特許第6190738号(P6190738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190738
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】電子写真用部材
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20170821BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20170821BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20170821BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20170821BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   G03G15/08 235
   G03G15/02 101
   G03G15/16 103
   G03G15/00 550
   G03G21/00 318
【請求項の数】5
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-38389(P2014-38389)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-161889(P2015-161889A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 洋介
(72)【発明者】
【氏名】今井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 政典
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−205758(JP,A)
【文献】 特開2003−003032(JP,A)
【文献】 特開平07−121009(JP,A)
【文献】 特開2013−033238(JP,A)
【文献】 特開2013−097118(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0148438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置に用いられる電子写真用部材であって、当該電子写真用部材の部材表面を含むポリマー層を有しており、
該ポリマー層は、該ポリマー層の骨格を形成するマトリックスポリマーと、該マトリックスポリマー中に添加された表面改質剤とを有しており、
該表面改質剤は、分子内にシリコーン基を有する第1化合物に基づく第1重合単位、および/または、分子内にフッ素含有基を有する第2化合物に基づく第2重合単位と、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物に基づく第3重合単位とを含む共重合体からなることを特徴とする電子写真用部材。
【請求項2】
上記疎水性アニオンは、過塩素酸アニオン、ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、および、ヘキサフルオロリン酸アニオンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用部材。
【請求項3】
上記共重合体は、分子内に水酸基を有する第4化合物に基づく第4重合単位をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用部材。
【請求項4】
上記第1化合物は、分子内に上記シリコーン基を有する(メタ)アクリレートであり、
上記第2化合物は、分子内に上記フッ素含有基を有する(メタ)アクリレートであり、
上記第4級アンモニウムカチオンは、(メタ)アクリロイル基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真用部材。
【請求項5】
電子写真方式の画像形成装置に組み込まれる現像部材、帯電部材、転写部材、または、クリーニング部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機やプリンター、ファクシミリ等の電子写真装置が知られている。これら電子写真装置は、帯電させた感光体への画像データ露光による潜像形成、現像、転写媒体への転写、定着等の工程を経て画像形成を行う。そのため、装置内には、これら工程を実現するために各種の電子写真用部材が組み込まれている。
【0003】
例えば、感光体表面を帯電させるためにロール状の帯電部材が組み込まれている。また、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像とするためにロール状の現像部材が組み込まれている。また最近では、複数の感光体によって色別に形成した各トナー像をベルト表面に一次転写して各色のトナー像を重ね合わせ、これを用紙上に二次転写するため、ベルト状の中間転写部材が用いられている。
【0004】
上記電子写真用部材としては、具体的には、例えば、特許文献1に、マトリックスポリマー中にポリマー系の表面改質剤を含有させてなる表層を有する現像部材が開示されている。同文献には、具体的には、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドと、(メタ)アクリレート変性シリコーン化合物と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートと、メタクリル酸メチルとの共重合体からなる表面改質剤が記載されている。同文献には、表面改質剤中のシリコーン基により、部材表面に接触する相手部材との滑り性が発揮される点が記載されている。また、表面改質剤中のフッ素含有基により、部材表面に接触したトナーが離れやすい性質であるトナー離型性が発揮される点が記載されている。また、表面改質剤中のアミノ基により、トナーに電荷を持たせる性質であるトナー荷電性が発揮される点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−205758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術は、以下の点で未だ改善の余地がある。すなわち、トナー荷電性を発揮するためのアミノ基は、水分との親和性が高い。そのため、例えば、32.5℃×85%RH程度の高温高湿環境下において、上記表面改質剤を用いた従来の電子写真用部材が使用された場合、周囲の水分とアミノ基との間で相互作用が生じ、トナー荷電性が低下する。それ故、部材表面の滑り性および/またはトナー離型性と、高温高湿環境下におけるトナー荷電性とを同時に発揮することができる電子写真用部材を得ることは難しい。
【0007】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、部材表面の滑り性および/またはトナー離型性と、高温高湿環境下におけるトナー荷電性とを同時に発揮することが可能な電子写真用部材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、電子写真装置に用いられる電子写真用部材であって、当該電子写真用部材の部材表面を含むポリマー層を有しており、
該ポリマー層は、該ポリマー層の骨格を形成するマトリックスポリマーと、該マトリックスポリマー中に添加された表面改質剤とを有しており、
該表面改質剤は、分子内にシリコーン基を有する第1化合物に基づく第1重合単位、および/または、分子内にフッ素含有基を有する第2化合物に基づく第2重合単位と、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物に基づく第3重合単位とを含む共重合体からなることを特徴とする電子写真用部材にある。
【発明の効果】
【0009】
上記電子写真用部材は、部材表面を含むポリマー層の骨格を形成するマトリックスポリマー中に、上記特定の重合単位を含む共重合体からなる表面改質剤が添加されている。そのため、上記電子写真用部材は、上記表面改質剤中の第1重合単位および/または第2重合単位と第3重合単位とを、ポリマー層の表面近傍に強制的に存在させることができる。
【0010】
そのため、上記電子写真用部材は、上記表面改質剤中の第1重合単位に含まれるシリコーン基および/または第2重合単位に含まれるフッ素含有基により、部材表面の滑り性および/またはトナー離型性が付与される。ここで、上記表面改質剤における第3重合単位は、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物より形成されているので、水分との間で相互作用が生じ難い。そのため、上記電子写真用部材は、高温高湿環境下で使用された場合であっても、上記表面改質剤中の第3重合単位により、トナーを十分に荷電させることができる。
【0011】
よって、本発明によれば、部材表面の滑り性および/またはトナー離型性と、高温高湿環境下におけるトナー荷電性とを同時に発揮することが可能な電子写真用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の電子写真用部材を模式的に示した図である。
図2図1におけるII−II断面を示した図である。
図3】実施例1の電子写真用部材において、ポリマー層の構成を模式的に示した図である。
図4】実施例2の電子写真用部材を模式的に示した図である。
