(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが目盛を目視してカメラの傾き角度(チルト角度)を知るものでは、撮影枚数が多くなると、観察画像毎にチルト角度を目視して記録するのに手間が掛かるという問題があった。一方、デジタル的にチルト角度を検知するために、カメラを傾斜させる回転軸に、エンコーダ等の角度検知センサを設けることが考えられる。しかしながら、このような構成は一般的に高価であり、電気的な配線をすることが難しく、拡大観察装置の複雑化を招きやすいので好ましくない。特に回転軸はカメラを傾斜させる毎に回転するので、摩擦や疲労の影響を受け易く、この回転軸内に角度検知センサ等を設けた場合には耐久性を確保することが困難となる。また回転軸は振動の影響を受けやすいので、この点においても耐振性を確保することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、撮像部を傾斜させることができる拡大観察装置において、耐久性と耐振性とを確保し、ステージに対する撮像部の観察角度を検知することができる拡大観察装置を提供することである。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の拡大観察装置によれば、観察対象物が載置される載置台と、ベースと、前記載置台に載置された観察対象物を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が取り付けられる取付手段と、前記取付手段を前記撮像手段の光軸に沿って上下方向に移動可能に支持し、かつ前記撮像手段の光軸に直交する姿勢で前記ベースに固定された揺動軸に揺動可能に支持される上ステージ昇降部と、前記ベースに固定され前記載置台を上下方向に移動可能に支持する下ステージ昇降部とを備えた拡大観察装置において、前記撮像手段、前記取付手段または前記上ステージ昇降部に設置され、重力加速度に対する撮像手段の光軸の第一傾斜角度を検出する第一加速度センサと、前記載置台、前記下ステージ昇降部またはベースに設置されて、重力加速度に対する載置台の第二傾斜角度を検出する第二加速度センサと、前記第一加速度センサで検出された第一傾斜角度と前記第二加速度センサで検出された第二傾斜角度とに基づいて前記載置台に対する前記撮像手段の光軸の角度である第三傾斜角度を算出する演算手段と、前記演算手段で算出した第三傾斜角度を表示する表示手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第一加速度センサは撮像手段、前記取付手段または前記上ステージ昇降部に設置され、第二加速度センサは前記載置台、前記下ステージ昇降部またはベースに設置されるので、回転軸内に加速度センサを設置される場合のように回転動作による摩擦や疲労の影響を回避でき、耐振性や耐久性を損なうことがない。また、第一加速度センサと第二加速度センサとの2つの加速度センサを備えているので、拡大観察装置が傾斜した状態で設置された場合でも、載置台に対する撮像部の観察角度である第三傾斜角度を算出することができる。
【0009】
また、前記載置台は水平面内において回転可能に形成されており、前記載置台には該載置台の回転角度を検出する回転角度センサが設置されており、前記表示手段は回転角度センサが検出した回転角度を表示可能に構成してなることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、回転角度センサが載置台の回転角度を検出するので、載置台に対する撮像部の観察角度に加えて載置台の回転角度を検知することができるので、使用者は、傾斜観察における観察状態を正確に再現することができる。
【0011】
また、さらに前記揺動軸に揺動可能に支持され前記載置台に対して垂直な位置の近傍に位置する前記上ステージ昇降部を誘い込んで前記載置台に対して機械的に略垂直姿勢にロック可能なロック機構を備えていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、上ステージ昇降部を載置台に対して機械的に垂直にした状態でロック機構を用いて簡便に固定することができる。
【0013】
