【実施例】
【0054】
実施例によって本発明を説明する。
なお本実施例は、本発明の趣旨をよりよく理解させるために具体的に説明するものであり、本発明がこれのみに限定されるものでないことはもちろんである。
【0055】
実施例1
多層配線板の製作(MLPCB)
製作方法を、以下に具体的に述べるが、本実施例のみが本発明を限定するものではないことは勿論である。
【0056】
3Dデータの作成
3D−CADで作成した三次元内部配線を有する基板の設計情報をもとに3Dデータを作成し、3Dプリンターに入力した。
なお3Dプリンターにはシーメット社の装置を用いた。
多層配線板の立体構造を水平断面で薄層に分割する時、3Dプリンターで印刷する一回印刷ごとの絶縁層、配線回路の薄層の印刷厚さは、絶縁層は15μm、配線回路は、20μmにし、絶縁層、配線回路の薄層は、共に一回の印刷で形成できる厚さとした。
上層との導通に用いる電気的導通路は、絶縁層(15μm厚さ)から外に突出させることが必要であるので、高さは20μmとした。つまり絶縁層から5μm突出させ、20μm厚さの配線回路に、突出部が埋入される高さにした。
【0057】
本実施例の多層配線板の単位構造は、
図1に示す構造を採用した。そして製造工程は、
図5に示す工程を採用した。
【0058】
スタート材には市販のA4サイズの両面銅張樹脂基板を用い、本実施例では片面のみを使って逐次積層を実施することとした。
【0059】
まず銅張基板の銅層をエッチングすることで、樹脂基板表面に、内部配線銅回路、および上層との導通に用いるための円柱状の銅突起を立設するためのパッドを形成した。
本例では、樹脂基板が、
図5の工程1図の絶縁層(硬化)に相当する。
なお本実施例の内部配線銅回路およびパッドは、本明細書では導電層と総称している。円柱状の銅突起は、本明細書の電気的導通路である。
内部配線銅回路の幅は20μm、厚さは20μm、内部配線間の隙間(R/S)は20μm、円柱状銅突起は、直径20μm、高さ20μmとした。
次に内部配線銅回路および突起形成用のパッド上に、直径20μm、高さ20μm、隣接する銅突起との距離を20μmとして、上層の内部配線銅回路との電気導通用の円柱形の突起を形成した。
下記の工程で形成した。
【0060】
導電性インク(※1)を使用して、3Dプリンターで前記パッドの表面に突起を立設した。
次にレーザーで突起部分のみを局所加熱して、硬化させた。インクに含まれているベヒクル(粘着剤)成分は完全に消失させた。
硬化後の突起の導電率(比抵抗)は、1.780×
10−6Ω・cmであった。
純銅の導電率(比抵抗)は1.724×10
−6Ω・cmであり、本発明突起の硬化後の導電率(比抵抗)は、純銅とほぼ同じであった。
【0061】
なお前記導電性インクの組成は、下記のとおりである。
※1の組成:市販の銅ペースト(フジクラ化成社製品)にフェノール樹脂を混合した組成。
【0062】
その後、前記銅突起以外の所に、3Dプリンターを用いて、エポキシ樹脂、ガラス粉、ベヒクルから調合された3Dプリンター用の絶縁性インキ(※2)を均一印刷した。その時、絶縁性印刷インキが突起の上部を覆わないように印刷した。絶縁性印刷インキの印刷厚さ15μm、突起の高さ20μmとし、段差を5μmに設計して印刷した。
【0063】
なお※2のインクの組成は、下記のとおりである。
※2の組成:エポキシ樹脂70%、1〜3μm粒径のガラス粉20%、ブチルセルソルブ(ブチセロ)10%等を混合した組成。
【0064】
レーザーを照射して絶縁性インキの印刷層を硬化させた。
【0065】
次に、前記絶縁層(絶縁性インキの印刷層)の表面に、導電性インキ(※1の組成)を用いて、幅20μm、厚さは20μm、内部配線間の隙間(R/S)は20μm、の内部配線銅回路を印刷した。
前記絶縁層の表面に5μm突出した突起上に、導電性インキが被るように印刷し、突起と回路の導通が、確実に取れるように印刷し、その後、印刷された回路部のみをレーザーで加熱、硬化させた。
【0066】
