特許第6190717号(P6190717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190717
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 17/24 20060101AFI20170821BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B41J17/24
   B41J2/325 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-268270(P2013-268270)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-123632(P2015-123632A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大崎 武
(72)【発明者】
【氏名】陣内 孝賢
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−184284(JP,A)
【文献】 特開2012−51734(JP,A)
【文献】 特開2007−229945(JP,A)
【文献】 特開2011−189513(JP,A)
【文献】 特開2013−147307(JP,A)
【文献】 特開2004−149228(JP,A)
【文献】 特開2004−299862(JP,A)
【文献】 特開2009−40583(JP,A)
【文献】 特開2011−131984(JP,A)
【文献】 特開2000−7197(JP,A)
【文献】 特開2013−112487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/24
B41J 2/325
B41J 17/22
B41J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体に印字するサーマルヘッドと、
前記印字媒体に対して前記サーマルヘッドに対向する位置に配置されたプラテンローラと、
連続する帯状体を供給する供給軸と、
前記供給軸から供給された前記帯状体を巻き取る巻取軸と、を備えたプリンタにおいて、
前記巻取軸は、
回転軸と、
前記回転軸に取り付けられた内周部材と、
前記内周部材の外側に取り付けられた外周部材であって、前記内周部材の基端から先端に移動させることにより縮径するよう構成された前記外周部材と、
前記外周部材を前記内周部材の前記基端に固定する固定状態と、前記内周部材と前記外周部材との固定を解除し前記外周部材を移動可能にする固定解除状態とを切り替える、前記外周部材の先端に取り付けられた切替手段であって、前記固定状態と前記固定解除状態とに応じた位置に稼働可能であり、かつ前記固定解除状態の位置から前記固定状態への位置となる方向に付勢する付勢手段を備えた前記切替手段と、
前記切替手段を前記固定状態から前記固定解除状態に切り替えたとき、前記切替手段の前記固定解除状態の位置を維持する係止手段と、
を有するプリンタ。
【請求項2】
前記内周部材は先端部に係止爪を備え、前記係止爪と前記切替手段とを係合することで、前記内周部材と前記外周部材とを前記固定状態とし、前記係止爪と前記切替手段との係合を解除することで前記固定解除状態とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記切替手段は前記付勢手段として弾性体を含む押しボタンを含み、
前記係止手段は前記押しボタンの一部と前記内周部材の一部とを係合することで構成される請求項1又は2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記内周部材は、基端から先端にかけて外径が縮径する外径縮径部を備え、
前記外周部材は、軸方向に沿って分割された複数の嵌合部材で構成され、前記複数の嵌合部材が移動自在で、かつ縮径方向に付勢されるよう嵌め合せる付勢手段を含む請求項1から3のいずれか1記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタに係り、連続する帯状体を、紙管を用いないで巻き取る巻取軸を備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドからの熱をインクリボンに加えることにより、ラベル等の印字媒体に、文字や図形等の情報を印字し、使用したインクリボンを巻取軸に巻き取る熱転写型のプリンタが知られている。従来、インクリボンの巻き取りに際して、紙管が使用されていた。この紙管は巻き取ったインクリボンとともに廃棄されていた。
