特許第6190722号(P6190722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190722
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】超音波カップリング液及び容器
(51)【国際特許分類】
   C08L 39/06 20060101AFI20170821BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20170821BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20170821BHJP
   B65D 1/32 20060101ALI20170821BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C08L39/06
   A61B8/00
   A61B17/00 700
   B65D1/32 200
   C08K5/05
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-511605(P2013-511605)
(86)(22)【出願日】2011年5月16日
(65)【公表番号】特表2013-529245(P2013-529245A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】EP2011057868
(87)【国際公開番号】WO2011147704
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月1日
【審判番号】不服2015-22764(P2015-22764/J1)
【審判請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】10163725.4
(32)【優先日】2010年5月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510126313
【氏名又は名称】セラクリオン・ソシエテ・パル・アクシオン・サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】THERACLION SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロカルド,ロベルタ
(72)【発明者】
【氏名】ペシュー,ティエリー
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 佐久 敬
【審判官】 大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/137944(WO,A1)
【文献】 特開2009−513(JP,A)
【文献】 特開2000−316871(JP,A)
【文献】 特開平9−288095(JP,A)
【文献】 特開平4−354945(JP,A)
【文献】 特表2008−513149(JP,A)
【文献】 特開2007−144225(JP,A)
【文献】 特開平2−142542(JP,A)
【文献】 特開2009−273571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
G01N29
A61B8
A61B17
A61B1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波カップリング液であって、
−30,000〜70,000の間の平均分子量を有し、ポリビニルピロリドンである又はポリビニルピロリドンを含む少なくとも1種の親水性ポリマーの液状水溶液と
−前記カップリング液と皮膚及び/又は超音波振動子を覆うカバー部材との間の境界にて超音波の反射を減らすためのエタノール
を含む超音波カップリング液。
【請求項2】
エタノールが、3〜45重量%の濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の超音波カップリング液。
【請求項3】
エタノールが、5重量%の濃度で存在することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の超音波カップリング液。
【請求項4】