外に露出した内部配線表面上に、上層との導通用の円柱状の突起を、導電性インキ(※1)を使用して、3Dプリンターで立設した。
突起の直径20μm、高さ20μmを印刷した。
【0067】
レーザーを用いて突起のみを局所加熱して硬化させた。
【0068】
以後の工程は、前記した一連の工程を繰り返して、逐次積層して、20層の内部配線を有する超多層のプリント配線板(MLPCB)を作製した。
【0069】
表層(最外層)には種々の電子部品を実装するためのパッド、突起(バンプ)を3Dプリンターで印刷して硬化させた。
印刷インキには前記※1と同じ導電性インキを用いた。
【0070】
ワイヤーボンディング(W/B)や表面実装(SMD)のために、表層のパッド、突起(バンプ)にメッキを行った。
【0071】
W/B用のパッドおよび半田付けのためのパッド上に、2種類のメッキ(Ni/Auメッキ、Ni/Pd/Auメッキ)を行った。
【0072】
W/B用及び半田付けのためのパッドのメッキ工程
1.銅ペースト(導電性インキ)で形成した銅回路、銅突起(バンプ)の酸化物や残存する不純物を除去するために、
硫酸20g/L、クエン酸10g/L、界面活性剤0.1g/Lからなる酸性脱脂材に50℃で3分間浸漬した。
銅の酸化物等が除去され、赤い銅色が現れ、水はじきが無くなった。
【0073】
2.Na
2S
2O
8 10g/L、硫酸 10gからなるエッチング液で、30℃で3分間浸漬し、いわゆるソフトエッチングを行った。
【0074】
3.銅表面に生成したCuOを除くために硫酸20g/Lで、30℃で2分浸漬処理した。
【0075】
4.PdCL
2 0.1g/L、硫酸5g/LからなるPd活性液に、20℃、2分間浸漬した。
【0076】
5.NiSO
4 30g/L、NaH
2PO
2 20g/L、クエン酸 30g/L、pH4.5、浴温85℃で、20分間メッキした。Cu回路、突起部のみにNiが4μmメッキされた。
【0077】
6.KAu(CN)
2 1g/L、クエン酸 10g/L、pH4.5、浴温90℃、で10分メッキした。
Ni上にAuが0.04μmメッキされた。
【0078】
7.このNi/Auメッキされたパットや突起(バンプ)に電子部品を実装した。
Ni/Auメッキされた基板を用いて、パットに対するW/B強度および半田接合強度を測定した。
結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
W/B強度の測定は、30個のテストピースを用いて、20gの力でワイヤーを引張って、何個、パッド部から剥がれたかで評価した。
表中、分子の数字は、30個のテストピース中の剥がれた数を表す。
【0080】
W/B強度および半田接合強度も従来法とほぼ同程度であった。
【0081】
Ni/Pd/Auメッキ工程
無電解Niメッキが終了した基板を、PdCl
2 2g/L、エチレンジアミン20g/L、EDTA 10g/L、ヒドラジン 5g/L、pH9.0からなる無電解Pdメッキ浴に、70℃、5分間、メッキする。
Pdが0.2μmメッキされた。
次に、KAu(CN)
2 2g/L、クエン酸 10g/L、pH4.5からなるAuメッキ液に、90℃、2分間メッキした。
Auメッキが0.001μmメッキされた。
この基板を用いてW/B、半田接合強度を測定した。
結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
半田接合強度の測定は、各々のパッドに半田付けをして引張り、パッドから半田が剥がれた時のg数で強度を評価した。数値は30カ所の強度の平均値を示す。
【0083】
W/B強度および半田接合強度も従来法とほぼ同程度であった。
【0084】
表1、表2の結果から、めっきの種類が変わってもW/B強度および半田接合強度は従来法とほぼ同程度であり、本発明方法で形成した表層のパットは、従来法で形成した表層のパットと、そのメッキ性、密着強度(絶縁層に対する)、強度等の点で、なんら遜色ないことを意味するものである。
【0085】
比較例
以下に記載する従来技術で多層配線基板を作成した。
1.
