【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の超音波カップリング液は
・30,000〜75,000の間の平均分子量を有する少なくとも1種の親水性ポリマーの液状水溶液と
・1〜7の炭素原子の炭素鎖を持つ少なくとも1種のアルコール
を含む。
【0013】
本明細書で理解されるとき、「親水性ポリマー」は、その中に溶解する又はそれと共にゲルを形成することに関して水に対して十分な親和性を有するポリマーを意味する。親水性ポリマーの好適な例は、アクリル系ポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、セルロース誘導体、ゼラチン、グアーゴム又は寒天のようなゴム、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、又はそれらの混合物である。
【0014】
好ましくは、カップリング液は単一の親水性ポリマーを含む。たとえば、10〜50g/Lのような低濃度で存在する30,000〜70,000の範囲で平均分子量を持つポリマーは、相対的に低い粘度、好ましくは20℃にて1・10
−4Pa・s〜2・10
−4Pa・sの間の粘度を有するヒドロゲルの製造を可能にする。そのような粘度は、ヒドロゲルが容易にポンプ送りされるので冷却手段を持つ液体回路で使用されることを可能にする。
【0015】
さらに、カップリング剤は1〜7の炭素原子の酸素鎖を持つ少なくとも1種のアルコールを含む。炭素鎖は分枝鎖であっても非分枝鎖であってもよい。好ましくは、アルコールは、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール又はそれらの混合物から選択される。さらに好ましくは少なくとも1種のアルコールは1級アルコールである。
【0016】
驚くべきことに、親水性ポリマーを含むカップリング液へのアルコールの添加は、カップリング液と皮膚及び/又は超音波振動子を覆うカバー部材との間の境界にて超音波の反射を相当に減らすことが見い出された。さらに、カップリング液と皮膚及び/又はカバー部材との間での屈折率の低下は、超音波の焦点を体内でのさらに深くに移動させる。追加の効果は、細菌及び/又は藻類の増殖がアルコールによって妨害されることである。別の追加の効果は冷却剤の凝固点がアルコールの添加によって低下することである。既知の冷却液の低温が0℃に限定されるのに対して、本発明に係る冷却剤は0℃未満に冷却することができ、良好な効率を得る可能性がある。たとえば、5.5%のエタノールの添加は凝固点を−2℃に下げる。
【0017】
少なくとも1種のアルコールが好ましくは、カップリング液の総重量の3〜45重量%、好ましくは5〜20重量%の濃度で存在する。超音波反射の量は、アルコール濃度がこの範囲にある場合、低減される。
【0018】
最も好ましくは、少なくとも1種のアルコールは、カップリング液の総重量の5重量%の濃度で存在する。この濃度は、高エネルギー超音波、特にHIFU治療と共に使用されるカップリング流体にとって最適の濃度であることが見い出された。
【0019】
少なくとも1種のアルコールは好ましくはエタノール、プロパノール及び/又はベンジルアルコールを含む群から選択される。これらのアルコールは良好な抗菌性及び抗真菌性を有する。従って、カップリング液は包装又は使用の前に滅菌する必要はない。
【0020】
親水性ポリマーは好ましくはポリビニルピロリドンである又はそれを含む。ポリビニルピロリドンは、水とほぼ同様の音響特性及び吸収特性を有し、それによって溶液の全体的な特性にて些少な変更のみで種々の濃度のポリビニルピロリドンの使用が可能になる。
【0021】
これらの低い減衰及び/又はカップリング液の吸音特性によって、超音波の大部分が、カップリング液によって吸収されるのではなく皮膚に効果的に伝達されることが保証される。
【0022】
本発明で使用されるポリビニルピロリドンは最も好ましくは、たとえば、商標Plasdone(登録商標)K−29/32(米国、ISC社)のもとで入手可能なポリビニルピロリドンのように58,000の平均分子量を有する。
