【文献】
Masatoshi Noritake et al.,Operation algorithm of DC microgrid for achieving local production for local consumption of renewable energy,INT ELEC 2013,2013年10月 7日,pp.411-416
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
商用電力系統の受電点となり該商用電力系統から商用電力の供給を受ける第1クラスタ部と、前記第1クラスタ部を経由して前記商用電力の供給を受ける1又は複数の第2クラスタ部と、で構成される電力融通システムであって、
前記第1クラスタ部と前記第2クラスタ部とのそれぞれは、発電装置及び負荷装置、又は蓄電装置及び前記負荷装置を備え、
前記第1クラスタ部と前記第2クラスタ部との間、又は前記複数の第2クラスタ部の間において互いに電力の融通を行う際に、前記第1クラスタ部及び前記複数の第2クラスタ部のうち、他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部又は他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部は、それぞれのクラスタ部毎に予め設定された互いに異なる所定の期間において、共通の給電経路を介して、他のクラスタ部からの受電を要求する受電要求、又は他のクラスタ部に対する給電を要求する給電要求を行う
ことを特徴とする電力融通システム。
商用電力系統の受電点となり該商用電力系統から商用電力の供給を受ける第1クラスタ部と、前記第1クラスタ部を経由して前記商用電力の供給を受ける1又は複数の第2クラスタ部と、で構成されるとともに、前記第1クラスタ部と前記第2クラスタ部とのそれぞれが、発電装置及び負荷装置、又は蓄電装置及び前記負荷装置を備える電力融通システムにおける電力融通方法であって、
前記第1クラスタ部と前記第2クラスタ部との間、又は前記複数の第2クラスタ部の間において互いに電力の融通を行う際に、前記第1クラスタ部及び前記複数の第2クラスタ部のうち、他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部又は他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部が、それぞれのクラスタ部毎に予め設定された互いに異なる所定の期間において、共通の給電経路を介して他のクラスタ部からの受電を要求する受電要求、又は他のクラスタ部に対する給電を要求する給電要求を行う
ことを特徴とする電力融通方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
(電力融通システム1の概略構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力融通システム1の概略構成を示す構成図である。この電力融通システム1は、
図1に示すように、親クラスタ部100と、この親クラスタ部100の配下に置かれる複数の子クラスタ部200及び子クラスタ部300とを、ACバス31とDCバス32とを介して接続し、電力を融通するようにしたものである。また、子クラスタ部300には、子クラスタ部400がカスケード接続されている。
【0024】
なお、ACバス31は、親クラスタ部100と、複数の子クラスタ部200及び300とを共通接続して交流電力を融通するための給電バスとなる給電経路であり、以下の説明では、ACバス31を一次側ACバス31と呼ぶことがある。また、DCバス32は、親クラスタ部100と、複数の子クラスタ部200及び300とを共通接続して直流電力を融通するための給電バスとなる給電経路であり、以下の説明では、DCバス32を一次側DCバス32と呼ぶことがある。また、親クラスタ部100、子クラスタ部200、子クラスタ部300、及び子クラスタ部400の内部において、交流電力を配電する給電経路を二次側ACバスと呼び、直流電力を配電する給電経路を二次側DCバスと呼ぶことがある。
【0025】
この電力融通システム1において、親クラスタ部100、子クラスタ部200、子クラスタ部300、及び子クラスタ部400の各制御部は、通信網12を介して、エネルギー管理装置(EMS)11に接続されている。このエネルギー管理装置(EMS)11は、各クラスタ部における電力の給電状態を監視するとともに、各クラスタ部の制御部に指令信号を送信してその動作を制御する。例えば、エネルギー管理装置(EMS)11は、各クラスタにおける電力消費量と、発電装置の発電量と、蓄電装置の蓄電池残容量SOC(State Of Charge)の情報を収集し、この収集した情報に基づいて、各クラスタ部間における電力消費のバランスを取るように電力融通の制御を行う。
【0026】
なお、本実施形態における用語「クラスタ」とは、再生可能エネルギー利用の分散型電源から構成される発電装置及び負荷装置、又は蓄電装置及び負荷装置を備える需要家を1単位(例えば、ビル単位の需要家)とする電力クラスタ(Electricity Cluster)を意味している。
例えば、親クラスタ部100と、子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400とのそれぞれは、再生可能エネルギーを利用する発電装置(例えば、太陽光発電装置)と、エネルギー貯蔵システムとなる蓄電装置と、需要家の負荷装置とから成る。
【0027】
上記電力融通システム1において、親クラスタ部100は、遮断器(CB)101、変圧器102、制御部110、変換装置A120、変換装置D130、発電装置141、発電装置142、交流負荷装置143、直流負荷装置144、蓄電装置145、パワーコンディショナ(PCSAC)150、パワーコンディショナ(PCSDC)150A、分電盤161、分電盤162、及び切替部160を備えている。
なお、以下の説明において、交流電力を出力するパワーコンディショナ(PCSAC)を、単に「PCSAC」と呼び、直流電力を出力するパワーコンディショナ(PCSDC)を、単に「PCSDC」と呼ぶことがある。
【0028】
この親クラスタ部100において、変圧器102は、商用電力系統2から供給される高圧交流電圧(例えば、3相AC6600V)を所定の低圧交流電圧(例えば、3相AC400V)に降圧し、この低圧交流電圧を変換装置A120に供給する。
【0029】
制御部110は、この親クラスタ部100の全体の動作を統括して制御する制御部である。制御部110は、例えば、マイクロコンピュータとその周辺回路とを用いて構成されており、親クラスタ部100の各部に設置した図示していない電流や電圧の検知部で検知された電流や電圧の検知信号に応じて変換装置A120と変換装置D130と切替部160の動作を制御する。また、制御部110は、発電装置の発電量と、蓄電装置の蓄電池残容量SOCの情報を収集し、この収集した情報を、エネルギー管理装置(EMS)11に対して送信する。
【0030】
変換装置A120は、交流電力と直流電力との間で双方向に電力変換を行う変換装置であり、変換装置D130は、直流電力と直流電力との間で双方向に電力変換を行う変換装置である。この変換装置A120と変換装置D130の構成については後述する。
この変換装置A120には給電経路175を介して分電盤161が接続され、また、給電経路172を介して分電盤162が接続される。分電盤161には、不図示の過電流遮断器(ブレーカ)を介して、一次側ACバス31と、交流負荷装置143と、切替部160の一端とが接続される。
また、分電盤162には、不図示の過電流遮断器(ブレーカ)を介して、蓄電装置145と、PCSDC150Aと、直流負荷装置144とが接続される。なお、直流負荷装置144は、直流電力によって動作する装置であり、例えば、直流家電、LED照明、パソコンやサーバなどの情報機器等である。
なお、分電盤161は、交流電力の分電盤であり、分電盤162は、直流電力の分電盤である。
【0031】
発電装置141及び142は、例えば、太陽光発電、風力発電等の自然エネルギー型の発電装置や、エンジン発電装置や、燃料電池等である。パワーコンディショナ(PCSAC)150は、発電装置141の発電電力を所定の交流電力に変換して出力する。また、パワーコンディショナ(PCSDC)150Aは、発電装置142の発電電力を所定の直流電力に変換して出力する。発電装置141及び142の構成と、PCSAC150及びPCSDC150Aの構成については後述する。
【0032】
蓄電装置145は、分電盤162に接続される。この蓄電装置145は、例えば、リチウムイオン電池、鉛電池、ニッケル水素電池等の2次電池を備える。この蓄電装置145は、PCSDC150Aを介して発電装置142から出力される電力によって充電される。また、蓄電装置145は、変換装置A120から出力される直流電流Idcにより充電される。この蓄電装置145は、商用電力系統2から交流電圧(AC6600V)が供給されない停電時には、蓄えた電荷により、分電盤162を介して直流負荷装置144に電力を供給するとともに、分電盤162と変換装置A120とを介して、交流負荷装置143と一次側ACバス31とに電力を供給する。また、蓄電装置145は、分電盤162と変換装置D130を介して、一次側DCバス32に電力を供給することもできる。
【0033】
切替部160は、1c接点で構成され、共通接点cと接点aとによりメーク接点が構成され、共通接点cと接点bとによりブレーク接点が構成されている。この切替部160における接点の開閉動作は制御部110から出力される開閉信号(不図示)により制御され、共通接点cと接点aが導通する状態(共通接点cと接点bは非導通)と、共通接点cと接点bが導通する状態(共通接点cと接点aは非導通)との何れかの状態が選択される。
そして、共通接点cには、発電装置141がPCSAC150を介して接続されており、接点bには、分電盤161に繋がる給電経路174が接続されており、接点aには、変圧器102の二次側に繋がる給電経路171が接続されている。
【0034】
そして、切替部160において、接点bと共通接点cとが導通状態にされる場合、発電装置141で発電された電力が、給電経路174を介して分電盤161に出力される。また、切替部160において、接点aと共通接点cが導通状態にされる場合に、発電装置141で発電された電力が、余剰電力として、変圧器102を介して、商用電力系統2側に供給される。
なお、切替部160では、機械式接点を用いたスイッチの例を示しているが、実際には、切替部160は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチング素子を用いた半導体スイッチで構成されている。後述する親クラスタ部100の切替部160A(
図5)や、子クラスタ部200の切替部260や、切替部260A(
図5)や、子クラスタ部300の切替部360や、子クラスタ部400の切替部460等についても同様である。
【0035】
子クラスタ部200、子クラスタ部300、及び子クラスタ部400は、商用電力系統2の受電点を有しない点を除いて、基本的な構成は親クラスタ部100と同様である。
例えば、子クラスタ部200は、制御部210、変換装置B220、発電装置241、発電装置242、交流負荷装置243、直流負荷装置244、蓄電装置245、PCSAC250、PCSDC250A、切替部260、分電盤261、及び分電盤262を備えている。
【0036】
この子クラスタ部200において、制御部210は、子クラスタ部200の全体の動作を統括して制御する制御部である。変換装置B220は、交流電力と直流電力との間で双方向に電力変換を行うとともに、直流電力と直流電力との間で双方向に電力変換を行う変換装置である。この変換装置B220の構成については後述する。
この変換装置B220には、クラスタ内部の二次側ACバス41を介して分電盤261が接続され、又、クラスタ内部の二次側DCバス42を介して分電盤262が接続される。この分電盤261には、不図示の過電流遮断器(ブレーカ)を介して、交流負荷装置243と、切替部260の一端とが接続される。
【0037】
この切替部260は、親クラスタ部100の切替部160と同様に1c接点で構成されており、共通接点cには、発電装置241がPCSAC250を介して接続されており、切替部260の接点b側は、分電盤261に接続されており、切替部260の接点a側は、一次側ACバス31に接続されている。
【0038】
そして、切替部260において、接点bと共通接点cが導通状態とされる場合、発電装置241で発電された電力が、PCSAC250を介して分電盤261に出力される。また、切替部260において、接点aと共通接点cが導通状態とされる場合、発電装置241で発電された電力が、余剰電力として一次側ACバス31に出力される。
また、分電盤262には、不図示の過電流遮断器(ブレーカ)を介して、蓄電装置245と、PCSDC250Aと、直流負荷装置244とが接続されている。
【0039】
また、子クラスタ部300において、制御部310は、この子クラスタ部300の全体の動作を統括して制御する制御部である。変換装置E320は、交流電力と直流電力との間で双方向に電力変換を行うとともに、直流電力と直流電力との間で双方向に電力変換を行う変換装置である。この変換装置E320の構成については後述する。
この変換装置E320には、クラスタ内部の二次側ACバス51を介して分電盤361が接続され、又、二次側DCバス52を介して、分電盤362が接続される。この分電盤361には、不図示の過電流遮断器(ブレーカ)を介して、交流負荷装置343と、切替部360の一端とが接続されている。
【0040】
切替部360は、子クラスタ部200の切替部260と同様に、不図示の1c接点で構成されており、共通接点cには、発電装置341がPCSAC350を介して接続されており、切替部360の接点b側は、分電盤361に接続されており、切替部360の接点a側は、一次側ACバス31に接続されている。
【0041】
そして、切替部360において、不図示の接点bと共通接点cが導通状態とされる場合に、発電装置341で発電された電力が、分電盤361に出力される。また、切替部360において、不図示の接点aと共通接点cが導通状態とされる場合に、発電装置341で発電された電力が、余剰電力として一次側ACバス31に出力される。
また、分電盤362には、不図示の過電流遮断器(ブレーカ)を介して、蓄電装置345と、直流負荷装置344とが接続されている。
【0042】
また、子クラスタ部400は、子クラスタ部300にカスケード接続されるクラスタである。この子クラスタ部400において、制御部410は、この子クラスタ部400の全体の動作を統括して制御する制御部である。変換装置C420は、交流電力と直流電力との間で双方向に電力変換を行うとともに、直流電力と直流電力との間で双方向に電力変換を行う変換装置である。この変換装置C420の構成については後述する。
