特許第6190725号(P6190725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190725
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】オープンショーケース
(51)【国際特許分類】
   A47F 3/04 20060101AFI20170821BHJP
   F25D 17/08 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A47F3/04 H
   F25D17/08 320F
   F25D17/08 320H
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-1141(P2014-1141)
(22)【出願日】2014年1月7日
(65)【公開番号】特開2015-128506(P2015-128506A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 基二
(72)【発明者】
【氏名】菊地 昭治
(72)【発明者】
【氏名】内田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】石原 茂樹
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−168554(JP,A)
【文献】 実開平07−011936(JP,U)
【文献】 特開2011−163574(JP,A)
【文献】 特開2004−044937(JP,A)
【文献】 特開2005−156034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 3/04
F25D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を載置陳列する棚を多段に備えた陳列室を有するショーケース本体と、
前記陳列室外部で、前記ショーケース本体下部に配置され冷凍サイクルを構成する蒸発器および送風機と、
前記送風機から送風され、前記蒸発器で熱交換して生成された冷気を前記陳列室外部の下部から上部に沿って略垂直方向に流通案内する冷気循環用ダクトと、
前記陳列室の各棚に対応する部位の、前記冷気循環用ダクトに開口される冷却用吹出し口と、
を備えたオープンショーケースにおいて、
上部側の棚に設けられ、棚を介して商品を加熱し温める加熱手段と、
前記上部側の棚下面にスライド自在に取付けられ、一方向にスライドしたとき、その一部が前記冷気循環用ダクトの途中まで突出し、他方向にスライドしたとき、冷気循環用ダクトを遮断して上部側への冷気の流通を阻止する冷温切換えダンパと、
前記冷温切換えダンパが一方向にスライドしたとき、前記冷温切換えダンパが前記冷気循環用ダクトの途中まで突出した位置で前記冷温切換えダンパに当接することで移動を規制する移動規制手段と、を具備し、
前記移動規制手段は、所定の前記冷却用吹出し口に沿うとともに、前記冷気循環用ダクトに突出して設けられ、冷気循環用ダクトに沿って略垂直方向に流通する冷気を冷却用吹出し口から陳列室の商品に向かって略水平方向に吹出し整流する整流板である、
または、前記上部側の棚下面に設けられたストッパ片である、
または、前記上部側の棚下面に設けられ、前記冷温切換えダンパをスライド移動可能に支持する押さえ支持具である、
の少なくともいずれか一つである
ことを特徴とするオープンショーケース。
【請求項2】
前記冷温切換えダンパの先端に、冷気循環用ダクトの背面壁に磁気吸着する固定用磁石を設けた
ことを特徴とする請求項1記載のオープンショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、陳列室の複数段の棚上に載置陳列する商品を全て冷却し、もしくは所定棚上の商品のみ温蔵するとともに、他の棚上の商品を冷却する機能を備えたオープンショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
オープンショーケースでは、陳列室の複数段の棚上に載置陳列される商品全てを冷却するようになっている。しかしながら、商品あるいは季節によっては、所定の商品のみを温める、もしくは加熱して保存する温蔵が好ましい場合もある。
【0003】