【0003】
近年、資源および環境などの観点から、紙管を使用しないで直接巻取軸にインクリボンを巻き取るプリンタが提案されている。特許文献1では、軸方向に分割して固定軸部および可動軸部で巻取軸を構成し、可動軸部のスライド方向を斜め方向および径方向の二段階とすることにより、巻取軸の外径を変化させることを可能としたリボン巻取り装置が提案されている。特許文献1によれば、巻き取ったインクリボンを外側から握りながら、可動軸部を先端方向にスライドさせることで、巻取軸の外径を小さくしている。外径を小さくした巻取軸からインクリボンを取り出している。
【0004】
特許文献2では、リボン巻取軸と、リボン巻取軸に取り付けられたリール本体と、リボン巻き取り状態とリボン抜き取り状態とでリール本体の外径を切り替える巻取解除レバーとを備えるプリンタが提案されている。特許文献2によれば、リボンを抜き取る際には巻取解除レバーのロックを解除することで、リール本体の外径を小さくしている。外径を小さくしたリール本体からインクリボンを取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−299862号公報
【特許文献2】特開2007−229945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の構造では、インクリボンを巻き取る際は外径を大きくした状態で巻取軸又はリール本体の固定をする操作をしなければならず、またインクリボンを抜き取る際は外径を小さくした状態にするため巻取軸又はリール本体の固定を解除する操作をしなければならない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクリボンを巻き取る際の固定状態と、インクリボンを抜き取る際の固定解除状態との切り替えをより簡便な操作で行うことできるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態のプリンタは、印字媒体に印字するサーマルヘッドと、前記印字媒体に対して前記サーマルヘッドに対向する位置に配置されたプラテンローラと、連続する帯状体を供給する供給軸と、前記供給軸から供給された前記帯状体を巻き取る巻取軸と、を備えたプリンタにおいて、前記巻取軸は、回転軸と、前記回転軸に取り付けられた内周部材と、前記内周部材の外側に取り付けられた外周部材であって、前記内周部材の基端から先端に移動させることにより縮径するよう構成された前記外周部材と、前記外周部材を前記内周部材の前記基端に固定する固定状態と、前記内周部材と前記外周部材との固定を解除し前記外周部材を移動可能にする固定解除状態とを切り替える、前記外周部材の先端に取り付けられた切替手段であって、前記固定状態と前記固定解除状態とに応じた位置に稼働可能であり、かつ前記固定解除状態の位置から前記固定状態への位置となる方向に付勢する付勢手段を備えた前記切替手段と、前記切替手段を前記固定状態から前記固定解除状態に切り替えたとき、前記切替手段の前記固定解除状態の位置を維持する係止手段と、を有する。
【0009】
好ましくは、前記内周部材は先端部に係止爪を備え、前記係止爪と前記切替手段とを係合することで、前記内周部材と前記外周部材とを前記固定状態とし、前記係止爪と前記切替手段との係合を解除することで前記固定解除状態とする。
【0010】
好ましくは、前記切替手段は前記付勢手段として弾性体を含む押しボタンを含み、前記係止手段は前記押しボタンの一部と前記内周部材の一部とを係合することで構成される。
【0011】
好ましくは、前記内周部材は、基端から先端にかけて外径が縮径する外径縮径部を備え、前記外周部材は、軸方向に沿って分割された複数の嵌合部材で構成され、前記複数の嵌合部材が移動自在で、かつ縮径方向に付勢されるよう嵌め合せる付勢手段を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプリンタによれば、帯状体を巻き取る際の固定状態と、帯状体を抜き取る際の固定解除状態との切り替えをより簡便な操作で行うことできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係るプリンタの外観の全体斜視図である。
図2図1のプリンタの内部を示した斜視図である。
図3】(A)は印字ヘッド部の閉止状態時の印字部を正面から見た拡大斜視図、(B)は印字ヘッド部の開放状態時の印字部を正面から見た拡大斜視図である。
図4】巻取軸の分解斜視図である。
図5】基端側から見た押しボタンの斜視図である。
