特許第6190744号(P6190744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190744コンクリート締固め装置及びコンクリート締固め方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190744
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】コンクリート締固め装置及びコンクリート締固め方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/08 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   E04G21/08
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-61995(P2014-61995)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-183462(P2015-183462A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】横関 康祐
(72)【発明者】
【氏名】松井 信行
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−076940(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/096978(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/08
B06B 1/00 − 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設されるコンクリートの締固めを行うコンクリート締固め装置であって、
前記コンクリートの打設空間内に位置するように設置され、前記コンクリートに埋め殺しされる筒体と、
前記筒体の中空部において当該筒体の延在方向に移動可能な振動装置と、を備えたことを特徴とするコンクリート締固め装置。
【請求項2】
前記振動装置は、
振動の発生源である振動体と、前記振動体を前記筒体の内壁面に固定する固定機構部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項3】
前記筒体は、他の部位よりも振動を伝達し難い関節部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項4】
前記固定機構部は、
前記中空部内で回転して前記筒体の内壁面に押し付けられるカムを有することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項5】
前記固定機構部は、
前記中空部の径方向に膨らんで前記筒体の内壁面に押し付けられる変形部材を有することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項6】
前記固定機構部は、
前記中空部の径方向に拡張収縮可能なパンタグラフ構造をなし、前記筒体の内壁面に押し付けられるパンタグラフ部を有することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項7】
打設されるコンクリートの締固めを行うコンクリート締固め方法であって、
前記コンクリートの打設空間内に位置するように筒体を設置する筒体設置工程と、
前記打設空間に前記コンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記筒体の中空部に振動装置を導入し前記中空部内の所定の位置に設置する振動装置設置工程と、
前記振動装置を駆動し前記筒体を振動させる振動工程と、を備え、
前記振動装置の設置位置を前記中空部内で変更しながら、前記振動装置設置工程と前記振動工程とを繰り返し実行することを特徴とするコンクリート締固め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート締固め装置及びコンクリート締固め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人が入りにくい狭隘な場所のコンクリートの締固めを行う場合があり、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の締固め装置が知られている。この装置は、トンネル覆工コンクリートの締固め装置であって、締固め用バイブレータを先端部に設置した棒状の支持部材を、覆工空間外から覆工空間内へ進退可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−332666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の締固め装置においては、より確実にバイブレータの振動をコンクリートに伝達し締固めすることが望まれる。