この変換装置C420は、二次側ACバス61及び二次側DCバス62を介して、子クラスタ部300と接続される。なお、二次側ACバス61は、子クラスタ部300において、分電盤361を介して二次側ACバス51に接続されている。また、二次側DCバス62は、子クラスタ部300において、分電盤362を介して二次側DCバス52に接続されている。また、この変換装置C420には、分電盤461と、分電盤462とが接続される。また、分電盤461には、不図示の過電流遮断器(ブレーカ)を介して、交流負荷装置443と、切替部460の一端とが接続されている。また、分電盤462には、不図示の過電流遮断器(ブレーカ)を介して、蓄電装置445と直流負荷装置444とが接続されている。
【0043】
切替部460は、子クラスタ部200の切替部260と同様に、不図示の1c接点で構成されており、共通接点cには、発電装置441がPCSAC450を介して接続されている。切替部460の接点bは、分電盤461に接続されており、切替部460の接点aは、二次側ACバス61に接続されている。
【0044】
そして、切替部460において、不図示の接点bと共通接点cが導通状態とされる場合、発電装置441で発電された電力が、給電経路71を介して分電盤461に出力される。また、切替部460において、不図示の接点aと共通接点cが導通状態とされる場合、発電装置441で発電された電力が、余剰電力として、二次側ACバス61に出力される。
【0045】
(発電装置とパワーコンディショナの構成)
次に、親クラスタ部100の発電装置141とPCSAC150の構成について説明する。なお、子クラスタ部200の発電装置241とPCSAC250、子クラスタ部300の発電装置341とPCSAC350、及び子クラスタ部400の発電装置441とPCSAC450についても同様な構成である。
【0046】
図2は、発電装置141とPCSAC150の構成例を示す構成図である。この
図2(A)に示す例は、発電装置141として、太陽電池アレイ141aを用いた例を示しており、PCSAC150は、発電量制御部151と、系統連系制御部152と、DC/ACコンバータ(インバータ)153と、変圧器154と、を備える。
【0047】
発電量制御部151は、発電装置141から最大電力を取り出すために、太陽電池アレイ141aのI−V(電流−電圧)特性において、太陽電池アレイ141aの出力を最大とする動作点(最大電力点)を制御する。太陽電池アレイ141aは、接続されている負荷が実際に必要としている電圧によって最大電力点がずれる。I−V特性は、日射強度やモジュール温度や状態等によって変化することから、最大電力を得るためには、最適な電圧又は電流を自動で追従しなければならない。そこで、発電量制御部151は、太陽電池アレイ141aを、最大電力点で動作させるように制御する。
【0048】
また、系統連系制御部152は、DC/ACコンバータ(インバータ)153の出力電圧の位相を調整することにより、一次側ACバス31に対して連系させてPCSAC150から出力される電力を給電できるように制御する。このDC/ACコンバータ(インバータ)153は、太陽電池アレイ141aから出力される直流電圧を交流電圧に変換し、この交流電圧を、変圧器154を介して、一次側ACバス31に供給するためのインバータである。
【0049】
なお、PCSAC150は、商用電力系統2において停電が発生すると、一旦その動作を停止する。その後、バックアップ用の蓄電装置145から変換装置A120を介してACバス31への電力の供給が開始され、やがてこの蓄電装置145に蓄積された電荷が不足又は枯渇し、蓄電装置145からACバス31に電力を供給できなくなると、PCSAC150は、再び起動する。つまり、PCSAC150は、商用電力系統2の停電時において、蓄電装置145からACバス31に電力の供給ができなくなると起動し、発電装置141が発電した電力をACバス31に供給する。なお、この場合のPCSAC150は系統に連系する動作モードではなく、自立して電力を供給するモードで動作することは言うまでもない。
【0050】
また、
図2(B)は、発電装置142とPCSDC150Aの構成例を示す構成図である。なお、子クラスタ部200の発電装置242とPCSDC250Aについても同様な構成である。
この
図2(B)に示す例では、
図2(A)に示す例と同様に、発電装置142として太陽電池アレイ142aを用いた例を示している。そして、PCSDC150Aは、発電量制御部151と、系統連系制御部152Aと、DC/DCコンバータ155とを備える。
系統連系制御部152Aは、DC/DCコンバータ155の出力電圧を調整することにより、分電盤162に直流電力を供給する。
【0051】
(変換装置A120と変換装置D130の構成)
図3は、変換装置A120と変換装置D130の構成例を示す構成図である。
変換装置A120は、
図3(A)に示すように、双方向交直変換部(双方向AC/DC変換部)121と、スイッチ部(SW)122とを備える。
この変換装置A120は、スイッチ部122が閉状態の場合、破線aに示す方向に沿って、変圧器102から出力される商用の交流電圧(例えば、AC400V)を、分電盤161を介して、一次側ACバス31に出力する。また、商用電力系統2に停電が発生した場合、制御部110は、スイッチ部122を遮断して、変換装置A120の負荷側を商用電力系統2から解列する(すなわち切り離す)。
【0052】
また、双方向交直変換部121は、AC/DCコンバータ機能とDC/ACコンバータ(インバータ)機能とを備える。双方向交直変換部121は、AC/DCコンバータ機能により、破線bに示す方向に沿って、変圧器102から入力される交流電力を直流電力に変換し、クラスタ部内の直流電力の給電経路172を介して分電盤162に向けて出力する。
【0053】
また、双方向交直変換部121は、DC/ACコンバータ(インバータ)機能により、破線cに示す方向に沿って、発電装置142及び蓄電装置145から供給される直流電力を一次側ACバス31に融通する交流電力に変換し、この交流電力を一次側ACバス31に出力する。
また、双方向交直変換部121は、AC/DCコンバータ機能により、破線dに示す方向に沿って、分電盤161を介して一次側ACバス31から入力される交流電力を直流電力に変換して、クラスタ部内の直流電力の給電経路172を介して分電盤162に出力する。
なお、親クラスタ部100内の発電装置141や発電装置142等の余剰電力を交流電力として一次側ACバス31に向けて出力する動作を「交流融通」又は「AC融通」と呼ぶことがある。子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400とについても同様である。
【0054】
また、
図3(B)に示すように、変換装置D130は、双方向直流変換部(双方向DC/DC変換部)131を備え、一次側DCバス32と分電盤162との間で、双方向に直流電力を変換して直流電力の受け渡しを行う。例えば、双方向直流変換部131は、破線eに示す方向に沿って、発電装置142及び蓄電装置145から供給される直流電力を一次側DCバス32に融通する直流電力に変換し、この直流電力を一次側DCバス32に出力する。
また、双方向直流変換部131は、破線fに示す方向に沿って、一次側DCバス32から直流電力を入力し、この直流電力をクラスタ部内に配電する直流電力に変換し、給電経路173を介して分電盤162に出力する。
なお、親クラスタ部100内の発電装置142や蓄電装置145等の余剰電力を直流電力として一次側DCバス32に向けて出力する動作を「直流融通」又は「DC融通」と呼ぶことがある。子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400とについても同様である。
【0055】
(変換装置B220と変換装置E320と変換装置C420の構成)
次に、変換装置B220と変換装置E320と変換装置C420の構成について説明する。この変換装置B220と変換装置E320と変換装置C420とは、同じ構成の変換装置であるため、変換装置B220を代表として示し、この変換装置B220の構成について説明する。
図4は、変換装置B220の構成例を示す構成図である。
変換装置B220は、
図4に示すように、双方向交直変換部(双方向AC/DC変換部)221と、スイッチ部(SW)222と、双方向直流変換部(双方向DC/DC変換部)223とスイッチ部(SW)224とを備えている。双方向交直変換部221は、交流電力を直流電力に変換する機能と、直流電力を交流電力に変換する機能を備えている。また、双方向直流変換部223は、DC/DCコンバータを備え、直流電力と直流電力との間で双方向に電力変換する機能を備えている。
【0056】
この変換装置B220は、スイッチ部222が閉状態の場合に、破線aに示す方向に沿って、一次側ACバス31から入力される交流電圧(例えば、AC400V)を、二次側ACバス41を介して分電盤261に出力する。また、変換装置B220は、スイッチ部222が閉状態の場合に、破線aに示す方向とは逆方向に、二次側ACバス41から一次側ACバス31に向けて交流電力を出力することができる。
また、双方向交直変換部(双方向AC/DC変換部)221は、スイッチ部222が閉状態の場合、破線bに示す方向に沿って、一次側ACバス31から供給される交流電力を直流電力に変換し、この直流電力を、二次側DCバス42を介して、分電盤262に出力することができる。
【0057】
また、双方向交直変換部221は、破線cに示す方向に沿って、二次側DCバス42から入力される直流電力を交流電力に変換し、この交流電力を一次側ACバス31に供給することができる。また、双方向交直変換部221は、スイッチ部222が開状態の場合、破線dに示す方向に沿って、二次側DCバス42から入力される直流電力を交流電力に変換して二次側ACバス41に出力することができる。
【0058】
また、双方向直流変換部(双方向DC/DC変換部)223は、スイッチ部224が閉状態の場合に、破線eに示す方向に沿って、一次側DCバス32に供給されている直流電力をクラスタ部内の給電経路に配電する直流電力に変換し、二次側DCバス42に出力することができる。
また、双方向直流変換部223は、破線fに示す方向に沿って、二次側DCバス42に供給されている直流電力を一次側DCバス32に融通する直流電力に変換し、この変換した直流電力を一次側DCバス32に出力することができる。
【0059】
なお、
図4において、変換装置B220内のスイッチ部222を開状態にし、切替部260の共通接点cと接点aとを導通させることにより、PCSAC250を一次側ACバス31に直接接続し、PCSAC250から一次側ACバス31に向けて交流電力を供給することができる。つまり、破線A1で示す経路に沿って、PCSAC250から一次側ACバス31に交流融通(AC融通)を行うことができる。このように、切替部260の共通接点cと接点aとを導通状態にすることにより、子クラスタ部200から一次側ACバス31にAC融通を行う際に、変換装置B220を経由することなく、PCSAC250から一次側ACバス31に直接電力を供給することができる。この切替部260を用いて交流融通を行う例については、後述する。
【0060】
(電力融通システム1の変形例)
また、
図5は、
図1に示す電力融通システムの変形例を示す構成図である。
この
図5に示す電力融通システム1Aは、
図1に示す電力融通システム1と比較して、
親クラスタ部100Aにおいて、
図1に示す親クラスタ部100内の変換装置D130を省略した点と、切替部160Aを新たに追加した点が構成上で異なる。また、
図5に示す子クラスタ部200A内に、新たに切替部260Aを追加した点が構成上で異なる。他の構成は、
図1に示す電力融通システム1と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0061】
この電力融通システム1Aでは、親クラスタ部100Aに切替部160Aを追加することにより、PCSDC150Aの接続先を分電盤162するか、又は一次側DCバス32にするかを選択できるようにした点に特徴がある。また、子クラスタ部200A内に、新たに切替部260Aを追加することにより、PCSDC250Aの接続先を分電盤262にするか、又は一次側DCバス32にするかを選択できるようにした点に特徴がある。子クラスタ部300Aにおいても、子クラスタ部200Aと同様である。
【0062】
この
図5に示す電力融通システム1Aでは、親クラスタ部100A内に切替部160Aを設けることにより、発電装置142からPCSDC150Aを介して出力される直流電力を、切替部160Aを介して、一次側DCバス32に直接連系して出力できる効果がある。また、子クラスタ部200A内に切替部260Aを設けることにより、発電装置242からPCSDC250Aを介して出力される直流電力を、一次側DCバス32に直接連系して出力できる効果がある。
【0063】
(電力融通システム1における電力融通制御処理)
次に、電力融通システムにおける電力融通制御処理について説明する。
上記構成の電力融通システム1においては、商用電力系統2の受電点となり該商用電力系統2から商用電力の供給を受ける親クラスタ部100と、子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400との各クラスタ同士は、一次側ACバス31と一次側DCバス32とを介して、互いに交流電力及び直流電力を融通できるように構成されている。そして、親クラスタ部100と、子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400との間で電力を融通する場合の方法として、交流電力のみの融通、直流電力のみの融通、又は直流電力と交流電力との両方の融通との3通りの融通方法を選択可能としている。
【0064】
図6は、電力融通システムにおける電力融通の制御動作の概要を示す説明図である。
この
図6では、親クラスタ部100を例にとり電力融通の制御動作について説明するが、子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400とにおいても同様な制御動作が行われる。
図6に示す親クラスタ部100において、交流融通を行う場合は、PSAC150を介して出力される発電装置141の交流発電量Pacが余った場合であり、かつ、蓄電装置145が満充電又は満充電に近い状態の場合である。つまり、蓄電装置145の蓄電池残容量SOCが所定の閾値以上の場合である。
【0065】
より具体的には、発電装置141の交流発電量Pacが交流負荷装置143の交流消費電力Loadacよりも大きく(Pac>Loadac)、変換装置A120から分電盤162に流れる電流Idcが、図に示す充電方向に流れ、かつ蓄電装置145の蓄電池残容量SOCが所定の閾値以上である場合に、親クラスタ部100から他のクラスタに対して一次側ACバス31を介して交流融通が行われる。子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400についても同様である。
なお、