図6】巻取軸にインクリボンが巻回される際の状態を説明する巻取軸の斜視図である。
図7】(A)外周部材と内周部材との固定された状態の巻取軸の先端の部分拡大図、(B)外周部材と内周部材との固定解除された状態の巻取軸の先端の部分拡大図である。
図8】(A)外周部材と内周部材との固定された状態の巻取軸の先端部の部分断面、(B)外周部材と内周部材との固定解除された状態の巻取軸の先端の部分断面である。
図9】外周部材を内周部材から先端に移動させた状態の巻取軸の先端の部分断面である。
図10】外周部材を内周部材から先端に移動させた状態の巻取軸の斜視図である。
図11】外周部材を内周部材の基端に移動させた状態の巻取軸の先端の部分断面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図1は本実施の形態に係るプリンタの外観の全体斜視図である。
【0015】
本実施の形態のプリンタ100は、例えば、台紙に仮着されたラベルに、文字、記号、図形またはバーコード等のような画像を印字するラベル印字機能を備えている。
プリンタ100の正面のフロントカバー部102には、操作パネル部103と、電源スイッチ104と、発行口105とが設けられている。
【0016】
操作パネル部103には、メッセージ等を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、プリンタ100の動作を操作する複数のキー(ラインキー、フィードキー、ファンクションキー、方向指示キーおよびキャンセルキー等)と、プリンタ100の状態を示す複数のLED(Light Emitting Diode)とが配置されている。
プリンタ100の片側側面には、オープンカバー部106が2箇所のヒンジ部107により上下方向に開閉自在の状態で装着されている。
【0017】
次に、プリンタ100の内部構造について図2を参照して説明する。図2図1のプリンタ100の内部を示した斜視図である。なお、以下の説明ではプリンタ100の正面側(フロントカバー部102側)を前方(連続紙の搬送方向下流側)、その向かい側の背面側(バックカバー部側)を後方(連続紙の搬送方向上流側)という。
【0018】
プリンタ100の内部には、その後方に配置された用紙供給部110と、前方に配置された印字部111と、その上方に配置されたインクリボン部112とが設置されている。
【0019】
用紙供給部110は、印字媒体の一例である連続紙Pを印字部111に供給する構成部であり、支持軸110aと、その一端に設置されたロールガイド部110bとを備えている。
【0020】
支持軸110aは、ロール状に巻き取られた連続紙Pを回転自在の状態で支持する構成部である。ロールガイド部110bは、ロール状の連続紙Pを固定する構成部であり、連続紙Pの幅に応じて位置を変えられるように支持軸110aの軸方向に沿って移動自在の状態で設置されている。
【0021】
連続紙Pは、例えば、長尺状の台紙と、その長手方向に沿って予め決められた間隔毎に仮着された複数枚のラベルとを有している。台紙においてラベルの粘着面が接触する面には、シリコーン等のような剥離剤がコーティングされており、ラベルを容易に剥離することが可能になっている。また、台紙においてラベルが貼られていない面には、長手方向に沿って予め決められた間隔毎にラベルの位置を示す位置検出マークが形成されている。ラベルは、感熱紙を使用する場合と普通紙を使用する場合とがある。感熱紙の場合は、その表面に、予め決められた温度領域に達すると特定の色(黒や赤等)に発色する感熱発色層が形成されている。
【0022】
また、連続紙Pには、表巻きラベルと裏巻きラベルとの2種類がある。表巻きラベルは、連続紙Pのラベルがロール状の連続紙Pの外周面に位置する状態で巻回されている。連続紙Pが用紙供給部110の高さ方向中央あたりから印字部111の底部に向けて繰り出される。これに対して、裏巻きラベルは、連続紙Pのラベルがロール状の連続紙Pの内周面側に位置する状態で巻回されている。連続紙Pがプリンタ100の内部底面あたりから印字部111の底部に向けて繰り出される。なお、表巻きでも裏巻きでも印字部111での連続紙Pの通紙ルートは同じである。また、表巻きラベルでも裏巻きラベルでも連続紙Pはラベルが仮着された面を上に向けた状態で搬送される。
【0023】
上記した印字部111は、連続紙Pのラベル等に印字を行う構成部である。印字ヘッド部113と、その下方に配置された支持台114と、それらの後方(印字工程時の連続紙Pの搬送上流)に配置されたダンパ部115とを備えている。
【0024】