先行技術では、最下段の棚を除く各棚の棚板下面に加温用のヒータを設け、別途、陳列室背面に形成される冷気循環用ダクトに冷気遮蔽板を設けている。陳列室全体を冷却する場合には、全ての冷気遮蔽板を開放して冷気循環用ダクトに冷気を循環させる。
【0004】
また、所定位置の冷気遮蔽板で冷気循環用ダクトを閉塞し、その棚と上部側の棚に設けたヒータを発熱させるとともに、冷気遮蔽板より下部側の冷気循環用ダクトに冷気を導く。したがって、陳列室上部側が温蔵領域となり、陳列室下部側が冷蔵領域となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−63197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、冷却用吹出し口が陳列室背面壁に開口していて、陳列室の背面側から前面側へ向かって、略水平方向に冷風を吹出す。これに対して、冷気循環用ダクトは背面壁の下端部から上端部に亘って略垂直に設けられ、冷却用吹出し口とは略直交する方向に冷風を導いている。
【0007】
したがって、冷却用吹出し口と冷気循環用ダクトとは冷風の流通方向が略90°異なってしまい、冷気循環用ダクトを循環する冷気が冷却用吹出し口から出難く、充分な量を確保できない虞れがある。
【0008】
さらに、先行技術においては、冷気循環用ダクトに冷気遮断板を設けている。冷気遮断板は冷気循環用ダクトを閉塞するときに必要であるが、冷気循環用ダクトに冷気を循環させる際は何らの作用も及ぼすことなく無用であり、かえって冷気循環用ダクトに導かれる冷気の流通の障害となる。
【0009】
このような事情から、陳列室の背面壁に開口される冷却用吹出し口からの冷風を効率よく案内する機能とともに、温蔵の際は、冷気循環用ダクトに導かれる冷気を確実に遮断する機能を併せ備えた、比較的簡単な構造のオープンショーケースが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態のオープンショーケースによれば、商品を載置陳列する棚を多段に備えた陳列室を有するショーケース本体と、陳列室外部でショーケース本体下部に配置され冷凍サイクルを構成する蒸発器および送風機と、送風機から送風され蒸発器で熱交換して生成された冷気を陳列室外部の下部から上部に沿って略垂直方向に流通案内する冷気循環用ダクトと、陳列室の各棚に対応する部位の冷気循環用ダクトに開口される冷却用吹出し口とを備え、上部側の棚に設けられ棚を介して商品を加熱し温める加熱手段と、上部側の棚下面にスライド自在に取付けられ一方向にスライドしたときその一部が冷気循環用ダクトの途中まで突出し、他方向にスライドしたとき冷気循環用ダクトを遮断して上部側への冷気の流通を阻止する冷温切換えダンパと、冷温切換えダンパが一方向にスライドしたとき冷温切換えダンパが冷気循環用ダクトの途中まで突出した位置で冷温切換えダンパに当接することで移動を規制する移動規制手段と、を具備し、
前記移動規制手段は、所定の冷却用吹出し口に沿うとともに、冷気循環用ダクトに突出して設けられ、冷気循環用ダクトに沿って略垂直方向に流通する冷気を冷却用吹出し口から陳列室の商品に向かって略水平方向に吹出し整流する整流板である、または、上部側の棚下面に設けられたストッパ片である、または、上部側の棚下面に設けられ、冷温切換えダンパをスライド移動可能に支持する押さえ支持具である、の少なくともいずれか一つである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る、オープンショーケースの正面図。
図2】同実施形態に係る、オープンショーケースの側面図。
図3】同実施形態に係る、オープンショーケースの概略の縦断面図。
図4】同実施形態に係る、棚を上下逆にして示す斜視図。
図5】同実施形態に係る、冷温切換えダンパの互いに異なる状態を示す図。
図6】同実施形態の変形例に係る、オープンショーケースの概略の縦断面図。
図7】同実施形態の変形例に係る、棚を上下逆にして示す斜視図。
図8】同実施形態の変形例に係る、冷温切換えダンパの互いに異なる状態を示す図。
図9】同実施形態の別の変形例に係る、棚の上下逆にして示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態を図面にもとづいて説明する。