図5図4におけるV−V断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記電子写真用部材は、電子写真装置に用いられる部材である。電子写真装置としては、具体的には、帯電像を用いる電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ、複合機、POD(Print On Demand)装置等の画像形成装置を例示することができる。
【0014】
上記電子写真用部材は、具体的には、電子写真方式の画像形成装置に組み込まれる現像部材、帯電部材、転写部材、または、クリーニング部材とすることができる。なお、転写部材としては、具体的には、中間転写部材を例示することができる。中間転写部材は、感光体に担持されたトナー像を当該部材に一次転写した後、このトナー像を当該部材から用紙等の転写材へ二次転写するためのものである。
【0015】
上記電子写真用部材が現像部材として使用される場合は、高温高湿環境下におけるカブリ画像を抑制しやすくなるため、画像品質の向上とトナー消費量の低減とを図りやすくなる。上記電子写真用部材が帯電部材として使用される場合は、汚れの原因となる未転写のトナーを負に帯電させやすくなるので、高温高湿環境下におけるトナーフィルミングを抑制しやすくなる。上記電子写真用部材が転写部材として使用される場合は、高温高湿環境下であっても感光体表面にあるトナーの負電荷を高めることができるので、転写効率が向上し、画像品質の向上とトナー消費量の低減とを図りやすくなる。上記電子写真用部材がクリーニング部材として使用される場合は、クリーニング時にすり抜けてしまうトナーを負に帯電させやすくなるので、高温高湿環境下であってもすり抜けトナーによって帯電部材表面が汚れ難くなる。
【0016】
上記電子写真用部材は、具体的には、例えば、(1)軸体と、軸体の外周面に沿って形成された弾性層と、弾性層の外周面に沿って形成されたポリマー層とを有する構成、(2)軸体と、軸体の外周に沿って形成されたポリマー層とを有する構成、(3)筒状に形成された基層と、基層の外周面に沿って形成されたポリマー層とを有する構成、(4)筒状に形成された基層と、基層の外周面に沿って形成された弾性層と、弾性層の外周面に沿って形成されたポリマー層とを有する構成、(5)筒状に形成されたポリマー層を有する構成、(6)ブレード本体と、ブレード本体表面の一部または全部を被覆するポリマー層と、ブレード本体を保持する保持部とを有する構成、(7)ブレード状に形成されたポリマー層と、ポリマー層を保持する保持部とを有する構成などとすることができる。構成(1)、(2)は現像部材や帯電部材、構成(3)〜(5)は転写部材、構成(6)、(7)はクリーニング部材の形態として好適である。
【0017】
ここで、上記電子写真用部材におけるポリマー層は、ポリマー層の骨格を形成するマトリックスポリマーと、マトリックスポリマー中に添加された表面改質剤とを有している。
【0018】
マトリックスポリマーは、ポリマー層の基本的な骨格を形づくるポリマー成分として重要な役割を果たす。マトリックスポリマーは、上記役割を果たすことができれば、各種の樹脂やゴム(ゴムにはエラストマーも含まれる、以下省略)を用いることができる。これらは1種または2種以上併用することができ、電子写真用部材の用途等に応じて最適な材料を選択することができる。
【0019】
上記樹脂としては、例えば、各種の熱可塑性樹脂や、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合ポリマーなどを用いることができる。上記樹脂としては、具体的には、例えば、ウレタン樹脂;ウレタンシリコーン樹脂;ウレタンフッ素樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;(メタ)アクリル樹脂;(メタ)アクリルシリコーン樹脂;(メタ)アクリルフッ素樹脂;フッ素樹脂;アセタール樹脂;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリエーテル樹脂;カーボネート樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリアクリルアミド;ポリエチレンオキサイド;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリビニルメチルエーテル;ポリアミン;ポリエチレンイミン;カゼイン、ゼラチン、澱粉およびこれらの共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレンおよび他のオレフィン系単量体との共重合樹脂等のオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のスチレン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂;ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂およびこれらの誘導体または変性体;ポリイソブチレン;ポリテトラヒドロフラン;ポリアニリン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);ポリイソプレン;ポリブタジエン等のポリジエン類;ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類;ポリスルホン類;ポリイミン類;ポリ無水酢酸類;ポリ尿素類;ポリスルフィド類;ポリフォスファゼン類;ポリケトン類;ポリフェニレン類;ポリハロオレフィン類およびこれらの誘導体;メラミン樹脂;UV硬化性(メタ)アクリル樹脂などを例示することができる。これらのうち、好ましくは、ポリマー層の柔軟性向上、耐摩耗性向上などの観点から、ウレタン樹脂、ウレタンシリコーン樹脂、ウレタンフッ素樹脂などを用いることができる。
【0020】
また、上記ゴムとしては、具体的には、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(ECO、CO)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、これらの変成体などを例示することができる。これらのうち、好ましくは、ポリマー層の柔軟性向上、耐摩耗性向上などの観点から、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、これらの変成体などを用いることができる。
【0021】
一方、マトリックスポリマー中に添加剤として含有された表面改質剤は、ポリマー層の表面近傍に主に存在してポリマー層表面を改質する成分として重要な役割を果たす。表面改質剤は、分子内にシリコーン基を有する第1化合物に基づく第1重合単位、および/または、分子内にフッ素含有基を有する第2化合物に基づく第2重合単位と、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物に基づく第3重合単位とを含む共重合体より構成されている。なお、「フッ素含有基」とは、フッ素原子を含有する基をいい、−Fを含む。
【0022】
上記表面改質剤は、第1重合単位と第2重合単位と第3重合単位とを含む共重合体より構成されていることが好ましい。この場合には、部材表面の滑り性とトナー離型性と高温高湿環境下におけるトナー荷電性とを同時に発揮することが可能な電子写真用部材が得られる。そのため、この電子写真用部材が現像部材、帯電部材として使用される場合には、上述した各作用効果に加え、さらに、トナーフィルミングの抑制、トナー固着の抑制による耐久性の向上を図りやすくなる利点がある。
【0023】
上記表面改質剤は、1種または2種以上の第1重合単位、および/または、1種または2種以上の第2重合単位を含むことができる。また、表面改質剤は、1種または2種以上の第3重合単位を含むことができる。さらに、表面改質剤は、1種または2種以上併用することができる。
【0024】
上記表面改質剤は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。好ましくは、表面改質剤は、ランダム共重合体であるとよい。この場合は、第1重合単位および/または第2重合単位と第3重合単位とを、ポリマー層の表面近傍にランダムに存在させやすくなる。そのため、この場合は、滑り性および/またはトナー離型性のムラとトナー荷電性のムラとが生じ難くなる利点がある。また、表面改質剤は、例えば、直鎖状、分岐状等のポリマー構造を有することができる。
【0025】
上記第1重合単位において、第1化合物としては、例えば、分子内にシリコーン基を有する(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。この場合には、表面改質剤の合成時に、(メタ)アクリロイル基の不飽和結合を利用して共重合反応をさせることができるので、第1化合物を重合成分とする上記表面改質剤を構成しやすくなる。なお、本願において(メタ)アクリレートは、アクリレート、メタクリレートの両方を包含する意味である。同様に、(メタ)アクリロイルは、アクリロイル、メタクリロイルの両方を包含する意味である。
【0026】
上記第1化合物は、1種または2種以上のシリコーン基を有することができる。シリコーン基は、具体的には、例えば、ジメチルシロキサン単位の繰り返しから構成されるポリジメチルシロキサン骨格を含むことができる。この場合は、比較的簡易な分子構造のポリジメチルシロキサン骨格にてシリコーン基の分子量を大きくすることができるので、ポリマー層表面の滑り性を向上させやすくなる利点がある。
【0027】