また、 載置台に載置した観察対象物の観察対象面の高さを、ベースに固定され撮像手段の光軸に直交する揺動軸の高さに合致させる工程と、前記揺動軸の高さに合致した観察対象面にピントが合致するように前記撮像手段を位置させる工程と、前記揺動軸を中心として観察対象面にピントが合致した前記撮像手段を傾斜させて、観察対象面を傾斜観察する工程とを含んだ拡大観察装置の観察方法において、前記揺動軸を中心として傾斜する前記撮像手段の前記載置台に対する傾斜角度は、前記撮像手段、前記撮像手段が取り付けられる取付手段、または前記揺動軸に揺動可能に支持され前記取付手段に取り付けられた前記撮像手段を前記撮像手段の光軸に沿って上下方向に移動可能に支持する上ステージ昇降部に設置された第一加速度センサが重力加速度に対する前記撮像手段の光軸の傾斜角度である第一傾斜角度を検出し、ベース、またはベースに固定され前記載置台を上下方向に移動可能に支持する下ステージ昇降部に設置された第二加速度センサが重力加速度に対する載置台の傾斜角度である第二傾斜角度を検出し、演算手段が第一傾斜角度と第二傾斜角度とに基づいて算出することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、第一加速度センサは撮像手段、前記取付手段または前記上ステージ昇降部に設置され、第二加速度センサは前記載置台、前記下ステージ昇降部またはベースに設置されるので、回転軸内に設置される場合のように摩擦や疲労の影響を受けにくく、耐振性や耐久性を損なうことない。また、第一加速度センサと第二加速度センサとの2つの加速度センサを備えているので、拡大観察装置が傾斜した状態で設置された場合でも、載置台に対する撮像部の観察角度である第三傾斜角度を算出して表示手段に表示することができる。
【0015】
また、載置台に載置した観察対象物の観察対象面の高さを、ベースに固定され撮像手段の光軸に直交する揺動軸の高さに合致させる工程と、前記揺動軸の高さに合致した観察対象面にピントが合致するように前記撮像手段を位置させる工程と、前記揺動軸を中心として観察対象面にピントが合致した前記撮像手段を傾斜させて、観察対象面を傾斜観察する工程とを含み、前記揺動軸を中心として傾斜する前記撮像手段の前記載置台に対する傾斜角度は、前記撮像手段、前記撮像手段が取り付けられる取付手段、または前記揺動軸に揺動可能に支持され前記取付手段に取り付けられた前記撮像手段を前記撮像手段の光軸に沿って上下方向に移動可能に支持する上ステージ昇降部に設置された第一加速度センサが重力加速度に対する前記撮像手段の光軸の傾斜角度である第一傾斜角度を検出し、ベース、またはベースに固定され前記載置台を上下方向に移動可能に支持する下ステージ昇降部に設置された第二加速度センサが重力加速度に対する載置台の傾斜角度である第二傾斜角度を検出し、演算手段が第一傾斜角度と第二傾斜角度とに基づいて算出する拡大観察装置の観察方法において、さらに、前記載置台の回転角度は、前記載置台に設置された回転角度センサが検出し、前記回転角度センサが検出した回転角度は表示手段に設けられた載置台回転角度表示部に表示されることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、回転角度センサが載置台の回転角度を検出するので、載置台に対する撮像部の観察角度に加えて載置台の回転角度を検知して表示手段に表示することができる。使用者は、傾斜観察における観察状態を正確に再現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための拡大観察装置及びこれを用いた画像撮像方法を例示するものであって、本発明は拡大観察装置及びこれを用いた画像撮像方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
以下、
図1〜
図17を用いて、本発明の一実施の形態に係る拡大観察装置100を説明する。なお、水平面内で直交する2方向をX軸及びY軸とし、X軸及びY軸に垂直な方向をZ軸とする。拡大観察装置100は、