図1は、オープンショーケースの外観正面図。図2は、該オープンショーケースの外観側面図である。本実施形態のオープンショーケースでは、陳列室が、正面と左右両側面の三面が開口した三面開放形となっている。
【0013】
オープンショーケースを構成するショーケース本体1は、正面視および平面視で略矩形状をなし、最上部に天板2が設けられ、最下部に機械室3が設けられ、これら天板2と機械室3との間に陳列室4が設けられてなる。
【0014】
天板2の正面視は上下方向に薄く、左右幅方向に所定長さFaの矩形状をなし、天板2の下面は、商品を陳列する陳列室4の天井となる天井部4bを形成している。機械室3の正面視はある程度上下方向に厚く、左右幅方向に所定長さFaの矩形状をなし、この上面は、陳列室4の底面となる底面部4cを形成している。
【0015】
天井部4bと底面部4cの間にある陳列室4の正面視は充分に上下方向に長く、左右幅方向に所定長さFaの矩形状をなす。結局、ショーケース本体1は、左右幅方向寸法がFaとなる。また、ショーケース本体1の背面は、矩形状の平板で構成されたショーケース背面部1aとなっている。
【0016】
一方、天板2の側面視はショーケース背面部1aから所定長さだけ突出する矩形状をなし、機械室3の側面視はショーケース背面部1aから天板2の突出量よりもわずかに長い所定長さだけ突出する矩形状をなす。
【0017】
陳列室4の奥側の壁を形成している背面壁4aは、ショーケース背面部1aから前方へ所定寸法を存して形成されていて、上端部のみショーケース背面部1aと並行であるが、この下部から下端部にかけて前方へ向かって僅かに傾斜している。
【0018】
そして、陳列室4は、天井部4b、背面壁4a、底面部4cを除く、正面および左右両側面の全ては開放されていて、三面開放形となっている。
ショーケース本体背面部1aから前方へ最も突出している機械室3の前端部までの距離が、すなわちショーケース本体1の前後奥行き方向寸法Fbとなる。
【0019】
つぎに、ショーケース本体1を構成する各部位について詳述する。
図3は、ショーケース本体1の概略縦断面図である。
先に陳列室4から説明すると、天井部4bから底面部4cに亘って漸次前方へ突出するよう傾斜している背面壁4aには、複数段(図中は4段)の棚5が上下方向に所定の間隔を存して設けられる。各棚5については後述するが、背面壁4aの左右幅方向の両端よりもわずかに短い幅寸法に形成され、前方へ突出する。これら棚5上には販売される飲料等の商品が載置陳列される。
【0020】
陳列室4の背面壁4aには、各棚5上の陳列した商品に対する冷却手段として、複数の冷却用吹出し口7が設けられる。特に、図1に示すように、各棚5上の陳列商品に対して、それぞれの冷却用吹出し口7は下向きのコ字状である略逆コ字状に形成される。
【0021】
なお説明すると、冷却用吹出し口7は、陳列室4の左右両側端辺部aに沿って開口する左右一対の縦長状の側端部吹出し口と、これら側端部吹出し口の上端部相互間に亘って開口する横長状の中央部吹出し口とからなり、互いの吹出し口の端部は連設状態にある。
【0022】
また、冷却用吹出し口7の幅方向長さは、棚5の幅方向長さと同じか、それよりもわずかに長く形成される。ここでは、棚5の両端部およびその外側に、両端の側端部吹出し口が位置する。その結果、棚5のコーナー部分に載置された商品を周囲から冷却することができる。
【0023】
冷却用吹出し口7が背面壁4aに設けられる一方で、背面壁4aに設けられる棚5上に商品が並べられるところから、冷却用吹出し口7は前方の商品へ向かって開口されることになる。
【0024】
上部側の棚(ここでは、最上段の棚と、次段目の棚)5は、内部空間のある箱状になっており、その内部の周壁および/もしくは底面壁には、その棚5上の陳列した商品に対する温蔵手段としてのヒータHが埋設されている。このヒータHは、図示しないスイッチによって必要に応じて発熱/停止を制御されるようになっている。
【0025】
したがって、このオープンショーケースでは、使用者によって、(1)すべての棚5上の商品を冷蔵とする、(2)最上段の棚5上の商品のみを温蔵として、次段以下の棚5上の商品を冷蔵とする、もしくは、(3)最上段5および次段の棚5上の商品を温蔵として、上から3段目の棚5上の商品以下を冷蔵とする、の3つの冷温蔵形態に切換えできるようになっている。
なお、必要に応じて次段目以下の棚5にヒータHを組み込み、後述する冷温切換えダンパ30を設けることで、さらに温蔵の棚の範囲を拡大することも可能である。