図6における電流Idcは、蓄電装置145が負極接地されている場合の電流Idcの向きを示しており、この直流電流Idcの向きが直流電力を融通する向きを示している。つまり、直流系を正極接地とするか負極接地とするかで、GNDに対となる接続線の電流の向きが変化する。
図6では、蓄電装置145が負極接地であるという条件の基での電流Idcの向きを示し、直流電流Idcの向きが直流電力を融通する向きと一致する場合の例である。
【0066】
また、直流融通(DC融通)を行う場合は、PCSDC150Aを介して出力される発電装置142の直流発電量Pdcが余った場合であり、かつ、蓄電装置145が満充電又は満充電に近い状態の場合である。つまり、蓄電装置145の蓄電池残容量SOCが所定の閾値以上の場合である。
より具体的には、発電装置142の直流発電量Pdcが直流負荷装置144の直流消費電力Loaddcよりも大きく(Pdc>Loaddc)、変換装置A120から分電盤162に流れる電流Idcが、図に示す放電方向に流れ、かつ蓄電装置145の蓄電池残容量SOCが所定の閾値以上である場合に、親クラスタ部100から他のクラスタに対して一次側DCバス32を介して直流融通が行われる。子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400についても同様である。
【0067】
このように、各クラスタ部の間で、PCSAC150から出力される交流電力が大きい場合に、交流融通を行い、PCSDC150Aから出力される直流電力が大きい場合に、直流融通を行うことを基本にしている。また、後述するように、交流融通と直流融通とを同時に行うこともできる。
なお、一次側ACバス31には、商用電力系統2から電力が供給される他、発電装置141や発電装置142や蓄電装置145からも電力が供給されるため、商用電力系統2が停電になった場合でも、すぐに一次側ACバス31が停電になることなく給電可能状態が維持される。一方、一次側DCバス32は直流融通時に限り給電されるものである。
【0068】
また、
図7は、クラスタ部における電力融通動作について説明するための説明図である。この
図7は、例えば、親クラスタ部100における交流発電量Pacと、交流負荷装置143の交流消費電力Loadacと、直流発電量Pdcと、直流負荷装置144の直流消費電力Loaddcと、電流Idcの方向と、蓄電装置145の状態と、に応じた電力の融通状態を表で示したものである。
【0069】
なお、この表において、符号「CS」は、親クラスタ部100の場合は、商用電力系統2から供給される交流電力である。
なお、子クラスタ部200、300、400においても、親クラスタ部100の場合と同様に適用可能であり、それぞれの場合の符号「CS」は、子クラスタ部200と、子クラスタ部300とにおいては、一次側ACバス31から供給される交流電力であり、子クラスタ部400においては、子クラスタ部300の二次側ACバス61から供給される交流電力である。
また、この表において、電流Idcは、電流Idcの方向が「充電方向」の場合に、変換装置A120から直流系の分電盤162に向けて直流電力が融通される状態を示し、電流Idcの方向が「放電方向」の場合に、直流系の分電盤162から変換装置A120に向けて直流電力が融通される状態を示している。
【0070】
この
図7においては、後述する状態ST10及び状態ST11に示すように、例えば、親クラスタ部100の発電装置141のPCSAC150から出力される交流電力の発電量が交流負荷装置143の負荷電力よりも大きく、かつ、蓄電装置145が満充電の状態であり、さらに、電流Idcが充電方向(
図6参照)に流れる場合に、一次側ACバス31を介して他クラスタ部に交流融通が行われる。
また、後述する状態ST13に示すように、発電装置142のPCSDC150Aから出力される直流電力の発電量が直流負荷装置144の負荷電力よりも大きく、かつ、蓄電装置145が満充電の状態であり、さらに電流Idcが放電方向(
図6参照)に流れる場合に、一次側DCバス32を介して他クラスタ部に対して直流融通が行われる。子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400とにおいても同様である。
【0071】
以下、
図7に示す表の状態ST1から状態ST14について説明する。
まず、状態ST1から状態ST3は、サブクラスタ消費の状態、つまり、クラスタ内の発電装置141から直流負荷装置144側に電力の融通が行われず、かつ、発電装置142と蓄電装置145から交流負荷装置143側に電力の融通が行われない状態を示している。
この状態ST1から状態ST3においては、交流発電量Pacと直流発電量Pdcに交流融通又は直流融通を行うほどの余裕がないため、交流融通と直流融通との両方とも行われない。
【0072】
そして、状態ST1は、交流発電量Pacと商用電力CSとの合計値「Pac+CS」が、交流負荷装置143における交流消費電力Loadacと等しい場合であり(Pac+CS=Loadac)、また、直流発電量Pdcが、直流負荷装置144における直流消費電力Loaddcよりも小さい場合である(Pdc<Loaddc)。
この状態ST1においては、直流消費電力Loaddcの不足分を補うために、蓄電装置145から直流負荷装置144に向けて放電方向にバッテリ電流Ibattを流す。また、蓄電装置145から変換装置A120に向けて直流電流Idcが流れず、Idcは0である。
【0073】
また、状態ST2は、「Pac+CS=Loadac」であり、かつ、直流発電量Pdcが、直流負荷装置144における直流消費電力Loaddcと等しい場合である(Pdc=Loaddc)。この状態ST2においては、電流Idcは0となり、また、蓄電装置145からの放電は行われない(Ibatt=0)。
また、状態ST3は、「Pac+CS=Loadac」であり、かつ、直流発電量Pdcが、直流負荷装置144における直流消費電力Loaddcよりも大きい場合である(Pdc>Loaddc)。この状態ST3においては、発電装置142から蓄電装置145に向けて充電方向の電流Ibattが流れる。
【0074】
また、状態ST4から状態ST8は、クラスタ内で電力融通が行われる場合を示している。例えば、親クラスタ部100において、PCSAC150から直流負荷装置144側に電力が融通され、又、PCSDC150Aや蓄電装置145から交流負荷装置143側に電力が融通される場合を示している。この状態ST4から状態ST8においては、交流発電量Pacと直流発電量Pdcに交流融通又は直流融通を行うほどの余裕がないため、交流融通と直流融通とが両方とも行われない。
【0075】
そして、状態ST4から状態ST6は、発電装置141による交流発電量Pacと商用電力系統2から供給される電力CSとの合計の電力量「Pac+CS」が交流負荷装置143における交流消費電力Loadacよりも小さい場合を示している。つまり、親クラスタ部100の内部で、発電装置142及び蓄電装置145から交流負荷装置143に交流電力の融通が行われる状態を示している。
【0076】
そして、状態ST4は、交流発電量Pacと商用電力CSとの合計値「Pac+CS」が、交流負荷装置143における交流消費電力Loadacよりも小さく(Pac+CS<Loadac)、かつ、直流発電量Pdcが、直流負荷装置144における直流消費電力Loaddcよりも小さい場合である(Pdc<Loaddc)。
この状態ST4においては、交流電力と直流電力の不足分を補うために、蓄電装置145から交流負荷装置143及び直流負荷装置144に向けて放電方向にバッテリ電流Ibattを流す。このため、蓄電装置145から変換装置A120に向けて放電方向に直流電流Idcが流れる。
【0077】
また、状態ST5においては、「Pac+CS<Loadac」であり、かつ、直流発電量Pdcと、直流負荷装置144における直流消費電力Loaddcと等しい場合である(Pdc=Loaddc)。この状態ST5においては、交流電力の不足分を補うために、蓄電装置145から交流負荷装置143に向けて放電方向にバッテリ電流Ibattを流す。このため、蓄電装置145から変換装置A120に向けて放電方向に直流電流Idcが流れる。
【0078】
また、状態ST6においては、「Pac+CS<Loadac」であり、かつ、直流発電量Pdcが、直流負荷装置144における直流消費電力Loaddcよりも大きい場合である(Pdc>Loaddc)。この状態ST6においては、交流電力の不足分を補うために、発電装置142から交流負荷装置143に向けて電力を供給する。このため、発電装置142から変換装置A120に向けて放電方向に直流電流Idcが流れる。また、発電装置142から直流負荷装置144と交流負荷装置143とに電力を供給した状態において、さらに出力電力に余裕がある場合には、蓄電装置145に充電方向にバッテリ電流Ibattを流す。
【0079】
また、状態ST7と状態ST8は、発電装置141による交流発電量Pacが交流負荷装置143の消費電力よりも大きい場合を示している(Pac>Loadac)。
そして、状態ST7及び状態ST8においては、交流発電量Pacと消費電力Laodacとの差分の電力「Pac−Loadac」と発電装置142の直流発電量Pdcとの合計電力「Pdc+(Pac−Loadac)」が直流電力として利用可能となる。
【0080】
そして、状態ST7は、「Pdc+(Pac−Loadac)<Loaddc」の場合であり、この場合、直流電力の不足を補うために、変換装置A120から直流負荷装置144に向けて充電方向に電流Idcが流れるとともに、蓄電装置145から直流負荷装置144に向けて放電方向にバッテリ電流Ibattを流す。
【0081】
状態ST8は、「Pdc+(Pac−Loadac)=Loaddc」の場合であり、この場合、直流電力の不足を補うために、変換装置A120から直流負荷装置144に向けて充電方向に電流Idcを流す。なお、この場合、蓄電装置145のバッテリ電流Ibattは0となる(Ibatt=0)。
【0082】
また、状態ST9から状態ST11は、発電装置141による交流発電量Pacが、交流負荷装置143の消費電力Laodacよりも大きい状態である。この場合、交流発電量Pacと消費電力Laodacとの差分の電力「Pac−Loadac」と発電装置142の直流発電量Pdcとの合計電力「Pdc+(Pac−Loadac)」が直流電力として利用可能となる。
【0083】
そして、状態ST9は、「Pdc+(Pac−Loadac)>Loaddc」の場合であり、この場合、変換装置A120から直流負荷装置144側に電流Idcを流すか否かは、PdcとLoaddcとの大小関係により決定される。
【0084】
また、状態ST10と状態ST11とは、蓄電装置145が満充電の状態であり、かつ、「Pac>Loadac」の場合であり、一次側ACバス31により交流融通を行う場合である。
換言すると、状態ST10は、「Pac>Loadac」であり、「Pdc+(Pac−Loadac)<Loaddc」の場合であり、かつ、蓄電装置145が「満充電」の場合である。この場合、直流電力の不足分を補うために、変換装置A120から直流負荷装置144に向けて充電方向に電流Idcを流すとともに、発電装置141の交流発電量Pacにさらに余裕のある場合は、一次側ACバス31に対して交流融通を行う。
【0085】
また、状態ST11は、「Pac>Loadac」であり、「Pdc+(Pac−Loadac)=Loaddc」の場合であり、かつ、蓄電装置145が「満充電」の場合である。この場合、直流電力の不足分を補うために、変換装置A120から直流負荷装置144に向けて充電方向に電流Idcを流すとともに、発電装置141の発電力にさらに余裕のある場合は、一次側ACバス31に対して交流融通を行う。
【0086】
また、状態ST12は、「Pac>Loadac」の場合であり、かつ、「Pdc>Loaddc」の場合である。発電装置142や蓄電装置145の充電状態により、AC融通又は交流融通を行うか否かが決定される。
【0087】
また、状態ST13は、「Pac+CS<Loadac」であり、「Pdc>Loaddc」であり、かつ、蓄電装置145が「満充電」の場合である。この場合、交流電力の不足分を補うために、蓄電装置145から変換装置A120に放電方向に電流Idcを流す。また、蓄電装置145が満充電であるために、一次側DCバス32に対して直流融通を行うことが可能になる。
【0088】
また、状態ST14は、「Pac+CS=Loadac」であり、「Pdc>Loaddc」であり、かつ、蓄電装置145が「満充電」の場合である。この場合、「Pac+CS=Loadac」であるため、発電装置142から変換装置A120に向けて電流を流す必要はなく、また、「Pdc>Loaddc」かつ蓄電装置145が満充電であるために、一次側DCバス32に対して直流融通を行うことが可能になる。
【0089】
以上、
図7の表について説明したが、交流融通を行うか直流融通を行うかの実際の判定処理としては、蓄電装置145に流れるバッテリ電流Ibattを図示しない検出器によって検出して、制御部110は、検出されたバッテリ電流Ibattに基づいて満充電状態を判定する。また、分電盤162から変換装置A120に流れる電流Idcを図示しない検出器によって検出して、制御部110は、検出された電流Idcの方向を判定する。制御部110は、上記のバッテリ電流Ibattに基づいて判定した満充電の判定結果と、電流Idcの方向の判定結果とに基づいて、交流融通を行うか、又は、直流融通を行うか決定する。
【0090】
(AC融通とDC融通とを蓄電池残容量SOCにより選択する例)
図7に示した表では、例えば、親クラスタ部100において、蓄電装置145が満充電の状態にある場合に、PCSAC150から出力される交流発電量Pacと、PCSDC150Aから出力される直流発電量Pdcと、変換装置A120と分電盤162との間に流れる電流Idcの向きとを基にして、交流融通か直流融通かを決める例を示したが、蓄電装置145の蓄電池残容量SOCに応じて、交流融通を行うか直流融通を行うかを決めることもできる。
【0091】
図8は、蓄電装置の蓄電池残容量SOCに応じてAC融通とDC融通を選択する例を示す説明図である。この
図8に示す例では、蓄電装置145からAC融通を行うかDC融通を行うかを、蓄電装置145の蓄電池残容量SOCに応じて切り替える例を示している。
この
図8では、縦軸に蓄電池残容量SOCの大きさを取り、横軸に時間tを取り、蓄電池残容量SOCの変化と、蓄電池残容量SOCの変化に応じたAC融通期間とDC融通期間の変化を示している。
【0092】
この
図8において、基準値SOC1Aは、例えば、蓄電池残容量SOCが満充電に近い状態の蓄電池残容量SOCの値に対応する基準値である。また、基準値SOC1Bは、例えば、基準値SOC1Aより小さい値を有する基準値(すなわち基準値SOC1A>基準値SOC1Bである)であって、例えば、運用上、蓄電装置145に対して充電を開始させることが好ましい状態の蓄電池残容量SOCの値に対応する値に設定する。
また、
