(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回生モータは、前記二つの回路系統の一方の前記回生通路からの作動流体が合流する合流回生通路を通じて前記アクチュエータから排出される作動流体によっても駆動され、
前記回生通路切換弁は、前記合流回生通路内の作動流体の前記回生モータへの流入量が規定値を超えた場合に前記合流回生通路をタンクに連通させるタンク連通位置を更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のハイブリッド建設機械の制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
(第一の実施の形態)
以下、
図1及び
図2を参照して、本発明の第一の実施の形態に係るハイブリッド建設機械の制御システム100について説明する。ここでは、ハイブリッド建設機械が油圧ショベルである場合について説明する。油圧ショベルでは、作動流体として作動油が用いられる。
【0012】
まず、
図1を参照して、ハイブリッド建設機械の制御システム100の全体構成について説明する。
【0013】
油圧ショベルは、作動油を吐出して各アクチュエータを駆動する第一メインポンプMP1及び第二メインポンプMP2と、第一メインポンプMP1から作動油が供給される第一回路系統S1と、第二メインポンプMP2から作動油が供給される第二回路系統S2と、を備える。
【0014】
第一メインポンプMP1及び第二メインポンプMP2は、斜板の傾転角が調整可能な可変容量型ポンプである。第一メインポンプMP1及び第二メインポンプMP2は、エンジンEによって駆動されて同軸回転する。
【0015】
第一回路系統S1は、上流側から順に、旋回モータRMを制御する操作弁1と、アームシリンダ(図示省略)を制御する操作弁2と、流体圧シリンダとしてのブームシリンダBCを制御するブーム二速用の操作弁3と、ブレーカやクラッシャ等の予備用アタッチメント(図示省略)を制御する操作弁4と、左走行用である第一走行用モータ(図示省略)を制御する操作弁5と、を有する。
【0016】
各操作弁1〜5は、第一メインポンプMP1から各アクチュエータへ導かれる作動油の流量を制御して、各アクチュエータの動作を制御する。各操作弁1〜5は、油圧ショベルのオペレータが操作レバーを手動操作することに伴って供給されるパイロット圧によって操作される。
【0017】
各操作弁1〜5は、互いに並列なメイン通路としての中立流路6とパラレル通路7とを通じて第一メインポンプMP1に接続されている。中立流路6における操作弁1の上流側には、中立流路6の作動油圧が所定のメインリリーフ圧を超えると開弁して作動油圧を所定のメインリリーフ圧以下に保つメインリリーフ弁8が設けられる。所定のメインリリーフ圧は、各操作弁1〜5の最低作動圧を充分に確保できる程度に高く設定される。
【0018】
中立流路6における操作弁5の下流側には、パイロット圧(ネガティブコントロール圧)を生成するための絞り9が設けられる。絞り9は、通過する流量が多ければ上流側に高いパイロット圧を生成し、通過する流量が少なければ上流側に低いパイロット圧を生成する。
【0019】
絞り9には、絞り9の上流側に生成されるパイロット圧が所定のパイロットリリーフ圧を超えると開弁してパイロット圧を所定のパイロットリリーフ圧以下に保つパイロットリリーフ弁10が並列に設けられる。なお、所定のパイロットリリーフ圧は、絞り9に異常圧が生じない程度にメインリリーフ弁8のメインリリーフ圧より低く設定される。
【0020】
中立流路6は、操作弁1〜5の全てが中立位置又は中立位置近傍にある場合には、第一メインポンプMP1から吐出された作動油の全部又は一部をタンクTに導く。この場合、絞り9を通過する作動油の流量が多くなるため、高いパイロット圧が生成される。
【0021】
一方、操作弁1〜5がフルストロークに切り換えられると、中立流路6が閉ざされて作動油の流通がなくなる。この場合、絞り9を通過する作動油の流量がほとんどなくなり、パイロット圧はゼロを保つことになる。ただし、操作弁1〜5の操作量によっては、第一メインポンプMP1から吐出された作動油の一部がアクチュエータに導かれ、残りが中立流路6からタンクTに導かれるため、絞り9は、中立流路6の作動油の流量に応じたパイロット圧を生成する。つまり、絞り9は、操作弁1〜5の操作量に応じたパイロット圧を生成する。
【0022】
絞り9の上流側にはパイロット流路11が接続される。パイロット流路11には、絞り9によって生成されたパイロット圧が導かれる。パイロット流路11は、第一メインポンプMP1の容量(斜板の傾転角)を制御するレギュレータ12に接続される。
【0023】
レギュレータ12は、パイロット流路11のパイロット圧と比例(比例定数は負の数)して第一メインポンプMP1の斜板の傾転角を制御して、第一メインポンプMP1の一回転あたりの押し除け量を制御する。したがって、操作弁1〜5がフルストロークに切り換えられて絞り9を通過する作動油の流れがなくなり、パイロット流路11のパイロット圧がゼロになれば、第一メインポンプMP1の斜板の傾転角が最大になり、一回転あたりの押し除け量が最大になる。
【0024】
パイロット流路11には、パイロット流路11の圧力を検出する圧力センサ13が設けられる。圧力センサ13によって検出した圧力信号はコントローラCに出力される。パイロット流路11のパイロット圧は、操作弁1〜5の操作量に応じて変化する。よって、圧力センサ13によって検出される圧力信号は、第一回路系統S1の要求流量に比例する。
【0025】
第二回路系統S2は、上流側から順に、右走行用である第二走行用モータ(図示省略)を制御する操作弁14と、バケットシリンダ(図示省略)を制御する操作弁15と、ブームシリンダBCを制御する操作弁16と、アームシリンダ(図示省略)を制御するアーム二速用の操作弁17と、を有する。
【0026】
各操作弁14〜17は、第二メインポンプMP2から各アクチュエータへ導かれる作動油の流量を制御して、各アクチュエータの動作を制御する。各操作弁14〜17は、油圧ショベルのオペレータが操作レバーを手動操作することに伴って供給されるパイロット圧によって操作される。
【0027】
各操作弁14〜17は、メイン通路としての中立流路18を通じて第二メインポンプMP2に接続されている。また、操作弁14〜16は、中立流路18と並列なパラレル通路29を通じて第二メインポンプMP2に接続されている。中立流路18における操作弁14の上流側には、中立流路18の作動油圧が所定のメインリリーフ圧を超えると開弁して、作動油圧をメインリリーフ圧以下に保つメインリリーフ弁19が設けられる。所定のメインリリーフ圧は、各操作弁14〜17の最低作動圧を充分に確保できる程度に高く設定される。
【0028】
なお、メインリリーフ弁8,19は、第一回路系統S1と第二回路系統S2との少なくともいずれか一方に設けられればよい。第一回路系統S1と第二回路系統S2のうち一方のみにメインリリーフ弁が設けられる場合には、第一回路系統S1と第二回路系統S2の他方からも、作動油が同じメインリリーフ弁に導かれるように接続される。このように、単一のメインリリーフ弁が設けられる場合には、メインリリーフ弁は、第一回路系統S1と第二回路系統S2とで共用される。