上記ポリジメチルシロキサン骨格は、ポリマー層表面の滑り性向上などの観点から、重量平均分子量が、好ましくは275以上、より好ましくは350以上、さらにより好ましくは420以上とすることができる。また、上記ポリジメチルシロキサン骨格は、表面改質剤の合成時における反応性、ポリマー層形成用材料の溶媒への溶解性などの観点から、重量平均分子量が、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下、さらにより好ましくは12000以下とすることができる。なお、上記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により測定することができる。
【0028】
上記第2重合単位において、第2化合物としては、例えば、分子内にフッ素含有基を有する(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。この場合には、表面改質剤の合成時に、(メタ)アクリロイル基の不飽和結合を利用して共重合反応をさせることができるので、第2化合物を重合成分とする上記表面改質剤を構成しやすくなる。
【0029】
上記第2化合物は、1種または2種以上のフッ素含有基を有することができる。フッ素含有基は、具体的には、例えば、フルオロアルキル基、フルオロアルキルアルキレンオキシド基、フルオロアルケニル基、−Fなどから構成することができる。
【0030】
これらのうち、上記フッ素含有基としては、トナー離型性、フッ素含有基を有する(メタ)アクリレートの入手容易性等の観点から、フルオロアルキル基、好ましくは、炭素数4〜12程度のフルオロアルキル基を好適に用いることができる。フルオロアルキル基は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素化されていてもよいし、一部にフッ素化されていない箇所を含んでいてもよい。前者は、全フッ素化であり、後者は、部分フッ素化である。特に好ましくは、フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であるとよい。パーフルオロアルキル基は構造的な安定性が高いので、トナーを寄せ付けたままとし難く、ポリマー層表面のトナー離型性を向上させやすいからである。
【0031】
上記フルオロアルキル基としては、具体的には、例えば、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロブチル、ペンタフルオロプロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロオクチル、パーフルオロデシル、パーフルオロ−3−メチルブチル、パーフルオロ−5−メチルヘキシル、パーフルオロ−7−メチルオクチル、オクタフルオロペンチル、ドデカフルオロヘプチル、ヘキサデカフルオロノニルなどを例示することができる。
【0032】
上記第3重合単位において、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物の一部を構成する疎水性アニオンとしては、具体的には、例えば、過塩素酸アニオン、ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0033】
この場合には、高温高湿環境下においてトナーを荷電させやすい電子写真用部材を得ることができる。上記疎水性アニオンは、好ましくは、ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオンなどであるとよい。高温高湿環境下におけるトナー荷電性に優れるからである。
【0034】
なお、上記ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンにおけるフルオロアルカンは、好ましくは、炭素数1〜4程度のフルオロアルカンを好適に用いることができる。フルオロアルカンは、アルカンの全ての水素原子がフッ素化されていてもよいし、一部にフッ素化されていない箇所を含んでいてもよい。上記ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドアニオンとしては、具体的には、上記ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンなどを例示することができる。
【0035】
上記第3重合単位において、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物の一部を構成する第4級アンモニウムカチオンは、具体的には、その構造中に(メタ)アクリロイル基を有することができる。
【0036】
この場合には、表面改質剤の合成時に、(メタ)アクリロイル基の不飽和結合を利用して共重合反応をさせることができるので、第3化合物を重合成分とする上記表面改質剤を構成しやすくなる。
【0037】
上記第4級アンモニウムカチオンとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリレート基を有する第4級アンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミド基を有する第4級アンモニウムカチオンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。上記第4級アンモニウムカチオンとしては、より具体的には、例えば、下記式1にて示されるカチオン、下記式2にて示されるカチオンなどを例示することができる。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
上記式1および式2中、Rは、表面改質剤の硬度などの観点から、好ましくは、(CH(nは1〜4)、より好ましくは、(CHであるとよい。また、R、R、Rは、いずれも、表面改質剤の硬度や疎水性、相溶性などの観点から、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であるとよい。
【0041】
上記(メタ)アクリレート基を有する第4級アンモニウムカチオンとしては、より具体的には、例えば、下記式3にて示されるカチオン、下記式4にて示されるカチオン、下記式5にて示されるカチオンなどを例示することができる。また、上記(メタ)アクリルアミド基を有する第4級アンモニウムカチオンとしては、より具体的には、例えば、下記式6にて示されるカチオン、下記式7にて示されるカチオンなどを例示することができる。上記第4級アンモニウムカチオンは、好ましくは、表面改質剤の合成が比較的容易であるなどの観点から、下記式3にて示されるカチオンであるとよい。
【0042】
【化3】
【0043】
【化4】
【0044】
【化5】
【0045】
【化6】
【0046】
【化7】
【0047】
上記表面改質剤において、分子内にシリコーン基を有する第1化合物は、より具体的には、下記式8にて示される化合物とすることができる。また、分子内にフッ素含有基を有する第2化合物は、より具体的には、下記式9にて示される化合物とすることができる。また、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物は、より具体的には、下記式10にて示される化合物、下記式11にて示される化合物などとすることができる。
【0048】
【化8】
【0049】
上記式8中、Rは、(メタ)アクリロイル基の反応性などの観点から、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であるとよい。Rを構成しうる骨格としてのアルキル基は、(メタ)アクリロイル基の反応性などの観点から、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であるとよい。R、Rを構成しうる骨格としてのアルキル基は、(メタ)アクリロイル基の反応性などの観点から、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であるとよい。Xは、アクリル酸またはアクリル酸変成体に対しシラノール基を有するジメチルシロキサンまたはその他のジメチルシロキサン変成体を付加させる(合成する)場合の反応性などの観点から、好ましくはウレタン基などであるとよい。なお、上記アクリル酸変成体は、例えば、アクリル酸に反応性の高い官能基を付加したもの等である。また、上記ジメチルシロキサン変成体は、例えば、シラノール基を有するジメチルシロキサンがアクリル酸末端と反応性を持つように変性されたもの等である。nは、表面改質剤の合成時の反応性、滑り性などの観点から、好ましくは2〜270の整数、より好ましくは5〜160の整数であるとよい。
【0050】
【化9】
【0051】
【化10】
【0052】
【化11】
【0053】
上記式10および式11中、Rは、表面改質剤の硬度などの観点から、好ましくは、(CH(nは1〜4)、より好ましくは、(CHであるとよい。また、R、R、Rは、いずれも、表面改質剤の硬度や疎水性、相溶性などの観点から、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であるとよい。上記式10中、第4級アンモニウムカチオン部分は、より好ましくは、上述した式3に示されるカチオンであるとよい。また、上記式11中、第4級アンモニウムカチオン部分は、より好ましくは、上述した式6に示されるカチオンであるとよい。また、Aは、高温高湿環境下におけるトナー荷電性の向上などの観点から、ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオンであるとよい。
【0054】
上記式8〜式11にて示される化合物は、比較的準備が容易であるので、上記表面改質剤を比較的容易に合成することができる。そのため、これらの場合は、上記作用効果を奏する電子写真用部材を得やすくなる。
【0055】