【0023】
最も好ましくは、カップリング液の体積当たり1〜5重量%の量で存在する。これによって、ゲルをポンプ送り可能にするのに十分に低い粘度を持つヒドロゲルを得ることが可能になる。本発明に係るカップリング液の粘度は好ましくは、20℃で1・10
−4Pa・s〜2・10
−4Pa・sの間、さらに好ましくは20℃で1.2・10
−4Pa・s〜1.6・10
−4Pa・sの間である。
【0024】
本発明の別の目的は、超音波装置の冷却系に一体化しやすく、細菌及び真菌の増殖から保護されるカップリング流体用容器を提供することである。この課題は請求項7に記載の容器によって解決される。
【0025】
本発明に係る容器は、保存剤を含む超音波カップリング液を充填すされる空洞を定義する高い熱伝導性を持つ外壁を有する。超音波カップリング液は好ましくは本発明に係るカップリング液である。
【0026】
本明細書で理解されるとき、「高い熱伝導性」は、壁表面のm
2当たり1000W/Kを超える熱伝導性である。これによって容器から冷却系への良好な熱伝達が可能になり、それによって冷却剤における効率的な温度低下が可能になる。
【0027】
壁は好ましくは、30N/mm
2を超える引張強度を有する。これによって操作、保存及び/又は輸送の間に容器の壁の破裂が回避される。
【0028】
薄い壁の容器は、壁が内包された液体の膨張によって生じる内圧の変化に耐えることができないので破裂する傾向があるので、熱によって滅菌してはならない。薄い壁の容器は、加熱した際、壁材料の軟化のためにさらに変形しがちでもあり得る。ガンマ線照射やエチレンオキシド(ETO)ガスのような加熱以外の滅菌方法も容器壁の材料又はカップリング液自体の材料を改変しがちである。カップリング液における保存剤の存在は細菌又は真菌の増殖を妨害するので滅菌工程を除外する。これによって非無菌条件下にてカップリング液容器の製造が可能になり、それによってかなり相当に製造コストが下げられる。
【0029】
超音波装置の使用の容易さについては、特にHIFU治療の分野では、カップリング液を液体冷却循環に導入しやすいことが重要である。本発明に係る高い熱伝導性を持つ壁を容器に設けることによって、たとえば、2つの冷却プレート間、又は冷却槽の中のような冷却手段に容器を設置することが可能である。壁の高い熱伝導性はこうして容器の中のカップリング液と冷却手段の間での効果的な熱伝達を可能にする。従って、容器からカップリング液を取り出し、冷却系にそれを充填する必要はない。
【0030】
本発明に係る容器に充填されるカップリング液に含まれる保存剤は、音響特性が保たれ、改善される限り、微生物、特に細菌及び真菌の増殖を妨害する任意の好適な保存剤であってもよい。好ましくは、カップリング液に含まれる保存剤はアルコールである。最も好ましくは、カップリング液は、親水性ポリマーと1〜7の炭素原子を持つ分枝鎖又は非分枝鎖の炭素鎖を有するアルコールを含む本発明で記載されるようなカップリング液である。
【0031】
好ましくは、壁は、0.5mm未満、さらに好ましくは0.25mm未満、最も好ましくは0.125mm未満の厚さを有する。壁の厚さを減らすことは壁を横切る熱伝導性を高めるので、容器内部のカップリング液と冷却手段の間の熱交換を高める。
【0032】
壁の厚さの減少、上記で示される値は、壁が低い熱伝導性を有する材料を含む又はそれで作られるのを一層可能にする。
【0033】
壁の厚さを減らすことはそれをさらに柔軟にするので、壁に適用される圧力ピークの迅速な及び良好な分布を可能にする。これによって壁がそのような圧力ピークにより局所でバラバラにされるリスクを低減する。
【0034】
壁は好ましくは高分子材料で作られる又はそれを含む。
高分子材料は容易に入手し易く、安価である。さらに、真空形成又は加熱形成と同様に射出成形、押し出し、打ち抜きのような、高分子材料に特定の形状を付与する当該技術で既知の多数の技法がある。これは、本発明に係る容器の製造工程を大いに円滑にする。