【0029】
中立流路18における操作弁17の下流側には、パイロット圧(ネガティブコントロール圧)を生成するための絞り20が設けられる。絞り20は、第一メインポンプMP1側の絞り9と同じ機能を有する。
【0030】
絞り20には、絞り20の上流側に生成されるパイロット圧が所定のパイロットリリーフ圧を超えると開弁してパイロット圧を所定のパイロットリリーフ圧以下に保つパイロットリリーフ弁21が並列に設けられる。なお、所定のパイロットリリーフ圧は、絞り20に異常圧が生じない程度にメインリリーフ弁19のメインリリーフ圧より低く設定される。
【0031】
絞り20の上流側にはパイロット流路22が接続され、パイロット流路22には絞り20によって生成されたパイロット圧が導かれる。パイロット流路22は、第二メインポンプMP2の容量(斜板の傾転角)を制御するレギュレータ23に接続される。
【0032】
レギュレータ23は、パイロット流路22のパイロット圧と比例(比例定数は負の数)して第二メインポンプMP2の斜板の傾転角を制御して、第二メインポンプMP2の一回転あたりの押し除け量を制御する。したがって、操作弁14〜17がフルストロークに切り換えられて絞り20を通過する作動油の流れがなくなり、パイロット流路22のパイロット圧がゼロになれば、第二メインポンプMP2の斜板の傾転角が最大になり、一回転あたりの押し除け量が最大になる。
【0033】
パイロット流路22には、パイロット流路22の圧力を検出する圧力センサ24が設けられる。圧力センサ24によって検出した圧力信号はコントローラCに出力される。パイロット流路22のパイロット圧は、操作弁14〜17の操作量に応じて変化する。よって、圧力センサ24によって検出される圧力信号は、第二回路系統S2の要求流量に比例する。
【0034】
エンジンEには、エンジンEの余力を利用して発電する発電機25が設けられる。発電機25で発電された電力は、バッテリチャージャ26を介してバッテリ27に充電される。バッテリチャージャ26は、通常の家庭用の電源28に接続した場合にも、バッテリ27に電力を充電できる。
【0035】
次に、旋回モータRMについて説明する。
【0036】
旋回モータRMは、旋回モータRMを駆動するための旋回回路30に設けられる。旋回回路30は、第一メインポンプMP1と旋回モータRMとを接続し操作弁1が介装される一対の給排通路31,32と、給排通路31,32のそれぞれに接続され設定圧力で開弁するリリーフ弁33,34と、を備える。
【0037】
操作弁1は、三位置の切換弁である。操作弁1が中立位置である場合には、操作弁1のアクチュエータポートが閉じられるため、旋回モータRMに対する作動油の給排が遮断され、旋回モータRMは停止状態を保つ。
【0038】
操作弁1が一方の位置に切り換わると、給排通路31が第一メインポンプMP1に接続され、給排通路32がタンクTに連通する。これにより、給排通路31を通じて作動油が供給されて旋回モータRMが回転すると共に、旋回モータRMからの戻り作動油が給排通路32を通じてタンクTに排出される。一方、操作弁1が他方の位置に切り換わると、給排通路32が第一メインポンプMP1に接続され、給排通路31がタンクTに連通し、旋回モータRMは逆向きに回転する。
【0039】
旋回モータRMの旋回動作時に、給排通路31,32の旋回圧力がリリーフ弁33,34の設定圧力に達した場合には、リリーフ弁33,34が開弁して高圧側の余剰流量が低圧側に導かれる。
【0040】
旋回モータRMの旋回動作中に、操作弁1が中立位置に切り換わると、操作弁1のアクチュエータポートが閉じられる。これにより、給排通路31,32と、旋回モータRMと、リリーフ弁33,34と、によって閉回路が構成される。このように、操作弁1のアクチュエータポートが閉じられても、旋回モータRMは慣性エネルギによって回転し続けてポンプ作用を発揮する。
【0041】
これにより、旋回動作時には低圧であった給排通路31,32の一方が高圧となり、旋回動作時には高圧であった給排通路31,32の他方が低圧となる。よって、旋回モータRMにブレーキ力が作用しブレーキ動作が行われる。この際、給排通路31,32のブレーキ圧力がリリーフ弁33,34の設定圧力に達した場合には、リリーフ弁33,34が開弁して高圧側のブレーキ流量が低圧側に導かれる。
【0042】
旋回モータRMのブレーキ動作時に、旋回モータRMの吸込流量が不足した場合には、タンクTから給排通路31,32への作動油の流れのみを許容するチェック弁35,36を通じてタンクTの作動油が吸い込まれる。
【0043】
次に、ブームシリンダBCについて説明する。
【0044】
ブームシリンダBCの動作を制御する操作弁16は、三位置の切換弁である。操作弁16が中立位置から一方の位置に切り換わると、第二メインポンプMP2から吐出された作動油が給排通路38を通じてブームシリンダBCのピストン側室39に供給されると共に、ロッド側室40からの戻り作動油が給排通路37を通じてタンクTに排出される。よって、ブームシリンダBCは伸長する。
【0045】
一方、操作弁16が他方の位置に切り換わると、第二メインポンプMP2から吐出された作動油が給排通路37を通じてブームシリンダBCのロッド側室40に供給されると共に、ピストン側室39からの戻り作動油が給排通路38を通じてタンクTに排出される。よって、ブームシリンダBCは収縮する。
【0046】
操作弁16が中立位置に切り換わると、ブームシリンダBCに対する作動油の給排が遮断され、ブームは停止した状態を保つ。なお、ブーム二速用の操作弁3は、オペレータによる操作レバーの操作量が所定量より大きい場合に切り換わる。
【0047】
操作弁16を中立位置に切り換えブームの動きを止めた場合、バケット,アーム,及びブーム等の自重によって、ブームシリンダBCには収縮する方向の力が作用する。このように、ブームシリンダBCは、操作弁16が中立位置の場合にはピストン側室39によって負荷を保持するものであり、ピストン側室39が負荷側圧力室となる。
【0048】
ハイブリッド建設機械の制御システム100は、旋回回路30及びブームシリンダBCからの作動油のエネルギを回収してエネルギ回生を行う回生制御を行う回生装置を備える。以下では、その回生装置について説明する。
【0049】
回生装置による回生制御は、コントローラCによって行われる。コントローラCは、回生制御を実行するCPU(中央演算処理装置)と、CPUの処理動作に必要な制御プログラムや設定値等が記憶されたROM(リードオンリメモリ)と、各種センサが検出した情報を一時的に記憶するRAM(ランダムアクセスメモリ)と、を備える。
【0050】
まず、旋回回路30からの作動油を利用してエネルギ回生を行う旋回回生制御について説明する。
【0051】