【0026】
陳列室4の天井部4bを構成するショーケース本体天板2の正面前端辺部bに沿い照明部8を備えている。この照明部8は、陳列室4内の照明と、照明部8の前面に描かれる商品名の照明をなす。
【0027】
照明部8の奥側に隣接する天板2の下面、すなわち陳列室天井部4bには、エアカーテン吹出し口10が設けられる。このエアカーテン吹出し口10は、ショーケース本体1外部から陳列室4への外部空気の侵入を阻止する冷風を吹出すためのものである。
エアカーテン吹出し口10も、天井部4bにおける左右両側端辺部aと正面前端辺部bに沿うよう、手前側に縦辺が位置し、開放部分が奥側に位置するようにコ字を90度回転させた状態で開口される。
【0028】
なお、エアカーテン吹出し口10を構成する左右両側端辺部に沿って開口する部分は、冷却用吹出し口7を構成する左右両側端辺部に沿って開口する側端部吹出し口よりも外側に位置している。そのため、エアカーテン吹出し口10の左右部は、棚5の外側に位置し、エアカーテン風が真下の各棚5に当たらずに下方へ流れ落ちるようになっている。
【0029】
天板2の内部は、空洞になっていて、エアカーテン吹出し口10に冷風を案内するためのエアカーテン用ダクト11が形成される。このエアカーテン用ダクト11の基端部は、後述する冷気循環用ダクト12に連通する。
【0030】
一方、陳列室底面部4cを構成する機械室3の上面には、陳列室背面壁4aに設けられる冷却用吹出し口7から吹出される冷風と、陳列室天井部4bに設けられるエアカーテン吹出し口10から吹出されるエアカーテン冷風とを吸込むための、吸込み用口13が設けられる。
【0031】
この吸込み用口13は、エアカーテン吹出し口10をつなぐ直線上に障害物がないように位置決めされている。そのため、エアカーテン吹出し口10から吹出されたエアカーテン冷風は棚5に邪魔されることなく、吸込み用口13に円滑に吸込まれるようになっていて、エアカーテンを安定して形成することができる。
【0032】
機械室3の上面には上述した吸込み用口13が開口し、機械室3内部には、吸込み用口13底部と隔壁14を介した下方の空間部に、圧縮機15、凝縮器16、膨張弁17および外気送風機18が配置される。
【0033】
陳列室背面壁4aのさらに背面側は、発泡スチロール等からなる断熱材を薄い鉄板で覆った仕切り板19を境にして、前後二室に形成されている。仕切り板19の背面側である断熱材に空間を空けて上述したショーケース本体背面部1aが形成されることになる。
【0034】
陳列室背面壁4aと仕切り板19を構成する薄い鉄板との間の空間部には、上述した冷気循環用ダクト12が形成され、仕切り板19を構成する断熱材とショーケース本体背面部1aとの間の空間部には、排気用ダクト20が形成される。
【0035】
冷気循環用ダクト12の下端部は、陳列室底面部4cである機械室3上面に設けられる吸込み用口13と連通する。冷気循環用ダクト12の中間部である貯蔵室背面壁4aに上下に所定間隔を存して複数段に前記冷却用吹出し口7が開口し、この上端部はエアカーテン用ダクト11に連通する。
【0036】
冷気循環用ダクト12には、吸込み用口13と所定間隔を存した位置に冷気循環用送風機22が配置される。冷気循環用送風機22の吸込み側に吸込み用口13が開口し、排気側である冷気循環用ダクト12に蒸発器23が配置される。蒸発器23は、圧縮機15、凝縮器16、膨張弁17と共に冷媒管を介して連通され冷凍サイクルを構成する。
【0037】
最上段の冷却用吹出し口7から最下段の冷却用吹出し口7の上部に沿って横長の整流板25が設けられ、冷気循環用ダクト12内に突出している。整流板25はL字型の鋼板であり、一辺が背面壁4aの裏面である冷気循環用ダクト12側の面に溶接などで取付け固定され、他辺が冷気循環用ダクト12内へ所定の長さだけ突出する。
【0038】
整流板25は、冷気循環用ダクト12内を流れる冷気の一部を冷却用吹出し口7に導くための邪魔板の役割をするもので、各整流板25の冷気循環用ダクト12内への突出長さは、適切な風量が冷却用吹出し口7から流れ出るように設定されている。
【0039】
そして、これら最上段と最下段の冷却用吹出し口7相互間に形成される中間2段の冷却用吹出し口7に沿って、後述する冷温切換えダンパ30が設けられる。それぞれの冷温切換えダンパ30の一部は棚5の下面にスライド可能に支持され、残り一部は冷気循環用ダクト12内に突出するよう延出される。