図1と同じ両面銅張基板を用い片面だけを使用した。
2.まず基板全面にエポキシ樹脂ペーストを40μmの高さを目標に塗布(スクリーン印刷)し、加熱で硬化させた。
3.下層の回路と導通を取るために、硬化させたエポキシ樹脂層にレーザーで直径100μmの穴をあけた。(ブラインドビィア)
4.このブラインドビィアを銅メッキで埋めるために以下の工程を経た。
【0086】
5.常法のエッチング、デスミィヤ、無電解銅メッキ、電解銅メッキ(ビィアフィル)、その後、絶縁膜(エポキシ樹脂層)と同一の高さになるように、銅メッキ面を研磨し、ビィアフィルが完了した。
6.絶縁樹脂と銅メッキとの密着強度を得るために樹脂表面を粗化し、センシタイサン、アクチベーター、無電解銅、電解銅メッキを行い、厚さ20μmの銅メッキ層を形成した。
7.フォトリソグラフィーで銅メッキ層をエッチングして、配線回路とパットを形成した。
8.前記(2)と同様の工程で、エポキシ樹脂を塗布、乾燥、硬化させ、前記(3)と同様の工程で、下層との導通を取るための穴をレーザーで穴あけをした。
4、5、6、7、8の工程を繰返し、逐次、積層して積層数を増やした。
積層水が増えるごとに、導通不良の発生が多くなり、積層数は10層が限界であった。
表層には、W/B用のパットや半田付け用のパット、フリップチップ実装用のバンプを形成し、W/B、半田付けをするためにNi/Au、Ni/Pd/Auメッキを行った。
【0087】
従来法は、工数が極めて多く、製作に長期間を要した。
【0088】
同じ配線基板を本実施例で作製した時と、前記比較例で先制した時の、作製可能層数、歩留まり、作成に必要な日数、製造費用について比較した表を、表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
表3の結果から、本発明は、作製可能層数、歩留まり、作成日数、作製費用等で非常に有利であることが判った。
従来の製作方法と比べ本発明は、エッチングによる回路形成、フォトリソソグラフィ、穴あけ、穴埋め等の工程が省略でき、しかも短期間で確実に良品ができる。また高価な設備、高度な技術、高純度の薬品、部材が不要で、内部配線密度も従来の数倍の密度のものが容易に製作でき、積層する層数も20層の超多層のプリント配線板(MLPCB)が製作でき、電気的導通路や配線回路の断線等が原因の導通不良の発生防止に極めて効果があることが判明した。
【0091】
実施例2
微細な内部配線構造を有する三次元内部配線構造からなるアルミナセラミックス製パッケージ(HTCC)の作製
製造工程は以下のとおりである。
【0092】
1 三次元内部配線を有するセラミックス配線基板の設計情報を3D−CADで作製し、3Dデータを作成し、3Dプリンターに入力した。なお本例で使用した3Dプリンターは米国ストニタシス社のノズルから泥状のものを押し出す方式を用いた。なお本発明で使用する3Dプリンターがこれのみに限定されるものではないことは言うまでもないことである。
【0093】
多層配線板の立体構造を水平断面で薄層に分割する時、3Dプリンターで印刷する一回印刷ごとの絶縁層、配線回路の薄層の印刷厚さは、絶縁層は15μm、配線回路は、20μmにし、絶縁層、配線回路の薄層は、共に一回の印刷で形成できる厚さとした。
【0094】
2 Al
2O
3を主成分としてSiO
2、B
2O
3、PEG(ポリエチレングリコール)等を混合して作製したグリーンシート上に市販のWペーストを用いて3Dプリンターを用いて配線回路とパッドを印刷した。
配線回路の幅は20μm、配線回路間の間隔は20μm、配線回路の厚さは20μmとした。
【0095】
3 還元雰囲気(H2+N2)中でレーザーを用いてグリーンシートと配線回路を同時焼結した。