旋回モータRMに接続される給排通路31,32には、それぞれ分岐通路41,42が接続される。分岐通路41,42は合流して、旋回回路30からの作動油を回生用の回生モータMに導くための旋回回生通路43に接続される。分岐通路41,42のそれぞれには、給排通路31,32から旋回回生通路43への作動油の流れのみを許容するチェック弁44,45が設けられる。旋回回生通路43は、合流回生通路46を通じて回生モータMに接続される。
【0052】
回生モータMは、斜板の傾転角が調整可能な可変容量型モータであり、発電機兼用の回転電機としての電動モータ47と同軸回転するように連結されている。回生モータMは、旋回モータRMやブームシリンダBCから合流回生通路46を通じて排出される作動油によって駆動される。回生モータMは、電動モータ47を駆動可能である。電動モータ47が発電機として機能した場合には、電動モータ47で発電された電力はインバータ48を介してバッテリ27に充電される。回生モータMと電動モータ47とは、直接連結されてもよいし、減速機を介して連結されてもよい。
【0053】
回生モータMの上流には、回生モータMへの作動油の供給量が充分でなくなった場合に、タンクTから合流回生通路46に作動油を吸い上げて回生モータMへ供給する吸上通路78が接続される。吸上通路78には、タンクTから合流回生通路46への作動油の流れのみを許容するチェック弁78aが設けられる。
【0054】
旋回回生通路43には、コントローラCから出力される信号にて切り換え制御される電磁切換弁49が設けられる。電磁切換弁49とチェック弁44,45との間には、旋回モータRMの旋回動作時の旋回圧力又はブレーキ動作時のブレーキ圧力を検出する圧力センサ50が設けられる。圧力センサ50にて検出された圧力信号は、コントローラCに出力される。
【0055】
電磁切換弁49は、ソレノイドが非励磁のときに閉位置(
図1に示す状態)に設定され、旋回回生通路43を遮断する。電磁切換弁49は、ソレノイドが励磁されたときに開位置に切り換えられ、旋回回生通路43を開通する。電磁切換弁49は、開位置に切り換えられると、旋回回路30からの作動油を回生モータMに導く。これにより、旋回回生が行われる。
【0056】
ここで、旋回回路30から回生モータMへの作動油の経路について説明する。例えば、給排通路31,32を通じて供給される作動油によって旋回モータRMが旋回する旋回動作時には、給排通路31,32の余剰油が分岐通路41,42及びチェック弁44,45を通じて旋回回生通路43に流入し、回生モータMに導かれる。また、給排通路31,32を通じて供給される作動油によって旋回モータRMが旋回している際に操作弁1が中立位置に切り換えられるブレーキ動作時には、旋回モータRMのポンプ作用によって吐出された作動油が分岐通路41,42及びチェック弁44,45を通じて旋回回生通路43に流入し、回生モータMに導かれる。
【0057】
旋回回生通路43における電磁切換弁49の下流側には、安全弁51が設けられる。安全弁51は、例えば旋回回生通路43の電磁切換弁49などに異常が生じた場合に、分岐通路41,42の圧力を維持して旋回モータRMが逸走することを防止するものである。
【0058】
コントローラCは、圧力センサ50の検出圧力が旋回回生開始圧力以上になったと判定した場合には、電磁切換弁49のソレノイドを励磁する。これにより、電磁切換弁49が開位置に切り換わって旋回回生が開始される。
【0059】
コントローラCは、圧力センサ50の検出圧力が旋回回生開始圧力未満になったと判定した場合には、電磁切換弁49のソレノイドを非励磁にする。これにより、電磁切換弁49が閉位置に切り換わって旋回回生が停止する。
【0060】
次に、ブームシリンダBCからの作動油を利用してエネルギ回生を行うブーム回生制御について説明する。
【0061】
ブームシリンダBCのピストン側室39と操作弁16とを接続する給排通路38には、コントローラCの出力信号によって開度が制御される電磁比例絞り弁52が設けられる。電磁比例絞り弁52はノーマル状態で全開位置を保つ。
【0062】
給排通路38には、ピストン側室39と電磁比例絞り弁52との間から分岐するブーム回生通路53が接続される。ブーム回生通路53は、ピストン側室39からの戻り作動油を回生モータMに導くための通路である。旋回回生通路43とブーム回生通路53とは合流して合流回生通路46に接続される。
【0063】
ブーム回生通路53には、コントローラCから出力される信号にて切り換え制御される電磁切換弁54が設けられる。電磁切換弁54は、ソレノイドが非励磁のときに閉位置(
図1に示す状態)に切り換えられ、ブーム回生通路53を遮断する。電磁切換弁54は、ソレノイドが励磁されたときに開位置に切り換えられ、ブーム回生通路53を開通してピストン側室39から合流回生通路46への作動油の流れのみを許容する。
【0064】
操作弁16には、操作弁16の操作方向とその操作量を検出するセンサ(図示省略)が設けられる。センサにて検出された信号はコントローラCに出力される。コントローラCは、センサによって検出された操作弁16の操作方向とその操作量に基づいて、ブームシリンダBCの伸縮方向とその伸縮量を演算する。
【0065】
なお、上記センサに代えて、ブームシリンダBCにピストンロッドの移動方向とその移動量を検出するセンサを設けてもよいし、又は、操作レバーに操作方向とその操作量を検出するセンサを設けてもよい。
【0066】
コントローラCは、センサの検出結果に基づいて、オペレータがブームシリンダBCを伸長させようとしているか、又は収縮させようとしているかを判定する。コントローラCは、ブームシリンダBCの伸長動作を判定すると、電磁比例絞り弁52をノーマル状態である全開位置に保つと共に、電磁切換弁54を閉位置に保つ。
【0067】
一方、コントローラCは、ブームシリンダBCの収縮動作を判定すると、操作弁16の操作量に応じてオペレータが求めているブームシリンダBCの収縮速度を演算すると共に、電磁比例絞り弁52を閉じて電磁切換弁54を開位置に切り換える。これにより、ブームシリンダBCからの戻り作動油の全量が回生モータMに導かれ、ブーム回生が行われる。
【0068】
回生モータMで消費する流量が、オペレータが求めたブームシリンダBCの収縮速度を維持するために必要な流量よりも少ない場合には、コントローラCは、操作弁16の操作量,回生モータMの斜板の傾転角,及び電動モータ47の回転速度等に基づいて、回生モータMが消費する流量を超えた分の流量をタンクTに戻すように電磁比例絞り弁52の開度を制御する。これにより、オペレータが求めるブームシリンダBCの収縮速度が維持される。
【0069】
旋回モータRMを旋回させながら、ブームシリンダBCを下降させる場合には、旋回モータRMからの戻り作動油と、ブームシリンダBCからの戻り作動油とが、合流回生通路46で合流して回生モータMに供給される。
【0070】
このとき、旋回回生通路43の圧力が上昇して、旋回モータRMの旋回圧又はブレーキ圧よりも高くなったとしても、旋回回生通路43内の作動油はチェック弁44,45によって逆流が阻止されるため、旋回モータRMには影響を及ぼさない。また、旋回回生通路43の圧力が低下して、旋回圧又はブレーキ圧よりも低くなると、コントローラCは、圧力センサ50からの圧力信号に基づいて電磁切換弁49を閉じる。