上記表面改質剤は、第1重合単位を0.01〜60mol%含むことができる。上記表面改質剤は、第2重合単位を0.01〜60mol%含むことができる。上記表面改質剤は、第3重合単位を0.01〜60mol%含むことができる。これらの場合には、ポリマー層表面の滑り性、トナー離型性、高温高湿環境下におけるトナー荷電性を確実なものとすることが可能になる。また、表面改質剤の各重合単位の割合を上記範囲内で調節することにより、各特性のバランスを制御することができる。なお、第1重合単位、第2重合単位、第3重合単位の割合は、後述する他の重合単位を含む場合にはその重合単位を含めた各重合単位の合計の割合が100mol%となるように選択することができる。なお、上記重合単位の割合は、熱分解GC/MS分析、NMR分析などにより測定することができる。
【0056】
第1重合単位の割合は、十分な滑り性を得る観点から、好ましくは0.05mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上、さらに好ましくは0.3mol%以上とすることができる。また、第1重合単位の割合は、マトリックスポリマーや希釈溶媒への溶解性などの観点から、好ましくは50mol%以下、より好ましくは30mol%以下、さらに好ましくは10mol%以下とすることができる。
【0057】
第2重合単位の割合は、十分なトナー離型性を得る観点から、好ましくは0.05mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上、さらに好ましくは0.3mol%以上とすることができる。また、第2重合単位の割合は、マトリックスポリマーや希釈溶媒への溶解性などの観点から、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下とすることができる。
【0058】
第3重合単位の割合は、高温高湿環境下において十分なトナー荷電性を得る観点から、好ましくは0.05mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上、さらに好ましくは0.3mol%以上とすることができる。また、第3重合単位の割合は、マトリックスポリマーや希釈溶媒への溶解性などの観点から、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下とすることができる。
【0059】
上記表面改質剤は、第1重合単位および/または第2重合単位、第3重合単位以外にも、他の重合単位を必要に応じて1種または2種以上含むことができる。
【0060】
例えば、上記表面改質剤は、分子内に水酸基を有する第4化合物に基づく第4重合単位をさらに含むことができる。なお、表面改質剤は、1種または2種以上の第4重合単位を含むことができる。
【0061】
この場合には、表面改質剤中の第4重合単位に含まれる水酸基により、マトリックスポリマーと表面改質剤との相溶性を向上させることができる。そのため、ポリマー層の耐久性を向上させることが可能になる。とりわけ、マトリックスポリマーが熱硬化性ポリウレタンを含む場合には、水酸基がマトリックスポリマーと反応するため、上記効果が大きくなる。また、この水酸基をきっかけに他の官能基を修飾することにより、上記熱硬化性ポリウレタン以外のマトリックスポリマーについても上記効果を大きくすることができる。
【0062】
上記第4重合単位おいて、第4化合物としては、例えば、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレート、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリルアミドなどを好適に用いることができる。この場合には、表面改質剤の合成時に、(メタ)アクリロイル基の不飽和結合を利用して共重合反応をさせることができるので、第4化合物を重合成分とする上記表面改質剤を構成しやすくなる。
【0063】
上記第4化合物としては、具体的には、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどを例示することができる。第4化合物は、より具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基の反応性、マトリックスポリマーに対する相溶性などの観点から、下記式12にて示される化合物、下記式13にて示される化合物などとすることができる。
【0064】
【化12】
【0065】
上記式12中、Rを構成しうる骨格としてのアルキル基は、(メタ)アクリロイル基の反応性などの観点から、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であるとよい。Rを構成しうる骨格としてのアリール基は、(メタ)アクリロイル基の反応性、マトリックスポリマーに対する相溶性などの観点から、好ましくはフェニル基またはベンジル基であるとよい。Rを構成しうる骨格としてのアラルキル基は、(メタ)アクリロイル基の反応性、マトリックスポリマーに対する相溶性などの観点から、好ましくはベンジル基またはフェネチル基であるとよい。
【0066】
【化13】
【0067】
上記式13中、Rを構成しうる骨格としてのアルキル基は、(メタ)アクリロイル基の反応性などの観点から、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であるとよい。Rを構成しうる骨格としてのアリール基は、(メタ)アクリロイル基の反応性、マトリックスポリマーに対する相溶性などの観点から、好ましくはフェニル基またはベンジル基であるとよい。Rを構成しうる骨格としてのアラルキル基は、(メタ)アクリロイル基の反応性、マトリックスポリマーに対する相溶性の観点から、好ましくはベンジル基またはフェネチル基であるとよい。
【0068】
また例えば、上記表面改質剤は、分子内にアルキル基を有する第5化合物に基づく第5重合単位をさらに含むことができる。なお、表面改質剤は、1種または2種以上の第5重合単位を含むことができる。
【0069】
この場合には、表面改質剤中の第5重合単位に含まれるアルキル基により、マトリックスポリマーと表面改質剤との相溶性を向上させることができる。そのため、ポリマー層の耐久性を向上させることが可能になる。
【0070】
上記第5重合単位において、第5化合物としては、例えば、分子内にアルキル基を有する(メタ)アクリレート、具体的には、アルキル(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。この場合には、表面改質剤の合成時に、(メタ)アクリロイル基の不飽和結合を利用して共重合反応をさせることができるので、第5化合物を重合成分とする上記表面改質剤を構成しやすくなる。
【0071】
上記第5化合物としては、具体的には、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどを例示することができる。この場合は、表面改質剤の合成時に上述した第1重合単位〜第4重合単位とともに共重合させやすい上、マトリックスポリマーと表面改質剤との相溶性を向上させやすく、上記作用効果を得やすくなる。
【0072】
上記表面改質剤は、第4重合単位を0〜95mol%含むことができる。上記表面改質剤は、第5重合単位を0〜95mol%含むことができる。第4重合単位の割合は、マトリックスポリマーとの相溶性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは10mol%以上、より好ましくは30mol%以上、さらに好ましくは50mol%以上とすることができる。また、第4重合単位の割合は、第1重合単位および/または第2重合単位と第3重合単位との割合を確保するなどの観点から、好ましくは94mol%以下、より好ましくは93mol%以下、さらに好ましくは90mol%以下とすることができる。一方、第5重合単位の割合は、マトリックスポリマーとの相溶性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは10mol%以上、より好ましくは30mol%以上、さらに好ましくは50mol%以上とすることができる。また、第5重合単位の割合は、第1重合単位および/または第2重合単位と第3重合単位との割合を確保するなどの観点から、好ましくは94mol%以下、より好ましくは93mol%以下、さらに好ましくは90mol%以下とすることができる。
【0073】
上記表面改質剤は、分子内にシリコーン基および/またはフッ素含有基とは異なる官能基を有する(メタ)アクリレート等の有機化合物に基づく重合単位をさらに含むことができる。
【0074】
この場合は、上記官能基に起因する機能をポリマー層表面にさらに付与することが可能となり、ポリマー層表面の機能性をより一層向上させることができる。上記官能基としては、具体的には、例えば、エステル基、エーテル基などを例示することができる。上記官能基のうち、例えば、エーテル基、エステル基などは、ポリマー層の電気抵抗を下げる効果がある。
【0075】
上記表面改質剤は、より具体的には、下記式14にて示される分子構造を有する化合物から選択される1種または2種以上から構成することができる。
【0076】
【化14】
【0077】