本発明は、狭隘箇所において確実にコンクリートの締固めを行うコンクリート締固め装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコンクリート締固め装置は、打設されるコンクリートの締固めを行うコンクリート締固め装置であって、コンクリートの打設空間内に位置するように設置され、コンクリートに埋め殺しされる筒体と、筒体の中空部において当該筒体の延在方向に移動可能な振動装置と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、筒体が打設空間のコンクリートに埋め込まれた後、振動装置を筒体内に設置し、振動体で振動を発生させることにより、筒体を振動させ、筒体の周囲のコンクリートに振動を与えることができる。また、中空部内で振動装置の設置位置を変えながら、各設置位置において振動を発生させることにより、筒体の延在方向の各位置においてコンクリートに振動を与えることができる。従って、狭隘箇所であっても、筒体を設置することにより、筒体の周囲のコンクリートに振動を与えることができ、当該狭隘箇所のコンクリートの締固めを確実に行うことができる。
【0007】
また、振動装置は、振動の発生源である振動体と、振動体を筒体の内壁面に固定する固定機構部と、を有するものとすることもできる。この構成によれば、振動装置からの振動が筒体に伝達し易くなり、より確実にコンクリートに振動を与えることができる。
【0008】
また、筒体は、他の部位よりも振動を伝達し難い関節部を有することとしてもよい。この構成によれば、筒体内のある箇所で振動装置を振動させる場合、その位置から関節部を介して更に遠い箇所には振動が伝わり難い。従って、振動装置の固定位置から見て関節部より手前の部位に振動装置の振動を集中させることができ、比較的強い振動を固定位置近傍に与えることができる。
【0009】
具体的な構成としては、固定機構部は、中空部内で回転して筒体の内壁面に押し付けられるカムを有することとしてもよい。また、他の具体的な構成として、固定機構部は、中空部の径方向に膨らんで筒体の内壁面に押し付けられる変形部材を有することとしてもよい。更に他の具体的な構成として、固定機構部は、中空部の径方向に拡張収縮可能なパンタグラフ構造をなし、筒体の内壁面に押し付けられるパンタグラフ部を有することとしてもよい。
【0010】
本発明のコンクリート締固め方法は、打設されるコンクリートの締固めを行うコンクリート締固め方法であって、コンクリートの打設空間内に位置するように筒体を設置する筒体設置工程と、打設空間にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、筒体の中空部に振動装置を導入し中空部内の所定の位置で固定する振動装置設置工程と、振動装置を駆動し筒体を振動させる振動工程と、を備え、振動装置の固定位置を中空部内で変更しながら、振動装置設置工程と振動工程とを繰り返し実行することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、筒体が打設空間のコンクリートに埋め込まれた後、振動装置を筒体内に設置し、振動体で振動を発生させることにより、筒体を振動させ、筒体の周囲のコンクリートに振動を与えることができる。また、中空部内で振動装置の設置位置を変えながら、各設置位置において振動を発生させることにより、筒体の延在方向の各位置においてコンクリートに振動を与えることができる。従って、狭隘箇所であっても、筒体を設置することにより、筒体の周囲のコンクリートに振動を与えることができ、当該狭隘箇所のコンクリートの締固めを確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、狭隘箇所において確実にコンクリートの締固めを行うコンクリート締固め装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コンクリート締固め装置及び方法が適用される施工現場の一例を示す断面図である。
図2図1の施工現場に設置された本実施形態のコンクリート締固め装置を拡大して示す断面図である。
図3】(a),(b)は、図2のコンクリート締固め装置が備える振動装置の一例を示す図である。
図4】(a),(b)は、図2のコンクリート締固め装置が備える振動装置の他の例を示す図である。
図5】(a),(b)は、図2のコンクリート締固め装置が備える振動装置の更に他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るコンクリート締固め装置及び方法の実施形態について詳細に説明する。なお、各図においては、説明の理解を容易にするために、各部位の形状や寸法を誇張して描写する場合があり、図面上の寸法比は実物とは必ずしも一致しない。また、同一又は同等の構成要素には図面に同一の符号を付して重複する説明を省略するものとする。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態のコンクリート締固め装置1は、例えば、既存の円形断面の地下坑道101の直下の空間を掘削し、その掘削された空間にコンクリートCを打設する施工現場において使用される。当該地下坑道101は紙面に直交する方向に延在しており、幅方向に隣接して壁が存在しているので、地下坑道101の周囲は狭隘で作業者が入り込み難い。