【0071】
したがって、旋回モータRMの旋回動作とブームシリンダBCの下降動作とを同時に行う場合には、旋回圧又はブレーキ圧にかかわりなく、ブームシリンダBCに要求される下降速度を基準にして回生モータMの傾転角が規定される。
【0072】
以下、
図1及び
図2を参照して、中立流路18からの作動油のエネルギを回収してエネルギ回生を行う余剰流量回生制御と、アシストポンプとしてのサブポンプSPからの作動油のエネルギによって第一メインポンプMP1及び第二メインポンプMP2の出力をアシストするアシスト制御と、を行うバルブ装置101について説明する。
【0073】
バルブ装置101は、余剰流量回生制御時に切り換えられる回生通路切換弁58と、アシスト制御時に切り換えられる高圧選択切換弁71と、を備える。
【0074】
まず、余剰流量回生制御について説明する。
【0075】
ハイブリッド建設機械の制御システム100は、中立流路18からの作動油のエネルギを回収してエネルギ回生を行う余剰流量回生制御を実行する。余剰流量回生制御は、旋回回生制御及びブーム回生制御と同様にコントローラCによって行われる。
【0076】
第二回路系統S2の中立流路18における操作弁14の上流側と合流回生通路46とは、回生通路としての通路56によって接続される。通路56は、中立流路18の第二メインポンプMP2と操作弁14との間から分岐して合流回生通路46に接続される。通路56には、当該通路56を開閉可能な回生通路切換弁58が介装される。同様に、回生通路としての通路55は、中立流路6の第一メインポンプMP1と操作弁1との間から分岐する。
【0077】
図2に示すように、回生通路切換弁58は、六ポート二位置のスプール式の切換弁である。回生通路切換弁58には、スプールの両端に臨んでパイロット室58a,58bがそれぞれ設けられる。スプールは、一端に設けられるスプリング58dによって一方向に付勢される。回生通路切換弁58は、スプリング58dのばね力によって、通常はノーマル位置(
図1及び
図2に示す状態)に保持される。
【0078】
回生通路切換弁58は、ノーマル位置に保持されている状態では、中立流路18から合流回生通路46への作動油の流れを遮断する。回生通路切換弁58は、どの位置に切り換えられている状態でも、高圧選択切換弁71と連通する中立流路102と通路56とを連通させる。しかしながら、高圧選択切換弁71側のポートは、どの位置に切り換えられている状態でも閉じられている。よって、中立流路102の作動油が高圧選択切換弁71に流入することはない。
【0079】
回生通路切換弁58は、一方のパイロット室58aにパイロット圧が供給されると回生位置(
図1中左側位置)に切り換わって、中立流路18から合流回生通路46への作動油の流れを許容し、パイロット圧の供給が遮断されるとノーマル位置に切り換わって通路56を閉塞する。
【0080】
パイロット室58aに供給されるパイロット圧は、パイロット圧源PPから第一パイロット通路59を通じて供給される。第一パイロット通路59には、コントローラCからの指令信号に応じて比例したパイロット圧力を出力可能な電磁弁としての電磁比例減圧弁61が介装される。電磁比例減圧弁61は、コントローラCから出力される指令信号に基づいて、ソレノイドが励磁されるとパイロット圧源PPを減圧して指令値に応じたパイロット圧を発生し、パイロット圧を第一パイロット通路59に供給する。
【0081】
ここで、第二回路系統S2の中立流路18における操作弁17より下流側であってパイロット流路22の接続部より上流側には、中立流路18を開閉可能なメイン通路切換弁としての中立カット弁63が介装される。中立カット弁63は、パイロット室63aにパイロット圧が供給されると閉位置に切り換わって中立流路18を閉塞し、パイロット圧の供給が遮断されると開位置に切り換わって中立流路18を開放する。
【0082】
中立カット弁63のパイロット室63aは、第一パイロット通路59に接続される。よって、電磁比例減圧弁61により回生通路切換弁58の一方のパイロット室58aにパイロット圧が供給されるときに、同時に中立カット弁63のパイロット室63aにもパイロット圧が供給される。つまり、中立カット弁63は、回生通路切換弁58と連動して動作する。
【0083】
第一回路系統S1の中立流路6における第一メインポンプMP1と操作弁1との間には、中立流路6の作動油圧(第一メインポンプMP1の吐出圧)を検出する圧力センサ64が設けられる。同様に、第二回路系統S2の中立流路18における第二メインポンプMP2と操作弁14との間には、中立流路18の作動油圧(第二メインポンプMP2の吐出圧)を検出する圧力検出器としての圧力センサ65が設けられる。各圧力センサ64,65によって検出された圧力信号は、コントローラCに出力される。
【0084】
コントローラCは、第二回路系統S2の中立流路18の作動油圧が所定の設定圧に達した場合に、電磁比例減圧弁61のソレノイドを励磁する。これにより、回生通路切換弁58の一方のパイロット室58aにパイロット圧が供給され、回生通路切換弁58が回生位置に切り換えられる。そして、中立流路18の作動油は通路56を通って合流回生通路46に導かれ、第二回路系統S2の余剰流量回生が行われる。なお、所定の設定圧は、メインリリーフ弁19のメインリリーフ圧より少しだけ低い圧に設定される。
【0085】
コントローラCは、電磁比例減圧弁61を切り換えて余剰流量回生制御を行っているとき、中立流路6,18の作動油圧が操作弁1〜5、14〜17の最低作動圧以上となるように、回生モータMの斜板の傾転角をレギュレータ66によって制御する。
【0086】
一方、回生通路切換弁58の他方のパイロット室58bは、第二パイロット通路60を介してタンクTに接続している。回生通路切換弁58では、他方のパイロット室58bにパイロット圧を供給することはない。パイロット室58bは、回生通路切換弁58が回生位置からノーマル位置に切り換わるときにタンクTから吸い上げられた作動油が流入したり、回生通路切換弁58のスプールの隙間から漏れ出した作動油をタンクTに戻したりするものである。
【0087】
次に、余剰流量回生制御の作用効果について説明する。
【0088】
中立流路18の作動油圧が所定の設定圧に達した場合、当該中立流路18に接続される通路56の回生通路切換弁58が回生位置に切り換わり、第二メインポンプMP2の高圧の作動油が回生モータMに導かれる。
【0089】
ここで、従来は、ブームシリンダBCや旋回モータRMの作動中には、ブーム回生制御や旋回回生制御によってブームシリンダBCや旋回モータRMの余剰流量からエネルギ回生を行うことは可能であったが、ブームシリンダBCや旋回モータRM以外のアクチュエータが操作されている場合には、エネルギ回生を行うことができなかった。
【0090】