図8において、基準値SOC2Aは、蓄電池残容量SOCが満充電の状態、又は運用上、発電装置142等から蓄電装置145にこれ以上充電させないことが好ましい状態の蓄電池残容量SOCの値に対応する基準値である。また、基準値SOC2Bは、例えば、基準値SOC2Aより小さい値を有する基準値(すなわち基準値SOC2A>基準値SOC2B)である。
【0093】
例えば、親クラスタ部100の制御部110は、蓄電装置145の充放電電流の検出値の積算結果や、蓄電装置145の端子電圧の検知結果、あるいは蓄電装置145から受信した状態を表す信号等に基づいて、蓄電池残容量SOCを算出する。そして、制御部110は、この蓄電池残容量SOCと、基準値SOC1A及び基準値SOC1Bとの大小関係を比較するとともに、蓄電池残容量SOCと、基準値SOC2A及び基準値SOC2Bとの大小関係を比較する。
【0094】
そして、
図8に示すように、PCSAC150から出力される交流発電量Pacや、PCSDC150Aから出力される直流発電量Pdcが大きい場合は、蓄電装置145に充電電流が流れることにより、蓄電装置145の蓄電池残容量SOCが次第に増加する。
そして、制御部110は以下の処理をする。時刻t1において、蓄電装置145の蓄電池残容量SOCが基準値SOC1A以上になる場合に、最初にAC融通モードを開始する。そして、時刻t1以降、さらに蓄電池残容量SOCが上昇し、時刻t2において、蓄電池残容量SOCが基準値SOC2Aを超える場合には、AC融通モードと合わせてDC融通モードを開始する。
その後、蓄電池残容量SOCが変化し、時刻t3において、蓄電池残容量SOCが基準値SOC2Bまで低下するとDC融通モードを停止する。
そして、時刻t3以降、時刻t4において、蓄電池残容量SOCが基準値SOC1Bまで低下するとAC融通モードを停止する。
【0095】
このように、制御部110は、時刻t1から時刻t2までの期間と時刻t3から時刻t4までの期間とにおいてAC融通モードを実行し、時刻t2から時刻t3までの期間においてAC融通モードとDC融通モードとの両方を実行する。つまり、制御部110は、蓄電装置145の蓄電池残容量SOCに応じて、AC融通モードを行う第1段階と、AC融通モードとDC融通モードの両方を実行する第2段階と、の2段階に分けて電力融通処理を行う。
これにより、制御部110は、蓄電装置145が満充電に近い状態になると、他のクラスタへ交流融通を行う。上記の交流融通を行う期間において、蓄電装置145が過充電になる恐れがある場合には、制御部110は、AC融通に合わせて直流融通を行わせることにより、他のクラスタへ融通する電力量を増やして、蓄電装置145が過充電されることを回避するように制御する。
【0096】
(交流融通及び直流融通を行う場合に切替部を用いる例)
図9は、切替部を用いて交流融通及び直流融通を行う場合の例を示す説明図である。
例えば、
図9に示す子クラスタ部200Aにおいて、制御部210が切替部260の共通接点cと接点aとを導通させることにより、PCSAC250を一次側ACバス31に直接接続し、PCSAC250から一次側ACバス31に向けて交流融通を行うことができる。つまり、破線A1で示す経路に沿って、PCSAC250から一次側ACバス31に交流融通を行うことができる。
【0097】
また、制御部210が切替部260Aの共通接点cと接点aとを導通させることにより、PCSDC250Aを一次側DCバス32に直接接続し、PCSDC150Aから一次側DCバス32に向けて直流融通を行うことができる。つまり、破線A2で示す経路に沿って、PCSDC250Aから一次側DCバス32に直流融通を行うことができる。
これにより、子クラスタ部200Aから一次側ACバス31にAC融通を行う場合に、変換装置B220を経由することなく、切替部260を介して、一次側ACバス31に直接に交流電力を供給することができる。また、子クラスタ部200Aから一次側DCバス32にDC融通を行う場合に、変換装置B220を経由することなく、切替部260Aを介して一次側DCバス32に直接に直流電力を供給することができる。
【0098】
(電力融通処理の手順)
図10は、電力融通処理の手順を示すフローチャートである。以下、
図10のフローチャートを参照して、電力融通処理の手順について説明する。
なお、
図10では、交流融通を「AC融通」と記載し、直流融通を「DC融通」と記載している。
【0099】
そして、例えば、親クラスタ部100の制御部110において、電力融通が必要であることが検知される(ステップS100)。例えば、制御部110は、発電装置141の交流発電量Pacと、発電装置142の直流発電量Pdcと、蓄電池残容量SOC等に基づいて、電力融通が必要であることを検知する。或いは、制御部110は、エネルギー管理装置(EMS)11から送られる電力融通の要請信号を受信して、電力融通が必要であることを検知する。
続いて、制御部110では、AC融通が必要な状態か否かを判定する(ステップS105)。例えば、制御部110が、蓄電装置145に流れるバッテリ電流Ibattを検出して満充電状態を判定するとともに、変換装置A120と分電盤162との間に流れる電流Idcの方向を判定して、交流融通を行うことが必要な状態であるか否かを判定する。
【0100】
そして、ステップS105においてAC融通が必要な状態であると判定された場合(ステップS105:Yes)、制御部110は、PCSAC150を切替部160を介して一次側ACバス31に接続する(ステップS110)。そして、制御部110は、PCSAC150において一次側ACバス31に対する連系運転検出処理を行わせる(ステップS115)。
【0101】
続いて、制御部110は、AC融通の可否情報を収集する(ステップS120)。例えば、制御部110は、AC融通を行う場合に電力会社との取り決めによる規制上の制約があるか否かを判定する(ステップS125)。
続いて、制御部110は、指定された電力供給モードに応じて交流電力(AC)又は直流電力(DC)の何れを融通するかを判定する(ステップS130)。
そして、ステップS130において、交流融通(AC融通)を行うと判定された場合(ステップS130:AC)、制御部110は、AC融通モードの起動処理を開始する(ステップS140)。
続いて、制御部110は、DC融通モードの起動が必要か否かを判定する(ステップS145)。そして、ステップS145において、DC融通モードの起動が必要でないと判定された場合(ステップS145:No)、AC融通モードの起動状態を維持するか否かを判定する(ステップS180)。
そして、ステップS180において、AC融通モードの起動状態を維持しないと判定された場合(ステップS180:No)、制御部110は、ステップS150に移行し、AC融通モードの終了処理を実行する(ステップS150)。
制御部110は、AC融通モードの終了処理に移行する(ステップS150)。そして、このステップS150の処理を実行した後に、制御部110は、この電力融通処理を終える。
一方、ステップS180において、AC融通モードの起動状態を維持すると判定された場合(ステップS180:Yes)、つまり、AC融通モードを維持したままにする場合、制御部110は、ステップS180の判定を繰り返す。
【0102】
一方、ステップS105においてAC融通が必要でないと判定された場合(ステップS105:No)、ステップS125においてAC融通が可能でないと判定された場合(ステップS125:No)、ステップS130において直流融通(DC融通)を行うと判定された場合(ステップS130:DC)、及びステップS145においてDC融通モードの起動が必要と判定された場合(ステップS145:Yes)には、ステップS160に移行して、制御部110は、DC融通モードの起動処理を行う(ステップS160)。
【0103】
続いて、制御部110は、DC融通モードの終了指示を検出した場合、DC融通モードの終了処理を行い(ステップS170)、このステップS170の処理を終了した後に、ステップS180に進む。なお、DC融通モードの終了処理の詳細については後述する。
【0104】
このように、電力融通システム1では、クラスタ間で交流融通及び直流融通を行うことにより複数のクラスタ間において電力の利用効率を高めることができる。
なお、
図10のフローチャートでは、親クラスタ部100における電力融通処理の手順について説明したが、子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400とにおいても、同様な電力融通処理が行われる。
【0105】
(AC融通モードとDC融通モードの起動処理)
図11は、AC融通モードとDC融通モードの起動処理の例を示す説明図である。
図11(A)は、AC融通モードの起動処理を、
図11(B)は、DC融通モードの起動処理を示している。
【0106】
この
図11(A)では、横方向に時間tの経過を示し、縦方向に、一次側ACバス31の給電状態と、PCSAC150の動作状態とを並べて示している。
この
図11(A)に示すように、時刻t1において、PCSAC150は制御部110から送られる融通モードの起動指示を検出すると、PCSAC150は、一旦、その動作を停止する。そして、時刻t2において、一次側ACバス31との連系動作を開始し、時刻t3から一次側ACバス31への交流電力の供給を開始する。
【0107】
また、
図11(B)では、横方向に時間tの経過を示し、縦方向に、一次側DCバス32の給電状態と、双方向直流変換部131(
図3(B)参照)の動作状態とを並べて示している。
この
図11(B)に示すように、時刻t1において、双方向直流変換部131は、制御部110から送られる融通モードの起動指示を検出すると、双方向直流変換部131は、一次側DCバス32との連系動作を開始し、時刻t3から一次側DCバス32への直流電力の供給を開始する。
なお、
図5に示す電力融通システム1Aにおいて、PCSDC150Aを切替部160Aを介して一次側DCバス32に接続する場合のDC融通モードの起動処理は、
図11(A)に示すPCSAC150を一次側ACバス31に接続する起動処理に準じた処理が行われる。
【0108】
(DC融通モードの終了処理)
図12は、DC融通モードの終了処理の手順を示すフローチャートである。この
図12に示すDC融通モードの終了処理は、DC融通を変換装置D130を用いて行う場合の例である。
例えば、親クラスタ部100において、制御部110は、DC融通モードの実行中に、DC融通モードの終了指示の検出を行う(ステップS171)。例えば、制御部110は、エネルギー管理装置(EMS)11から送られるDC融通モードの終了指示の信号の検出を行う。そして、制御部110は、終了指示を検出したか否かを判定する(ステップS172)。
そして、制御部110は、DC融通モードの終了指示を検出した場合(ステップS172:Yes)、制御部110は、融通先の給電状態と、自系統の給電状態とを検出し(ステップS173)、DC融通モードの終了が可能か否かを判定する(ステップS174)。
【0109】
そして、ステップS174においてDC融通モードの終了が可能でないと判定された場合(ステップS174:No)、制御部110は、DC融通モードの終了が可能となるまで待機する。
そして、ステップS174においてDC融通モードの終了が可能であると判定された場合(ステップS174:Yes)、制御部110は、双方向直流変換部(双方向DC/DC変換部)131(
図3(B)参照)の出力を遮断する(ステップS175)。
そして、制御部110は、ステップS175の処理を実行した後に、このDC融通モードの終了処理を終える。
【0110】
なお、上述したDC融通モードの終了処理は、DC融通モードの終了時に双方向交直変換部121の出力を遮断する例を示したが、
図5に示す親クラスタ部100Aのように、PCSDC150Aから切替部160Aを介して一次側DCバス32に直流電力を供給している場合は、PCSDC150Aの動作を停止させるようにしてもよい。
【0111】
(AC融通モードの終了処理)
図13は、AC融通モードの終了処理の手順を示すフローチャートである。なお、この
図13に示す例は、
図4に示すように、PCSAC250から切替部260を介して一次側DCバス32に交流電力を出力する場合の例である。
以下、子クラスタ部200を例にして、AC融通モードの終了処理について説明する。
まず、子クラスタ部200において、制御部210は、AC融通モードの実行中に、AC融通モードの終了指示の検出を行っている(ステップS151)。例えば、制御部210は、エネルギー管理装置(EMS)11から送られるAC融通モードの終了指示の検出を行う。そして、制御部210は、終了指示を検出したか否かを判定する(ステップS152)。
【0112】
そして、ステップS152において、AC融通モードの終了指示を検出しなかった場合(ステップS152:No)、制御部210は、AC融通モードの終了処理が検出されるまで待機する。
そして、ステップS152において、AC融通モードの終了指示を検出した場合(ステップS152:Yes)、制御部210は、融通先の状態と、自系統の状態を検出し(ステップS153)、AC融通モードの終了が可能か否かを判定する(ステップS154)。
【0113】
そして、ステップS154においてAC融通モードの終了が可能でないと判定された場合(ステップS154:No)、制御部210は、AC融通モードの終了が可能となるまで待機する。
そして、ステップS154においてAC融通モードの終了が可能であると判定された場合(ステップS154:Yes)、制御部210は、PCSAC250の出力を停止する(ステップS155)。
続いて、制御部210は、PCSAC250の接続先を一次側ACバス31から子クラスタ部200の二次側ACバス41に変更する(ステップS156)。そして、制御部210は、PCSAC250の出力を二次側ACバス41に連系させ(ステップS157)、この連系が完了した後、PCSAC250から二次側ACバス41に電力を出力させる(ステップS158)。
そして、制御部210は、ステップS158の処理の実行後に、このAC融通モードの終了処理を終える。
【0114】
なお、
図9に示す子クラスタ部200Aのように、PCSDC250Aを一次側DCバス32に接続する構成の場合において、DC融通モードを終了する際には、上記のAC融通モードの処理に準じた処理が行われる。
【0115】
また、
図14は、AC融通モードの終了処理の例を示す説明図である。この
図14に示す終了処理は、上述した
図13のフローチャートで説明した処理手順をタイムチャートで示したものである。
この
図14では、横方向に時間tの経過を示し、縦方向に、一次側ACバス31の給電状態と、PCSAC250の動作状態とを並べて示している。
この
図14に示すように、時刻t1以前において、一次側ACバス31にはPCSAC250から電力が供給されている。そして、時刻t1において、制御部210は、AC融通モードの終了指示を検出し、その後の時刻t2において、融通先の状態と、自系統の状態を検出する。続いて、時刻t3において、制御部210は、AC融通モードの終了が可能か否かを判定する。そして、AC融通モードの終了が可能と判定された場合に、時刻t3の後の時刻t4において、制御部210は、PCSAC150の出力を停止し、PCSAC250から一次側ACバス31への電力の供給を停止する。