【0096】
4 次に上層の配線回路との導通用の柱状の突起(直径20μm、高さ20μm)を前述のWペーストを用いて、焼結した配線回路の表面に3Dプリンターで作製し、突起をレーザーで加熱して焼結した。
【0097】
5 前記2で用いたグリーンシートと同成分の粘土状のAl
2O
3スラリーを、突起部分には印刷せず、突起の上部を覆わないように印刷して、上下層間の絶縁層を作製した。Al
2O
3スラリーの印刷厚さ15μm、突起の高さ20μmとし、段差を5μmに設計して印刷した。
【0098】
6 前記3と同じ条件で、絶縁層をレーザーで焼結した。
7 この時点で下層の配線回路と突起(上下層間導通用の柱)が完全に接合され、導通不良がないか、検査し、問題がないことを確認して次工程へ進んだ。
【0099】
8 焼結された絶縁層に前記2と3の工程を繰り返し、導通チェックし、この工程を繰り返して、逐次積層を繰り返した。
【0100】
9 最外層面には電子部品を搭載するためのパット、W/B用のパットを、Wペーストを用いて3Dプリンターで印刷し、焼結した。
10 公知の方法でW/B、半田付用のパット、バンプにNi/Au、Ni/Pd/Auメッキを行って、多層セラミックスICパッケージを完成させた。
完成した多層基板には、ワレ、ソリ、導通不良もなかった。
本発明方法では、欠陥のない健全なセラミックス多層基板を容易に作成できることが確認できた。
【0101】
比較例(従来技術による方法)
従来方法は、下記1〜6の工程で製造した。
1 従来技術はグリーンシートにWペーストを用いて、スクリーン印刷法で回路やパッドを形成した。
2 第2層も同様のグリーンシート上に上下導通用の穴をパンチングで穿孔し、Wペーストで回路を印刷し、穿孔部には、Wペーストを埋め込み、上下導通用の柱に用いた。
3 第三層も第二層と同様の工程で形成した。
4 最外層には、W/B用のパッドや半田付け用のパッドをWペーストで印刷した。
5 逐次積層後、多層版を重ね合わせた後に、還元雰囲気で一体焼結した。
6 焼結後、常法通りの方法で、W/Bパッドや半田付けパッドにメッキを行った。
【0102】
従来技術の最大の問題点は、グリーンシート焼結時、体積が20〜30%収縮すること、収縮時に、内部配線に用いたWペーストの膨張係数の違いにより、回路が断線したり、上下導通の柱が接触不良を起こしたり、基板のワレやソリが多発して、不良率は30〜40%に達している。
本例では、20個作製して、ソリと導通不良併せて9個、不良が発生した。
一方、本発明では、積層時に逐次、断線、接触不良をチェックできること、また各層積層ごとに焼結を行うので、基板のソリやワレは皆無であり、不良率は、0%であった。
【0103】
実施例3
本発明による製法と従来の製法で、絶縁不良、断線の数を比較して、本発明の優位性を証明する。
すなわち同じ仕様でML−PCBを製作した。
使用した最初の基板は市販の銅張両面基板(A4サイズ)を用いた。
銅板の厚さは、20μm、片面のみ用い、導通テスト用の端子をエッチングで作製した。
上下導通用の突起は、直径20μm、高さ20μm、層数は10層積層した。
突起の数は200箇所作成し、各層の突起を突合せて接合し、一層目の端子(突起)と10層目の端子(突起)間で比抵抗を測定して絶縁性や断線の有無を評価した。
本発明の多層基板は、実施例1の方法で作製した。
従来法の基板は、実施例1の比較例1の手法で作製した。
結果は、表4に示す。
【0104】
【表4】
導通テストの条件:下層と上層間の抵抗を測定し、200個の突起の平均値を示す。
耐湿サイクルの条件:90〜60%の湿度の中で25℃×10Hr、65℃×14Hrを1サイクルとして、10サイクル繰り返した。