図1Aに示すように観察対象物(又はワークその他の被写体)Sを照明するための照明手段2と、照明手段2により照明された観察対象物Sを撮像する撮像手段である撮像部3と、撮像部3で撮像された拡大画像を表示する表示手段4を有する本体部5とを備える。撮像部3はヘッド部6として、ケーブル部7を介して本体部5と接続される。ヘッド部6は取付部材25に取り付けられており、上ステージ昇降部31によって光学系9の光軸10方向に移動可能である。拡大観察装置100は、さらに観察対象物Sが載置されるステージ8と、光学系9を介して入射するステージ8に載置された観察対象物Sからの反射光又は透過光を電気的に読み取る撮像素子12と、ステージ8とヘッド部6との光学系9の光軸10方向における相対距離を変化させ焦点を調整する焦点調整部として下ステージ昇降部13とを備える。上ステージ昇降部31と下ステージ昇降部13とは拡大観察装置100が設置される設置面に当接するベース42に取り付けられる。
【0020】
本体部5は、
図2に示すように下ステージ昇降部13によって焦点を調整したときのステージ8と光学系9の光軸10方向における相対距離に関する焦点距離情報を、光軸10方向とほぼ垂直な面内における観察対象物Sの2次元位置情報と共に記憶する焦点距離情報記憶部としてメモリ14と、撮像素子12によって読み取られた画像を表示する表示手段4と、ヘッド部6、下ステージ昇降部13、上ステージ昇降部31とデータを通信するためのインターフェイス15とを備える。この拡大観察装置100は、光学系9を介して入射するステージ8に固定された観察対象物Sからの反射光又は透過光を電気的に読み取る撮像素子12を用いて観察像を撮像し、表示手段4に表示させる。
【0021】
さらに拡大観察装置100は、表示手段4によって表示された画像上で領域を設定可能な領域設定部として操作部16と、領域設定部によって設定された領域に対応する観察対象物Sの一部又は全部に関するメモリ14に記憶された焦点距離情報に基づいて、領域設定部によって設定された領域に対応する観察対象物Sの光軸10方向における高さを演算する制御手段19を備える。この拡大観察装置100は、撮像素子12を用いて指定された領域に対応する観察対象物Sの光軸10方向における平均高さ(深さ)を演算できる。
【0022】
操作部16は本体部5又はコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータに固定されている。一般的な操作部16としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの操作部16は、拡大観察用操作プログラムの操作の他、拡大観察装置100自体やその周辺機器の操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示するディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、又は音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。
図1の例では、操作部16はマウス等のポインティングデバイスで構成される。
(照明手段2)
【0023】
照明手段2は、撮像素子12に結像される観察対象物Sを照明する照明光を生成する。照明手段2の照明光源は、本体部5に内蔵され、光ファイバ21を介して照明光がヘッド部6の照明手段2に伝達される。照明手段2は、ヘッド部6に組み込み式としたり、ヘッド部6と脱着可能な別体のいずれも採用できる。また照明光の照明方式としては、落射照明や透過照明等が適宜利用できる。
図1に示す照明手段2は、観察対象物Sに落射光を照射するための落射照明2Aと、透過光を照射するための透過照明2Bを備えている。これらの照明は、光ファイバー21を介して本体部5と接続される。本体部5は光ファイバー21を接続するコネクタ22を備えると共に、コネクタ22を介して光ファイバー21に光を送出するための照明光源を内蔵する。また落射照明2Aはリング状照明としている。リング状照明は、全周照明と側射照明を切り替えることができる。これを実現するため、照明光の一部をカットするターレット式のマスクや、リング状照明として複数のLEDを環状に配置し、一部のLEDをON/OFFする構成等が利用できる。
(照明光源)
【0024】