【0116】
そして、続く時刻t5において、切替部260により、PCSAC250と一次側ACバス31との接続を遮断し、そして、時刻t5に続く時刻t6において、制御部210は、PCSAC250を二次側ACバス41に接続する。そして、時刻t6に続く時刻t7において、制御部210は、PCSAC250を二次側ACバス41に連系させ、その後の時刻t8から、制御部210は、PCSAC250から二次側ACバス41に交流電力を供給させる。
【0117】
なお、DC融通モードにおいて、
図5の親クラスタ部100Aに示すように、PCSDC150Aを切替部160Aを介して一次側DCバス32に接続する構成の場合には、DC融通モード終了処理は、上述したAC融通モード終了処理に準じた処理となる。
【0118】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態の電力融通システム(例えば、電力融通システム1)の構成は、第1の実施形態と同様であるので、本実施形態において特徴的な処理について説明する。第1の実施形態においては、エネルギー管理装置(EMS)11が、例えば、各クラスタにおける電力の給電状態、給電可能なクラスタ部を示す情報、又は受電を要求するクラスタ部を示す情報を取得し、この取得した情報に基づいて電力融通の制御を行う場合には、エネルギー管理装置(EMS)11が融通電力を給電する側(融通元)のクラスタ部と融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部とを特定して管理することができる。
【0119】
本実施形態では、エネルギー管理装置(EMS)11の制御によらずに、融通電力を供給する側のクラスタ部(融通元)と融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部とのそれぞれを特定する処理の例について説明する。
例えば、各クラスタ部の間において互いに電力の融通を行う際に、他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部又は他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部は、共通の給電経路(例えば、一次側DCバス32)を介して、他のクラスタ部からの受電を要求する受電要求、又は他のクラスタ部に対する給電を要求する給電要求を授受する処理(ハンドシェーク処理)を実行する。
この処理では、例えば、それぞれのクラスタ部毎に予め設定された互いに異なる所定の期間において、受電を要求するクラスタ部が受電要求を行い、又は、給電可能なクラスタ部が給電要求を行うことにより、クラスタ部間で受電要求又は給電要求が授受される。
【0120】
ここで、各クラスタ部のそれぞれには、上述の所定の期間として、受電要求を行うための第1の期間、又は給電要求を行うための第2の期間が予め設定されている。以下、この第1の期間と第2の期間とのことを、それぞれ「受電要求期間」と「給電要求期間」とも呼ぶことがある。クラスタ部毎に受電要求期間が互いに異なる期間として設定されているため、受電要求を行った期間に基づいていずれのクラスタ部による受電要求であるかを特定することが可能である。同様に、クラスタ部毎に給電要求期間が互いに異なる期間として設定されているため、給電要求を行った期間に基づいていずれのクラスタ部による給電要求であるかを特定することが可能である。
【0121】
(第2の実施形態による電力融通処理の手順)
図15は、本実施形態による電力融通処理の手順を示すフローチャートである。この
図15を参照して、本実施形態による電力融通システム(例えば、電力融通システム1)において、受電要求と給電要求とを授受する処理を実行した後に、電力融通を実行する電力融通処理の一例を説明する。
ここでは、
図1に示す電力融通システム1において、親クラスタ部100と子クラスタ部200と子クラスタ部300との間で、一次側DCバス32を介して直流融通(「DC融通」)する場合を例として説明する。
【0122】
まず、電力融通システム1において、親クラスタ部100と子クラスタ部200と子クラスタ部300とのうち他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部が給電要求を行い、その給電要求を他のクラスタ部が検出する処理(給電要求の授受処理)が行われる(ステップS10)。
例えば、親クラスタ部100の制御部110は、自クラスタ部内における発電状態、給電状態、又は蓄電状態等として、発電装置141の交流発電量Pac、発電装置142の直流発電量Pdc、電流Idcの方向、蓄電装置145に流れるバッテリ電流Ibatt、又は蓄電池残容量SOC等を図示しない検出器によって検出する。そして、制御部110は、検出した結果に基づいて、他のクラスタ部に対してDC融通が可能(給電可能)であるか否かを判定する。制御部110は、DC融通が可能(給電可能)であると判定した場合、親クラスタ部100に設定された給電要求期間において、給電要求として一次側DCバス32の電圧を変化させる。例えば、制御部110は、給電要求として、一次側DCバス32に対する給電を行うことにより一次側DCバス32の電圧を上昇させる。
一方、子クラスタ部200の制御部210と子クラスタ部300の制御部310とは、一次側DCバス32の電圧を図示しない検出器によって検出し、親クラスタ部100に設定された給電要求期間において電圧の上昇を検出することにより、親クラスタ部100が他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部であることを検出する。すなわち、子クラスタ部200と子クラスタ部300とは、給電要求期間において一次側DCバス32の電圧を検出した結果に基づいて、給電可能なクラスタ部がいずれのクラスタ部であるかを特定する。
【0123】
次に、電力融通システム1において、親クラスタ部100と子クラスタ部200と子クラスタ部300とのうち他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部(融通電力を必要としているクラスタ部)が受電要求を行い、その受電要求を他のクラスタ部が検出する処理(受電要求の授受処理)が行われる(ステップS20)。
例えば、子クラスタ部200の制御部210は、自クラスタ部内における発電状態、給電状態、又は蓄電状態等として、発電装置241の交流発電量、発電装置242の直流発電量、給電経路41、42に流れる電流の方向、蓄電装置245に流れるバッテリ電流、又は蓄電池残容量SOC等を図示しない検出器によって検出する。そして、制御部210は、検出した結果に基づいて、受電要求があるか否か、すなわち、融通電力を必要としているか否かを判定する。制御部210は、融通電力を必要としていると判定した場合、子クラスタ部200に設定された受電要求期間において、受電要求として一次側DCバス32の電圧を変化させる。例えば、制御部210は、受電要求として、一次側DCバス32に対する給電を行うことにより一次側DCバス32の電圧を上昇させる。
一方、親クラスタ部100の制御部110と子クラスタ部300の制御部310とは、一次側DCバス32の電圧を図示しない検出器によって検出し、子クラスタ部200に設定された受電要求期間において電圧の上昇を検出することにより、子クラスタ部200が他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部(融通電力を必要としているクラスタ部)であることを検出する。すなわち、親クラスタ部100と子クラスタ部300とは、受電要求期間において一次側DCバス32の電圧を検出した結果に基づいて、受電を要求するクラスタ部(融通電力を必要としているクラスタ部)がいずれのクラスタ部であるかを特定する。
【0124】
上述したように、ステップS10とステップS20とにおいて、受電要求と給電要求とを授受する処理が行われた後、次に、ステップS160AのDC融通モード起動処理に進む。
例えば、ステップS10において、子クラスタ部200は、他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部として親クラスタ部100を検出したとする。また、ステップS20において、親クラスタ部100は、他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部として、子クラスタ部200を検出したとする。この場合、親クラスタ部100は、子クラスタ部200を、融通電力を受電する側のクラスタ部(融通先)として特定する。また、子クラスタ部200は、親クラスタ部100を、融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)として特定する。そして、親クラスタ部100と子クラスタ部200とのそれぞれが互いに融通元のクラスタ部と融通先のクラスタ部との関係であることを特定してから、電力融通が行われる。
【0125】
ステップS160Aにおいて、融通元のクラスタ部として特定された親クラスタ部100は、DC融通モードの起動処理(例えば、
図11(b)に示す処理)を実行し、一次側DCバス32に対する給電を開始する。そして、子クラスタ部200は、一次側DCバス32に対する給電が開始されたことに応じて、一次側DCバス32からの受電を開始する。
なお、子クラスタ部200は、例えば、一次側DCバス32の電圧を検出することにより一次側DCバス32に対する給電が開始されたことを検出し、給電が開始されたことを検出したことに応じて一次側DCバス32からの受電を開始してもよい。
【0126】
続いて、親クラスタ部100が融通電力を供給することが不可能になった場合、又は子クラスタ部200が融通電力を必要としなくなった場合、親クラスタ部100は、DC融通モードの終了処理を実行する(ステップS170A)。
【0127】
図16は、本実施形態によるDC融通モードの終了処理の手順を示すフローチャートである。この
図16は、DC融通モードの実行中に、融通電力を供給することが不可能になったことによりDC融通モードを終了する処理を示している。
例えば、親クラスタ部100の制御部110は、一次側DCバス32に対する給電中(DC融通モードの実行中)において、自クラスタ部内における発電状態、給電状態、又は蓄電状態等として、発電装置141の交流発電量Pac、発電装置142の直流発電量Pdc、電流Idcの方向、蓄電装置145に流れるバッテリ電流Ibatt、又は蓄電池残容量SOC等を検出する(ステップS171A)。そして、制御部110は、ステップS171Aにおいて検出した結果に基づいて、他のクラスタ部に対してDC融通が可能(給電可能)であるか否かを判定する(ステップS172A)。
ステップS172AにおいてDC融通が可能(給電可能)であると判定した場合(ステップS172A:Yes)、制御部110は、一次側DCバス32に対する給電を継続して行う。一方、ステップS172AにおいてDC融通が可能(給電可能)でないと判定した場合(ステップS172A:No)、制御部110は、一次側DCバス32に対する給電を停止してDC融通モードを終了する(ステップS173A)。
【0128】
なお、親クラスタ部100は、DC融通モードの実行中に、一次側DCバス32の電圧又は電流を検出することにより一次側DCバス32からの受電が行われているか否かを判定し、受電が行われていないと判定した場合に一次側DCバス32に対する給電を停止してDC融通モードを終了してもよい。また、例えば、DC融通モードを継続する制限時間が予め設定されており、DC融通モードを開始してからの経過時間が制限時間に達した場合に、親クラスタ部100は、一次側DCバス32に対する給電を停止してDC融通モードを終了してもよい。
【0129】
このように、電力融通システム1では、一次側DCバス32を介して受電要求と給電要求とを授受する処理を実行することにより、エネルギー管理装置(EMS)11の制御によらずに、融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)と融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部とのそれぞれを特定してから電力融通を行うことができる。
【0130】
例えば、融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)は、融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部を特定してから、一次側DCバス32に対して融通電力を給電してもよいし、また、融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部は、融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)を特定してから、一次側DCバス32から融通電力を受電してもよい。さらに、融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)が融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部を特定し、かつ、融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部が融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)を特定してから、電力融通を行ってもよい。
【0131】
なお、
図15を参照して、親クラスタ部100が融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)であって、子クラスタ部200が融通電力を受電する側のクラスタ部(融通先)である例を説明したが、子クラスタ部200又は子クラスタ部300が給電する側のクラスタ部(融通元)となってもよいし、親クラスタ部100が融通電力を受電する側のクラスタ部(融通先)となってもよい。
【0132】
また、上述したように、給電可能なクラスタ部と受電を要求するクラスタ部とがそれぞれ一つ検出された場合には、電力融通システム1は、給電可能なクラスタ部として検出された一つのクラスタ部を融通元のクラスタ部と特定し、受電を要求するクラスタ部として検出された一つのクラスタ部を融通先のクラスタ部と特定してから電力融通を行う。
なお、複数の給電可能なクラスタ部又は複数の受電を要求するクラスタ部が検出されることもある。この場合には、例えば、予め設定された優先順に従って、受電又は給電を行うクラスタ部が選択され、選択されたクラスタ部が融通元又は融通先のクラスタ部として特定されてもよい。
【0133】
