリカ系無機充填剤を10〜200質量部を配合する。(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対する(C)シリカ系無機充填剤の配合量は、本実施形態の所望の効果が発現する観点から、10質量部以上とし、一方、無機充填剤を十分に分散させ、組成物に加工性や機械強度を実用的に十分なものとする観点から、200質量部以下とする。かかる観点から、好ましくは20〜180質量部、より好ましくは30〜160質量部であり、さらに好ましくは35〜150質量部である。
【0099】
シリカ系無機充填剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、SiO
2、又はSi
3Alを構成単位として含む固体粒子が好ましく、SiO
2、又はSi
3Alを構成単位の主成分とすることがより好ましい。ここで、「主成分」とは、(C)シリカ系無機充填剤中に50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有される成分をいう。(C)シリカ系無機充填剤の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。
【0100】
また、表面を疎水化した(C)シリカ系無機充填剤や、(C)シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も用いることができる。これらの中でも、強度や耐摩耗性等の観点から、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、以下に限定されないが、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が挙げられる。これらの中でも、湿式シリカが好ましい。
【0101】
本実施形態において、より優れた転がり抵抗特性を得る観点から、(C)シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、10〜500m
2/gであることが好ましく、50〜400m
2/gであることがより好ましい。
【0102】
<(D)シランカップリング剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、工程(2)で、前記(C)シリカ系無機充填剤100質量部に対し(D)シランカップリング剤0.1〜20質量部を配合する。(D)シランカップリング剤の配合量は、上述した(C)シリカ系無機充填剤100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜18質量部がより好ましく、1.0〜15質量部がさらに好ましい。(D)シランカップリング剤の配合量が上記範囲であると、(D)シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる。
【0103】
(D)シランカップリング剤は、(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と(C)シリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分及び(C)シリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、一般的には、硫黄結合部分とアルコキシシリル基、シラノール基部分を一分子中に有する化合物が用いられる。
【0104】
(D)シランカップリング剤は、以下に限定されるものではないが、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。上述した中でも、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィドが、補強効果が高いために好ましい。これらのシランカップリング剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
続いて本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法を構成する工程(1)について説明する。
【0106】
(工程(1)について)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、工程(1)において、(A)の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と、(B)変性液状ポリマーを前記(A)100質量部に対し0.5〜50質量部を配合し、予め混練りすることにより、シリカの分散性が向上し、各物性も各々向上させることができる。
【0107】
(工程(2)について)
工程(1)で混練りされた配合物に(C)シリカ系無機充填剤と、(D)シランカップリング剤を配合することにより、シリカの分散性が向上し、各物性も各々向上させることができる。
【0108】
工程(2)において混練りする温度は、120〜170℃であることが好ましく、150〜160℃で行うことも、140〜150℃で行うことも好ましい。なお、(D)シランカップリング剤の種類に応じて選択することもまた好ましい。工程(2)において120〜170℃で混練りすることにより、(C)シリカ系無機充填剤と(D)シランカップリング剤の反応率が向上し、分散性を高め、各物性のバランスをより高めることができる傾向にある。
【0109】
例えば、(D)シランカップリング剤の分子構造中に有する硫黄原子数が3個以上である場合、混練り温度は120〜160℃の範囲であることが好ましく、140〜150℃の範囲とすることがより好ましい。分子構造中に有する硫黄原子数が3個以上である(D)シランカップリング剤の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
【0110】
