特許第6190730号(P6190730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190730
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】マグネシアカーボンれんが
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/043 20060101AFI20170821BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20170821BHJP
   B22D 41/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C04B35/043
   F27D1/00 N
   B22D41/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-14606(P2014-14606)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-166943(P2014-166943A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2016年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-17153(P2013-17153)
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩濱 満晴
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 賢典
(72)【発明者】
【氏名】吉富 丈記
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−151425(JP,A)
【文献】 特開平07−033513(JP,A)
【文献】 特開2010−105891(JP,A)
【文献】 特開平05−330904(JP,A)
【文献】 特開平08−259312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/04−35/053
F27D 1/00−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシア原料と黒鉛とを含有するマグネシアカーボンれんがにおいて、
マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を8質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上92質量%以下含有し、
前記マグネシア原料の粒度構成として、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料がマグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で36質量%以上53質量%以下配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であり、
1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるマグネシアカーボンれんが。
【請求項2】
前記黒鉛の粒度構成として、粒径0.15mm以上の黒鉛が全体の黒鉛の40質量%以上配合されている請求項に記載のマグネシアカーボンれんが。
【請求項3】
ピッチ系原料の含有量がマグネシア原料と黒鉛との合量に対して外掛けで1質量%未満である請求項1又は2に記載のマグネシアカーボンれんが。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の運搬、貯蔵、精製などを行う窯炉全般の内張り材に好適に使用されるマグネシアカーボンれんがに関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシアカーボンれんが(以下「MgO−Cれんが」という。)はマグネシアと黒鉛を主骨材として構成される耐食性、耐スポール性に優れたれんがであり、転炉をはじめとする窯炉全般の内張り材として汎く用いられている。
【0003】
近年の精錬容器の操業過酷化に伴い、より耐用性に優れるMgO−Cれんがが求められるようになった。このMgO−Cれんがの耐用性を示す指標として耐酸化性や耐食性が挙げられる。これらの特性を向上させるためにはMgO−Cれんがを緻密化し、外気との通気性を低くすること、スラグや溶鉄の浸透を抑制することが有効である。これまでも、MgO−Cれんが組織の緻密化のため、配合内容の改良、大容量真空成形機の導入などにより大幅な低気孔率化が図られ、同時に耐用性も向上することが確認され、炉材原単位の削減へ大きく貢献してきた。