例えば、受電の優先順は、各クラスタ部が備えている負荷装置で消費する電力容量等に応じて予め設定されている。また、給電の優先順は、各クラスタ部が備えている発電装置の発電容量や蓄電池の蓄電容量等に応じて予め設定されている。又は、融通元のクラスタ部と融通先のクラスタ部との組合せの優先順が予め設定されていてもよい。例えば、予め設定されているこれらの優先順を各クラスタ部が同様に有しており、いずれのクラスタ部が特定しても同様の特定結果となるように処理される。例えば、電力融通システム1において、各クラスタ部のそれぞれが、予め設定されているこれらの優先順に基づいて、融通元のクラスタ部と融通先のクラスタ部とを選択して特定してもよいし、最初に給電要求を行ったクラスタ部が、融通元のクラスタ部となり、融通先のクラスタ部を選択して特定するようにしてもよい。
【0134】
なお、
図15に示す電力融通処理の例では、給電要求の授受処理(ステップS10)と受電要求の授受処理(ステップS20)との両方の処理を実行する例を説明したが、いずれか一方の処理のみとしてもよい。
また、給電要求の授受処理(ステップS10)と受電要求の授受処理(ステップS20)との両方の処理を実行する場合、給電要求の授受処理(ステップS10)と受電要求の授受処理(ステップS20)とを実行する順序を入れ換えてもよい。
【0135】
また、親クラスタ部100と子クラスタ部200とのいずれか一方が、融通元のクラスタ部と融通先のクラスタ部の両方を特定してもよい。また、受電要求及び給電要求のいずれも要求していないクラスタ部(例えば、子クラスタ部300)が、同様に、融通元のクラスタ部と融通先のクラスタ部との両方を特定してもよい。
【0136】
(給電要求の授受処理)
次に、
図17を参照して、本実施形態による給電要求の授受処理の流れについて詳しく説明する。
図17は、本実施形態による給電要求の授受処理の流れの一例を示す説明図である。
ここでは、親クラスタ部100と子クラスタ部300とが他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部であり、子クラスタ部200が受電要求のあるクラスタ部(すなわち、融通電力を必要としているクラスタ部)であるとして説明する。
なお、以下の説明において、一次側DCバス32の電圧を「電圧Vbdc」とも呼ぶことがある。また、一次側DCバス32の電流を「電流Ibdc」とも呼ぶことがある。
【0137】
この
図17では、横方向に時間tの経過を示し、縦方向に、親クラスタ部100の一次側DCバス32への給電状態(図(a))と、各クラスタ部の給電要求状態(図(b))と、一次側DCバス32の電圧Vbdc(図(c))と、一次側DCバス32の電流Ibdc(図(d))と、を並べて示している。
【0138】
時刻t1以前においては、一次側DCバス32に電力が供給されていない状態(給電停止状態)であり、一次側DCバス32の電圧Vbdcは、電圧V0(例えば、0V)である(図(c))。
【0139】
時刻t1から時刻t2において、親クラスタ部100の制御部110は、他のクラスタ部に対して給電可能な場合、変換装置D130等を制御して、給電要求期間を開始させるためのトリガ情報として、一次側DCバス32に対する給電を行う(図(b))。つまり、変換装置D130の一次側DCバス32に対する給電状態が、時刻t1において給電停止状態から給電されている状態に遷移し、時刻t2において給電されている状態から給電停止状態に遷移する(図(a))。これにより、一次側DCバス32の電圧Vbdcが、電圧V0(例えば、0V)から上昇し、時刻t1から時刻t2において閾値Vth1より高い電圧になる(図(c))。ここで、閾値Vth1は、給電要求があるか否かを判定するための電圧の閾値であり、一次側DCバス32に対する給電があるか否かを判定するための電圧の閾値として予め設定されている。
なお、この時刻t1から時刻t2の時間間隔は、後述する、時刻t3から時刻t4の時間間隔などと異なり(例えば、時刻t3から時刻t4の時間間隔の半分の間隔)トリガ情報として区別することができる。
【0140】
一次側DCバス32の電圧Vbdcが、この時刻t1から時刻t2の期間において閾値Vth1より高い電圧になったことがトリガとなって、給電可能なクラスタ部が給電要求を行う給電要求期間が時刻t2において開始される。時刻t2(給電要求期間開始)から時刻t6(給電要求期間終了)までの期間の中で、各クラスタ部は、それぞれに予め設定された互いに異なる給電要求期間で必要に応じて給電要求を行う。例えば、クラスタ部毎に、互いに異なる給電要求期間として、給電要求を行うための区切られた時間(タイムスロット)が割り当てられている。ここでは、親クラスタ部100(時刻t3から時刻t4)、子クラスタ部200(時刻t4から時刻t5)、子クラスタ部300(時刻t5から時刻t6)の順に、給電要求を行うためのタイムスロットが割り当てられている(図(b))。
【0141】
親クラスタ部100の制御部110は、自クラスタ部に割り当てられたタイムスロットに従って時刻t3から時刻t4において、変換装置D130等を制御して、給電要求として一次側DCバス32に対する給電を行う(図(b))。つまり、変換装置D130の一次側DCバス32に対する給電状態が、時刻t3において給電停止状態から給電されている状態に遷移し、時刻t4において給電されている状態から給電停止状態に遷移する(図(a))。これにより、一次側DCバス32の電圧Vbdcが、電圧V0(例えば、0V)から上昇し、時刻t3から時刻t4において閾値Vth1より高い電圧になる(図(c))。
【0142】
子クラスタ部200は、他のクラスタ部に対して給電可能ではないため、自クラスタ部に割り当てられたタイムスロット(時刻t3から時刻t4)において、給電要求を行わない。つまり、一次側DCバス32の電圧Vbdcは、時刻t3から時刻t4において、電圧V0(例えば、0V)である(図(c))。
【0143】
子クラスタ部300の制御部310は、自クラスタ部に割り当てられたタイムスロットに従って時刻t5から時刻t6おいて、変換装置E320等を制御して、給電要求として一次側DCバス32に対する給電を行う(図(b))。これにより、一次側DCバス32の電圧Vbdcが、電圧V0(例えば、0V)から上昇し、時刻t5から時刻t6において閾値Vth1より高い電圧になる(図(c))。
【0144】
なお、上述した時刻1から時刻t6の期間においては、何れのクラスタ部も一次側DCバス32から受電をしておらず融通電流が流れないため、一次側DCバス32の電流Ibdcは、電流I0(例えば、0A)である(図(d))。
【0145】
このように、他のクラスタ部に給電可能なクラスタ部は、それぞれに割り当てられたタイムスロットにおいて、給電要求として一次側DCバス32に給電することにより一次側DCバス32の電圧を上昇させる。よって、各クラスタ部は、一次側DCバス32の電圧Vbdcの電圧をタイムスロット毎に検出することにより、給電要求を行ったクラスタ部を特定することができる。
例えば、この
図17に示す例では、時刻t3から時刻t4までの期間と時刻t5から時刻t6までの期間とにおいて、一次側DCバス32の電圧Vbdcが閾値Vth1より高い電圧となることが検出されるため、各クラスタ部は、給電要求を行ったクラスタ部、すなわち、他のクラスタ部に給電可能なクラスタ部が、親クラスタ部100と子クラスタ部300とであることを特定することができる。
【0146】
なお、この
図17に示す例では、親クラスタ部100と子クラスタ部300との複数のクラスタ部が給電要求を行う例を示したが、一つのクラスタ部が給電要求を行ってもよい。また、給電可能なクラスタ部がない場合には、いずれのクラスタ部も給電要求を行わない。
【0147】
(受電要求の授受処理)
次に、
図18を参照して、本実施形態による受電要求の授受処理の流れについて詳しく説明する。
図18は、本実施形態による受電要求の授受処理の流れの一例を示す説明図である。
ここでは、
図17に示す例と同様に、親クラスタ部100と子クラスタ部300とが他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部であり、子クラスタ部200が受電要求のあるクラスタ部(すなわち、融通電力を必要としているクラスタ部)であるとして説明する。
【0148】
この
図18では、
図17と同様に、横方向に時間tの経過を示し、縦方向に、親クラスタ部100の一次側DCバス32への給電状態(図(a))と、各クラスタ部の受電要求状態(図(b))と、一次側DCバス32の電圧Vbdc(図(c))と、一次側DCバス32の電流Ibdc(図(d))と、を並べて示している。また、時刻t1以前においては、一次側DCバス32に電力が供給されていない状態(給電停止状態)であり、一次側DCバス32の電圧Vbdcは、電圧V0(例えば、0V)である(図(c))。
【0149】
時刻t1において、親クラスタ部100の制御部110は、DC融通が可能(給電可能)である場合、変換装置D130等を制御して、受電要求期間を開始させるためのトリガ情報として、一次側DCバス32に対する給電を行う。すなわち、変換装置D130の一次側DCバス32に対する給電状態が給電停止状態から給電されている状態に遷移する(図(a))。これにより、一次側DCバス32の電圧Vbdcが、電圧V0(例えば、0V)から上昇し、時刻t1において閾値Vth1より高い電圧になる(図(c))。
この給電は、融通電力を必要としているクラスタ部からの受電要求を検出するための給電である。つまり、給電可能なクラスタ部からの給電により一次側DCバス32の電圧が上昇したことがトリガとなって、融通電力を必要としているクラスタ部が受電要求を行う受電要求期間が開始される。ここでは、時刻t1(受電要求期間開始)から時刻t7(受電要求期間終了)までの期間において、親クラスタ部100(時刻t3から時刻t4)、子クラスタ部200(時刻t4から時刻t5)、子クラスタ部300(時刻t5から時刻t6)の順に、受電要求を行うためのタイムスロットが割り当てられている(図(b))。
【0150】
子クラスタ部200の制御部210は、融通電力を必要としている場合、自クラスタ部に割り当てられたタイムスロットに従って時刻t4から時刻t5において、変換装置B220等を制御して、受電要求として一次側DCバス32からの受電を行う(図(b))。この受電による電圧降下によって一次側DCバス32の電圧Vbdcが降下し、時刻t4から時刻t5において閾値Vth3以下の電圧になる(図(c))。ここで、閾値Vth3は、親クラスタ部100が一次側DCバス32に対して給電する供給電力と、子クラスタ部200が受電要求として一次側DCバス32から受電する負荷電力とに基づいて定まる閾値であり、受電要求があると検出するための電圧Vbdcの閾値として設定されている。また、時刻t4から時刻t5において、子クラスタ部200が一次側DCバス32からの受電を行うため、一次側DCバス32には融通電流が流れる。
【0151】
親クラスタ部100と子クラスタ部300とは、融通電力を必要としていないため、時刻t3から時刻t4の期間と時刻t5から時刻t6の期間とにおいては、受電要求が行われない。すなわち、時刻t3から時刻t4の期間と時刻t5から時刻t6の期間とにおいては、一次側DCバス32の電圧Vbdcが閾値Vth3以下の電圧に降下しない(図(c))。なお、この例では、親クラスタ部100は、他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部であり、受電要求期間中に給電を行っているため、時刻t3から時刻t4において受電要求を行うことはできない。
【0152】
そして、時刻t7において、親クラスタ部100の制御部110は、一次側DCバス32に対する給電を停止させる。すなわち、時刻t7において、変換装置D130の一次側DCバス32に対する給電状態が給電されている状態から給電停止状態に遷移する(図(a))。これにより、一次側DCバス32の電圧Vbdcが電圧V0(例えば、0V)になる。
なお、ここでは、親クラスタ部100が受電要求期間中に給電を行う例を示したが、他の給電可能なクラスタ部(例えば、子クラスタ部300)が受電要求期間中に給電を行ってもよい。
【0153】
このように、融通電力を必要としているクラスタ部は、それぞれに割り当てられたタイムスロットにおいて、受電要求として一次側DCバス32から受電することにより一次側DCバス32の電圧を降下させる。よって、各クラスタ部は、一次側DCバス32の電圧Vbdcの電圧をタイムスロット毎に検出することにより、受電要求を行ったクラスタ部を特定することができる。
例えば、この
図18に示す例では、時刻t4から時刻t5までの期間において、一次側DCバス32の電圧Vbdcが閾値Vth3以下の電圧となることが検出されるため、各クラスタ部は、受電要求を行ったクラスタ部、すなわち融通電力を必要としているクラスタ部が子クラスタ部200であることを特定することができる。
【0154】
なお、
図18を参照して、受電要求として、一次側DCバス32の電圧を降下させる例を説明したが、これに限られるものではない、例えば、
図17を参照して説明した給電要求の例と同様に、受電要求として、一次側DCバス32に対する給電を行うことにより一次側DCバス32の電圧を上昇させてもよい。なお、このときの給電は、一次側DCバス32の電圧を上昇させるのみを目的としており、他のクラスタ部からの受電が行われないため、融通電力を必要としているクラスタ部であっても給電可能な程度の小さい電力の給電でよい。
【0155】
また、この
図18に示す例では、子クラスタ部200のみが受電要求を行う例を示したが、複数のクラスタ部が受電要求を行ってもよい。また、融通電力を必要としているクラスタ部がない場合には、いずれのクラスタ部も受電要求を行わない。
【0156】
(融通元又は融通先の通知処理)
上述した電力融通処理においては、親クラスタ部100と子クラスタ部200と子クラスタ部300とのそれぞれのクラスタ部、又はいずれかのクラスタ部が融通元のクラスタ部又は融通先のクラスタ部を特定してから電力融通を行う。例えば、親クラスタ部100と子クラスタ部200と子クラスタ部300とのうちいずれかのクラスタ部が融通元のクラスタ部又は融通先のクラスタ部を特定した場合、この特定したクラスタ部は、特定したことを示す情報を他のクラスタ部(例えば、融通元のクラスタ部又は融通先のクラスタ部)に対して通知するようにしてもよい。
【0157】
例えば、親クラスタ部100が、複数の融通電力を必要としているクラスタ部の中から融通先のクラスタ部として子クラスタ部200を選択して特定したとする。このとき、親クラスタ部100は、子クラスタ部200を融通先のクラスタ部として選択したこと(特定したこと)を示す情報を、子クラスタ部200に対して通知してもよい。また、例えば、子クラスタ部200が、複数の給電可能なクラスタ部の中から融通元のクラスタ部として親クラスタ部100を選択して特定したとする。このとき、子クラスタ部200は、親クラスタ部100を融通元のクラスタ部として選択したこと(特定したこと)を示す情報を、親クラスタ部100に対して通知してもよい。このように、融通先のクラスタ部として選択されたクラスタ部、又は融通元のクラスタ部として選択されたクラスタ部には、それぞれ自身が選択されたことが通知される。そのため、エネルギー管理装置(EMS)11の制御を用いることなく、あるクラスタ部が代表して、融通元のクラスタ部又は融通先のクラスタ部を特定して電力の制御を行うことができる。