【0040】
機械室3の前面部を構成する板体には、外気取入れ用のパンチング孔27が設けられていて、凝縮器16冷却用の外気送風機18の駆動にともなって外気を機械室3内に取入れる。機械室3内と排気用ダクト20とが連通しているとともに、排気用ダクト20の上端部は開口部fとなっていて、外部に開放している。
【0041】
つぎに、冷温切換えダンパ30の取付け構造について詳述する。
図4は、冷温切換えダンパ30を取付けた状態の棚5、すなわち最上段の棚5および次段の棚5を上下逆にして、棚5下面を上面に変えて示す斜視図である。図5(A)は、棚5と、冷温切換えダンパ30と、冷気循環用ダクト12との位置関係を示す縦断面図、図5(B)は冷温切換えダンパ30をスライドした状態での縦断面図である。
【0042】
棚5下面の左右両側部において、この前後方向一部に沿って押さえ支持具32が取付けられる。押さえ支持具32は、板金等からなり、一辺部32aが棚5下面に固定ねじ等の適宜な手段で取付け固定される。他辺部である支持辺部32bは、一辺部32aと一体に、かつ棚5下面と狭小の間隙を存するよう折曲形成される。棚5の左右両側部において、一対の押さえ支持具32の支持辺部32bは互いに対向する。
【0043】
これら押さえ支持具32の支持辺部32bと棚5下面との隙間に、冷温切換えダンパ30がスライド自在に挿入される。
冷温切換えダンパ30は、板金等からなる薄い平板体であり、前端部は下方へ折曲げられた折曲げ辺部30aとなっている。そして冷温切換えダンパ30は、押さえ支持具32の支持辺部32bと棚5下面との隙間に挿入される部位から、さらに背面側は棚5の左右両側縁よりも左右に拡大形成される。
【0044】
これは、棚5の幅方向寸法よりも冷気循環用ダクト12の幅方向寸法が大きく、冷温切換えダンパ30は、この冷気循環用ダクト12の幅全体を封鎖する必要があるためである。冷気循環用ダクト12の幅寸法を小さくすれば、それに合わせて冷温切換えダンパ30の幅寸法を小さくすればよい。
【0045】
図5(A)に示すように、陳列室4の背面壁4aには、冷温切換えダンパ30の背面側端部が挿入するダンパ差し込み口35が設けられている。このダンパ差し込み口35は、その下部に位置する冷却用吹出し口7の上部に設けられている整流板25の直上部に位置する。
【0046】
冷気循環用ダクト12が陳列室背面壁4aと仕切り板19との間に形成されるところから、冷温切換えダンパ30の背面側端部はダンパ差し込み口35を介して整流板25直上位置の冷気循環用ダクト12内に挿入される。
【0047】
冷気循環用ダクト12の幅方向寸法と冷温切換えダンパ30の幅方向寸法とは略一致するよう設定され、図5(A)の状態では冷温切換えダンパ30は冷気循環用ダクト12一部を横断する。冷温切換えダンパ30の背面側端部は下方に折曲げられる背面側折曲げ辺部30bであり、この外面に沿って固定用磁石37が取付けられる。
【0048】
冷温切換えダンパ30を手前にスライドさせると、背面側折曲げ辺部30bの内側が整流板25の端面に衝突し、それ以上は引き出せないようになっており、冷温切換えダンパ30の前方へのスライドが規制される。
すなわち、整流板25を、冷温切換えダンパ30の手前側への移動を規制する移動規制手段に兼用することで部品点数を削減している。
【0049】
冷温切換えダンパ30の左右両側部が拡大した寸法に形成される背面側端部が、固定用磁石37とともに冷気循環用ダクト12内に挿入する。ただし、固定用磁石37と冷気循環用ダクト12の背面壁(すなわち、断熱材を板金材で覆った仕切り板19)とは間隙を存する。
【0050】
このときの冷温切換えダンパ30の背面側端部と固定用磁石37の冷気循環用ダクト12への挿入寸法は、先に説明した最上段の冷却用吹出し口7と最下段の冷却用吹出し口7とに沿って設けられる整流板25の冷気循環用ダクト12内への突出寸法と一致する。
【0051】
図5(B)に示すように、冷温切換えダンパ30を背面方向へスライドし、この前端折曲げ辺部30aが押さえ支持具32の前端縁に当接する前に、固定用磁石37が冷気循環用ダクト12の背面壁に当接するよう寸法設定される。冷気循環用ダクト12の背面壁は、断熱材を板金材で覆った仕切り板19であるから、固定用磁石37は仕切り板19の板金材に磁気吸着して冷温切換えダンパ30の位置を保持する。