断線:下層と上層間で全く電流が流れない時を断線とみなした。数字は、200箇所測定した時の断線箇所の数。
【0105】
表4の結果より、本発明は、従来法に比較して比抵抗が小さいうえに、断線が皆無であることである。
【0106】
従来法では、比抵抗が大きくなり、断線発生率が高くなる原因は下記の理由によると思われる。
すなわち、従来法の製作上の最大の問題点は、穴あけ工程でレーザーを用いて、下層の銅回路に達するまでエポキシ樹脂を焼切る方法である。
この方法では、銅表面に樹脂の燃焼残渣や不完全燃焼した樹脂が固着残存したりする。また穴の周囲は、樹脂が融解し、銅表面に被膜を形成し、次工程のデスミィヤ、エッチング工程で除去出来にくく、又確認も難しい。結局、これらの残存物が残った銅表面に電解あるいは無電解銅メッキを行うために、当然、接触抵抗は大きくなり、断線の頻度も高くなるものと推察できる。
またレーザーで開孔された穴の形状は、台形、逆台形、オーバーハング等、色々な形状になっている。均一な形状になっていないのも、不良率が高くなる原因と思われる。
【0107】
一方、本発明は、上下導通用の突起形成時に、突起の周辺には樹脂(絶縁物)は存在しない。硬化焼成時に樹脂等が突起上に流れ込むことはない。
従って本発明には、断線や絶縁不良を起こす原因が存在しない。
また加速劣化試験(耐湿サイクル試験)の結果から、明らかなように、更に優劣がはっきりする。
加速劣化試験後でも導通不良は皆無、抵抗変化も従来法よりも著しく小さい理由は、本発明の突起は、上層と下層との突起の界面は、突起同士が融着して一体化しているためであると推察できる。
【0108】
実施例4
本発明による製法と従来の製法で、絶縁不良、断線、基板のソリを比較して、本発明の優位性を証明する。すなわち同じ仕様でHTCCを製作した。
【0109】
Al2O3を主成分とする絶縁層の厚さは、30μm、上下導通用の突起は、直径30μm、高さ30μmの円柱状にした。
層数は、10層とした。突起の数は200個作製し、各層の突起を突合せて接合し、下層と上層間の比抵抗を測定して、絶縁不良、断線を測定した。
基板のソリ、ワレは目視で評価した。
本発明の製作は、実施例2の方法と同じ方法で作製した。また従来法は実施例2の比較例の手法で作製した。
結果を表5に示す。
【0110】
【表5】
導通テストの条件:下層と上層間の抵抗を測定し、200個の突起の平均値を示す。
耐湿サイクルの条件:90〜60%の湿度の中で25℃×10Hr、65℃×14Hrを1サイクルとして、10サイクル繰り返した。
断線:下層と上層間で全く電流が流れない時を断線とみなした。数字は、200箇所測定した時の断線箇所の数。
【0111】
表5の結果より、本発明は加速劣化試験(耐湿サイクル試験)後でも断線は皆無であるが、従来法は、断線発生率が極めて高いことを証明できた。
【0112】
この原因は、下記の理由によると考えられる。
すなわち、従来方法では、一体成形して焼成するので、セラミックス焼成時の宿命として、体積比で30〜40%収縮は避けられず、このことが、内部配線回路の断線、更に上下導通突起の断線や接触不良を引き起こす最大の原因になっている。従って従来製法では、20〜40%の不良率が発生することは避けられないことである。
一方、本発明の製法は、まずグリーンシートにWペーストによる回路形成、突起形成、その後、回路、突起部分のみをレーザーで局所加熱、焼成する。その後、絶縁用セラミックスを印刷し、焼成する方法である。また更に、本発明は一層ずつ焼成、チェックして、積層する方法であるので、もともと、ワレ、ソリ、断線等は発生しない手法である。
【0113】
実施例5
市販の銅張樹脂基板は使用せずに、最初から3Dプリンターを用いて両面多層配線板を作製する実施例
1.