照明光源としては、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)といった半導体発光素子が利用できる。例えば、RGBの波長域を有するLEDを用意し、各LEDの点灯により照明光を赤、緑、青色にそれぞれ切り替えたり、これらの混色によって白色光を得ることができる。特にLEDはON/OFF応答性に優れるため、測定のスループットを向上できる利点も得られる。また長寿命で低消費電力であり、発熱量も少なく、機械的衝撃に強いといった特長も備える。あるいは、光源光の紫外線や可視光線で励起される蛍光体等の波長変換部材を利用した光源とすることもできる。これにより、1個のLEDでも白色光を発光できる。さらに、可視光以外に紫外光や赤外光を照射可能なLEDを光源として用いることもできる。例えば赤外光による観察は、不良品の解析や生体組織の組織分布等において有用である。なお照明光源には半導体発光素子に限らず、幅広い波長域の白色光を発する白色光源として、ハロゲンランプ、キセノンランプ、HIDランプ等を利用してもよい。また可視光のみならず赤外光を照射可能な光源としてもよい。特にハロゲンランプは、発光波長の波長域が広いため好ましい。また、単一の光源を利用するのみならず、複数の光源を備え、これらを同時に点灯して混色光を照明光としたり、あるいは切り替えて照明することもできる。
(撮像部3)
【0025】
撮像部3は、照明手段2により照明された観察対象物Sから、光学系9を介して入射する反射光を電気的に読み取る撮像素子12を備える。撮像素子12は、この例ではCMOSを利用しているが、CCD等、他の受光素子も利用できる。
(表示手段4)
【0026】
画像データやメモリ14に保持された設定内容は、表示手段4にて表示させることができる。表示手段4はCRTや液晶ディスプレイ、有機EL等のモニタが利用できる。また、制御手段19に対して、ユーザが各種操作を行うための操作部16を接続している。操作部16はコンソールやマウス等の入力デバイスである。なおこの例においても表示手段4や操作部16は、本体部5と一体的に組み込むことも、外付けの部材とすることもできる。さらに表示手段4をタッチパネルで構成すれば、表示手段4と操作部16を一体に構成することもできる。
【0027】
本体部5は、モータ制御回路28に対してステッピングモータ29の制御に関する制御データを入力することによって、ステージ8と、光学系9及び撮像素子12を有するヘッド部6との光軸10方向における相対距離、ここではz方向における高さを変化させる。具体的には、本体部5は、下ステージ昇降部13の制御に必要な制御データをモータ制御回路28に入力することによってステッピングモータ29の回転を制御し、ステージ8の高さz(z方向の位置)を昇降させる。ステッピングモータ29は、回転に応じた回転信号を生成する。本体部5は、モータ制御回路28を介して入力される回転信号に基づいて、ステージ8と光学系9の光軸10方向における相対距離に関する情報としてのステージ8の高さzを記憶する。このステージ8は、観察対象物Sに対して観察位置の位置決めを行う観察位置決め手段として機能する。
【0028】
本体部5は、モータ制御回路32に対してステッピングモータ33の制御に関する制御データを入力することによって、撮像素子12を有するヘッド部6の光軸10方向における高さを変化させる。具体的には、本体部5は、上ステージ昇降器31の制御に必要なレンズ部の種別情報等に基づいた制御データをモータ制御回路32に入力することによってステッピングモータ33の回転を制御し、撮像素子12を有するヘッド部6の高さz(z方向の位置)を昇降させる。ステッピングモータ33は、回転に応じた回転信号を生成する。本体部5は、モータ制御回路32を介して入力される回転信号に基づいて、レンズ部の種別情報等に基づいたヘッド部6の高さzを記憶する。
【0029】
撮像素子12は、x方向及びy方向に2次元状に配置された画素毎に受光量を電気的に読み取ることができる。撮像素子12上に結像された観察対象物Sの像は、撮像素子12の各画素において受光量に応じて電気信号に変換され、撮像素子制御回路17においてさらにデジタルデータに変換される。本体部5は、撮像素子制御回路17において変換されたデジタルデータを受光データDとして、光軸10方向(
図2中のz方向)とほぼ垂直な面内(