【0052】
このようにして構成されるオープンショーケースであり、はじめに陳列室4の棚5上に載置陳列される商品の全てを冷蔵する場合について説明する。
図5(A)に示すように、すべての冷温切換えダンパ30を最も手前側にスライドさせ、整流板25の端縁に冷温切換えダンパ30の背面側折曲げ辺部30bが当接する位置とする。この状態では、背面側折曲げ辺部30bに取付けた固定用磁石37と冷気循環用ダクト12の背面壁をなす仕切り板19とは所定の間隙が形成される。
【0053】
なお、冷温切換えダンパ30の移動規制手段である整流板25では、整流板25に当接する背面側折曲げ辺部30bと固定用磁石37の厚み分だけ、冷気循環用ダクト12に突出していることになる。
【0054】
このため、冷温切換えダンパ30の抜け止めとなる整流板25は、予め、背面側折曲げ辺部30bおよび固定用磁石37の厚みを考慮して、その整流板25の突出長さに背面側折曲げ辺部30bおよび固定用磁石37の厚みを加えた状態で、他の整流板25と同じ突出長さとなるように、突出長さを若干短めにしておくことが望ましい。
【0055】
圧縮機15を駆動し、外気送風機18と冷気循環用送風機22を駆動する。圧縮機15で冷媒が圧縮され高温高圧のガス冷媒として凝縮器16に導かれる。外気送風機18は、機械室3前面部に設けられるパンチング孔27を介して外気を機械室3内に取り込み、凝縮器16へ送風する。
【0056】
凝縮器16においてガス冷媒は外気送風機18から送風される外気と熱交換して凝縮液化する。外気は凝縮器16から圧縮機15を流通し、これらを冷却して高温となって排気用ダクト20に導かれ、ショーケース本体背面部1a上面の開口部fから外部へ排出される。
【0057】
凝縮器16から導出される液冷媒は、膨張弁17で断熱膨張し、蒸発器23に導かれる。蒸発器23において冷気循環用送風機22から送風される空気と熱交換して蒸発する。このとき、冷媒は冷気循環用ダクト12へ送風される空気から蒸発潜熱を奪って低温化させ、さらに圧縮機15に導かれて上述の系路を循環する。
蒸発器23と熱交換して低温化した冷気は冷気循環用ダクト12を上昇し、その途中で整流板25と、固定用磁石37を取付けた冷温切換えダンパ30とによって、各冷却用吹出し口7方向へ案内され、吹出し口7から前方の陳列室4へ冷風として吹出される。
【0058】
すなわち、整流板25を設けたことで、冷気循環用ダクト12を導かれる冷気一部の流通方向を略90°曲げる。冷気は、この冷却用吹出し口7から吹出されて棚5上に載置陳列された商品を効率よく冷却する。
【0059】
さらに、冷温切換えダンパ30と固定用磁石37は、冷気循環用ダクト12内に整流板25とともに突出し、冷気循環用ダクト12に導かれる冷気一部の流通方向を略90°曲げる。冷気は、この冷却用吹出し口7から吹出されて棚5上に載置陳列された商品を効率よく冷却する。
【0060】
一方、冷気循環用ダクト12の上端部に至った冷風は、冷気循環用ダクト12と連通する天板2のエアカーテン用ダクト11へ導かれ、さらに陳列室天井部4bに開口するエアカーテン吹出し口10から吹出される。
エアカーテン吹出し口10は、天井部4bにおける正面前端辺部bと左右両側端辺部aに沿うよう、略逆コ字状に開口されるところから、陳列室4の開放されている正面と左右両側面に対して吹出される。したがって、外部から陳列室4への外気の侵入を効率良く遮断できる。
【0061】
エアカーテン吹出し口10から吹出される冷風と、冷却用吹出し口7から吹出される冷風は、ともに吸込み用口13に吸込まれる。それぞれの機能を果たした冷風は混合して、効率良く吸込み用口13に吸込まれることとなり、さらに冷気循環用ダクト12に配置される蒸発器23に導かれて、上述の系路を循環する。
【0062】
つぎに、陳列室4に上下4段に設けられる棚5のうち、たとえば最上段の棚5と次段の棚5に載置陳列される商品を温める温蔵領域とし、三段目の棚5と最下段の棚5に載置陳列される商品は冷却する冷蔵領域とする場合について説明する。
【0063】
このときは、最上段の棚5に設けられるヒータHと、次段の棚5に設けられるヒータHのスイッチをオンに切換え、発熱させる。つぎに、少なくとも次段の棚5に設けられる冷温切換えダンパ30を以下に述べるように操作する。同時に、最上段の棚5に設けられる冷温切換えダンパ30も同様に操作してもよい。
【0064】