また、(D)シランカップリング剤の分子構造中に有する硫黄原子数が1〜2個である場合、混練り温度が140〜170℃の範囲であることが好ましく、150〜160℃の範囲とすることがより好ましい。分子構造中に有する硫黄原子数が1〜2個である(D)シランカップリング剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド等が挙げられる。
【0111】
なお、工程(2)においては、上述のように、(D)シランカップリング剤の種類に応じた混練り温度を選択することが好ましいが、本実施形態においては、工程(2)の全ての混練りを、前記選択された温度範囲で行う必要はない。
【0112】
また、工程(2)においては、混練り中、所望の温度、例えば上記のようにして選択した150〜160℃の温度範囲に達した後の混練り時間を0.5〜20分とすることが好ましく、2〜15分とすることがより好ましい。さらには、2〜8分とすることがより好ましい。これにより、変性共役ジエン系共重合体組成物の各物性のバランスをより高めることができる。さらにまた、工程(2)においては、混練り中、所望の温度、例えば上記のようにして選択した140〜150℃の温度範囲に達した後の混練り時間を0.5〜20分とすることが好ましく、2〜15分とすることがより好ましい。さらには、2〜8分とすることがより好ましい。これにより、変性共役ジエン系共重合体組成物の各物性のバランスをより高めることができる。
【0113】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、前記工程(1)に続いて工程(2)を実施する。工程(1)後は、当該工程(1)で得られた混練り物を、一旦、ニーダー、バンバリー等の密閉系混練り機から排出し、その後、所定の段階で密閉系混練り機から排出した配合物を投入するようにしてもよく、又、前記混練り物を密閉混練り機から排出せず、引き続き混練りするようにしてもよい。なお、工程(1)における加工性(放出物のまとまり性)の観点から、前記混練り物を密閉混練り機から排出せず、混練りすることが好ましい。本実施形態の所望の効果を発現する観点から、本実施形態においては、(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分に、(B)変性液状ポリマーを配合混練りしてから(C)シリカ系無機充填剤及び(D)シランカップリング剤を配合して混練りすることとして、シリカの分散性を高める。
【0114】
また、当該工程(2)における温度、及び混練り時間は、当該工程(1)の混練り時間にもよるが、シリカ分散性の観点から、120〜170℃、及び1秒〜20分が好ましい。
【0115】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法において、各種材料を混合する方法としては、従来公知の方法を適用でき、以下に限定されるものではないが、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。また、各種材料を一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0116】
(その他の材料)
<(E)カーボンブラック>
また、本実施形態の変性ジエン系重合体組成物の製造方法は、前記(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、着色性、加工性等の観点から、さらに(E)カーボンブラック0.5〜100質量部を配合する工程を含むことが好ましい。(A)重量平均分子量が20万以上200万以下の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対する(E)カーボンブラックの配合量は、ドライグリップ性や導電性のタイヤ等の用途に求められる性能を発現する観点から0.5質量%以上、分散性の観点から100質量部以下が好ましく、より好ましくは3〜100質量部であり、さらに好ましくは5〜80質量部である。カーボンブラックとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。これらの中でも、加工性の観点、及び転がり抵抗特性の観点で、窒素吸着比表面積は、50m
2/g以上、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以上であるものが好ましく、窒素吸着比表面積は、90m
2/g以上、DBP吸油量が80mL/100g以上がより好ましい。
【0117】
また、(E)カーボンブラックを配合するタイミングは、(C)シリカ系無機充填剤、及び(D)シランカップリング剤を配合する、工程(2)において行っても、又は、工程(1)において得られた混練り物に配合してもよい。なお、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性をより高める観点から、好ましくは上記ゴム成分に、(C)シリカ系無機充填剤、及び(D)シランカップリング剤を配合する(工程(2))際に配合することが好ましい。
【0118】
<添加剤>[加硫剤]
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、加硫剤を加え、加硫処理を施すことにより、加硫組成物を得てもよい。加硫剤としては、以下に限定されないが、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、以下に限定されないが、例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。加硫剤の使用量としては、特に限定されず、通常は(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。加硫方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を適用できる。加硫温度としては、特に限定されず、通常は120〜200℃であり、好ましくは140〜180℃である。
【0119】
[加硫助剤]
