【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はMgO−Cれんがの原料配合中で比表面積の大方を占めるマグネシア原料の粒度構成の適正化、加えて黒鉛の粒度構成の適正化が、MgO−Cれんがの気孔率低減を達成させ得る重要な因子であるという新規な知見に基づいて完成されたもので、言い換えれば、マグネシア原料の粒度構成の適正化、加えて黒鉛の粒度構成の適正化により、受熱後におけるMgO−Cれんがの一層の気孔率低減を図り、今までになかった耐用性の高いMgO−Cれんがの提供を可能としたものである。すなわち、本発明によれば以下のMgO−Cれんがが提供される。
【0012】
(1)マグネシア原料と黒鉛とを含有するMgO−Cれんがにおいて、マグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で、黒鉛を8質量%以上25質量%以下、マグネシア原料を75質量%以上92質量%以下含有し、前記マグネシア原料の粒度構成として、粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料がマグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で
36質量%以上
53質量%以下配合され、かつ粒径0.075mm未満のマグネシア原料に対する粒径0.075mm以上1mm以下のマグネシア原料の質量比が4.2以上であり、1400℃で3時間還元焼成後の見かけ気孔率が7.8%以下であるMgO−Cれんが。
(
2)前記黒鉛の粒度構成として、粒径0.15mm以上の黒鉛が全体の黒鉛の40質量%以上配合されている
(1)に記載のMgO−Cれんが。
(
3)ピッチ系原料の含有量がマグネシア原料と黒鉛との合量に対して外掛けで1質量%未満である
(1)又は(2)に記載のMgO−Cれんが。
【0013】
従来においてもMgO−Cれんがを還元焼成して見かけ気孔率を測定した例は散見されるが、それらは殆どが焼成温度は1200℃以下であり、1400℃という高熱負荷下において7.8%以下の低気孔率を達成した例はない。本発明者らは、高熱負荷後のMgO−Cれんがの見かけ気孔率を7.8%以下へとさらに低くさせることによって、従来にない耐食性や耐酸化性を向上させることが可能であるという知見を得た。このことは以下の手法、効果によって達成されたものである。
【0014】
成形後の充填性を向上させることは、高熱負荷後、より低気孔率化するのに有効であるが、マグネシア原料の粒径0.075mm未満の微粉量が多いとマグネシア粒子同士の接触が増え成形性が低下するので、より少ないほうが好ましい。さらに、MgO−Cれんがのマトリックス部ではマグネシア粒子間の距離が縮小されることになり焼結が進行しやすくなる。これはさらに、黒鉛配合量が少ないとき顕著になる。
【0015】
本発明者は、この焼結を抑制するためにはマグネシア原料の粒度構成において粒径0.075mm未満の微粉の配合量をある程度抑制しその粒子間を接近させすぎないことが有効であることを知見し、粒径0.075mm未満の微粉の適正な配合量比(質量比)を特定した。
【0016】
また、マグネシア原料は加熱、冷却の過程で膨張、収縮するが、周囲の黒鉛よりも膨張率が大きいため収縮する際にその周囲に空隙が生成する。粒径1mm超の粗粒の周囲には比較的大きな空隙が生成し容易に開放気孔化してしまい見かけ気孔率の上昇が大きいことから、粒径1mm超の粗粒は少なく、粒径0.075mm以上1mm以下の中間粒の配合量が多いほうが好ましい。具体的には、その中間粒の配合量はマグネシア原料と黒鉛との合量に占める割合で
36質量%以上
53質量%以下とする。
【0017】
一方、黒鉛の粒度構成については、粒径0.15mm以上のものが多いほど熱処理後の残存膨張率が小さくなり、高熱負荷後の見かけ気孔率は低減される。例えば鱗片状の黒鉛を使用し、一軸プレスにより成形した場合、黒鉛はれんが組織内で配向性を持ち、黒鉛粒子径より小さいマグネシア粒子は黒鉛に包まれるようになる。黒鉛は可撓性を持つため黒鉛に包まれたマグネシア粒子周囲は加熱・冷却時の膨張・収縮による空隙を生じにくい。
【0018】
このような理由から黒鉛の粒度構成としては粒径0.15mm以上の大きい黒鉛を多く配合し、また、マグネシア原料の粒度構成を上述のとおり適正化することでMg−Cれんがの見かけ気孔率を低減することができる。
【0019】
MgO−Cれんがの結合材としては一般的にフェノール樹脂が使用されるが、その添加量は少ないほうが好ましい。これは加熱過程において溶剤の揮発、重縮合反応に伴う揮発分を少なくできるためであり、さらにそれらが揮発する際の系外へのいわゆる抜け道が開放気孔化を助長するためである。マグネシア原料の粒径0.075mm未満の配合量を少なくすること、及び黒鉛粒径を大きくすることは、原料配合全体の比表面積を小さくすることになり、必要とする結合材添加量を低減することを可能とする。
【0020】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0021】