すなわち、図5(B)に示すように、冷温切換えダンパ30の前端折曲げ辺部30aを摘まんで背面方向へ押し出す。冷温切換えダンパ30はスライドして、冷温切換えダンパ30の背面側折曲げ辺部30bに取付けられる固定用磁石37が仕切り板19を構成する板金材に磁気吸着する。したがって、冷気循環用ダクト12は冷温切換えダンパ30と固定用磁石37によって上下に遮断される。
【0065】
冷凍サイクル運転が行われると、蒸発器23を流通した冷気は冷気循環用ダクト12を上昇し、一部の冷気は最下段の冷却用吹出し口7に沿って設けられる整流板25に案内される。整流板25は冷気の流通方向を効率よく90°曲げるので、冷却用吹出し口7から吹出されて最下段の棚5上の商品を冷却することは変わりがない。
【0066】
残りの冷気は冷気循環用ダクト12を上昇するが、三段目の冷却用吹出し口7に沿って取付けられるとともに、冷気循環用ダクト12を遮断する冷温切換えダンパ30と固定用磁石37により流通を阻まれる。その結果、冷気は冷温切換えダンパ30に沿って案内されることとなり、冷却用吹出し口7から吹出されて三段目の棚5上の商品を冷却する。
【0067】
三段目の棚5上の商品および最下段の棚5上の商品を冷却した冷風は、吸込み用口13に吸込まれ、冷気循環用送風機22を介し蒸発器23を流通して上述の系路を循環する。したがって、このときはエアカーテン吹出し口7からの吹出しはない。
【0068】
その一方で、最上段の棚5上と、次段の棚5上にそれぞれ載置陳列される商品は、その棚5に設けたヒータHが発熱することで加温され、温蔵保存される。それぞれの棚5に対応する冷却用吹出し口7からの冷風吹出しが無いから、各棚5上の商品は無駄なく効率よく温蔵されることとなる。
【0069】
なお、冷温切換えダンパ30と固定用磁石37によって冷気循環用ダクト12は上下に遮断されるので、エアカーテン吹出し口10からの冷風吹出しは無くなるが、最上段の棚5よりも下の棚5では、エアカーテンが無くとも、陳列室4から外部への冷気の漏れが少いため、ほとんど冷蔵効率は低下しないですむ。
【0070】
このように、冷温切換えダンパ30は、冷気循環用ダクト12を開放している状態では、冷気循環用ダクト12内に突出して、整流板25とともに冷気循環用ダクト12内を流通する冷気を陳列室背面壁4aに設けられる冷却用吹出し口7へ案内し、対応する棚5上に載置陳列される商品を効率よく冷却する。
【0071】
対応する棚5上に載置陳列する商品を温蔵する場合は、冷温切換えダンパ30で冷気循環用ダクト12を遮断して冷気の循環を阻止し、その棚5に設けられるヒータHの発熱を有効なものとする。
【0072】
冷温切換えダンパ30の冷気循環用ダクト12内への突出端部に固定用磁石37を取付けたから、冷気循環用ダクト12を冷温切換えダンパ30で遮断する際に、固定用磁石37が冷気循環用ダクト12の背面壁である仕切り板19を構成する板金材に磁気吸着して、冷温切換えダンパ30の位置を保持し、変動やガタ付きが無い。
また、冷温切換えダンパ30の手前側への引き出しに対して、整流板25が抜け止めとなるため、別の抜け止めのための別の部品を設ける必要がなく、構成が簡素化できる。
【0073】
図6ないし図8を用いて、変形例を説明する。
本変形例においては、図6に示すように冷温切換えダンパ30が設けられる最上段および次段の棚5の下部に設けられた冷却用吹出し口7、すなわち次段の棚5および3段目の棚5上の商品を冷却するための冷却用吹出し口7に対応する位置には、整流板25が設けられていない。
【0074】
一方、図6,7に示すように冷温切換えダンパ30が設けられる最上段および次段の棚5の下面で、棚5の正面端部から所定間隔を存して平行に、一対のストッパ片33が棚5下面に固定ねじ等の適宜な手段で取付け固定される。
【0075】
それぞれのストッパ片33は単純に棚5下面から下方へ突出するだけのものである。これらストッパ片33は、冷温切換えダンパ30のスライド移動を規制する移動規制手段の機能を有し、冷温切換えダンパ30を手前に引き出すと、その前端折曲げ辺部30aがストッパ片33に衝突して、それ以上手前に引き出すことができなくなる。
【0076】
棚5下面に設けられる押さえ支持具32および固定用磁石37を取付けた冷温切換えダンパ30自体の寸法形状は、先に説明したものと比較して何らの変りもない。陳列室背面壁4aにはダンパ差し込み口35が設けられ、冷温切換えダンパ30が挿入されることも同様である。