図2中のx、y方向)における観察対象物Sの2次元位置情報としての画素の配置情報(x、y)と共にメモリ14に記憶する。ここで、光軸10方向とほぼ垂直な面内とは、厳密に光軸10に対して90°をなす面である必要はなく、その光学系及び撮像素子における解像度において観察対象物Sの形状を認識できる程度の傾きの範囲内にある観察面であればよい。
(制御手段19)
【0030】
制御手段19は、撮像した観察画像を、表示手段4で表示可能な解像度に変換して表示するよう制御する。
図2の拡大観察装置100においては、撮像部3が撮像素子12によって観察対象物Sを撮像した観察画像を表示手段4に表示する。一般にCMOSやCCD等の撮像素子12の性能は、表示手段4での表示能力を上回ることが多いので、撮像した観察画像を一画面に表示するためには画像を間引く等して解像度を一画面で表示可能なサイズまで落とし、縮小表示している。撮像部3で読み取ったときの読取解像度を第一の解像度とすると、表示手段4においては第一の解像度よりも低い第二の解像度で表示されることとなる。
(ステージ8)
【0031】
下ステージ昇降部13の上面側に設置されたステージ8は、たとえばステッピングモータ等で駆動されて、X軸方向及びY軸方向に移動可能であり、ステージ8の任意の位置を撮像部3の光軸10に合致させることができる。さらにステージ8は、Z軸を回転中心軸として回転自在なθステージ35に取り付けられており、使用者は撮像部の光軸10に合致している観察対象面を回転させて観察することができる。
【0032】
一方でこの拡大観察装置100は、ヘッド部6をステージ8に対して傾斜させるためのヘッド傾斜機構を備えている。ヘッド傾斜機構は、
図3に示すようにヘッド部6をステージ8に対して傾斜させるため、揺動軸37を介してヘッド部6を揺動自在にベース42に支持している。揺動軸37は、Y軸方向(
図3において紙面に垂直な方向)に設けられている。ヘッド部6を揺動自在にベース42に固定する構造の詳細は、後述する
図15、
図17等に示す。
(平面観察)
【0033】
たとえば使用者が不図示の初期化ボタンを押すと、本体部5がモータ制御回路28に対してステッピングモータ29の制御データを入力し、下ステージ昇降器13が駆動されて、ステージ8が最下位置に移動する。このときの状態を
図5に示す。
【0034】
本体部5は、レンズ部の種別情報等に基づいた制御データをモータ制御回路32に入力し、上ステージ昇降器31は、撮像素子12を有するヘッド部6の高さz(z方向の位置)を昇降させる。本体部5は、ステージ8に観察対象物Sが載置され、観察対象面の高さが揺動軸37の高さに合致していると仮定したならば、撮像部3のピントが観察対象面に合致する高さzにヘッド部6を保持する。このときの状態を
図6に示す。
【0035】
なお、ヘッド部6の高さz(z方向の位置)の制御に必要なレンズ部の種別情報等が本体部5に記憶されていない場合には、本体部5はヘッド部6を所定の最上位置に移動させ、最上位置に移動したヘッド部6を最上位置から下降させる。本体部5は、ステージ8に観察対象物Sが載置され、観察対象面の高さが揺動軸37の高さに合致していると仮定したならば、撮像部3のピントが観察対象面に合致する高さzにヘッド部6を保持する。
【0036】
次に、使用者は最下位置に位置したステージ8の上面に観察対象物Sを載置する。このときの状態を
図7に示す。ステージ8は最下位置に位置しているので、観察対象物Sがステージ8に載置されるときに、観察対象物Sが、撮像素子12を有するヘッド部6に接触することを防止することができる。
【0037】
本体部5は、ステージ8に載置された観察対象物Sの観察対象面に撮像部3のピントが合致するように、載置台である、ステージ8とθステージ35とをZ軸に沿って上昇させ、観察対象物Sの観察対象面を揺動軸37に合致させる。このときの状態を
図8に示す。観察対象面が撮像部3の光軸10上に位置していない場合には、本体部5は、ステージ8をX軸方向及び/又はY軸方向に移動させて観察対象面を撮像部3の光軸10上に位置させた後に、ステージ8とθステージ35とをZ軸に沿って上昇させて、観察対象物Sの観察対象面を揺動軸37に合致させる。使用者は、表示手段4を用いて、揺動軸37と合致している観察対象物Sの観察対象面を平面観察することができる。使用者は、また本体部5がθステージ35を駆動して、観察対象面を回転させた状態で平面観察することもできる。