【0016】
図1及び図2に示されるように、コンクリート締固め装置1は、コンクリートCの打設空間103内に位置するように設置され、コンクリートCに埋め殺しされるパイプ(筒体)3と、パイプ3の中空部4内に導入される振動装置10とを備えている。振動装置10は、パイプ3の中空部4内をパイプ3の延在方向に移動可能である。
【0017】
パイプ3は、地下坑道101直下に設置され、当該地下坑道101の底面に沿って円弧状に湾曲した形状をなしている。パイプ3の両端は、地下坑道101の両側で打設空間103から上方に突出しており、コンクリート打設後もコンクリートCの打設面から上方に突出する。なお、パイプ3の両端を区別する場合には、図1及び図2における左側の端を第1端3s、右側の端を第2端3tと呼ぶ。パイプ3は、振動装置10の振動を外部に伝達するため、例えば、高い剛性を有する金属製のパイプを採用することが好ましい。例えば、パイプ3としては、鋼管、ガスパイプ、単管パイプ、鉄パイプ等を用いることができる。パイプ3の内径は、例えば約75mmである。パイプ3は、地下坑道101の延在方向に、例えば400〜500mmのピッチで平行に複数配列される。パイプ3は、打設空間103の掘削後、コンクリートCの打設前に予め設置される。パイプ3は、コンクリートCの打設前に、例えば地下坑道101の底壁面に吊り下げられるように固定されてもよい。
【0018】
パイプ3は、他の部位よりも振動を伝達しにくい関節部7a,7bを有している。図1及び図2の例では、パイプ3は長手方向に3つのパイプ部3a,3b,3cに分割されている。そして、パイプ部3aとパイプ部3bとが関節部7aを介して接続されており、パイプ部3bとパイプ部3cとが関節部7bを介して接続されている。関節部7a,7bは、筒状に形成されており、パイプ部3a,3b,3cと同様に、振動装置10を通過させることができる。関節部7a,7bは、パイプ部3a,3b,3cよりも剛性が低く、関節部7a,7bを介して振動が伝達し難くなっている。すなわち、関節部7a,7bは、パイプ部3a,3b,3cにおける振動を絶縁する振動絶縁部としての機能を有し、例えば、パイプ部3bが振動する場合に、関節部7a,7bを挟んだパイプ部3a,3cにはその振動が伝達し難い。関節部7a,7bは、例えば、筒状に形成された金属膜、アルミテープ、フレキシブルテープ、スパイラルホース等で構成される。また、関節部7a,7bを蛇腹構造としてもよい。また、本実施形態では、パイプ3が2箇所の関節部7a,7bを備える構成を一例として説明するが、関節部は1箇所であってもよく3箇所以上であってもよい。
【0019】
振動装置10は、振動の発生源である振動体11と、振動体11をパイプ3の内壁面5に固定する固定機構部13と、を有している。振動装置10は、パイプ3の第1端3s側に振動体11、第2端3t側に固定機構部13が位置するようにパイプ3内に挿入される。振動体11の振動方式としては、例えば、回転する偏心分銅で振動を発生させる方式や、超音波振動方式を採用してもよく、電動・電磁、空圧、又は油圧を駆動源とする重錘往復方式を採用してもよい。固定機構部13の具体的な例としては、例えば、以下に説明する、カム方式の固定機構部13A、パッカー方式の固定機構部13B及びパンタグラフ方式の固定機構部13Cが挙げられる。
【0020】
(カム方式の固定機構部13A)
図3(a),(b)に示されるように、固定機構部13Aは、振動体11に固定されたボディ14と、ボディ14に固定された駆動シリンダ15と、ボディ14に取り付けられ駆動シリンダ15によって駆動されるカム16とを有している。カム16は、ボディ14に対して軸16aを中心として回転可能に支持されており、駆動シリンダ15のピストンロッド15aの伸縮により、パイプ3の筒軸に平行な平面内で回転する。駆動シリンダ15としては、油圧シリンダや電動シリンダを採用することができる。
【0021】
図3(b)に示されるように、駆動シリンダ15のピストンロッド15aが伸長されたとき、回転したカム16の長手方向の両端がパイプ3の内壁面5に押し付けられ、これにより、振動装置10全体がパイプ3に対して固定される。また、図3(a)に示されるように、駆動シリンダ15のピストンロッド15aが短縮されたとき、カム16の両端はパイプ3の内壁面5から離れ、これにより、振動装置10のパイプ3に対する固定が解除される。
【0022】
(パッカー方式の固定機構部13B)
図4(a),(b)に示されるように、固定機構部13Bは、振動体11に固定されたボディ14と、ボディ14に固定された駆動シリンダ15と、ボディ14の周囲にリング状に取り付けられたパッカー(変形部材)17とを有している。パッカー17は、例えばウレタン等の弾性材料からなる。駆動シリンダ15のピストンロッド15aの先端には、パッカー17を押圧するための鍔部材15bが取り付けられている。そして、ボディ14には、フランジ14bが設けられており、鍔部材15bとフランジ14bとの間にパッカー17が配置されている。
【0023】