親水性ポリマーが1〜5%w/vの間の量で存在することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の超音波カップリング液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の超音波カップリング液を充填した空洞(9)を定義する高い熱伝導性の外壁(12)を持つ容器(10)であって、前記容器(10)は気密であり、かつ前記液が前記容器から前記超音波プローブに常に循環するように超音波プローブ頭部と流体接続した空洞をもたらすチューブをさらに含む、容器(10)。
【請求項6】
前記外壁(12)が、0.5mm未満の厚さを有することを特徴とする請求項に記載の容器。
【請求項7】
前記外壁(12)が、プラスチック材で作られる又はそれを含むことを特徴とする請求項又はのいずれかに記載の容器。
【請求項8】
容器(10)が、1つの平面で容器の幾何学的形状を定義する少なくとも1つの枠要素(1、2)と前記外壁(12)を含む2つの壁要素(3、4)とを含み、前記2つの壁要素(3、4)が前記枠要素(1、2)に取り付けられ、それによって前記2つの壁要素(3、4)の間で空洞(9)を形成することを特徴とする請求項のいずれかに記載の容器。
【請求項9】
前記容器(10)が同定手段(7)をさらに含むことを特徴とする請求項のいずれかに記載の容器。
【請求項10】
超音波装置(25)であって、請求項のいずれかに記載のカップリング液容器に可逆的に接続するように適合させた冷却手段及び/又は固定手段を含む超音波装置。
【請求項11】
キットであって、請求項のいずれかに記載の容器(10)と超音波振動子用のカバー部材(29)を含み、前記カバー部材を前記容器に流体接続させる接続手段を含むキット。
【請求項12】
エタノールが、5〜20重量%の濃度で存在することを特徴とする請求項1に記載の超音波カップリング液。
【請求項13】
請求項1〜のいずれかに記載の超音波カップリング液を充填した空洞(9)を定義する高い熱伝導性の外壁(12)を持つ容器(10)。
【請求項14】
前記外壁(12)が、0.25mm未満の厚さを有することを特徴とする請求項に記載の容器。
【請求項15】
前記外壁(12)が、0.125mm未満の厚さを有することを特徴とする請求項に記載の容器。
【請求項16】
前記外壁(12)が、ポリ(塩化ビニル)及び/又はエラストマー材料で作られる又はそれを含むことを特徴とする請求項又はのいずれかに記載の容器。
【請求項17】
前記容器(10)がRFIDタグをさらに含む、請求項のいずれかに記載の容器。
【請求項18】
超音波装置(25)であって、請求項のいずれかに記載のカップリング液容器(10)に可逆的に接続するように適合させたアダプター要素(20)の形態にて冷却手段及び/又は固定手段を含む超音波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の超音波による画像診断又は治療のためのカップリング液並びに請求項7に記載のカップリング液を充填する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断の目的で超音波を使用することが知られている。しかし、機械的効果による結石の破壊のために又は熱効果によって組織で病変を創るために、治療目的でも超音波が使用され得る。
【0003】
双方の場合、超音波振動子と患者の皮膚の間でのカップリング液の使用が有利である。カップリング液によって超音波振動子から皮膚への超音波の適切な伝達が確保される。カップリング液は直接皮膚に塗布されてもよいので、皮膚と超音波振動子の間で架橋層を形成する。そのような直接塗布はほとんど結像交換器と共に使用される。或いは、超音波振動子に取り付けられた風船様のカバー部材にカップリング液が含有され得る。そのような構成はほとんど高密度焦点式超音波(HIFU)振動子と共に使用され、その際、カップリング液はさらに振動子と皮膚双方を冷却する冷却液として役立つ。カップリング液は有利に、たとえば、熱交換器のような追加の手段を介して常に循環される。
【0004】
既知のカップリング液はほとんど水系ヒドロゲルである。既知のゲル化剤はほとんどポリマー、たとえば、ポリウレタン、ポリオールなどである。
【0005】
カップリング液の主な課題の1つは、たとえば、HIFU治療にて高い超音波エネルギーを使用する場合、キャビテーション効果によって液体に気泡が形成されることである。そのような気泡は、追加の超音波画像診断を用いて治療をモニターする及び/又は超音波の焦点を位置決めする場合に問題を引き起こし得る。
【0006】
日本特許出願平2−092343は、たとえば、ポリビニルピロリドンのような水性ゲルを含有する多孔性物質様ポリウレタンのマトリクスによって形成された超音波画像診断用のカップリング製品を開示している。