(傾斜観察)
【0038】
ヘッド部6を揺動させた傾斜観察を行う場合は、使用者は、揺動軸37を中心として、上ステージ昇降器31を手動で揺動させて、ヘッド部6を傾斜させた状態で観察対象面を傾斜観察することができる(
図8を参照のこと。)。このとき、このヘッド部6を傾斜させた状態で、撮像部3のピントが観察対象面に合致しており、平面観察時に表示手段4に表示されていた観察対象面が、表示手段4の画面上で移動することなく、平面観察時に表示されていた位置にそのまま表示された状態での観察であるユーセントリック観察を行うことができる。
【0039】
平面観察しているとき、ステージ8を水平方向に移動して、ステージ8に載置している新たな部位を観察したい場合がある。このような場合には、本体部5は、ステージ8をX軸方向及び/又はY軸方向に移動させて新たな部位の観察対象面を揺動軸37上に位置させる。このときの状態を
図9に示す。本体部5は、ステージ8を再び最下位置に移動させた後、観察対象面に撮像部3のピントが合致するように、載置台(ステージ8及びθステージ35)をZ軸に沿って移動させて、観察対象面を揺動軸37上に合致させる。このときの状態を
図10に示す。使用者は、この状態で、表示手段4等を用いて観察対象面を平面観察することができる。
【0040】
この場合に、観察対象面に関する焦点距離情報がメモリ14に記憶されている場合には、制御手段19はメモリ14に記憶されている焦点距離情報に基づいて観察対象物Sの光軸10方向における高さを演算して、観察対象面を前記揺動軸37上に合致させることができる。この場合にはステージ8を最下位置に移動させる工程を省くことができ、観察対象面を迅速に撮像することができる。
【0041】
なお、上ステージ昇降器31は、本体部5とモータ制御回路32とステッピングモータ33とによって、載置台であるステージ8とθステージとを電動で移動可能に支持しているが、これに限定されるものではない。上ステージ昇降器13に設置されたツマミを使用者が回して、ステージ8とθステージとを手動で移動させるものでも良い。
(加速度センサ41,43)
【0042】
取付部材25には第一加速度センサ41が設置されている。第一加速度センサ41は、拡大観察装置100の重力加速度に対する撮像部3の光軸10の傾斜角度である第一傾斜角度を検出する。ベース42には第二加速度センサ43が設置されている。第二加速度センサ43は、重力加速度に対する載置台(ステージ8,θステージ35)の回転中心軸44の傾斜角度である第二傾斜角度を検出する。
【0043】
ここで第一傾斜角度と第二傾斜角度とに基づいて載置台に対する撮像部3の光軸10の傾斜角度である第三傾斜角度(チルト角度)を算出する方法について
図11と
図12とを用いて説明する。なお、第一加速度センサ41と第二加速度センサ43として3次元の加速度センサが用いられているが、簡単のために2次元で説明する。
【0044】
第一加速度センサ41は、重力加速度を、撮像部3の光軸10方向と、撮像部3の光軸10方向と直交する方向に分解して、撮像部3の光軸10方向の値と、撮像部3の光軸10方向と直交する方向の値とを検出する。一方で、載置台(ステージ8,θステージ35)は回転中心軸44を中心として回転するが、第二加速度センサ43は、重力加速度を、載置台の回転中心軸44方向と、載置台の回転中心軸44方向と直交する方向とに分解して、載置台の回転中心軸44方向の値と、載置台の回転中心軸44と直交する方向の値とを検出する。
【0045】
図11においては、載置台の回転中心軸44が鉛直線方向に向いており、撮像部3の光軸10が鉛直線方向に対して傾いている場合を示す。第一加速度センサ41は、重力加速度の撮像部3の光軸10方向の値であるY1と、重力加速度の撮像部の光軸10方向と直交する方向の値であるX1とを検出する。一方で第二加速度センサ43は、重力加速度の載置台の回転中心軸44方向の値であるY2として重力加速度の値を検出し、載置台の回転中心軸44と直交する方向の値として0を検出する。
【0046】
演算手段53は、第一加速度センサ41が検出したY1とX1とによって、重力加速度に対する撮像部3の光軸10方向の傾斜角度θ1を算出し、第二加速度センサ43が検出したY2(重力加速度の値)とX2(X2=0)とによって、鉛直線方向に対する載置台の回転中心軸44方向の傾斜角度θ2(θ2=0)を算出する。演算手段53は、さらにθ1とθ2とによって、第三傾斜角度θ12(=θ1+θ2)としてθ1を算出する。