【0077】
すなわち、ここでは陳列室背面壁4aに設けられるダンパ差し込み口35は、単なる開口であって、整流板25は設けられていない。この変形例ではストッパ片33の取付け位置が重要である。
図8に示すように、ストッパ片33は、冷温切換えダンパ30を手前に引き出し、この前端折曲げ辺部30aがストッパ片33に当接する位置となった際に、冷温切換えダンパ30が上述の実施形態と同じ位置になるように取付けられる。
【0078】
この状態は、図8に実線で表しているように、冷温切換えダンパ30の後端が冷気循環用ダクト12内に適切な長さだけ突出し、整流板25の機能を果たす。したがって、この変形例では、冷温切換えダンパ30が設けられる部分においては、整流板25を設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
【0079】
なお、上側の棚5を温蔵に切換えるために冷温切換えダンパ30を押し込んだ場合には、上述の実施形態と同じように、冷温切換えダンパ30の冷気循環用ダクト12内突出端縁先端に設けられた固定用磁石37が仕切り板9に当接し、それより上部側の冷気循環用ダクト12に冷気が流れるのを阻止する。
【0080】
さらに簡素化を図ることができる他の変形例を、図9を用いて説明する。
この変形例は、冷温切換えダンパ30は、棚5の幅よりも冷気循環用ダクト12の幅が大きい場合に適用できる。
【0081】
この場合、冷温切換えダンパ30は、押さえ支持具32の支持辺部32bと棚5下面との隙間に挿入される部位から、さらに背面側は棚5の左右両側縁よりも左右に拡大形成される。
そこで、冷温切換えダンパ30の拡大部分の端面30cと押さえ支持具32の後端部32cを当接させて冷温切換えダンパ30の手前へのスライドの移動を規制することで、ストッパ片33をなくしている。
【0082】
この構成によれば、冷温切換えダンパ30端面30cと押さえ支持具32の後端部32cの位置を適切に設定することで、整流板25およびストッパ片33を不要とすることができる。
すなわち、冷温切換えダンパ30を手前に引き出し、冷温切換えダンパ30の拡大部分の端面30cと押さえ支持具32の後端部32cが当接する位置となった際に、冷温切換えダンパ30が上述の実施形態や変形例と同じ位置になるようにする。
【0083】
ここで、押さえ支持具32は、冷温切換えダンパ30を棚5の下面にスライド可能に支持するだけでなく、冷温切換えダンパ30の手前側へのスライド移動を規制する移動規制手段としても機能することになる。
その結果、冷温切換えダンパ30の後端が、冷気循環用ダクト12内に適切な長さだけ突出し、整流板25の機能を果たす。したがって、変形例では、冷温切換えダンパ30が設けられる部分においては、別途、整流板25を設ける必要がなくなる。
【0084】
一方、冷温切換えダンパ30を押し込んだ場合には、冷温切換えダンパ30先端の固定用磁石37が、仕切り板9に当接し、それより上の冷気循環用ダクト12に冷気が流れるのを阻止することができる。
【0085】
また、冷温切換えダンパ30の冷気循環用ダクト12内突出端縁に固定用磁石37を取付けたが、必ずしも固定用磁石37は必要としない。この場合、仕切り板19は断熱材のみで形成でき、コスト低減を図れるとともに、冷温切換えダンパ30の突出端縁を位置決めするための凹部を設けることにより、冷温切換えダンパ30の位置決めが確実なものとなる。
【0086】
なお、オープンショーケースとして三面開放形のものを説明したが、これに限定されるものではなく、前面側のみ開放する、通常(一面開放)タイプのオープンショーケースにも適用できる。
【0087】
以上、本実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、実施形態の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
5…棚、4…陳列室、1…ショーケース本体、23…蒸発器、22…冷気循環用送風機、12…冷気循環用ダクト、7…冷却用吹出し口、H…ヒータ(加熱手段)、30…冷温切換えダンパ、37…固定用磁石、25…整流板(移動規制手段)、33…ストッパ片(移動規制手段)、32…押さえ支持具(移動規制手段)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9