【0158】
図19は、本実施形態による通知処理の流れの一例を示す説明図である。この
図19は、親クラスタ部100が、子クラスタ部200を融通先のクラスタ部として選択したこと(特定したこと)を示す情報を、一次側DCバス32を介して子クラスタ部200を通知する処理の例を示している。
【0159】
この
図19は、横方向に時間tの経過を示し、縦方向に、親クラスタ部100の一次側DCバス32への給電状態(図(a))と、融通先クラスタ部を示す情報(図(b))と、一次側DCバス32の電圧Vbdc(図(c))と、融通先クラスタ部の検出タイミング(図(d))と、を並べて示している。
【0160】
時刻t1から時刻t2において、親クラスタ部100の制御部110は、変換装置D130等を制御して、融通先のクラスタ部を示す情報の通知処理(以下、「融通先通知処理」とも呼ぶ)を開始させるためのトリガ情報として、一次側DCバス32に対する給電を行う。ここでは、親クラスタ部100の制御部110は、時刻t1から時刻t2の間で、一次側DCバス32に対する給電と給電停止とを2回繰り返して行う(図(a)、図(b))ことにより、この融通先通知処理を開始させるためのトリガ情報を、前述の給電要求期間を開始させるためのトリガ情報と区別するようにしている。
【0161】
このトリガ情報に応じて、融通先通知処理が開始される。時刻t2(融通先通知処理開始)から時刻t6(融通先通知処理終了)までの期間の中で、融通先のクラスタ部として選択されたクラスタ部を示す情報を通知するために、クラスタ部毎に互いに異なる区切られた時間(タイムスロット)が割り当てられている。ここでは、時刻t3から時刻t4までの期間が、親クラスタ部100が選択されたことを示す情報を通知する期間として割り当てられている。また、時刻t4から時刻t5までの期間が、子クラスタ部200が選択されたことを示す情報を通知する期間として割り当てられており、時刻t5から時刻t6までの期間が、子クラスタ部300が選択されたことを示す情報を通知する期間として割り当てられている(図(b))。
【0162】
親クラスタ部100は、子クラスタ部200が融通先のクラスタ部として選択されたことを示す情報として、時刻t4から時刻t5において一次側DCバス32に対する給電を行う(図(a)、図(b))。これにより、一次側DCバス32の電圧Vbdcが、電圧V0(例えば、0V)から上昇し、時刻t4から時刻t5において閾値Vth1より高い電圧になる(図(c))。
【0163】
また、各クラスタ部は、時刻t2(融通先通知処理開始)から時刻t6(融通先通知処理終了)までの期間の中で、一次側DCバス32の電圧Vbdcを検出することにより、融通先のクラスタ部を検出する。各クラスタ部がこの融通先のクラスタ部を検出する検出タイミングは、上述の、融通先のクラスタ部を示す情報を通知するためのタイムスロットと対応している(図(d))。
【0164】
例えば、親クラスタ部100は、時刻t3から時刻t4までの期間で一次側DCバス32の電圧Vbdcを検出する。子クラスタ部200は、時刻t4から時刻t5までの期間で一次側DCバス32の電圧Vbdcを検出する。子クラスタ部300は、時刻t4から時刻t5までの期間で一次側DCバス32の電圧Vbdcを検出する。したがって、各クラスタ部は、融通先のクラスタ部として選択されたことが通知された場合には、自クラスタ部の検出タイミングにおいて、一次側DCバス32の電圧Vbdcが閾値Vth1より高い電圧であることを検出する。
【0165】
ここでは、子クラスタ部200は、時刻t4から時刻t5までの期間で一次側DCバス32の電圧Vbdcが閾値Vth1より高い電圧であることを検出して、自クラスタ部が融通先のクラスタ部であることを検出する。
このように、親クラスタ部100は、子クラスタ部200を融通先のクラスタ部として選択したこと(特定したこと)を、子クラスタ部200に対して通知することができる。
【0166】
なお、この
図19では、融通先のクラスタ部を示す情報を通知する融通先通知処理を示したが、融通元のクラスタ部を示す情報を通知する場合にも同様の処理を適用することができる。なお、融通先通知処理と融通元通知処理とを区別するために、例えば、上述の時刻t1から時刻t2において一次側DCバス32に対する給電パターンを変更することにより、それぞれのトリガ情報が互いに異なるようにしてもよい。
【0167】
(第2の実施形態による電力融通処理の変形例の手順)
上述した
図15を参照して説明した電力融通処理では、一次側DCバス32を介して直流融通(「DC融通」)する場合に、給電要求の授受処理又は受電要求の授受処理を行う例としたが、これらの処理を交流融通「AC融通」する場合に適用してもよい。例えば、は一次側DCバス32を介して給電要求の授受処理又は受電要求の授受処理を行い、一次側ACバス31を介して交流融通「AC融通」をしてもよい。すなわち、給電要求の授受処理又は受電要求の授受処理を一次側DCバス32を介して行ってから、
図10を参照して説明した電力融通処理の一例のようにAC融通とDC融通とを行うようにしてもよい。
【0168】
図20は、本実施形態による電力融通処理の変形例の手順を示すフローチャートである。この
図20は、
図15に示す給電要求の授受処理及び受電要求の授受処理を、
図10に示すAC融通とDC融通とを行う電力融通処理に適用した場合の手順を示している。この
図20において、
図10及び
図15の各処理に対応する部分には同じ符号を付けており、その説明を省略する。
【0169】
まず、ステップS10及びS20において、
図15を参照して説明した給電要求の授受処理及び受電要求の授受処理が実行される。これにより、例えば、親クラスタ部100が融通元のクラスタ部と特定され、子クラスタ部200が融通先のクラスタ部と特定される。なお、この融通元のクラスタ部及び融通先のクラスタ部の特定は、親クラスタ部100及び子クラスタ部200の両方が行ってもよいし、何れか一方が行って他方に通知してもよい。親クラスタ部100の制御部110は、融通元のクラスタ部であると特定されたことに基づいて、電力融通が必要であることを検知する(ステップS100A)。
【0170】
次に、制御部110は、AC融通が必要な状態か否かを判定する(ステップS105)。そして、ステップS105においてAC融通が必要な状態であると判定された場合(ステップS105:Yes)、制御部110は、
図10を参照して説明した処理と同様に、ステップS110以降の処理を実行する。例えば、ステップS130において交流融通「AC融通」を行うと判定された場合、制御部110は、AC融通モードの起動処理を実行する(ステップS140)。
【0171】
一方、ステップS105においてAC融通が必要でないと判定された場合(ステップS105:No)、ステップS125においてAC融通が可能でないと判定された場合(ステップS125:No)、ステップS130においてDC融通を行うと判定された場合(ステップS130:DC)、及びステップS145においてDC融通モードの起動が必要と判定された場合(ステップS145:Yes)には、ステップS160Aに移行して、制御部110は、
図15を参照して説明したDC融通モードの起動処理を行う(ステップS160A)。
【0172】
このように、電力融通システム1では、一次側DCバス32を介して受電要求と給電要求とを授受する処理を実行することにより、エネルギー管理装置(EMS)11の制御によらずに、融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)と融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部とのそれぞれを特定してからAC融通とDC融通とを行うことができる。
【0173】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態において、親クラスタ部100内の制御部110と、子クラスタ部200内の制御部210と、子クラスタ部300内の制御部310と、子クラスタ部400内の制御部410とは、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した処理に関する一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。また、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0174】
なお、ここで、本発明と上述した実施形態との対応関係について補足して説明する。すなわち、本発明における電力融通システムは、
図1に示す電力融通システム1、又は
図5に示す電力融通システム1Aが対応する。また、本発明における第1クラスタ部は、親クラスタ部100又は親クラスタ部100A(
図5)が対応し、本発明における第2クラスタ部は、例えば、子クラスタ部200又は子クラスタ部200A(
図5)が対応する。また、本発明における給電管理部は、エネルギー管理装置(EMS)11が対応する。
【0175】
(1)そして、上記実施形態において、電力融通システム(例えば、電力融通システム1)は、商用電力系統2の受電点となり該商用電力系統2から商用電力の供給を受ける親クラスタ部100(第1クラスタ部)と、親クラスタ部100を経由して商用電力の供給を受ける一又は複数の子クラスタ部200及び300等(第2クラスタ部)と、で構成される。電力融通システム1において、親クラスタ部100と子クラスタ部200及び300等とのそれぞれは、発電装置及び負荷装置、又は蓄電装置及び負荷装置を備え、親クラスタ部100と子クラスタ部200及び300等との間、及び複数の子クラスタ部200及び300等の間において、互いに電力の融通を行う。また、第2の実施形態では、この電力の融通を行う際に、親クラスタ部100と複数の子クラスタ部200及び300等とのうち、他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部又は他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部は、それぞれのクラスタ部毎に予め設定された互いに異なる所定の期間において、共通の給電経路を介して、他のクラスタ部からの受電を要求する受電要求、又は他のクラスタ部に対する給電を要求する給電要求を行う。
【0176】
このように、本実施形態によれば、クラスタ部毎に予め設定された互いに異なる所定の期間において、共通の給電経路を介して受電要求と給電要求とを授受する処理を実行するため、エネルギー管理装置(EMS)11の制御によらずに、融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)又は融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部を特定することができる。例えば、災害や商用電源系統2の停電などによってエネルギー管理装置(EMS)11が機能しなくなること、又は通信網12の故障や渋滞(障害)が発生してエネルギー管理装置(EMS)11及び各クラスタ間で情報を送受信できなくなることがあっても、各クラスタ間において電力の融通元又は融通先を特定することができるため、各クラスタ間で電力を融通することができる。
したがって、本実施形態によれば、複数のクラスタ(需要家)間において電力の利用効率を高めることができる。
【0177】
(2)親クラスタ部100(第1クラスタ部)と子クラスタ部200及び300等(第2クラスタ部)とのそれぞれには、受電要求を行うための互いに異なる受電要求期間(第1の期間)が上記所定の期間として予め設定されている。そして、他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部は、自クラスタ部に予め設定された受電要求期間において、受電要求として上述の共通の給電経路の電圧を変化させる。
このように、受電を要求するクラスタ部は、自クラスタ部に設定された受電要求期間(タイムスロット)において共通の給電経路の電圧を変化させることにより受電要求を行う。
【0178】
これにより、受電を要求するクラスタ部は、上述の共通の給電経路の電圧を変化させることによって、受電要求(すなわち、融通電力を必要としていること)を他のクラスタ部に対して通知することができる。また、クラスタ部毎に互いに異なる受電要求期間が設定されているため、複数のクラスタ部が共通の給電経路を介して受電要求を行うことができるとともに、いずれのクラスタ部からの受電要求であるかを特定することができる。
【0179】
(3)また、他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部は、自クラスタ部に予め設定された受電要求期間において、受電要求として上述の共通の給電経路の電圧を上昇させる。
これにより、受電を要求するクラスタ部は、上述の共通の給電経路の電圧を上昇させることによって、融通電力を必要としていることを他のクラスタ部に対して通知することができる。
【0180】
(4)なお、他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部は、親クラスタ部100(第1クラスタ部)と子クラスタ部200及び300等(第2クラスタ部)とのそれぞれに設定されている受電要求期間(第1の期間)を少なくとも含む期間において、上述の共通の給電経路に対して給電してもよい。そして、他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部は、自クラスタ部に設定されている受電要求期間において、受電要求として、上述の共通の給電経路から受電することにより上述の共通の給電経路の電圧を降下させてもよい。
これにより、受電を要求するクラスタ部は、上述の共通の給電経路の電圧を降下させることによって、融通電力を必要としていることを他のクラスタ部に対して通知することができる。
【0181】
(5)他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部は、受電要求期間(第1の期間)において上述の共通の給電経路の電圧を検出し、該検出した結果に基づいて、受電を要求するクラスタ部がいずれのクラスタ部であるかを特定する。
これにより、給電可能なクラスタ部は、エネルギー管理装置(EMS)11が機能しなくなること、又は通信網12の故障や渋滞(障害)が発生してエネルギー管理装置(EMS)11及び各クラスタ間で情報を送受信できなくなることがあっても、共通の給電経路を介して、融通電力を必要としているクラスタ部を特定することができる。
【0182】
(6)他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部は、受電要求期間(第1の期間)において上述の共通の給電経路の電圧を検出し、該検出した結果に基づいて、受電を要求するクラスタ部がいずれのクラスタ部であるかを特定するとともに、受電要求期間の後に上述の共通の給電経路に電力を供給する。
【0183】