これに対して、本実施の形態では、例えば、バケットやアームなどが操作されている状態で中立流路18の作動油圧が設定圧に達した場合に、中立流路18内で余剰となる作動油をメインリリーフ弁19から廃棄する代わりに、回生モータMへと導くことができる。よって、従来廃棄していたエネルギから回生を行うことができるため、エネルギーロスを低減してより多くのエネルギを回生することができる。したがって、システム全体としての消費エネルギを低減させることができる。
【0091】
また、すべてのアクチュエータが停止している場合には、中立流路18のスタンバイ流量を回生モータMへと導くことができる。これにより、スタンバイ流量を利用して回生モータMを回転させて発電を行うスタンバイチャージが行われ、バッテリ充電量を増大させることができる。特に、第二回路系統S2の中立流路18には中立カット弁63が設けられるため、中立流路18の作動油圧をメインリリーフ圧近傍まで上昇させることができる。これにより、より高圧の余剰流量が回生モータMに導かれるため、バッテリ27を所定のバッテリ容量までチャージするのに要する時間を短縮することができる。
【0092】
さらに、コントローラCは、電磁比例減圧弁61を切り換えて余剰流量回生制御を行っているとき、中立流路6,18の作動油圧が操作弁1〜5、14〜17の最低作動圧以上となるように、回生モータMの斜板の傾転角をレギュレータ66によって制御する。これにより、作動油が回生モータMに導かれる側の中立流路6,18における作動油圧を維持しながらエネルギ回生を行うことができる。
【0093】
さらに、中立カット弁63がパイロットリリーフ弁21より上流側に設けられるため、中立流路18の作動油圧が設定圧に達して中立カット弁63を閉位置に切り換えた際、中立流路18の作動油圧がパイロットリリーフ弁21からリリーフされることを防止できる。これにより、余剰流量回生制御時により高い作動油圧を回生モータMへ供給することができるため、より多くのエネルギを回生することができる。
【0094】
次に、アシスト制御について説明する。
【0095】
サブポンプSPは、斜板の傾転角が調整可能な可変容量型ポンプであり、回生モータMと連動して同軸回転するように連結されている。サブポンプSPは、電動モータ47の駆動力で回転する。電動モータ47の回転速度は、インバータ48を通じてコントローラCによって制御される。サブポンプSP及び回生モータMの斜板の傾転角は、レギュレータ67,66を介してコントローラCによって制御される。
【0096】
サブポンプSPには、アシスト通路としての吐出通路68が接続される。サブポンプSPは、吐出通路68を介して作動油を中立流路6,18に供給可能である。吐出通路68は、通路55に合流する第一吐出通路69と、通路56に合流する第二吐出通路70と、に分岐して形成される。吐出通路68の分岐部には、アシスト切換弁としての高圧選択切換弁71が介装される。第一吐出通路69及び第二吐出通路70には、吐出通路68から通路55又は通路56への作動油の流れのみを許容するチェック弁72,73がそれぞれ介装される。
【0097】
高圧選択切換弁71は、六ポート三位置のスプール式の切換弁である。高圧選択切換弁71には、スプールの両端に臨んでパイロット室71a,71bがそれぞれ設けられる。一方のパイロット室71aには、通路55の作動油が第一パイロット通路76を介して供給される。他方のパイロット室71bには、通路56の作動油が第二パイロット通路77を介して供給される。第一パイロット通路76には、減衰用絞り74が設けられ、第二パイロット通路77には減衰用絞り75が設けられる。スプールは、両端に各々設けられる一対のセンタリングスプリング71c,71dによって中立状態に支持される。高圧選択切換弁71は、センタリングスプリング71c,71dのばね力によって、通常はノーマル位置(
図1及び
図2に示す状態)に保持される。
【0098】
高圧選択切換弁71は、ノーマル位置に保持されている状態では、サブポンプSPの吐出油を第一吐出通路69及び第二吐出通路70に按分して供給する。
【0099】
高圧選択切換弁71は、一方のパイロット室71aのパイロット圧が他方のパイロット室71bのパイロット圧より高い場合には、第一切換位置(
図1中右側位置)に切り換えられる。これにより、サブポンプSPの吐出油が通路55に供給される。
【0100】
高圧選択切換弁71は、他方のパイロット室71bのパイロット圧が一方のパイロット室71aのパイロット圧より高い場合には、第二切換位置(
図1中左側位置)に切り換えられる。これにより、サブポンプSPの吐出油が通路56に供給される。
【0101】
つまり、高圧選択切換弁71は、通路55と通路56とのうち、高圧の方を選択してサブポンプSPの吐出油を供給している。なお、高圧選択切換弁71が切り換えられる過程では、通路55と通路56との両方に作動油が供給されるが、パイロット室71a,71bの一方のパイロット圧とパイロット室71a、71bの他方のパイロット圧との差圧が充分に高い場合には、サブポンプSPの吐出油の全量が通路55と通路56とのうち高圧の方に供給され、低圧の方には全く供給されない。
【0102】
電動モータ47の駆動力によってサブポンプSPが回転すると、サブポンプSPは、第一メインポンプMP1及び第二メインポンプMP2の少なくとも一方の出力をアシストする。第一メインポンプMP1及び第二メインポンプMP2のいずれをアシストするかは高圧選択切換弁71によって決定され、コントローラCによる制御を要しない自動アシストが行われる。
【0103】
合流回生通路46を通じて回生モータMに作動油が供給され、回生モータMが回転すると、回生モータMの回転力は、同軸回転する電動モータ47に対するアシスト力として作用する。したがって、回生モータMの回転力の分だけ、電動モータ47の消費電力を少なくすることができる。
【0104】
回生モータMを駆動源として電動モータ47を発電機として使用するときには、サブポンプSPは、斜板の傾転角がゼロに設定され、ほぼ無負荷状態となる。
【0105】
次に、アシスト制御の作用効果について説明する。
【0106】
サブポンプSPから吐出された作動油を中立流路6,18に導く吐出通路68に高圧選択切換弁71が介装され、高圧選択切換弁71は通路55と通路56とのうち高圧の方を選択してサブポンプSPの吐出油を供給する。これにより、アクチュエータの負荷が高いときに多くのアシスト流量が高圧側の中立流路6,18に供給されるため、油圧ショベルの作業速度を確保できる。
【0107】
また、高圧選択切換弁71は、通路55と通路56とのうち高圧側の通路を選択するため、サブポンプSPから吐出される作動油を高圧側へ供給することができる。さらに、例えばサブポンプSPの吐出油を通路55と通路56とにそれぞれ比例電磁絞り弁を介して按分して供給する従来の場合のように、比例電磁絞り弁において絞り圧力損失が生じてアシスト動力が低下してしまうことを防止でき、消費エネルギを低下させることができる。さらに、比例電磁絞り弁を用いないため、サブポンプSPからの吐出油を中立流路6,18に供給するアシストシステムを低コストかつ頑健なシステムとすることができる。
【0108】