上記式14中、Rは、(メタ)アクリロイル基の反応性などの観点から、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であるとよい。Rは、(メタ)アクリロイル基の反応性などの観点から、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であるとよい。また、上述した理由により、モル%でpは、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは1.0以上とすることができる。モル%でpは、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは10以下とすることができる。また、モル%でqは、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは1.0以上とすることができる。モル%でqは、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは30以下とすることができる。また、モル%でrは、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは1.0以上とすることができる。モル%でrは、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは30以下とすることができる。また、モル%でsは、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは1.0以上とすることができる。モル%でsは、94以下、好ましくは93以下、より好ましくは92以下、さらに好ましくは90以下とすることができる。また、モル%でtは、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは1.0以上とすることができる。モル%でtは、94以下、好ましくは93以下、より好ましくは92以下、さらに好ましくは90以下とすることができる。なお、上述したように、各重合単位の割合であるp、q、r、s、tは、合計で100モル%となるように選択される。また、p、qはいずれも0をとりうる。但し、p=0のときq>0、q=0のとき、p>0であり、pおよびqが同時に0になることはない。また、nは好ましくは2〜270の整数、より好ましくは5〜160の整数であるとよい。
【0078】
上記ポリマー層は、マトリックスポリマー100質量部に対し、表面改質剤を0.01〜40質量部含有することができる。この場合には、部材表面の滑り性および/またはトナー離型性と、高温高湿環境下におけるトナー荷電性とを確実なものとすることができる。また、表面改質剤の含有量を上記範囲内で調節することにより、両特性のバランスを制御することができる。
【0079】
表面改質剤の含有量は、添加による十分な効果を得るなどの観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上とすることができる。また、表面改質剤の含有量は、マトリックスポリマーとの相溶性、マトリックスポリマーからのブリード抑制、コストなどの観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは9質量部以下、さらにより好ましくは7質量部以下、さらにより一層好ましくは5質量部以下、最も好ましくは3質量部以下とすることができる。なお、表面改質剤の含有量は、溶剤による抽出後、抽出物を熱分解GC/MS分析、NMR分析して上記表面改質剤の構造を特定した後、材料全体を熱分解GC/MS分析することなどによって測定することができる。
【0080】
上記ポリマー層は、マトリックスポリマー中に、他にも、例えば、導電剤を含有することができる。導電剤としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素系導電材料、チタン酸バリウム、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は導電性を意味する。)等の導電性の金属酸化物や金属ナノ粒子などといった電子導電剤、ポリアニリン、ポリピロールなどといった導電ポリマー、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、過塩素酸塩、イオン液体などといったイオン導電剤などを例示することができる。
【0081】
上記ポリマー層は、マトリックスポリマー中に、他にも、必要に応じて、反応触媒、フィラー(無機系、有機系)、カップリング剤、分散剤、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粗さ形成用粒子などの各種添加剤を含有することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0082】
上記ポリマー層の厚みは、特に限定されるものではなく、耐摩耗性、柔軟性などを考慮して最適な厚みとすることができる。上記ポリマー層の厚みは、例えば、1〜100μm程度とすることができる。
【0083】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0084】
実施例の電子写真用部材について、図面を用いて具体的に説明する。
【0085】
(実施例1)
実施例1に係る電子写真用部材の概略構成を図1図3を用いて説明する。図1図2に示すように、電子写真用部材Rは、電子写真装置に用いられるものである。本例の電子写真用部材は、具体的には、電子写真方式の画像形成装置に組み込まれるロール状の導電性部材であり、現像部材としての現像ロールまたは帯電部材としての帯電ロールとして用いることができる。
【0086】
電子写真用部材Rは、ポリマー層1を有している。本例の電子写真用部材Rは、具体的には、芯金よりなる軸体2と、軸体2の外周面に沿って形成された導電性を有するゴム弾性体よりなる弾性層3とをさらに有している。但し、軸体2の両端部は、弾性層3の両端面から突出した状態とされている。そして、この弾性層3の外周面に沿ってポリマー層1が形成されている。
【0087】
電子写真用部材Rは、現像部材として用いる場合には、例えば、摺擦によりトナーを帯電させたり一定厚みのトナーを形成したりするためのブレード部材を、ポリマー層1表面に接触させた状態で使用することができる。また、電子写真用部材Rは、帯電部材として用いる場合には、例えば、用紙へトナー像を定着させる定着工程の後に表面に残存するトナーを除去するためのブレード部材を、ポリマー層1表面に接触させた状態で使用することができる。
【0088】
図3に模式的に示すように、ポリマー層1は、ポリマー層1の骨格を形成するマトリックスポリマー11と、マトリックスポリマー11中に添加された表面改質剤12とを有している。
【0089】
マトリックスポリマー11は、具体的には、熱可塑性ポリウレタンと熱硬化性ポリウレタンとの混合ポリマーよりなる。表面改質剤12は、分子内にシリコーン基を有する第1化合物に基づく第1重合単位121、および/または、分子内にフッ素含有基を有する第2化合物に基づく第2重合単位122と、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物に基づく第3重合単位123とを含む共重合体からなる。本例では、具体的には、表面改質剤12を構成する共重合体は、第1重合単位121と第2重合単位122と第3重合単位123とを含んでいる。
【0090】
本例では、第1化合物は、分子内にシリコーン基を有する(メタ)アクリレートである。第2化合物は、分子内にフッ素含有基を有する(メタ)アクリレートである。第3化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる。
【0091】
また、上記疎水性アニオンは、具体的には、過塩素酸アニオン、ビス(フルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、および、ヘキサフルオロリン酸アニオンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0092】
表面改質剤12は、ポリマー層1の表面近傍に相対的に多く存在している。表面改質剤12は、100質量部のマトリックスポリマー11に対して0.01〜40質量部の範囲内で含有されている。なお、ポリマー層1には、導電性を付与するために電子導電剤が添加されている。
【0093】
(実施例2)
実施例2の電子写真用部材の概略構成を図4図5を用いて説明する。図4図5に示すように、電子写真用部材Bは、電子写真装置に用いられるものである。本例の電子写真用部材Bは、具体的には、電子写真方式の画像形成装置に組み込まれる無端ベルト状の導電性部材であり、転写部材としての中間転写ベルトとして用いることができる。
【0094】
電子写真用部材Bは、ポリマー層4を有している。本例の電子写真用部材Bは、具体的には、導電性を有する樹脂材料より形成された筒状の基層5をさらに有している。そして、この基層5の外周面に沿ってポリマー層4が形成されている。電子写真用部材Bは、例えば、用紙へトナー像を二次転写した後に表面に残存するトナーを除去するためのブレード部材を、ポリマー層5表面に接触させた状態で使用することができる。
【0095】
ポリマー層4は、図示はしないが、実施例1の図3と同様に、マトリックスポリマー中に上記特定の表面改質剤が添加された構成を有している。
【0096】
マトリックスポリマーは、具体的にはゴムを主成分とする。したがって、ポリマー層4はゴム弾性を有している。表面改質剤については、実施例1と同様の構成であるので説明を省略する。なお、ポリマー層4には、導電性を付与するためにイオン導電剤が添加されている。
【0097】
以下、電子写真用部材の試料を作製し、評価を行った。その実験例について説明する。
【0098】
<実験例>
<表面改質剤の準備>
先ず、ポリマー層のマトリックスポリマー中に添加する表面改質剤を合成するための原材料として、以下の化合物を準備した。
【0099】
・アクリレート変性シリコーン化合物(信越化学工業社製、「X−22−174DX」)
なお、上記アクリレート変性シリコーン化合物は、上記式8にて示される化合物であり、式8中、RおよびRはいずれもメチル基である。Rは(CHである。シリコーン基は、ジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるポリジメチルシロキサン骨格を含んでおり、その重量平均分子量は、4200である。