印字ヘッド部113は、後述のように、開閉自在の状態でプリンタ100の内部に設置されている。印字ヘッド部113が閉止状態の場合に、印字ヘッド部113と支持台114との間に通紙ルートが形成される。そして、その通紙ルートは、上記した発行口105(図1参照)に繋がっている。
【0025】
支持台114には、印字ヘッド部113の閉止状態を維持するヘッドロックレバー部116が設置されている。このヘッドロックレバー部116を操作すると印字ヘッド部113の閉止状態が解除され、印字ヘッド部113の前方部が持ち上がり印字ヘッド部113が開くようになっている。
【0026】
ダンパ部115は、連続紙Pに張力を付与する構成部である。本実施の形態においては、ダンパ部115が、アウターダンパ部115aとインナーダンパ部115bとを備えているとともに、印字ヘッド部113の開閉に連動して上下に移動(開閉)するようになっている。ただし、印字ヘッド部113の閉止状態時において、アウターダンパ部115aおよびインナーダンパ部115bは、それぞれ連続紙Pに張力を付与可能なように揺動自在の状態で設置されている。
【0027】
上記したインクリボン部112は、印字用インクを塗布したインクリボンを供給し、巻き取る構成部である。インクリボンは連続する帯状体の一例である。リボン供給軸112aと、その前方横に配置されたリボンの巻取軸1とを備えている。リボン供給軸112aは、ロール状に巻き取られたインクリボンを回転自在の状態で支持する構成部である。リボンの巻取軸1は、印字済みのインクリボンRBを巻き取り回収する構成部である。なお、インクリボンを使用する場合は、リボン供給軸112aから引き出されたインクリボンを印字ヘッド部113の下に通して巻取軸1で巻き取る。帯状体として、インクリボンの他に、ラベル台紙等が挙げられる。
【0028】
このようなプリンタ100においては、用紙供給部110からシート状に繰り出された連続紙Pがダンパ部115を介して印字ヘッド部113と支持台114との間の通紙ルートに搬送され、その途中において連続紙Pのラベル等に印字処理がなされた後、発行口105からプリンタ100の外部に排出される。
【0029】
次に、印字部111の構成について図3を参照して説明する。図3(A)は印字ヘッド部の閉止状態時の印字部を正面から見た拡大斜視図、図3(B)は印字ヘッド部の開放状態時の印字部を正面から見た拡大斜視図である。
【0030】
印字ヘッド部113は、その前方部が後方の回転軸S1を中心に上下方向に揺動(すなわち、開閉)自在の状態で印字ヘッド部113の片側側面のヘッド支持板117に支持されている。
【0031】
印字ヘッド部113の下面(通紙ルートを向く面)には、サーマルヘッド部118がその印字面を通紙ルートに向けた状態で設置されている。サーマルヘッド部118は、その印字面に配置されたサーマルヘッド118Lの発熱抵抗体により連続紙Pのラベル等に画像の印字を行う印字手段である。このサーマルヘッド118Lには、通電により発熱する複数の発熱抵抗体(発熱素子)が連続紙Pの幅方向(連続紙Pの搬送方向に対し直交する方向)に沿って並んで配置されている。
【0032】
印字ヘッド部113の前方側の下面にはサーマルヘッド部118を挟むように凹状爪部119,119が設けられている。また、印字ヘッド部113の下面において凹状爪部119の後方には、印字ヘッド部113の両側面から外方に突出するピン120,120が設けられている。
【0033】
また、印字ヘッド部113の閉止状態時には、サーマルヘッド部118の印字面が下方のプラテンローラ123に押し付けられるとともに、印字ヘッド部113の凹状爪部119,119がプラテンローラ123の回転軸S2の両端部に嵌められるよう構成されているになっている。プラテンローラ123は連続紙Pに対してサーマルヘッド部118に対向する位置に配置されている。
【0034】
プラテンローラ123は、用紙供給部110から繰り出された連続紙Pを通紙ルートに沿って発行口105(図1参照)へ搬送する搬送手段である。プラテンローラ123の表面は硬質ゴム等のような弾性材料により被覆されている。このプラテンローラ123は、正逆方向に回転可能な状態で支持台114の上部に設置されている。プラテンローラ123の回転軸S2の軸方向一端には、ギアG1が接続されている。このギアG1は、例えば、タイミングベルト(図示せず)等を介してステッピングモータのような駆動体(図示せず)の回転軸に係合されている。また、ギアG1は、複数の連結ギア(図示せず)を介して、別のギア(図示せず)に接続されている。
【0035】
ダンパ部115のアウターダンパ部115aは、印字部111の側面を見た場合に前方側から後方側に向かって斜め下方に延びており、前方側の回転軸S3を中心にして、後方部が上下方向に揺動自在の状態でダンパ支持部材(図示しない)に支持されている。