これにより、給電可能なクラスタ部は、融通電力の供給を開始する前に、融通電力を必要としているクラスタ部を特定することができる。よって、例えば、給電可能なクラスタ部は、融通電力を必要としているクラスタ部があるときのみ融通電力を供給することや、融通先のクラスタ部の負荷装置にあわせた融通電力を供給することができる。また、給電可能なクラスタ部は、電力融通を行う給電経路(例えば、1次側DCバス32)を介して融通電力を必要としているクラスタ部を特定することができる。なお、給電可能なクラスタ部は、電力融通を行う給電経路(例えば、1次側ACバス31)とは異なる共通の給電経路(例えば、1次側DCバス32)を介して融通電力を必要としているクラスタ部を特定してもよい。
【0184】
(7)他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部は、自クラスタ部に予め設定されている受電要求期間(第1の期間)の後に上述の共通の給電経路に供給された電力を受電する。
【0185】
これにより、受電を要求するクラスタ部は、給電可能なクラスタ部に受電要求を通知した後に、その給電可能なクラスタ部から供給された融通電力を受電することができる。例えば、受電を要求するクラスタ部は、給電可能なクラスタ部から供給された自クラスタ部の負荷装置に対応する融通電力を受電することができる。
【0186】
(8)親クラスタ部100(第1クラスタ部)と子クラスタ部200及び300等(第2クラスタ部)とのそれぞれには、給電要求を行うための互いに異なる給電要求期間(第2の期間)が城行所定の期間として予め設定されている。そして、他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部は、自クラスタ部に予め設定された給電要求期間において、給電要求として上述の共通の給電経路の電圧を変化させる。
【0187】
このように、給電可能なクラスタ部は、自クラスタ部に設定された給電要求期間(タイムスロット)において共通の給電経路の電圧を変化させることにより給電要求を行う。これにより、給電可能なクラスタ部は、上述の共通の給電経路の電圧を変化させることによって、給電要求(すなわち、融通電力を供給可能であること)を他のクラスタ部に対して通知することができる。また、クラスタ部毎に互いに異なる給電要求期間が設定されているため、複数のクラスタ部が共通の給電経路を介して給電要求を行うことができるとともに、いずれのクラスタ部からの給電要求であるかを特定することができる。
【0188】
(9)他のクラスタ部に対して給電可能なクラスタ部は、自クラスタ部に予め設定された給電要求期間(第2の期間)において、給電要求として、上述の共通の給電経路に対して給電することにより上述の共通の給電経路の電圧を上昇させる。
これにより、給電可能なクラスタ部は、上述の共通の給電経路の電圧を上昇させることによって、融通電力を給電可能なことを他のクラスタ部に対して通知することができる。
【0189】
(10)他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部は、給電要求期間(第2の期間)において上述の共通の給電経路の電圧を検出し、該検出した結果に基づいて、他のクラスタ部から給電可能なクラスタ部がいずれのクラスタ部であるかを特定する。
【0190】
これにより、受電を要求するクラスタ部は、エネルギー管理装置(EMS)11が機能しなくなること、又は通信網12の故障や渋滞(障害)が発生してエネルギー管理装置(EMS)11及び各クラスタ間で情報を送受信できなくなることがあっても、共通の給電経路を介して融通電力を給電可能なクラスタ部を特定することができる。
【0191】
(11)他のクラスタ部からの受電を要求するクラスタ部は、給電要求期間(第2の期間)において上述の共通の給電経路の電圧を検出し、該検出した結果に基づいて、給電可能なクラスタ部がいずれのクラスタ部であるかを特定するとともに、給電要求期間の後に上述の共通の給電経路から受電する。
【0192】
これにより、受電を要求するクラスタ部は、融通電力の受電を開始する前に、融通電力を給電可能なクラスタ部を特定することができる。よって、例えば、受電を要求するクラスタ部は、給電可能なクラスタ部が複数あるときには、その中から融通元のクラスタ部を選択し、選択したクラスタ部から供給された融通電力を受電することができる。また、受電を要求するクラスタ部は、電力融通を行う給電経路(例えば、1次側DCバス32)を介して融通電力を給電可能なクラスタ部を特定することができる。なお、受電を要求するクラスタ部は、電力融通を行う給電経路(例えば、1次側ACバス31)とは異なる共通の給電経路(例えば、1次側DCバス32)を介して融通電力を給電可能なクラスタ部を特定してもよい。
【0193】
(12)例えば、上述の共通の給電経路は、直流電力の給電経路となる一次側DCバス32を含む。そして、親クラスタ部100(第1クラスタ部)と子クラスタ部200及び300等(第2クラスタ部)との間、及び複数の子クラスタ部200及び300等の間において、一次側DCバス32を介して、受電を要求するクラスタ部又は給電可能なクラスタ部がいずれのクラスタ部であるかを特定する。また、親クラスタ部100(第1クラスタ部)と子クラスタ部200及び300等(第2クラスタ部)との間、及び複数の子クラスタ部200及び300等の間において、一次側DCバス32を介して、互いに直流電力の融通を行う。
【0194】
このように、本実施形態によれば、一次側DCバス32を介して、電力の融通元又は融通先を特定するとともに、この一次側DCバス32を介して直流電力を融通する。そのため、本実施形態によれば、例えば、エネルギー管理装置(EMS)11が機能しなくなること、又は通信網12や一次側DCバス32以外の給電経路に障害が生じたとしても、各クラスタ間において融通元又は融通先を特定して直流電力を融通することができる。
【0195】
(13)なお、上述の共通の給電経路は、直流電力の給電経路となる一次側DCバス32と、交流電力の給電経路となる一次側ACバス31とを含む構成としてもよい。そして、親クラスタ部100(第1クラスタ部)と子クラスタ部200及び300等(第2クラスタ部)との間、及び複数の子クラスタ部200及び300等の間において、一次側DCバス32を介して、受電を要求するクラスタ部又は給電可能なクラスタ部がいずれのクラスタ部であるかを特定する。また、親クラスタ部100(第1クラスタ部)と子クラスタ部200及び300等(第2クラスタ部)との間、及び複数の子クラスタ部200及び300等の間において、一次側ACバス31を介して、互いに直流電力の融通を行う。
【0196】
このように、本実施形態によれば、一次側DCバス32を介して電力の融通元又は融通先を特定し、一次側ACバス31を介して交流電力を融通する。そのため、本実施形態によれば、例えば、エネルギー管理装置(EMS)11が機能しなくなること、又は通信網12に障害が生じたとしても、各クラスタ間において融通元又は融通先を特定して交流電力を融通することができる。
【0197】
(14)親クラスタ部100(第1クラスタ部)と子クラスタ部200及び300等(第2クラスタ部)とのうちのいずれかのクラスタ部は、特定した受電を要求するクラスタ部の中から、上述の共通の給電経路から受電するクラスタ部を選択する。又は、上記いずれかのクラスタ部は、特定した給電可能なクラスタ部の中から、上述の共通の給電経路に対して給電するクラスタ部を選択する。そして、上記いずれかのクラスタ部は、該選択したことを示す情報を、該選択したクラスタ部に対して通知する。
つまり、受電を要求するクラスタ部(すなわち、融通電力を必要としているクラスタ部)又は給電可能なクラスタ部(すなわち、融通電力を給電可能なクラスタ部)が複数ある場合には、いずれかのクラスタ部が、融通電力を受電クラスタ部又は融通電力を供給するクラスタ部をそれぞれの中から選択し、選択したクラスタ部に対して、融通先又は融通元として選択されたことを通知する。
【0198】
これにより、本実施形態による電力融通システム1によれば、エネルギー管理装置(EMS)11から送信される情報や各クラスタ部の制御部から送信される情報を用いなくとも、各クラスタ部間における電力消費のバランスを取るように電力融通を行うことや、優先度の高いクラスタ部に優先して電力が融通されるように電力融通を行うことができる。
【0199】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の電力融通システム1、及び電力融通システム1Aは、上述の図示例にのみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、親クラスタ部100の蓄電装置145は、親クラスタ部100部とは独立して設けられていてもよい。子クラスタ部200と、子クラスタ部300と、子クラスタ部400の蓄電装置においても同様である。
【0200】
なお、上記第2の実施形態において、一次側DCバス32の電圧を予め設定された閾値と比較することにより受電要求又は給電要求があるか否かを判定する例を説明したが、一次側DCバス32の電圧を閾値と比較することに代えて、一次側DCバス32の電圧の変化量に基づいて、上述の判定を行うようにしてもよい。
【0201】
また、上記第2の実施形態において、例えば
図15及び
図20に示す電力融通処理、給電要求授受処理(ステップS10)と受電要求授受処理(ステップS20)との両方の処理を行う電力融通処理(例えば、
図15及び
図20)について説明したが、給電要求授受処理と受電要求授受処理とのうちいずれか一方の処理を行う電力融通処理としてもよい。
【0202】
なお、上記第2の実施形態において、一次側DCバス32を介して行われる給電要求授受処理又は受電要求授受処理についての例を説明したが、他の授受処理を本実施形態の電力融通システム(例えば、電力融通システム1)に適用してもよい。
以下に、他の授受処理の例(第1例及び第2例)について説明する。
【0203】
(他の授受処理の第1例)
上記第2の実施形態では、各クラスタ部が互いに異なる期間において、受電要求又は給電要求を一次側DCバス32を介して他のクラスタ部に通知する例を示したが、各クラスタ部が所定の同じタイミング(半日に1回など)で、受電要求又は給電要求を一次側DCバス32を介して他のクラスタ部に通知してもよい。この場合、同じタイミングで通知するため、複数のクラスタ部からの受電要求又は給電要求に衝突(コリジョン)が生じる可能性がある。そのため、各クラスタ部は、衝突を検知し、衝突を検知した場合には各クラスタ部において算出したランダムな時間が経過した後、再度、受電要求又は給電要求を一次側DCバス32を介して他のクラスタ部に通知してもよい。これにより、複数のクラスタ部からの受電要求又は給電要求は、通知または再送が最も早かったクラスタ部からの要求順に処理される。
【0204】
ここで、上述の受電要求又は給電要求を行う所定の同じタイミング(半日に1回など)は、例えば、各クラスタ部に予め設定されている。そして、各クラスタ部は、その設定されたタイミングで一次側DCバス32に対する給電又は受電することにより、上述の受電要求又は給電要求を行う。また、各クラスタ部は、例えば、受電要求又は給電要求を行ったときに一次側DCバス32の電圧Vbdcを検出することにより、検出した電圧Vbdcの値に基づいて、他のクラスタ部からの受電要求又は給電要求と衝突(コリジョン)が生じたか否かを判定する。例えば、衝突(コリジョン)が生じた場合には、電圧Vbdcが通常の給電時の電圧より高く(又は、受電による要求を行った場合には、通常の受電時の電圧より低く)なる。そこで、衝突(コリジョン)が生じた否かを判定する電圧の閾値を予め設定しておき、各クラスタ部は、受電要求又は給電要求を行ったときに検出した一次側DCバス32の電圧Vbdcを上記閾値と比較することにより、衝突(コリジョン)が生じたか否かを判定してもよい。
【0205】
このように、上記他の授受処理の第1例であっても、一次側DCバス32を介して受電要求と給電要求とを授受する処理を実行することができるため、エネルギー管理装置(EMS)11の制御によらずに、融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)又は融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部を特定することができる。
【0206】
(他の授受処理の第2例)
上記第2の実施形態では、クラスタ部毎に割り付けられたタイムスロットで一次側DCバス32に対して単に給電又は受電を行うことにより、他のクラスタ部に受電要求又は給電要求を通知する例を示したが、受電要求又は給電要求に関する情報をコード化したデータを一次側DCバス32を介して通知する方式、所謂、電力線を介した通信方式を適用してもよい。つまり、各クラスタ部は、一次側DCバス32に対する給電のオンとオフとを制御することにより、情報をコード化したデータを電圧パルス又は電流パルスとして一次側DCバス32を介して送信することにより、他のクラスタ部に対して各種の情報を通知してもよい。
【0207】
例えば、各クラスタ部は、受電要求又は給電要求に関する情報として、「自クラスタ部を示す識別情報」と「受電要求又は給電要求を示すコマンド情報」とを含む通知情報を、電力線通信方式により一次側DCバス32を介して他のクラスタ部に通知する。なお通知する情報には「給電可能な電力量(融通可能な電力量)又は受電したい電力量(融通されたい電力量)を示す情報」や、融通してもらう場合「融通元となるクラスタ部を示す情報(優先順位があってもよい)」や、融通する場合「融通先となるクラスタ部を示す情報(優先順位があってもよい)」が含まれていてもよい。
【0208】
このように、上記他の授受処理の第2例であっても、一次側DCバス32を介して受電要求と給電要求とを授受する処理を実行することができるため、エネルギー管理装置(EMS)11の制御によらずに、融通電力を給電する側のクラスタ部(融通元)又は融通電力を受電する側(融通先)のクラスタ部を特定することができる。なお、このように電力線通信方式を用いた場合には、各クラスタ部の間において、より詳細な情報を授受することができる。反面、上記第2の実施形態による給電要求授受処理又は受電要求授受処理の方が、このような電力線通信方式よりも簡易な制御で行うことができる。
【0209】
なお、上記実施形態による電力融通システム1(1A)において、一次側DCバス32を介して融通する電力の給電開始時に、この融通する電力が徐々に給電されるように所謂「ソフトスタート」の制御を行ってもよい。例えば、他のクラスタ部に対して電力を融通するクラスタ部は、一次側DCバス32の電圧の立ち上がりがなだらかになるように、給電開始時の所定の時間において徐々に給電電圧を上げるように制御してもよい。また、電力を融通するクラスタ部は、給電開始時の所定の時間において間欠的に給電するように制御してもよい。なお、電力を融通するクラスタ部は、給電開始時の所定の時間において給電する電流値を制限するよう制御してもよい。
このように、ソフトスタートの制御を行うことにより、給電電圧の電圧降下や給電停止などの原因となる給電開始時の突入電流の発生を抑制することができる。