また、加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、以下に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。加硫促進剤の使用量としては、特に限定されず、通常(A)変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。
【0120】
[その他の添加剤]
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法においては、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外のその他の添加剤を含むことができる。添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、軟化剤や充填剤、さらに、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。その他の軟化剤としては、特に限定されず、公知の軟化剤を用いることができる。その他の充填剤の具体的としては、以下に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、着色剤、潤滑剤としては、特に限定されず、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【0121】
〔変性共役ジエン系重合体組成物〕
本実施形態の製造方法で得られた変性共役ジエン系重合体組成物は、工程(1)において、(A)ゴム成分、(B)変性液状ポリマーを配合し混練りしてから、工程(2)において(C)シリカ系無機充填剤、(D)シランカップリング剤を配合し混練りすることで、(C)シリカ系無機充填剤等の配合剤の分散性が向上する効果が得られ、目的とする変性共役ジエン系重合体組成物において、従来にも増して加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性のバランスの向上が得られる。
【0122】
本実施形態の製造方法で得られる変性共役ジエン系重合体は、例えばベーストレッド用ゴム組成物として用いることができ、通常の方法でタイヤを製造することができる。すなわち、前記ゴム組成物を用いてベーストレッドを製造し、他の部材とともに貼り合わせ、タイヤ成形機を使用して加熱加圧することによりタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0123】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0124】
先ず、実施例及び比較例に使用した変性共役ジエン系重合体の構造分析の方法並びに実施例及び比較例の変性共役ジエン系重合体組成物の物性の測定方法について下記に示す。
【0125】
〔(1)結合スチレン量〕
測定用の試料(組成物の原料となる変性共役ジエン系重合体)100mgをクロロホルムで100mLにメスアップ、溶解して測定サンプルとした。測定機器として島津製作所製UV−2450を用いて、スチレンのフェニル基による波長254nmの紫外線(UV)の吸収量を測定し、結合スチレン量(質量%)を測定した。
【0126】
〔(2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)〕
前記測定用の試料(組成物の原料となる変性共役ジエン系重合体)50mgを10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを製造し、測定機器として日本分光(株)製:FT−IR230を用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm
−1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)を求めた。
【0127】
〔(3)分子量〕
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置を使用して、変性共役ジエン系重合体のクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いた。カラムは、ガードカラムとして東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−H、他のカラムとして東ソー社製 TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、及びTSKgel G4000HHRを使用した。また、オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製、「HLC8020」)を用いて分子量の測定を行った。測定用の試料(組成物の原料となる変性共役ジエン系重合体)10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液200μLを前記GPC測定装置に注入して測定した。
【0128】
〔(4)変性率〕
シリカゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用することにより測定した。以下に示すようにして、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、後述のように、ポリスチレン系ゲルカラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムとの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。低分子量内部標準ポリスチレンとして市販の分子量5000の標準ポリスチレンを用いた。
【0129】
<試料溶液の調製>
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
【0130】
<ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件>