【0004】
一方、MgO−Cれんがについて評価技術も進展がみられ、過去には専ら乾燥後の特性が評価されていたのに対し、最近ではMgO−Cれんがを予め還元焼成し、その特性が評価されるようになった。これによると見かけ気孔率は乾燥後で3%以下であっても、1400℃で3時間還元焼成後では10%あるいはこれ以上に達することがあり、使用後れんがのそれにより近い値が得られる。つまり、試料を予め還元焼成したほうが実使用時の試料により近い状態を表すことができ、材料の改善指標として有効と判断される。
【0005】
MgO−Cれんがの緻密性はマグネシア原料の粒度構成の違いにより変化することが知られており、例えば特許文献1では1〜0.2mmの範囲の中間粒を30〜45重量%、0.2mm以下の微粉を15〜25重量%とすることで耐酸化性、耐食性、熱間強度の向上が可能な緻密質MgO−Cれんがが提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、組織劣化を抑制し、使用初期の耐食性を維持可能な高耐用MgO−Cれんがの提案がなされている。この特許文献2では、MgO−Cれんがの組織劣化の要因として使用中の受熱に伴うマグネシアとカーボンの酸化還元反応が挙げられ、その改良手段として原料配合中のマグネシア微粉量を減量する提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1―270564号公報
【特許文献2】特開2007―297246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1において中間粒を増量することによりMgO−Cれんがの緻密化を図ることは、本発明とも趣旨を同じくするところであるが、特許文献1ではマグネシア微粉の量に関する検討がなされていないため、マグネシア微粉が多量の場合、マグネシア粒子間の間隔が接近しすぎることになり、焼結が進行して弾性率が上昇し耐スポール性が劣化するという問題があった。さらに、マグネシア原料の粒度構成は成形充填性に与える影響が大きく、また、黒鉛配合量や粒径の影響についても検討が必要であり、さらなる改善の余地があった。
【0009】
また、上述の特許文献2に関しては、MgO−Cれんがの組織劣化の要因としては酸化還元反応だけではなく、例えばマグネシアの膨張収縮によって形成される空隙も考慮する必要があり、マグネシア微粉量のみを規定しただけでは不十分であり、さらなる改善の余地があった。
【0010】
以上に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、MgO−Cれんがの一層の緻密性向上(気孔率低減)を図り、今までになかった耐用性の高いMgO−Cれんがの提供をすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はMgO−Cれんがの原料配合中で比表面積の大方を占めるマグネシア原料の粒度構成の適正化、加えて黒鉛の粒度構成の適正化が、MgO−Cれんがの気孔率低減を達成させ得る重要な因子であるという新規な知見に基づいて完成されたもので、言い換えれば、マグネシア原料の粒度構成の適正化、加えて黒鉛の粒度構成の適正化により、受熱後におけるMgO−Cれんがの一層の気孔率低減を図り、今までになかった耐用性の高いMgO−Cれんがの提供を可能としたものである。すなわち、本発明によれば以下のMgO−Cれんがが提供される。
【0012】
(1)マグネシア原料と黒鉛とを含有するMgO−Cれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を8質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上92質量%以下含有し、前記マグネシア原料の粒度構成として、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料がマグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で36質量%以上53質量%以下配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であり、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるMgO−Cれんが。
)前記黒鉛の粒度構成として、粒径0.15mm以上の黒鉛が全体の黒鉛の40質量%以上配合されている(1)に記載のMgO−Cれんが。
)ピッチ系原料の含有量がマグネシア原料と黒鉛との合量に対して外掛けで1質量%未満である(1)又は(2)に記載のMgO−Cれんが。
【0013】