【0007】
米国特許第5,078,149号は、ポリマーゲルを含有する受容体を有する超音波カップリング製品を開示している。受容体を超音波プローブの先端に取り付けてカップリング部材として役立たせ得る。ポリマーは受容体と一体化して架橋される。
【0008】
そのようなカップリング製品は、ポンプ送りが可能ではないので超音波振動子又は皮膚に冷却を提供することができないという短所を有する。
【0009】
米国特許第6,432,069号は親水性ポリマー、好ましくはポリビニルピロリドンを含む水性カップリング液を開示している。ポリマーは10〜50g/Lの量で存在する。キャビテーション効果による気泡はほとんど形成されないのでその液体はHIFU治療のような高エネルギー超音波の適用での使用のために具体的に最適化される。さらに、液体の粘度が2・10−4Pa・s未満なので容易にポンプ送りでき、従って冷却液としても作用し得る。この目的で、超音波振動子を覆うカバー部材を介してカップリング液は常にポンプ送りされる。
【0010】
しかしながら、カップリング液とカバー部材及び/又は患者の皮膚との境界にて物質の異なった屈折率のために特定の量の超音波が反射する。さらに、使用されるポリマーの一部が有機性なので、細菌や藻類の増殖が生じ得るので、液体の滅菌が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、既知のカップリング液の短所を克服し、特に、超音波の反射が少なく、細菌や藻類が増殖しがちではない超音波カップリング液を提供することである。この課題は、請求項1に記載のカップリング液によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の超音波カップリング液は
・30,000〜75,000の間の平均分子量を有する少なくとも1種の親水性ポリマーの液状水溶液と
・1〜7の炭素原子の炭素鎖を持つ少なくとも1種のアルコール
を含む。
【0013】
本明細書で理解されるとき、「親水性ポリマー」は、その中に溶解する又はそれと共にゲルを形成することに関して水に対して十分な親和性を有するポリマーを意味する。親水性ポリマーの好適な例は、アクリル系ポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、セルロース誘導体、ゼラチン、グアーゴム又は寒天のようなゴム、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、又はそれらの混合物である。
【0014】
好ましくは、カップリング液は単一の親水性ポリマーを含む。たとえば、10〜50g/Lのような低濃度で存在する30,000〜70,000の範囲で平均分子量を持つポリマーは、相対的に低い粘度、好ましくは20℃にて1・10−4Pa・s〜2・10−4Pa・sの間の粘度を有するヒドロゲルの製造を可能にする。そのような粘度は、ヒドロゲルが容易にポンプ送りされるので冷却手段を持つ液体回路で使用されることを可能にする。
【0015】
さらに、カップリング剤は1〜7の炭素原子の酸素鎖を持つ少なくとも1種のアルコールを含む。炭素鎖は分枝鎖であっても非分枝鎖であってもよい。好ましくは、アルコールは、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール又はそれらの混合物から選択される。さらに好ましくは少なくとも1種のアルコールは1級アルコールである。
【0016】
驚くべきことに、親水性ポリマーを含むカップリング液へのアルコールの添加は、カップリング液と皮膚及び/又は超音波振動子を覆うカバー部材との間の境界にて超音波の反射を相当に減らすことが見い出された。さらに、カップリング液と皮膚及び/又はカバー部材との間での屈折率の低下は、超音波の焦点を体内でのさらに深くに移動させる。追加の効果は、細菌及び/又は藻類の増殖がアルコールによって妨害されることである。別の追加の効果は冷却剤の凝固点がアルコールの添加によって低下することである。既知の冷却液の低温が0℃に限定されるのに対して、本発明に係る冷却剤は0℃未満に冷却することができ、良好な効率を得る可能性がある。たとえば、5.5%のエタノールの添加は凝固点を−2℃に下げる。
【0017】
少なくとも1種のアルコールが好ましくは、カップリング液の総重量の3〜45重量%、好ましくは5〜20重量%の濃度で存在する。超音波反射の量は、アルコール濃度がこの範囲にある場合、低減される。
【0018】