さらに、旋回回生制御やブーム回生制御を行いながらサブポンプSPによって中立流路6,18に作動油を供給することができるため、例えばブームシリンダBCを収縮させながらアームを動作させるいわゆる水平引き作業を行う場合には、ブーム回生制御によって回生しながら回生した動力によってアームをアシストすることができる。よって、システム全体としての消費エネルギを低下させることができる。
【0109】
さらに、高圧選択切換弁71の一方のパイロット室71aには、通路55の作動油が減衰用絞り74を介して供給され、他方のパイロット室71bには、通路56の作動油が減衰用絞り75を介して供給される。これにより、高圧選択切換弁71のスプールが急激に移動することを防止して、高圧選択切換弁71の中立位置,第一切換位置,及び第二切換位置の間の切り換わり動作を減衰させ、切り換わる際に生じるショックを低減することができる。
【0110】
以上の第一の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0111】
従来は、ブームシリンダBCや旋回モータRMの作動中には、ブーム回生制御や旋回回生制御によってブームシリンダBCや旋回モータRMの余剰流量からエネルギ回生を行うことは可能であったが、ブームシリンダBCや旋回モータRM以外のアクチュエータが操作されている場合には、エネルギ回生を行うことができなかった。
【0112】
これに対して、本実施の形態では、例えば、バケットやアームなどが操作されている状態で中立流路18の作動油圧が設定圧に達した場合に、回生通路切換弁58が回生位置に切り換わって中立流路18の作動油が回生モータMに導かれる。よって、ブームシリンダBCや旋回モータRM以外のアクチュエータが操作されている場合であっても、余剰となる作動油の油圧エネルギを回生することができる。したがって、従来廃棄していたエネルギから回生を行うことができるため、エネルギーロスを低減してより多くのエネルギを回生することができ、システム全体としての消費エネルギを低減させることができる。
【0113】
(第二の実施の形態)
以下、
図3から
図5を参照して、本発明の第二の実施の形態に係るハイブリッド建設機械の制御システム200について説明する。以下に示す各実施の形態では、上述した第一の実施の形態と異なる点を中心に説明し、第一の実施の形態と同様の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0114】
ハイブリッド建設機械の制御システム200は、バルブ装置101に代えてセクションタイプの汎用品を使用したバルブ装置201が用いられる点で第一の実施の形態とは相違する。
【0115】
バルブ装置201は、余剰流量回生制御時に切り換えられる回生通路切換弁258と、アシスト制御時に切り換えられる高圧選択切換弁71と、を備える。
【0116】
回生通路切換弁258は、六ポート三位置のスプール式の切換弁である。回生通路切換弁258には、スプールの両端に臨んでパイロット室58a,58bがそれぞれ設けられる。スプールは、両端に各々設けられる一対のセンタリングスプリング58c,258dによって中立状態に支持される。回生通路切換弁58は、センタリングスプリング58c,258dのばね力によって、通常はノーマル位置(
図3に示す状態)に保持される。
【0117】
回生通路切換弁258は、第一の実施の形態の回生通路切換弁58のノーマル位置と回生位置とに加えて第三の位置(
図3中右側位置)を備える。
【0118】
第三の位置は、他方のパイロット室58bに臨んで設けられる。パイロット室58bは、第二パイロット通路60を介してタンクTに接続している。回生通路切換弁58では、他方のパイロット室58bにパイロット圧を供給することはない。パイロット室58bは、回生通路切換弁58が回生位置からノーマル位置に切り換わるときにタンクTから吸い上げられた作動油が流入したり、回生通路切換弁58のスプールの隙間から漏れ出した作動油をタンクTに戻したりするものである。よって、回生通路切換弁258が第三の位置に切り換えられることはない。
【0119】
しかしながら、回生通路切換弁258を高圧選択切換弁71と同様の六ポート三位置のスプール式の切換弁とすることで、部品の共通化を図ることができ、バルブ装置201のコスト削減が可能である。
【0120】
次に、
図4及び
図5を参照して、高圧選択切換弁71と回生通路切換弁58との具体的な構造について説明する。
【0121】
図4に示すように、高圧選択切換弁71は、作動油の流路が内部に形成されるバルブハウジング110と、バルブハウジング110内を軸方向に摺動するスプール111と、を備える。
【0122】
バルブハウジング110は、吐出通路68に接続される供給通路120と、供給通路120から供給された作動油が分岐して流れる一対のブリッヂ通路120a,120bと、通路55,56にそれぞれ連通するポート131,132と、ブリッヂ通路120aとポート131とを連通させる連通通路122と、ブリッヂ通路120bとポート132とを連通させる連通通路123と、を有する。スプール111は、連通通路122を閉塞可能な大径部111aと、連通通路123を閉塞可能な大径部111bと、を有する。
【0123】
高圧選択切換弁71がノーマル位置に保持されている状態(
図4に示す状態)では、連通通路122,123が共にブリッヂ通路120a,120bとポート131,132とをそれぞれ連通している状態である。そのため、供給通路120から供給された作動油は、ブリッヂ通路120a,120bに按分される。連通通路122,123を通過した作動油は、ポート131,132を介して、通路55,56にそれぞれ供給される。
【0124】
高圧選択切換弁71は、パイロット室71aのパイロット圧がパイロット室71bのパイロット圧より高い場合には、パイロット室71aの圧力がセンタリングスプリング71cの付勢力に打ち勝ってスプール111を移動させ、第一切換位置に切り換えられる。これにより、スプール111の大径部111bが連通通路123におけるブリッヂ通路120bとポート132との連通を閉塞する。よって、供給通路120から供給された作動油は、ブリッヂ通路120aと連通通路122とを通過し、ポート131を介して通路55に供給される。
【0125】
高圧選択切換弁71は、パイロット室71bのパイロット圧がパイロット室71aのパイロット圧より高い場合には、パイロット室71bの圧力がセンタリングスプリング71dの付勢力に打ち勝ってスプール111を移動させ、第二切換位置に切り換えられる。これにより、スプール111の大径部111aが連通通路122におけるブリッヂ通路120aとポート131との連通を閉塞する。よって、供給通路120から供給された作動油は、ブリッヂ通路120bと連通通路123とを通過し、ポート132を介して通路56に供給される。
【0126】