THFを溶離液として用い、試料溶液200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラムとして東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−H、他のカラムとして東ソー TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用した。また、カラムオーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製 HLC8020)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
【0131】
<シリカ系カラムを用いたGPC測定条件>
THFを溶離液として用い、試料200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラムとしてDIOL 4.6×12.5mm 5micron、他のカラムとしてZorbax PSM−1000S、PSM−300S、PSM−60Sを使用した。また、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5mL/分で、東ソー社製 CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021で、RI検出器を用いて測定し、クロマトグラムを得た。
【0132】
<変性率の計算方法>
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
【0133】
〔(5)配合物ムーニー粘度〕
ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1に準じて、100℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転させた後の粘度を測定した。各々の測定値は、比較例2の値を100として、実施例1,比較例1,7の値を指数化し、比較例4の値を100として、実施例2,比較例3,7の値を指数化した。また、比較例6の値を100として、
参考例3,比較例5,7の値を指数化し、比較例9の値を100として、比較例7,8の値を指数化した。値が小さいほど、配合物ムーニー粘度が低く、加工性に優れていることを示す。
【0134】
〔(6)排出物まとまり性〕
実施例及び比較例に示す方法で製造した未加硫の変性共役ジエン系重合体組成物に関し、加圧ニーダーから排出した直後(混練り1段目における加圧ニーダーによる混練りが終了し、排出された直後)のまとまり(形状)について、パネラー5人が目視で観察し、以下の基準に基づきパネラー一人当たり20点を満点とし、合計100点を満点として評価した。100点に近いほど押し出し後加工性に優れることを示す。
〜 70点:不良
71点〜 75点:非常に劣る。
76点〜 80点:劣る。
81点〜 85点:ふつう。
86点〜 90点:優れる。
91点〜100点:非常に優れる。
【0135】
〔(7)引張特性〕
JIS K6251の引張試験法により、引張破断強度(TB)、及び引張破断伸度(EB)を測定した。そして、引張破断強度(TB、単位:MPa)と引張破断伸度(EB、単位:%)の積をもって、引張特性とした。各々の測定値は、比較例2の値を100として、実施例1,比較例1,7の値を指数化し、比較例4の値を100として、実施例2,比較例3,7の値を指数化した。また、比較例6の値を100として、
参考例3,比較例5,7の値を指数化し、比較例9の値を100として、比較例7,8の値を指数化した。値が大きいほど引張特性が良好であることを示す。
【0136】
〔(8)耐摩耗性〕
アクロン摩耗試験機(安田精機製作所製)を使用し、JIS K6264−2に準じて、荷重44.1N、3000回転の摩耗量を測定した。各々の測定値は、比較例2の値を100として、実施例1,比較例1,7の値を指数化し、比較例4の値を100として、実施例2,比較例3,7の値を指数化した。また、比較例6の値を100として、
参考例3,比較例5,7の値を指数化し、比較例9の値を100として、比較例7,8の値を指数化した。値が小さいほど、摩耗が少なく、耐摩耗性に優れていることを示す。
【0137】
〔(9)ウェットスキッド抵抗性(WET)〕
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の粘弾性試験機(ARES−G2)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットスキッド抵抗性の指標とした。各々の測定値は、比較例2の値を100として、実施例1,比較例1,7の値を指数化し、比較例4の値を100として、実施例2,比較例3,7の値を指数化した。また、比較例6の値を100として、
参考例3,比較例5,7の値を指数化し、比較例9の値を100として、比較例7,8の値を指数化した。値が大きいほどウェッドスキッド抵抗性が良好であることを示す。
【0138】
〔(10)転がり抵抗特性(RR)〕
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の粘弾性試験機(ARES−G2)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを転がり抵抗特性(省燃費)の指標とした。各々の測定値は、比較例2の値を100として、実施例1,比較例1,7の値を指数化し、比較例4の値を100として、実施例2,比較例3,7の値を指数化した。また、比較例6の値を100として、
参考例3,比較例5,7の値を指数化し、比較例9の値を100として、比較例7,8の値を指数化した。値が小さいほど転がり抵抗特性が良好であることを示す。
【0139】
〔変性共役ジエン系重合体〕
〔製造例〕