最も好ましくは、少なくとも1種のアルコールは、カップリング液の総重量の5重量%の濃度で存在する。この濃度は、高エネルギー超音波、特にHIFU治療と共に使用されるカップリング流体にとって最適の濃度であることが見い出された。
【0019】
少なくとも1種のアルコールは好ましくはエタノール、プロパノール及び/又はベンジルアルコールを含む群から選択される。これらのアルコールは良好な抗菌性及び抗真菌性を有する。従って、カップリング液は包装又は使用の前に滅菌する必要はない。
【0020】
親水性ポリマーは好ましくはポリビニルピロリドンである又はそれを含む。ポリビニルピロリドンは、水とほぼ同様の音響特性及び吸収特性を有し、それによって溶液の全体的な特性にて些少な変更のみで種々の濃度のポリビニルピロリドンの使用が可能になる。
【0021】
これらの低い減衰及び/又はカップリング液の吸音特性によって、超音波の大部分が、カップリング液によって吸収されるのではなく皮膚に効果的に伝達されることが保証される。
【0022】
本発明で使用されるポリビニルピロリドンは最も好ましくは、たとえば、商標Plasdone(登録商標)K−29/32(米国、ISC社)のもとで入手可能なポリビニルピロリドンのように58,000の平均分子量を有する。
【0023】
最も好ましくは、カップリング液の体積当たり1〜5重量%の量で存在する。これによって、ゲルをポンプ送り可能にするのに十分に低い粘度を持つヒドロゲルを得ることが可能になる。本発明に係るカップリング液の粘度は好ましくは、20℃で1・10−4Pa・s〜2・10−4Pa・sの間、さらに好ましくは20℃で1.2・10−4Pa・s〜1.6・10−4Pa・sの間である。
【0024】
本発明の別の目的は、超音波装置の冷却系に一体化しやすく、細菌及び真菌の増殖から保護されるカップリング流体用容器を提供することである。この課題は請求項7に記載の容器によって解決される。
【0025】
本発明に係る容器は、保存剤を含む超音波カップリング液を充填すされる空洞を定義する高い熱伝導性を持つ外壁を有する。超音波カップリング液は好ましくは本発明に係るカップリング液である。
【0026】
本明細書で理解されるとき、「高い熱伝導性」は、壁表面のm当たり1000W/Kを超える熱伝導性である。これによって容器から冷却系への良好な熱伝達が可能になり、それによって冷却剤における効率的な温度低下が可能になる。
【0027】
壁は好ましくは、30N/mmを超える引張強度を有する。これによって操作、保存及び/又は輸送の間に容器の壁の破裂が回避される。
【0028】
薄い壁の容器は、壁が内包された液体の膨張によって生じる内圧の変化に耐えることができないので破裂する傾向があるので、熱によって滅菌してはならない。薄い壁の容器は、加熱した際、壁材料の軟化のためにさらに変形しがちでもあり得る。ガンマ線照射やエチレンオキシド(ETO)ガスのような加熱以外の滅菌方法も容器壁の材料又はカップリング液自体の材料を改変しがちである。カップリング液における保存剤の存在は細菌又は真菌の増殖を妨害するので滅菌工程を除外する。これによって非無菌条件下にてカップリング液容器の製造が可能になり、それによってかなり相当に製造コストが下げられる。
【0029】
超音波装置の使用の容易さについては、特にHIFU治療の分野では、カップリング液を液体冷却循環に導入しやすいことが重要である。本発明に係る高い熱伝導性を持つ壁を容器に設けることによって、たとえば、2つの冷却プレート間、又は冷却槽の中のような冷却手段に容器を設置することが可能である。壁の高い熱伝導性はこうして容器の中のカップリング液と冷却手段の間での効果的な熱伝達を可能にする。従って、容器からカップリング液を取り出し、冷却系にそれを充填する必要はない。
【0030】
本発明に係る容器に充填されるカップリング液に含まれる保存剤は、音響特性が保たれ、改善される限り、微生物、特に細菌及び真菌の増殖を妨害する任意の好適な保存剤であってもよい。好ましくは、カップリング液に含まれる保存剤はアルコールである。最も好ましくは、カップリング液は、親水性ポリマーと1〜7の炭素原子を持つ分枝鎖又は非分枝鎖の炭素鎖を有するアルコールを含む本発明で記載されるようなカップリング液である。
【0031】
好ましくは、壁は、0.5mm未満、さらに好ましくは0.25mm未満、最も好ましくは0.125mm未満の厚さを有する。壁の厚さを減らすことは壁を横切る熱伝導性を高めるので、容器内部のカップリング液と冷却手段の間の熱交換を高める。
【0032】
壁の厚さの減少、上記で示される値は、壁が低い熱伝導性を有する材料を含む又はそれで作られるのを一層可能にする。
【0033】