図4(b)に示されるように、駆動シリンダ15のピストンロッド15aが伸長されたとき、パッカー17は鍔部材15bとフランジ14bとの間で筒軸方向に押圧され、径方向に膨らむように変形する。そうすると、パッカー17の外周面がパイプ3の内壁面5に押し付けられ、パッカー17と内壁面5との摩擦によって、振動装置10全体がパイプ3に対して固定される。また、図4(a)に示されるように、駆動シリンダ15のピストンロッド15aが短縮されたとき、パッカー17の径はパイプ3の内径よりも小さくなり、これにより、振動装置10のパイプ3に対する固定が解除される。
【0024】
(パンタグラフ方式の固定機構部13C)
図5(a),(b)に示されるように、固定機構部13Cは、振動体11に固定されたボディ14と、ボディ14に固定された駆動シリンダ15と、ボディ14に取り付けられ駆動シリンダ15によって駆動されるパンタグラフ部18とを有している。パンタグラフ部18は、中空部4の径方向に拡張収縮可能なパンタグラフ構造を成している。パンタグラフ部18の第1節部18aがボディ14に接続されており、第1節部18aに対向する第2節部18bが駆動シリンダ15のピストンロッド15aの先端に接続されている。そして、駆動シリンダ15のピストンロッド15aの伸縮により、第3節部18cと第4節部18dがパイプ3の径方向に移動し、パンタグラフ部18全体の幅が当該径方向に拡張収縮する。
【0025】
図5(b)に示されるように、駆動シリンダ15のピストンロッド15aが伸長されたとき、第3節部18cと第4節部18dとがパイプ3の内壁面5に押し付けられ、第3節部18c,第4節部18dと内壁面5との摩擦により、振動装置10全体がパイプ3に対して固定される。また、図5(a)に示されるように、駆動シリンダ15のピストンロッド15aが短縮されたとき、第3節部18c及び第4節部18dはパイプ3の内壁面5から離れ、これにより、振動装置10のパイプ3に対する固定が解除される。なお、内壁面5との摩擦力を確保するため、第3節部18cと第4節部18dの外側に、内壁面5に密着する板部材19を設けてもよい。
【0026】
振動装置10には、上述の固定機構部13A,13B,13Cの何れを採用してもよい。固定機構部13Aを採用した場合、部品点数が少なく単純な構造で機能を実現でき、その結果、固定機構部13Aを細くしてパイプ3の内径を小さくすることができるので好ましい。また、固定機構部13Aでは、カム16を内壁面5に押し付ける反作用として、ボディ14及び振動体11を回転させる力が生じてしまうが、固定機構部13B,13Cを採用した場合には、このような回転力が発生しない点で好ましい。また、固定機構部13Bは、振動体11からパイプ3に伝わる振動が、パッカー17の介在によって減衰される可能性があるが、固定機構部13A,13Cを採用した場合には、このような振動の減衰が避けられる点で好ましい。
【0027】
以下の説明において、固定機構部の方式を区別する必要がない場合には、固定機構部13A,13B,13Cを総称して「固定機構部13」とする。固定機構部13には、駆動シリンダ15を駆動するための駆動ケーブル21(図3図5参照)が接続されている。駆動シリンダ15として油圧シリンダを採用した場合は、各図に例示されるように駆動ケーブル21は2系統であり、駆動シリンダ15として電動シリンダを採用した場合は、駆動ケーブル21は1系統である。本実施形態では、駆動ケーブル21は、第1端3sに引き出されている。なお、駆動ケーブル21を第2端3tに引き出す構成とすれば、駆動ケーブル21と振動体11との干渉が避けられ、パイプ3の内径を小さくすることができるので好ましい。
【0028】
図2に示されるように、振動装置10の振動体11側には、フレキシブルチューブ23が取り付けられている。フレキシブルチューブ23は、振動装置10をパイプ3内で押すことが出来る程度に所定の剛性を有すると共に、パイプ3の形状に応じて湾曲できる程度の可撓性を有している。フレキシブルチューブ23は、パイプ3の第1端3s側に引き出されており、作業者は第1端3s側からフレキシブルチューブ23を押し引きすることで、振動装置10をパイプ3の中空部4内で移動させることができる。更に、振動装置10の固定機構部13側には、振動装置10をパイプ3内で引っ張るための牽引ロープ27が取り付けられている。牽引ロープ27は、パイプ3の第2端3t側に引き出されており、、作業者は第2端3t側から牽引ロープ27を引っ張ることで、振動装置10をパイプ3の中空部4内で第2端3t側に移動させることができる。なお、牽引ロープ27は省略することも可能である。また、フレキシブルチューブ23を省略し、それぞれ第1端3s,第2端3tから引き出される2本の牽引ロープ27を振動装置10に取り付けてもよい。
【0029】
続いて、上述のコンクリート締固め装置1を用いたコンクリート締固め方法について説明する。
【0030】
まず、打設空間103の掘削後、地下坑道101の直下で打設空間103内にパイプ3を設置する。例えば、パイプ3は、地下坑道101の底壁面に吊り下げられるように固定される(筒体設置工程)。打設空間103内に鉄筋が多密に配置されている場合にも、パイプ3を挿入することができる。その後、コンクリート打設面がパイプ3に到達するまでは、打設空間103内におけるコンクリート打設と通常のコンクリート締固めとを繰り返してもよい。