MgO−Cれんがの見かけ気孔率を評価するときの焼成温度は1400℃とした。これ未満の温度ではMgO−Cれんが内部での反応が完了しきれず、熱負荷も十分でないため緻密性の評価として適当ではない。またこれを超える温度では焼結が進行してこの効果を分離して評価することが困難になるうえ、焼成する炉への負荷が大きく定常的な測定評価として好ましくなくなる。焼成時間は試料が1400℃に晒される時間として3時間とした。3時間未満ではMgO−Cれんが内部での反応が完了しきれず適当ではない。さらにこれよりも長時間の焼成では焼結が進行してこの効果を分離して評価することが困難になる。本発明は、1400℃で3時間還元雰囲気で焼成した後の試料を、媒液を白灯油としたアルキメデス法(JIS R 2205)により測定された見かけ気孔率を7.8%以下に抑制することを特徴とする。
【0022】
本発明のMgO−Cれんがには金属Alを添加することができ、その場合、金属Alの添加量は添加黒鉛量に対して1質量%以上15質量%以下が適当である。このように比較的少量に留めることにより、膨張性を抑制し、金属Alが揮発して生じる気孔を少なくでき、結果としてMgO−Cれんがは緻密化される。1質量%以上添加する理由は、これ未満の添加量では耐酸化性が不十分であるためである。この効果は75μm以下の細かい金属Alを適用することで一層の顕著に発現される。
【0023】
本発明のMgO−Cれんがには金属Siを添加することもできるが、その添加量は添加黒鉛量に対して5質量%以下と極微量で十分であり、粒径45μm以下の細かい金属Siを適用することで一層の効果が発現される。これ以上の過多な添加はMgO−Cれんが内での低融物生成量を増大させ、耐食性低下の原因となり耐用を低下させる。
【0024】
本発明のMgO−Cれんがにおいて使用されるマグネシア原料は、電融マグネシア、焼結マグネシアのいずれもよく、これらを混合して使用してもよい。その組成も特に限定されるものではないが、より高い耐食性を得るためにはMgO純度が高いマグネシアを使用したほうがよく、MgO純度は96%以上、さらに好ましくは98%以上である。
【0025】
黒鉛は通常の鱗状黒鉛が使用可能であるが、これに換えてまたはこれと併用して膨張黒鉛、人造黒鉛、キッシュグラファイトなどを使用してもよい。その組成は特に限定されるものではないが、より高い耐食性を得るためにはC純度が高い黒鉛を使用したほうがよく、C純度は85%以上、さらに好ましくは98%以上である。粒度は極端に細粒なものでは緻密性の維持が難しいため、粒径0.15mm以上の黒鉛が全体の黒鉛の40質量%以上含まれるように使用することが好ましい。
【0026】
さらに諸特性改善を目的として、Mg、Ca、Cr、Zrなどの他の金属、及びこれら元素の2種以上の合金、これらとB、Cとの化合物を添加することが可能である。本発明はこれらの添加効果を損なうものではないが、これらも過多に添加すると緻密性が低下するなどの弊害があるため、その添加量は金属Alと同様に添加黒鉛量に対して15質量%以下とすることが好ましい。
【0027】
結合材として使用するフェノール樹脂は、ノボラック型、レゾール型、及びこの混合型のいずれでもよいが、MgO−Cれんがにおいては経時変化をおこし難いノボラック型がより好ましい。粉末又は適当な溶剤に溶かした液状、さらに液状と粉末の併用のいずれも使用でき、通常はヘキサメチレンテトラミンなどの硬化材を適量添加して残炭率を確保する。その残炭率は34%以上であることが好ましく、さらに好ましくは48%以上であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。残炭率が多いものを使用することで、昇熱中の揮発分を減少させることができ、開放気孔を減少させることによってMgO−Cれんがの緻密化に貢献すると考えられる。
【0028】
このほか、主に耐スポール性を補償するために各種のピッチ、カーボンブラック、及びこれらの分散、解砕処理粉などのピッチ系原料を使用することが有効である。しかし、これらも過多に添加すると揮発分を含有するため気孔率を上昇させてしまう傾向がある。また、その添加量が多くなるとMgO−Cれんがの充填性を低下させ、かつ成形時のスプリングバックが増大し緻密性を低下させてしまう傾向がある。この点からその添加量はマグネシア原料と黒鉛との合量に対して外掛けで、C成分の合計で1.0質量%未満が好ましく、さらに好ましくは0.6質量%未満であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0029】
このほか、主に耐スポール性を補償するために単球型及び/又はアグリゲート型カーボンブラック、及びこれらの分散、解砕処理粉などを使用することができる。しかしこれらも過多に添加すると緻密性を低下させるため、その添加量はC成分の合計で1.5質量%以下が好ましい。
【0030】
これらのMgO−Cれんがの製造にあたっては、混練機、成形機、乾燥機の種類やその製造内容を限定するものではない。ただし緻密なMgO−Cれんがを得るために、混練については添加する原料が十分に分散かつ練り込みを行うことが可能な混練機を用いて混練を行うことが好ましい。成形圧力は120MPa程度以上、さらには150MPa以上250MPa以下にて成形することが好ましい。乾燥温度は結合材の溶媒の沸点以上必要であるが400℃以下に留めたほうが酸化防止の点で好ましい。