壁の厚さを減らすことはそれをさらに柔軟にするので、壁に適用される圧力ピークの迅速な及び良好な分布を可能にする。これによって壁がそのような圧力ピークにより局所でバラバラにされるリスクを低減する。
【0034】
壁は好ましくは高分子材料で作られる又はそれを含む。
高分子材料は容易に入手し易く、安価である。さらに、真空形成又は加熱形成と同様に射出成形、押し出し、打ち抜きのような、高分子材料に特定の形状を付与する当該技術で既知の多数の技法がある。これは、本発明に係る容器の製造工程を大いに円滑にする。
【0035】
さらに好ましくは、薄い壁はポリ(塩化ビニル)で作られる又はそれを含む。ポリ(塩化ビニル)の使用によって非常に薄い壁を有する容器の製造が可能になる。さらに、ポリ(塩化ビニル)は容易に取り扱うことができ、使用後特定の廃棄を必要としない。
【0036】
好ましくは、容器はさらに、超音波プローブ頭部と流体接続した空洞をもたらす手段を含む。前記手段は好ましくは少なくとも1種のチューブを含む。接続手段によって超音波装置の液体循環に容器を一体化させることが可能である。たとえば、ポンプによって容器から超音波プローブ頭部にカップリング液を常に循環させてもよい。容器は薄い外壁を有するので、カップリング液がさらに冷却液として役立ち得るように冷却手段上に又はその中にそれを設置してもよい。
【0037】
さらに、容器は最も好ましくは気密性である。気密性によって、容器の空洞と容器の外の大気との間で気体交換が可能ではないことが理解される。これによってさらに、微生物によるカップリング液の汚染の可能性が低減される。当然、いったん容器が超音波装置に接続される又は液体の引き出しのために開放されると、それはもはや気密ではあり得ない。好ましくは、超音波装置との容器の接続は液体循環全体を気密に保持するような方法で構成される。
【0038】
容器は好ましくは、1ヵ所で容器の幾何学的形状を定義する少なくとも1つの枠要素と2つの壁要素を含み、その際、前記2つの壁要素は前記枠要素に取り付けられ、それによって前記2つの壁要素の間で空洞を形成する。
【0039】
枠要素は好ましくは長方形形状である。しかし、枠部材はそのほかの好適な形状、たとえば、円状であってもよい。枠要素は、たとえば、握り手段及び/又は固定手段のような追加の機能のための突出部及び/又は収納部のような追加の要素も含み得る。枠要素は好ましくは外壁よりも硬いので枠要素の面で容器に若干の安定性を付与する。2つの壁要素は枠要素のそれぞれの側面で枠要素に取り付けられる。壁要素の間で、空洞がこうして形成される。壁要素は接着剤又は溶接によって枠要素に固定されてもよい。
【0040】
或いは、容器は1を越える枠要素、たとえば、2、3以上の枠要素を含んでもよい。好ましくは、容器が1を超える枠要素を含むのであれば、たとえば、溶接又は接着剤によって枠要素は上下に固定される。これは、枠要素の面で容器の安定性をさらに強化する。
【0041】
枠要素は好ましくは壁要素と同様の材料を含む又はそれで作られる。或いは、枠要素は壁要素とは別の材料を含む又はそれで作られる。
【0042】
容器は好ましくは同定手段、好ましくはRFIDタグをさらに含む。同定手段は、容器におけるカップリング液についての情報、たとえば、バッチの通し番号、製造日、キット通し番号又は最終使用日さえも読み取ることを可能にし得る。
【0043】
本発明の別の目的は、改善された音響特性を持つ超音波装置の使用方法を提供することである。この課題は、請求項14に従って解決される。
【0044】
超音波装置、好ましくはHIFU装置の使用方法では、保存剤を含む、好ましくは本発明に係るカップリング液を充填した容器を超音波振動子と流体接続させる。
【0045】
好ましくは容器と共に含まれる接続手段を介して容器を流体接続させてもよい。好ましくは、少なくとも1種のチューブ、好ましくは柔軟性チューブによって容器を超音波振動子と流体接続させる。
【0046】
本発明はさらに超音波による、好ましくは高密度焦点式超音波による治療のための本発明のカップリング液の使用に関する。
【0047】
本発明の別の目的は、本発明の容器を超音波装置に可逆的に接続する固定手段を含む超音波装置を提供することである。固定手段は最も好ましくは、可逆的に容器を格納するように構成されるアダプター部材の形態である。最も好ましくは、アダプター部材は、超音波装置の別の装置であり、超音波装置に設けられるレセプタクルに挿入可能である。或いは、アダプター装置は超音波装置の一体部品としても提供され得る。最も好ましくは、カップリング液で充填される容器は本発明に係る容器である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明の追加の態様及び詳細は、図面及び例の以下の説明から明らかであろう。