・2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(ダイキン工業社製、「R−1620」)
・ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)(KOHJIN社製)
・ヨウ化メチル(東京化成工業社製)
・過塩素酸カリウム(和光純薬工業社製)
・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(和光純薬工業社製)
・トリフルオロ酢酸ナトリウム(和光純薬工業社製)
・テトラフルオロホウ酸ナトリウム(和光純薬工業社製)
・ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)
・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(東京化成工業社製)
・メタクリル酸メチル(純正化学工業社製)
・ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)(重合開始剤)(和光純薬工業社製、「VE−73」)
【0100】
・アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとヨウ素アニオンとの塩(1)
1Lの反応フラスコに、DMAPAA 156g(1000mmol)、ヨウ化メチル170g(1200mmol)とメタノール1000gとを仕込み、窒素雰囲気下、内液の温度30℃にて6時間撹拌した。その後、溶媒および余ったヨウ化メチルを減圧留去した。これにより、下式15に示される、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとヨウ素アニオンとの塩(1)を得た。なお、ヨウ素アニオンは、親水性アニオンの一つである。
【0101】
【化15】
【0102】
・アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンと過塩素酸アニオンとの塩(2)
200mLの反応フラスコに、上記塩(1)を29.8g(100mmol)と、過塩素酸カリウム16.6g(120mmol)と、メチルイソブチルケトン(MIBK)100gとを仕込み、窒素雰囲気下、内液の温度30℃にて6時間撹拌した。その後、純粋100mLを添加してヨウ化カリウムを抽出し、残った溶媒を減圧留去した。これにより、式16に示される、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンと過塩素酸アニオンとの塩(2)を得た。
【0103】
【化16】
【0104】
・アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンとの塩(3)
200mLの反応フラスコに、上記塩(1)を29.8g(100mmol)と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム34.5g(120mmol)と、MIBK100gとを仕込み、窒素雰囲気下、内液の温度30℃にて6時間撹拌した。その後、純粋100mLを添加してヨウ化カリウムを抽出し、残った溶媒を減圧留去した。これにより、式17に示される、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンとの塩(3)を得た。
【0105】
【化17】
【0106】
・アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとトリフルオロ酢酸アニオンとの塩(4)
200mLの反応フラスコに、上記塩(1)を29.8g(100mmol)と、トリフルオロ酢酸ナトリウム16.3g(120mmol)と、MIBK100gとを仕込み、窒素雰囲気下、内液の温度30℃にて6時間撹拌した。その後、純粋100mLを添加してヨウ化カリウムを抽出し、残った溶媒を減圧留去した。これにより、式18に示される、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとトリフルオロ酢酸アニオンとの塩(4)を得た。
【0107】
【化18】
【0108】
・アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとテトラフルオロホウ酸アニオンとの塩(5)
200mLの反応フラスコに、上記塩(1)を29.8g(100mmol)と、テトラフルオロホウ酸ナトリウム13.2g(120mmol)と、MIBK100gとを仕込み、窒素雰囲気下、内液の温度30℃にて6時間撹拌した。その後、純粋100mLを添加してヨウ化カリウムを抽出し、残った溶媒を減圧留去した。これにより、式19に示される、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとテトラフルオロホウ酸アニオンとの塩(5)を得た。
【0109】
【化19】
【0110】
・アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとヘキサフルオロリン酸アニオンとの塩(6)
200mLの反応フラスコに、上記塩(1)を29.8g(100mmol)と、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム20.2g(120mmol)と、MIBK100gとを仕込み、窒素雰囲気下、内液の温度30℃にて6時間撹拌した。その後、純粋100mLを添加してヨウ化カリウムを抽出し、残った溶媒を減圧留去した。これにより、式20に示される、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンとヘキサフルオロリン酸アニオンとの塩(6)を得た。
【0111】
【化20】
【0112】
次に、各表面改質剤を以下のようにして準備した。
【0113】
・表面改質剤A
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーン化合物1.66g(0.36mmol)と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル7.37g(73.64mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK14.38gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK26.64gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Aを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Aは、表1に示される各化合物に基づく第1重合単位と第2重合単位と第4重合単位と第5重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。この表面改質剤Aは、シリコーン・フッ素系の表面改質剤である。
【0114】
・表面改質剤B
100mLの反応フラスコに、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、DMAPAA 11.50g(73.64mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル0.04g(0.36mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK16.4gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK30.4gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Bを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Bは、表1に示される各化合物に基づく第2重合単位と第3重合単位と第4重合単位と第5重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。この表面改質剤Bは、フッ素・アミン系の表面改質剤である。
【0115】
・表面改質剤C
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーン化合物1.66g(0.36mmol)と、DMAPAA 11.50g(73.64mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル1.30g(13mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK17.8gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK32.9gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Cを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Cは、表1に示される各化合物に基づく第1重合単位と第3重合単位と第4重合単位と第5重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。この表面改質剤Cは、シリコーン・アミン系の表面改質剤である。
【0116】
・表面改質剤D