スプール111の両端には、スプール111と比較して小径に形成される小径ピストン112,113がそれぞれ設けられる。スプール111は、小径ピストン112,113に押圧されることによって、高圧選択切換弁71をノーマル位置と第一切換位置と第二切換位置とに切り換える。小径ピストン112,113は、スプール111とは別体に設けられる。小径ピストン112,113は、それぞれ通路55,56の作動油の圧力をパイロット圧として押圧される。小径ピストン112,113が設けられることによって、パイロット室71a,71bに供給される作動油によるパイロット圧の受圧面積が小さくなる。そのため、小径ピストン112,113が設けられない場合と比較して、スプール111に作用する力を小さくすることができる。
【0127】
特に、高圧選択切換弁71の場合には、パイロット室71a,71bには、第一メインポンプMP1,第二メインポンプMP2から吐出された高圧の作動油が供給される。そこで、高圧選択切換弁71では、小径ピストン112,113を設けることによって、スプール111に作用する力を小さくしている。
【0128】
図5に示すように、回生通路切換弁258は、作動油の流路が内部に形成されるバルブハウジング140と、バルブハウジング140内を軸方向に摺動するスプール141と、を備える。
【0129】
バルブハウジング140は、通路56に接続される供給通路150と、供給通路150から供給された作動油が分岐して流れる一対のブリッヂ通路150a,150bと、合流回生通路46に連通するポート161と、ブリッヂ通路150bとポート161とを連通させる連通通路152と、を有する。スプール141は、連通通路152を閉塞可能な大径部141aを有する。
【0130】
バルブハウジング140は、供給通路150が中立流路102(
図3参照)を介して供給通路120と連通可能なように、高圧選択切換弁71のバルブハウジング110に重ねて設けられる。しかしながら、上述したように、高圧選択切換弁71側のポートは、どの位置に切り換えられている状態でも中立流路102と連通しない。よって、本実施の形態では、供給通路150と供給通路120とが実際に連通することはない。
【0131】
回生通路切換弁258がノーマル位置に保持されている状態(
図5に示す状態)では、連通通路152におけるブリッヂ通路150bとポート161との連通が閉塞している状態である。そのため、供給通路150から供給された作動油は、ブリッヂ通路150a,150bで止まることとなる。
【0132】
回生通路切換弁258は、パイロット室58aのパイロット圧による押圧力がセンタリングスプリング258dの付勢力よりも大きい場合には、パイロット室58aの圧力がセンタリングスプリング258dの付勢力に打ち勝ってスプール141を移動させ、回生位置に切り換えられる。これにより、スプール141の大径部141aが移動して連通通路152を連通させる。よって、供給通路150から供給された作動油は、ブリッヂ通路150bと連通通路152とを通過し、ポート161を介して合流回生通路46に供給される。
【0133】
回生通路切換弁58では、センタリングスプリング58cとセンタリングスプリング258dとは単一のスプリング170である。スプリング170の両端には、スプリングシート171,172がそれぞれ設けられる。
【0134】
スプール141が回生位置(
図3中左側位置)に切り換わる際には、スプール141の移動によって一方のスプリングシート171が移動してスプリング170を圧縮する。これにより、スプリング170は、センタリングスプリング258dとして機能する。
【0135】
このように、センタリングスプリング58cとセンタリングスプリング258dとを単一のスプリング170とすることによって、スプリングの数を削減できるとともに、回生通路切換弁258の全長を小さくすることができる。よって、バルブ装置101の小型軽量化が可能である。
【0136】
また、
図4及び
図5に示すように、回生通路切換弁258のバルブハウジング140は、高圧選択切換弁71のバルブハウジング110と同一の部品である。これらのバルブハウジング140,110は、一般的に用いられるセクションタイプの汎用品である。よって、汎用のバルブハウジング140,110を用いて回生通路切換弁258と高圧選択切換弁71とを構成するため、バルブ装置201のコスト削減が可能である。
【0137】
以上の第二の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0138】
回生通路切換弁258のバルブハウジング140は、高圧選択切換弁71のバルブハウジング110と同一の部品である。これらのバルブハウジング140,110は、一般的に用いられるセクションタイプの汎用品である。したがって、回生通路切換弁258を高圧選択切換弁71と同様の六ポート三位置のスプール式の切換弁とすることで、部品の共通化を図ることができ、バルブ装置201のコスト削減が可能である。
【0139】
(第三の実施の形態)
以下、
図6から
図8を参照して、本発明の第三の実施の形態に係るハイブリッド建設機械の制御システム300について説明する。
【0140】
ハイブリッド建設機械の制御システム300は、バルブ装置301の回生通路切換弁358がタンク連通位置と、タンク連通位置に切り換えるためのパイロット圧を回生通路切換弁358に導くための電磁比例減圧弁62と、を備える点で、上述した各実施の形態とは相違する。
【0141】
バルブ装置301は、余剰流量回生制御時に切り換えられる回生通路切換弁358と、アシスト制御時に切り換えられる高圧選択切換弁71と、を備える。
【0142】
回生通路切換弁358は、六ポート三位置のスプール式の切換弁である。回生通路切換弁358には、スプールの両端に臨んでパイロット室58a,58bがそれぞれ設けられる。スプールは、両端に各々設けられる一対のセンタリングスプリング58c,258dによって中立状態に支持される。回生通路切換弁358は、センタリングスプリング58c,258dのばね力によって、通常はノーマル位置(
図6及び
図7に示す状態)に保持される。
【0143】
回生通路切換弁358は、第一の実施の形態の回生通路切換弁58のノーマル位置と回生位置とに加えてタンク連通位置(
図6及び
図7中右側位置)を備える。
【0144】
回生通路切換弁358は、他方のパイロット室58bにパイロット圧が供給されるとタンク連通位置に切り換わって、通路56を閉塞したまま合流回生通路46からタンクTへの作動油の流れを許容し、パイロット圧の供給が遮断されるとノーマル位置に切り換わって合流回生通路46とタンクTとの連通を遮断する。
【0145】
パイロット室58bに供給されるパイロット圧は、パイロット圧源PPから第二パイロット通路60を通じて供給される。第二パイロット通路60には、コントローラCからの指令信号に応じて比例したパイロット圧力を出力可能な電磁比例減圧弁62が介装される。電磁比例減圧弁62は、コントローラCから出力される指令信号に基づいて、ソレノイドが励磁されるとパイロット圧源PPを減圧して指令値に応じたパイロット圧を発生し、パイロット圧を第二パイロット通路60に供給する。
【0146】
コントローラCは、合流回生通路46内の作動油の回生モータMへの流入量が規定値を超えた場合に、回生通路切換弁358をタンク連通位置に切り換えて、合流回生通路46をタンクTに連通させるように制御する。