【0036】
また、ダンパ部115のインナーダンパ部115bは、印字部111の側面を見た場合に、アウターダンパ部115aとは逆に後方側から前方側に向かって斜め下方に延びており、後方側の回転軸S4を中心にして、前方部が上下方向に揺動自在の状態でアウターダンパ部115aの後方部に支持されている。
【0037】
また、アウターダンパ部115aの下部には、幅調整ガイド部127が回転軸S3,S4の軸方向に沿って移動自在の状態で設置されている。幅調整ガイド部127は、用紙供給部110から搬送された連続紙Pの幅方向の両端に当接し、連続紙Pの搬送をガイドする構成部である。この幅調整ガイド部127は、アウターダンパ部115aの背面側のガイド操作部128に接続されている。このガイド操作部128は、連続紙Pの幅に合わせて幅調整ガイド部127を移動するとともに、幅調整ガイド部127の位置を固定するための摘みである。
【0038】
図4は、本実施の形態の巻取軸の分解斜視図である。巻取軸1は、回転軸2と、回転軸2を覆うように取り付けられた内周部材3と、内周部材3を覆うように取り付けられた外周部材4と、外周部材4の先端に取り付けられた切替手段5と、を備えている。回転軸2は巻取軸1の回転軸として機能し、回転軸2はステンレス等の金属で構成される。
【0039】
内周部材3は、互いに同じ構成を有する2つの部材31を組み合わせることで構成されている。部材31はプラスチック等の合成樹脂で構成されている。組み合わされた2つの部材31は、基端から先端に向けて、フランジ部31aと、外径縮径部31bと、2つの係止爪31cとを備えている。外径縮径部31bは全体として基端から先端に向けて外径が漸次小さくなる外面形状を有している。但し、外径縮径部31bは、基端と先端との間に外径が一定の部分、又は外径が大きくなる部分を含んでいてもよい。部材31には段差部31dが設けられている。部材31の外周面には、基端から先端に延びる複数のガイド突起31eが設けられている。部材31の基端と先端とには、貫通孔31fが設けられている。この貫通孔31fに螺子(図示せず)が挿通される。この螺子により、2つの部材31と回転軸2とが固定されることにより、内周部材3が回転軸2に取り付けられる。それぞれの係止爪31cは、先端側に延びる辺31c−1と内側に延びる辺31c−2で構成されている。つまり、それぞれの係止爪31cは、平面視でそれぞれL字状と反L字状の形状を有し、お互いが内側に向き合っている。外径縮径部31bの先端には、2つ係止爪31c間に、2つの係止爪31cを連結するように突条部31gが形成されている。2つの係止爪31cは突条部31gに比較して先端側へ延びている。
【0040】
外周部材4は、2つの嵌合部材41、42により構成される。嵌合部材41、42は筒状体を軸方向に沿って2分割した形状を有している。嵌合部材41、42はプラスチック等の合成樹脂で構成されている。嵌合部材41,42は、基端から先端にかけてほぼ等しい外径の周面を備える外面形状を有している。嵌合部材41,42は、基端から先端にかけて複数のリブ4aを備えている。これら複数のリブ4aによって、嵌合部材41,42は全体として基端から先端にかけて内径が徐々に小さくなる円弧状の内面形状を有している。嵌合部材41,42に設けたリブ4aの円弧状の内面形状の内径は、外径縮径部31bの外径よりもやや大きく、かつ、全体として外径縮径部31bの外径とほぼ同じ割合で基端から先端まで縮径するように設定されている。このようにして、嵌合部材41,42は、基端から先端にかけて内径が縮径するリブ4aにより形成された内径縮径部をその内面によって構成している。
【0041】
嵌合部材41,42の内面には、嵌合部材41,42の基端から先端にかけてガイド凹部4bが形成されている。ガイド凹部4bはリブ4aの一部に切欠きを設けることにより形成される。外周部材4を、内周部材3を覆うように取り付けた際、外径縮径部31bの外周面のガイド突起31eがガイド凹部4bに組み合わされる。ガイド突起31eとガイド凹部4bとの組み合わせにより、嵌合部材41,42が外径縮径部31bに沿って基端と先端との間を移動する際の、嵌合部材41,42の移動位置が決定される。嵌合部材41,42は、外周面上に、一方の端面を平坦に形成して構成された平坦部4cと、他方の端面を平坦に形成して構成された平坦部4dとを、それぞれ備える形状を有している。嵌合部材41,42を組み合わせたとき、嵌合部材41の平坦部4cが、嵌合部材42の平坦部4dの一部を覆い、嵌合部材42の平坦部4cが、嵌合部材41の平坦部4dの一部を覆うよう構成されている。嵌合部材41、42の先端には、円周方向に沿って保持凹部4eが形成されている。