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーン化合物1.66g(0.36mmol)と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、DMAPAA 11.50g(73.64mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK20.6gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK38.2gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Dを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Dは、表1に示される各化合物に基づく第1重合単位と第2重合単位と第3重合単位と第4重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。この表面改質剤Dは、シリコーン・フッ素・アミン系の表面改質剤である。
【0117】
・表面改質剤E
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーン化合物1.66g(0.36mmol)と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、塩(1) 11.50g(38.57mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル3.51g(35.07mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK20.6gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK38.2gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Eを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Eは、表2に示される各化合物に基づく第1重合単位と第2重合単位と第3重合単位と第4重合単位と第5重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。なお、この表面改質剤Eにおける第3重合単位の構成に用いた塩(1)は、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンと親水性アニオンであるヨウ素アニオンとの塩である。
【0118】
・表面改質剤F
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーン化合物1.66g(0.36mmol)と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、塩(2) 11.50g(42.49mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル3.12g(31.15mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK20.3gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK37.6gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Fを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Fは、表2に示される各化合物に基づく第1重合単位と第2重合単位と第3重合単位と第4重合単位と第5重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。なお、この表面改質剤Fにおける第3重合単位の構成に用いた塩(2)は、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンである過塩素酸アニオンとの塩である。
【0119】
・表面改質剤G
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーン化合物1.66g(0.36mmol)と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、塩(3) 11.50g(25.48mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル4.82g(48.16mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK21.7gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK40.2gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Gを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Gは、表2に示される各化合物に基づく第1重合単位と第2重合単位と第3重合単位と第4重合単位と第5重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。なお、この表面改質剤Gにおける第3重合単位の構成に用いた塩(3)は、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンであるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンとの塩である。
【0120】
・表面改質剤H
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーン化合物1.66g(0.36mmol)と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、塩(4) 11.50g(40.45mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル3.32g(33.19mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK20.5gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK37.9gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Hを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Hは、表2に示される各化合物に基づく第1重合単位と第2重合単位と第3重合単位と第4重合単位と第5重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。なお、この表面改質剤Hにおける第3重合単位の構成に用いた塩(4)は、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンであるトリフルオロ酢酸アニオンとの塩である。
【0121】
・表面改質剤I
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーン化合物1.66g(0.36mmol)と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、塩(5) 11.50g(44.56mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル2.91g(29.08mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK20.1gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK37.3gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Iを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Iは、表2に示される各化合物に基づく第1重合単位と第2重合単位と第3重合単位と第4重合単位と第5重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。なお、この表面改質剤Iにおける第3重合単位の構成に用いた塩(5)は、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンであるテトラフルオロホウ酸アニオンとの塩である。
【0122】
・表面改質剤J
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーン化合物1.66g(0.36mmol)と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、塩(6) 11.50g(36.37mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル3.73g(37.27mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、MIBK20.8gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度80℃にて7時間重合させた。次いで、MIBK38.5gを仕込み、固形分で30%の表面改質剤Jを含有する溶液を得た。