撹拌機及びジャケットを有し温度制御が可能な内容積10リットルのオートクレーブを反応器として使用した。不純物を除去したブタジエン637g、スチレン213g、シクロヘキサン5500g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.82gを前記の反応器へ入れ、反応器内温を30℃に保持した。重合開始剤としてn−ブチルリチウム6.75mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇をはじめた。重合開始剤添加後7分〜12分にわたって、ブタジエン50gを10g/分の速度で追加供給した。その結果、最終的な反応器内の温度は77℃に達した。重合反応終了後、反応器に1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジンを13.5mmol添加し、75℃で5分間攪拌して変性反応を実施した。この重合体溶液に酸化防止剤(BHT;2,6−ジ−tertブチル−4−メチルフェノール)を1.8g添加後、溶媒を除去し、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料A)を得た。
【0140】
試料Aを上記の方法で分析した結果、結合スチレン量は25重量%、結合ブタジエン量は75重量%であり、スチレン単位が1個のスチレン単連鎖含率は45%、スチレン単位が8個以上連なったスチレン長連鎖の含率は0.5%であった。重合体のムーニー粘度は60であり、ブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は55%であった。ポリスチレン換算分子量は重量平均分子量(Mw)が40万、数平均分子量(Mn)が31万であり分子量分布は(Mw/Mn)は1.29であった。また、変性率は87%であった。
【0141】
下記表1に、上述した変性共役ジエン系重合体(以下、単に「変性SBR」とも表記する)の構造及び物性について示す。
【0142】
【表1】
【0143】
以下に示す配合に従い、未加硫ゴム組成物(未加硫物)、及び加硫ゴム組成物(加硫物)を得た。
・変性SBR(1)((製造例1)で製造した変性共役ジエン系共重合体、変性SBR(1)):100質量部
・シリカ(ローディア社製、ZEOSIL Premium200MP):45質量部
・シランカップリング剤(エボニック デグサ社製、Si75):3.6質量部
・末端アミン変性液状ポリマー(宇部興産(株)製、商品名「ATBN 1300×16」、アミン末端変性、数平均分子量=3400):30質量部
・末端カルボキシ変性液状ポリマー(宇部興産(株)製、商品名「CTBN 1300×31」、カルボキシ末端変性、数平均分子量=3500):30質量部
・末端水酸基変性液状ポリマー(出光興産(株)製、商品名「R−45HT(水酸基末端変性、数平均分子量=2800)」):30質量部
・非変性液状ポリマー(クラレ(株)製、商品名「LBR−307(数平均分子量=8000)」):30質量部
・カーボンブラック(東海カーボン(株)製、シーストKH(N339)):5質量部
・加硫促進助剤(酸化亜鉛、表中では「亜鉛華」と表記):2.5質量部
・加硫促進助剤(ステアリン酸):2.0質量部
・ワックス:(大内新興化学工業(株)社製、サンノック):1.5質量部
・老化防止剤(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0質量部
・硫黄:1.7質量部
・加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7質量部
・加硫促進剤(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
【0144】
上記で示した材料を下記の方法により混練して、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴムシートを得た。
【0145】
(実施例1,2
、参考例3、及び比較例7)
温度制御装置を具備する(株)モリヤマ 加圧型ニーダー「DO.5−3」(内容量500cc)を使用し、第1段の混練り工程として、充填率65%、ローター回転数50rpmの条件で、変性共役ジエン系重合体(変性SBR)と液状ポリマーを60秒混練りした。すなわち、工程1として1分の混練りを行った。その後、工程2を次のように実施した。まず、シリカ、シランカップリング剤、及びカーボンブラックを配合し、混練りした。次いで、材料指示温度が150℃に達してから、混合機の温度制御により加圧ニーダー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら2分間混練りした。
【0146】
その後、混練り物を排出することなく、引き続き加圧ニーダー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、配合物(排出温度150〜160℃)を加圧ニーダーより排出した。この際、配合物(未加硫物)のまとまりの状態を観察した(排出物のまとまり性)。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。以上のとおり、第1段の混練りにおける工程1と工程2では、合計8分間の混練りを行った。
【0147】
次に、混練り2段目として、上述した第1段目の混練りで得たシート状配合物を室温まで冷却した後、これを上記加圧ニーダーにて3分間再度混練りした。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を150〜160℃に調整した。そして、加圧ニーダーより上記配合物を排出後、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状の未加硫ゴム組成物とした。
【0148】
さらに、オーブンを用いて未加硫組成物を70℃×30分加温した後、混練り3段目として、70℃に設定した10インチφオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて2分間混練し、組成物を得た。この組成物(未加硫物)から一部を取り出して配合物ムーニー粘度、加硫速度を測定した。
【0149】