【0042】
嵌合部材42は、基端に形成された窪み部42aと、窪み部42aに着脱自在に取り付けられる滑り止め部材42bとを備えている。滑り止め部材42bはゴム材などの摩擦係数の高い材質で作製されている。滑り止め部材42bは窪み部42aに粘着剤等を介して取り付けられることにより軸方向および回転方向での移動を制限される。滑り止め部材42bは、インクリボンRBが巻回された際、摩擦によりインクリボンRBを滑りにくくして巻き取り易くするために、嵌合部材42の外周面に配置される。
【0043】
嵌合部材41,42の基端部及び先端部のそれぞれの対向する位置に複数の挿通孔4fが設けられている。挿通孔4fは、螺子63が挿通される孔である。挿通孔4fの周囲には、凹部4gが設けられている。
【0044】
嵌合部材41,42の凹部4gにはバネ62の環装されたスペーサ61、又は、螺子63が挿入される。スペーサ61の内周には雌螺子が形成されている。螺子63が挿通孔4fを通過してスペーサ61に挿通され、螺子止めされる。嵌合部材41と嵌合部材42とが互いに螺子止めされ、嵌め合される。嵌合部材41と嵌合部材42とは、隙間を開けて嵌め合される。この隙間の距離が短くなることにより外周部材4が縮径する。各嵌合部材41,42には、スペーサ61と嵌合部材41,42との間に介装されたバネ62から加えられる付勢力を含む外面側からの力が加えられる。この付勢力により、嵌合部材41と嵌合部材42とに形成された隙間が縮まる。つまり、バネ62の環装されたスペーサ61と、螺子63により構成される付勢手段により嵌合部材41と嵌合部材42とが縮径方向に付勢される。
外周部材4を構成する各嵌合部材41,42は、その内周部材が部材31の外面に当接することにより、外径縮径部31bに支持される。
【0045】
切替手段5は、押しボタンホルダー51と、押しボタン52と、押しボタンホルダー51と押しボタン52と離間する方向に付勢する弾性体であるバネ53とを備えている。付勢手段である弾性体はバネ53には限定されない。押しボタンホルダー51及び押しボタン52は、プラスチック等の合成樹脂から形成されている。押しボタンホルダー51は、先端から基端に向けて円盤状の把持部51aと、押しボタン52を収容するための収容凹部51bと、フランジ部51cと、円筒状部51dと、を備えている。収容凹部51bの基端側の面には、傾斜面51eが形成されている。傾斜面51eは、押しボタン52の挿入方向に向かって、漸次先端側にせり出す形状を有している。
【0046】
押しボタンホルダー51は、円筒状部51dからフランジ部51cを通過し収容凹部51bに達する貫通孔51fが形成されている。部材31の係止爪31cから段差部31dまでの部分(部材31の先端部分)を収容できるように、円筒状部51dの貫通孔51fは、部材31の先端部分の外径より大きい直径を有している。
【0047】
部材31の先端部分が押しボタンホルダー51に挿入された場合、段差部31dの先端側の端面と円筒状部51dの基端側の端面とが接する。押しボタンホルダー51と部材31との位置関係が決定される。部材31の係止爪31cは、押しボタンホルダー51の収容凹部51bにまで達する。
【0048】
嵌合部材41と嵌合部材42と嵌め合させた場合、押しボタンホルダー51のフランジ部51cが、嵌合部材41と嵌合部材42の保持凹部4e内に収容される。その結果、外周部材4の先端に切替手段5が固定された状態で取り付けられる。外周部材4と切替手段5とは一体となって基端側から先端側へ、又は先端側から基端側へと移動する。
【0049】
押しボタン52とバネ53とは、押しボタンホルダー51の収容凹部51bに収容される。押しボタン52の先端側にはフック52aが形成されている。押しボタン52のフック52aは、押しボタンホルダー51の把持部51aの基端側に形成された突起(図示しない)に相互に係止される。押しボタン52のフック52aと把持部51aの突起との係止により、バネ53の付勢力に抗することで、押しボタン52が押しボタンホルダー51から飛び出すのを規制される。一方で、把持部51aの突起は、押しボタン52が挿入方向に移動することを許容している。したがって、押しボタン52に挿入方向に外力(例えば指等)が加えられると、押しボタン52は押しボタンホルダー51の収容凹部51bの底面に向けて押し下げられる。
【0050】
押しボタン52には、フック52aの両側に挿入方向に向けて開放され、押しボタン52を貫通する切欠領域52b、52bが形成されている。押しボタン52には、フック52aに対して基端側に離間した位置に係止片52cが形成されている。フック52aと係止片52cと間にバネ53が収容される。