【0047】
図12は
図11の状態から拡大観察装置全体を傾斜させ、載置台の回転中心軸軸44と撮像部3の光軸10とがともに鉛直線方向に対して傾いている場合を示す。この場合には、第一加速度センサ41は、重力加速度の撮像部3の光軸10方向の値であるY3と、重力加速度の撮像部3の光軸10方向と直交する方向の値であるX3とを検出する。一方で第二加速度センサ43は、重力加速度の載置台の回転中心軸44方向の値であるY4と、重力加速度の載置台の回転中心軸44方向と直交する方向の値であるX4とを検出する。
【0048】
演算手段53は、第一加速度センサ41が検出したY3とX3とによって、撮像部3の光軸10方向の傾斜角度θ3を算出し、第二加速度センサ43が検出したY4とX4とによって、鉛直線方向に対する載置台の回転中心軸44方向の傾斜角度θ4を算出する。演算手段53は、さらにθ3とθ4とによって、第三傾斜角度θ34(θ34=θ3+θ4)を算出する。表示手段4は、
図1Bに示すように演算手段53が算出した第三傾斜角度(θ12,θ34)を表示手段4に設けたチルト角度表示部50に表示することができる。
【0049】
なお、第一加速度センサ41を設置する場所は取付手段25に限定されるものではなく、撮像部3や上ステージ昇降部31に設置することもできる。同様に第二加速度センサ43を設置する場所も載置台に限定されるものではなく、下ステージ昇降部13またはベース42に設置することもできる。さらに上述した例では、第一加速度センサ41と第二加速度センサ43との2つの加速度センサを使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つ以上の加速度センサを使用することもできる。
【0050】
第一加速度センサ41は撮像部3に設置され、第二加速度センサ43はベース42に設置されるので、上ステージ昇降部31を支持する揺動軸37にエンコーダ等の角度検知センサを設置した場合のように、機器が複雑になり大型化し、あるいは耐振性、耐久性を損なうことはない。また、第一加速度センサ41に加えて第二加速度センサ43を設置して、重力加速度に対する載置台の傾斜角度を検出しているので、拡大観察装置100が傾斜した状態で設置された場合でも、載置台に対する撮像部3の観察角度である第三傾斜角度を算出して表示手段4に表示することができる。このように、拡大観察装置100が設置された傾斜角度に関わらずチルト角度を正確に再現することができる。
(回転角度センサ)
【0051】
ステージ8は、Z軸を中心として回転自在なθステージ35に取り付けられているが、このθステージ35の回転中心軸44には回転角度センサ49が取り付けられている(
図13を参照のこと。)。回転角度センサ49によって、載置台の回転角度を検出することができる。回転角度センサ49が検出した載置台の回転角度は、
図1Bに示すように表示手段4に設けた載置台回転角度表示部53に表示することができる。これによって、チルト角度に加えて載置台の回転角度も正確に再現することができる。
図14に示すように、観察対象物が載置される載置台の載置面が傾いている場合であっても、使用者は、表示手段4に表示される、載置台のチルト角度と回転角度とによって、傾斜観察における観察状態を正確に再現することができる。
(ロック機構)
【0052】
上ステージ昇降部31は、機械的なロック機構51によって、載置台に対して略垂直となるようにベース42に固定可能である。ロック機構51は、たとえば、上ステージ昇降部31に形成された凹部54と、ベース42に支持された回転軸55に連設された回動板56と、回動板56にコイルばね57を介して連結された球体58とを備える。この球体58とコイルバネ57とは、ベース42に開口された円筒状の筒部60に挿入される。また球体58の直径は、この筒部60の内面とほぼ接する大きさに設計される。さらに筒部60の開口部は、上ステージ昇降部31を垂直姿勢とした状態で、凹部54の開口面と合致する、又は凹部54を筒部よりも若干大きくするように設計される。一方回転軸55の一端部にはロックレバー59が設けられている。また回転軸55には、その回転軸55から垂直に突出され、ロックレバー59を回転させると突出して回動板56を押し出すカム61が設けられている。使用者がロックレバー59を操作して回転軸55を回転させると、カム機構によって回動板56が押し出され、コイルばね57を介して球体58が押し出され、上ステージ昇降部31の凹部54に球体58が係合する(