【0035】
さらに好ましくは、薄い壁はポリ(塩化ビニル)で作られる又はそれを含む。ポリ(塩化ビニル)の使用によって非常に薄い壁を有する容器の製造が可能になる。さらに、ポリ(塩化ビニル)は容易に取り扱うことができ、使用後特定の廃棄を必要としない。
【0036】
好ましくは、容器はさらに、超音波プローブ頭部と流体接続した空洞をもたらす手段を含む。前記手段は好ましくは少なくとも1種のチューブを含む。接続手段によって超音波装置の液体循環に容器を一体化させることが可能である。たとえば、ポンプによって容器から超音波プローブ頭部にカップリング液を常に循環させてもよい。容器は薄い外壁を有するので、カップリング液がさらに冷却液として役立ち得るように冷却手段上に又はその中にそれを設置してもよい。
【0037】
さらに、容器は最も好ましくは気密性である。気密性によって、容器の空洞と容器の外の大気との間で気体交換が可能ではないことが理解される。これによってさらに、微生物によるカップリング液の汚染の可能性が低減される。当然、いったん容器が超音波装置に接続される又は液体の引き出しのために開放されると、それはもはや気密ではあり得ない。好ましくは、超音波装置との容器の接続は液体循環全体を気密に保持するような方法で構成される。
【0038】
容器は好ましくは、1ヵ所で容器の幾何学的形状を定義する少なくとも1つの枠要素と2つの壁要素を含み、その際、前記2つの壁要素は前記枠要素に取り付けられ、それによって前記2つの壁要素の間で空洞を形成する。
【0039】
枠要素は好ましくは長方形形状である。しかし、枠部材はそのほかの好適な形状、たとえば、円状であってもよい。枠要素は、たとえば、握り手段及び/又は固定手段のような追加の機能のための突出部及び/又は収納部のような追加の要素も含み得る。枠要素は好ましくは外壁よりも硬いので枠要素の面で容器に若干の安定性を付与する。2つの壁要素は枠要素のそれぞれの側面で枠要素に取り付けられる。壁要素の間で、空洞がこうして形成される。壁要素は接着剤又は溶接によって枠要素に固定されてもよい。
【0040】
或いは、容器は1を越える枠要素、たとえば、2、3以上の枠要素を含んでもよい。好ましくは、容器が1を超える枠要素を含むのであれば、たとえば、溶接又は接着剤によって枠要素は上下に固定される。これは、枠要素の面で容器の安定性をさらに強化する。
【0041】
枠要素は好ましくは壁要素と同様の材料を含む又はそれで作られる。或いは、枠要素は壁要素とは別の材料を含む又はそれで作られる。
【0042】
容器は好ましくは同定手段、好ましくはRFIDタグをさらに含む。同定手段は、容器におけるカップリング液についての情報、たとえば、バッチの通し番号、製造日、キット通し番号又は最終使用日さえも読み取ることを可能にし得る。
【0043】
本発明の別の目的は、改善された音響特性を持つ超音波装置の使用方法を提供することである。この課題は、請求項14に従って解決される。
【0044】
超音波装置、好ましくはHIFU装置の使用方法では、保存剤を含む、好ましくは本発明に係るカップリング液を充填した容器を超音波振動子と流体接続させる。
【0045】
好ましくは容器と共に含まれる接続手段を介して容器を流体接続させてもよい。好ましくは、少なくとも1種のチューブ、好ましくは柔軟性チューブによって容器を超音波振動子と流体接続させる。
【0046】
本発明はさらに超音波による、好ましくは高密度焦点式超音波による治療のための本発明のカップリング液の使用に関する。
【0047】
本発明の別の目的は、本発明の容器を超音波装置に可逆的に接続する固定手段を含む超音波装置を提供することである。固定手段は最も好ましくは、可逆的に容器を格納するように構成されるアダプター部材の形態である。最も好ましくは、アダプター部材は、超音波装置の別の装置であり、超音波装置に設けられるレセプタクルに挿入可能である。或いは、アダプター装置は超音波装置の一体部品としても提供され得る。最も好ましくは、カップリング液で充填される容器は本発明に係る容器である。