【0051】
図5は、押しボタン52を基端側から見た際の斜視図である。係止片52cは、押しボタン52の中央付近の位置に、二つの傾斜面52dを備えている。傾斜面52dは、基端から先端に向けて上向きに傾斜するよう構成されている。また、押しボタン52の基端側でその中央部に、突起部52eが形成されている。突起部52eの両側で、かつ上方向に、それぞれ庇部52fが形成されている。突起部52eと二つの庇部52fとは略同一面を構成するように、基端側に突出している。
【0052】
図6はインクリボンを巻き取る場合の巻取軸1の状態を示す斜視図である。巻取軸1は、回転軸2と、回転軸2に取り付けられた内周部材3と、内周部材3の外側に取り付けられた外周部材4とを備えている。押しボタン52と押しボタンホルダー51とを含む切替手段5により、外周部材4は、内周部材3の基端であるフランジ部31aと接する位置で固定される。押しボタン52は、バネ53の付勢力により外周部材4と内周部材3とを固定する固定状態の位置に維持されている。
【0053】
なお、巻取軸1の直径Dを比較的大きくすることが好ましい。巻取軸1の直径Dを比較的大きくすることにより、巻取軸1に巻き取ったインクリボンRBの直径の差異によるトルクの差異を最小限に抑え、印字縮みを防止することができる。巻取軸1自体の直径を大きくすることで巻き取られるインクリボンRBの最小径と最大径の差を比較的小さくすることができるからである。
【0054】
図7(A)は外周部材と内周部材とが固定された状態の巻取軸の先端部の部分拡大図であり、図7(B)は外周部材と内周部材とが固定解除された状態の巻取軸の先端部の部分拡大図である。
【0055】
図7(A)は、図6に示す外周部材4を内周部材3の基端に固定させた状態での巻取軸1の先端部の部分拡大図である。説明を容易にするため押しボタンホルダー51を図示していない。押しボタン52はバネ53により、上方向に付勢されている。内周部材3の2つの係止爪31cは、押しボタンホルダー51の収容凹部51b(図示しない)の位置まで達している。
【0056】
上述したように各嵌合部材41,42は、スペーサ61と嵌合部材41,42との間に介装されたバネ62から加えられる付勢力を含む外面側からの力を加えられている。これにより、各嵌合部材41,42は、外径縮径部31bの縮径方向、つまり、先端側に移動するようにして、部材31に取り付けられている。押しボタン52は、嵌合部材41,42により保持された押しボタンホルダー51に収容されている。
【0057】
図7(A)に示す固定状態では、押しボタン52の係止片52cの先端側と部材31の係止爪31cの辺31c−2の基端側とが係合しているので、嵌合部材41,42(外周部材4)が部材31と固定され、その結果、嵌合部材41,42の先端側への移動が規制される。係合とは、係止片52cの先端側と辺31c−2の基端側とが接している状態をいう。
【0058】
図7(B)は、押しボタン52が押し下げられた状態での巻取軸1の先端部の部分拡大図である。押しボタン52に指等により下向き外力が加えられると、バネ53の付勢力に抗して押しボタン52は押し下げられる。部材31の2つの係止爪31cの辺31c−2と押しボタン52の係止片52cとの係合関係は解除される。部材31の2つの係止爪31cは、押しボタン52の切欠領域52b、52bに位置する。内周部材3と外周部材4との固定が解除されるので、外周部材4が内周部材3に沿って先端方向に移動可能となる固定解除状態へと切り替えられる。
【0059】
図8(A)は外周部材と内周部材とが固定された状態の巻取軸の先端部の部分断面であり、図8(B)は外周部材と内周部材とが固定解除された状態の巻取軸の先端部の部分断面である。図8(A)に示すように、押しボタンホルダー51の円筒状部51d内に、部材31の先端部分が挿入されている。部材31の突条部31gを、押しボタンホルダー51の傾斜面51eの下側に位置させている。突条部31gの先端部と傾斜面51eの先端部とほぼ面一となる位置関係にある。押しボタン52は押しボタンホルダー51の収容凹部51bに収容されている。押しボタン52はバネ53により上方向に付勢されている。つまり、バネ53により固定解除状態の位置から固定状態への位置となる方向に付勢されている。押しボタン52の突起部52e及び二つの庇部52fは、押しボタンホルダー51の収容凹部51bの基端側の内壁とほぼ接している。
【0060】