図16Aを参照のこと。)。
【0053】
この球体58は、凹部54に押し込まれた状態で凹部54に正接し、かつこの状態で上ステージ昇降部31がベース42に対して垂直姿勢となるように設計される。このような構成により、上ステージ昇降部31を垂直姿勢に合わせる際、
図16Bの断面図に示すようにベース42部に対して多少ずれていても、いいかえると完全に垂直な姿勢にユーザが位置決めしなくとも、ロックレバー59を操作して球体58を押し出すと、球体58の進行方向に従って開口面積を狭くした下窄み状の凹部54の傾斜面62と当接し、さらに当接位置が球体58の後方(
図16Bにおいて上方向)にずれていくように、当接点に作用する応力でもって上ステージ昇降部31が図において左側に押し出され、最終的には
図16Aに示すように球体58が完全に凹部54に入り込んだ状態で当接されて、上ステージ昇降部31の移動が停止され、上ステージ昇降部31とベース42との位置決めがなされる。すなわち、球体58が完全に凹部54に入り込んだ状態で上ステージ昇降部31が垂直姿勢となるよう、予め設計された姿勢に保持される。これによって、ユーザが上ステージ昇降部31を垂直姿勢に合わせる際に、従来のように揺動軸37に刻印された目盛を見ながら正確な位置決めを行う必要がなく、概ね垂直となる姿勢に上ステージ昇降部31を回動させた状態で、ロックレバー59を操作することで、上述の通り球体58が凹部54に案内されるように上ステージ昇降部31の微調整、すなわち正確な位置決めが実行される。よって、上ステージ昇降部31を垂直姿勢に戻す作業を極めて簡単に行え、使い勝手が向上される。
【0054】
さらにこの構成であれば、球体58の凹部54側への侵入深さでもって当接位置を調整できる、いいかえると、球体58の直径と凹部54の内径とを精密に位置決めする必要を無くすことができ、製造公差を高めることなくロック機構を実現できる利点が得られる。
【0055】
使用者は、揺動軸37の端面に設けられた傾き角度の目盛を見ながら、あるいはメモリに記録されたチルト角度を見ながら上ステージ昇降部31を載置台に対して垂直になるように位置合わせをしなくても、上ステージ昇降部31を目測で載置台に対して垂直姿勢として、ロック機構51を用いて簡便に上ステージ昇降部31を載置台に対して略垂直にロックすることができる。
【0056】
またロック状態から、使用者がロックレバー59を逆方向に操作すると、コイルばね57の付勢力が弱まる。使用者が揺動軸37を中心として上ステージ昇降部31を回動させると、球体58は凹部54から離脱してロック機構51のロックが解除される。
【0057】
このように、使用者はロック機構51を用いて、上ステージ昇降部31を載置台に対して機械的に垂直にした状態で簡便にロックし、ロック解除することができるので、基板等の観察対象物Sの歪みのない平面図を表示手段4に表示して観察対象物Sの寸法チェックを簡便に行うことができる。使用者は、さらに表示手段4が表示する第三傾斜角度(チルト角度)によって、ロック機構51がロックした上ステージ昇降部31の載置台に対する正確な傾斜角度を知ることができる。さらに第三傾斜角度に基づいて上ステージ昇降部31の傾斜角度を調整して、上ステージ昇降部31を載置台に対して正確な垂直にすることができる。
【0058】
なお上記の構成では、固定される本体側に突出部を設け、揺動するヘッド部側にこの突出部を案内する受け部を設けた例を説明したが、本発明はこの構成に限られず、例えばヘッド部側に突出部を設け、本体側に受け部を設ける構成としてもよい。さらに突出部やこれを案内する受け部の形状も、上記に限られず、例えば突出部として球体に代えて半球状やドーム状、台形状や三角形状等、受け側の傾斜面に案内される任意の形状が採用できる。同様に受け部についても、断面視を等脚台形を上下逆にしたすり鉢状とする他、円錐状、あるいは曲面状やテーパー面状等とすることもできる。