従来においてもMgO−Cれんがを還元焼成して見かけ気孔率を測定した例は散見されるが、それらは殆どが焼成温度は1200℃以下であり、1400℃という高熱負荷下において7.8%以下の低気孔率を達成した例はない。本発明者らは、高熱負荷後のMgO−Cれんがの見かけ気孔率を7.8%以下へとさらに低くさせることによって、従来にない耐食性や耐酸化性を向上させることが可能であるという知見を得た。このことは以下の手法、効果によって達成されたものである。
【0014】
成形後の充填性を向上させることは、高熱負荷後、より低気孔率化するのに有効であるが、マグネシア原料の粒径0.075mm未満の微粉量が多いとマグネシア粒子同士の接触が増え成形性が低下するので、より少ないほうが好ましい。さらに、MgO−Cれんがのマトリックス部ではマグネシア粒子間の距離が縮小されることになり焼結が進行しやすくなる。これはさらに、黒鉛配合量が少ないとき顕著になる。
【0015】
本発明者は、この焼結を抑制するためにはマグネシア原料の粒度構成において粒径0.075mm未満の微粉の配合量をある程度抑制しその粒子間を接近させすぎないことが有効であることを知見し、粒径0.075mm未満の微粉の適正な配合量比(質量比)を特定した。
【0016】
また、マグネシア原料は加熱、冷却の過程で膨張、収縮するが、周囲の黒鉛よりも膨張率が大きいため収縮する際にその周囲に空隙が生成する。粒径1mm超の粗粒の周囲には比較的大きな空隙が生成し容易に開放気孔化してしまい見かけ気孔率の上昇が大きいことから、粒径1mm超の粗粒は少なく、粒径0.075mm以上1mm以下の中間粒の配合量が多いほうが好ましい。具体的には、その中間粒の配合量はマグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で36質量%以上53質量%以下とする
【0017】
一方、黒鉛の粒度構成については、粒径0.15mm以上のものが多いほど熱処理後の残存膨張率が小さくなり、高熱負荷後の見かけ気孔率は低減される。例えば鱗片状の黒鉛を使用し、一軸プレスにより成形した場合、黒鉛はれんが組織内で配向性を持ち、黒鉛粒子径より小さいマグネシア粒子は黒鉛に包まれるようになる。黒鉛は可撓性を持つため黒鉛に包まれたマグネシア粒子周囲は加熱・冷却時の膨張・収縮による空隙を生じにくい。
【0018】
このような理由から黒鉛の粒度構成としては粒径0.15mm以上の大きい黒鉛を多く配合し、また、マグネシア原料の粒度構成を上述のとおり適正化することでMg−Cれんがの見かけ気孔率を低減することができる。
【0019】
MgO−Cれんがの結合材としては一般的にフェノール樹脂が使用されるが、その添加量は少ないほうが好ましい。これは加熱過程において溶剤の揮発、重縮合反応に伴う揮発分を少なくできるためであり、さらにそれらが揮発する際の系外へのいわゆる抜け道が開放気孔化を助長するためである。マグネシア原料の粒径0.075mm未満の配合量を少なくすること、及び黒鉛粒径を大きくすることは、原料配合全体の比表面積を小さくすることになり、必要とする結合材添加量を低減することを可能とする。
【0020】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0021】
MgO−Cれんがの見かけ気孔率を評価するときの焼成温度は1400℃とした。これ未満の温度ではMgO−Cれんが内部での反応が完了しきれず、熱負荷も十分でないため緻密性の評価として適当ではない。またこれを超える温度では焼結が進行してこの効果を分離して評価することが困難になるうえ、焼成する炉への負荷が大きく定常的な測定評価として好ましくなくなる。焼成時間は試料が1400℃に晒される時間として3時間とした。3時間未満ではMgO−Cれんが内部での反応が完了しきれず適当ではない。さらにこれよりも長時間の焼成では焼結が進行してこの効果を分離して評価することが困難になる。本発明は、1400℃で3時間還元雰囲気で焼成した後の試料を、媒液を白灯油としたアルキメデス法(JIS R 2205)により測定された見かけ気孔率を7.8%以下に抑制することを特徴とする。
【0022】
本発明のMgO−Cれんがには金属Alを添加することができ、その場合、金属Alの添加量は添加黒鉛量に対して1質量%以上15質量%以下が適当である。このように比較的少量に留めることにより、膨張性を抑制し、金属Alが揮発して生じる気孔を少なくでき、結果としてMgO−Cれんがは緻密化される。1質量%以上添加する理由は、これ未満の添加量では耐酸化性が不十分であるためである。この効果は75μm以下の細かい金属Alを適用することで一層の顕著に発現される。
【0023】
本発明のMgO−Cれんがには金属Siを添加することもできるが、その添加量は添加黒鉛量に対して5質量%以下と極微量で十分であり、粒径45μm以下の細かい金属Siを適用することで一層の効果が発現される。これ以上の過多な添加はMgO−Cれんが内での低融物生成量を増大させ、耐食性低下の原因となり耐用を低下させる。