【0147】
具体的には、合流回生通路46には、回生モータMに導かれる作動油の圧力を検出する圧力センサ57が設けられる。本実施の形態では、作動油の圧力が作動油の流入量に該当する。これに代えて、作動油の流量を検出する流量計を設けて、検出された流量を作動油の流入量としてもよい。コントローラCは、圧力センサ57によって検出された圧力が規定値における圧力に達したと判定した場合に、回生通路切換弁358のパイロット室58bにパイロット圧を供給するように電磁比例減圧弁62を切り換える信号を出力する。
【0148】
ここで、規定値とは、回生モータMに供給される作動油の圧力に基づいて予め定められる値である。具体的には、コントローラCは、圧力センサ57からの圧力信号に基づいて、回生モータMに供給可能な流量と比較して過大な流量の作動油が回生モータMに供給されて合流回生通路46の圧力が上昇した場合に、規定値に達したと判定する。
【0149】
以上のように、コントローラCは、回生モータMに供給される作動油の流量が過大な場合には、回生通路切換弁358をタンク連通位置に切り換える。これにより、合流回生通路46内の作動油が、タンクTにアンロードされる。したがって、回生モータMに導かれる作動油の流量が過剰となることを防止することができる。
【0150】
また、コントローラCは、圧力センサ57からの圧力信号に基づいて、合流回生通路46内が負圧になった場合にも、回生通路切換弁358をタンク連通位置に切り換える。例えば、ブームシリンダBCを収縮させてブームを下げてバケットを地面に押し当てるいわゆる土羽打ち作業を行う場合等には、ブームシリンダBCから回生モータMに供給される作動油の流量が急激に減少する。このような場合に、合流回生通路46内が負圧になる場合がある。
【0151】
本実施の形態では、回生通路切換弁358がタンク連通位置に切り換えられるため、回生モータMへの作動油の供給量が充分でなくなった場合に、タンクTから合流回生通路46に作動油を吸い上げて回生モータMへ供給することができる。
【0152】
その後、コントローラCは、圧力センサ57からの圧力信号に基づいて、回生モータMへの作動油の供給量が充分になったと判定した場合に、電磁比例減圧弁62のソレノイドを非励磁にして、回生通路切換弁358をタンク連通位置からノーマル位置に切り換える。
【0153】
以上のように、コントローラCは、圧力センサ57からの圧力信号に基づいて、合流回生通路46内が負圧になった場合にも、回生通路切換弁358をタンク連通位置に切り換える。これにより、回生モータMへの作動油の供給量が充分でなくなった場合に、タンクTから合流回生通路46に作動油を吸い上げて回生モータMへ供給することができる。よって、回生モータMへの作動油の供給量が不足することが防止され、回生モータMを保護することができる。
【0154】
また、第一の実施の形態に係るハイブリッド建設機械の制御システム100では、回生モータMへの作動油の供給量が充分でなくなった場合にタンクTから合流回生通路46に作動油を吸い上げて回生モータMへ供給する吸上通路78が設けられていた。これに対して、本実施の形態に係るハイブリッド建設機械の制御システム300では、回生通路切換弁358がタンク連通位置を備えるため、吸上通路78を設ける必要がない。
【0155】
次に、
図8を参照して、回生通路切換弁358の具体的な構造について説明する。
【0156】
図8に示すように、回生通路切換弁358は、作動油の流路が内部に形成されるバルブハウジング140と、バルブハウジング140内を軸方向に摺動するスプール141と、を備える。
【0157】
バルブハウジング140は、通路56に接続される供給通路150と、供給通路150から供給された作動油が分岐して流れる一対のブリッヂ通路150a,150bと、合流回生通路46に連通するポート161と、タンクTに連通するタンク通路162と、ブリッヂ通路150bとポート161とを連通させる連通通路152と、ポート161とタンク通路162とを連通させる連通通路153と、を有する。スプール141は、連通通路152を閉塞可能な大径部141aと、連通通路153を閉塞可能な大径部141bと、を有する。
【0158】
回生通路切換弁358がノーマル位置に保持されている状態(
図6及び
図7に示す状態)では、連通通路152,153が共に閉塞されている。そのため、ブリッヂ通路150bとポート161との連通が閉塞され、ポート161とタンク通路162との連通が閉塞される。よって、供給通路150から供給された作動油は、ブリッヂ通路150a,150bで止まることとなる。
【0159】
回生通路切換弁358は、パイロット室58aのパイロット圧がパイロット室58bのパイロット圧より高い場合には、パイロット室58aの圧力がセンタリングスプリング258dの付勢力に打ち勝ってスプール141を移動させ、回生位置に切り換えられる。これにより、スプール141の大径部141aが移動して連通通路152を連通させる。よって、供給通路150から供給された作動油は、ブリッヂ通路150bと連通通路152とを通過し、ポート161を介して合流回生通路46に供給される。
【0160】
回生通路切換弁358は、パイロット室58bのパイロット圧がパイロット室58aのパイロット圧より高い場合には、パイロット室58bの圧力がセンタリングスプリング58cの付勢力に打ち勝ってスプール141を移動させ、タンク連通位置に切り換えられる。これにより、スプール141の大径部141bが移動して連通通路153を連通させる。よって、合流回生通路46から供給された作動油は、連通通路153を通過し、タンク通路162を介してタンクTに戻される。
【0161】
スプール141がタンク連通位置に切り換わる際には、スプール141の移動によって他方のスプリングシート172が移動してスプリング170を圧縮する。これにより、スプリング170は、センタリングスプリング58cとして機能する。
【0162】
以上の第三の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0163】
コントローラCは、ブームシリンダBCや旋回モータRMから合流回生通路46を通じて回生モータMに導かれる作動油の流入量が規定値を超えた場合に、回生通路切換弁358をタンク連通位置に切り換える。これにより、合流回生通路46内の作動油は、タンクTに導かれることとなる。したがって、回生モータMに導かれる作動油の流量が過剰となることを防止することができる。
【0164】
また、コントローラCは、合流回生通路46内が負圧になった場合にも、回生通路切換弁358をタンク連通位置に切り換える。これにより、回生モータMへの作動油の供給量が充分でなくなった場合に、タンクTから合流回生通路46に作動油を吸い上げて回生モータMへ供給することができる。よって、回生モータMへの作動油の供給量が不足することが防止され、回生モータMを保護することができる。
【0165】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。