図1】アルコールなしのカップリング液と比べたアルコール入りのカップリング液における音波の速度の差異を示す図である。
図2】本発明に係るカップリング液容器の実施形態を示す分解図である。
図3a】別の側面から見た図2のカップリング液容器を示す図である。
図3b】別の側面から見た図2のカップリング液容器を示す図である。
図3c】別の側面から見た図2のカップリング液容器を示す図である。
図4】本発明に従ってカップリング液を製造する好まれる方法を示す模式説明図である。
図5a】本発明の容器を超音波装置に固定するための固定手段を示す図である。
図5b】本発明の容器を超音波装置に固定するための固定手段を示す図である。
図6】本発明に係る容器のための接続手段と冷却手段を含む超音波装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、線Aとして示した5重量%のエタノールをさらに含むカップリング液と比べた線Bで示した10%w/vポリビニルピロリドン水溶液を含むカップリング液との間での種々の温度にて音波の速度の差異を示す。容易に分かるように、アルコールの添加はカップリング媒体における音波の速度を高める。
【0050】
さらに、液体と皮膚又はカバー部材との間での超音波の反射係数は低下するので、液体から患者の組織への音波の伝達を高めることが可能である。アルコールなしのカップリング液及びただの水と比べた本発明のカップリング液の種々の物性についての例となる値を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
体積当たり10重量%のポリビニルピロリドン水溶液を含むカップリング媒体と5重量%のエタノールをさらに含むカップリング液双方について細菌汚染の発生を調べた。さらに、80CFU/100mLでのPseudomonas aeruginosaの細菌培養物でアルコールを含むカップリング液に植菌した。空気を排除した小袋容器にカップリング液プローブを詰め、室温で5ヵ月保存した。液体の試料を取り出し、22℃±2℃で3日間インキュベートした。その後、細菌汚染を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
見て分かるように、1〜7の炭素原子の炭素鎖を持つアルコール、この場合、エタノールの添加は、カップリング液にて細菌の増殖を妨害する。カップリング液が無菌条件下で製造されなかったので低レベルの細菌汚染を含有するとしても、液体での細菌の過剰増殖はアルコールの添加によって回避される。
【0055】
試験では、5%エタノールを伴ったカップリング液を用いて、結像変換器の焦点をプローブの先端から11mm〜13.7m移動した。
【0056】
図2は、分解図にて本発明の容器の例となる実施形態を示す。容器10は第1の枠要素1と第2の枠要素2を含む。この実施形態では、枠要素1、2は一般に長方形の形状である。枠要素1、2の両側に2つの壁要素3、4が取り付けられる。好ましくは、枠要素1、2は、2つの壁3、4の間で形成される空洞へのチューブ5、6の挿入のための通路11を設ける。見本となるようにRFIDチップとして示される同定手段7は2つの枠要素1、2の間に挿入され得る。壁12の間で空洞が形成される。
【0057】
図3aは、組み立てた容器10の上面図を示す。壁要素3、4は枠要素1、2に固定される。これによって壁要素3、4の縁で境界8が創られる。接着剤又はプラスチック溶接によって壁要素3、4を枠要素1、2に取り付けてもよい。接着剤又はプラスチック溶接によって枠要素1、2も一緒に固定する。壁要素3、4の間で空洞9が形成される。チューブ5、6は通路11を通って空洞9に挿入される。チューブ5、6によって容器10は超音波装置又は超音波装置の液体回路に接続されてもよい。
【0058】
図3b及び3cはそれぞれ、図3aで示した組み立てた容器10の側面図及び正面図である。壁要素は双方共、高さHを有する。容器10の全体の高さHは、2つの壁要素の高さHと双方の枠要素の厚さの合計である。壁要素3、4の高さHは最大高である。壁12が柔軟性であり、空洞9が完全に充填されなければ、そのときは壁12はその完全高Hまで伸びてはならない。
【0059】
枠要素1、2及び壁要素3、4の双方は高分子材料、好ましくはポリ(塩化ビニル)で作られる。代替実施形態はまた枠要素1、2が壁要素3、4とは別の材料を含む又はそれで作られる容器も提供し得る。
【0060】