【0024】
本発明のMgO−Cれんがにおいて使用されるマグネシア原料は、電融マグネシア、焼結マグネシアのいずれもよく、これらを混合して使用してもよい。その組成も特に限定されるものではないが、より高い耐食性を得るためにはMgO純度が高いマグネシアを使用したほうがよく、MgO純度は96%以上、さらに好ましくは98%以上である。
【0025】
黒鉛は通常の鱗状黒鉛が使用可能であるが、これに換えてまたはこれと併用して膨張黒鉛、人造黒鉛、キッシュグラファイトなどを使用してもよい。その組成は特に限定されるものではないが、より高い耐食性を得るためにはC純度が高い黒鉛を使用したほうがよく、C純度は85%以上、さらに好ましくは98%以上である。粒度は極端に細粒なものでは緻密性の維持が難しいため、粒径0.15mm以上の黒鉛が全体の黒鉛の40質量%以上含まれるように使用することが好ましい。
【0026】
さらに諸特性改善を目的として、Mg、Ca、Cr、Zrなどの他の金属、及びこれら元素の2種以上の合金、これらとB、Cとの化合物を添加することが可能である。本発明はこれらの添加効果を損なうものではないが、これらも過多に添加すると緻密性が低下するなどの弊害があるため、その添加量は金属Alと同様に添加黒鉛量に対して15質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
結合材として使用するフェノール樹脂は、ノボラック型、レゾール型、及びこの混合型のいずれでもよいが、MgO−Cれんがにおいては経時変化をおこし難いノボラック型がより好ましい。粉末又は適当な溶剤に溶かした液状、さらに液状と粉末の併用のいずれも使用でき、通常はヘキサメチレンテトラミンなどの硬化材を適量添加して残炭率を確保する。その残炭率は34%以上であることが好ましく、さらに好ましくは48%以上であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。残炭率が多いものを使用することで、昇熱中の揮発分を減少させることができ、開放気孔を減少させることによってMgO−Cれんがの緻密化に貢献すると考えられる。
【0028】
このほか、主に耐スポール性を補償するために各種のピッチ、カーボンブラック、及びこれらの分散、解砕処理粉などのピッチ系原料を使用することが有効である。しかし、これらも過多に添加すると揮発分を含有するため気孔率を上昇させてしまう傾向がある。また、その添加量が多くなるとMgO−Cれんがの充填性を低下させ、かつ成形時のスプリングバックが増大し緻密性を低下させてしまう傾向がある。この点からその添加量はマグネシア原料と黒鉛との合量に対して外掛けで、C成分の合計で1.0質量%未満が好ましく、さらに好ましくは0.6質量%未満であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0029】
このほか、主に耐スポール性を補償するために単球型及び/又はアグリゲート型カーボンブラック、及びこれらの分散、解砕処理粉などを使用することができる。しかしこれらも過多に添加すると緻密性を低下させるため、その添加量はC成分の合計で1.5質量%以下が好ましい。
【0030】
これらのMgO−Cれんがの製造にあたっては、混練機、成形機、乾燥機の種類やその製造内容を限定するものではない。ただし緻密なMgO−Cれんがを得るために、混練については添加する原料が十分に分散かつ練り込みを行うことが可能な混練機を用いて混練を行うことが好ましい。成形圧力は120MPa程度以上、さらには150MPa以上250MPa以下にて成形することが好ましい。乾燥温度は結合材の溶媒の沸点以上必要であるが400℃以下に留めたほうが酸化防止の点で好ましい。
【発明の効果】
【0031】
こうして得られた緻密な、つまり低気孔率なMgO−Cれんがは耐食性が極めて良好であり、転炉の全部位、鋼鍋スラグライン部、二次精錬容器に好適に適用され、炉寿命向上、炉材原単位低減に大きく貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施例に基づき、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
試料作製は転炉用製品製造ラインを用いた。表1、2に記載の割合にて原料秤量を行い、混練はハイスピードミキサーを使用し、成形は長さ810mmの側壁用標準形状において真空フリクションにより最高180MPaの成形圧力で成形した。乾燥はバッチ炉において最高280℃で5時間保持した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