ダミー材として、まず大きさA4サイズ、厚さ2mmのガラス板を用意した。
2.ガラス板の片面のバンプ、パッドになる部分に、実施例1と同じ銅ペーストを用いて、インクジェット方式で、直径20μm、高さ20μmの柱状の突起を300個印刷し、その部分をレーザーで加熱して硬化させた。
この突起は、反対面に多層配線板を積層するときの始点になるバンプやパットとなる。
3.その後、突起以外の所にエポキシ樹脂系の絶縁樹脂を印刷した。
その時、樹脂が突起の上部を覆わないように印刷した。
樹脂の厚さ15μm、突起の高さは20μmとし、段差を5μmに設計して印刷した。
4.樹脂をレーザーで加熱、硬化させた。
5.次に2)と同一の銅ペーストを用いて、幅20μm、高さ20μmの配線回路を樹脂の表面に印刷した。
2)で形成した突起上に銅ペーストが被るように印刷し、突起と回路が、確実に導通が取れるように印刷し、その後、印刷された回路部のみをレーザーを用いて加熱、硬化させた。
6.次に回路部に、上下層間の導通を取るために、直径20μm、高さ20μmの柱状の突起300個を、2)で用いた銅ペーストインクを用いて、回路部表面に印刷した。その後、突起部のみをレーザーで加熱、硬化させた。
7.3)と同様に、柱状の突起以外の部分に、エポキシ樹脂を印刷し、加熱、硬化させた。この場合も突起の上部に樹脂が被さっていないかを、導通テストで確認しながら作業した。
8.6)〜7)の工程を繰り返して、片側20層の多層配線板を作製した。
9.最外表面には、フリップチップ用のバンプ(直径20μm、高さ20μm)を形成し、レーザーで加熱、硬化させた。
10.作成された多層配線板を、150℃で3時間、加熱して、樹脂、回路、突起を十分硬化させた。
11.次に、最初に用いたガラス板を多層配線板から外した。
得られた多層配線板の裏側には、樹脂に埋め込まれた突起の端面が露出した。
この部分は裏面のパッドになる。この裏面のパッド部を起点にして、突起形成、絶縁樹脂の印刷を繰り返して、裏表同一構造で、裏表合計40層の多層配線板を作製し、実施例1の方法で無電解メッキを行った。
12.W/B強度や半田付け強度等も、実施例1と同様の強度が得られ、従来方法で作製されたものと同等であった。
【0114】
実施例6
両面、多層配線板の層間に、電子部品(抵抗、コイル等の回路素子)を作り込む実施例
1.大きさA4サイズ、厚さ2mmのガラス板を用意した。
2.ガラス版の片面、バンプ、回路、パッドになる位置に、実施例2に用いた市販のWペーストを用いて、インクジェット方式で、バンプ、回路、パッドを印刷した。
3.還元雰囲気中(H
2+N
2)中でレーザーを用いて、W印刷部を加熱、焼結した。
4.次に、上層との導通用の柱状の突起(直径20μm、高さ20μm)を、前記Wペーストを用いて、回路部に立設した。
突起部を前記3)の方法で加熱、焼結した。
突起の数は、20個/2cm
2とした。
5.実施例2で用いたグリーンシートと同じ成分を突起の上に被らないように、低い高さ(15μm)印刷し、上下層間の絶縁層を形成し、前記3)と同じ工程で焼結した。
6.この時点で、下層の回路と突起が完全に接合し、導通が取れていることを確認した。
7.絶縁層の上に、回路、パッドを、Wペーストを用いて印刷した。
回路やパッドは、突起を通して上下層と導通した構造にした。
前記3)の工程で、パッド、回路を焼結した。
8.次に抵抗を印刷した。