その後、組成物のもう一方の残りを160℃×20分間、加硫プレスにて加硫成形した。加硫後、加硫ゴム組成物の転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、引張特性、及び耐摩耗性を評価した。
【0150】
(比較例1,3,5,8)
温度制御装置を具備する(株)モリヤマ 加圧型ニーダー「DO.5−3」(内容量500cc)を使用し、第1段の混練りとして、充填率65%、ローター回転数50rpmの条件で、変性共役ジエン系重合体(変性SBR)を60秒混練りした。すなわち、工程1として1分の混練りを行った。その後、工程2を次のように実施した。まず、変性液状ポリマー、シリカ、シランカップリング剤、及びカーボンブラックを配合し、混練りした。次いで、材料指示温度が150℃に達してから、混合機の温度制御により加圧ニーダー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら2分間混練りした。
【0151】
その後、混練り物を排出することなく、引き続き加圧ニーダー内材料指示温度を150〜160℃に制御しながら、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して1分混練りし、配合物(排出温度150〜160℃)を加圧ニーダーより排出した。この際、配合物(未加硫物)のまとまりの状態を観察した(排出物のまとまり性)。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。以上のとおり、第1段の混練りにおける工程1と工程2では、合計8分間の混練りを行った。
【0152】
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度、加硫速度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、引張特性、及び耐摩耗性を評価した。
【0153】
(比較例2,4,6,9)
温度制御装置を具備する(株)モリヤマ 加圧型ニーダー「DO.5−3」(内容量500cc)を使用し、第1段の混練りとして、充填率65%、ローター回転数50rpmの条件で、変性共役ジエン系重合体(変性SBR)、変性液状ポリマー、シリカ、シランカップリング剤、カーボンブラック、加硫促進助剤(ステアリン酸及び酸化亜鉛)、老化防止剤、及びワックスを配合して8分混練りし、配合物(排出温度150〜160℃)を加圧ニーダーより排出した。この際、配合物(未加硫物)のまとまりの状態を観察した(排出物のまとまり性)。そして、すぐに10インチφオープンロールに配合物を6回通して、シート状配合物とした。以上のとおり、これらの例では、工程1と工程2を区別して実施しておらず、合計8分間の混練りを行った。
【0154】
その他の条件は、実施例1と同じ操作を行い、未加硫ゴム組成物、及び加硫ゴム組成物を得、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度、加硫速度)、加硫物物性(転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、引張特性、及び耐摩耗性を評価した。
【0155】
実施例1、及び比較例1,2,7における製造条件を表2に示し、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度、及び加硫速度)、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、引張特性、及び耐摩耗性の評価結果を表3に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
【表3】
【0158】
表3より、実施例1により製造した変性共役ジエン系共重合体組成物は、加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性のバランスに優れていることが分かった。
【0159】
実施例2、及び比較例3,4,7における製造条件を表4に示し、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度、及び加硫速度)、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、引張特性、及び耐摩耗性の評価結果を表5に示す。
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【0162】
表5より、実施例1により製造した変性共役ジエン系共重合体組成物は、加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性のバランスに優れていることが分かった。
【0163】
参考例3、及び比較例5,6,7における製造条件を表6に示し、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度、及び加硫速度)、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、引張特性、及び耐摩耗性の評価結果を表7に示す。
【0164】
【表6】
【0165】
【表7】
【0166】
表7より、実施例1により製造した変性共役ジエン系共重合体組成物は、加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性のバランスに優れていることが分かった。
【0167】
比較例7,8,9における製造条件を表8に示し、加工性(排出物のまとまり性、配合物ムーニー粘度、及び加硫速度)、転がり抵抗特性(RR)、ウェットスキッド抵抗性(WET)、引張特性、及び耐摩耗性の評価結果を表9に示す。
【0168】
【表8】
【0169】
【表9】
【0170】
表9より、比較例7,8,9により製造した変性共役ジエン系共重合体組成物は、加工性、転がり抵抗特性、ウェットスキッド抵抗性、引張特性、及び耐摩耗性のバランスが変わらないことが分かった。