上記表面改質剤Jは、表2に示される各化合物に基づく第1重合単位と第2重合単位と第3重合単位と第4重合単位と第5重合単位とを含む直鎖状の共重合体からなる。なお、この表面改質剤Iにおける第3重合単位の構成に用いた塩(6)は、アクリロイル基を有する第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンであるヘキサフルオロリン酸アニオンとの塩である。
【0123】
以下、上記表面改質剤の合成における各重合成分の仕込み量をまとめて表1、表2に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
<ポリマー層形成用材料の調製>
表3に示すように、熱可塑性ポリウレタン(日本ポリウレタン工業(株)製、「ニッポラン5199」)10質量部と、ポリエーテルジオール(3官能ポリプロピレングリコール)((株)ADEKA製、「アデカポリエーテルP−1000」)60質量部と、ポリイソシアネート(HDI型ブロックイソシアヌレート)(日本ポリウレタン工業(株)製、「コロネートL」)30質量部と、電子導電剤(カーボンブラック)(ライオン(株)製、「ケッチェンEC300J」)3質量部と、表3に示す所定の種類かつ所定の配合量の各表面改質剤とを、濃度20質量%となるようにMEKに溶解し、三本ロールを用いて十分に混合、分散させた。これにより、導電性ロール試料1〜10の作製に用いる各ポリマー層形成用材料を調製した。
【0127】
<導電性ロール試料の作製>
導電性シリコーンゴム(信越化学工業(株)製、「X−34−264A/B、混合質量比A/B=1/1」)をスタティックミキサーにて混合することにより、弾性層形成用材料を調製した。
【0128】
軸体として、直径6mmの中実円柱状の鉄棒を準備し、外周面に接着剤を塗布した。この軸体をロール成形用金型の中空空間にセットした後、上記調製した弾性層形成用材料を中空空間内に注入し、190℃で30分間加熱して硬化させ、脱型した。これにより、軸体の外周面に沿って導電性シリコーンゴムよりなるロール状の弾性層(厚み3mm)を形成した。
【0129】
次いで、上記弾性層の外周面に、ロールコート法により、上記調製した各ポリマー層形成用材料を塗工した後、120℃で45分間加熱して硬化させ、ポリマー層(厚み15μm)を形成した。これにより、上記弾性層の外周面に沿ってポリマー層としてのポリマー層を有する二層構造の導電性ロール試料1〜10を作製した。ポリマー層は、ポリマー層の骨格を形成する熱可塑性ポリウレタンと熱硬化性ポリウレタンとの混合ポリマー中に、添加剤として表3に示す各表面改質剤を含有している。
【0130】
−滑り性−
静・動摩擦係数測定器(協和界面科学(株)製、「Triboster500」)のステージ上に固定した導電性ロール試料の表面、つまり、ポリマー層表面に、接触子(直径3mmの鋼球製)による垂直荷重W50gを加えた。この状態でステージを移動速度7.5mm/秒で水平方向に1cm移動させた。これにより導電性ロール試料と接触子との間に生じた摩擦力Fから、導電性ロール試料のポリマー層表面における初期の動摩擦係数μk(F/W)を算出した。
上記動摩擦係数μkが1.5以下であった場合を、ポリマー層表面の滑り性に優れるとして「A」とした。上記動摩擦係数μkが1.5以上2未満であった場合を、ポリマー層表面の滑り性が良好であるとして「B」とした。上記動摩擦係数μkが2超であった場合を、ポリマー層表面の摩擦力が大きく、滑り性に劣るとして「C」とした。
【0131】
−トナー離型性−
上記調製した各ポリマー層形成用材料を、上記ポリマー層形成時と同じ条件で加熱、硬化させ、シート状の各試験片(厚み15μm)を作製した。次いで、電子写真方式を採用するデジタルフルカラー複合機(富士ゼロックス(株)製、「DocuCentre−IV C2260」)のカートリッジのトナーを、各試験片の表面に定量散布した。次いで、このトナーを散布した各試験片を遠心分離機にセットし、12000Gを付加した後のトナーの残存量を画像処理にて評価した。画像中のトナーの残存面積が3割未満であった場合をトナー離型性に優れるとして「A」、画像中のトナーの残存面積が3割以上5割未満であった場合をトナー離型性を有するとして「B」、画像中のトナーの残存面積が5割超であった場合をトナー離型性を有さないとして「C」とした。
【0132】
−高温高湿環境下におけるトナー荷電性−
各導電性ロール試料を、現像ロールとして市販のカラープリンター(日本ヒューレット・パッカード社製、「Color Laser Jet Pro 400 Color M451dn」)に組み込み、32.5℃×85%RHの高温高湿環境下にてベタ画像を出力した。この出力時の初期段階において、現像ロールのポリマー層表面のトナー(スチレン−アクリル系トナー)を金属円筒管と円筒フィルターを用いて吸引収集し、その際、金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた荷電量の絶対値Q(μC)、吸引収集したトナーの全質量M(g)を測定した。そして、単位質量あたりのトナー荷電量Q/M(μC/g)を算出した。
高温高湿環境下においてトナーの荷電不足により発生するカブリ画像を抑制できる観点から、トナー荷電量Q/Mが18(μC/g)以上であった場合を、高温高湿環境下におけるトナー荷電性に優れるとして「A」とした。また、高温高湿環境下においてトナーの荷電不足によりカブリ画像が発生しやすくなる観点から、トナー荷電量Q/Mが12(μC/g)以上〜18(μC/g)未満であった場合を、トナー荷電性が劣るとして「B」とした。高温高湿環境下においてトナーの荷電不足によりカブリ画像が目視で明らかなほどに発生しやすくなる観点から、トナー荷電量Q/Mが12(μC/g)未満であった場合を、高温高湿環境下におけるトナー荷電性がさらに劣るとして「C」とした。
なお、吸引した面積A(cm)も併せて測定し、単位面積あたりのトナー搬送量M/A(mg/cm)も算出したところ、いずれの導電性ロール試料もトナー搬送量M/Aは0.5(mg/cm)程度であった。したがって、いずれも現像ロールとして機能するのに問題ないトナー搬送性を備えているといえる。
【0133】
以下、各導電性ロール試料の詳細な構成と評価結果をまとめて表3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
表3によれば、以下のことがわかる。
試料1の導電性ロールは、ポリマー層にシリコーン・フッ素系の表面改質剤Aが添加されている。表面改質剤Aは、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物に基づく第3重合単位を有していない。そのため、試料1の導電性ロールは、高温高湿環境下におけるトナー荷電性を発揮することができなった。
【0136】
試料2の導電性ロールは、フッ素・アミン系の表面改質剤Bがポリマー層に添加されている。つまり、表面改質剤Bは、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物に基づく第3重合単位を有しておらず、アミノ基によりトナー荷電性を得ようとするものである。そのため、試料2の導電性ロールは、高温高湿環境下において、周囲の水分とアミノ基との間で相互作用が生じ、トナー荷電性が低下した。また、表面改質剤Bは、シリコーン基を含む第1重合単位を有していないので、滑り性を発揮することができなった。
【0137】
試料3の導電性ロールは、シリコーン・アミン系の表面改質剤Cがポリマー層に添加されている。つまり、表面改質剤Cは、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物に基づく第3重合単位を有しておらず、アミノ基によりトナー荷電性を得ようとするものである。そのため、試料3の導電性ロールは、高温高湿環境下において、周囲の水分とアミノ基との間で相互作用が生じ、トナー荷電性が低下した。また、表面改質剤Bは、フッ素含有基を含む第2重合単位を有していないので、トナー離型性を発揮することができなった。
【0138】
試料4の導電性ロールは、シリコーン・フッ素・アミン系の表面改質剤の表面改質剤Dがポリマー層に添加されている。つまり、表面改質剤Dは、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物に基づく第3重合単位を有しておらず、アミノ基によりトナー荷電性を得ようとするものである。そのため、試料4の導電性ロールは、高温高湿環境下において、周囲の水分とアミノ基との間で相互作用が生じ、トナー荷電性が低下した。
【0139】
試料5の導電性ロールは、表面改質剤Eがポリマー層に添加されている。しかし、表面改質剤Eは、第3重合単位が、第4級アンモニウムカチオンと親水性アニオンであるヨウ素アニオンとの塩からなる第3化合物に基づいて構成されている。そのため、試料5の導電性ロールは、高温高湿環境下において、周囲の水分とアミノ基との間で相互作用が生じ、トナー荷電性が低下した。
【0140】
これらに対し、試料6〜試料10の導電性ロールは、いずれも、ポリマー層のマトリックスポリマー中に、分子内にシリコーン基を有する第1化合物に基づく第1重合単位と、分子内にフッ素含有基を有する第2化合物に基づく第2重合単位と、第4級アンモニウムカチオンと疎水性アニオンとの塩からなる第3化合物に基づく第3重合単位とを含む共重合体からなる表面改質剤F、G、H、I、Jのいずれかを含有している。
【0141】
そのため、試料6〜試料10の導電性ロールは、部材表面であるポリマー層表面の滑り性とトナー離型性と高温高湿環境下におけるトナー荷電性とを同時に発揮できることが確認された。
【0142】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0143】
R、B 電子写真用部材
1 ポリマー層
11 マトリックスポリマー
12 表面改質剤
121 第1重合単位
122 第2重合単位
123 第3重合単位
図1
図2
図3
図4
図5