抵抗は、パッドと導通が取れる設計にした。
抵抗の成分は、Ni微粉45質量%、Cr微粉45質量%、SiO
25質量%、B
2O
35質量%からなるものに、水を加えて粘土状にしたものを3Dプリンターでくし状に印刷し、レーザーで加熱、焼結した。
9.更に回路上に、前記4)と同じ工程で、突起を立てた。
10.前記5)と同じ工程で、絶縁層を形成した。
11.前記7と同じ工程で、パッドや回路を印刷した。
12.次に層間にバリスターを作り込む
13.ZnO+SiC+ZnO−BiO
3の微粉と水とニトロセルロースを混合し、スラリー状にしたものをインクジェット方式で回路とパッドの間に印刷し、回路と導通できるように設計した。
レーザーを用いて焼結した。
特性をチェックし、性能を確認した。
14.前記9と同じ工程で突起を立て、焼結した。
15.前記5と同じ工程で絶縁層を作製し、焼結した。
16.最表面に実装用のパッド、フリップチップ実装用のバンプを形成し、焼結した。
17.パッドやバンプには、Ni−Auメッキを施した。
18.ガラス基板を外し、反対側にも同じ工程を繰り返し、最外層には、メッキを施した。いわゆる層間に電子部品を実装した両面多層配線板が得られた。
【0115】
実施例7
両面、多層配線板の層間に、既成の電子部品(抵抗、コイル等の回路素子)を作り込む実施例
1.
ダミー材として、まず大きさA4サイズ、厚さ2mmのガラス板を用意した。
2.ガラス版の片面、バンプ、回路、パッドになる位置に、実施例1に用いた導電性ペーストを用いて、バンプ、回路、パッドを印刷し、レーザーで加熱、硬化させた。
3.実施例1の方法で、絶縁樹脂を印刷した。その際、バンプ、回路、パッドには絶縁樹脂が覆い被らないように印刷し、加熱、硬化した。
4.回路部やパッド部に、直径20μm、高さ20μmの突起を200個立てた。
5.前記3)と同じ方法で、絶縁樹脂を高さ15μmで印刷、硬化させた。その際、突起に絶縁樹脂が覆い被らないように注意して印刷し、加熱、硬化させた。
6.突出した突起に既製のSAWフィルターを半田付けした。
使用した半田は、質量比で、Ag:Cu:Sn=3.0:0.5:96.5の割合で、これらの0.1〜2.0μの微粉を50質量%、ブチルセルソルブ10質量%、メチルセルロース10質量%、水30質量%を良く混和して3Dプリンターで印刷しやすい状態にしたもの。
7.更に別の突起には、市販のセラミックス製の抵抗を接合し、又別の突起には、樹脂上に形成されたアンテナを実装した。
8.残りの突起および絶縁樹脂に覆われていない回路の開口部に、高さ20μm、直径20μmの突起を立てた。
9.前記3)と同じ工程で、絶縁樹脂を印刷した。
10.この操作を繰り返して、片面20層の多層配線基板を作製した。
11.最外層には、半導体や電子部品を実装できるようにバンプやパッドを形成した。
12.得られた多層配線基板から、ガラス基板を外し、反対側にも同じ工程を繰り返し、最外層には、メッキを施した。いわゆる層間に電子部品を実装した両面多層配線板が得られた。
【0116】
実施例6、7によって、下記のことが判明した。
すなわち層間に既製のIC、電子部品を作り込むことにより、基板の厚みを大幅に減らすことが出来、最外層のスペースが広くなり、他の電子部品を実装できる余裕が生まれることが判明した。
本発明は、電子部品の軽薄短小化に多大なる貢献が出来ることが判明した。