これから物性測定用試料を切り出して試験を行った。見かけ気孔率の測定においては形状60×60×60mmの試料をコークスブリーズ中に埋め、電気炉において1400℃まで昇温し、3時間保持して自然放冷した。この後溶媒を白灯油とし JIS R 2205に準拠して測定した。
【0037】
耐食性は、回転侵食試験にて評価した。回転侵食試験では、水平の回転軸を有する円筒の内面を供試れんがでライニングし、酸素−プロパンバーナーで加熱し、スラグを投入してれんが表面を侵食させた。試験温度及び時間は1700℃で5時間、スラグ組成はCaO/SiO=3.4、FeO=20%、MgO=3%とし、30分毎にスラグの排出、投入を繰り返した。試験終了後の各れんが中央部の寸法を測定して侵食量を算出し、表2に記載の「比較例1」の侵食量を100とする耐食性指数で表示した。この耐食性指数は数値の大きいものほど耐食性に優れることを示す。
【0038】
参考例1では、黒鉛配合量(マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合をいう。以下同じ。)が13質量%のMgO−Cれんがにおいて、マグネシア原料0.075mm以上1mm以下の中間粒の配合量(マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合をいう。以下同じ。)が35質量%、粒径0.075mm未満の微粉のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下の中間粒のマグネシア原料の質量比、すなわち「粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量/粒径0.075mm未満のマグネシア原料の質量」(以下「中間粒質量比」という。)が4.4のとき、見かけ気孔率7.8%が達成された。
【0039】
これに対し、比較例1は中間粒質量比が4.2未満であり微粉量が増加した結果、成形後密度が低下し見かけ気孔率も上昇している。
【0040】
また、比較例2は、マグネシア原料0.075mm以上1mm以下の中間粒の配合量が35質量%未満であることから、見かけ気孔率が上昇している。
【0041】
実施例2〜4はマグネシア原料0.075mm以上1mm以下の中間粒の配合量が増加すると、見かけ気孔率は低減することを示している。実施例5は粒径0.075mm未満の微粉量が少なく中間粒質量比が特に高くなったときの物性値である。成形性が良好であり成形後密度は高く見かけ気孔率も7.8%以下を達成している。実施例6は粒径0.075mm未満の微粉量を0とした例で、この例でも見かけ気孔率は7.8%以下を達成している。
【0042】
実施例7〜9は黒鉛粒径(粒度構成)の影響をみたものであり、粒径0.15mm以上の配合量を増やした場合、成形性は同等であるが熱処理後の気孔形成を抑制できることから粒径の大きな黒鉛を多く使用することが望ましいことを示す。また、粒径0.15mm以上が40質量%以上配合されたとき、見かけ気孔率の低減効果が認められる。
【0043】
参考例10、実施例11、12は黒鉛配合量を変化させているが、いずれも見かけ気孔率が低く良好な物性が確認された。これに対して比較例3は、黒鉛配合量が8質量%未満の例であり、見かけ気孔率が上昇する結果であった。マトリックス中の黒鉛割合が減少したことにより、マグネシア原料の膨張吸収能が減少するためと考えられる。
【0044】
参考例13は金属Siの添加効果をみたものであるが、参考例10と比較すると微量添加で見かけ気孔率の低減効果があることが確認された。
【0045】
実施例14は、残炭率の高いフェノール樹脂を適用した例であり、実施例9と比較すると見かけ気孔率が低減した結果となった。
【0046】
実施例15は実施例2と比較して金属Siを多量に添加した例で、見かけ気孔率は低く良好である。実施例16は実施例2と比較して金属Alを多量に添加した例であり、見かけ気孔率が上昇する傾向となった。実施例17は実施例2と比較してBCを多量に添加した例であり、見かけ気孔率が上昇傾向となり、低融点化合物が生成することから耐食性も低下する傾向となった。
【0047】
比較例5は、過去多く検討されている配合設計のMgO−Cれんがであり、見かけ気孔率は非常に高く耐食性も劣る結果となった。
【0048】
実施例18は実施例2に対しピッチの添加量を0.9質量%と増量したものであり、この場合、若干見かけ気孔率が上昇し耐食性は低下するが、十分な改善効果が得られている。実施例19、20は実施例2に対しピッチの添加量を0.2質量%、0質量%と減量したものであり、一層の見かけ気孔率低減、耐食性向上効果が得られていることが確認できる。
【0049】
実施例21は、残炭率が30%のフェノール樹脂を結合材として使用するとともにピッチ系原料の含有量を2質量%とした例であるが、本発明の範囲内であり緻密な組織となっている。