【0031】
その後、パイプ3の両端以外の中央部分を埋め込むように、打設空間103にコンクリートを打設する(コンクリート打設工程)。その後、パイプ3の中空部4に振動装置10を導入する。ここでは、第1端3sから振動装置10を導入するものとする。その後、フレキシブルチューブ23及び/又は牽引ロープ27の操作によって、例えばパイプ部3aの中空部4内の所定の位置に振動装置10を移動させる。そして、固定機構部13の駆動シリンダ15を駆動して振動装置10を内壁面5に固定する(振動装置設置工程)。この状態から、振動体11を駆動して振動装置10を振動させる(振動工程)。
【0032】
そうすると、振動装置10とパイプ部3aとが一体として振動し、振動がパイプ部3a周囲のコンクリートCに伝達されて、パイプ部3a近傍の締固めが行われる。このとき、振動装置10の振動は、関節部7aを挟んだパイプ部3bにはほとんど伝達されないので、振動装置10の振動がパイプ部3aに集中して伝達され、比較的強い振動をパイプ部3a近傍のコンクリートCに与えることができる。
【0033】
その後、振動装置10の固定位置(設置位置)を少しずつ第2端3tに向かって中空部4内で移動しながら、上記の振動装置設置工程と振動工程とを交互に繰り返し実行する。振動装置設置工程と振動工程とは、パイプ部3b,3cについても同様に行われ、パイプ3の延在方向の全体に亘って実行される。但し、関節部7a,7b上には、振動装置10の固定位置は設定されない。振動装置10の移動ピッチは、コンクリート締固めに必要なピッチに合わせて、例えば400〜500mmとする。その後、パイプ3から振動装置10を取り出し回収する。以上のような処理を、地下坑道101の延在方向に沿って複数配列されたパイプ3毎に実行する。その後、コンクリートCを硬化させ、パイプ3は埋め殺しにする。このとき各パイプ3の中空部4内をモルタルで充填してもよい。
【0034】
続いて、上述のコンクリート締固め装置1及びコンクリート締固め方法による作用効果について説明する。コンクリート締固め装置1及びコンクリート締固め方法によれば、パイプ3が打設空間103のコンクリートCに埋め込まれた後、パイプ3の中空部4で振動装置10をパイプ3内に固定し、振動体11で振動を発生させることにより、パイプ3を振動させ、パイプ3の周囲のコンクリートCに振動を与えることができる。また、中空部4内で振動装置10の固定位置を変えながら、各固定位置において振動を発生させることにより、パイプ3の延在方向の各位置においてコンクリートCに振動を与えることができる。
【0035】
本来は、地下坑道101の直下の部分には作業者が入り込めず、従来のバイブレータを挿入することも困難であるところ、このような人が入ることができない狭隘箇所であっても、予めパイプ3を設置することにより、パイプ3の周囲のコンクリートCに振動を与えることができ、コンクリートCの締固めを確実に行うことができる。
【0036】
また、パイプ3は関節部7a,7bを有しているので、パイプ3のある箇所で振動装置10を振動させる場合、その位置から関節部7a,7bを介して更に遠い箇所には振動が伝わり難い。従って、パイプ部3a,3b,3c毎にそれぞれ振動装置10の振動を集中させることができ、比較的強い振動を固定位置近傍に与えることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。例えば、振動装置設置工程及び振動工程において、パイプ3の中空部4内に水を充填してもよい。これによれば、パイプ3に作用するコンクリートCからの側圧の影響を軽減することができるので、比較的肉薄のパイプ3を採用することができる。また、振動装置10は水中で駆動するので、振動装置10が冷却され、発熱による悪影響が発生する可能性も低くなる。また、実施形態では、本発明を、地下坑道直下の狭隘箇所のコンクリートの締固めに適用しているが、本発明は、例えばトンネルの覆工コンクリートの締固め等にも適用することができる。
【0038】
また、実施形態では、パイプ3の延在方向の全体に亘って各箇所に振動を付与するが、例えば、中央のパイプ部3bの範囲のみで振動装置設置工程と振動工程とを実行するようにしてもよい。すなわち、打設空間103のうち従来のバイブレータが最も届き難い中央のパイプ部3b近傍のみに、本発明のコンクリート締固め方法を適用するようにしてもよい。この場合、パイプ部3a及びパイプ部3cは、振動装置10をパイプ部(筒体)3bに送り込むための単なるガイドの機能を有すればよいので、パイプ部3a及びパイプ部3cは、パイプ部3bに比べて低剛性のパイプ(例えば樹脂性のパイプ)であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…コンクリート締固め装置、3…パイプ(筒体)、4…中空部、5…内壁面、7a,7b…関節部、10…振動装置、11…振動体、13,13A,13B,13C…固定機構部、16…カム、17…パッカー(変形部材)、18…パンタグラフ部、103…打設空間、C…コンクリート。
図1
図2
図3
図4
図5