壁要素3、4、従って壁12の厚さは好ましくは0.1mmである。枠要素1、2は好ましくは壁要素3、4よりも厚い。好ましくは枠要素1、2の厚さは0.1mm〜1.5mmの間、好ましくは0.2mm〜1mmの間である。最も好ましくは、枠要素1、2は0.25mmの厚さである。
【0061】
空洞9は好ましくは90mm〜150mm、さらに好ましくは100mm〜125mmの範囲で幅Wを有する。最も好ましくは、幅Wは110mmである。空洞9の長さLは180mm〜250mm、さらに好ましくは200mm〜225mmの範囲である。最も好ましくは、長さLは210mmである。
【0062】
容器の幅Wは好ましくは120mm〜180mm、さらに好ましくは140mm〜160mmの範囲である。最も好ましくは、幅Wは150mmである。容器の長さLは好ましくは250mm〜350mm、さらに好ましくは280mm〜320mmの範囲である。最も好ましくは、長さLは295mmである。
【0063】
壁要素3、4の高さHは好ましくは5mm〜20mmの範囲であり、さらに好ましくは10mm〜15mmの間であり、最も好ましくは、高さHは12mmである。
【0064】
充填されている場合の容器10の高さHは好ましくは12m〜50mmの範囲であり、さらに好ましくは20mm〜35mmの間であり、最も好ましくは容器10の高さHは22mmである。
【0065】
容器10の空洞9の総体積は最も好ましくは500mLである。
図4は、本発明に係るカップリング液を製造する好ましい方法を示す。第1の混合工程19では、親水性ポリマーの粉末にアルコールを加える。好ましくは、アルコール15はエタノールであり、ポリマー16はポリビニルピロリドンである。使用される量は、カップリング液の望まれる特性によって異なる。好ましくは、第1の混合工程19にて、たとえば、名称PLASDONEK29−32(ISP社)のもとで入手可能な約58,000の平均分子量を持つポリビニルピロリドン10グラムを50グラムのエタノールに溶解する。次いで第2の混合工程20にて、溶液を水、好ましくは精製水又は蒸留水と混合する。水の量は1リットルのカップリング液18が得られるように選択されるべきである。或いは、製造工程のいずれかの間、たとえば、第1の混合工程19にて追加の化合物をカップリング液18に加えてもよい。見本となるように、0.2%の染料溶液、好ましくはメチレンブルー溶液1mLを加えてもよい。カップリング液18の所望の特性に応じて、好適な化合物をカップリング液18にさらに加えてもよい。
【0066】
図5a及び図5bは見本となるように、超音波装置に容器を固定する固定手段を示す。固定手段は好ましくは、基板部材22と基板部材22に枢動可能に連結される蓋部材21を有するアダプター要素20の形態である。図5aは開けた状態でのアダプター要素20を示す。基板部材22は、容器10が部材の外壁の間に挿入され得るように構成される。操作を簡単にするために、アダプター要素20はさらにハンドル24を含む。さらに、基板部材22は、閉じた状態で基板部材22に蓋部材21を可逆的に固定するように少なくとも1つの固定手段23を含む。そのような閉じた状態は図5bで示す。基板部材22の上に蓋部材を回転させることによって、好ましくは蓋部材21と基板部材22の間で容器10の境界8の締め付けを介して容器10をしっかりとアダプター部材20に接続する。蓋部材21は固定手段23によって基板部材22に固定される。固定手段23は、たとえば、ネジ、ピン又は嵌合接続のような任意の好適な形態及び構成であってもよい。基板部材22及び蓋部材21双方共、ここではチューブ5、6として示す接続手段が、たとえば、プローブ頭部に自由に接続されるのが可能であるように構成される。
【0067】
図6は、容器10のための冷却手段及び/又は接続手段を含む超音波装置の説明である。この例では、冷却手段は超音波装置25の中に設けられる。その中に装填された容器10を伴ったアダプター部材20は超音波装置25に設けられたレセプタクル30に挿入される。冷却手段は、レセプタクル30に挿入された時点で容器10の最適な冷却を提供するように配置される。超音波装置25は好ましくはさらに、超音波プローブ頭部26、回転軸アーム27、並びにたとえば、画面28のような入力/出力手段を含む。最も好ましくは、超音波プローブ頭部はカバー部材29で覆われる。特定の実施形態では、容器10とカバー部材29がキットに含まれる。カバー部材29と容器10は次いでチューブなどによって流体接続されてもよい。さらに、超音波装置は、容器10とカバー部材29の間でカップリング液が循環できるように少なくとも1つのポンプを含んでもよい。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b
図6