図8(B)は押しボタン52に下方向に外力が加えられた状態を示している。押しボタン52が押し下げられると、押しボタン52の突起部52eは、押しボタンホルダー51の傾斜面51eに沿って下方に移動する。さらに、押しボタン52の突起部52eは、内周部材3の突条部31gより下方の位置まで押し下げられる。下方向の外力を取り除くと、押しボタン52はバネ53により上方向に付勢される。押しボタン52の突起部52eが内周部材3の突条部31gに係合する。つまり、押しボタン52の一部である突起部52eと、内周部材3の一部である突条部31gとが係合される。突起部52eは押しボタン52と一体的に形成しても、別の部材として押しボタン52に取り付けても良い。突条部31gは内周部材3と一体的に形成しても、別の部材として内周部材3に取り付けても良い。押しボタン52の突起部52eと内周部材3の突条部31gとにより構成される係止手段により、押しボタン52の上方向の移動が規制される。このとき図7(B)に示すように、部材31の2つの係止爪31cと押しボタン52の係止片52cとの当接関係は解除されているので、固体解除状態である。突起部52eが突条部31gに係止されているで、押しボタン52は固定解除状態の位置に維持されることになる。
【0061】
上述したように、嵌合部材41,42には付勢手段により外面側からの力を加えられている。したがって、図9に示すように、嵌合部材41,42は切替手段5とともに、部材31の縮径方向、つまり、先端側に移動する。先端側への移動により嵌合部材41,42は縮径される。嵌合部材41,42が先端側に移動すると、押しボタン52の突起部52eと内周部材3の突条部31gとの係止状態が解除される。バネ53は押しボタン52を上方向に付勢しているので、押しボタン52は固体状態の位置に復帰される。図9に示す状態では、内周部材3の突条部31gと押しボタン52の突起部52eとは当接していないので、内周部材3に対して外周部材4と、外周部材4に取り付けられた切替手段5とは、相対移動が可能な状態である。嵌合部材41,42は縮径されているので、インクリボンを巻取軸1から容易に抜き取ることができる。
【0062】
図10は、外周部材4を内周部材3から先端に移動させた状態の巻取軸1の斜視図である。嵌合部材41,42には付勢手段により外面側からの力を加えられているので、固定解除状態での平坦部4cと平坦部4dの重なりは、固定状態での平坦部4cと平坦部4dの重なりより大きくなっている。つまり、嵌合部材41,42を縮径させている。
【0063】
次に、インクリボンが取り除かれると、外周部材4と切替手段5とは、内周部材3の基端と固体するため、基端側へ移動される。内周部材3の係止爪31cと押しボタン52の係止片52cとは、外周部材4の移動方向において干渉する位置にある。そのため、外周部材4を内周部材3の基端に固定する際、内周部材3の係止爪31cと押しボタン52の係止片52cとの干渉を回避する必要がある。本実施の形態の押しボタン52の基端側には、二つの傾斜面52dが形成されている。外周部材4と切替手段5とを移動させた際、まずは内周部材3の係止爪31cの辺31c−2と押しボタン52の二つの傾斜面52dとが接触する。さらに、外周部材4と切替手段5とを基端側に移動させると、傾斜面52dに沿って、押しボタン52が全体としてバネ53に抗して下側に押し下げられる。内周部材3の係止爪31cの辺31c−2が押しボタン52の切欠領域52bを通過する。押しボタン52の係止片52cが、内周部材3の辺31c−2を超えて基端側に移動すると、押し下げられた押しボタン52はバネ53により再び付勢され、上方向に移動する。押しボタン52は、図7(A)に示される固定状態の位置に移動する。
【0064】
図11は、押しボタン52が内周部材3の係止爪31cにより最も押し下げられた状態での巻取軸1の先端部の部分断面である。図11に示すように、押しボタン52の突起部52eが内周部材3の突条部31gより下方に位置しない。したがって、押しボタン52の突起部52eと内周部材3の突条部31gとは係止される状態にはならない。押しボタン52は固定状態の位置に復帰することができる。押しボタン52を押し下げる場合の最下点の位置は、押しボタンの52の傾斜面52d及び内周部材3の係止爪31の形状により決定される。
【0065】
本発明は、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 巻取軸
2 回転軸
3 内周部材
31 部材
31a フランジ部
31b 外径縮径部
31c 係止爪
31g 突条部
4 外周部材
41,42 嵌合部材
5 切替手段
51 押しボタンホルダー
51e 傾斜面
52 押しボタン
52a フック
52b 切欠領域
52c 係止片
52d 傾斜面
52e 突起部
53 バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11